ハイスクールD×D~チートが転生させたそうですよ?~ 作:夜叉猫
バレンタインは誰にチョコを渡すか未だに迷っている夜叉猫です(苦笑)
今回でフェニックス編は終了となりますっ!!!
それでは、本編をどうぞ♪
Side サーゼクス・ルシファー
『ライザー・フェニックスさま……戦闘不能。ゲーム終了となります。
よって勝者はリアス・グレモリーさまとなります』
私はグレイフィアのアナウンスが聞こえているのにも関わらず声を出すことが出来なかった。
何故ならば、壊れることなどまずないと言われているフィールドに亀裂を入れる一撃を放った人物をこの目で見てしまったから。
「……これが……」
やっと出てきた言葉はそんな一言。
―――――これが今代の【赤龍帝】か……。
私は未だに自分の目を信じることが出来なかった。
そんな時、私の隣に座る彼女……いや彼はクスリと笑った。
「……良い一撃じゃねぇか」
神をも滅ぼしかねない一撃を見て『良い一撃』……??
そんな馬鹿な……彼はこれ以上の力を持つというのか……?
冷や汗が垂れるのを感じる。
「さてと……」
彼―――兵藤士織―――は徐ろに立ち上がると私の方を向いて口を開いた。
「サーゼクス、ちょっとライザーと一誠の所に行ってくるわ……。
流石にライザーの方は治療しねぇとやべぇだろうしな」
そう言われて私は改めて事実を認識し始める。
神をも滅ぼしかねない一撃をライザー君は生身で受けたのだ、いくらフェニックスであったとしても死にかねない!!
「安心しろよサーゼクス。
ライザーのことなら任せとけ。
完璧に治しておいてやる」
私のそんな焦りを感じたのか、士織君は苦笑いを浮かべながらさも簡単なことだと言うふうにそういった。
「ほ、本当かね!?
私の息子を救ってくれるのかね!!?」
「フェニックス卿……」
慌てた様子のフェニックス卿は士織君に詰め寄って心配そうな声で話す。
「今回は俺の弟のせいでピンチだしな……。任せなよ」
士織君はそう言うとその場から消え去った。
……なんて無駄の無い転移魔法……展開速度が段違いだ……彼は魔術師タイプなのだろうか……?
いや、なんにせよ、少なくとも彼は……
「私よりも強いのだろうな……」
その呟きは無意識のうちに漏らしていた。
Side Out
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
どうも、兵藤士織だ。
レーティングゲーム関係には無干渉を貫こうと思っていたのだが、流石に死人を出すわけにはいかないため急遽動き出すことにした。
俺はライザーの居場所を探知するとすぐさま転移魔法を使い移動した。
「ライザーさまっ!!
死なないで下さいませっ!!!」
「死なないでぇ~!!」
「ライザーさまぁ~っ!!」
「シーリスっ!!【フェニックスの涙】を用意できるだけ持ってきなさいっ!!」
「ぎょ、御意ッ!!!」
「にゃぁ~っ!!!」
「にゃにゃぁ~っ!!!」
自らの身体がボロボロ、瀕死なのにも関わらず、自分の事をそっちのけでライザーを助けようとする眷属の姿が視界に入る。
「……貴様何のようだ」
「ライザーさまに何かするようでしたら容赦致しません」
右からは剣が、左からは魔法陣を向けられ敵意と警戒心剥き出しの声を掛けられる。
……確かこの二人は剣を持っている方が【
俺は肩を竦めながら口を開く。
「ライザーを治療しに来た。
流石に死なれると困るからな」
その言葉を吐くと、ライザーのそばで魔法陣を展開していた女性―――ユーベルーナ―――は俺の方へと駆け寄り涙をこぼしながら口を開く。
「ライザーさまを助けられるのですか……っ?!」
「当たり前だろ。
出来ないなら来ねぇよ」
素っ気なくそう言うと、ユーベルーナは俺の服を掴みながら何かに縋るかのごと言葉を漏らした。
「……ライザーさまを……っ……助けて……ください……っ!!!!」
その言葉の後、その場にいたライザーの眷属たちは深く頭を下げる。
……いやぁ~……眷属に愛されてるねぇ~。
俺は無言でライザーの側へと歩み寄り状態を確認する。
フェニックスであるために再生するはずの傷が開いたままになり最早血だるま。辛うじて息をしているもののこのままではいつ死んでも可笑しくない。
