ハイスクールD×D~チートが転生させたそうですよ?~   作:夜叉猫

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皆さんハッピーハロウィンなのですっ♪
とは言ってもいつもとそんなに変わらない日を過ごす夜叉猫なのですよ~(笑)

ともかく、本編のほうをお楽しみください♪


第55話

side 3人称

 

「ほら、リズム良く脚を動かすんだ」

 

「はい、いち、に、いち、に……」

 

ぱしゃぱしゃぱしゃ―――――と、水音が鳴る。プールの中に見えたのは小猫の手を握り、バタ足の練習に付き合う士織、そしてその隣にはアーシアが一誠と共に小猫と同じバタ足の練習をしている姿だった。

 

―――――小猫とアーシア。

この2人、話を聞くところによると泳げないという。そんな2人に士織と一誠は泳ぎの練習を手伝っているのだ。

 

「2人とも頑張って!」

 

プールサイドでは祐奈が一生懸命練習する2人へのエールが飛んでいた。

それに応えるように、小猫とアーシアは時折『ぷはぁ』と息継ぎしては懸命にバタバタと足を動かしている。

 

「ぷはぁ……っ。

……士織先輩、付き合わせてしまってゴメンなさい……」

 

小猫は申し訳なさそうにそう言った。

 

「ん?気にすんなよ。

泳ぎの練習に付き合うってのもなかなか面白い経験だしな。

それに、小猫に頼まれたんなら断れねぇよ」

 

にかっと笑う士織に小猫は頬を緩ませる。その様子を見る祐奈は見るからに面白くなさそうだ。

 

「っと……端に着いたぜ」

 

25メートルをバタ足で泳ぎきった小猫は勢い余って、士織にぶつかってしまう。偶然にもそれは抱きついているかのように見えた。

 

「……士織先輩は、やっぱり優しいですね。

……だからこそ私は……」

 

頬をほんのりと赤く染めながら小猫は言葉の終いをごにょごにょと喋る。

 

「優しかねぇよ。

俺は俺の好きなように行動してるだけだしな。

どっちかというと我侭で自己中な男さ」

 

小猫の頭を撫でながら、士織は自傷気味に言う。

 

「い、いつまで抱き着いてるの!?小猫ちゃんっ!

士織くんは僕のなんだよっ!!」

 

そんな時、プールサイドで見ているだけだった祐奈が我慢しきれずに飛び込んで来る。

 

「……泳げないから捕まってただけです」

 

「ここは足がつくでしょっ!」

 

「……私、小さいですから」

 

「む、むうぅ~!!」

 

小猫と祐奈は火花を散らしているかのように睨み合う。まさにキャットファイト寸前である。

 

「―――――ほら、2人とも仲良く遊べ」

 

「にゃっ?!」

 

「あぅ?!」

 

そんな2人を止めたのは言わずもがな士織。額にデコピンを放ったのだ。

おでこを2人して押さえながら文句あり気な表情で士織を見つめる。

 

「取り敢えず……どうする?小猫。

もう1周行っとくか?」

 

「……お願いします」

 

「こ、今度は僕も一緒に隣で泳ぐからねっ!」

 

「……祐奈先輩は思いっきり泳いでても良いですよ……?」

 

「僕も行くのっ!」

 

「ほらほら、ケンカしてねぇで仲良くな?仲良く」

 

士織はそう言いつつ、2人へ微笑ましいものを見るような視線を送っていた。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「皆楽しんでんなぁ……」

 

小猫との泳ぎの練習を終えた士織はプールサイドに用意していたビニールシートの上で祐奈、小猫に寄り掛かられながら周りを見渡していた。

 

 

 

「リアス、どうだ?」

 

「んっ……マッサージまでしてくれるなんて……流石ね、ライザー」

 

うつ伏せに寝るリアスに、ライザーはオイルを塗りながらのマッサージ。

互いに話しながら自分たちの空気を作り出していた。

 

 

 

