「これで終わりだ!《月光舞豹姫》で3体の《アンデット・スカル・デーモン》に攻撃!」
腕や背中に三日月を模した金色の飾りを付けた紫とピンクが基調のドレスを纏う、黒いショートヘアで褐色の踊り娘が踊りながら、両手の爪で3体の《アンデット・スカル・デーモン》を切り刻んでいく。
「《月光舞豹姫》はメインフェイズ1に効果を発動でき、発動したターン、このカードは相手フィールド上に存在するすべてのモンスターに2度攻撃でき、そして相手モンスターは1度だけで戦闘では破壊されない。更にこのカードが戦闘で相手モンスターを破壊したとき、このカードの攻撃力はバトルフェイズ終了時まで攻撃力が200アップする!」
「そんな…バカなぁぁぁ!!」
緑色のジャケットを着た、茶色い髪で恰幅の良い体をした男、トニーが攻撃の影響で吹き飛ばされる。
余談ではあるが、彼はクロウとはギャング時代からの友人とのことだ。
(決まったーーー!!勝者はフレンドシップカップの紅一点、セレナ選手ーーー!!)
勝者が決まったことで、会場が歓声で包まれる。
その影で、敗北したトニーは緑色の作業服を着た、筋肉質で巨体な男2人組に連行されていった。
それを翔太はその試合の録画を部屋のテレビで見ていた。
今は大会2日目の朝だ。
「これで、2回戦進出者はMデコ(クロウ)とシンジ、俺にセレナだな…」
既に大会2日目、
そういいながら、備え付けの冷蔵庫から500ミリリットルのペットボトルコーラを出す。
そして、それを飲みながら次の勝負を待つ。
(お待たせしましたーーー!!皆さまおはようございます、間もなくフレンドシップカップ1回戦第5試合が始まります対戦カードは…検挙率100パーセントを誇っていた元デュエルチェイサーズ!地獄から舞い戻ったやや持ってない人…ナンバー227!!)
(…本名で出場しろよ)
そんな翔太の心の中での突っ込みをよそに、コースにデュエルチェイサーズの制服を着た男が白バイ型のDホイールに乗って現れる。
なお、デュエルチェイサーズとは、セキュリティが所有するDホイーラーで、主にコモンズ出身のDホイーラー兼犯罪者(あくまでこれはトップスの眼から見て、でしかないが)を検挙することが仕事だ。
(ナンバー227と戦うのは…前夜祭エキシビションマッチでキングに敗北した、榊遊矢!!)
歓声を持って迎えられた227に対して、遊矢に対してはブーイングを持って迎えられる。
メリッサの言う通り、ジャックに敗れたため、当然と言えば当然かもしれないが。
「今よ…!伊織!」
「オッケー!!《M・HEROカミカゼ》でダイレクトアタック!!」
「うぎゃああああ!?!?」
ギャングA&B
ライフ1800→0
そのころ、シェイドはチームオーファンに従属しているギャング、チームイエローライトのアジト、大門区消防署を攻撃している。
「いやー、やっぱりいつものデッキの方が調子がいいねー。柚子ちゃん!」
「ん…そうね」
「もしかして、遊矢君のこと、心配?」
どこか浮かない表情を見せる柚子の顔を覗き込む伊織。
といっても、そんな表情になる理由はわかる。
昨日今日はフレンドシップカップ1回戦で、昨日出番がなかったことから、今日必ず遊矢の試合がある。
しかし、ちょうどその日の朝にチームイエローライトへの攻撃をすることになったため、少なくとも最初の試合を見ることはできなくなった。
「…うん」
「うわっ、すっごく素直!」
普段はこの場合、少しでも否定的な反応を見せるはずの柚子が思わる返事をしたため、驚きを見せる。
「おい、何しとるんか!?しゃべっとる場合があったら周りを見ろ!!」
《バハムート・シャーク》の効果によって召喚された《潜航母艦エアロ・シャーク》を《FA-ブラック・レイ・ランサー》にアーマードエクシーズチェンジさせながら、漁介が叫ぶ。
そして、別のギャングとデュエルをする鬼柳が《煉獄龍オーガ・ドラグーン》をシンクロ召喚する。
「心配するのならすればいい。それでいい結果が出るんだったらな。更に俺は《インフェルニティ・ビートル》を召喚!レベル8の《オーガ・ドラグーン》にレベル2の《インフェルニティ・ビートル》をチューニング」
