ガンダムビルドファイターズ《刃》ーブレイドー   作:オウガ・Ω

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本編2ヶ月前



ある朝…薄い靄が漂う古い作りの寺院。静かな朝が突然響いた声によりぶちこわされた



「応えよタカヤ!流派ガンプラ東方不敗は!!」



「すべてのガンプラの王者あっ!!!」


拳をぶつけ合う二つの人影…白髪を首の後ろでお下げにした40~50ぐらいの紫色に鼠色の拳法服に身を包んだ男性…もう一人は空手着姿の黒髪に幼さが残る少年



「デザインナイフは!」


「己に刃向けるな!!」



「パーツの切り出しはぁ!!」



「ニッパーで二回に分けて切り離せ!!」



「「見よ!ガンプラ道は赤く燃えているうぅ!!」」



裂帛の気合いが込められた声に鳥達が一斉に羽ばたく。気のせいだろうか背後に無数のガンプラの躯の山に一体だけ無傷で立つRX-78-2ガンダムが腕を天に突き上げた姿が見えた



「タカヤよ、よくぞココまで鍛え上げた」



「はい、すべては先生の教えがあってこそです」



「タカヤよ、今日は客が来る。茶菓子を街まで買いに言ってはくれぬかの?」



「はい!その茶菓子はどこで買えば」



「うむ、神田に店を構える《穂むら》と言う老舗和菓子店だ……」



「わかりました!じゃあいってきます!!」



軽く拳を手にあて一礼し走り出したタカヤ…そこであ3人と公園で出会うことになるのは別な話だ



第十一話 絆のアストレイ、蘇る鉄拳と漆黒《前編》

カレトヴルッフ争奪ペアマッチ大会が開かれているココ、サエグサ模型店は外観とは裏腹に最大10人までバトル可能なフリースペース、塗装ブースから最新素材を揃えた工作室を備えている…しかし万が一の事に備えて医務室とミツキ店長と馴染み深いドクター《ユン先生》が常におり万全の体制をとっている

 

 

PPSE社が擁する《二代目メイジンカワグチ》が第1回世界大会を制してから七年、ガンプラバトルは全世界規模に広まると同時に《ある力》の発現をも促した。それにより大会が行われる場合には必ず高度の医療知識をもつ医師を置くことが義務づけられるようになった背景があった

 

 

 

そして現在…

 

 

 

 

 

 

「あ、あの先生、少年の容態は?」

 

 

 

「……………暫くしたら目を醒ますから安心しな、まさか実際に看るとなるとは思わなかったね…《アシムレイト》を」

 

 

 

「…………」

 

 

 

聴診器とカルテを見ながら話す女性…ユン先生の言葉に無言でホッと胸に手を当てるミカヤ。少し離れたベッドには頬や両腕の肘から下は湿布が貼られたタカヤの眠る姿に胸が痛くなる。ツクヨミが動けさえすればこんな事にならなかったと罪の意識に最悩まれるのを悟ったのかさりげなく声をかけた

 

 

 

 

「このまま大会参加し続けるのはオススメしないね。この子の《アシムレイト》は確認されている症例と違う点が多い。医者としては棄権を進めたいんだけど」

 

 

 

「……少年が目を覚ましてからで。タ…少年の意志をそんちょうしたいので」

 

 

 

「………まあ今日の試合は残り三戦で終わりだ。今日はゆっくり休んでから二人でゆっくり話し合うんだ」

 

 

「はい………」

 

 

 

軽く頭を下げベッドに眠るタカヤの近くにある椅子に座り手を優しく包むよう握りしめるミカヤの姿を見ながらユンはカルテに目を通していく

 

 

(秋月タカヤくん、第二回ガンプラバトル世界大会に出場した《漆黒の殲滅姫》と呼ばれた秋月メイ、《ビルドマイス》秋月ユウキの子供…四歳から誘拐される八歳までガンプラ造形術の一派《ガンプラ天瞳流》師範に預けられていた……)

 

 

ユンの机には先のバトルで肘から下の右腕を粉砕され装甲表面のいたるところに亀裂が走るアストレイブレイドの姿…空間投影モニターには簡易的なタカヤの身体、そしてブレイドの赤く表示されたダメージ個所が重なる

 

 

(今の症状からわかるように、《アシムレイト》によるノーシーボ効果が未だに切れていない。つまりオン・オフが出来ていない……ソレを危惧して二人は天瞳流師範にアシムレイトのオン・オフを制する術を学ばせるために……)

 

 

「ごめんなさい…私が守るって……なのに…ごめんなさい…タッくん」

 

 

 

