ハイスクールD×D~チートが転生させたそうですよ?~ 作:夜叉猫
今回は比較的早く更新できたと思いますっ!!
ひとまず、本編をどうぞっ!!
Side 三人称
広い、広い露天風呂。
そこには一人の少年の姿以外は何処にも見当たらなかった。
「ふぅ……」
背伸びをする少年―――祐斗―――はその日の疲れを癒すようにゆったりとした動きだ。
祐斗の腹部には複雑な魔法陣が描かれており、それを視界に入れると苦笑いを浮かべる。
「……今日は本当に、疲れたなぁ……」
1日の出来事を思い出したのか何処か困ったような表情の祐斗。
それもそうだろう。祐斗は士織に掛けられた【重力増加】の魔法により一日中地面に押さえつけられていたと言っても過言ではないのだから。
今も祐斗は重たい身体を動かすために何よりも優先して【身体強化】を行っているのだ。残り少ない魔力を使いながら。
「ひとまず……明日に備えて疲れを取らないと……」
翌日から再開されるであろう修行のことを思いながら、湯船に浸かり直す祐斗。
身体の重い状態での修行はかなりの負担になるだろう。
「―――――へぇ、結構広いな」
「……えっ?」
背後から聞こえてくる入口の開く音と聞き覚えのある声に、祐斗は間抜けな声を漏らしてしまう。
そして、ゆっくりと振り向くとそこには―――――
「よぉ祐斗。
悪ぃな俺も一緒に入らせてもらうぜ?」
―――――美しき少女の姿があった。
否、外見は少女のようだが、彼は紛れもなく男だ、という事実が祐斗にはいまひとつ信じられないでいる。
「し、士織……さん?」
「おぅ。どうかしたのか?」
いつもは下ろしている士織の暗めながらも美しい青髪は現在、入浴するためかポニーテールにまとめてあるため、違った雰囲気を感じられる。
「いや、あの……」
「なんだ?何か言いたいことでもあるのか?」
士織はそう言いながら湯船へと入っていく。祐斗の横まで移動するとふぅ、と短く息を吐いた。
「……本当に男だったんだね」
「当たり前だろぅが。
つか、祐斗。お前は何処を見てそう判断した?ん?」
ジト目を祐斗に向けながら、士織はそう口にする。
「何処を……って……その……」
「だから頬を染めるんじゃねぇよ気持ち悪い」
士織の問いに対して答えようとする祐斗の顔は赤く染まっていた。
それが湯船に浸かっているからなのか、それとも恥ずかしがっているのかは分からない。……と言いたい所だがそれは見るに明らかだろう。
「そういや……お前と2人でゆっくり話したこと無かったな」
士織は風呂に入ったことでリラックスしたのか、優しい声音でそう言った。
「そ、そうだね。
僕としては士織さんとお喋りしたかったんだけど……」
「そうだったのか?」
士織は祐斗の方を向きながら意外だという表情を浮かべる。その表情を見た祐斗は苦笑いをしながらこくり、と首を縦に振った。
「……小猫とはよく話すんだが……」
「小猫ちゃんばかりずるいと思っていたんだよ?」
「そりゃ気付かなかったわ」
―――これからは暇なときにでも話し掛けてくれ。士織はそう言うと優しい笑みを浮かべた。
「も、ももももも、勿論だよっ!!」
士織の方を見ていた祐斗はバッと顔を逸らしてそう口にする。
「……なぁに挙動不審になってんだよ」
「別に深い意味は無いよ?!」
「顔がまた赤くなってるが?」
「いや~のぼせちゃったかな!!」
士織とほんの少ししか入浴時間は変わらないのにのぼせたかもという言い訳は苦しい。祐斗も冷静ならばそれに気付けたはずだが今は何故か冷静ではなかった。
「こっち見て話せよ」
「ちょ、ちょっと無理かな~なんて……」
「ったく……」
士織は溜息を吐くと立ち上がり、祐斗の前に回り込んだ。
「お喋りしたいんだろ?」
悪戯な笑みを浮かべた士織。慌てている祐斗で遊んでいるのだろう。
「……僕で遊んで楽しんでるね?」
祐斗はあわあわと忙しなく表情を変えていたが、笑いを堪えている士織の様子に冷静になったのか、そう言うとジト目を浮かべながら顔を少しだけ湯船に沈めた。
「悪ぃ悪ぃ。
祐斗の反応があまりにもおもしれぇからな」
士織は笑いを堪えるのを止め、涙を浮かべながら口を開くと軽い口調でそう言う。
「全く……士織さんは酷い……よ」
突然、祐斗の身体が光り始める。
士織はそれを訝しげに見ていると今度は祐斗が目に見えて焦り始めた。しかも、この慌て様は尋常ではない。
「ま、まずい―――――!?」
湯船から急いで立ち上がった祐斗だったが、足を滑らし士織の方へと倒れてしまう。
2人は激しく水飛沫を散らせながら湯船の中に消えた。そして、一瞬、湯船の中が光で輝いた。
Side Out
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Side 士織
「ぷはぁっ!!」
祐斗に押し倒されて湯船の中に沈んだ俺はなんとか倒れてきた祐斗ごと身体を起こし湯船から顔を出す。
「危ねぇだろぅが!!!
