あぁ神様、お願いします   作:猫毛布

9 / 113
08 大言壮語を吐き捨てる化け物

‐前回のあらすじ!

‐世界を救うために戦うマジカル☆ヤガミン!

‐しかし、悪の居城にパートナーであるミー君が捕まってしまった!

‐どうしようミー君がいないと、私戦えないよ!

‐果たしてミー君はどうなってしまうのか!

‐次回!新パートナー!?黒くて固くて太いアレ!

‐完!

 

 

‐あらすじで終わったよ

‐なんという

カット。現実逃避はやめよう。

目の前にいるのは胸元の開いた黒髪の女性。葡萄色の紅が薄く塗られている。

‐不健康そうに見えるのは病的に白い肌のせいか

‐はたまた口紅のせいか

‐どこか疲れてるところじゃね?

 

「あなた…何?」

「一応人型なんだから、何者?とか誰?とかの方がいいんだけど?スーツを着た時計ウサギでも色で輪切りされた猫でもトランプの兵隊にでも見えるのか?」

「いいから答えなさい!」

 

叫びと同時に腕が振るわれる。

‐左から鞭

‐捕獲可能

左腕で鞭を抑え、絡め取る。

 

「まったく、危ないな」

「左腕がそんなモノに侵された人間なんて、誰じゃなくて、何で十分よ」

「至極真っ当な答えをどうも、マダム」

 

普通の人間なら鞭を掴む事は可能だが、絡め取るまでは無理だ。

 

「ではお望み通り自己紹介を。私、御覧の通り左腕が触手で侵された、カテゴリー【化け物】でございます。ここへはとある事情で参上したしだいにございます」

 

右手を腹部にあて深々と礼をする。

左腕では赤黒い触手達が鞭に絡み、蠢いている。

‐我ながら気持ち悪い

カット。

 

「……その化け物が、ここに何用かしら?」

「ここにいるだろう金髪の娘を助けに」

「フェイトをどうするつもり?!」

「名前はご存知でしたか。話は早い」

 

鞭を伝い触手達が女性を縛り上げる。

‐こう!グルグル巻きじゃなくて各所を強調してるのが最高だね!

‐まだ力はそんなに入れてないけどな

‐広域魔法で本体叩かれたらアウトだし、サクサク脅しますよ

 

「フェイトはどこだ?」

「あの娘は私の娘よ?渡すわけないじゃない」

「なんだ、評判の悪い母親だったか。尚更力を込めたくなったよ」

「評判が、悪いですって?」

「ああ」

 

なんか落ち込みだしたんだけど。

こう暗い空気が彼女を覆ってるんだけど。

聴いてた人物像と違うんだけど?

 

「えっと…」

「いいわよ…どうせ当たりがキツかったのは理解してるし…私をわかってくれるのはアリシアだけなのよ、そうよ、そうに違いない」

 

独り言をある程度終わったのか、持ち直したように此方を睨み付ける。

‐なんかボソボソ言ってたけど触手に感覚あるから全部聞こえてるっていう

‐もうなんか怖い

‐非常に幸せな感触は楽しめてるからいいか

‐女体って、不思議と気持ちいいよな

 

「あー…大丈夫か?」

「あなた…あの娘とどんな関係?場合によっては殺すわ」

「ただの夕食を共にした程度の仲だ」

 

‐故に大切…とは言えないが

‐さすがに何日も繰り返してれば大切とも言えるか

‐惚れ薬でも盛られてたか?

カット。

そんな事あり得るわけがない。

‐断定とか

‐愚策だ

 

「あの娘が望むならそれもいいわ」

「……えらくすぐに了承したな」

「当然でしょ?フェイトは良くも悪くも、私の娘よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

左腕の触手を収めて、左手の甲には触手の元とは思えない赤い円形の宝石が埋まっている。

直径が精々2cm程度の起伏がない宝石。

‐質量保存とか余裕で無視だ

‐使うほどにアザが腕を侵食する

‐おー、怖い怖い

 

「ここにフェイトが居るわ」

「そうかい」

 

ガチャリと扉を開けば、鎖に腕を絡められながら力なく横たわる金髪少女がいる。

‐なんかフェイトに縛られたのを思い出した

‐納得のSM

‐プレイ中だったのか

カット。

 

「起きなさい、フェイト」

「……はい、母さん」

「迎えが来たわ」

「迎え……?」

 

身体をゆっくり起こし少し首を動かしてから、扉前にいる俺を見つけた様だ。

 

「……ユウ?」

「迎えに来てみたぞ、アリス」

「…?」

「気にするな。で迎えに来たぞ。帰って夕飯を食べよう」

 

フェイトの視線は母に向き、もう一度俺に向く。

申し訳なさそうな顔で声を出す。

 

「ダメだよ…私が居なきゃ、母さんが一人になるよ……」

 

本当に申し訳なさそうに俯くフェイト。その横でドヤッと言いそうな程満足している母さえ居なければ連れ去ったかも知れない。

 

「いい娘ね…フェイト」

「…………まぁそれなら構わないか」

 

‐構わないのか?

‐本当にそれでいいのか?

‐願いは達成された…

‐とでも思っているのか?

 

「一応、俺も伊達か酔狂でここにいるからな」

 

フェイトへと足を進める。足音が全く鳴らないのは靴底がゴム製だからだ。

触れも出来ない距離で止まる。というか、母の視線がキツくなったから止まるしかなかった。

 

深呼吸をして気持ちを落ち着ける。

‐騎士の如く誠実に

‐神のように尊大に

‐劇的に言葉を紡ぐ

 

「お前の為なら母を殺そう。お前の為なら全てを灰塵に変えよう。お前が願うなら全てを叶えよう。お前を全てから守ろう。

敵が言葉であれ、悪意であれ、業火であれ、人であれ、神であれ。

 

 

大切な存在よ何を望む?」

 

俺は言葉を吐いた。

あの時に俺が願ったように、その願いに彼女の願いが引っ掛かるように。

 

 

 

「…………私は、」

 

やや間があって彼女は口を開いた。

悲しいまでに傷付いた彼女の願いを、化け物は呆れながら聴き、頷いた。

たぶん物凄く嫌な顔をしてたと思う。




~黒くて固くて…
カリントウ

~スーツ姿の時計ウサギ
~色で輪切りにされた猫
~トランプの兵隊
~アリス
既に名前が出てしまってる件については触れちゃいけない

~触手
御影君の左手に寄生してる宝石。次回あたりで設定色々書ければいいなぁ

~【化け物】
触手を纏った人間の形をした何か。人とは決して言えない

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。