湿布だらけの左腕をさするミカヤの口から漏れた言葉を耳にしながら軽く息を吸い込み椅子から立ち上がる

 

 

 

「少し席を外すけどいい?」

 

 

 

「え、どちらに…」

 

 

「なに、少し野暮用ってヤツさ……なにかあれば私を呼びな」

 

 

 

少し涙目になるミカヤに端末を手渡した。バトルシステム開発黎明期からガンプラバトル世界大会までのアシムレイト発現者、症例を調べるためミツキが持つ専用端末使用をもらいにメディカルルームをあとにした

 

 

第十二話 絆のアストレイ。漆黒と鉄拳再び《前編》

 

 

「ねぇ‥ノンノン、タカタカ大丈夫かな?」

 

 

 

「んなのわかんねぇよ。っうか、ノンノンって呼ぶなったら!東條◯じゃないし!!」

 

 

 

「え~呼びやすいのに~じゃあじゃあノンちゃんはダメ?」

 

 

「却・下・だ!スピリチュアルパワーなんてモン使える訳ないし同じだろが!?」

 

 

 

「いひゃい、いひゃい、ぐりぐりゆむるぇ~~!?」

 

 

 

おらあ~~と拳で頭をぐりぐりするノーヴェ、レヴィの背中に嵐を呼ぶ幼稚園児、み○えが見えたのは気のせいだろうか?しかし周りの視線に気づきぐりぐりを止めいそいそと歩き出した

 

 

今二人が向かうのはタカヤがいるメディカルルーム、その手にはタカヤの愛機アストレイ・ブレイドの予備パーツ、GPベースが収められたらキットケース

 

 

 

ーすまない、ノーヴェ、レヴィ。控え室から少年のブレイドのキットケースをメディカルルームまで持ってきてくれないかな。叶うならば迅速にー

 

と言われて控え室からキットケースを手にし歩く二人は疑問が浮かんでいた

 

メディカルルームに何故持って行く必要があるのか?修理なら工作室で出来るのに、それに倒れたタカヤを抱き止める姿を見て思った。ミカヤはペアになる以前からタカヤの事を知っていたのではないかと疑念が浮かぶ二人がある部屋の前を通りかかろうとした時、激しい音とともに勢いよく自動ドアが開き何かが飛び出してきた

 

 

「うわあ!?」

 

 

 

「な、なに!?」

 

 

何かとぶつかりたまらず倒れ込んだ二人が目にしたのは、真っ赤な髪にややつり目、長袖シャツに肩口までの黒のジャケット、アーミーパンツ姿の少年が頭を押さえ涙目になりながら口を開いた

 

 

 

「っタタタ、ミツキおばさん…なんなのさ………でもコレでアイツ等を撒けたはず………だあああああああああ!?」

 

 

 

少年がノーヴェ、レヴィを見て固まり間をおかず声を上げ頭を抱え屈み込んだ…その様子に慌てて声をかけてみた

 

 

「お、おい……大丈夫か?」

 

 

「ねえねえ、どこか痛いの?」

 

 

 

「え?い、いや何でもない、何でもないから(マズい、マズい、マズい!何でお袋いるの!?しかも妙に若い………!?………まさかあのとき押し込まれたバトルシステムって、楓姉さんが作ったプラフスキー粒子を使ったタイムマシン?ヤバい、ヤバい!時代が変わっちまう!!デンライナーを探さないと)」

 

 

※ピンポーン、20年後のガンビル刃内に登場する特撮番組内に登場する仮面のヒーローが使う《時の列車》……なお、クロウは紫紺の切り札の大ファンです※

 

 

 

「なあ、おまえ………どこかで会ったことあるか?」

 

 

 

「い、いや、初めてだけど……と、とにかくさっきはぶっかってゴメン、じゃ!!」

 

 

 

それだけ言うと慌てて駆け出す…その後ろ姿をポカンと見送りながらもタカヤがいるメディカルルームへと歩いていくレヴィ、ノーヴェ。しばらくして少年が飛び出した部屋から少し離れた二つの空き室から二人の少女が出てきた

 

 

 

「クロウ師匠、絶対ワシを弟子にしてもらうまで逃がしませんじゃけぇの………」

 

 

 

「………逃がしません。秋月クロウ……いえク~ちゃん…今度こそ勝たせてもらいます。ワタシのガンプラバトルで…」

 

 

 

プラフスキー粒子により時を超え未来から過去に逃げ出した想い人を追う欧州ガンプラバトル王者リンネ・ベルネリッタ、クロウのバトルに魅せられ自身の目的を含め弟子入りを願うフーカ・レヴィントン…果たして逃げきれるのか

 

 

それはガンプラの神様のみ知る

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミカヤ、タカヤのブレイドとキットケース持ってきたぞ]

