遊戯王ARC-V 戦士の鼓動   作:ナタタク

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第81話 熊男と狂人

「座標は…ああ、ここだな!!」

マシンキャバルリーに乗る翔太は地下鉄構内に柚子のデュエルディスクの反応があることをつかむ。

周囲にはオベリスクフォースやディアボロ、セキュリティといった面々が倒れており、彼らをにらむように《魔装騎炎ブリュンヒルデ》が彼のそばに立つ。

オベリスクフォースについては、1人ずつデュエルディスクから発生した青いゲートの中へ消えていった。

「もうこいつらは再起不能だ。いくぞ」

マシンキャバルリーでディアボロを引きつぶすと、そのまま地下鉄の入り口へ急ぐ。

(にしても、どうなっているんだ?この空は…)

少し前から、シンクロ次元の夜空が緑と青、紫とオレンジの雲でできた渦が表れており、消えずにそのまま残っている。

その不気味な渦に嫌悪感を抱きつつ、翔太は目の前に見えてきた地下鉄の入り口に突入する。

入るとすぐにオベリスクフォース3人とバレット、遊矢に柚子、そしてセレナと零羅の姿があった。

鎖で拘束されている遊矢と彼に対峙するバレットを見ると、どうやら遊矢はバレットとデュエルをしていて、彼の2枚の永続罠カードによって文字通り身動きを封じられているようだ。

おまけにセレナは何か薬を打たれたせいで、零羅のそばで倒れていて、1人では動くことすらできなくなっている。

さらに、鎖で拘束される遊矢のそばには柚子までいる。

「翔太!?どうしてここへ!?」

「ああ、お前を心配して勝手に飛び出したバカをぶん殴って連れ戻そうと思ったが、邪魔者がいるみてーだな」

マシンキャバルリーに取り付けていたデュエルディスクを腕に装備し、翔太は遊矢の隣に立つ。

「よぉ、熊男。負け犬の癖にまた俺の前に現れやがって」

(乱入ペナルティ、2000ポイント)

「ったく、そんなの入れるくらいなら、最初から乱入できないようにしろって…」

 

翔太

手札5

ライフ4000

場 なし

 

遊矢

手札1

ライフ600

場 ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン(《紅鎖の獣闘機勲章》の影響下 ORU2) ランク4 攻撃0

  オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン(《鉄鎖の獣闘機勲章》の影響下) レベル7 攻撃0

  相克の魔術師(青) Pスケール3

  相生の魔術師(赤) Pスケール8

 

バレット

手札0

ライフ4000

場 獣闘機パンサー・プレデター レベル6 攻撃2000

  獣闘機ウルフ・ケンプファー レベル6 攻撃2200

  紅鎖の獣闘機勲章(永続罠)

  鉄鎖の獣闘機勲章(永続罠)

  獣闘機融合装置(永続魔法)

 

紅鎖の獣闘機勲章(アニメオリカ)

永続罠カード

(1):自分フィールドに「獣闘機」モンスターが存在しない場合にこのカードは破壊される。

(2):相手フィールドにエクストラデッキからモンスターが特殊召喚された場合、

そのモンスター1体を対象としてこの効果を1度だけ発動できる。このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、そのモンスターは攻撃できず、表示形式の変更もできない。また、戦闘では破壊されない。さらに、このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、対象のモンスターのコントローラーはモンスターを召喚・特殊召喚できず、魔法・罠カードを発動できない。

 

鉄鎖の獣闘機勲章(アニメオリカ)

永続罠カード

(1):自分フィールドに「獣闘機」モンスターが存在しない場合にこのカードは破壊される。

(2):相手フィールドにモンスターが特殊召喚された場合にこの効果を1度だけ発動できる。このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、そのモンスターは攻撃できず、表示形式の変更もできない。また、戦闘では破壊されない。

(3):相手がダメージを受けた場合に発動する。相手フィールドの全てのモンスターの攻撃力はその数値分だけダウンする。

 

「貴様はあの時の…」

「ああ。まだクビになってなかったみてーだな」

「翔太…知ってるのか!?」

「ああ。バトルロワイヤル中にあった雑魚だ」

「私と榊遊矢の真剣勝負に乱入など認めん!!」

1VS1の真剣勝負の邪魔をされたバレットは怒りを覚え、翔太に目を向ける。

だが、翔太もバレットの『真剣勝負』という言葉を聞き、表情を硬くする。

「黙れよ、クズ野郎が…」

「な…!?」

急に翔太から突然発生する強い殺意にも似たプレッシャーを感じ、さらに自分の流儀を一刀両断されたことに驚きを見せる。

「てめえの流儀を勝手に押し付けてんじゃねえ。侵略なんてくだらないことをしているくせによ。邪魔だからさっさと雑魚を連れて消えるんだな」

「く…貴様!?」

「我々が雑魚だと!?」

雑魚呼ばわりされた3人のオベリスクフォースが怒りを覚え、翔太を倒そうとデュエルディスクを展開しようとする。

オベリスクフォースはアカデミアの中でも一番のエリートであり、そんな自分たちのことを雑魚呼ばわりされたことを許せなかった。

「下がれ!!」

「な…!?」

「バレット隊長!?」

しかし、バレットの一括を受けた3人が展開を止める。

「へえ、負け犬がずいぶん偉くなったみてーだな」

バレットが舞網で率いていたのは懲罰部隊。

バレットと同じ作戦中の不祥事や犯罪といった前科の抹消を条件に危険な任務ばかり割り当てられる愚連隊だ。

経緯はわからないが、何らかの形で武功を重ねたバレットは晴れてきれいな体でオベリスクフォースの指揮官となったのだろう。

「痛いところをついてくれるな、貴様。名は」

「…秋山翔太」

「私の名はバレット。認めよう、貴様も榊遊矢と同じく、信念を持った戦士であることを」

「てめえに認められてもうれしくもなんともねーよ、熊男。俺のターン!」

 

