「じゃあなんだ?お前は人間に捨てられ食い物に困ったから妖怪食ったら妖怪になったのか。ハッハッハ!!コイツは傑作だ!!!」
酒飲んで過去話したら意気投合しちゃったよ。妖怪の中じゃ人間に似た姿を持つ妖怪はあまりいないからね。蜘蛛みたいなのや、腕が何本もある妖怪やら人間とは程遠いわけだし。むしろ私や鬼真のような人間に近い妖怪の方が珍しい。なんでも鬼真達の力の源は身体もそうだがもう一つの要因として大地からの力を少し借りているかららしい。そんなことできる種族などほとんどいない私も無理だ。……鬼真KOEEEEE
「でしょう?やっぱ話し相手いるといいわね。そうだ!これ飲む?いい気分になれるよ」
「ん?こりゃ酒虫じゃないか!!」
「知っているのか鬼真!?」
「ああ聞いたことがある……じゃなくて…こいつは鬼真の中じゃ必須生命体だぞ!」
アル中というやつですね。わかります。て言うかノリいいなこの鬼真。
「へえー、よかったら採っていく?近くに巣があるから」
「なん……だと?」
その言葉に衝撃を受けたかのように鬼真は固まった。
「………決めた」
「ん?」
「ここを拠点にしよう」
「酒虫ですねわかります」
「それもあるが、お前といると楽しい。他の奴より張合いもあるし酒虫もあるし食料も豊富だし酒虫もあるし」
「酒虫ばっかじゃん!……でもそれなら条件が………わかっているよね?」
「ああ、わかっている。向こうから何かしてこない限りは……だろ?」
「ならよし!」
こうして鬼真が居候することになった
200年後
そしてある日のこと
私はいつも通り集落からのお供え物をもらおうと山を下りた時である。
「なにこれ……」
そこにお供え物はなかった。別にそれで怒るわけではないが、普段はあったものがないのだ。流石に不審に思う。
集落の方を見ると集落の方から煙が上っている。最初は祭りでもしているのかと思ったが違う。
そこで私は能力で視力を極限まで上げ集落を見た。
「ふーん、そういう事か……なら仕方ないね。私は干渉できないし」
見てみたら人間同士が縄張り争いしていたのだ。これは人間同士のいざこざ……私が出る幕じゃない。
「はあ~お供え物もこれまでか~まあ結構持った方かな?」
予想だと100年前には廃れてこんなことしないだろうとか思っていたし
実は人間側の方で彼女のことが噂になっていたのは秘密である。
「鬼真……お供え物無くちゃった」
「そうか……残念だが仕方ないな。」
事情を話すと鬼真もがっかりしていた。しかし私はこれからのことを考えていた。
「これから気を付けたほうがいいかもね」
「ん?なぜだ?」
「ここへ移住してくる人間が襲い掛かってくる可能性がある」
「人間なぞただの矮小な生き物だろう?我々の敵ではない」
「人間を侮ったらいけないよ。元人間だった私だからわかる……彼等の知恵と共通の敵を持った時の団結力は恐ろしい」
「お前がそう言うなら気を付けよう」
そして三日後
ねえ一つ言っていい?
なんだコレ?
今私には見たことのない光景が広がっています。なんせものすごい高い建物が家からでも見れるし。あれ?昨日まであんな建物無かったよ?しかも発展速度おかしいだろ!昨日まで確かあそこ焼け野原だったんだよ。ありえん(驚
「ん?」
よく見るとあの集落から武装した人間がこっちへ向かってきている。私達を退治しようというわけか………いま鬼真は酒虫を盟友とやらに渡すために里帰りしているみたいだし。私一人で相手をするのか………めんどくさいな…
とりあえずここに来るためには避けては通れない開けた場所があるのでそこへ向かった。
「人間が何の用?」
「お前があの村に住んでいた者達が言っていた守り神か」
「そんなたいそうなものじゃないわ。ただ単に人間でいうなら互いに領土を侵略しないという約束を結んでいただけ……で?そんな物騒なものを持ってきて何しに来たの?」
「ここら一帯を調べてみた結果、此処には未知の鉱石や他の場所では貴重な資源が大量に眠っているのでなお前たちにはもったいない。我々人間が使ってやろうというわけだ。」
何言っているんだ?ここは私を含め様々な生き物たちが分け合って生きている場所だ。故にここは誰のものでもない……みんなのものだ。独占していいところではない。人間だって強ければここの資源をとっていってもよかった。前の集落の人間だってこの山の奥深くには入らなかったものの麓あたりに山菜や野草は採っていた。妖怪達だって好き好んで人間を食べていたわけでもない。そこら辺にある木の実で事足りる妖怪もいれば、私のように妖怪を食らう存在だっている。鬼真……というより他の強い妖怪にしたって飢餓状態でもなければ自分から人間を襲うなんてこともしない。強い妖怪のほうがうまいし糧になるからだ。事実人間が入らなかったのだってあの約束に例外がありそれは『あの山に入っている人間に対して自分は何もしない』というものだ。だから人間も山の深くには入らなかったのだ。入れば自分たちが食われてしまうことを知っていたから。
「そうえば、他の妖怪たちは?」
「邪魔だからな、駆除させてもらった。」
なるほど、ここら一帯の妖怪はそれなりに強い。なんせ妖怪の中での弱肉強食を生き抜いてきた猛者だ。人間が主食の中途半端な妖怪はほとんどいない。それと対等に戦えるのなら強気でいられるのもわかる。
……しかしこのままこいつらを放っておけば自分たちの餌場を蹂躙されるだろうそれだけは阻止せねばならぬしなにより
…………こいつらの態度が気に入らない
自分たちを選ばれた種族か何かと勘違いしている。
この見下した態度は自分に勝る者はいないと思っているがための態度だ。子供ならいいのだが大の大人がとるべき態度ではない。少なからず本物の強者というものは対峙した瞬間に相手の強さはある程度わかるものだ。妖怪だって自分より強いものと出くわしたならすぐに逃げるか鬼真のような種族の持つ戦闘狂性の二つに分かれる。
だからおしえてやろう。本当の強さを、自分たちが妖怪と戦えるのはその『道具』のおかげなのだということを、自分たちの存在をもう一度認識させたうえで殺してやる。
「悪いけどお前たちをここから先へ通すわけにはいかない」
「妖怪風情が人間様に何を言っている?別に貴様に許可して入るいわれはない。なに、前の人間どもには『守り神』とかなにかと言われていたようだが所詮は妖怪……我々の敵ではない!」
「そう……なら仕方ないわ…じゃあ…」
教育してあげる本当の妖怪の戦いを
その後の人間たちの行方を知る者はだれもおらず、帰ってくる者もいなかった。
そしてこれが人間と妖怪が決別する……決定的な瞬間であったということを今の私が知る由もなかった…