……ったく……お前は何を―――――」
しているんだ。その言葉は続けることが出来なかった。
何故なら、俺の目の前には―――――
―――――見たことのない
腰に届く程の美しい金髪を湯によって濡らしその細身の肢体に貼り付けており、その細身の肢体に反して、たわわに実った2つの果実は俺の胸に当たり、潰れている。
清楚そうな雰囲気を纏った、泣きボクロが特徴的な、そんな少女。
「だ、誰だお前!?」
俺はそんな少女を素早く引き剥がすと後退りする。
少女はハッとした表情で身体を隠すように自らの腕で抱きしめると、湯船に浸かり顔を真っ赤に染めた。
「―――――ぼ、僕だよ。木場祐斗だよ」
その名前が聞こえると、途端に俺の頭は冷静になった。それはまるで今までバラバラだった歯車が、噛み合った様に正確に。
―――――『僕は木場……祐斗。
クラスは違うけど兵藤さん達と同じ2年生です。
えーっと……僕も悪魔です。
宜しくね』
自分の名前を言うときに躊躇ったが何かあるのだろうか……?
―――――『お前は乙女かっ!!!』
『痛っ!ひ、酷いな士織さん!
僕は紛れもなく―――――じゃなくて!
手刀を落とすなんて酷いじゃないか!』
『お前が変な反応するからだろうが!』
そうは言ったものの、祐斗の発言に何処か引っかかるところがあったのは気のせいだったのだろうか……。
「…………」
「…………」
互いに無言のまま、時間が過ぎていく。
俺は祐斗から顔を逸らしたまま口を開いた。
「……取り敢えず風呂からあがれ祐斗。
お前が祐斗だってのは信じてやるから。
……その格好は目に毒だ」
ちらりと祐斗の姿を見る。
唯一の布は腰に巻かれたタオルだけ。それも濡れてしまっていて巻いているのか張り付いているのかわからないほどだ。
「う、うん……。
そうさせて……もらうね」
「安心しろ。
きちんと目を瞑っててやるから……。
上がったら俺の部屋にいてくれ。俺は後から行く」
それだけを言うと、俺は目を閉じ祐斗とは真逆の方を向いた。
―――――ちゃぷん……。
―――――うぅ……髪が……張り付いて……。
―――――タオルの意味もないよね……これって……。
……あぁ……音だけってのも耳に悪いな……。
俺は【遮断】の魔法を使い、しばらく聞こえてくる音を遮断した。
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祐斗があがっていって三十分程の間をあけてあがり、素早く着流しに着替えた俺は祐斗の待つ自室へと急いだ。
扉を開けて中に入るとベットに腰を下ろした祐斗の姿が目に入る。
「……待たせたな」
「ま、待ってなんかないよ」
俺は息を整えつつ祐斗の横に腰を下ろした。そしてまた、2人の間に沈黙が降りる。
「……説明、した方がいいよね……」
しばしの後、祐斗が先に沈黙を破り、そう口にした。俯き気味の祐斗。俺はそれを見た時無意識のうちに手を伸ばしていた。
「―――――いいや。無理に説明しろとは言わねぇよ。
何時か、何時か教えてくれるのならそれは今じゃなくてもいい」
祐斗の頭を優しく撫でながら、そう口にしていた。
祐斗は驚いた様な表情で俺を見たが、頭の手を払う事はなく、ただ気持ちよさそうに受け入れてくれる。
―――――閑話休題。
「……ありがとう士織さん」
「気にすんな。
人には言えない秘密の1つや2つあるもんだ」
しばらくして落ち着いた様子の祐斗。
今ではいつものようなスマイルを浮かべることもできるようになっている。
「士織さんにも……あるの?」
「何がだ?」
「ほら……その……誰にも言えない秘密……とか」
「無いこともないな」
俺はベットに寝転び、そう言う。
祐斗はそうなんだ……と言って秘密について聞こうとはしない。
「祐斗、1つ聞いていいか?」
「何かな?」
「お前の【身体変化】の魔法は自作か?」
「いや、違うよ。
これは僕の剣の師匠に教えてもらったんだ。