翔太

手札5→6

 

「俺はスケール2の《魔装槍士タダカツ》とスケール9の《魔装剣士ムネシゲ》でペンデュラムスケールをセッティング。来たれ、時の果てに眠りし英雄の魂。漆黒の魂と契約し、封印から解き放たん!ペンデュラム召喚!来い、《魔装騎士ペイルライダー》!」

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

 

「さらに、俺は手札から速攻魔法《次元突破》を発動。俺のフィールド上に存在する魔装騎士の攻撃力をターン終了時まで倍にする」

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500→5000

 

「攻撃力5000!?」

「《ペイルライダー》で《ウルフ・ケンプファー》を攻撃!クアトロ・デスブレイク!」

《魔装騎士ペイルライダー》は腰の光剣を抜き、全身を鋼の鎧で包み、黒いマントをつけた牛に似たモンスターを縦に両断する。

切り裂かれた《獣闘機ウルフ・ケンプファー》は爆発とともに消滅し、その爆風の中から《漆黒の戦士ワーウルフ》と《ダーク・センチネル》が飛び出す。

「《ウルフ・ケンプファー》は戦闘で破壊されたとき、融合素材としたモンスターを墓地から特殊召喚できる!」

 

バレット

ライフ4000→1200

 

漆黒の戦士ワーウルフ レベル4 攻撃1600

ダーク・センチネル レベル4 攻撃1500

 

獣闘機ウルフ・ケンプファー(アニメオリカ)

レベル6 攻撃2200 守備1400 融合 闇属性 機械族

レベル4以下の獣戦士族モンスター+レベル4以下の機械族モンスター

(1):相手に戦闘ダメージを与えた時に発動できる。300ダメージを相手に与える。

(2):このカードが戦闘で破壊された場合に発動できる。このカードの融合素材としたモンスター一組を自分の墓地から特殊召喚する。

 

「さらに、《獣闘機融合装置》の効果で、私は1ターンに1度、私のフィールド上に存在するモンスターを素材に獣闘機融合モンスターを融合召喚できる!」

「いや、もうお前に次のターンはない。《タダカツ》のペンデュラム効果で、相手モンスターを戦闘破壊した《ペイルライダー》は続けてもう1度だけ攻撃できる!」

「なに!?」

2本目の光剣を抜いた第4の騎士がもう1機の獣闘機に襲い掛かる。

「く…!」

「消えろ!」

二刀流となった《魔装騎士ペイルライダー》によって、《獣闘機パンサー・プレデター》がバラバラに切り裂かれる。

切り裂かれた獣は爆発し、爆風によって吹き飛ばされたバレットが地下鉄の冷たい床を転げる。

「ぐおおおお!!」

 

バレット

ライフ1200→0

 

獣闘機融合装置(アニメオリカ)

永続魔法カード

(1):1ターンに1度、自分の手札・フィールドから、「獣闘機」融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

(2):このカードが自分の魔法・罠ゾーンに存在する限り、自分は通常召喚できない。

 

「バレット隊長!?」

「貴様…よくも隊長を!」

「はいはい、君たち雑魚は邪魔をしないのっと」

3人のオベリスクフォースの背後に、ジェルマンのエンブレムが刻まれた襟のある白いジャケットを着た、長いもみあげのある長い金髪と禿げ上がった頭をした男が現れる。

「貴様は…ゲイツ!」

「ええ、そうよそうよ。ジェルマンのゲイツ様だよ。だからそこ、どきなさいよ」

「ふざけるな!これはオベリスクフォースの仕ご…」

ゲイツに抗議していたオベリスクフォースの首の静脈から血が噴き出し、彼は手でそれを抑えつつ、口から血を流しながらあおむけに倒れる。

ゲイツの左手には先ほどまでなかったナイフが握られていた。

「う…そ…!?」

「見るな、柚子!!」

鎖が解けた遊矢は必死に柚子の目を自身の手で隠す。

「デタラメいうなって!!人のお仕事をとっちゃダメって先輩から教わらなかったっけ?あー、あー、聞こえますかー??」

すでにこと切れているオベリスクフォースの頭をつかみ、耳の穴にナイフを差し込みながらゲイツが話しかける。

ナイフを抜くと、刀身は血でべっとりと濡れていた。

「うわぁ、なんとぉー!!死んじゃってる!!死んじゃったよこれぇ!!あー!! この世界はどうなっとるんだ!! 残酷な死で満ち溢れているではないか!! 私は悲しい! とても悲しい!!」

「な…なんだ!?なんなんだ、あいつは!?」

ふざけた口調で、おまけに衝動的に仲間を殺したサイコパスに遊矢は恐怖を覚える。

残った2人は恐れを抱いたのか、デュエルディスクで融合次元に逃げ帰ってしまった。

「あ、もしかして譲ってくれた!?いやー、うれしーなー。やっぱり人には親切にしないとね、うんうん。ねー、君もそう思うでしょー?」

相変わらず死体に嬉しそうに話しかけるゲイツはナイフをしまうと、ゆっくりとセレナに近づく。

「や…やめろぉ!!」

零羅がデュエルディスクを展開させ、セレナの盾になろうとするが、セレナが右手で彼を制止する。

「セレナ…?」

「やめろ…奴はゲイツ…。アカデミアでもユーリに匹敵する最悪の男だ…」

「うほー!セレナちゅぁーん!イメチェンしちゃってかわいいでちゅねー。さあさあ、おじさまと一緒に夢の世界へトリップトリップー!そして、君はおじさまへサービスサービスぅ!」

