ハイスクールD×D~チートが転生させたそうですよ?~ 作:夜叉猫
さてさて……夏休みに入った夜叉猫さんですが……。
嬉しくて更新するのを忘れていましたっ!!!(>_<)
……本当にごめんなさい……(。ŏ_ŏ)
これからはきちんと更新しますのでお許しを……っ!!(涙)
ひとまず、本編をどうぞ!!(>_<)
Side 一誠
正門から堂々と入り込む俺たち。
未だに背筋を伝う冷や汗は止まらないが、これくらいならコカビエルを相手にしても大丈夫だろう。
「……なかなか悪趣味な空間になったな」
俺はその風景にそう呟いた。
校庭の中央に4本の剣が神々しい光を発しながら、宙に浮いている。それを中心に魔法陣が校庭全体に描かれていたのだ。
魔法陣の中央には初老の男―――――バルパー・ガリレイの姿があった。
……一体何をするつもりなんだ……?
「4本のエクスカリバーをひとつにするのだよ」
俺の考えを読んだかのようなタイミングでバルパーはおかしそうに口を開いた。
「バルパー、後どれくらいでエクスカリバーは統合する?」
空中から聞こえてくるもう一人の男の声。
全員が空へと視線を向けた時、月光を浴びるコカビエルの姿が視界に入る。
宙で椅子に座り、こちらを見下ろしていた。……足を組んで余裕そうな表情だな……。全く滑稽っつーかなんつうか……。
「5分もいらんよ、コカビエル」
「そうか。では、頼むぞ」
コカビエルはバルパーからリアス部長に視線を移す。
「サーゼクスは来るのか?それともセラフォルーか?」
「お兄さまとレヴィアタンさまの代わりに私たちが―――――」
―――――ヒュッ!
ドォォォオオオオオオオオオンッッ!!!
突然の爆音。
それとともに辺り一帯に爆風が広がっていく。
爆風が発生した先にあるのは―――――いや、あったのは体育館だった。
しかし、影もカタチもなく消し飛んでいた。
「つまらん。まぁ、いい。
赤龍帝がいるのだ、余興にはもってこいだろう」
体育館のあった場所には巨大な光の柱が斜めに突き刺さっていた。
……流石は堕天使の幹部ってところか……防御だけじゃなくて攻撃もかなりのもんだな……。
『相棒、アレを使うのか?』
(いや、ここは普通の【
流石に長丁場となると燃費が悪いアレを使うわけにはいかねぇ)
『そうか、だが、負ける気はせんな!』
「当たり前だろ!ドライグ!」
俺は雄叫びを上げる。
そして、【
「【
『Welsh Dragon Balance Breaker !!!!!!』
その音声に呼応して、俺の身を【
「さて、まず始めに地獄から連れて来た俺のペットと遊んでもらおうかな」
コカビエルが指を鳴らす。すると、闇夜の奥から地を揺らしながら近づいてくるのが感じられた。
推定10メートルはあるであろう、黒い巨体。四足は一つ一つが太く、そこから生えている鋭い爪は人なんて簡単に引き裂けるだろう。
闇夜にギラギラと輝く血のような真紅の双眸。突き出た口から覗かせるのは凶悪な牙。3つの首を持つその生物の名は―――――
「―――――ケルベロスか……」
「地獄の番犬の異名を持つ有名な魔物……。
本来は地獄―――――冥界へ続く門の周辺に生息しているのだけれど、人間界に持ち込むなんて……ッ!!!」
リアス部長は眉を潜め、そう口にする。
「やるしかないわ!消し飛ばすわよ、皆!!!」
「「「「はい!!!」」」」
皆は戦闘態勢を整える。
俺もこのまま突っ込もうとしていたのだが、リアス部長が俺の肩に手を置いた。
「イッセー、此処はサポートに回って頂戴。あなたはコカビエルとの戦いのために力を温存しておいて?」
「……つまり、俺は極力動くなと?」
「……えぇ、私たちではコカビエルは倒せない。でも、イッセー、あなたなら……」
リアス部長は真剣な眼差しでこちらを見つめる。
俺は兜部分のマスクを収納させて微笑んだ。
「わかりました。
でも、ピンチになったら俺も動きます」
「えぇ、頼んだわね」
リアス部長はそう言うと、俺以外の眷属を連れて前に出た。
リアス部長は紅い魔力を全身から迸らせる。
朱乃先輩は雷を纏わせ怪しく微笑む。
アーシアは冷気を体から漂わせる。
小猫ちゃんは両腕に魔力を纏わせてファイティングポーズを取る。
―――――ガルルルルゥルルルウルルッ!!