でも、師匠も誰かに教えてもらったって言っていたような……」
祐斗は首を傾げながら俺の質問に答えてくれる。
それにしてもリミッター付きとは言え、俺にも気づけない程の高度な【身体変化】……誰が作ったのかが気になってしまう。
「ねぇ、士織さん」
「なんだ?祐斗」
「木場……祐奈」
祐斗は、ゆっくりとそう言った。
「ん?」
「男の時の僕の名前は『木場祐斗』。
だけど女の時の名前は『木場祐奈』っていうんだ」
「
俺は祐斗の方を向きながら『祐奈』と言う名前を反復させる。
「いや、これは僕が部長の眷属になってから貰った名前。
僕の本当の名前は―――――あの時置いてきた」
そう言った祐斗の瞳には暗い炎が灯り、哀し気な雰囲気を纏わせた。俺はそれが何なのか、すぐに分かった。分かってしまった。
「……復讐か?祐斗」
「……まぁね。
僕にとってそれは何よりも優先すべき大切な事だ。
例え何が立ちはだかったとしても……それを全て排除して、成し遂げる」
―――――みんなのために。
祐斗はそう続けると瞳を閉じた。
そして、再び開かれた時、その瞳には暗い炎など見る影もなく無くなり、いつもどおりの祐斗のモノへとなっていた。
しかし、哀し気な雰囲気は消しきれてはいなかった。
「……なぁ、祐斗」
「何かな?士織さん」
「復讐の先に何があるのかは分かっているか?」
「…………」
祐斗は答えない。何も答えない。
俺は溜息を1つ吐くとゆっくりと重たくなってしまった口を、開く。
「―――――【虚無】だ。
復讐の後に残るのは【虚無】だけだ」
「……それでも、僕はっ!!!」
「だから!!!」
俺は祐斗の言葉を遮るように声を張った。
「『木場祐奈』その名を俺に預けろ」
「……え……?」
祐斗はわからないと言ったような表情を浮かべ俺の方を見詰める。
「復讐が終わって、お前は【虚無】に囚われるだろう。自分の思っている存在意義を失ってしまうんだから。
でも、そんな時は俺のところへ来い。
その時はこの名前をお前に返して―――――新しい
言って、俺は祐斗に向けて笑みを浮かべた。
祐斗はしばらくぽかんとした表情をしていたが、一瞬顔を俯かせて俺の方を向いた。
「……わかったよ。
君に預ける。僕の名前も、この姿も、この声も。
そして―――――」
祐斗は満面の笑みを浮かべてこう言った。
「―――――女としての幸せも」
「おぉっと……こりゃ、とんでもないものを預かっちまったな……」
「預かってくれるんでしょ?
嫌だとは言わせないからね?」
そう言った祐斗の顔は小悪魔的な笑みが浮かんでいた。
その姿は―――――輝いて見えた。
―――――――――――――――――――――――
Side 木場
「そ、それじゃあ、僕はもう戻るよ!
明日からも修行宜しくお願いします」
僕は自分の言った言葉に恥ずかしくなり、ぺこりと頭を垂れると急いで部屋から出ようとした。
「祐斗!!」
「…………」
僕を呼び止める士織さんの声。
振り向くことはせずにそのまま聞く。
「……お前がもし、復讐を終えて、俺でいいと思えたのなら……」
「…………」
「その時は、お前に―――――女としての幸せも返してやるよ。
勿論嫌っていう程な?」
「……っ!!」
僕は急いで扉を開けて廊下に出る。
扉にもたれ掛かってさっきの士織さんのセリフについて考える。
「―――――そういう意味で受け取っても……良いんだよね……?」
僕の顔が熱くなったのがよく分かった。
本編はいかがでしたでしょうか??
予想していた人はたくさんいらしたでしょうか??(笑)
ともかく、祐斗君は祐奈さんということになります!!
こう言った話が嫌いだった読者様にはお詫び申し上げます……(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
これからも頑張りますのでどうか宜しくお願い致しますっ!!
それでは、また次回お会いしましょう♪