IS 灰色兎は高く飛ぶ   作:グラタンサイダー

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 今回ちょっと長いかもしれません。


61.それは所詮は茶番のようで ③

 後方を完全にセシリア・オルコットに一任し、水面を舐めるが如く低空、(ひた)走るが如く打鉄弐式を飛翔させる。

 簪は今、戦場にいる。

 戦場と言っても敗戦処理、撤退戦だ。少なからず思う所のある相手の救出だが、今回ばかりは同情を禁じ得ない理由があった。だがそれは今はどうでも良い。

 弐式の背部には長大な増設推進器を二基接続し、推進剤の消費も無視して長駆する。皮一枚背後ではオルコットと有志教員数名による陽動戦闘が行われていた。すべては簪が両脇に抱える二名を救う為だ。

 篠ノ之 箒と、織斑 一夏。

 両名に意識はなく、その機体もまたシールドエネルギーを枯渇させていた。殊織斑 一夏に至っては外傷もある。脇に抱える彼から僅かながらも止め処なく流れる血液、その特有の粘度と零れ出る体温が簪に吐き気を催させる。

「更識さん!!」

「っ……!?」

 海岸線に立つ回収用ネットを肉眼で目視したところでオルコットの声に振り向いた。敵、銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)が教員とオルコットを振り切りこちらに牙を向いていた。

「逃げて!」

 言われるがままに回避運動。血のにおいを潮のかおりと切る風で掻き消しつい数瞬前までいた海面に銀の弾丸が幾条も突き刺さり水柱を上げる。

「……!」

 唇を引き結び耐え忍ぶ。緩急を付け、フェイントを入れ、両脇の命を庇い立てる。

 ――だが躱しきれない。

「!」

 弐式に着弾。シールドにより減殺しつつも貫通した銀弾が増設推進器の片方から火を噴きださせる。

(強制、排除……!)

 エラーメッセージ。排除不可能。

(! どうして……)

 簪が疑問に思うも原因を推察している暇はない。残りあと少しという所で頼りの推進器が片肺になってしまったという事実だけが簪に重くのしかかってくる。

 目に見えて速度が落ちる。血と潮に混ざり燃焼のにおいが簪の鼻先をよぎりだす。

 剣戟と銃撃の音が聞こえ、鮮やかな青、ブルー・ティアーズを駆るオルコットが並走する。

「機体状況は!?」

 何か言い返そうとして言葉に詰まる。こういう時、彼女ならば何と言っただろうか。

「――平気、まだ飛べる……!」

 あと少しでゴール、回収用ネットに飛び込んでしまえば迎え撃つ先生方の砲撃で退けられる。簪は何としても其処まで辿り着いて見せるという気概を見せる。

 片肺には片肺の飛び方があるのだ。ジャンボジェット機とは違いISで、それも今回の搭乗客は既に気を失っている。これ以上気にするものがない以上、出来ない道理はない。

 簪の表情から汲み取ったのかオルコットが迎撃に戻っていく。後方で銃撃の間隔が狭まる。いよいよもって飛行自体が怪しくなってくる。もう少し、もう少しだというのに。

(……っ!)

 唇を固く引き結び、意を決して推進器に更なる(エネルギー)をくべる。健常な推進器が唸りを上げて推力を増し、死に体の推進器から更なる火の手が上がる。

 教員から推進器の強制排除を命じられる。うるさい、出来ればとっくにやっている。可能だったとてそれで追いつかれても意味がない。

 飛ぶしかないのだ、現状のまま、あの海岸線まで。

「PIC飛行、……!」

 飛行を推進器からPICへ。PICをカナード翼代りだけでなく推進に使う。失速気味の機体を持ち直し、推進器にシールドエネルギーを貯め込む。

 

瞬時加速(イグニッション・ブースト)!?」

「自殺行為よ!」

「更識さん!」

 

「大丈夫……、大丈夫……」

 もはやうわ言の様に呟き続ける。トーナメントの真っ只中で、彼女が常に自身に言い聞かせていた言葉だ。今度は自分がそう言い聞かせる。

 ――自分は決して強くない。けれどそれでも、憧れる事は出来る。

 彼女ならば諦めないだろう。たとえ自分を犠牲にしたとしても。

 ……瞬時加速に点火した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「織斑・篠ノ之両名の回収を確認!」

「火力支援の効果確認しました! 目標、撤退して行きます!」

「更識は?」千冬が安否を尋ねる。

「りょ、両名をネットへ放り投げたと同時に墜落したとの事です!」

「墜落? 更識の安否と機体の被害は?」

「不調を来した推進器で瞬時加速を敢行、更識さんはシールドに守られて脳震盪程度のようですが、機体の方は……」

「わかりました。更識の急ぎ治療をお願いします」

 墜落。千冬は腕を組み換え黙考する。

(奴のような真似をする)