ケルベロスは威嚇するように低く唸ったかと思うと、突然遠吠えを始めた。
何事か、そんな考えは次の一瞬で消え去った。
―――――ケルベロスが2体、増えたのだ。
「仲間を呼んだのか……っ!」
これは流石に不味いと加勢に入ろうとした時、皆が首を振った。
「この程度どうってことないわ」
「私たちの力を見せてあげますわ」
「……楽勝です」
「頑張ります!!」
そういった4人はそれぞれケルベロスに向かって行った。
背中から翼を出して空へと舞ったリアス部長と朱乃先輩。
「朱乃!」
「わかってるわ!
【雷竜の咆哮】ッ!!!!」
リアス部長の掛け声にコンマの間もなく、朱乃先輩は攻撃を仕掛けた。
金色の雷を纏った光柱が朱乃先輩の顔の前に展開された魔法陣から放たれる。
ケルベロスも負けじと炎のブレスを吐くが、威力に差がありすぎた。炎のブレスは金色の光柱に一瞬で飲み込まれ、そして直撃する。
ふらつくケルベロスに、トドメと言わんばかりの真っ黒な魔力球をリアス部長が放った。
―――――滅びの魔力。
それがリアス部長の魔力の特性。
だからこそ、計り知れない破壊力を持つのだ。
リアス部長の魔力球はケルベロスの首を削り取り、身体をも半分滅ぼしてしまう。
―――――一体撃破。
小猫ちゃんはケルベロスから繰り出される炎の球を軽々と躱しながら、接近していく。
そして、足元に来たかと思うと、突然腕の魔力を拳に集中させた。
「……1発……っ!」
そして、真上に跳躍し、ケルベロスの頭を殴り上げる。
これにはケルベロスも大勢を崩したが、残りの2つの首が落下中の小猫ちゃんを襲う。
「させません!【アイスメイク……“
しかし、その攻撃を防ぐように、氷の壁が出現する。
どうやらアーシアが小猫ちゃんを守ったようだ。
「……ありがとうございます……っ!」
小猫ちゃんは簡単なお礼を述べると、着地と同時に腹部の方へと潜り込んだ。
「……これで決めます」
小猫ちゃんはそう呟くと、両手に集めていた魔力を右腕にのみ、集中させ始めた。
小猫ちゃんの魔力は波打ち、収束されてゆき―――――ついには白い色を纏う。
「……まだ未完成ですけど……【
小猫ちゃんの拳には、その名の通り白い虎が現れ、当たった瞬間に炸裂する。
その威力、驚くなかれ、ケルベロスの身体を貫通させたのだ。
しかし、その後の小猫ちゃんは膝をつき、肩で息をしていた。
……あの技、相当燃費が悪いみたいだな……。
「……けど、かなり凄い」
アレで未完成というのだから、更に上があるのだろう。これは完成が楽しみになる。
―――――一体撃破。
最後一体のケルベロス。奴はここで、予想外……いや、ある意味妥当な行動をとった。
今のところ一番弱い、アーシアを狙ったのだ。
「アーシア!!」
「大丈夫です!イッセーさん!」
アーシアはそう言うと、手のひらに手を当てて、魔力を練った。その間にもケルベロスが近づいてきている。
「行きます!【アイスメイク……“
その掛け声とともに、アーシアの手から大量の冷気とともに魔力が射出された。冷気は魔力を伴い、カタチを作り上げ、そしてそこに誕生した。
―――――氷でできた美しい竜が。
「行ってください!」
アーシアがひとたび命令すれば、その氷でできた竜は、ケルベロスを殲滅せんと向かってゆく。
ケルベロスと氷でできた竜は組みあい、戦う。しかし、氷でできた竜であるため、少しずつだがケルベロスの攻撃である炎に溶かされて行っている。
これでは時間の問題だと、俺が飛び出そうとしたその瞬間、ケルベロスの首がひとつ宙に舞った。
俺の視界に入ったのは長剣のエクスカリバーを振るう少女―――――ゼノヴィアだった。
「加勢に来たぞ」
ゼノヴィアが着地したかと思えば、残りの2つの首も宙を舞う。これもゼノヴィアが……?いや、違う、この気配は……!
「木場!!」
ゼノヴィアの横に、見覚えのあるイケメンが着地するのが見える。
「……ちょっと遅くなっちゃったみたいだね。
でも、イイところは見せられたかな?イッセーくん」
木場はそう言うとその手に持った刀を斬り払い、納刀した。
首を全て斬られたケルベロスは地に沈み、その体を塵芥と化し、宙へと霧散していった。
「―――――完成だ」
不意に聞こえてくるバルパーの声。
それと同時に、校庭の中央にあった4本のエクスカリバーが眩い光を発し始めた。
空中で拍手を送るコカビエル。
「4本のエクスカリバーが1本になる」
バルパーはまるで狂ったかのような笑みを顔に貼り付け、エクスカリバーを見つめていた。
エクスカリバーから発される光に一瞬顔を手で覆う俺たち。
光が止んだかと思えば、校庭の中央にあった4本のエクスカリバーは姿を消し、青白いオーラを纏った1本の聖剣が浮かんでいた。
「エクスカリバーが1本になった光で、下の術式も完成した。
あと二十分もしないうちにこの町は崩壊するだろう。解除するにはコカビエルを倒すしかないぞ!!!」
バルパーはそう言うと、狂ったような笑い声を上げた。
「チッ!