普通ならこの傷を治すのは不可能だ……。
「―――――まぁ、俺は『普通』じゃねぇから関係ねぇけど」
言って、ライザーの方へ手を向ける。
正直【時間を戻す】方が楽なんだが……まだバレたくねぇしな……。
ライザーの身体を全て覆うほどの多重魔方陣同時展開を行う。
全ての魔法陣から淡い緑の光が発せられた。
「【
ライザーを照らす淡い緑の光は見る見るうちに傷を塞いでいく。
その傷を治していくスピードに周りの眷属たちは息を呑んで見守っていた。
「うし……傷も塞がったし内傷も治した……。
後は意識が戻るのを待っときな」
ライザーの治療を終えた俺はそれだけ告げると部屋から出ていくためにドアへ手を掛ける。
『ありがとうございましたっ!!!』
背後から聞こえてくるライザー眷属たちのお礼の言葉に後ろでに手を振るとそのまま出ていく。
廊下へと出た俺は背伸びをすると再び転移魔法を使用した。
さて……一誠の様子でも見に行くかな。
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Side ライザー
―――――此処は何処だ……?
前を見ても後ろを見ても右を見ても左を見ても上を見ても下を見ても何処を見ても闇が広がっている。
―――――俺は一体……。
頭を悩ませ、そしてやっとのことで思い出す。
―――――そうだ俺はイッセーの一撃を受けたんだ……。
あのとてつもない威力……。
身体が、頭が、しっかりと憶えている。
再生する力も残ってない身体で受けたあの一撃……。
―――――……死んじまったか……。
リタイアする手もあったが、何故かその手を取る気にはなれなかった。
あの一撃を……何故か真正面から受けてみたかったのだ。
―――――あ~……未練タラタラだな……。
死んでしまったと、そう思うと何故か冷静になった。
もっと慌ててしまうものかと思ったがどうやらそうでもないらしい。
―――――『ライザー……』
ふと、俺の名を呼ぶ声が聞こえた気がした。
―――――リアスの声を幻聴で聞くとか……俺どんだけだよ……。
―――――『起きて……ライザー……』
今度はやけにはっきりと、リアスの声が聞こえてくる。
そして、右手が暖かい光で包まれた。
―――――『ライザー……』
今度は悲しそうなリアスの声。
俺は暖かい光で包まれた右手を少しだけ握ってみる。
すると、柔らかな……そんな感覚を覚えた。
―――――『……ライザー?』
はっきりと、此処には居ないのに耳元で俺の名を呼ぶリアスの声が聞こえる。
右手を包む暖かい光は大きく広がり辺りを照らす。
俺の意識は何処かへと引っ張られていき―――――
「……リアス……??」
―――――口が開き声が漏れ出た。
目を開けば心配そうな表情を浮かべるリアスの顔が視界を埋めている。
「ら、ライザー!
意識を取り戻したのね!」
「……なんだ、死んだわけじゃ、無かったか……」
どうやら俺は意識を失った状態で夢のようなものを見ていたらしい。
リアスは俺の右手を両の手で握っていた。
「大丈夫?ライザー」
「……思ったよりか、楽だ」
そう言うと体を起こしてみる。
包帯が巻かれていたが傷が開くといった感覚は全くなかった。
「さっきまでは眷属のみんながあなたを見守っていたのだけれど……」
「そうなのか?」
「えぇ。
無理を言って私だけにしてもらったの」
リアスはそう言うと気まずそうに笑う。
なるほど……先程までは皆がいたのか……通りで包帯にまぎれて猫のシールが貼ってあったり何故かチェーンソーが置いてあったりしているのか……。
俺はついつい頬が緩むのを感じた。
「皆いい子たちね」
「……俺の自慢の眷属だ」
そう言って、俺とリアスは口を閉ざしてしまい、広がる気まずい静寂。
「……ねぇ、ライザー」
「な、なんだ?」
「私、あなたのことを誤解していたわ……」
「……仕方ないさ……。
俺は誤解されても仕方がない事をしてきたからな……」
思い返せば何故あんな馬鹿なことをしてきたのだろうと改めて思う。
そんな馬鹿なことをやめることが出来たのもリアスに会えたおかげだ。
「いいえ……私が知ろうとしなかったせいよ……本当にごめんなさい……」
「そ、そんなに謝らないでくれ!