 元同居人のタッグパートナーに影響を受けたのだろうか、随分と無茶をしたものだ。それは良くない傾向で、状況上、責める訳ではないが余り勧められた事ではない。墜落したと言う事は本人が無事でも機体は大破、以後の作戦に参加できないという事だ。

「侵入してきた密漁船はどうなりましたか?」

「当該区域を離脱中です。これから拿捕に向かわせます」

 ……問題が積まれていく。差し当たり排除しやすい問題から徹底的に潰していかなければ次に当たれない。

 まずはこの邪魔者を排除しなければ千冬は固めた表情の下で気が狂いそうだった。

 

 

――箒が一夏を斬った――

 

 

 ――密漁船を装った船から発光信号が発せられた。一夏は素人考えからモールス信号による救難信号かと言っていたが、箒、友人の妹にとってはそうではなく、

(狂わされた。発光信号は恐らくスイッチ。頭の中に埋め込まれた命令の)

 最悪の予想が的中した。以前に阿毛議員から聞かされた事柄が頭を過る。洗脳処置、それが今になって発動したという事か。なぜ今、とは思わない。どうせ何処からか情報が洩れ、水面下で潜んでいた計画が浮上してきたというだけだろう、名も正体も知らぬ連中が。

 連中は待っていた? 箒が束謹製の専用機を手に入れる瞬間を?

(……いや、よそう)

 推測するにも情報が足りない。千冬の与り知らぬ処で何が行われようと結果は変わらないのだ。

 箒は未だ此方の手許に居て、一夏は斬られ、密漁船もどきは拿捕、三機もの高機動機体が今後の作戦に使用できないという事だ。

 職務上、専用機持ち共に送られてきた追加兵装は全て頭に入っている。それらを鑑みるに打鉄弐式の増設推進器に並ぶ速度を持つパッケージは白式、紅椿、オルコットのブルー・ティアーズのみ。

 対する敵は高機動型。飛車角に次いで香車を片方失ったようなものだ。

(……いや)

 こうなったら自分が、王将というかチェスのクイーンを出そうかと考えるが、その手段を千冬は飲み込んだ。

 文字通りゲームが違う。それにそういう問題ではない。

 だがそれでも、と再度考え、使える手段を脳内で探し、

(…………)

 ふと気づく。

「山田先生」

「はい? あっ、はい! なんでしょうか!?」

「束の奴は何処に行きましたか」

 篠ノ之博士ですか? と山田先生が周囲を見渡す。

 千冬も視界を広げるが、あの特徴的な一人不思議の国のアリスは何処にも見当たらない。

「さっきまでその、私の胸をつついていたんですが……」

「……すいません、山田先生」

 何故か自分が申し訳なく思ってしまう辺り、奴の事後処理に慣れてしまっている。

 ……それにしても、

「束め、何処へ行った」

 奴の大切な妹が狂わされたという非常時にだ。そしてこの事態を予測できなかったとも考えにくい。だが今は居ない。

「…………」

 状況が状況だ、飽きたなどという訳がないだろう。

 これは更なる問題が舞い込んできそうだと、千冬は目許を揉んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――巨人の腕に抱かれ空を飛ぶ。健全な男子ならば一度は夢に見る光景だろうが、

(実際にやると怖い!)

 風防もないので風が直接顔に吹きつける。シートベルトも勿論ないので安全バーのないジェットコースターの気分が味わえる。

(おすすめは出来ないなぁ!)

 まあ実際に巨腕の中から零れおちたとてラビットのPICを起動すれば事なきを得るのだが、ラビットの存在を知らない外から見れば自殺行為となんら大差はない。風で長い髪が乱れるのもそのままに左手一本で新たな所属不明機、ゴーレムⅡの巨腕にへばりつく様は無謀というか無様というか。とにかく危険に見える。

 更に言えば静穂以外はゴーレムⅡの正体を知らない訳で、攻撃される事請け合いな訳で。

「ゴーレム」静穂は体勢を変え、巨人の胸板をノックする。「プライベート・チャネル。打鉄とラファールとテンペスタとメイルシュトロームにだけ繋いで」

 静穂の言葉を受け巨人、ゴーレムⅡの顔部分に備え付けられたカメラ群が明滅。直後に開かれた通信画面からは怒号のような喧噪のような、とにかく喧しい汀組の声が静穂の耳を壊しに掛かる。

 全員が一しきり叫び終わって、漸く静穂の番が来る。

「はい皆さん聞いて下さい。いきますよ?

