助けて旧神様!(旧題クラインの壺ナウ)   作:VISP

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Dies irae全ルートクリア記念!

リクエストはもう少し待ってください!(土下座


番外編5 Dies irae 嘘予告 修正&後書きにお知らせ

 神座世界。

 それは神座と呼ばれる世界の、事象の中核に座する神、その理念を世界に流れ出させる場所。

 それを中核とした宇宙。

 そこに唯一坐する者として、第四天「永劫回帰」は存在していた。

 その意識は通常は地球上に存在する触覚、つまり派遣している自身の分身、そして自身の歌劇の参加者へと向けられている。

 

 だがしかし、時には例外も発生する。

 

 もしもそれによって致命的な事態が発生した場合、永劫回帰によって問題が発生する前にまで遡り、その原因を入念に排除する。

 それで始末はつく。

 事実、ここまでずっとそうしてきた。

 例外と言えば、回帰の起点となる黄金の獣による座への侵攻だが、それは彼らの約定であり、自滅因子であり、友情でもある。

 水銀の蛇にとって、それは既に既定路線であり、今更黄金の獣を誕生前から始末しても何の意味も無い。

 

 故に、今回の問題は完全に外部からものに他ならない。

 

 空間に激震が走った。

 通常の大地震とすら比較にならぬ程の、超巨大な震動と衝撃が、空間そのものを軋ませる。

 結果、座の存在するこの位相にすら罅が入り、光すら刺さない深淵が発生する。

 だが、第四天は動じない。

 そんな自分でも起こせる事象より、その原因となった者こそ興味深い。

 この宇宙の外より来たる者、それは彼にとって完全なる未知の一つ。

 彼の愛する女神を除けば、最も狂おしい程に焦がれるもの。

 だからこそ、その視線はこの事態が始まってから、一カ所しか見えていない。

 縦横無尽に亀裂が入り乱れ、ガラスの割れる様な甲高い音と共に空間が割られた。

 その瞬間、ソレはこの宇宙に流れ着いた。

 

 ソレは刃金だった。

 

 全長2km、否、本来ならば5kmも超えるだろう、巨大な機神。

 墨を流した様な漆黒の装甲に、碧色の長髪を持った、機械の神様。

 文字通りの機械仕掛けの神、デウス・エクス・マキナ。

 しかし、本来なら神々しさすら感じられるソレは全身を夥しい程の傷に覆われ、その右腕と左顔面、そして下半身を完全に消失し、その断面から臓物の様な内部構造が見て取れた。

 

 「これはこれは…。随分とまた、変わったお客様だ。」

 

 老人の様な、若人の様な、女の様な、男の様な、嘲る様な、称える様な、諭す様な、乞う様な…混沌とした声音で、座の主が声を発した。

 

 「本来ならば、この場所は我が女神だけの場所。それ以外は皆悉く排除するのだが…折角得た未知なのだ。利用せぬ手はあるまい。」

 

 その視線は機神の中に溶け込んだ、1人と一冊へと向けられていた。

 

 「まぁ、役に立たぬのならそれもまた一興。私に歯向かうも、流されるも、従うも自由。我が歌劇にて踊るが良い。千の無貌、這い寄る混沌よ。」

 

 「無論、劇に合わせて仕込みはするが、これは致し方無し。許したまえよ。」

 

 こうして、幾星霜と戦い続ける魔を断つ混沌は意識がないままに、またもや永劫に続く繰り返しへと組み込まれる事となった。

 

 

 

シリアス版プロローグ End

 

以下、スタート時の設定を選択してください。

・月之澤学園1年生(日本人)

・主人公勢のアパートの管理人(日本人)

・フリーランスの魔導師(米国人)

・元国防軍所属の魔人(独逸人)

 

なお、全ルートにおいて、初期は魔道書&記憶無しです。

 

追記、流れ着いたデモンベイン・カオスじゃ軍神仕様です。

 

 ………………………………………………

 

 

 

 神座世界。

 それは神座と呼ばれる世界の、事象の中核に座する神、その理念を世界に流れ出させる場所。

 それを中核とした宇宙。

 そこに唯一坐する者として、第五天「黄昏の女神」は存在していた。

 その意識は常に地球上に存在する全ての命に向けられ、死した者の魂は彼女の元へ一度贈られた後に、何時か全ての人間が幸福=渇望に辿り着けるように願われながら輪廻転生を繰り返す。

