ARMORED CORE V ―OASIS WAR―(改訂版)   作:キサラギ職員

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Dry Mirage:ACSLサントラ 乾いた蜃気楼


オアシスルート
6、Dry Mirage(前)【オアシスルート】


  オアシスを巡る争いの源泉とは水資源とも言えるだろうが、引き金を引いたのは一連の「戦争」で「代表」の保有する戦力が各地に散らばったことにある。

 ある戦力は無人の雪山に安住の地を求め、またある戦力は旧時代のメガフロートを拠点とした。

 現在オアシスを拠点としているミグラントもまたかつての「代表」のもとで働いていた戦力の一部分である。

 企業の圧倒的な攻撃は見せしめの意味合いが強く、シティ外延部を警護する戦力は手付かずにされた。

 「企業」の真の目的はシティでも代表でもなかったのだから、不揃いな攻撃は必然だった。

 

 

 

 

 

 彼女にとって誰かの飼い犬(ハウンド)になることは、悪い話とは思えなかった。このご時世、傭兵家業一筋では生きていくのが難しいのも事実である。傭兵が私兵となったところで誰に批判されるでもあるまい。だが私兵になれば重んじてもらえるかと言えば、答えは否である。元傭兵など信用できぬと言わんばかりに屑値で使い潰されるおそれもある。それならば傭兵の方がましというものだ。少なくとも傭兵は契約を順守して結果を出す限りよい扱いをしてもらえるからだ。

 考え抜いた揚句出した答えは、折衷案。

 一定期間に限り別のところとは一切手を組まない“傭兵”として働くというもの。数回の実戦をへて実力の証明は終了している。オアシス側から勧誘を持ちかけてきたということは逃したくない人材であるということの裏付けにほかならず、例え傭兵という形であれ確保しておきたいはず。そう踏んでのことだ。もし、駄目だ、という返答が返ってきたのならば契約期間終了後に己の基地に帰るつもりだった。もう半年も帰っていない。死肉を食らう渡り鴉のように戦場から戦場へ転々としてきたのだから。

 返答があった。

 契約成立、と。

 さっそく戦場に赴くように指示があった。

 

 

 

 ―――――――――――

 

 

 

 R2Bシリーズ―――通称『盾持ち』が計四機整列しておりその先頭には赤黒い塗装をした重量二脚型のACが屈んでいた。ここはオアシスの外周部に存在する見張り塔。と言ってもただの塔ではない。機関砲や対空ミサイルなどがハリネズミのように生えており、レーダーアンテナが四方八方を向いている。人の目による監視も忘れずにある。その様子はまるで戦艦の艦橋(マスト)のようだった。

 作戦はこうだ。

 まず第一段階は少数の部隊で足止めをして遠距離攻撃により減滅する。第二段階は火力による迎撃。第三段階は多数の防衛火器により要塞化された都市部に誘い込んでの殲滅。最良なのは第一段階で敵を全滅させることだが、そう容易いことではない。敵も馬鹿ではない。オアシスを奪取するためにあの手この手を凝らしてくるだろうから。

 傭兵(ハウンド)たる彼女は、盾持ちからなる部隊を任されていた。正確には、協同することを命令されていた。

 その名もウィスキー隊。他にもウォツカ隊やらシャンパン隊やらがいるらしい。酒シリーズでそろえてきたかと笑えた。戦闘終了時に盾持ちが生き残れば収支に加算があるという。好きで呑んでいるウィスキーと同じ名前の隊を率いることになるとは、何やら運命的なものを感じた。盾持ちは耐久性こそ優れているが戦術的な機動性は極めて悪く戦車に劣る。全てを守りきるのならば機動性を生かした戦いが求められるだろう。

 ACは既に所定の位置に運ばれて、アイドリングが済んでいるという連絡を受けた。

 のんびりしている時間は無かった。不測の事態に備えて指示された時間より三十分前には機体に乗り込むべきだ。

 緩めたままのパイロットスーツを締める。手首にある出っ張りを軽く捻る。キュッと繊維が締まり、細身の肢体を包み込んだ。胸元備え付けライトを点けて、消す。確認が終わった。