 

 まず鵜名山(うなやま)先輩、すいません心配かけて。

 レイラ先輩、あと少しです気張ってください。

 ルイス先輩は何言ってるんですか、皆さんだけでも勝てましたよ。

 ソフィア先輩、レダ先輩のお(もり)お疲れ様です。

 なんですかレダ先輩、本当の事でしょうに。来てくれてありがとうございます。はい次。

 永富先輩、重冨先輩と一緒に上がってきてください。要を任せます。

 重冨先輩は泣かない。終わったらわたしの髪梳いていいですから。

 布仏先輩、この機体はわたしのじゃなくて()()()です。

 更識先輩、どうしましたか涙声なんて。大丈夫、まだ生きてますよ。

 ティティ先輩Hola(どうも)。ケたる? ――あぁ、元気ですよ。えぇ、アゲていきましょう。

 

 ――こんなもんですかね? とりあえずは」

 

 汀組の面々が口を揃える。『よかった、いつもの聖徳太子だ……!』

 それで安否を確認されるのはどうだろうか。

『汀さん』と虚。『本当に貴方の専用機ではないのね?』

「そうですよ」静穂は肯定する。「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

『…………』

「――と、いう事にしておいて下さい」と断りを入れて切り替える。「ではこれから船を落してコアとなるISを引きずり出し各個撃破、全敵機の撃墜に作戦目標を更新します」

『撃墜!?』

『艦を落せば終わりじゃないの!?』

「はい。艦を落しただけじゃあ連中は止まらないでしょう。高速移動か群衆に紛れこまれるかは状況次第ですが、艦のコアとしてだけでなく単独行動が出来る以上、連中は必ず学園に辿り着く。ここで潰さない事には学園の平和は守れない」

 敵を倒すのではなく禍の芽を潰す。

 傷病の身がセーフモードのISを起動させた程度で圧倒出来る程の相手だ。今の汀組ならば赤子同然、いやむしろここで墜としておかない限り自分達に未来はない。

 一体幾つの規定の類をぞんざいにしているか。生徒会の二人を含め全員の清廉潔白を証明する為にも成果を得る必要がある。

 だがそれを皆に今言う必要はない。静穂は面々それぞれに指示を伝え、汀組はそれに首肯した。

「じゃあ皆さん、勝って学園へ帰りますよ! 状況再開!」

『了解!』

 ……虚が一言。『――貴方、少し変わった?』

「喉のつかえが取れたので」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……皆一様に言いたい事はある。それでもこの場限りはそれを飲み込み彼女の命に従った。

 それは以前からの総意でもある。年長としての矜持でもある。だがそれ以外にも、自分達を突き動かす彼女の姿があった。

 彼女は常に前を見据えている。今もそうだ。解れた包帯を長い髪と共に揺らし、見知らぬ巨人(IS)を駆り進む様を、自分達は慌てて追いかけ、追い越して前に出るより仕方ない。

 ある時期より確かに旗印として引っぱり出した筈だ。ただ互いをを繋ぎとめる楔の役割だけを求めた筈だった。

 それがどうしてか今は、傷病の身で前に出て、自分達を追い抜こうとしている。

 自分の効果というものをよく理解している。大将自らが旗を振って突撃しようものならば、その旗下につく人間は後を追うか後に蔑まれるかでしかない。

 ここまで来て自分達がその後者になる事は、決して認められるものではなかった。

「行け行け行け行け行け行け!!」いずれに負けじとシュトロの少女、鵜名山が叫ぶ。

 二機メイルシュトロームが先行し、それを迎撃する為に艦隊から自爆ドローン群が飛び立つ。

 あからさまな舌打ちをして鵜名山が反転、距離を取り迎撃に移ろうとしたところで、

 

 

――彼女と巨人(ゴーレム)が前に出た――

 

 

「お先でーす」

「----------!!」

 瞬間沸騰。こちらこそがと後を追う。

「タマミ!」今回の相棒であるルイスが後ろに付き鵜名山の名を呼んでくる。

「うるさい!! 年下なんぞに遅れを取れるか!」

(守るのは私の方だ!)

 シュトロの推進器を吹かし再度先頭へ。ドローン群の中へ頭から突っ込んでいく。

 鵜名山の矜持、3年パイロット科に在籍しているというだけの矜持が静穂の後ろにつく事を許さない。

「こお――んのおっっ!!」

 遮二無二我武者羅死にもの狂い。猫の額程の間隙をドローンの爆発と誘爆で押し広げ、蛇がのたうち回るような見栄えなど気にもしない強引な回避の軌道を描き、ドローン群の中を突き抜けた。

 そして目標の一隻に取りつき「どうだ!」とこれまで来た上空を見上げれば、

 

 

 ……誘爆など気にせず突っ込んでくる巨人が見えた。

 

 

「――え?」

 つい自分の性格(キャラ)に似合わぬ頓狂な声を上げてしまう。それもそうだ、今まで自分達が必死になって接触を避けてきたドローン群をだ、足を畳み腕で静穂を庇いながら、爆発をシールドバリアによってものともせず突き進む様は、なんというか、こう、

「なにしてくれてんのよ……!」

 声が震える。必死になった自分が馬鹿みたいではないか。よく見れば静穂の駆る巨人が通って出来た大穴を汀組が追随している。相棒のルイスまでもだ。さらに馬鹿みたいではないか。

「おい、こら汀」

『いや、だって』と静穂が簡単な言い訳をする。『これ、()()()()()()()()()()()()?』

『――――えっ?』

 今度は汀組全員が声を上げた。

 ISの攻撃ではない。ISはIS由来の攻撃でなければ傷つく事はあり得ない。静穂の巨人は無傷で、つまり巨人はISで、ドローン群の自爆は私達(IS)には効果がない?