 ただ一人、先代の第四天を除いて。

 

 だがしかし、彼女の理だって例外はあったりする。

 

 その日、彼女は仕事以外の日課である地球のとある少年とその愉快な仲間達の観察をしていた。

 嘗て己の半身であり、唯一無二の相棒であった少年。

 最終的に貧乳系毒舌銀髪先輩に走った彼であるが、それでも女神は確かに彼を愛している。

 

 「あはは、香純ったらまた蓮に八つ当たりしてる~。」

 

 天然系巨乳金髪の女神様は、今日も下界を見守っている。

 しかし、そんな日常は唐突に崩れた。

 

 空間に激震が走った。

 だが、他者に害意を持つ事が殆ど無い彼女故に、それが起こっても警戒心よりも先に混乱が先立つ。

 慌てるだけで、彼女は何も…

 

 「か、カリオストロー!」

 「下がっていてくれたまえ、女神よ。ちと厄介な客人の様だ。」

 

 出来なかった訳ではなかった。

 めっちゃ他力本願だが、彼女はちゃんと助けを呼ぶ事が出来た。

 …と言うか、コイツ、出待ちしてやがったのか?

 

 「失敬な。私は常に女神を気にかけているとも。」

 

 つまり盗撮してたのね、流石だよ、うん。

 そして、激震していた空間が遂に限界を迎え、罅割れていく。

 その亀裂の先には光さえ存在しない暗黒であり、この世ならざる法則が渦を巻いて存在している。

 故にそこから来るものは、この世ならざるものに他ならない。

 

 ソレはドラム艦だった。

 

 全長3kmは超えるだろう、巨大なドラム艦。

 緑色に塗装され、各所にアームや砲が設置された、円筒形の巨大な機械。

 それは内部に地球上と全く同じ居住区画を内包した、文字通りの機械仕掛けの方舟。

 しかし、本来なら感嘆の溜息すら出る機能美と技術力の塊たるソレは、今や見る影もない程に傷付いていた。

 

 「ねぇねぇカリオストロ!あれってコ○ニーでしょ!?蓮の部屋のテレビで見たよ!」

 「ははは、正確には違うのだろうが、その機能もあるようだ。いや、まさかこんな未知に遭遇する日が来ようとはね。いやはや、この場で無ければとても幸運な事だったのだがね、うむ。」

 

 嘗て3柱の覇道神が争い、最終的に黄昏の女神が治めているこの神座世界。

 もし相手が悪意ある者、否、そうでなくても女神に害成す存在であれば、この世界にどれ程の悪影響が出るか解ったものではない。

 最悪、もう一度第四天が座につけば永劫回帰でリセットできるとは言え、それは可能な限り採りたくない。

 

 「で、どうするんだメルクリウス。」

 「卿なら何か考えがあると思うが…先ずは情報だな。」

 「あ、蓮にハイドリヒ。」

 

 メルクリウスに遅れる形で、残りの覇道神2柱が姿を現す。

 見た目こそ若く美しいが、見る者が見れば旧支配者ばりの神格に絶句する事だろう。

 そんな存在がこの場に既に4柱いるのだ。

 一度戦闘が開始すれば、それだけで空間がガラスの様にも呆気無く粉砕されてしまうだろう。

 

 そして4柱の視線が集中する中、遂にドラム艦のハッチが開…

 

 「ぬぉう!? 着地の衝撃でハッチが歪んで開かないのであーる!?」

 「博士―、外は一応大気があるみたいだけど念のためにスーツを付けた方が良いロボー。」

 

 かなかった。

 ぎぎぎぎ…と金属同士がすれ合う音がするだけでハッチは開かず、僅かに開いた隙間から中の人の声が漏れ出ていた。

 

 「「「………。」」」

 「ね、カリオストロ。手伝ってあげようよ。」

 

 男衆3柱がちょっと目を丸くする傍ら、女神様は相も変わらず平常運転で慈愛溢れていた。

 そんな感じで覇道神達が態度を決めかねる事数秒の後、今度こそドアが開いた。

 