「黙れ!…お前についていく、だが遊矢たちには手を出すな!」

「そんな…セレナ!!」

「へぇー、もしかしておじさまとデュエルするきー?いいよいいよ?でも、死んじゃっても知らないよ?」

ナイフを抜き、まだ血で濡れている刀身をペロリとなめながらゲイツは遊矢を見る。

なめ終えると、そのナイフを捨て、デュエルディスクを装着する。

「やめろと言っているのがわからないのか!?今、ここにいる私たちでは奴に勝てないんだぞ!」

「セレナ殿!」

苦無を手にした月影がゲイツの背後に現れ、彼の首筋にそれをあてる。

「おっと、忍者!?」

「おとなしくしてもらおう、貴様はデュエリストの矜持がないようだからな」

オベリスクフォースの死体を見た月影がゲイツを拘束しようと麻酔薬を打ち込もうとする。

何のためらいもなく仲間を殺す彼を月影自身も危険だと判断したのだろう。

「んー?こういう時はこういえばいいのっかなー?アイエエエエ!ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」

「グオオ!!」

みぞおちに鈍い一撃を受けた月影の手から苦無が落ちてしまう。

そして、自由になったゲイツは苦無をつかみ、それを彼の方に突き刺した。

「アハハぁ!油断はダメよぉ、ダメダメぇ!」

「月影!?」

「ヌハハハハ!!お嬢ちゃんの頼みもあるし、お前らは見逃してやるよぉー。んじゃあ、おじさまはもみあげのお手入れとセレナちゃんとの夢の時間があるので…グッバァイ!」

セレナを抱き寄せ、左手で胸を触りながらデュエルディスクの転送装置を起動する。

ゲイツとセレナが青い粒子に包まれていく。

「セレナ!!」

「すまない…遊矢、柚子、みんな…だが、信じてる!必ず私を助け出してくれ!!」

セレナの必死の叫びを最後に、2人は粒子とともに姿を消す。

「く…くっそぉぉぉぉ!!」

「遊矢…」

「く…ジェルマンめ、直属の特務部隊であることをいいことに…」

起き上がったバレットは部下の死体を見つつ、ゲイツへの怒りをあらわにする。

そして、じっと遊矢たちに目を向ける。

「またやる気かよ…あんた」

「…」

遊矢たちをスルーして、バレットは部下の遺体のそばまで行くと、デュエルディスクの転送装置を起動する。

「榊遊矢、秋山翔太…決して忘れん」

そう言い残すと同時に、遺体とともにバレットもまた姿を消した。

「セレナ…」

「くっ…融合次元にあのような化け物が…」

「黙ってろ」

翔太の手で、肩に刺さった苦無が抜かれる。

痛みに耐えながら、月影は布を取り出してそれを包帯代わりにして刺さった個所を覆う。

「サイコ野郎の介入があったとはいえ、セレナが捕まるなんてな…」

「セレナ…セレナぁ…」

一番近くにいながら、セレナを守ることができなかったことを悔やみ、零羅が涙を流す。

どうしようもなかったこととはいえ、幼い零羅にはとても受け入れがたい出来事だった。

「さてっと、じゃあ説明してもらおうか。なんで勝手にアジ…」

邪魔者がいなくなったことで、ようやく話せる機会ができたと思った矢先、駅の天井が砕け、そこからセルゲイが飛び降りてくる。

「ちっ…一難去ってまた一難かよ!?」

一度は破壊したはずのセルゲイの再びの登場に驚きながら、翔太はデュエルディスクを構える。

セルゲイの左目はじっと遊矢のそばにいる柚子を見ていた。

 

「セレナがいない!?逃げられたというのか!?」

局長室で、ノートパソコンを通したセルゲイの左目のカメラが映す光景を見ているロジェはセレナがいなくなっていることに驚きを見せる。

セキュリティからの報告で、セレナが零羅と一緒にいるという情報をつかんでおり、現にその場には零羅の姿がある。

しかし、一緒にいるはずのセレナの姿がなく、今の彼女が一人で逃げるのは不可能。

そして月影も原因はわからないが、負傷している。

「まぁいいでしょう。セルゲイ、柊柚子を確保しなさい。失敗は許しませんよ」

 

「了解。柊柚子を確保する」

(あのどM、人格が変わったか?)

「逃げろ、柚…!?」

柚子を逃がそうとデュエルディスクを展開しようとする遊矢だが、薬が切れたせいで、腹部の激痛がよみがえり、その痛みのせいでその場にうずくまってしまう。

「遊矢!!」

「逃げ…ろ…」

「ちっ、ドM、俺が相手に…」

「いや、相手になるのは俺だ」

壊れた屋上から飛び降りてきたブーンが翔太の前に立ち、デュエルディスクを展開すると同時にそれから妨害電波を発生させる。

「これで、俺と貴様以外はデュエルをすることができない。更に、この周囲一帯の通信機能も無力化した。この電波を止めるには、お前が俺に勝つしかない」

「くそ…!」

セルゲイも含めて、翔太とブーン以外がデュエルできなくなったことで、彼と止めるすべを失った。

この中では月影について身体能力の高い翔太でも、セルゲイを止めることができない。

「逃げろ…柚子…」

「でも…でも!!」

柚子には遊矢を見捨てて逃げるという選択肢を選ぶことができなかった。

セルゲイは柚子をつかむと、両足を展開し、隠されていたブースターを起動させる。

「柚子…柚子…!!」

「遊矢ーーー!!」

互いに相手に向けて手を伸ばすが、もうその手は届かない。

柚子はセルゲイとともに不気味な夜空に向けて飛んで行ってしまった。

「柚子…ぐうう、うおおおおおお!!」

幼馴染で、一番大切な少女が奪われたくやしさを込めて、遊矢は叫ぶ。

翔太もこぶしを震わせ、怒りを覚えながらブーンに目を向ける。

「秋山翔太、お前は我々にとって危険な存在だ。ゆえに排除させてもらう」

「御託はいい。今の俺は最高に機嫌が悪いんだ…死んでも、恨むなよ?」

「「デュエル!!」」

 

ブーン

手札5

ライフ4000

 