『私達の……』

『これまでの労力は……』

『一体……』

 徒労と知った若干名が戦う前から脱落しかける。知ってか知らずか静穂が、

『これだけの量の爆薬なんて、ISの拡張領域に入らないでしょうに』と言った。それが追い打ちとは知らずに。

 これには訳があるのだ。上級生は授業で各企業が如何にしてISコアの“好み”などという不明瞭な概念によって変動する拡張領域の容量・傾向を増やすかという議論で日夜悩み続けているという、前提となる知識があったのだ。対して静穂には競技用、練習機の標準的な領域量しか知らず、それも自己の経験からくる知識程度でしかない。

 明らかに軍用、競技用ISではないと踏んだ上級生達はこれが対IS用対空兵装と頭の中で勝手に認識していた。言ってしまえば素人考えにセミプロが負けた瞬間である。

『でも静穂ちゃん』と重冨。『幾つか拡張領域に入れておいたものを混ぜておくって事もできるんじゃ……』

『…………』

 静穂が押し黙る。

『…………そんなわたしみたいな事しますかね?』

「アンタはやんのかい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……ぎゃあのぎゃあのと騒ぐ通信から、虚は軽く耳を背けつつ独りごちる。

「お嬢様ではありませんが、本当に……」

『虚ちゃん、さりげなく私も軽く見てない?』

 いえいえそんな、と否定する。

 それにしても緊張感がまるでない。先程までと打って変わって騒がしい。

 まるで1年のあの頃、談話室の中にいるようだ。潰し合いも就職難の恐怖もない、ただ友情を信じ切磋琢磨していたあの頃の。

 今の3年が殺伐としているという訳ではない。ただ研ぎ澄まされてしまっている。殊学生時代に於いて必要だけれど無駄な肉がそぎ落とされてしまったかのような、勿論例外も一部いるが。2年に至っては現3年よりも在籍数が少ないという事態に陥っている。それは彼女らの自業自得なのだがそれはまた別の話。

「本当に……」

 ()()()()。自分は今どんな顔をして彼女らを見上げているのだろうか。母親のようだったら改めなければ。未だ恋もしていないというのに。

『虚ちゃんあのね? 言いたい事があるならはっきり言ってね? 私と貴女の仲でしょう違うの? ねえ? 虚ちゃん? おーい?』

「……ふふっ」

 何を勘違いしたのか不安から取り乱し始めた自分の主を宥め、虚は射撃体勢に入る。

(今の出力(ISコア)は一つだけ。充填の時間から見ても撃てるのは後一発だけ)

 いい緊張感だ。外したら()の計画がどうなるかという悪戯心が沸いてくる。その未来を見てみたい気もするが、後の顰蹙と釣り合わせる意味がない。もっとも、敵は外し様のない図体だが。

 合図を待つ。

「大砲の準備は出来た。あと一発よ!」

『シュトロ班ルイス! その一発貰える!?』

『確かにシュトロだと厳しいですかねぇ』と静穂。『布仏先輩、シュトロ班の指示で撃っちゃってください』

「後悔しても知らないわよ」

『しませんよ。外せばわたしが二隻墜とすだけです』

(――言ってくれる)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「布仏先輩はシュトロについた! レダ! 私達はどうする!?」

「テンペスタにつく!」

「根拠は!?」

「その方が早い!!」

 合体ラファール、操縦担当ソフィアと火器担当レダがドローンをローターで斬り潰しながら担当する敵艦の側面につく。

「着いたけどどうするの!?」

「?」

 ソフィアの問いかけにレダは小首を傾げてこう言い切った。

「船って撃ちまくって穴開ければ沈むんじゃないの?」

『!?』ソフィアだけでなくテンペスタの二人も驚愕の声を上げる。

「待って。レダ待って」

『私達ってば中に突入してるのよ!?』

『死んじゃう! ここで機能停止したら死んじゃうです!』

「えー」

 渋々といった具合にレダが不満を表す。

 

 

――だがガトリング砲が空転を始める――

 

 

