ハイスクールD×D~チートが転生させたそうですよ?~ 作:夜叉猫
春休みをのんびりと過ごす夜叉猫です(笑)
今回も比較的早めの更新が出来て安心しているのですよ……(笑)
それでは早速本編をどうぞ♪
Side 士織
「……良かったのかよ士織」
ヴァーリたちが逃げていった後、一誠がぽつりと呟いた。
「何がだ?」
「ヴァーリたちを逃がして良かったのかって聞いてるんだよ」
「今回だけだ。
今回は―――――こいつを連れてきてくれたからな」
俺は箱を優しく地面に下ろしてそう言う。
「こいつ……??」
一誠は俺の言葉に不思議そうに首を傾げると、俺の視線の先である箱を見つめた。
下ろした箱の包装を外し、ゆっくりと蓋を開ける。
「―――――我、空腹」
そこにいたのは案の定、俺の思った通りの人物。
体操座りをして、こちらを見つめるの姿はまさしく―――――
「お前はいつも腹が減ってんだな
【
俺は自然と微笑んでいた―――――。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
俺はオーフィスを肩車し、一誠と共にサーゼクスたちの居るであろう場所へと向かう。
先程から戦闘後の処理、つまり倒した魔術師の死体を運んだりする者の姿が見られた。
少し歩いていけば、そこにはサーゼクス、セラフォルー、ミカエルの3人がそれぞれの部下に指示を出している姿が目に入る。
目を凝らせばアザゼルも座り込んではいるがいるのがわかった。
サーゼクスたちもこちらに気がついた様で、口を開こうとし―――――止まる。
その表情は驚愕で染められ、視線は俺の顔より少し上、つまりオーフィスに向かっていた。
「し、士織……そいつは……」
アザゼルは引き攣った表情でオーフィスを指さす。
「アザゼル。久しい」
「おいおい……こりゃどういうこった?
【
ヨロヨロと立ち上がるアザゼル。
オーフィスはその様子を見ながら口を開いた。
「違う。我、【
オーフィスの口から出た言葉にアザゼルたちは目を丸くする。
「や、辞めた……?」
「そう。我、静寂もういらない。
士織、我の居場所―――――暖かい」
俺の頭を抱き締めるオーフィス。
穏やかな息遣いで頬ずりしていた。
その様子にアザゼルは笑い始める。
「おいおいおい!マジかよ!
士織、お前はとことん俺たちの予想の上を行くな!
無限の龍神様を手なずけるとか予想外にも程があんぜ全くよぉ!!」
どさりと座り込みながらアザゼルはふぅ、と息を吐く。
「取り敢えずオーフィス。
お前は俺たちの味方になったっていう認識でいいんだな?」
「……違う。我は士織の味方。
士織、傷つけるなら―――――滅ぼす」
オーフィスは俺の頭から飛び降りると俺を護るように立ちはだかり、アザゼルたちに殺気を向けた。
アザゼルは冷や汗を流しながらも手を上げて口を開く。
「……わ、わかった。
そのへんのことは肝に銘じとくぜ……」
アザゼルの言葉にサーゼクス、セラフォルー、ミカエルの3人も頷き、同意の意を示した。
「……ところで士織くん」
「なんだよサーゼクス」
真剣な表情を浮かべるサーゼクス。
「オーフィスが仲間になった今、君は一体どうするつもりだい?」
会談で聞きそびれたそれはオーフィスが俺の仲間になるという予想外の結果を経て再び問われる事となる。
「わかってんだろ?サーゼクス。
オーフィスと俺っていう過剰な力を持つ者は何処に行っても戦争の火種にしかならねぇ。
―――――だから俺は、どの勢力にもつかない」
「……つまり、君は……」
サーゼクスも薄々感づいてはいたのだろう。さして驚くこともなくこちらを見つめていた。
「あぁ。お前の思ってる通りだサーゼクス。
俺は3大勢力や既存の勢力の何処にもつく気は無い。
―――――つまり、俺は新たに『第4の勢力』を作ろうと思ってる」
その言葉に対する反応は様々。
サーゼクスやアザゼルたちのような各陣営のトップたちは納得したような表情を浮かべ、その他の者たちは驚きの表情を浮かべていた。
「これなら何処かの勢力だけ強くなるっていうパワーバランスの崩壊もないし、オーフィスの扱いに困ることもない。
勿論、何かあれば力は貸す。
……どうだ?これが最善の手だと思うが?」
俺の問いかけにいち早く反応したのはアザゼル。
「いいと思うぜ?
