Golden Arrow   作:ibura

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約束

「おまたせ、テル」

「ロビィはなんだって?」

「ギャーギャーうるさかったから伝えることだけ伝えて電話切ってきたよ」

 

ロビィは可哀想だと輝也は最近思うようになってきた。

 

「それで、今日はどうしたんだ?」

「そんなに大した話じゃないんだけどさ、レオから見て今の日本サッカーはどう思う?」

 

輝也が一度ブラジルの至宝に聞いてみたいと思っていたこどだ。

 

「発展途中、としか言えないかな」

「やっぱりそう見えるよなぁ」

「いくらテルが世界でもトップレベルのフォワードでも、サッカーは1人では勝てない。せめて……」

「傑がいれば、か」

 

傑の死は、輝也とレオにも大きな衝撃をもたらした。

輝也もレオも海外にいたので、葬儀に出席することはできなかったため、輝也が一時帰国する際にレオとともに、墓参り行った。

輝也は、自分と傑がいればワールドカップで優勝するのも夢ではないと考えていた。

しかし、傑は事故によりこの世を去ってしまった。傑の死は日本サッカーにおいて大きな損失になっただろう。

 

「テルとスグルがいればワールドカップでの優勝も夢じゃない。

 ジュニアユースチャンピオンのブラジルに勝ったことがそれを証明していたよ」

「俺も傑もあの一勝で自信が持てたからな」

 

傑がいなくなって、傑の分も自分がやらなければと思った輝也は、今までイギリスで世界レベルの環境でプレイしてきた。

しかし、輝也は傑とのある”約束”を忘れていた。

 

「俺さ、傑に言われたことがあるんだ」

 

 

 

傑が事故に遭う1週間ほど前、傑から電話がかかってきた。

傑は以前から、よく夢を見てうなされるということを聞いていた。

輝也はカウンセラーの峰先生を紹介したが、あまり改善されなかったようだ。

それに加えて、弟の駆との関係でも悩んでいた。

駆とは小学生の時に、一緒にプレイしていたこともあり、輝也からしても弟のような存在だった。

傑は昔から駆に期待していた。周りから見たら完全なブラコンである(それを本人に言ったら怒られる)

そんな駆が自分も所属している中学の部活で、プレーヤーとしてではなくマネージャーとして活動をしていることも相談されたことがある。

駆は夜の公園で1人で練習をしているので、サッカーをやめてわけではないらしいが駆に期待していた傑としては複雑なのだろうと輝也は感じた。

そしてあの日の電話の最後に、傑が輝也にあることを言った。

 

”俺がダメになったら、

 

 

 

 

 

 

……日本のサッカーを頼む”

 

輝也は分かったと言って電話を切った。

結局それは、輝也が傑と交わした最後の会話となってしまった。

 

 

 

 

「それは初耳だね」

「当たり前だろ、誰にも言ったことないんだから」

 

このことを話したのは今、レオが初めてである。

 

「なぁレオ、俺は日本に帰るべきなんかな…」

 

蹴球学園からのオファーが届く前からずっと悩んでいたことだ。

このままイギリスでサッカーを続けるか、一度日本に帰りサッカーをするか。

 

「……僕は日本人じゃないから分からないね。そればっかりはテルが自分で考えないといけないよ」

「だよなー…」

 

予想していた通りの答えだった。

 

「でも…、僕は蹴球学園のオファーを受けるのもありだと思っているよ」

「それは、大金積まれたからか?」

「違う違う。さっきは発展途中といったけど、日本サッカーが最近レベルを上げてきてるのは確かだよ。そんな日本の中のトップレベルの選手を集めるらしいしね。そこに興味がないと言ったら嘘になるよ」

 

蹴球学園からのオファーの中で書類に書いてあったことで、輝也やレオといった世界レベルの選手を入れることに加えて、全国の中でも年代別代表に呼ばれるような選手を何人も集めて、さらにレベルアップを目指すらしい。輝也が知っている人も何人か入っていた。

 

イギリス(ここ)で考えても答えがでないんっだら、一度帰って考えるのもいいかもね」

「まぁそうかもな」

 

結局答えは出ないまま駆の試合を見に行くことにした。

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

 

