東方幻想妖   作:犠牲者

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再スタート、もしかしたらいろいろ変わっているかもしれません。


旧時代編
第一話:えーと……私はなんだ?


――――――――――――――――私は誰?

 

 

分かっているのは自分が『元』人間だということ。じゃあ今は何かって?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

多分人間でいうところの妖怪だろう。

私は生まれてすぐに捨てられた。理由は多分この紅い目だと思う。他の人間とは違うから捨てられたのだろう。もちろん最初から妖怪だったわけではない。その兆候は多分私が生きるために妖怪を食らい始めてからだと思う。きっかけは単純だ。妖怪に襲われ逃げたところで崖っぷちに追い込まれ妖怪が突進、反射的に避けたら妖怪が崖から落ちて転落……そのまま死んだのだ。そしてその近くへと寄った。その時の私はひどく餓えていてその妖怪の肉が何よりも美味しそうに見えた。そして火を点ける技術も持っていた、私は人間の理性と必死に闘ったがやはり生存本能には敵わずその肉を焼いて食った。

 

 

 

それから数十…いや百年くらい経っていたのかもしれない。

その日に私は自分が人外だということに気づいた。不意に気付いたのだ、自分は今いくつなんだろう?と…そこで私は澄んだ湖に自分の顔を映した時愕然とした。最後に自分の顔をまじまじと見たときから数年しか経っていないとしても変わっていないのだ。しかも身体能力は未だに衰えるどころかまだまだ成長している。確かにあの時以降、罠を張って妖怪を仕留めその肉を食ってはいたがいつかは死ぬと思っていた。少なからず人間と同じ寿命で死ぬと思っていた。

 

 

そしてそれに呆然としているときだ、突如後ろから現れた腕が4本生えた熊のような妖怪に後ろから引き裂かれたのだ。

 

「あう……」

 

ガアアアアアア!!

 

熊妖怪は雄叫びをあげながら私に近づいてくる。私は人間よりは力があるがそれだけだ。

妖怪視点で見れば私の力は並以下だ。だからこそ罠を張って妖怪をとらえていたのだ。

ここまでと思った時だ。

 

 

ザシュ!!

 

 

最初は自分が引き裂かれた音だと思った。

が、いつまでたっても痛みは来ない……恐る恐る目を開くと私を襲った妖怪の脇腹に黒い腕のようなものが刺さっていた。

そしてその出所を見てみるとなんと自分の肩から出ているではないか!

しかも自分の意思とは関係なく動いている。

熊妖怪はそのまま絶命。そしてそれを確認すると黒い腕も私の中に戻って行った。

 

そして、そこからさらに300年経った。

 

どうやら妖怪の血と肉を食い続けていたら、傷は癒えたが自分が妖怪になっていたらしい。それに伴ってか能力も出てきた。

『原初を操る程度の能力』これが私の能力の名だ。

簡単に言うと、あらゆるものを具現、行使することのできる能力だ。例えば剣が欲しいと思えば剣を作ることもできる。竜巻を起こしたいと願えば竜巻がおこせるというものだ。そして私を守ってくれた黒い腕は今まで食った妖怪の腕だ。いろいろ混ざって結構すごいことになっていたが………話を戻そう…この能力にはもちろん制限はある……あるのだが妖怪を食っていくうちに制限がなくなってきた。このまま食い続ければおそらく制限がなくなるだろう。だって前、隣の山の妖怪達がリンチしに来たとき、人間にはばれないように光線出せないかなぁって思ったら極太の光線が出た。あの時は驚いた、しかも人間たちにはばれていなかったし。

だが、それなら『あらゆるものを具現する程度の能力』もしくは『具現を操る程度の能力』ではないのか?と思うだろう。答えはノーだ。なぜなら、能力を具現できない。つまり『○○する程度の能力』が創れないし具現できない。要は不確定すぎる要素を具現できないのだ。腕力や情報は見えなくとも実際に『ある』ので具現(この場合は知るもしくは付与するだが)できるが、能力なんて『どの能力がどういう条件下で発言するのか?』その法則がどういうのか全く分からないのだから。こればかりはおそらく食い続けても不可能だ。一向にその兆候が出ないのも一因している。

なら『原子もしくは分子または粒子を操る程度の能力』では?これもノーだ。だって原子や分子の情報は具現できたし、なにより原子や分子、粒子を『具現』できた。あの光線がいい例だ。(最も私なりに改造した摩改造光線だが………)さらにこの能力でどうやってあんな生きた黒い獣の腕を出せるのか説明がつかない。

そして結果として原子すら創れるのなら一番最初……つまり原初を操れるのではないかということになる。それなら風を起こすことも、都合通りに光線を出せるのも腕が出せるのも説明がつく。そのほうが妙にしっくりくるので一応『原初を操る程度の能力』と名付けている。

この能力に目覚めてから自分の環境が劇的に変わった。まず単純に力…腕力や脚力といった膂力が付いた。次に自分の住んでいた山での食物連鎖の頂点が私になった。因みに人間は食っていない。やはりこれは自分が元人間だったからかあまり食べたいとも思わない。それに面倒事が起きても嫌だから基本人間とは関わらないようにしている。

そして空腹感以外の問題もあった。空腹なんて我慢すればいいだけである。無い袖は振れないというやつである。しかし一番困るのがこの近くにある集落の人間たちが私を守り神として私を祭っていることだ。まあこの近くの妖怪や村を襲うためにここを通りかかった妖怪を食い物にしているせいであの集落には妖怪関連の被害がほぼ皆無だ。そしてある日、私が妖怪を狩っている姿を目撃されてしまい今に至るというわけだ。なので、思い切って人間と接触しある約束をした。それは『妖怪は自分にとって需要があるから退治するが人間の厄介事には付き合わないし干渉しない』というものである。まあ、ある種の共存というやつである。

 

こうして私は今現在に至るというわけである。

 


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