ただ、今はお前とオーフィスしかいねぇから『中立チーム』ってところで落ち着いとけ」
「それが良いだろうね。
『第4の勢力』として活動するとしたらもう少しメンバーが欲しいところだよ」
「士織ちゃんなら1人でどんな作業でもこなしちゃいそうだけどね☆」
「異論はありません」
4人の言葉を聞いた俺はゆっくりと頷く。
「あぁ、なら今後は『中立チーム』として活動させてもらう。
―――――よろしく頼むぜ?」
俺はニヤリと笑った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「―――――そういえば一誠。
お前、うちのヴァーリに求婚されたんだって?」
アザゼルは一誠と肩を組むとニヤニヤと笑いながらそう言う。
俺は再びオーフィスを肩車しながらそれを眺めていた。
「そ、そうなんですよ!
俺は男色の気はないのに……どうにかなりませんかね……」
ため息を吐きながらそう言うと、アザゼルは笑い声を上げる。
「笑い事じゃないんですよ?!」
「いや〜……悪ぃ悪ぃ。
だがな、一誠。お前さん勘違いしてるぞ?」
「勘違い……??」
一誠は眉をひそめてアザゼルの言葉を聞く。
「ヴァーリはああ見えて―――――女だぜ?」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!!!!?」
一誠の驚愕の声が響き渡る。
その後、1人百面相を披露しながら、一誠は頭の上にハテナマークを浮かべた。
「ヴ、ヴァーリが……女……??
え、ちょ、ま……はぁ?!」
「おぉ、おぉ。
激しく混乱してるなぁ。
ヴァーリの奴、俺がいくら言っても言葉どころか一人称すら直さなかったからなぁ……ま、勘違いすんのもしかたねぇか」
愉快そうに笑うアザゼル。
どことなく嬉しそうな雰囲気を醸し出している。
「おい一誠。
俺のことを『お義父さん』って呼んでもいいんだぜ??」
「……勘弁してください」
なんとも言えない表情を浮かべて一誠はため息を吐くように言った。
「―――――さて、色々と一段落ついたようなので、私は1度天界に帰ります。
直ぐに戻ってきますので、その時正式な和平協定を結びましょう。
それと士織さん、お暇な時にでもいいので天界へお越しください。
色々とお話をいたしましょう?」
後半、ミカエルは俺に向かって微笑みながら言って、この場を後にしようとする。
「気が向いたらな?
それと、帰るのは少し待ってくれ」
「?なんですか?士織さん」
「俺の弟が言いたいことがあるらしいんでな。聞いてもらえるか?」
俺はそう言って、一誠の方へ視線を向ける。先程までは何処か疲弊した様子の一誠だったが、俺の言葉を聞いて真剣な表情を浮かべた。
「はい。
時間があまりありませんが、それくらいならば」
そう言って、ミカエルは一誠の方に視線を移動させる。
一誠は1度咳払いすると口を開いた。
「ひとつ、お願いがあります。
―――――アーシアとぜノヴィアが祈りを捧げる時のダメージを無しにできませんか?」
「―――――っ!」
その願いにミカエルは驚きの表情を見せる。
いつの間にやら合流していたアーシア、ゼノヴィアの2人も一誠の願いに驚いているようだ。
「……わかりました。
2人分ぐらいならシステムに干渉することでなんとかなるかもしれません。
―――――アーシア、ゼノヴィア、問います。
神は既にいません。それでも祈りを捧げますか?」
ミカエルの問いに2人は直ぐに頷き、にこりと笑った。
「はい、主がおられなくとも私は祈りを捧げたいです」
「同じく。
主への感謝と―――――ミカエルさまへの感謝を込めて」
2人の答えにミカエルは優しく微笑むと、2人に歩み寄り頭を優しく1度だけ撫でる。
「わかりました。
本部に戻ったら、早速そうしましょう。
……あなたたちのような優しい者にあのような酷いことをしてしまい、本当に申し訳ありません……」
「いえ、ミカエルさま、謝らないでください。
多少、後悔も致しましたが、教会に仕えていた頃にはできなかったこと、封じられていたことが現在、私の日常を華やかに彩ってくれています。
……こんなことを言ったら、他の信徒に怒られるかもしれませんが……。
―――――それでも、今の私はこの生活に満足しているのです。」
柔らかに微笑むゼノヴィアは瞳を閉じて思い出すかのように言った。
それに続いてアーシアも手を組みながら言う。
「ミカエルさま、私も今が幸せだと感じております。
大切な人たちがたくさん出来ましたから……。
それに、憧れのミカエルさまにお会いしてお話、そして頭を撫でていただけるなんて光栄ですっ!」
ミカエルはゼノヴィアとアーシアの言葉に安堵の表情を見せる。
「すみません……。
あなたたちの寛大な心に感謝します。
デュランダルについてはゼノヴィアにおまかせします。
あなたなら安心して任せることができますから……」
「ありがとうございます」
ぜノヴィアは恭しく頭を下げた。
「ミカエルさま、例の件もお願いします」
そんな中、ミカエルに近づいていってそう言ったのは祐奈。
アーシアたちとの会話も終えたミカエルは祐奈に向き直ると真面目な表情で口を開いた。
「あなたから進言のあった聖剣研究のことも今後犠牲者を出さぬようにすると、あなたからいただいた聖魔剣に誓いましょう。
大切な信徒をこれ以上無下にすることは大きな過ちですからね」
なるほど、祐奈はいつの間にかそのことについてミカエルと話をしていたらしい。
「やったな!祐奈!」
「うん、ありがとう、イッセーくん」
そんな2人のやり取りを微笑ましく見ていたミカエルに、アザゼルが言う。
「ミカエル、『ヴァルハラ』の連中への説明はお前がしておけよ?