 ヘルメットを横に抱え、機体に歩み寄る。ACの主がやってきたのを悟ったか、盾持ちのメインカメラが集中した。まだ細身の少女が機体に乗り込もうとするのを見て、一斉にピントが絞られた。じろじろと見られるのは好ましくない。ヘルメットを被っておく。機体の出っ張りに足をかけてコアに這い上がればハッチを開けて操縦席に滑り込む。操縦席がスライドしてコアに収まった。閉鎖完了。

 アイドリング中止。通常モード移行。コントロールパネルを操作した。

 

 『おはようございます アイドリングモードを解除しました。メインシステム通常モードに移行します』

 「おはよう」

 

 電子音声が搭乗者を歓迎した。思わず挨拶を返した。無論、返事などない。

 敵がいつ来るかはわからないが、配置についておいた方がよさそうだった。東西南北にある塔のうちの南方を受け持つ彼女は、とりあえず通常モードのまま、塔の上に登ろうとした。塔の壁面をブーストドライブで蹴っ飛ばしながら移動するのが一番早いのであるが、非戦闘時にそんなことをすれば塔の装甲が傷つくし、足を踏み外して落下事故も考えられるので、塔の最上部にあるクレーンで吊るしてもらう。

 塔の最上部は広い構造となっており、優にACが直立することができる。それもそのはず、砲台やACが塔の最上部にて狙撃を行う場所だからである。遠距離用スナイパー砲台が二基、遥か遠方に銃口を向けている。赤黒い機体は二基の中央にあるスペースに陣取ると、手持ちの銃を置き、あらかじめおいてあったスナイパーキャノンをマニュピレータに保持した。

 

 『新しい装置を認識しました』

 

 人間のようにいきなり武器を握って使えるわけがない。CPUが銃器を認識するまで待つ。

 

 『USC-26/H SALEMを新しい右部兵装として認識 FCSと同期しました』

 

 認識完了の合図とともにフレイムスクリームがまるでランスのように長い銃を、モノを掴むような持ち方から、銃を握る持ち方に変える。ただしく銃杷を握り引き金に指をかけた。

 メインモニタに変動。銃器の形状とスペックが事細かに記されたウィンドウが開く。CPUがあらかじめ入力されていたIDで銃のロックを解除した。使用可能。

 メインモニタ更新。戦闘モードに移行してないのでガンサイトは表示されない。

 銃を保持した状態で屈む。敵がどの方向からやってくるかは不明だが、哨戒網に引っ掛かるはず。もし南から来たのならばそのまま待ち受ける。もし別の方角から来たのであれば、狙撃の方向を変える。 他の塔にはそれぞれレイヴン1、レイヴン2、レイヴン3が配置についており、直接戦闘に向かないレイヴン1もスナイパーキャノンを構えて待機していた。他勢力と比べれば潤沢な兵力を蓄えているオアシスと言えど、遊ばせておく戦力はないということである。

 共闘するにあたって、オアシス固有ACの大まかな情報が与えられた。

 レイヴン1――機体名、ホワイトノイズ。軽量二脚型。KT-1G/FUXIという情報戦に特化した頭部からもわかる、目的の明確な機体。軽量なフレームにハイパワーなジェネレータ。大出力ブースター。武装は速射型ハンドガンにショットガンだけにとどめた偵察・支援機。

 レイヴン2――機体名、ドルイド。重量四脚型。BEOWULF HD103という狙撃型の頭部パーツを中心に防御力の高いフレームで固めた狙撃機。スナイパーキャノンを装備。遠距離から敵を排除する役割を担った機体である。

 レイヴン3――機体名、パンツァーメサイア。タンク型。ガチガチの装甲に身を固めた機体で、オートキャノンとヒートキャノンにMULTIPLE PULSEを装備。中距離近距離での火力制圧を担った機体である。

 そしてM1――フレイムスクリームは重量二脚。一定の機動性を確保した機体で、中距離近距離での戦闘を得意としている。

 そう、オアシス側には中距離至近距離の戦闘を役割を十分に果たすACが居なかったのである。激戦を生き残った実績を持つ彼女を勧誘したのも、その辺が大きな要因であろうことは想像するに容易い。