翔太

手札5

ライフ4000

 

「俺の先攻、俺は手札から《鋼の歯車蛸》を召喚。このカードは俺のフィールド上にモンスターが存在しないとき、リリースなしで召喚できる」

側面から見ると、ひし形のような形をしていて、円柱型のポッドを前方に縦に設置されている灰色の戦車が現れる。

「メタルギア、アンティーク・ギアとは違うってことだな?」

「当然だ。行儀がいいだけの輩とは違うのでな」

 

鋼の歯車蛸 レベル5 攻撃2100

 

「更に、このカードの召喚に成功したとき、デッキからレベル4以下のメタルギア、もしくは《鋼の歯車融合》を手札に加えることができる。俺はデッキから《鋼の歯車蛹》を手札に加える。カードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

ブーン

手札5→3(うち1枚《鋼の歯車蛹》)

ライフ4000

場 鋼の歯車蛸 レベル5 攻撃2100

  伏せカード2

 

翔太

手札5

ライフ4000

場 なし

 

鋼の歯車蛸(メタルギア・ビューパ)

レベル5 攻撃2100 守備1000 効果 地属性 機械族

(1):自分フィールド上にモンスターが存在しないとき、このカードはリリースなしで召喚できる。

(2):このカードの召喚に成功したとき、デッキに存在するレベル4以下の「メタルギア」モンスター1枚もしくは「鋼の歯車融合」1枚を対象に発動できる。そのカードを手札に加える。

 

「俺のターン!」

 

翔太

手札5→6

 

「俺は手札から《魔装陰陽師セイメイ》を召喚!」

 

魔装陰陽師セイメイ レベル3 攻撃1000(チューナー)

 

「このカードの召喚に成功したとき、手札からレベル4以下の魔装モンスター1体を特殊召喚できる。俺は《魔装妖ビャッコ》を特殊召喚」

「キュイ!」

《魔装陰陽師セイメイ》の肩に乗っているビャッコが口元を扇子で隠す彼から耳打ちされると、すぐに飛び降りて翔太の前に立つ。

いつもはみたらし団子を食べるなどしてリラックスし、気ままに動くビャッコだが、今回は空気を読んだのか、まじめな表情を見せている。

 

魔装妖ビャッコ レベル3 攻撃400

 

「こいつは魔装モンスターのシンクロ素材、エクシーズ素材となるとき、レベルを4として扱うこともできる。レベル4の《ビャッコ》にレベル3の《セイメイ》をチューニング。黄金の剛腕を持つ漆黒の戦士、その気高き力で道を拓け。シンクロ召喚!現れろ、《魔装剛毅クレイトス》!」

 

魔装剛毅クレイトス レベル7 攻撃2600

 

「《ビャッコ》の効果発動。このカードがシンクロ素材またはエクシーズ素材となったとき、デッキからカードを1枚ドローする。バトルだ、俺は《クレイトス》で《鋼の歯車蛸》を攻撃、ゴールデン・アッパー!」

《魔装剛毅クレイトス》が籠手の五芒星を輝かせつつ、《鋼の歯車蛸》を拳で中央から貫こうとする。

しかし、急に上空から現れた、3枚の円盤状の翼をもっている、赤と灰色が基調の飛行兵器が下部に搭載されているレールガンと機首に搭載しているミサイルポッドで牽制射撃をし始めた。

このまま近づけば、的になってしまうと判断した《魔装剛毅クレイトス》はやむなく攻撃を中断し、翔太のもとへ戻る。

「俺は手札の《鋼の歯車蛹》の効果を発動した。俺のフィールド上に存在するメタルギアモンスターが攻撃対象となったとき、このカードを手札から特殊召喚することで、その攻撃を無効にする。更に、この効果でこのモンスターを特殊召喚したターン、俺のフィールド上に存在する融合モンスター以外のメタルギアモンスターは戦闘では破壊されない」

 

鋼の歯車蛹 レベル4 攻撃1700

 

鋼の歯車蛹(メタルギア・クリサリス)

レベル4 攻撃1700 守備1500 効果 地属性 機械族

このカード名の(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しか行えない。

(1):自分フィールド上に存在する「メタルギア」モンスターが攻撃対象となったときに手札から発動できる。このカードを自分フィールド上に特殊召喚することで、その攻撃を無効にする。この効果で特殊召喚したターン、自分フィールド上に存在する融合モンスター以外の「メタルギア」モンスターは戦闘では破壊されない。

 

「更に俺は永続罠《AI's Payment》を発動。俺のフィールド上に融合モンスター以外の鋼の歯車モンスターが特殊召喚されたとき、デッキからカードを1枚ドローする」

「ちっ…。俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

 

ブーン

手札3

ライフ4000

場 鋼の歯車蛸 レベル5 攻撃2100

  鋼の歯車蛹 レベル4 攻撃1700

  AI's Payment(永続罠)

  伏せカード1

 

翔太

手札6→4

ライフ4000

場 魔装剛毅クレイトス レベル7 攻撃2700

  伏せカード1

 

AI's Payment

永続罠カード

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に融合モンスター以外の「メタルギア」モンスターが特殊召喚されたときに発動する。デッキからカードを1枚ドローする。

 

「俺のターン、ドロー」

 

ブーン

手札3→4

 

「俺は手札から《鋼の歯車弩級戦車》を召喚。このカードは元々の攻撃力を1900にする代わりに、リリースなしで召喚できる」

ブーンの前に、翔太が以前戦った《ダーク・フラット・トップ》に匹敵する大きさを誇るキャタピラ付きで戦艦のような形をした灰色の戦車が現れる。

そのあまりの大きさで駅の天井がガラガラと崩れ落ち、動けない零羅と遊矢を月影がカバーする。

 

鋼の歯車弩級戦車 レベル8 攻撃3000→1800

 