「ちょっとレダ!?」

『何です!? 通信越しのこの音何です!?』

『レダ聞きなさい!? 私達今中にいるの! 撃てば当たる場所にいるのよ!!』

「テンペスタの先輩方! うまい事避けて下さいよおー!!」

『聞いて人の話!』

『今日はこんなのばっかりですか!?』

「先輩たち逃げてー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……少し彼方で合体ラファールがその猛威を振るっている。その少し前にテンペスタの両名が突入していったから、結果として味方殺しが出来上がりつつあった。

(そりゃあ禁止になるよねぇ……)

 防空担当艦の体積がガリガリと削られていく様を見て静穂は、作っておいて今更だがあれとトーナメントで対戦した者に少し同情する。

(あ、飛び出した)

 合体ラファールの火力で出来た亀裂からテンペスタと所属不明機が我先にと飛び出してくる。防空担当艦が重力に負け始めた。艦のコントロールを放棄する程怖かったらしい。合体ラファールは、というかレダはそれに気づかず銃撃をくり返し、そこからテンペスタ二機による不明機への十文字槍ハエ叩きが決まる。止めた方が良かっただろうか。まあいいか、まずは一隻。

「汀さん! 来たわよ!」

「っ」

 中空で呆けていた訳ではないが、戦場での移動中だのにいきなり呼びつけられて驚く程度には気が緩んでいたらしい。静穂はぺしぺしと頬を張り気を引き締める。

 永富と重冨の打鉄コンビである。永富は静穂の顔を見て安堵したり表情を曇らせたりと忙しい。重冨に至っては、

「こんなになっちゃって……」と涙目で顔の煤を拭ってくる。マニピュレーターの冷たい感触が、今の自分に熱がある事を示唆してくれる。ひんやりとして気持ち良い。

「来たけど、どうすればいいの?」

「――所有権上、わたしがやるべきなんでしょうが、」

 と、静穂は用意していた物を永富に手渡した。

「!」永富が目を見開く。「これ……!」

 それは汀組にとって、トーナメントの終わった今でも時折話題に上がる代物だった。

 あの時自分達の手で静穂のラファールに登録した。()()が原因で静穂の右腕はこの有様となり、だがしかし()()がなければあの死線を越える事は出来なかった、今も金切声を上げて揺れる代物。

 

 

「スミス先輩謹製、対正体不明機用拳銃(アンチ・アンノウン・ピストル)バリアクラッカー。今のわたしじゃあ本当に死んじゃうので、お願いします」

 

 

「これを、私に――?」

「気を付けてください。下手するとわたしみたいになりますよ」

「――無理よ、撃てっこない」

「撃てます」

「なんで――」

()()()()()()()()()()()

 出来る限り力強く言い聞かせる。専用化処理を施した二機分のパワーアシストでなら反動を十分抑え込めるだろうという算段を込めて。

「充填は済んでます、勝って下さい」

 左手一本で永富に握らせ、静穂を抱えたゴーレムにその場を離れさせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もう一隻の防空担当艦が浮上と回頭を試みていた。だが一定以上が上がらず、また曲がろうにもビクともしない。

 空を飛んでいるとはいえこの艦は本来、通常通りの使用方法をされていれば海上を往くものであり、それを今回強引にも空を飛ぶという船にあるまじき暴挙を繰り広げているわけだが、……まあ要するに艦の先端部には碇と、それを艦と結ぶ太い鎖が在る訳で。

 それをシュトロを駆る二名が引きずり出し無事なビルに侵入、その大黒柱に巻きつけていた。

「鉄筋コンクリート造3階建て! 持ち上げられるならやってみろ!!」

「布仏! 撃て!」

 

 

(――これまでの着弾箇所と基本的な艦船の基礎知識から敵IS(コア)の位置を予測。……、っ!)

「――発射!!」

 

 

 対殻狙撃砲(バリアバスター)の一撃がもう一隻の防空担当艦の半ばよりやや後方へ打ち込まれる。

 不可視に近い速度で放たれた砲弾は着弾後に一拍置いて爆発、その爆風が艦体を貫通させた。

 ――それを見上げるメイルシュトロームの、狙撃の為過敏に調整されたハイパーセンサーが爆炎と黒煙と大小様々な破片の中から見つけ出した。

 

 

――人型の破片、目標の所属不明機が投げ出される姿を――

 

 

「見つけた!」

 二機のシュトロが体勢を整える。その姿勢は自然体で反対側へバイオリンを構えるような、誰が見ても優雅と口を揃えるだろう姿勢へと機体の方から身体を持って行ってくれる。

「良いよ、タマミ」

「――良し、撃て」

 単発狙撃銃が二丁、互いの間隙を縫うように交互に引き金を引かれ続ける。

 寸分の狂いもなく所属不明機の身体を撃ち抜き、後から迫る爆炎の中に押し戻した。

 ――これで二隻。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――いよっ、と。ぉお?」

 静穂が自分の担当する艦、電磁パルス(EMP)搭載艦の甲板に降り立った。――と同時にふらつく。

「――ありがと、ゴーレム」

 転ぶ前に後ろからゴーレムの掌が静穂の尻を迎えるように包み座らせる。

『しーぴょんしーぴょん、そこは束さんでしょ?』

「? ゴーレムじゃないんですか?」

『なかなかに真理を突くねしーぴょん。ホントは覚えてるんじゃない?