召喚されたばかりの《インフェルニティ・ビートル》が羽を激しく振動させると、その体が黒い炎でできたチューニングリングに変わり、《煉獄龍オーガドラグーン》がそれをくぐる。
「煉獄より生まれし龍…現世に舞い降り、その欲望を満たせ。シンクロ召喚。《煉獄超龍インフェルニティ・ドラグーン》」
くぐると同時にチューニングリングが爆発し、その中から金と竜の骨でつくられた、右半分だけの仮面をつけ、翼が4枚となった《煉獄龍オーガ・ドラグーン》が姿を見せる。
煉獄超龍インフェルニティ・ドラグーン レベル10 攻撃3500
「馬鹿め!!罠カード《奈落の落とし穴》!!こいつでせっかくのシンクロモンスターを…」
「《インフェルニティ・ドラグーン》の効果発動。俺の手札が0のとき、1ターンに1度だけ相手の魔法・罠カードの発動を無効にし、破壊する。そして、ターン終了時まで攻撃力を500アップさせる」
「何…!?」
「お前では俺を満足させることはできない…。焼き尽くせ、《インフェルニティ・ドラグーン》!!」
足元に現れた、紫色の空間へと続く落とし穴を飛翔することで回避し、口から黒い一筋のレーザー光線が発射される。
レーザー光線は敵対するギャングの足元に命中すると、そこで黒い爆発が発生する。
このレーザーは体内で生み出される黒い炎を可能な限り圧縮したものなのだ。
「ぎゃああああ!?!?!?」
煉獄超龍インフェルニティ・ドラグーン レベル10 攻撃3500→4000
ギャング
ライフ4000→0
煉獄超龍インフェルニティ・ドラグーン
レベル10 攻撃3500 守備3000 シンクロ 闇属性 ドラゴン族
闇属性チューナー+闇属性・ドラゴン族Sモンスター1体
(1):自分の手札が0枚の場合、1ターンに1度、相手が魔法・罠カードを発動した時に発動できる。その発動を無効にし破壊する。その後、ターン終了時までこのカードの攻撃力は500アップする。
(2):自分フィールド上に存在するこのカードが相手の魔法・罠カードの効果でフィールドを離れたとき、自分の墓地に存在する「インフェルニティ」Sモンスターまたは「煉獄龍オーガ・ドラグーン」1体を選択して発動できる。そのモンスターを自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する。
「鬼柳さん…」
デュエルを終え、デュエルディスクを収納した鬼柳が柚子を見る。
「今のお前はシェイドのメンバーだ。俺たちにできることは、こうしてシンクロ次元の中での俺たちの力をつけることだ」
「力をつけること…」
力をつけるというのは、何もシェイドを大きくすることだけではない。
セキュリティとは異なり、様々なタイプのデッキを持つギャング達と戦い、自らの力量を磨くことでもある。
そして、翔太がフレンドシップカップに出場したこともあり、もう自分たちの正体を隠す必要がなく、思いっきり自分のデッキでデュエルをすることができる。
「さ、柚子ちゃん!ちゃちゃっと片づけて、アジトへ帰ろ!あ…」
柚子に目を向けながら走っていた柚子が何かにぶつかる。
「あれって…」
「ふぇ…??」
両手で口を隠し、動揺する柚子を見た伊織はそーっと自分がぶつかった何かに目を向ける。
それはあの時、シェイドを攻撃した3体のデュエルロイドのうちの1体、ホセだ。
「うわぁ…私たち、勝てるかな…?」
「勝てるかなって…勝つしかないわよ!!」
弱気になる自分の心に鞭をうち、奮起した柚子がデュエルディスクを展開する。
(遊矢…大丈夫、よね…?)
遊矢と227がスタートラインに立ち、ライディングデュエル開始まで残りわずかとなる。
(それでは、フィールド魔法《スピード・ワールド・A》を…)
「待ってくれ!!」
早速始めようと動き出すメリッサを遊矢が遮る。
(小僧…貴様、何を言うつもりだ?)
デッキの中で待つオッドアイズが幻影となって遊矢のそばに現れ、じっと彼を見る。
なお、この幻影は遊矢以外には見えない。
(伝えなきゃならないんだ。このフレンドシップカップの現実を…!)
