ハイスクールD×D~チートが転生させたそうですよ?~ 作:夜叉猫
今回の話ではグレモリー眷属がかなりの成長を遂げていますのであしからず……(苦笑)
ひとまず、本編をどうぞ♪
どうも、兵藤士織だ。
祐斗女の子事件を過ぎて気づけば修行も最終日。10日の修行でどこまでレベルを上げられたか……今日はそれを確かめるために全員を一人一人試験する予定だ。
「さて、やるか祐斗」
「うん!僕がどれくらい強くなったかその目で確かめて貰うよ!!」
祐斗は木刀を握り締めやる気満々と言った表情を浮かべる。ちなみに、祐斗に掛けていた【重力増加】の魔法は既に解いてある。
「行くよ……士織さんっ!!!」
声を張った祐斗は地面を蹴り出した。
そのスピードは【重力増加】を掛けた日とはまるで違う。
一閃された祐斗の木刀をガードしながら自然と浮かぶ笑みを隠せない。
「やるじゃねぇか祐斗!!」
「あれだけ士織さんに扱かれて強くならない訳には……行かないからねっ!!」
鍔迫り合いをしていたその時、祐斗はふと、姿を消した。
「おっと……こりゃびっくりした」
「……言ってる割にはあっさりとガードするね……」
背後からの攻撃を木刀を滑らせガードした俺に祐斗は苦笑混じりにそう言い、距離を取る。
「いやいや、そうは言うが祐斗。
俺の視界から一瞬でも消えられたんだからそのスピード、自信を持ってもいいぞ?」
リミッター付きの状態だったとはいえ、まさか見失うとは思ってもみなかった。
「でも……まだまだ士織さんには届きそうにないな……」
これは参った……。祐斗はそう言いながらも俺に一矢報いようという気迫が感じられる。
祐斗はふぅ、と息を1つ吐くと木刀を腰の位置に、まるで納刀するかのように構えた。
「へぇ……抜刀術か?」
「僕の剣は速さに特化してるからね……。
行き着く先はどうしても
そう言った祐斗はその構えのまま前傾姿勢を取る。
「
しばしの沈黙の後、祐斗は極端な程の前傾姿勢から地面を抉り飛び出したのだ。
「……っ!?」
祐斗の姿が一瞬ぶれる。
その一瞬が俺の反応を鈍らせた。
祐斗の抜刀はただ純粋に速さを求めたのだろう。
その一閃は―――――速かった。
木刀によるガードも既に間に合わない所まで祐斗の一閃は迫っている。
俺は木刀を手放し―――――
「―――――合格」
「な……っ!!!?」
祐斗の一閃を
流石に素手で掴むのはやり過ぎたか?そんな考えが頭に浮かぶ。
「―――――流石、士織さん……。
まだ、この
そう言って、上げられた祐斗の顔にはまだ先へ行こうという向上心を感じた。そして何より、今の抜刀術を防がれるのを望んでいた。祐斗の瞳はそんな雰囲気を孕んでいた。
どうやら、俺の行動はやり過ぎでは無かったようだ。
俺はそんな祐斗の頭を軽くポンポン、と叩き、口を開く。
「……良くやったな」
「士織さん……」
自分でも、驚くほどに優しい声音だった。
祐斗も嬉しそうな表情を浮かべてくれる。
「……さて、他の奴らも見てこねぇとな……」
掴んだままだった祐斗の木刀を返すと踵を返して歩み出す。
最低ラインくらいはみんなにクリアしてもらわないと……。
「
また、相手をお願いするね!」
突然聞こえてきた祐斗の声。
しかも、俺のことを初めて呼び捨てで呼んだ……。
「頑張れ、祐斗」
後ろ手に手を振りながら、呟くくらいの声でそういった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「……行きます」
小猫の所を訪れ、真っ先に言われた言葉、それは『相手をして下さい』という小猫の自信に満ちた声だった。
「来いよ小猫。遊んでやる」
修行開始時にも言ったその言葉を小猫にかける。それに対して小猫は初めと同じ言葉を返すわけではなく、フェイントを混ぜながらのステップで近付いて来る。
驚くことに混ぜられるフェイントはレベルが大幅に上がっていた。
「イイねぇ……」
呟く俺の声が聞こえたのか、小猫の口角が少しだけ動く。そして、一瞬の隙を作ってあげると―――――
「……流石に学びました」
それとは逆の方向から小猫は接近し、ラッシュを始めた。
