新たな聖闘士《セイント》4人は見事、第1段階の小宇宙《コスモ》を発揮。
日本人の少年達が纏う聖衣は輝き、青銅《ブロンズ》の光を放った。
勝負を挑んだ暗黒四天王《ブラック・フォー》は当初、互角と見えたが。
表面的な破壊力は兎も角、第7感覚《セブンセンシズ》の覚醒度に差があった。
(竜星座《ドラゴン》の聖闘士、紫龍は五老峰の老師を師と仰ぐ故に当然だが。
白鳥座《キグナス》の聖闘士も宝瓶宮の守護者、水瓶座カミュの弟子であったな。
第3段階の師に薫陶を受けた紫龍、氷河の小宇宙は第1段階の水準を超えている。
天馬星座《ペガサス》の訓練指導者は魔鈴、アンドロメダ座はダイダロスか。
第2段階の師とは言え彼等の小宇宙もまた、正式な称号を得た聖闘士に相応しい。
成長の可能性を秘めた暗黒《ブラック》聖闘士4人も此の儘、死なせるには惜しい)
黒死の流星を放つ中東イスラエルの少年、ブラック・ペガサス。
漆黒の鎖を駆使する欧亜の接点トルコの少年、ブラック・アンドロメダ。
黒い凍気を操る北欧フフィンランドの少年、ブラック・スワン。
漆黒の拳を振るう東欧ポーランドの少年、ブラック・ドラゴン。
力及ばず倒れた彼等は、知らなかった。
牡羊座ムウが念動力《サイコキネシス》を用い、細胞賦活を施していた事に。
暗黒聖闘士の首領《ドン》、史上初めて鳳凰座《フェニックス》の聖衣を纏った少年。
憎悪の感情で小宇宙を染めた報復者《アンザラー》、一輝が4人の前に姿を現す。
自己修復能力を備えた唯一の聖衣、鳳凰座と同調《シンクロ》する小宇宙を持つ長兄。
不死身の男は弟達4人の攻撃を一蹴したが、残留思念に操られ射手座の聖衣が介入。
一輝の攻撃を遮り天馬星座の聖闘士、ペガサス星矢を護り逆転勝利を齎したが。
不意に激震が生じ地下空間を崩壊に導き、敵味方に分かれた兄弟達を埋没させた。
(鳳凰座の聖闘士も小宇宙に破邪の秘宝、星の秘宝石《スター・ドロップ》を秘めるか。
有罪《ギルティー》を倒したフェニックス一輝は、ドラゴン紫龍の兄。
アンドロメダ瞬、キグナス氷河、ペガサス星矢も城戸光政の血を引く者。
彼等を含め百人の兄弟が聖闘士の修行に送り込まれ、他にも聖衣を得た者が5人。
精神測定《サイコメトリ》を用い記憶を辿って見たが、城戸光政とは何者か分からぬ。
まさかと思うが女神アテナと同様、天空《ウラノス》を統べる天帝セウスも転生を?
一輝の小宇宙と記憶を走査《スキャン》、解析して見たが一部に封印が施されている。
ひとつは冥王ハデスの代行者、冥界の預言者パンドラの記憶封鎖《メモリー・プロテクト》。
もうひとつは我が同僚、処女宮を預かる乙女座シャカの小宇宙だな。
彼は教皇を名乗る簒奪者を支持すると聞くが、デスクィーン島を訪れた際に気付いた筈。
本来は彼も聖域を護る切札《ラスト・カード》、不動の門番《ゲート・キーパー》だが。
来るべき十二宮の闘いに於いて処女宮の守護者、シャカの助力を期待出来るかもしれぬ)
高天原《ジャミール》の隠者《ハーミッド》、ムウは仮面を脱ぎ捨て念動力を発動。
一輝の影、最後のブラック・フェニックスも含め瞬間移動《テレポーテーション》。
息も乱さず青銅5人と暗黒5人、合計10人の聖闘士を富士の地底から地上へ搬送。
念動力を作用させ応急の救命措置、細胞賦活を施して傷を癒し生命力を回復させる。
射手座の聖衣を巡り私闘を繰り広げた聖闘士を処罰せよ、と教皇に指示された抹殺者。
白銀色《シルバー》に輝く聖衣を纏う聖域の刺客、第2段階の聖闘士5人が現れた。
蜥蜴座《リザト》、ミスティ。
鷲座《イーグル》、魔鈴。
白鯨座《ホエール》、モーゼス。
ケンタウルス座、バベル。
猟犬座《ハウンド》、アステリオン。
地上最高の美を自認する白皙の男が一歩、踏み出し無謀にも詰問を開始。
「我等は教皇より直接、命令を受けている。
私闘は禁じられている由、知らぬとは言わせぬ。
聖衣の修理人には関係無い筈だが何故、こやつ等を脱出させた?
返答次第では見逃す訳には行かぬ、反逆者に加担の志が有りと見做し処刑する」
穏やかな狼は涼しい顔で沈黙を守り、何処吹く風と脅迫を聞き流していたが。
遂に堪忍袋の尾を切り、第3段階の小宇宙を鳴動させた。
「余人は何も気付かぬであろうが五老峰の老師と私、真実を知る者を欺く事は出来ぬ。
真の教皇とは前聖戦を戦い抜いた勇者、先代の牡羊座《アリエス》也。
善悪の判断は我が師シオンの盟友、天秤座《ライブラ》の聖闘士が基準となる理《ルール》。
聖闘士の要となる五老峰の老師もまた、聖域《サンクチュアリ》の教皇を認めておらぬ。
射手座の聖衣に宿る残留思念が暴露した通り、お前達の崇める教皇は真っ赤な偽者。
女神の転生たる赤子を黄金の短剣にて害せんと試み、勇者を反逆者と偽る痴れ者に過ぎぬ!」
「最早、問答無用!