 「でぇーいこんな時こそエェェェェェルザ!出番なのであーる!」

 「ロボロボロボォ!」

 

 ただし、打撃音と共に吹っ飛んできたドアと共に。

 

 「きゃっ!」

 「ッ!」

 

 女神の傍を掠める様にして飛んでいったドアは、その直ぐ傍にいた永遠の刹那こと蓮目掛けて飛んだ。

 が、彼とて伊達に覇道神なんてやっていない。

 あっさりとドアを微塵になるまで切り裂き、無力化する。

 

 「随分な挨拶だな、おい!」

 

 彼が剣呑な視線を向ける先、内部からモクモクと煙を吐き出す出入口から、遂に人間が出てきた。

 アホ毛の目立つ緑の髪、纏った白衣、そして真っ赤なギターを掻き鳴らしながら、ソイツは姿を現した。

 

 「レディスアァァァァァァァァァァンジェントルメェェェェェェェェンッ!!遂にやってきました新たな世界!魂が収束し、そしてまた世界へと旅立つターミナル!仮説を実証するため、世界の壁を突き破り!我輩の研究は次元の壁を超え、宇宙の真理にまた一歩近づいた!そう、真理とはまるで太陽!未だ人類に計り知れないソレに向かって、我輩は羽ばたくのであーる!…ってあれ?何だか翼が融けてる様な…。」

 「哀れ博士は墜落死。泣き崩れるエルザにダーリンが涙を止めるためにその胸にきつく抱き締めて…。」

 「あのロリコンに限ってそれだけは有り得ないのであ~る。」

 「ローボロボロボロボロボ!」

 「ぶひゃーひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」

 

 (あ、これがキ○○イって奴なんだ。)

 

 この中で恐らく最も常識的な思考を有する蓮は初めて遭遇する父親とその親友の愉快な部下達とは全く異なるベクトルの狂人というものを初めて前にして、完全に絶句していた。

 

 「ふむ、察するに卿らは科学の探求の徒か。一体此処に何用かな?」

 「おぅん? 誰であるか、この大導師のそっくりさんは?」

 「容姿以前に、雰囲気がとっても似てるロボー。」

 

 マジマジとハイドリヒ卿を見つめるキ○○イとロボ娘。

 もしハイドリヒ卿の部下達、特に忠誠心の高い面々が聞いたら、即効で殺しにかかる程の無礼をかますキ○○イ。

 と言うか、仮にも元上司=マスターテリオンのそっくりさん相手によくそんな態度を取れるものである。

 

 「私によく似た者というのは気になるが…先ずは名乗ろう。私の名前はラインハルト・トリスタン・オイゲン・ハイドリヒ。ドイツ第三帝国、ゲシュタポの長官であった身だ。今は此処で守り役などをしている。」

 「おおう、これはご丁寧に。」

 「挨拶は大事ロボ!」

 

 先程とは打って変わって割と普通に挨拶するキ○○イコンビ、ラインハルトはそんな彼らにあくまで紳士的な対応を崩さずに対応し続ける。

 直情傾向の蓮、天然のマリィ、そして何故か会う人会う人に生理的不快感を植え付けるメルクリウス。

 常識的な思考もあり、狂人の相手にも慣れていて、優秀なラインハルトこそがこの場では適任だった。

 

 「それよりも、卿らは何者で、何をしにここへ現れたのか聞かせて欲しい。我らはそこの女神殿の守り役故、それが解らなければ、我々も歓迎すべき決めかねてしまうのだよ。」

 

 全く身動ぎもせぬまま、覇道神からの圧力が激化した。

 全くの無風から大型台風のそれへの変化。

 常人ならあっと言う間に魂を砕かれるそれに、しかし、ドクターウェストは怯まない。

 何気に最高位の魔人であり、邪神の落とし仔相手に喧嘩売ったり、とある世界では彼の背徳の獣との実戦経験もある男。

 今更気押される事など、このキ○○イに限って有り得ない。

 