攻撃の威力は勿論、フェイントの上手さが改めて感じられる。
あの時のフェイントの甘さはもう感じない。あるのはただ、本気で騙しにかかる小猫の技。
「……これだけで驚かないで下さい」
小猫は右腕を大きく振りかぶると……その拳の部分に魔力を纏わせ、俺に向かって放つ。俺は放たれた拳の部分を掌で滑らせ、地面へと誘導させる。
そしてそのままバックステップで距離を開けた。
「おぉ……中々の威力……」
「……当たって下さい」
そう言いながら、小猫は外してしまった拳を再び構え直す。
小猫の拳が放たれた地面はまるで爆撃の後のように抉れ、散っていた。
「その威力の直撃は遠慮しとくわ」
「……遠慮は要りません。さぁ……」
そう言った小猫は両の拳に魔力を集め、ボクシンググローブのようにして見せる。
「……次は、これです」
「うっわぁ……えげつないねぇ……」
俺はそう言いながら、またも予想以上の成長を見せられ、自然と微笑んでしまう。
「……うん。合格だ小猫」
「……っ!!」
俺の呟きは聞こえなかったのだろう、小猫はそのまま接近してラッシュを始めようとする。
「だから合格だ。小猫」
両の拳を受け止め、そのまま一本背負いの要領で地面に叩きつけた。
小猫は一瞬目を見開いたものの、むくり、と立ち上がり服についた土埃を払って口を開く。
「……やっぱり廃スペック過ぎます」
「まぁ、小猫も成長したじゃねぇか」
「……まだまだです」
そう言った小猫はまたも魔力を纏わせ始める。何事か、まだやるつもりかと思考したがそれは違うのだと、小猫の表情から読み取ることができた。
「……本来、なら……これを両腕……に、やりた……かった、です……っ!」
辛そうにそう言った小猫の右腕には魔力でできた……【白虎】の顔があった。
魔力の密度が濃い為か、その白虎は白く輝いている。
小猫は俺が見たのを確認したのか、腕の白虎を消し、荒い呼吸を取り始めた。
「……流石に……完成……しませんでした……」
額には玉のような汗を浮かべ、辛そうな小猫。どうやら相当無理しないと出来ない芸当らしい。
「いや、今のだけでも十二分に驚いた……。
まさかあんなモノを作っているとは……」
俺は素直にそう言うと、小猫の頭をこれでもかという程に撫でた。
「うにゃ~……♪」
気持ち良さそうに擦り寄る小猫。
……やばい……小猫が猫みたい……。いや、小猫は猫だけども……っ!!
(次は……姫島先輩か……)
時間にはまだ余裕がある。
気持ち良さそうに目を細める小猫の姿を見ると何処か心が安らぐ気がする。
俺はそんな小猫をしばらく撫で続けた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
小猫を撫で終えた俺は姫島先輩が居るであろう場所へと向かっていた。
「……修行場所を変えなくても良いだろうに……」
森の中を歩みながらそう呟く。
アーシアと共に修行しているようだが……果たして結果が出ているのか?それが気になる所だ。
―――――と、俺が姫島先輩たちの姿を探していると、前方から複数個の魔力球が飛来して来るのが見えた。
その動きはまるで―――――
―――――
―――――
2つを兼ね備えているかのようだ。
俺は飛来して来る魔力球を躱しながら、その場を駆け出す。
木々を使いながら複雑な道を辿るが、魔力球はそれをものともせず、時には躱し、時には木ごと粉砕し俺を追ってくる。
「……やるじゃねぇか」
グレモリー眷属はどうしてこうもイイ意味で俺の予想を裏切ってくれるのだろうか……。
俺は背後から迫る魔力球に気を配りながら笑みをこぼす。
「取り敢えずそろそろ反撃と―――――っ!!?」
魔力球を迎撃しようと反転し、跳躍しようとした矢先、足をつるりと滑べらせてしまった。
足下を見るとそこには何時の間にか広がる氷の地面。視線をずらせば地面に手を触れながらこちらへ微笑んでいるアーシアの姿が見受けられる。
「やべ……っ!」
反転したことにより前方から迫ってくる魔力球。滑らせ、崩れた体勢から捉えられた魔力球の数は【10】……いや、【11】!?