教皇を貶める虚言の数々、許せぬ!!
ジャミールの山奥に引き篭もっていた隠者に、何が出来る?
我等5名が教皇に代わり、反逆者に鉄槌を下してくれるわ!」
本来の標的《ターゲット》である青銅、暗黒の聖闘士10人は完全に無視。
聖域の刺客5名は告発者の抹殺を試み牡羊座ムウの周囲に散開、包囲攻撃を意図し一斉に突撃。
「フッ。
愚か者、血迷ったな!
第2段階の聖闘士が束となった所で、私には通じぬ。
第3段階の小宇宙、体感せよ!」
最後の台詞は襲撃者ではなく青銅、暗黒の聖闘士達へ手向けられた激励の言葉であったが。
第1段階の第7感覚では感知出来ぬ程に僅少の時間、一瞬の早業で勝負は呆気無く決着。
青銅聖闘士が駆使する音速《マッハ》の拳を凌ぎ、白銀聖闘士が操る超音速の闘技。
天地の差と称される第1段階と第2段階の違いを更に上回り、次元を異にする光速の技が閃いた。
星の光を冠する必殺技を繰り出すまでも無く、5方向から迫る超高速の包囲攻撃を一蹴。
黄金色に輝く聖衣の拳が空間を引き裂き、白銀色の聖衣を貫き襲撃者達を痛撃。
巧みに手加減された打撃を避け切れず、聖域の刺客は悉く気絶し大地に倒れ伏した。
眼前で展開された想像を絶する高次元の攻防、眼にも止まらぬ瞬転の技に唖然とする少年達。
「一時的に意識を喪わせる峰打ち故、心配は要らぬ。
射手座の聖衣に託された残留思念、アイオロスの無念と伝言は確かに受け取った。
お前達は今見た通り、聖域から反逆者の烙印を押され生命を狙われている。
生き残る途は唯一つ、偽教皇の悪事を暴き真実を白日の下に晒すしかあるまい。
暗黒聖闘士を名乗る者達は、鳳凰座の聖闘士に従うと誓った筈。
同一の守護星座を戴く青銅聖闘士との決着は一時、延期して貰おうか」
知らぬ間に細胞賦活を施され、一命を取り留めた暗黒四天王は已む無く承諾。
群れる事を好まぬ一輝も圧倒的な第3段階の小宇宙に気圧され、異を唱える根性は無かった。
「アイオロスが偽教皇の魔手から救った赤子、城戸沙織とやらの許へ向かうぞ。
真に女神の転生なれば私もアイオロスに倣い、聖域に蔓延る邪悪を一掃する心算だ」
白羊宮の守護者は再び念動力を発動、時空を歪め周囲を覆う転送用の力場《フィールド》を創造。
意識不明の白銀聖闘士を含め青銅、暗黒の聖闘士達を引き連れ城戸邸へ飛んだ。
城戸邸は無人の廃墟と化しており、グラード財団の本拠地も同様であったが。
気を喪った白銀聖闘士の記憶を解析した結果、他にも聖域の刺客が来日していると判明。
呉越同舟の一行は銀河戦争《ギャラクシアン・ウォーズ》の舞台、闘技場《コロッセオ》へ転移。
破壊行為に勤しむ白銀聖闘士5人、立ち竦む少女の姿を視界に捕捉。
第3段階の小宇宙が閃き城戸沙織の心を慎重に走査、潜在意識の奥底へ精神接触を試みる。
射手座アイオロスの施した小宇宙の封印、第7感覚の精神遮蔽《サイコ・シールド》を解除。
13年の歳月を経て女神アテナの破壊が覚醒、神々の大いなる意志《ビッグウィル》が溢れ出す。
無限の包容力を秘め万物を許容する超空間《ハイパースペース》、雄大な小宇宙が闘技場を覆う。
左胸に掌を当て片膝を付き拝謁の礼を捧げる姿勢を取り、頭を垂れる第3段階の聖闘士。
茫然自失の態であった少年達が慌てて、白羊宮の守護者に倣い恭順の意を表し頭を下げた。
「人馬宮を預かる守護者にして真の勇者、射手座アイオロスの至誠と導きに感謝を捧げる。
女神よ、帰依し奉ります」
蛇遣い座《オビュクス》、シャイナ。
御者座《アウリガ》、カペラ。
地獄の番犬座《ケルベロス》、ダンテ。
烏座《クロウ》、ジャミアン。
ペルセウス座、アルゴル。
闘技場の破壊者達にも女神の小宇宙を無視する事は出来ず、真偽は明白であった。
女神も見放したと豪語する暗黒聖闘士達もまた、本物を眼の前にしては突っ張り切れぬ。
牡羊座ムウに生命を救われた恩義も有り、青銅聖闘士達と共に忠誠を誓う破目となった。
伝説の汎用人型決戦兵器、鉄《くろがね》の城に因み鋼鉄《スティール》の称号を授与。
意識を回復した白銀聖闘士5人も同僚達と同様、女神の小宇宙に触れ潔く白旗を掲げる。
第3段階の黄金聖闘士1名、第2段階の白銀聖闘士10名、青銅と鋼鉄の第1段階10名。
射手座の聖衣に籠めた勇者の伝言に応え、21名が聖域に蔓延る邪悪を祓う決意を固めた。