なんてもん起動させてるんだよ!」
俺は眉を潜め悪態をつく。
リアス部長たちも焦燥の表情を浮かべていた。
「フリード!」
「……はいな」
先程まで姿の見えなかったフリードが暗闇の向こうから歩いてくる。
しかし、フリードの返事は嫌悪のような雰囲気を孕んでいた。
「陣のエクスカリバーを使え。
最後の余興だ。4本の力を得たエクスカリバーで戦って見せろ」
「……りょーかい」
フリードは短くそう言うと校庭のエクスカリバーを握った。
……やっぱり、使えるのか……。
木場の話では因子がないと使えないって聞いてたんだけど……フリードはそれを持っているのか……。
「リアス・グレモリーの【
「……いいのかい?」
ゼノヴィアと木場はそんな会話を始める。
「最悪、私はあのエクスカリバーの核になっている【かけら】を回収できれば問題ない。
……悔しいがあれほどの力を持つ剣をあのフリード・セルゼンが得てしまったんだ……。
私だけの場合の勝率はゼロに等しい……」
ゼノヴィアは悔しそうに顔を歪めた。
そんなゼノヴィアと木場のやり取りを笑う者がいた。―――――バルパーだ。
「バルパー・ガリレイ。僕は『聖剣計画』の生き残りだ。
……いや、正確にはあなたに殺された身だ。悪魔に転生したことで生き永らえている」
「ほう、あの計画の生き残りか。これは数奇なものだ。こんな極東の国で会うことになろうとは。縁を感じるな……ふふふ」
小馬鹿にしたような笑いで話すその姿に苛立ちめいたものが溜まるのを感じた。
「―――――私はな。聖剣が好きなのだよ。
それこそ、夢にまで見る程に。
幼少の頃、エクスカリバーの伝記に心を躍らせたからなのだろうな。
だからこそ、自分に聖剣使いの適性がないと知った時の絶望と言ったらなかった……」
突然、バルパーは語りだす。
「自分では使えないからこそ、使える者に憧れを抱いた。
その思いは高まり、聖剣を使える者を人工的に創り出す研究に没頭するようになったのだよ。
……そして―――――完成した。キミたちのおかげだ」
「……なに?完成?
僕たちを『失敗作』だと断じて処分したじゃないか!」
眉を吊り上げ、まるで噛み付くように叫ぶ木場。
だが、そんな木場の言葉とは裏腹にバルパーは首を横に振った。
「聖剣を使うのに必要な『因子』があることに気が付いた私は、その因子の数値で適性を調べた。
被験者の少年少女、ほぼ全員に因子はあるものの、どれもこれもエクスカリバーを扱える数値に満たなかったのだ。
そこで私は一つの結論に至った。ならば『因子だけを抽出し、集めることは出来ないか?』―――――とな」
「……なるほど。読めたぞ。聖剣使いが祝福を受ける時、体に入れられるのは―――――」
ゼノヴィアは事の真相に気づいたようで、忌々しそうに歯噛みしていた。
……俺もやっとわかった。
「そうだ、聖剣使いの少女よ。
持っている者たちから、聖なる因子を抜き取り、結晶を作ったのだ。こんな風にな」
バルパーはそう言うと、懐から光り輝く球体を取り出した。
遠目から見てもわかる、あれからは聖なるオーラを強く感じる……。
「これにより、聖剣使いの研究は飛躍的に向上した。
それなのに、教会の者共は私だけを異端として排除したのだ。研究資料だけは奪ってな!
貴殿を見るに、私の研究は誰かに引き継がれているようだ。
……ミカエルめ。あれだけ私を断罪しておいて、その結果がこれか。まぁ、あの天使のことだ。被験者から因子を引き出すにしても殺すまではしていないか。
その分だけは私よりも人道的と言えるな。くくくくくくくく」
愉快そうにバルパーは笑う。
……犠牲を払ってまで聖剣使いを増やす意味はあるのだろうか……?
俺は眉を潜め、奥歯を噛んだ。
「―――――同志たちを殺して、聖剣適合の因子を抜いたのか?」
木場から静かな殺気が迸る。
「そうだ。この球体はその時のものだぞ?なにせ初めての実験だったからな、錬度が悪くてこれ一つ程度しかできなかったがね」
「……バルパー・ガリレイ……っ!