「遊矢殿!」

月影は遊矢の懐から出した薬を彼の首筋に注射する。

「…はあ、はあ、はあ…」

「遊矢殿、大事ないか!?」

「ああ…助かったよ、月影…」

薬が効き、腹部の痛みが嘘のように消えていく。

だが、あくまでも薬でごまかしているだけに過ぎず、腹部の銃創はきちんと病院で手術をしなければならない。

仮にこのまま激しい動きをすることになると、傷口が開いてしまうだろう。

「そして、俺は手札から魔法カード《鋼の歯車融合》を発動。俺のフィールド上に存在するモンスターを素材に、メタルギア融合モンスターを融合召喚する。俺は《蛸》、《蛹》、《弩級戦車》を融合する。大地と水中を走る要塞よ、獲物を撃ち抜く狩人よ、障害を踏みつぶす戦車よ、歯車を絡ませ、任務遂行の標となれ。融合召喚!現れろ、レベル10!《鋼の歯車毒蛇》!」

3機の灰色の兵器が融合し、頭部に球体型の自爆装置、左に大型質量弾を発射できるレールガンを搭載した灰色の4本脚兵器が現れる。

その大きさは《鋼の歯車弩級戦車》と同じで、出現と同時に後ろ側に2本脚が前側のそれに収納され、2本足で動き出した。

 

鋼の歯車毒蛇 レベル10 攻撃3600

 

「攻撃力…3600…!?」

「更に、融合素材となった《鋼の歯車弩級戦車》の効果発動。このカードを素材にメタルギアモンスターの融合召喚に成功したとき、墓地に存在するこのカードを装備カード扱いとして、その融合モンスターに装備する」

《鋼の歯車毒蛇》の背後に現れた《鋼の歯車弩級戦車》のカードのソリッドビジョンから放出される灰色のオーラが《鋼の歯車毒蛇》に吸収される。

「このカードを装備したモンスターが相手モンスターと戦闘を行うとき、そのモンスターの効果は無効化される」

「ちっ…!」

《魔装剛毅クレイトス》はエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターとバトルをするとき、攻撃力がダメージステップ終了時まで1000アップする効果がある。

だが、装備カードとなった《鋼の歯車弩級戦車》のせいで、その効果を発動できなくなってしまった。

 

鋼の歯車弩級戦車(メタルギア・コクーン)

レベル8 攻撃3600 守備1800 効果 地属性 機械族

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードはリリースなしで召喚できる。その時、このカードの元々の攻撃力は1800となる。

(2):このカードを素材に「メタルギア」融合モンスターの融合召喚に成功したとき、墓地から発動できる。このカードを装備カード扱いとしてそのモンスターに装備する。

(3):このカードの効果でこのカードを装備したモンスターが相手モンスターを戦闘を行うとき、ダメージステップ終了時までそのモンスターの効果は無効化される。

 

「バトルだ。《鋼の歯車毒蛇》で《魔装剛毅クレイトス》を攻撃」

《鋼の歯車毒蛇》がレールガンを《魔装剛毅クレイトス》に合わせ、大型質量弾を発射する。

《魔装騎士ペイルライダー・ムーンレイス》のそれを上回るスピードで弾丸は飛び、胴体を撃ち抜いた。

腹部に穴が開いた《魔装剛毅クレイトス》が爆発し、爆風が翔太を襲う。

「ぐうう…!」

 

翔太

ライフ4000→3000

 

「更に、《毒蛇》の効果発動。このカードが戦闘で相手モンスターを破壊したとき、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える」

 

翔太

ライフ3000→400

 

「一気に翔太殿のライフが400に!?」

「翔太…」

あっという間に翔太のライフがレッドゾーンに陥る。

おまけに、《鋼の歯車毒蛇》の効果を考えると、もうモンスターをその毒蛇に倒されるのが許されなくなった。

「更に俺は罠カード《立ち上がる鋼の歯車》を発動。俺のフィールド上に存在するメタルギア融合モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊し、相手に戦闘ダメージを与えたターン、、デッキから与えたダメージ以下の数値の攻撃力を持つメタルギアモンスター1体を特殊召喚する。俺はデッキから《鋼の歯車IR》を特殊召喚」

黒い人間の足をそのまま転用したかのような生々しい2本足を持ち、灰色の戦車を模した部品の上にミサイルポッドを取り付けた兵器が天井の穴から飛び降りて、ブーンの前に立つ。

 

鋼の歯車IR レベル4 攻撃1000

 

立ち上がる鋼の歯車(メタルギア)

通常罠カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在する「メタルギア」融合モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊し、相手に戦闘ダメージを与えたターンのバトルフェイズ中に発動できる。デッキからそのダメージの数値以下の攻撃力を持つ「メタルギア」モンスター1体を特殊召喚する。

 

「まずい…!今の翔太のフィールドにモンスターはいない。このままダイレクトアタックを受けたら…!」

「《AI's Payment》の効果で、デッキからカードを1枚ドローする。終わりだ。《IR》でダイレクトアタック」

照準補正をすでに済ませていた《鋼の歯車IR》がミサイルを全弾発射する。

「翔太!!」

「俺は罠カード《死を告げる風》を発動!俺のフィールド上にモンスターが存在しない状態で相手の直接攻撃宣言時、その攻撃を無効にする。そして、手札・デッキ・墓地から《魔装騎士ペイルライダー》を特殊召喚する」

翔太の周囲を黒い風が包み込み、その風に触れたミサイルが次々と爆発していく。

ミサイルがなくなり、風も消えると、そこには《魔装騎士ペイルライダー》の姿があった。

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

 

「ふん…。ここで《ペイルライダー》を召喚してきたか。だが、《鋼の歯車毒蛇》はカード効果では破壊されず、除外もされない。更に、《鋼の歯車IR》の効果発動。1ターンに1度、このカードを守備表示にすることで、デッキからレベル4以下のメタルギアモンスター1体を特殊召喚する。俺はデッキから《鋼の歯車騎兵》を特殊召喚」