 通信。OP。

 

 ≪初めまして。M1。キリエ代表に代わりましてレイヴン1、2、3、そしてM1の指揮を執らせていただく……≫

 

 まだうら若い女性の声が聞こえてきた。台本でも読み上げるような平坦な口調はどこか不安定さがにじみ出ていたが、安定感があった。

 一拍置いて、言葉が続く。

 

 ≪レオナ、と申します。以後お見知りおきを。最もレイヴンの皆さまとは既知の仲なのですが、M1とは初めての顔合わせということで、一応形式的ですが通信させて頂きました≫

 『それはどうも』

 

 やけにバカ丁寧な奴だな。

 彼女はそう思い、返事を返した。キリエがやたらと高圧的でやもすれば敵と通信を繋いでいるような気分になる口上だったのに対し、レオナと名乗るこのオペレーターは丁寧であり、見下したような感情が窺えなかった。オペレーターにもいろいろあるということであろう。

 レオナは咳払いをすると、言葉を続けた。

 

 ≪ブリーフィングで作戦内容は伝達済なので今さら確認の必要はないかと思われますが、念のため。敵が哨戒網にかかり次第航空部隊により足止めをします。そこを遠距離火器で狙い撃ち、全滅させられない場合、都市外延部に誘い込みこれを殲滅します。以上、確認を終了します…………っ!?≫

 

 語尾が途切れた。

 言葉よりも先にメインモニタの情報履歴がスクロール。作戦名が表示された。

 

 ≪敵、北北西より接近!≫

 

 システムを変更。

 さぁ、仕事の時間だ。

 

 

 

 ―――――――――――

 

 

 レイヴン2は巨砲を構えるように機体に指示を送った。機体が踏ん張り、四つ脚を折りいまにもコアが地面にくっ付きそうな低姿勢をとった。中折れ式の砲身を伸ばし、連結。スナイパーキャノンを構える。脚部に仕込まれたアンカーが鉄筋コンクリートに突き刺さる。

 熱で粘つく大気。その彼方に映るフラミンゴの独特なシルエットを拡大映像越しに観察する。射手の命じるがままに弾を発射する狙撃銃よりもなお冷たい瞳がメインモニタより得られる情報から遠距離戦闘の全体像を構築せんとしていた。ACのFCSは腕部も含めて人間のそれとは大きく異なる。遠距離狙撃では距離、地球の重力、コリオリ力、風、温度、湿度、銃のコンディション、射手のコンディション、発射地点、など数えきれない要素を考慮して実行に移す。狙撃手はいわば計算機であり、その計算を学習するのには長い年月を必要とする。だがACは機械である。狙撃に必要な要素の全てを計算し尽したうえで、射手に判断を求めるのである。すなわち、どこに弾を運ぶか、である。

 主照準のオレンジ色を、指代わりに使う。補助照準の円形が射撃点の移動に合わせて位置を変えた。

 メインカメラの望遠レンズがしきりにキリキリと鳴っている。

 フラミンゴ――無人攻撃ヘリは狙撃対象として魅力が少ない。どの勢力も大抵配備している安価な無人機を撃墜したところで、敵の勢いは衰えないからだ。

 狙うならば大物。AC、準人型、大型ヘリ、などである。

 距離は1200先。USC-26 ITHACAの威力保障距離は約800。威力の減衰は免れない。狙うならば装甲の薄いところへ三連射を確実に誘導する必要があるであろう。

 フラミンゴとついこの前ロールアウトした新型無人機が足止めのために砂漠で戦っているのがよく見えた。フラミンゴは機関砲で落とされ、無人の球状兵器は戦車砲に食われていく。敵の数は想定以上で投入した足止め戦力も役割を果たせていない。