俺はその事実に目を見開く。
このコントロールだけではなく操作数も増やしてくるとは……!!
俺の言ったことをこうもこなして来られるとまだ上を見せてみたくなる。
「此処までやられるとは思わなかったぜ!!」
2人に届くほどの大声で叫ぶ。
そして、俺は崩れた体勢のまま大きく口を開き迎撃のための【
「【火竜の咆哮】ッッ!!!!!」
口から吐き出すのは竜の焔、紅の業火。
その炎は魔力球を全て飲み込み、そして焼き尽くす。
俺はそのまま体勢を整えると着地と同時に口を開いた。
「お前らも合格だ」
アーシアの方を改めて見てみると、そこには姫島先輩の姿もある。
どうやら移動してきたようだ。
「あらあら……折角奇襲しましたのに……残念ですわ」
「やっぱり士織さんは凄いですね!」
姫島先輩はニコニコしながら、アーシアは瞳を輝かせながらそう言った。
「流石にやられるわけにはいかねぇからな……。
まぁ、2人の作戦は中々のものだったぞ?」
「そういって貰えると嬉しいですわ」
「朱乃お姉様のおかげですね!」
アーシアは姫島先輩のことを尊敬の眼差しで見つめ、満面の笑みを浮かべる。
「……【朱乃お姉様】って……」
「うふふ……アーシアちゃんに試しに呼んで貰ったら気に入ってしまいましたわ」
口元に手を当てながら笑う姫島先輩。
それにしても朱乃お姉様とは……まぁ、アーシアも嫌がってはいないようなので何も文句は無いが……。
「そうだ、2人とも」
俺は思い出したかのように手を叩く。
2人は首を傾げながら俺の発言に耳を傾けているようだ。
「2人には約束通り、修行の結果の褒美をやらねぇとな……?」
そう言うと、姫島先輩は一瞬で俺の元まで移動し、手を握った。その時の姫島先輩は子供のような笑顔を浮かべていた。
「私はそれを待ってましたわ!」
「お、おう……約束したからな……」
あまりの迫力に苦笑いを浮かべながらも俺は興奮冷めやらぬ姫島先輩をなだめ、アーシアも一緒に【妖精の魔法】をひとつずつ伝授した。
この【妖精の魔法】を2人が使いこなせるようになるのは何時になるか……それも楽しみである。
「……頑張れよアーシア、
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
夕食、入浴を終えての静かな一時。
俺は唯一試験をしていないグレモリー先輩の姿を探していた。
「あら?士織?」
「此処に居たかグレモリー先輩」
リビングにあるテーブルの所に腰掛けていた。ティーライトキャンドルの淡い灯がその場を包んでいる。
俺は持ってきていたチェス盤と駒を置き、グレモリー先輩の向かいに腰掛けた。
「へぇ?眼鏡か……。
グレモリー先輩は目が悪かったのか?」
赤いネグリジェ姿のグレモリー先輩は紅の髪を1本に束ね、眼鏡をかけている。その姿が珍しかったもので、そう聞いてみる。
「あー、これ?気分的なものよ。
考え事をしている時に眼鏡をかけていると頭が回るの。
ふふふ……人間界の暮らしが長い証拠ね」
クスクスと小さく笑うグレモリー先輩。
気のせいだろうか、今のグレモリー先輩は何時もよりも集中力と冷静さが研ぎ澄まされているように見える。
ふと、テーブルの方へ視線を向けると、そこには無数の紙が広げられていた。その紙一枚一枚にはフォーメーション、地図、作戦と言ったものがびっしりと書き込まれている。
「……よく考えられてるじゃねぇか」
俺はテーブルの上に置かれていた紙の中から1枚を手に取りそう口にする。
「それは……ついさっき書いたものね……」
―――――でもそれはあまり使いたくないわ。グレモリー先輩は苦笑いを浮かべながら呟いた。
「……そうだろうな。
なんせこの作戦、成功させるには―――――」
「―――――アンタの嫌いな【
「…………」
無言のグレモリー先輩。しかし、その表情を見るにもう迷いはないのだろう。
「……私は【犠牲】は嫌い。
可愛い眷属たちが傷付くのを見たくないの……。