自分の研究、自分の欲望のために、どれだけの命を弄んだんだ……っ!!!」
木場の手が震え、怒りに呼応するかのように魔力のオーラが溢れ、木場の全身を覆った。
「ふん。それだけ言うのならばこの因子の結晶を貴様にくれてやる。環境さえ整えば後で量産できる段階まで研究は来ている。
まずはこの町をコカビエルと共に破壊しよう。
あとは世界の各地で保管されている伝説の聖剣をかき集めようか。そして聖剣使いを量産し、統合されたエクスカリバーを用いて、ミカエルとヴァチカンに戦争を仕掛けてくれる。
私を断罪した愚かな天使どもと信徒どもに私の研究を見せ付けてやるのだよ」
……それがバルパーがコカビエルと手を組んだ理由……。
どちらも天使を憎み、そして戦争を望んでいる。―――――最悪のコンビとはまさにこのことか……。
バルパーは興味を無くしたかのように持っていた因子の結晶を放り投げた。コロコロと地面を転がり、木場の足元に行き着く。
木場は静かに屈み込んで、それを手に取った。
哀しそうに、愛しそうに、懐かしそうに、その結晶を優しく撫でていた。
「……皆……」
木場の頬を涙が伝っていく。
なんて綺麗で……悲しい涙なんだろう。
「木場……」
俺が声を掛けようとしたその時。木場の持つ結晶が淡い光を発し始める。
光は徐々に広がっていき、木場を中心に校庭を包み込むまでに拡大していった。
校庭の地面、その各所から光がポツポツと浮き上がり、形を成してゆく。
それはハッキリとしたモノに形成されてゆき―――――人のカタチとなった。
木場を囲むように現れたのは、青白く淡い光を放つ少年少女たちだった。
(……そうか……あれは……)
―――――木場の守りたかった同志たちか。
Side Out
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
Side 木場 祐斗
僕を囲むように現れたのは、そう、見間違うはずが無い……皆の姿だった。
「……皆っ!僕は……僕は……っ!」
自然と溢れる涙があった。泣いているつもりは無いのに、皆の姿を見た瞬間、溢れたのだ。
「……ずっと……ずっと、思っていたんだ。
僕が、僕だけが生きていていいのかって……。
僕よりも夢を持った子がいた。
僕よりも生きたかった子がいた。
僕よりも立派な子がいた。
……なのに、なのに僕だけが……平和な暮らしをしてもいいのか……僕だけが楽しい日常を過ごしてもいいのかって……!!」
僕は結晶をギュッと抱きしめて心中を吐露する。
『良いんだよ』
『だって私たちのことをずっと思ってくれた』
『ずっと忘れないでいてくれた』
『僕たちは知ってるよ?』
『イザイヤが誰よりも優しかったって』
「……みんなぁ……」
僕の周りで笑いながらそう言ってくれる。
そして、皆がいっせいに歌を歌い始めた。
それは僕が……僕たちが大好きだった歌。
「―――――聖歌」
聞いたことがあるのだろう、アーシアさんがそう呟く。
『さぁ、一緒に歌おう?』
『イザイヤの歌を聞かせて?』
僕はその時絶対に自らの意思では解かなかった【身体変化】の魔法を自然と解いていた。男性だった僕の身体は本来の女性のモノへと変化する。
後ろでは皆の驚きの声が聞こえる。
でも、今は関係ない。
僕はみんなに続いて聖歌を口ずさんだ。
皆の笑顔が見える。
優しい笑み。
勇気づけてくれる笑み。
元気な笑み。
昔見た大好きな皆の笑顔だ。
僕もそれに吊られて微笑みを浮かべる。
本来、悪魔である僕は聖歌を歌えばダメージを受けてしまう。
だけど、今は、今この時は、僕に勇気と力を分けてくれる。
皆は青白い光を放ち、僕を取り囲む。
『僕らは一人じゃダメだった』
『だけど皆がいれば大丈夫』
『聖剣を受け入れよう』
『怖くなんてない』
『例え、神がいなくても』
『私たちが、そして今のイザイヤには仲間がいる』
『例え神が見守ってくれていなかったとしても』
『僕たちの心はいつだって―――――』
「―――――ひとつだ」
皆の魂が僕の中に入ってくるのがわかる。
暖かな光とともに僕を包んでくれる。
「……いこう、皆。
―――――僕はもう、迷わない」
……僕は流れる涙を拭った。
本編の方はいかがでしたでしょうか?
楽しんで頂けたのなら幸いです♪
さてさて、今回のお話ですが……残念ながら今回も士織は現れませんでした……っ!!(>_<)
軽い書き溜めをしているのですが……次回で少しだけ登場するかもです(笑)
さてさて、今回はここまで!
また次回お会いしましょう♪