 レイヴン2はフラミンゴの群れから目を離すと、地を這う戦車に目を止めた。目視できるだけでも二十台はある。一台二台に構っていてもキリがない。ならば、先頭を落とす。

 安全装置(セーフティ)解除、引き金を絞った。

 発砲。

 銃火がマズルブレーキを埋め尽くさんばかりに咲き誇るや、続いて二度、発光した。一度ならず三度発生した反動に腕部が後退し、機体が揺れる。脚部が上半身の動揺を殺した。

 オアシスに仁王立ちした塔の頂上で光が瞬く。超高速の弾頭が銃身を離れ、鋭い放物線を描きつつ群れの先頭の一台に寸分の狂いも無く吸い込まれた。旋回砲塔に二発が命中、最後に飛来した一発が戦車上部と下部の繋ぎ目から内側に浸透、内部を破壊した。先頭が急に速度を落としたことで他の戦車は左右に避けた。そこへ、レイヴン2の塔頂上で狙いをつけていたスナイパーキャノンが火を噴いた。高速弾が一気に二台をおしゃかにした。

 戦車側からの応射。砂塵を巻き上げオアシスに弾頭が降る。それに対してオアシスのロケットが発射。空中で分離すると子弾を地上に向けて放出、敵戦車の装甲を破らないまでもプレッシャーを与えた。

 他の塔からも、遠距離砲撃の火が上がり始めた。

 無数のフラミンゴと戦闘ヘリが出現、戦車を追い越してオアシスに壁となり迫ってくる。

 オアシスの街から対空砲火が一斉に生えた。曳光弾が空にオレンジの線状を鮮やかに描き出し、ヘリを次々に絡め落としていく。

 レイヴン2は溜息を吐くと、次の狙いを照準に捉えた。大型ヘリだ。腹に見慣れぬ型の準人型兵器を抱えている。記憶・記録で最も近いのは都市作業用の人型重機だったが、それが戦場にある段階で兵器に間違いない。

 レイヴン2が狙う。大型ヘリの機動性から割り出された指定時間単位で移動可能な領域が青で表示されている。大型ヘリは直進する、そう予想して照準を付け、発砲。タンデム式丸型風防が粉みじんになった。制御を失ったヘリは錐揉みとなり地面に落ちた。

 次。

 装甲トレーラーから次々と吐き出される盾持ちを狙う。盾は狙わない。装甲の厚い部分を狙うのは愚の骨頂だからだ。コックピットをやるのもよかったが、距離は1000。弾かれるリスクがあった。レイヴン2は無限軌道を狙った。発砲。三連射が盾持ちの脚部を挫き、その場にくぎ付けにした。

 次。武装ヘリを気まぐれに落とす。正確無比な狙撃が真正面からヘリをごみ屑に変えた。

 次、と言いたいが残弾が無かった。狙撃モードを止め、その銃を主動でパージする。再装填という手もあったが、生憎人手が無かった。

 

 『パージします』

 

 銃身を折りたたんだことを確認すれば、熱をもったUSC-26 ITHACAを慎重に地面に置く。機械に任せると紙屑をゴミ箱に投げるようなぞんざいな手つきで銃を放る。レイヴン2にはこれが我慢ならなかった。

 そしてレイヴン2は、もう片腕のスナイパーキャノンで狙撃を続行した。

 

 

 

 

 

 北北西からの襲撃ということで移動したい気持ちに駆られるも、遠距離狙撃はするべきだった。しかし、彼女がいるのは南の塔であり、狙撃するには射線が街の上を横切る形となり、射角が制限される。塔は防衛上の理由でビルの中でも群を抜いて高いが、間にビルがあるのと、無いのとでは大きく違う。

右部スナイパーキャノンを構えた。機体が腰を落とし、踏ん張る。左脚部装甲板が展開し、機体前面で静止した。サブレッグ展開。メインカメラが望遠用に切り替わる。保護用シャッターがスライドした。

 フレイムスクリームの頭部はそれなりのカメラ性能を有しているが、支援・情報戦型や狙撃型の頭部パーツと比べれば劣る。また彼女自身狙撃が不得意なため、命中は期待していなかった。

 自機の両隣にずっしりと構えるスナイパーキャノンが発砲。釣られて発砲。だが、命中せずに弾道は戦闘ヘリを掠めるにとどまった。

 マズルブレーキから盛大に煙が噴出した。排莢口から牛乳瓶のような大きさの薬莢が地面に落ちる。

装填完了。主照準をヘリに合わせ、移動先に偏差射撃を行う。トリガー。反動が腹に堪える。ほんのわずかに機体が後ろにずれた。戦闘ヘリに命中。ヘリはもんどりうって砂地に崩れ、ローターで砂を掻いて止まった。