俺がいつもいつも素直に『好きだ』と言わなかったせいなんだから……」
「そんなことないわ!
私が悪いの……」
「いやいや、俺が悪いんだ!」
「いや、私よ……」
「いやいや俺が……」
2人して頭を下げあっていると、どちらからともなく笑い声が漏れた。
2人とも頭をペコペコと下げているのが面白かったからだろう。
しばしの間部屋には笑い声が満ちた。
「ふふふっ……。
……ねぇ、ライザー」
「あぁ~……笑った。
なんだ?リアス」
「その……恋人……からじゃ駄目かしら……?」
「……えっ……?」
り、リアスは今何と言った……?『こいびと』……?
こいびと……コイビト……恋人!!?
俺は目を見開いてリアスの方を向く。
「い、良いのか!?」
「ら、ライザーが……嫌じゃないのなら……その……お願いします……」
顔を真っ赤にしながらそういうリアス。
ペコリと頭を下げるその姿が小動物のようで……愛らしい……!!!
俺はにやける顔を必死に引き締めながら返事を返す。
「是非、頼む!!」
俺のその言葉に微笑みを返してくれるリアス。
なんだ負けたのにも関わらず感じるこの幸福感は……!!!
なるほど……!これが『試合に負けて勝負に勝つ』と言う奴か!!
俺が小さくガッツポーズをしているとリアスが立ち上がって口を開いた。
「ライザー。目を……閉じてくれないかしら?」
「ん?あ、あぁ。目を閉じれば良いんだな?」
リアスのいうがままに目を閉じる。
―――――ちゅっ。
「は……っ!!!?」
唇に感じた柔らかな感触に目を見開く。
目の前にいるのは顔を赤くしながらしかし凛とした表情で唇を触るリアス。
「これから宜しくね?ライザー。
これはお詫び。私のファーストキスよ。日本では女の子がとても大切にするんだからね??」
そう言うと、リアスはドアの方へと心なしか速歩で向かっていく。
「俺からも宜しく頼む!!」
キスで放心していた俺がやっと絞りたせたのはそんな言葉だけ。
リアスは少しだけ振り返るとにこっと微笑みを見せてくれる。
「また後で会いましょう?ライザー」
そしてドアをゆっくりと開くと―――――
『おめでとうございます!ライザーさま!!!』
「うふふ……おめでとうございます部長」
「部長、おめでとうございます」
「……おめでとうございます」
「おめでとうございます、部長。
ライザーとなら上手くいくと思いますよ」
「おめでとさん。
まぁ、こんな事になるだろうとは思ったけどな……」
―――――俺の眷属たちとリアスの眷属たち、それと兵藤士織の姿があった。
皆が皆、暖かな瞳を向けている。
「あ、あなた……たち……」
「お、お前……たち……」
頬が引き攣るのを感じる。
リアスは後ろ姿しか見えないがその顔が引き攣っているだろうと容易に予想できた。
「……あなたたち……いつからいたの……?」
「あん?いつから居たか?
んなの一番最初っからに決まってるだろ?
なぁ、皆?」
兵藤士織の言葉の後に全員が首を縦に振る。
……最初からということは……。
「お、お前たち―――――」
「~~~~~~~~~っっ!!!」
俺が言葉を最後まで言う前に、リアスが声にならない悲鳴を上げる。そして、ドアを力強く閉めた。
肩で息をするリアス。
こちらの方を向くとまだ赤い顔のままニコリと微笑むと口を開いた。
「……まだ此処に居てもいいかしら?」
「……勿論だ。
互いにこれから大変そうだな……」
「……そうかもしれないわね……」
それから俺たちはたくさん会話をした。
昔のこと、今のこと、そしてこれからのことを……。
本編はいかがでしょうか?
楽しんで頂けたのなら幸いです♪
さて、今回はライザーが幸せるになる……という原作ではありえなかった展開となりましたが……いかがでしたでしょう??
感想お待ちしていますね♪
それでは、また次回お会いしましょう♪