―――――でも、それは私の我が儘……」
ギュッと、ネグリジェの端を握る。
「……朱乃も、祐斗も、小猫も、アーシアもそしてイッセーも……あの子たちは私の勝利を望んでくれる。勝利の為に戦ってくれる……。
それなのに、私は傷付いた姿を見たくないなんて言ってあの子たちの頑張りを無駄にしようとしていたわ……」
「…………」
「最後まで足掻いて、藻掻いて……格好悪くとも、泥臭くとも―――――勝つ。
それが私の為に戦ってくれるあの子たちへの私なりの恩返し……」
言って、グレモリー先輩は微笑んだ。
俺は大量の紙を束ね、持ってきていたチェス盤をテーブルの上に乗せた。
「……取り敢えず1戦、やるぞ?」
「……まだ勝ててなかったわね……」
グレモリー先輩はかけている眼鏡のブリッジ部分をクイッと指で押し上げ、笑う。
綺麗に並べられた白と黒の
「勝たしてもらうわね」
「……敗けねぇよ」
俺は初手で白の【
―――――ゲーム開始からしばらく経った。
戦況は五分五分。グレモリー先輩の何時もより冷静なプレイングは容易に攻めさせてはくれない。
「チェック」
「……やるじゃねぇか」
俺はグレモリー先輩の一手に思考する。
本当に冷静なプレイングだ……いくら揺さぶりを掛けても動じない。
俺は残っている駒を1つ動かしグレモリー先輩の駒の進路を塞ぐ。
すると、グレモリー先輩はクスリと笑い、俺を見た。
「士織、それは悪手よ?」
そう言って即断の一手、それも最高の一手を打った。
「―――――チェック」
「く……っ!!」
俺にやれることは【
「―――――チェック・メイト。
私の勝ちね?士織」
―――――グレモリー先輩の勝ちがあった。
「あぁ~あ……等々敗けちまったか」
「とは言ってもこれが初勝利なのよ?」
グレモリー先輩は眼鏡を外しながら苦笑いを浮かべる。
「でも―――――勝ちは勝ち、だろ?」
「……えぇ、そうね」
俺の一言にグレモリー先輩は柔らかな微笑みを見せた。
俺は立ち上がりポケットに手を突っ込み部屋の方へと向かい始める。
「もう行くの?士織」
「ん?まぁ、夜も遅い。
人間の俺にはちっと辛いからな」
「そう。じゃあ、おやすみな―――――「あぁ、そうだグレモリー先輩」……何かしら?」
グレモリー先輩の言葉に被せるように俺は立ち止まって言葉を挟む。
「気になっていたんだが……なんでライザー・フェニックスとの縁談を拒絶してるんだ?」
俺の言葉にグレモリー先輩は腕を組む。
そして、ゆっくりと口を開いた。
「……ライザーは私との結婚をいつも『仕方がない』『不本意ながら』『家のために』『純血が』『悪魔の未来の為に』……そう言って来るのよ」
「……確かにこの間も言っていたな……」
「……これは本当に我が儘なのだけれど、結婚するなら本当に私のことを好きな人としたいの……」
―――――私は本当に迷惑ばかり掛けているわね。グレモリー先輩は悲しげに言った。
「……まぁ、我が儘って程じゃねぇだろ。
普通だ普通。気にすんな」
「……ありがとう、士織」
俺は後ろ手に手を振りながらそのグレモリー先輩の呟きを聞く。
そして、薄い笑みを浮かべながら言葉を述べる。
「んじゃ、お休み
「っ!?士織今私のこと―――――」
リアス先輩の言葉を残しながら足早に部屋へと向かった。
明日はゲーム本番なんだ。頑張ってくれよ?リアス先輩。
―――――こうして、修行最終日は幕を閉じた。
本編はいかがでしたでしょうか?
楽しんで頂けたのなら幸いです♪
と、言うわけでグレモリー眷属をかなり強化しましたが……こんなに強くなったらライザーは確実に勝てない気がするんです……(苦笑)
そして、空気化した一誠君……(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
ライザーとのゲームではしっかり活躍させます!夜叉猫さんの約束ですっ!!
感想をお待ちしておりますっ!!!
それでは、また次回お会いしましょう♪