 ゴーレムは正確に言うとISであってISじゃないのさ。ISには心に似た自意識と無意識を混ぜ合わせたものが標準装備されるようにしてあるんだけど、ゴーレムにはわざとその関連の機能をオミットしてあるんだ。もとよりこのシリーズに人を乗せる予定はなかったからね、この子(ゴーレムⅡ)はちょっと違うIS寄りだけど』

 つまりは常に夢も見ないで眠っているゴーレムⅡを束が外から動かしている、ようなものだろうかと静穂は考える。違う気がするので口には出さない。

 だがそれは今は脇に置いておいて。

「…………どうしよう」

 実は作戦などまるで無かったりする。取り敢えず今居る場所から艦橋を見上げてみる。ちょっとした塔だ。風車に挑むドンキホーテだ。セーフモードのラビットでどうにかなるだろうか。いや無理だろう。左手一本で何が出来る。

「よし。――束さんお願いします!」

『丸投げなのしーぴょん!?』

「だってこの艦隊を何とかしないと箒ちゃんの処に行けないし」

『それを言われると弱いなあ』

 ――しょうがない、と束が、何処からかは知らないがゴーレムⅡを操作。まずは静穂を持ち上げた。

「へっ!?」

 ゴーレムⅡが静穂の尻を持ち上げると、その胸部装甲を解放。予め設計されていた搭乗席に静穂を押し込んだ。

「何、へ、何?」

『ちょっと生身じゃ危ないからね~。しまっちゃおうね~』

「まって束さん待っ」

 静穂が暗くて狭い所はちょっと苦手という事を知ってか知らずか、束の楽しそうな声と共に、静穂はゴーレムⅡの機体内に仕舞われてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んふふふふ」含み笑いを浮かべながら、束は何処とも知れぬ場所、とい言っても旅館の屋根裏だが、とにかく光の入らぬこの空間で空間投影型ディスプレイとコンソールを幾重にも重ね、広げ、ゴーレムⅡを操作する。

 ゴーレムⅡはISではない。いや広義ではISの範疇だが束が重要とする部分をわざと欠損させ、ISのように仕向けている。手慰みとばかりに作り上げたゴーレムシリーズだがなかなかどうして面白い。二機目は今動かしていると楽しいし、一機目はその存在を消失してしまったが、代わりに面白くなりそうなものを見出してくれた。

「んふふふふふ」

 人に使われるなんていつ振りだろうか。頼られるといってもいい。

(本当にいつ振りかな?)

「――何をしている」

 ぬにゃ! と後ろを振り返れば親友が、天窓を押し開いて顔をのぞかせていた。

 その表情をそうそう変える事のない親友だが、いささかその美貌に焦燥を混じらせているように見えるのは、やはり彼女の弟と自分の妹の事があるからだろう。自分にしか判らない程度の表情の変化。やはり互いに親友という図式に変化はないようだ。心境の推察しかり、この場所の発見しかり。

「何かなちーちゃん、今束さんは忙しいのだよ」

「今の状況でか」

「だからさ」

「…………」

「待っててねちーちゃん。プランBはもうすぐだ」

 それだけ言うと束はディスプレイの方に向き直る。

 ……何を言っても無駄と判断したのか、千冬はそっと秘密基地を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゴーレムⅡの巨体が甲板に屹立、闊歩を始める。その巨体にドローンが群がり、自爆。――当然、効果なし。巨体を止めるに至らない。

 やがて艦が、電磁パルス(EMP)搭載艦がその唯一の武装を充電し始めた事に相手取るかの如く、艦橋の真下に到着したゴーレムⅡに変化が生じた。

 巨大なのは腕だけではない。その肩も巨腕を支えるべく相応に大型化しており、肩と腕からテスラコイルに似た部品が幾本も迫り出し唸りを上げ始める。充電だ。

 元はVTシステムの研究所を()()()()()()()()に破壊する為に作ったものだが、それは不発に終わっている。使う機会がやってきたのだと束は思う事にした。

 充電しきれなくなった電力が大気中に小型の稲妻として散り始める。ドローンが感電、誘爆する。

 貯めきった電力を抱えるように両腕を掲げ、

 ――振り下ろした。敵旗艦のレールガン主砲に並ばないまでも轟音を響かせ、電力と膂力が一瞬に凝縮され解放。

 

 

――戦艦が半ばでへし折れた――

 

 

 ……あと一隻。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もはや飛行には何の支障もなく、永富は相方である重冨を連れ旗艦、レールガン搭載戦艦の甲板へと凱旋のように降り立った。周囲を鬱陶しく飛び回って自爆し、こちらの神経を逆撫でしていたドローンは指揮を失い落ちていくのみとなっている。

「――布仏さん。(IS)の予測位置もらえる?」

『今送るわ』

 ――送られてきた情報を基に、永富は()()()()()()()()姿()()()()()()

 狙い撃つ。この拳銃で。

(何が拳銃よ、こんなの!)