ヘタにオーディンに動かれても困るからな。
あと、須弥山にも今回のことを伝えておかないとうるさそうだ……」
「えぇ、堕天使の総督と魔王が説明しても説得力がないでしょうから、私が伝えておきます。
『神』への報告は慣れてますから……」
それだけを言い残すと、ミカエルは大勢の部下を連れて、天へと飛んでいった。
その後、アザゼルは再び立ち上がると、堕天使の軍勢を前に言い放つ。
「俺は和平を選ぶ。
堕天使は今後一切天使と悪魔とは争わない。
不服な奴は去ってもいい。
だが、次に会うときは遠慮なく殺す。
―――――ついてきたい者だけ俺についてこい!」
『我らが命、滅びのその時までアザゼル総督のためにッッ!!』
怒号となった部下たちの忠誠。
アザゼルはそれを見て何処か嬉しそうにふっ、と笑うと「ありがとよ」と小さく礼を言った。
カリスマという点で言えば、アザゼルは3大勢力中で1番だろう。
アザゼルが自分の軍勢に指示を出すと、魔方陣を展開させて堕天使たちが帰っていく。
悪魔の軍勢も同様に魔方陣から転移していくようだ。
先程までかなりの人数がいた校庭も、転移し終わった後では寂しくなり、ついには俺たちを合わせた極小数の人員だけとなっていた。
堕天使で唯一残ったアザゼルは、大きく息を吐くとしっかりとした足取りで校門の方へ去っていく。
「後始末は、サーゼクスに任せる。
俺は疲れちまった……帰るぞ」
あくびを隠そうともせず、手を振って帰ろうとするが、一度だけ立ち止まり、振り向いた。
「そうだ、一誠。
当分此処に滞在する予定だからそっちのヴァンパイアの特訓を手伝ってやるよ。
お前の血を飲ませたんだろ?
下手な結果にならねぇようにしないとな。
制御出来ていないレア神器を見るのはムカつく」
「えっと……ありがとうございます?」
一誠はアザゼルの言葉に疑問符を浮かべながら頭を少し下げた。
「赤は仲間を、白は力を。
―――――どちらも驚くほどに純粋で単純なもんだ」
アザゼルはそれだけいうと、口笛を吹きながら去っていった。
「アザゼル、ゴキゲン?」
オーフィスはペチペチと俺の頭を叩きながらそう言う。
「そうかもな。
……それとオーフィス、叩くな痛い」
俺がそう言うとオーフィスは叩く手を止め、地面に滑り降りていく。
そして、身長差からこちらを見上げると手を広げて口を開いた。
「士織、抱っこ」
「……はいはい」
俺はその姿に微笑ましさを感じながらオーフィスを抱き抱えるのだった。
Side Out
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
西暦 20✕✕年7月―――――。
天界代表『天使長ミカエル』
堕天使中枢組織神の子を見張る者 『総督アザゼル』
冥界代表 『魔王サーゼクス・ルシファー』
3大勢力各代表のもと、和平協定調印。
以降、3大勢力の争いは禁則事項とし、協調体制へ―――――。
『兵藤士織』、『無限の龍神オーフィス』、両名による『中立チーム』創設。
後に『第4の勢力』となる予定―――――。
今回結ばれた和平協定は舞台となった学園から名前を採り、【駒王協定】と称することとする―――――。
本編の方はいかがでしたでしょうか?
楽しんでいただけたのなら幸いです♪
今回は会談の締めのような話でしたね(笑)
次回、もしくは次々回で4巻の内容が終わりそうなのですよ♪
そして!
一応の報告ですが……Twitter始めました(笑)
@Yasyaneko51615ですので、気軽にフォローおねがいします♪
それでは今回はここまで!
また次回お会いしましょう♪(*´ω`*)