 

鋼の歯車IR レベル4 攻撃1000→守備1900

鋼の歯車騎兵 レベル3 守備1000

 

「俺はこれで、ターンエンド」

 

ブーン

手札4→3

ライフ4000

場 鋼の歯車毒蛇(《鋼の歯車弩級戦車》装備) レベル10 攻撃3600

  鋼の歯車IR レベル4 守備1900

  鋼の歯車騎兵 レベル3 守備1000

  AI's Payment(永続罠)

 

翔太

手札4

ライフ400

場 魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

 

鋼の歯車IR(メタルギア・アーヴィング)

レベル4 攻撃1000 守備1900 効果 地属性 機械族

このカード名の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に攻撃表示で存在するこのカードを対象に発動できる。そのカードを守備表示にする。その後、デッキからレベル4以下の「メタルギア」モンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。

 

「く…今のは効いたぜ…」

《魔装騎士ペイルライダー》を召喚し、どうにか敗北だけは避けることができた。

しかし、ライフはわずか300で、おまけに攻撃力3600の《鋼の歯車毒蛇》は効果による破壊や除外ができないだけでなく、戦闘する相手モンスターの効果を一時的にかき消す装備カードを装備している。

倒すのは至難の業だ。

だが、倒せないモンスターではない。

「俺のターン!」

 

翔太

手札4→5

 

ドローしたカードを見た翔太が笑みを浮かべる。

「おあつらえ向きのカードが来たか…。俺は手札から《PCM-シルバームーン・アーマー》を発動!」

「ほぉ…」

翔太が発動したカードをブーンは特に驚く様子もなく見つめる。

発動と同時に、《魔装騎士ペイルライダー》が青い魔法陣に包まれていく。

「俺のフィールド上に存在するレベル7のペンデュラムモンスター1体を同じ種族でランク7のエクシーズモンスターに変化させる。俺は《魔装騎士ペイルライダー》でオーバーレイ!月の鎧に拘束されし第4の騎士よ、その重力を戒めとし覚醒せよ。ムーンライトエクシーズチェンジ!現れろ、月の鎧纏いし死の騎士、《MLX-魔装騎士ペイルライダー・ムーンレイス》!」

魔法陣が消え、月の力を宿した重装備に包まれた《魔装騎士ペイルライダー》が姿を現す。

 

魔装騎士ペイルライダー・ムーンレイス ランク7 攻撃2500

 

「《シルバームーン・アーマー》の効果で特殊召喚されたモンスターは次の俺のターンのスタンバイフェイズまで、戦闘及びカード効果では破壊されない。そして、俺のライフが1000以下の時、こいつは相手フィールド上のすべてのモンスターに1回ずつ攻撃できる。更に、こいつが《ペイルライダー》をエクシーズ素材としているとき、1ターンに1度、墓地の魔装モンスター1体を除外することで、相手モンスター1体の攻撃力・守備力をターン終了時まで0にすることができる」

背中のウェポンラックから大型レールガンを取り出し、その中に《魔装陰陽師セイメイ》が取り込まれていく。

「対象はもちろん、《鋼の歯車毒蛇》だ!ムーンライト・シューティング!」

質量弾が発射され、それが搭載されているレールガンに命中する。

耐久値が限界を超えたと判断したAIによって、そのレールガンがパージされ、最大の攻撃手段を失う。

 

鋼の歯車毒蛇 レベル10 攻撃3600→0

 

墓地から除外されたカード

・魔装陰陽師セイメイ

 

「く…!」

「バトルだ、フルバースト・デスブレイク!!」

レールガンを投げ捨てた《魔装騎士ペイルライダー・ムーンレイス》が全身の火器を展開し、一斉射撃を開始する。

ガトリングによって、両足が穴だらけになった《鋼の歯車IR》が体勢を維持できなくなって崩れ落ち、ビームによって全身を焼かれた《鋼の歯車騎兵》が消滅する。

そして、《鋼の歯車毒蛇》は下部に搭載されているガトリング砲と各部に搭載されていた対空機銃でミサイルを撃ち落としていき、ガトリングの弾丸をその堅牢な装甲で受け止め続ける。

だが、左手のビーム砲を最大出力で発射されたことにより、その装甲を貫かれ、機能停止に追い込まれる。

「ぐ、ぐううう!!」

 

ブーン

ライフ4000→1500

 

「く…だが、《鋼の歯車毒蛇》の効果発動。このカードが戦闘で破壊されたとき、互いのフィールド上に存在するすべてのカードを破壊する!」

AIの最後の命令により、搭載された球体型の自爆装置が大爆発する。

爆風に飲み込まれた《AI's Payment》が消滅するが、《魔装騎士ペイルライダー・ムーンレイス》は周囲に展開された薄黄色のバリアによって防がれてしまう。

「だが、《シルバームーン・アーマー》の効果で《ペイルライダー》は次の俺のターンのスタンバイフェイズまで破壊されない!」

 

鋼の歯車毒蛇(メタルギア・バシリスク)

レベル10 攻撃3600 守備3500 融合 地属性 機械族

レベル5以上の「メタルギア」モンスター+「メタルギア」モンスター×2

このカードは「鋼の歯車融合」の効果でのみ特殊召喚できる。

(1):このカードはカード効果では破壊・除外されない。

(2):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊したときに発動できる。そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。

(3):このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られたときに発動する。フィールド上に存在するすべてのカードを破壊する。

 

「く…!!」

攻撃完了と同時に、翔太の頭に激痛が走る。

「翔太!?」

「大丈夫だ、零羅…。翔太は記憶を取り戻そうとしてるんだ…」

「記憶…」

零羅や月影は翔太が記憶を取り戻す方法を遊矢から口できいただけで、実際の光景を見たことがない。

実際、翔太が感じている痛みは1分間に3回後頭部をハンマーで殴られるのと同じくらいのもので、その痛みに苦しむ彼を見たら、事情を知っていたとしても心配してしまうのは仕方のないことだ。

(ねえ、これどうやって遊ぶの?)