1週間後、輝也と亜理紗は日本のある墓地に来ていた。

 

「あれが傑さんの弟君?」

「そーだな、んで隣にいるのがリトルウィッチだな」

「美島奈々だよねー?」

「そっか、亜理紗は面識あったな」

「まーねー♪  でもいいの?駆君に声をかけなくて」

「試合終わってからだな」

「ふーん。あ、レオは話終わったみたい」

 

駆と奈々と話していたレオがこちらに近づいてくるのが分かった。

その顔は笑っていた。

 

「面白いやつだろ、駆は」

「本当にね、この僕に自分の試合を見に来いって言ってきたよ」

「それは俺の予想以上だな」

「日本に来てよかったねー」

3人で笑うのだった。

 

 

 

 

試合開始前「先に席を取っとくヨ」といったレオを輝也と亜理紗が探していた。

 

「どこいったーレオのやつ」

「あ、いたよ」

「あんなとこに…って、なんであいつ駆の真後ろに座ってんだよ」

「どーする輝?てか駆君はベンチ入ってないじゃん」

「奈々が勝手にって言ってたから監督すら知らないんだろ」

「なるほどねー、でもそれで試合出れるの?」

「それは知らねーよ。駆が自力で何とかするしかない。

 でも、レオにあんなこと言ったんだからまー出てくるだろ」

「出なかったら日本まで来た意味ないからねー」

「まーな、とりあえずちょっと離れたところに座っておこーぜ」

「そだね」

 

試合は駆のチームの劣勢のまま0-2で後半に入っていた。

 

「駆君のチームの2トップは駄目ね、あれじゃ満足にボールをもらうこともできない」

「トップ下の11番はそこそこやるけどパスの出しどころがなければ何もできないし、傑でも無理だろうな」

「だから騎士が必要なのね。輝がピッチにいたら状況は変わってる?」

「俺がいたら、前半で試合は決まってるだろーな。

 でもあの11番はトップ下じゃなくてボランチが向いていると思う」

「あ、それは私も思った。運動量も多いし視野も広い彼はボランチにあってる選手なのよね」

「敵の攻撃の芽をつんで、すぐさま自分達の攻撃の起点になることができる」

「でも今の状況じゃ、彼がボランチに下がったところでどうしようもないよね」

「今の二人とは違ったフォワードが必要だな。

 傑から聞いてた話だと駆のようなタイプが必要なんだけど…」

「ハーフタイムでベンチが何かもめてたいたいだけど結局駆君はまだスタンドだしね」

「そうなんだよな…」

二人でスタンドにいる駆を見るが駆は座ったままだ。

その後ろにレオが座っているが、女子と話していてあてにならない。

(レオはなにしてんだよ……、てか駆…そのタオルはなんだ……)

「ねぇ輝、さっきから11番君のパスミス多くない」

「確かに多いな、俺なら取れるけどあの2トップには無理だろうな」

「あ、変な髪形のサイドバックもミスした、…あのフォワードめっちゃ怒ってる」

「二人とも駆を見てるな………なるほど」

二人のやろうとしていることが分かり、少し関心してしまった。

「なになに?あの二人は何しようとしてるの?」

「なかなか面白いよ。あの二人はスタンドの駆を引きずり出そうとしてるんだ、あ、やばい追加点だ」

 

 

話しているうちに3点目を奪われてしまった。

 

「0-3か…敵はさらに守備を固めてくるだろうな」

「さらに状況が悪くなったわね、駆君の出番はあるのかしら」

「本人次第だろうな」

輝也が駆に声をかけるか悩んでいると急に駆が立ち上がり走って行った。

「あれ、駆君どっかいっちゃった。もしかして逃げた?」

「いや……」

 

しかし、輝也は駆の決意したような顔を見逃さなかった。

「とりあえずレオのところに行ってみようぜ」

「そうね」

 

輝也と亜理紗はレオの隣に移動した。

 

 

「あれ、二人ともどこに行っていたんだい?」

「ちょっと離れたところから見てたよ。なんでレオは駆の真後ろに座るんだよ」

「面白そうだったし、実際面白いこと聞けたし。」

 