 こんなもの拳銃じゃない、大砲だ。その外見とは裏腹にその性能、破壊力を計算するに直撃ではどのようなISも耐えられないだろう。その為甲板から装甲版や構造物越し、予測する位置まで貫通させる()()()にしなければ相手を殺してしまう危険が付きまとう。まさしく所属不明機相手にしか使えない。そしていざ発射体勢となっても銃内部で何かが回転しているのか制動がまるで効かず照準が定まらない。専用化処理で幾分か出力の上がった打鉄のパワーアシストでも御しきれず銃身が暴れ狂い続ける。撃つ前の時点でこれだ、当然、撃った瞬間の反動も一入だろう、打鉄の防御力でも自身を守り切れるか定かでない。

 こんな化け物を静穂は、それも何発も発射し片腕一本だけで済ませて帰ってきたのか。

(やっぱり無理?)

 言ってしまえば逃げ出したい。自分達に何が出来るのかずっと考えていた。守っていた筈の人々から励まされここにいるのだとしても、たった二人で戦艦を、それも旗艦を墜とせと言われるとは思っていなかった。

 その為にと渡された、手の中で酷く震え金切声を上げる大型拳銃(バリアクラッカー)を見る。うるさい。いやそれはハイパーセンサーがあるからどうでもいい。

 大役が過ぎる、と思う。IS学園に在籍しているとはいえただの学生に毛が生えた程度しか成長できなかった自分に、この大役が務まるのだろうかと気が気でなく――

 ――ふと、マニピュレーターを握られる。重冨が、珍しく涙を見せずにこちらを確と見据えていた。

 無言で頷いてくる。――頷き返す。覚悟を決める時で、考える余裕も同様にない。

 二人掛かりで抑え込む。銃身のブレが幾分か収まり、照準が引き絞られていく。

 静穂は二人に任せると言った。二人なら、最初から一人でやろうと考えなければ良かったのだと今になって気付かされる。

 推測される位置に照準が重なった時、永富の迷いは消えていた。

「行くよ重子!」

「うん!」

「――発射!」

 

 

――大型拳銃(バリアクラッカー)の発射した弾芯は反動で永富と重冨を遥か後方に吹き飛ばし邁進した。

 幾層もの装甲版をくりぬくように貫き、それでいて弾道が逸れるような事はなく、目標までの最短距離を反対側、甲板から艦底までをほぼ一直線に駆け抜けて――

 

 

 ――最後の一隻が落ちていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ぷはぁ!」

 何度と小突いて漸く解放された胸部装甲から、静穂は転がり落ちた。

 地上だ。麻酔の切れた身体で尻餅をついて苦悶で呻きながら見渡せば、元は綺麗であったろう街並みが、台風と地震が同時に降りかかったかのように惨憺たる有様だ。たった一度のレールガンを許しただけでこれか、と静穂は後悔の念に苛まれる。

(……いや、それだけじゃないのか)

 目の焦点を遠くにやれば、非現実的光景が広がっている。

 

 

――街に船が突き刺さっていた――

 

 

 数は五。あるものは山の上で、あるものは食い千切られたように、またあるものは半ばからへし折られ直立、それぞれが思い思いの形で座礁したかのように街を潰していた。

 ふと砂利を噛む音が聞こえ、視線を遠くからそちらにやる。

 ――所属不明機だ。瓦礫の上で並び立っている。数は墜とした艦と同じく五、その銘々が決して万全ではなく、一人は仲間に小脇で担がれている。自分が痛めつけた奴だろうか。

(…………)