 「聞かれたからには答えるのが流儀なのである!我輩の名はドクタァァァァァァウェェェェェェェェストッ!真理の探究のため、三千世界を飛び回る科学の申し子とは我輩の事!今回の目的は先程言った我輩の仮説を実証するためであーる。そこな天然系金髪巨乳ガールがそれらしい事が解ったのであるが…生憎と我輩、魔術よりも物理科学の方が好きだし、何より人様を弄くるのはもう二度としないと誓っている身。今回はこれで満足なのである!」

 「ふむ、どうやら真の様だ。カール、刹那よ。もう警戒せずとも良いぞ。」

 「…みたいだな。」

 

 そこで漸く蓮が右手を下げた。

 神格でもない相手に随分な警戒のしようだが、ここは戦闘力の殆ど無いマリィの座。

 無警戒である事こそが間違いだろう。

 

 「いやはや、まさか魔道ではなく科学の徒がこの場に来るとは私を以てしても予測できなかった。自身の不明に汗顔の至りだが、それ以上に君の磨き上げた叡智にこそ賛辞を送ろう、ドクター・ウェスト。恐らく三千世界のどの時間軸を見渡しても、知識で以てこの領域に到達できる者等10とおらぬだろう。端的に言って有り得んよ、お前は。」

 

 そして、水銀は余りの未知に大絶賛した。

 そう、彼の目の前のこのキ○○イは得意とする分野においては自身に勝る知識を持つと認めたのだ。

 はっきり言って極めて珍しい事態だった。

 

 「げーひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!我輩の辞書に不可能の文字は無いのであーる!たーだ無理とか無謀とか無茶とかしっかり表記されてあるからにして、決して通じないという意味でないのである。」

 「それ、はっきり言って辞書が壊れてるだけロボ。」

 「まぁ我輩としては知るべき所は知れたので帰るべきなのであるが…生憎と、我輩の破壊ロボが此処に来る途中に壊れてしまったのであ-る…。これを修理せん事にはマイホームに帰れないのであーる…。」

 

 ドクター達が乗ってきた全長3kmを超えるドラム艦は未だにモクモクと黒煙を吐いており、明らかに行動不能だった。

 もし下手に動かしたら、最悪の場合は爆散すら在り得るだろう。

 

 「じゃぁ暫く此処にいれば良いよ!」

 

 そこで、黄昏の女神様が慈愛溢れる意見を出した。

 

 「えーと…。」

 

 蓮は固まった。

 マリィの傍にこんなキ○○イを置く?

 有り得ない(0.0001秒)。

 故に何とか彼は彼女を翻意させようと無い知恵を絞った。

 

 「いや、でもさ? 此処って修理に使えそうな材料とか何も無いし、メルクリウスは兎も角、オレ達じゃ雑用位しか手伝えないし、どっか地球の他の場所とか良いと思うんだけど。」

 「む~。」

 「いや、そんな唸られても…。」

 

 不満そうに唸るマリィに困った、と汗を流す蓮。

 が、彼も教育上悪いと思ったのか、遂にこの場で一番の知恵者であるニートが働いた。

 

 「ふむ、であれば城に案内しよう。あの場所なら余程の事でも無ければ被害もあるまい。それに、多少の資材はあるだろう。宜しいかな、ハイドリヒ?」

 「是非も無い。騎士達も皆暇を持て余しているしな。多少の刺激は必要だろう。」

 (多少?)

 

 トントン拍子に進んでいく話に、蓮だけは言い知れぬ悪寒を感じるのだった。

 

 「?」

 

 蓮がうんうん唸っている様を、黄昏の女神が不思議そうに見つめていた。

 

 後日、彼の予感は的中する事となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「蓮。」

 「どうした、マリィ?」

 「ドリルって…すごいね…。」

 「メルクリウスー!! マリィが、マリィが汚染されたー!?」

 

 

 

 

 

 

 「なぁ…これ、どうすんの?」

 「キ○○イの回収だけかと思ったら…まさかの神座世界シリーズとか…。」

 「ニートに情報だけ渡して帰る?」

 「…最悪、旧神殿にお出で願おう、うん。」

 

 




Fate第0話見たー。

流石UFOタブル。凄まじい画力だ。



追記 活動報告で今後の執筆予定作品に関してアンケート取りますので、奮ってご参加ください。
期限は一週間を予定しています。



10月11日修正

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