 

 

 

「しずかに…いま、ようやく落ちついたからね…

レヴィも静かにしてもらえるかな?」

 

 

「うん、わかってるよ………ねえミカヤン、タカタカのブレイドをどうするの?ココで治すより工作室の方がいいんじゃないの?」

 

 

 

ボロボロのブレイドを見ながらなんとなく出たレヴィの言葉、キットケースから接着剤と補修パーツを取り出そうとしたミカヤの動きが止まる

 

 

「……ココで治さなきゃダメなんだ。少年のブレイドは」

 

 

「なあ、ミカヤ。お前なんか隠してないか?タカヤが倒れた原因をしってんだろ?それに前からペアになってからバトルしてる時なんか、タカヤを泣きそうな目でたまに見てたのも」

 

 

 

「………っ!?」

 

 

 

「ミカヤンってもしかしてなんだけど、タカタカを昔から知ってるんだよね……」

 

 

 

「わ、私が少年と会ったのは去年だ……それ以上は知るよしもない、早くブレイドを…」

 

 

 

「……もう、ウソつくなよミカヤ…お前さ焦ったりするとグラハム病になる。今もな………」

 

 

 

「ミカヤン……タカタカを昔から知ってるんだよね…教えてよ」

 

 

 

二人の詰問と真剣な眼差し…向けられる視線からそらすようにキットケースを再び視線を落とし見た時、焦りだした

 

 

「無い……ブレイドの予備の腕が……コレじゃ……治せない……どうしたら……」

 

 

床にへたり込むミカヤの口から漏れた「治せない」の言葉…タカヤのブレイドは何日もかけ作り込まれたオンリーワン、所謂ワンオフ品…今朝出るときまではあったのを一緒に見ていたはずなのに見当たらない。一刻も早くタカヤを治したい想いに支配されたミカヤの心は何時もの飄々とした余裕が無くなりかけていた

 

 

 

「今からじゃ……どうしたら」

 

 

また、守れないのか?そう思ったときだった

 

 

 

「ミカヤ!落ち着けよ!!」

 

 

 

「ノーヴェ?」

 

 

「無いパーツは腕なんだな。なら今から作るぞ!!」

 

 

 

「え、で、でも少年のと私達が作ったモノが合うかは……」

 

 

 

「グダグダいってんじゃねえよ!今のタカヤに必要なんだろ?ビルダーでファイターのあたし等にかかれば出来る!一度バトったんなら、どんな腕だったかは分かるだろ?」

 

 

 

「…………」

 

 

 

「出来ないってんなら、あたし等だけでやる。ペアなんだろうが!なんならペアをやめるか?」

 

 

 

ノーヴェのやや乱暴な声が焦りに満ちたミカヤを落ち着かせていく…無いならば作ればいい、ビルダーなら当たり前な事を思い出した

 

 

「…ふ、そうだね……幸いココは品揃え豊富なサエグサ模型店だ…ならば善は急げだね」

 

 

 

「そうこなくっちゃな…さあ、さっさと工作室にイくぞ!レヴィ、お前も手伝え!!」

 

 

 

「もっちのろんろ~ん。タカタカの為に気持ちをたくさん込めて作るよ!!」

 

 

 

元気に答えるレヴィ…医務室である事を忘れているみたいだ…あわてて口を押さえるももう遅い。それをみて笑いを押し殺しながらブレイドを残しキットケースを手に工作室へと急ぎ後にして数分後……

 

 

 

「ん……ここは…っ……たたた!?」

 

 

 

ゆっくりと目をあけ起きあがろうとした時、両腕に激しい痛みが走り倒れ込む…身体中の湿布をみて軽く息をつき動くのは無理とわかる

 

 

「そっか、あのあと気を喪ったんだっけ……ブレイドは!?………っ痛!……あ、あった」

 

 

なんとか身体を動かし机を見る…ボロボロになったアストレイブレイドを見て胸が苦しくなる一方、対戦相手のワタル、スバルのペアを思い浮かべた

 

 

 

「ワタルくん強かったな……またバトルをやりたいな……大会は関係なしで」

 

 

 

と口にした時、控え目に医務室の扉をたたく音が響いた…

 

 

「ん、誰だろ……どうぞ」

 

 

 

「………………」

 

 

 

「え?わ、ワタルくん?」

 

 

静かに扉が開き現れたのは先の試合で壮絶な死闘を繰り広げ下した相手…チームファングの紅ワタルの姿があった

 

 

 

 

 

第十二話 絆のアストレイ、蘇る鉄拳と漆黒《前編》

 

 

 

 

 

後編に続く

 

 

 

 


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