だが、今回の翔太は何も光景が浮かばない。

2人の声が聞こえるだけだ。

幼い少年が誰かに何かの遊ぶ道具の使い方を教えてもらえるようせがんでいるように聞こえる。

(これはデュエルだ。モンスターを召喚したり、魔法や罠カードで相手をあっと言わせることもできる)

その少年と話す人物の声ははっきりと聞き覚えがある。

ランサーズに正式に入る前に戦った、石倉純也のCPUの声と同じだ。

(教えてやるよ。少し難しいかもしれないが、やってみたら面白いぞ?)

(うん!)

頭痛が消え、同時に脳裏で聞こえた2人の声も消えていく。

「(どういうことだ…?両親が目の前で死んだことと言い、ガキの声といい、一体それが俺と何の関係があるってんだ!?)俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

 

ブーン

手札3

ライフ1500

場 なし

 

翔太

手札5→2

ライフ400

場 魔装騎士ペイルライダー・ムーンレイス(《PCM-シルバームーン・アーマー》の影響下 ORU1) ランク7 攻撃2500

  伏せカード2

 

「よし…!《鋼の歯車毒蛇》を倒した。これならば、翔太殿は…」

「ふっ、まさかたった1体のモンスターで俺のモンスターを全滅させるとはな、だが、そこまでだ。俺のターン」

 

ブーン

手札3→4

 

「俺の墓地に存在する《鋼の歯車融合》の効果を発動。墓地のメタルギア融合モンスター1体をエクストラデッキに戻すことで、このカードを手札に戻すことができる。更に、俺は手札から《鋼の歯車歩兵》を召喚」

 

鋼の歯車歩兵 レベル2 攻撃500

 

「このカードの召喚に成功したとき、俺のフィールド上にエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターが存在しないとき、デッキからレベル4以下のメタルギアを特殊召喚できる。俺はデッキから《鋼の歯車狼》を特殊召喚」

 

鋼の歯車狼 レベル2 攻撃400

 

「更に、手札から魔法カード《機械複製術》を発動。俺のフィールド上に存在する攻撃力500以下の機械族モンスター1体と同じ名前のモンスターをデッキから特殊召喚する。俺は《鋼の歯車狼》を更に2体特殊召喚する」

 

鋼の歯車狼×2 レベル2 守備400

 

「ちっ…融合カードを確保して、あっという間に素材をフィールドにそろえやがった…!」

《魔装騎士ペイルライダー・ムーンレイス》は《PCM-シルバームーン・アーマー》の効果で破壊耐性を得ているものの、戦闘ダメージは免れることができない。

攻撃力2500では、すぐにそれを上回る攻撃力をモンスターを出されてしまう可能性が高い。

「まだだ。更に俺は手札から永続魔法《鋼の歯車工場》を発動。このカードの発動時、俺の墓地に存在するレベル4以下のメタルギア1体を特殊召喚できる。俺は墓地から《鋼の歯車騎兵》を復活させる」

 

鋼の歯車騎兵 レベル3 守備1000

 

「そして、手札から魔法カード《鋼の歯車融合》を発動!俺が融合素材とするのは…」

(待て、ブーン…)

耳についている通信機から声が聞こえたブーンは宣言を中断する。

「なんだ?お楽しみの最中だというのに…」

翔太たちには聞こえないよう、小さい声でブーンは通信相手と話をする。

(必要なものは手に入った。もはや、ロジェとシンクロ次元に用はない。ジェルマンは次の作戦段階へ進む)

「次の作戦だと?プロフェッサーが?」

(そうだ。お前たちの潜入任務は終了ということになる。いいな?)

「…了解。俺は《鋼の歯車歩兵》と《鋼の歯車狼》2体を融合。大地を走る兵器よ、敵を斬り刻む狼よ、任務を遂行する感情無き兵士よ、歯車を絡ませ、任務遂行の標となれ。融合召喚!現れろ、レベル8!《鋼の歯車RAY》!」

 

鋼の歯車RAY レベル8 攻撃2300

 

「このカードはフィールド上に存在するすべてのモンスターに1回ずつ攻撃することができるだけでなく、このカードよりも攻撃力の高いモンスターと戦闘を行う場合、ダメージ計算時のみ攻撃力を1000アップさせる」

「何!?」

攻撃力の低い融合モンスターの召喚を不審に思ったが、ふたを開けてみれば案の定、条件付きで攻撃力3300の全体攻撃が可能な化け物だった。

ライフがわずか400しかない翔太にとって、これは絶体絶命の状況だ。

「《鋼の歯車工場》の効果で、このカードの上にメタルギアカウンターを1つ乗せる。バトルだ!《鋼の歯車RAY》で《ペイルライダー》を攻撃!ファイア!!」

敵が単体であり、面を制圧する攻撃は不要と判断した《鋼の歯車RAY》が口部を展開し、高圧水流を発射する。

「罠発動!《魔装狂宴》。俺のフィールド上に魔装モンスターが存在し、俺がダメージを受けるとき、墓地から攻撃力2000以下の魔装モンスター1体を特殊召喚する。俺は墓地から《魔装妖ビャッコ》を特殊召喚する」

黄色い光のバリアで高圧水流のカッターをしのいだ《魔装騎士ペイルライダー・ムーンレイス》。

一方翔太はビャッコ召喚と同時に出現した目の前に波紋が発生したかのようなバリアが発生してそれを受け止める。

「そして、この効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力以下のダメージをターン終了時まで無効にする」

「キュイ!」

 

魔装妖ビャッコ レベル3 守備400

 