二人してニヤけるのを見て隣の亜理紗が少し引いている。

 

「駆は腹くくったみたいだな」

「面白くしてくれそうだよ」

「ちょっと二人だけで話進めないでよ」

「そうだそうだ」

「ロビィは黙ってって」

ロビィは本当に黙ってしまった。

「見てたら分かるぜ(ドンマイロビィ…)」

 

ということでレオとロビィも一緒に4人で観戦することになった。

(ロビィは拗ねて黙ってるけど…)

試合は駆が入ったことでチャンスが生まれようとしていた。

 

「駆君が左サイドに流れてるわね」

「あのままクロスをあげたらマーカーにとられて手詰まりじゃないのか?」

(ロビィ……久しぶりに喋ったけど、それはないよ)

「スペースならあるさ、そうだろ、テル」

「まーな、亜理紗にも見えるだろ?ピッチに広がっているスペースが」

「うん♪」

「……俺だけ仲間はずれかよ」

またもロビィは拗ねてしまった。

「あとはピッチにいる騎士ないとが気づくかだな」

「おいおいテル、彼を騎士と決めていいのかい?」

「それはこの試合の出来によるかな」

 

その後駆は2点を決めて試合を1点差に縮めた。

しかし、時間はアディショナルタイムに入っていた。

 

「さっきのシステムチェンジといい今の指示といい、あの監督さん結構やるな」

「そうだね、僕たちの考えていたことを指示したのは大したことだと思うよ」

「駆君も2点決めたしねー」

と話していたら駆のトラップが少し大きくなった

 

 

 

 

 

――――――と普通の人は思うだろう

 

「トラップミスだ、点は取れても足元のテクニックがあれじゃな」

「あんたの目は節穴かい、ロビィ」

「ロビィ、そりゃないぜ」

「ロビィだめだめじゃん」

 

3人にダメだしされたロビィは今度こそいじけてしまった。

 

「あの駆の”ラン ウィズ ザ ボール”は俺が教えたんだよ」

「輝が人に教えるって珍しいねー」

「僕も何度かやられたことがあるよ、テルのあれには」

ロビィはもう心ここにあらずといった状態だ。

「まぁ、なんにしても駆が入ったことでチームの動きがよくなったな。」

「サッカーはたった1人の選手交代で流れが大きく変わるものだ。

 それが僕やテルのような選手ならなおさらね」

「……傑もそうだったな」

「そうだね」

 

試合はそのまま進みアディショナルタイムも残りわずかになった時、駆がボールをもったときにそれは起こった。

(?…駆?)

ボールを受けた駆はドリブルを開始した。

(あいつにあんなドリブルできたっけか!?)

駆はそのままドリブルで相手選手をかわしてゴールに向かっている。

亜理紗も驚き、レオは立ち上がっている。

そのまま、キーパーもかわして同点シュートをはなったが、すでに試合は終わっていてノーゴールとなった。

 

「驚いたな、今のドリブル突破はまるで…、いやまぐれだろ」

 

ロビィが言いかけたことはその場の全員が感じていた。

 

(あれは…、あの足元に吸い付くようなドリブルは、傑のドリブルだ)

「日本に用事ができたな」

「……そうだな」

「答えは出たのか?」

 

 

「あぁ出たさ、俺は日本でやる」

「オファーを受けるのかい?」

「それは分からない。他にも高校はたくさんあるしな。

 でも、レオと同じところには行きたくないな」

「どうしてだい?」

「俺とレオが同じチームになったら、もうチートだろ」

「確かに2人が一緒になったら勝てるチームなさそうだよね。

 でも私は2人が一緒にプレイするところも見てみたいと思うけどなー」

「サッカーを続けていたらそのうち、実現するだろう」

「…そうだな」

 

3人はこの後同じような言葉を駆が言うとは思ってもみなかった。

 

 

 

 

 

 

「え、レオ…お前日本で…やるのか」

「うっさい、ロビィ!!今良い雰囲気なんだから」

「いや、しかし…」

 

ロビィの不幸は続いていく。

 

 

 




感想まってます!!

主人公はとりあえず、駆達が入学する前に江ノ高に転入して、選手権から試合出場する予定です。

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