「朱乃先輩泳ぐの上手っすね」

 

「あらあら、うふふ。

ありがとうございますイッセーくん」

 

朱乃と一誠はプールで泳ぎを満喫している。アーシアもいるかと思いきや、泳ぎの練習で疲れたのだろう。プールサイドでコクリコクリと船をこいでいた。

 

 

 

「む……また負けたか……。

……やるな夜鶴……」

 

「ふふふ……。

ゼノヴィアちゃんもなかなかだよ」

 

後からきちんと現れたゼノヴィアは夜鶴と共にプールで競争をしていた。

今のところは夜鶴の全勝。負けず嫌いなゼノヴィアは何度も挑戦しているのだ。

 

 

 

「俺たちはどうする?」

 

士織は寄りかかっている小猫と祐奈に声をかける。

 

「……私は疲れたので少し休憩です」

 

そう言った小猫は何処からともなく取り出した饅頭を小さな口ではむはむと食べ始める。

 

「僕も休憩かな……。

あ、小猫ちゃん小猫ちゃん。

僕にもひとつくれない?」

 

「……どうぞ」

 

「ありがとう♪」

 

祐奈は小猫から饅頭を貰って幸せそうに食べる。士織はそんな2人に寄り掛かられながら、このままゆっくりするのも乙か……と考え小さく笑った。

 

「小猫俺にも饅頭くれよ」

 

「どうぞ」

 

「さんきゅー」

 

明らかに返事の速度の違う小猫だったが、それに気が付き、あまつさえ言葉にするものなどこの場には居なかった。

 

 

 

 

 

Side Out

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

Side 一誠

 

「んん~!今日は遊んだなぁ……」

 

皆よりもひと足早く更衣を済ませた俺は校庭の方へ足を向けていた。

それにしても今日は楽しかった。こうやって皆で集まって思いっきり遊ぶというのもやっぱり良いものだ。

 

―――――そんなことを考えながら、校舎を出ようとした俺の視界に銀が映り込む。校門のところだ。

 

「…………」

 

無言で校舎を見上げる……美少年。グレイフィアさんの銀髪よりもダークカラーの長い銀髪を無造作に後ろで纏めたその姿はまるで1枚の絵画と勘違いしそうだ。

見た目から年齢を予想するに俺と同い年か少し若いくらいだろう。

ふと、その美少年が俺に気がついたのか視線をこちらに移した。

引き込まれるほどに透き通った蒼い瞳。それがまるで芸術品のようだ。

 

「―――――やぁ、いい学校だね」

 

「まぁな。俺の大切なモノがたくさん詰まった場所だから」

 

この美少年の正体は薄々気がついている。

俺の中の神器が疼くんだ……まるで積年のライバルが現れたと言わんばかりに。

―――――そして、彼は口を開く。

 

 

 

 

 

「オレはヴァーリ。白龍皇―――――【白い龍(バニシング・ドラゴン)】だ」

 

「あぁ……分かってた。

ここで会うのは2度目だったよな?

前は全身鎧だったから顔まではわかんなかったけど……そのオーラと声は覚えてる」

 

俺は不敵な笑みを浮かべて言った。

白龍皇―――――ヴァーリも俺の言葉に笑みを浮かべる。

 

「それで?今回は何の用だ?

『赤』と『白』の決着でもつけに来たのか?」

 

龍のオーラを漏らしながらヴァーリに問う。

 

「これは……心地良い龍の波動だな……。

戦うつもりはなかったんだが……気が変わってしまいそうだ」

 

そう言って、ヴァーリが俺の方に手を伸ばしてきた―――――その時。

 

 

 

 

 

「―――――何をするつもりかは知らないけど、冗談が過ぎるんじゃないかな?」

 

「―――――ここで赤龍帝との決戦を始めさせるわけにはいかないな、白龍皇」

 