 あっという間に弾を撃ち尽くしてしまった。オートパージ。

 

 『パージします』

 

 彼女は銃を捨てると、己の銃火器を手に取った。再認識。完了まで、1、2、3、完了。ガトリングとバトルライフルというお決まりのスタイルに戻る。

 要塞化された都市が外敵を排除せんと砲門を一斉に撃ち放つ。スナイパーキャノンはもとより、ロケットが連射され、機関砲が唸りを上げて地面を耕す。ミサイルが垂直にハネ上がったかと思えば上空で踵を返しトップアタックを仕掛ける。敵戦闘ヘリが対地ロケットを乱射。ビルに次々と突き刺さる。

 通信。OP。

 

 ≪敵、じきに都市外延部に到達します。各ACは迎撃の準備をしてください。敵大型ヘリにACを確認しています。数機は撃墜しましたが、最低でも我がオアシスと同等の数のACが来ることが予想されます≫

 

 なんという大軍だろうか。彼女は驚嘆を隠せなかった。ACは比較的高価な兵器である。オペレーターの報告が正しいとすれば相手はACだけに限ればこちらのおよそ二倍の数を投入してきた計算になる。 

 いったい、オアシスは何と敵対しているのか? それを知る術はない。

 もし完全に独立した傭兵のままの立場であったならば調べるか、もしくは知る余地があったかもしれない。

 フレイムスクリームは塔の天辺から飛び降りた。オートブースターが作動。落下速度が急激に緩まった。着地と同時に通信を開く。塔の根元でガトリングを撃っていた盾持ち四機、ウィスキー隊へ。

 盾持ち四機は欠点である機動性を補うために固まって盾を構え隙を埋めつつ対空射撃を行っていた。落伍した機はない。

 

 『M1よりウィスキー隊。これより北へ支援に向かう。盾持ちのアシでは間に合わない』

 ≪ウィスキー1、了解。んで、俺らはどこへいきゃあいいのかね傭兵さん≫

 

 盾持ちのうちの一機が空に向けた砲門を左右に振りつつ訊ねてきた。

 隊長と呼ばれ、首を傾げそうになるも、すぐに思い出した。傭兵家業を長くやっていると友軍を率いることがあまりないので、命令することが頭から抜け落ちてしまうのだ。現在、彼女がウィスキー隊に指示を下す権限を有していたのだ。

 彼女は沈黙し、空を一瞥してから答えた。

 

 『塔を守れ。別方向からの攻撃に備え対空砲火を続けろ』

 

 指示になっていない指示ではあるが、最善と思われる命令を下した。

 嫌な予感がしたのだ。第六感とも言うべき直感が囁くのだ。盾持ちを別のところにやると悪いことが起きると。戦場では得てして超能力を得たような感覚に襲われるが、いましがた受信した感覚だけは正解だと断言できた。

 直感を抜きにしても機動性の低い盾持ちを機動性の高いACに連れて街を右往左往するのは得策と言い難かった。ACが先行すれば盾持ちは遅れる。遅れれば敵の餌食となる。

 

 『北に行く』

 

 彼女はそっけなく言い残すと、グライドブーストを起動してビルの壁に取り付くやブーストドライブ、壁蹴りで素早く前進を開始した。空を再び仰げば敵の大群が作物を食い荒らす蝗が如く上空より覆いかぶさってくるのがわかった。

 ウィスキー隊が生き残れば報酬が増えるとはいえ、任務が失敗に終わってしまえば報酬も無く逃げ出すしかない。ウィスキー隊と街の防衛、前者が最重要に位置しているわけではない。

 

 ≪第三段階に突入しました。各機、北の方角へ向かってください。基準点をポイントします。オアシス中心部には絶対に敵の侵入を許してはなりません≫

 

 オペレーターの興奮したような通信がヘルメットから聞こえた。

 

 




ほとんど変わんないです

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