 語るでもなく睨み合う。いつまでそうしていたか、ほんの十秒にも満たない程度の時間の後、

「頭ーっ!!」

 合体ラファールが、メイルシュトロームが、打鉄が、テンペスタが次から次に舞い降りる。

 左手を上げ指示を出す。「発砲用意」

 対する不明機群も反応、中央の一体が右足を引くと同時、その周囲に白煙が撒き散らされる。

「!」腕を振り下す。「()ぇっ!」

 汀組が即応しそれぞれの武装を発砲。一頻り撃った後に、「――もういいです。止めて下さい」

 ――発砲が終わり、合体ラファールのサイドバイサイドローターに煙を晴らさせる。

 当然、不明機群の姿はない。

「逃げられた!」合体ラファール、レダが叫ぶ。

「どうする、汀さん」との永富の問いかけに静穂は、

「……もういいでしょう」とだけ言ってため息をついた。

 連中の目論見(もくろみ)は潰した。艦が一隻でも残っていればまだしも、たった五機、それも一人は完全に打ち倒された状態で学園は攻められまい。学園にはISが大量に残っているし、更には専用機持ちのケイシーとサファイアもいる。量と質がある以上、手負いの五機でこれを崩す事は叶わない。

(疲れた……)

 限界と共にへたり込む。それに反応して汀組と後からやってきた生徒会の二人も慌てだすがもうそんなものどうでもいい。

 疲れた。寝たい。忘れたい。腕の事も箒の事も、待ち受ける事後処理も忘れ、ごはんを食べて熱いシャワーを浴びて人心地つき、泥のように明後日まで眠りたい。

「――――で、」しかしそうもいかず鵜名山が一言、「このデカブツはどう説明する訳?」

『…………』全員の無言。

「……あー、うー」何とはなしに言葉につまる。静穂は顔を上げ、「束さぁん」

 ――呼んでみるも応答はなし。静穂以外とは話さないようだ。

(人見知りかな?)

 ただその代わりゴーレムⅡの胸部装甲が再度開く。無言で搭乗を強要してくる。

「……あー、うー」

 よっこいしょ、と立ち上がり、「じゃあ行かなきゃ」

「待って! 行くってどこに!?」

()()()を返しに行かないと」

「……本当に借り物だったの?」と虚。

「そこまで嘘つきじゃないです」人をなんだと思っているのか。

 立ちふさがるルイスを押しのけゴーレムⅡへ。

「静穂くん!」楯無だけでなく全員が静穂を呼ぶ。

「だから統一、……もういいです」えっちらおっちらとゴーレムの中に。「更識先輩。後はお願いします」

 胸部装甲が閉まり皆の心配する声もよそに、ゴーレムⅡは発進した。

 

 

 ――ゴーレムの中で静穂は、なんだか眠くなってきていた。疲れからかもしれないが、ディスプレイの光が間接照明のように見えて落ち着き、微かな振動が心地良さを覚えさせる。それと何かいい香りがする。

『えー本日はゴーレム航空をご利用いただき――、めんどくさいな。お疲れしーぴょん!』

「やるなら最後までやりましょうよ」

 まあまあ、と言う束の声色は機嫌が良さそうだ。

『これでようやく箒ちゃんの所に行けるしグレイ・ラビットを弄れるんだ。気分が良いのは当然さ!』

「弄るんですか」

『そりゃあね。弄らないといつまでも壊れたままだよ?』

 それもそうか、と静穂は思う。――だが、

「――どう弄るんです?」と呑み込んだ。

『んー、ラビットの記憶はそのまま別でバックアップを取って、しーぴょんの方は初期化せずに最適化だね』

「トーナメントの時の練習機、みたいな?」

 段々と船を漕ぎ、瞼が開かなくなってくる。

『バックアップはこっちで保管してあげよう。しーぴょんはそのままでいいよ。きっと面白くなるぞお間違いない!』

「……いいんですかねぇ」

『――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?』

「大切、と、いうか……」

 抵抗がある。愛すべき義姉の思い出と、グレイ・ラビットの()()。それらを自らの糧としてしまっていいのだろうか。

 極上の飾り付け(デコレーション)を施されたケーキを前にして尻込みしているような気分というか。ここでがっついてはいけないという見栄があるというか。

 違う、そうじゃない。結局はこれ以上故人を自分の礎にしたくないというだけの我が儘だ。

「嫌なんです、もう、誰かを踏み台にする、生きていたいけれど、そこまでじゃなくて、なんだろう、目が、開かない」

『踏み台なんかじゃない。ラビットはラビット。そして()()()()()()()()()()()()。しーぴょんはそのままで変わらないよ』

「すいません、もう、眠くて……」

『こっちまで時間はある。ゆっくり休むといいよ、しーぴょん』

 ゴーレムⅡの機体内で揺られ、歌のような声で諭され、静穂は完全に糸が切れてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 寝息と共に、何色とも知れぬ鱗粉のような光が唇から洩れる。ISコア(ラビット)()()に反応し、その薬物を体外へ押し出そうとしていた。

『……効くまで時間かかったなあ』悪びれる様子もなく、束は告げる。「おやすみしーぴょん。今の君は、一体どんな夢を見るのかな?」




 IS11巻が4月25日発売とのこと。
 エクスカリバーなる人の推測も個人的にしてますが、外れたら恥ずかしいので黙っておきます。だったら書くなって話ですが。

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