2本の剣―――――祐奈の聖魔刀とゼノヴィアの聖剣がヴァーリの首に突きつけられていた。

祐奈とゼノヴィア、2人の剣は強烈なオーラを発している。

しかし、剣を向けられたヴァーリは全く動じることなく立っていた。

 

 

 

「止めておいた方がいい。

キミたち程度じゃオレを害することなんてできないさ」

 

ヴァーリの涼しい表情にその言葉が伊達や酔狂で言ったものではないことが分かる。

祐奈とゼノヴィアも表情を強ばらせているのが見えた。

 

「誇っていい。相手との実力差が分かるのは、強い証拠だ」

 

それは俺も同意する。

士織にも初めに教えられた。相手の実力を見誤ることだけはするな、と……。

 

「兵藤一誠、キミはこの世界で自分が何番目に強いと思う?」

 

突然の問いかけ。

……俺の強さか……。

自分は決して弱くは無いと言える自身はあるが……しかし、自分が最強だと言えるほど俺も自惚れてはいない。

 

「先ほど感じた龍の波動から感じるに、【禁手】となったキミの強さは上から数えれば3桁に入ることもできるだろう」

 

一体何が言いたいのかがわからない俺は怪訝な表情を浮かべていたと思う。

 

「この世界は強いものが多い。

紅髪の魔王(クリムゾン・サタン)】と呼ばれるサーゼクス・ルシファーでさえトップ10内に入らない。

……まぁ、あの士織とかいう少女ならトップ5入りは夢ではないかもしれないけどね」

 

士織よりも強い奴がいる……その言葉に俺は驚く。

あの士織が負けるかもしれない相手がいるっていうのか……?

俺がそんなことを考えていると、ヴァーリが指を1本立てた。

 

「だが、1位は決まっている。―――――不動の存在が」

 

「不動の存在……か」

 

俺の呟きにヴァーリはくすりと笑う。

 

「いずれわかるだろう。ただ、オレじゃないことだけは確かだ」

 

「んなもん言われなくても分かってる」

 

どうやら、ヴァーリの奴が自惚れているということはないようだ。

 

 

 

それから一拍あけて、獰猛に笑うヴァーリ。

 

「なぁ―――――自分よりも強い奴がいるって考えるとワクワクしないか?」

 

その笑みと言葉は俺ではない方に向けられていた。

 

 

 

 

 

「―――――しないな。というかどうでもいい」

 

向けられていたのは俺の背後に来ていた士織。更にその後ろに他の皆も揃っていた。

 

「生憎と俺はお前と違って戦闘狂じゃないんでね」

 

「酷いな、オレだって戦闘狂じゃないさ。

ただ、強者との戦いを楽しんでいるだけだ」

 

「それが戦闘狂っていうんだよ……」

 

淡々と交わされる会話に俺は口を挟まなかった……いや、挟めなかった。

士織の顔が無表情だったから……。

 

「取り敢えず帰れ、白龍皇。

折角の楽しさがお前のせいで台無しだ」

 

「これはこれは……すまなかった。

じゃぁ、言われた通り帰るとしよう。

―――――兵藤一誠、また会おう。君とも戦いたくなった」

 

肩をすくめながら、そういったヴァーリ。

そして、校門を出る寸前、何かを思い出したかのように振り返って口を開いた。

 

 

 

 

 

「―――――【二天龍】と称されたドラゴン。『赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)』と『白い龍(バニシング・ドラゴン)』。

過去、関わった者はろくな生き方をしていない。―――――キミたちはどうなるんだろうな?」

 

 

 

 

 

そう言い残して、今度こそヴァーリは俺たちの前から姿を消していった。

 

 

 

 

 

ヴァーリの残した言葉にその場の緊張感は晴れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編の方はいかがでしたでしょうか?
楽しんでいただけたのなら幸いです♪

さぁ、やっと登場しましたヴァーリさんっ!(>_<)
一誠くんの強化によりヴァーリさんも強化しないとなぁ……と思っています!
今後の展開をお楽しみに♪

それではまた次回お会いしましょう♪

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