「だが、《RAY》は相手フィールド上に存在するすべてのモンスターに1回ずつ攻撃できる。その雑魚を薙ぎ払え!」

自分の攻撃の邪魔をしたビャッコに向けて、再び《鋼の歯車RAY》が高圧水流を発射する。

攻撃が着てびっくりしたビャッコはランドセルから葉っぱを出し、それを頭にのせると同時に煙のように姿を消してしまった。

「まだ俺のターンは終わっていない。手札から魔法カード《対峙する鋼の歯車》を発動。俺のフィールド上に存在するメタルギア融合モンスター1体の攻撃力の半分の数値分のダメージを与える」

《鋼の歯車RAY》から脚部ミサイルが発射され、翔太を襲う。

「罠発動《ダッジ・ロール》!1度だけ俺が受けるダメージを0にする!」

翔太を今度こそ仕留めようと発車されたミサイルが透明なドーム状のバリアで弾かれる。

「(防がれたか…だが、《対峙する鋼の歯車》は墓地に存在することで真価を発揮する。このカードが墓地に存在し、自分フィールド上に存在するモンスターがメタルギアモンスター1体のみの場合、墓地に存在する鋼の歯車モンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚し、そのモンスターの攻撃力を俺のフィールド上のメタルギアモンスター1体に加えることができる。より盤石な布陣だ。だが…もう勝ち負けの意味はないがな)俺はこれで、ターンエンド」

 

ブーン

手札4→0

ライフ1500

場 鋼の歯車RAY レベル8 攻撃2300

  鋼の歯車工場(メタルギアカウンター1)(永続魔法)

 

翔太

手札2

ライフ400

場 魔装騎士ペイルライダー・ムーンレイス(《PCM-シルバームーン・アーマー》の影響下 ORU1) ランク7 攻撃2500

 

対峙する鋼の歯車(メタルギア)

通常魔法カード

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在する「メタルギア」融合モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターの攻撃力の半分の数値分のダメージを相手に与える。

(2):自分フィールド上に存在するモンスターが「メタルギア」融合モンスター1体のみの場合、墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。墓地に存在する「メタルギア」モンスター1体を相手フィールド上に召喚条件を無視して、表側守備表示で特殊召喚する。その後、自分フィールド上に存在する「メタルギア」融合モンスター1体の攻撃力は特殊召喚したモンスターの元々の攻撃力分アップする。この効果はこのカードが墓地へ送られたターン、発動できない。

 

「俺のターン!このターンのスタンバイフェイズ時に、《シルバームーン・アーマー》の効果は消える」

《魔装騎士ペイルライダー・ムーンレイス》を進んでいた黄色いバリアが消えていく。

消えていくバリアは絶体絶命な翔太自身を象徴しているかのようだった。

 

翔太

手札2→3

 

「俺は手札から魔法カード《魔装門》を発動!相手フィールド上に《魔装トークン》2体を特殊召喚し、デッキから魔装と名の付くカード1枚を手札に加える。俺はデッキから《魔装融合》を手札に加える!」

 

魔装トークン×2 レベル6 攻撃2000

 

「更に、俺は手札から魔法カード《魔装融合》を発動!フィールド上の《ムーンレイス》、墓地の《ビャッコ》、手札の《魔装亀テンセキ》で融合!月の力宿りし第4の騎士よ、可憐なる妖狐よ、万年の知識を持つ亀よ、魔導の力によりて、今1つとならん。融合召喚!真紅の騎士、《魔装騎士レッドライダー》!!」

 

魔装騎士レッドライダー レベル8 攻撃3000

 

「《レッドライダー》は俺のターンにモンスターの特殊召喚に成功した場合、そのターンのバトルフェイズ時のみ攻撃力を1000ポイントアップさせることができる」

大剣に刻まれた五芒星が輝き、炎が宿ると、《魔装騎士レッドライダー》は自慢げにその剣を振るう。

「ふっ…任務完了だ」

「バトルだ!《レッドライダー》で魔装トークンを攻撃!必殺真剣!」

炎が宿った大剣を振り回した《魔装騎士レッドライダー》はそれで《魔装トークン》を真っ二つに切り裂く。

切り裂かれたと同時に爆炎がブーンを襲う。

「ふん…次で勝負だ」

そう言い残したブーンは炎の中で姿を消していった。

 

ブーン

ライフ1500→0

 

「翔太君!!」

ブーンが消えたと同時に、伊織が地下鉄駅に到着し、デュエルを終えたばかりの翔太に駆け寄る。

「ああ、伊織か…」

「ああじゃないよ!?一体どうしたの?急に柚子ちゃんの反応が消えちゃったし、それに通信も使えなくなって、必死に探したんだよ??」

「ああ、ああわかってる分かってる。それよりも、バッドニュースだ…。あのバカ、治安維持局にさらわれやがった…」

「ええー!?」

伊織が驚く中、ブーンが消えたことで妨害電波の干渉を受けなくなった翔太のデュエルディスクの通信機能が動き出す。

またも非通知で、だれの電話かわからない。

ゆっくりと通信機能を起動する。

「もしもし」

(翔太さん、エリクです)

「てめえ…今頃になってまた連絡か?」

(今はこちらからの操作で、あなたにしか聞こえないようにしています。伊織さんについて話したいことがあります。どうか、ここまで来てください。あなたに…すべてをお話しします)

「おい…どの面下げてそんな話を…おい、待て!!」

一方的に電話をされ、一方的に切られたことに腹を立てながら、翔太はデュエルディスクに表示された座標を見る。

そこは旧不動区の中心地にある旧第2モーメント研究所、モハメドからの情報が正しければ、そこはチームオーファンのアジトだ。

(あいつ…まさか…)

これが意味することを察した翔太は拳を握りしめる。

「翔太君…?」

「伊織、チームブレイドのリーダー、エリクの正体は…チームオーファンのリーダーだ」


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