翔太と徳松のデュエルが行われる前、遊矢は徳松からフレンドシップカップ敗者の末路について聞いた。
1人1人隔離されているのに、なぜそれができたかというと、おそらくはカードによって警備員を買収したからだろう。
深呼吸をした後で、遊矢はヘルメットをとって観客全員に目を向ける。
「みんな!!フレンドシップカップの敗者がどうなるか、知っているか!?敗者は全員、地下のごみ処理施設へ送られる!!地下送りされた人たちは、死ぬまでずっと強制労働させられるんだ!!」
「おいおい、ということは、あのおっさんも…権現坂たちも…」
翔太は直ぐに敗者となった3人のことを思い浮かべる。
確かに、あのデュエルの後で彼らの姿を見ていないし、このままホテルに戻って立ち退きの準備をしているだろうと考えてもいた。
だが、シンクロ次元の競争社会は敗者に再起のチャンスを与えるほど甘いものではなかった。
「おおおおおーーーーー!!!!」
遊矢の言葉を聞いた観客たちは動揺するどころか、逆に熱狂し始める。
それがトップスの人間だけならまだしも、コモンズの人々さえもそうなのだ。
「そ、そんな…!?どうして!?」
(ふん…当然のことだ、小僧。別次元の人間が貴様と同じ価値観を持っているとでも思っていたか?)
「オッドアイズ…?」
(奴らにとって、このデスマッチといえる競争だけが真実、それだけが正義、道徳だ。そこにお前の言葉など…ましてやよそ者の価値観など入る隙も無い)
「けど…!!」
(うーん、それの何がいけないのかな?)
オッドアイズの言葉が誠であることを示すかのように、メリッサが遊矢に言う。
(負けたものが落ちるのは…あたりまえじゃない?)
「うおーーーーー!!!」
メリッサの言葉、観客の熱狂。
これらがシンクロ次元のすべてを表していた。
この次元の最大の問題は苛烈ともいえるトップスとコモンズの格差ではない。
敗れたものはすべてを失う、それに対して何も疑問に思わない価値観なのだ。
しかし、そんな社会を当たり前だと考える彼らはそんなことを問題だとは思うはずがない。
(ようは勝てばいいのよ、それじゃあ改めて…《スピード・ワールド・A》発動!!」
メリッサが目の前のパネルを操作したことで、遊矢と227のDホイールに内蔵されている《スピード・ワールド・A》が発動し、デュエルの準備が整っていく。
こうなっては最後、勝者と敗者が決まるまでデュエルを終えることはできない。
(アカデミア…今すぐこいつらを全員カード化すりゃあいいのに…)
「くそぉ!!」
(何がデュエルで笑顔を、だ…?デュエルで与えているのは、悲しみじゃない…)
「え…?」
遊矢の脳裏に聞いたことのない声が響く。
低く威圧感のあるオッドアイズとは異なり、自分よりも少しだけ年上の女性のような声だ。
(いや、今は構っている暇はない!!)
目の前に表示されるストップウォッチのソリッドビジョンがデュエル開始3秒前であることを遊矢に伝える。
仕方なく、遊矢はヘルメットをかぶり、ゴーグルをつける。
「ライディングデュエル…アクセラレーション!!」
ストップウォッチのカウントが0になると同時に遊矢と227がスタートする。
しかし、やはりマシンレッドクラウンのリミッターの影響で、どんどん227が先を進んでいき、差が広がっていく。
(後攻になるのは仕方ない…!まだ俺はDホイールを使いこなせて…)
そのまま、第1コーナーを227が取り、彼の先攻でデュエルが始まった。
227
手札5
SPC0
ライフ4000
遊矢
手札5
SPC0
ライフ4000
「く…負けた人間を地下へ送るなんて間違って…」
「へっ!いきなり負けることを考えてるのかよ!?」
「さすがジャックにコテンパンにされたことだけあるぜ!!」
遊矢は必死で食い下がるが、彼の心に届くことはない。
ジャックに一度敗れている遊矢の声など、彼らに聞く価値はないのだ。
(彼らも…アカデミアと同じ。デュエルを誰かを不幸にする道具にしか思っていない、悲しい人たち…恐ろしい人たち…)
「女の人の声…」
「いい加減にしろ!貴様、ここに演説しに来たのか!?だったらお呼びじゃない!ここでサレンダーしろ!!」
227の言葉に反応するかのように、観客が遊矢にブーイングする。
遊矢の言葉を否定するかのように。
「俺のターン!俺は手札より《切り込み隊長》を召喚!」
切り込み隊長 レベル3 攻撃1200
「このカードの召喚に成功したとき、手札からレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚できる。俺は手札より《共闘するランドスターの戦士》を召喚!」
共闘するランドスターの戦士 レベル3 攻撃500(チューナー)
「俺はレベル3の《切り込み隊長》にレベル3の《共闘するランドスターの戦士》をチューニング!いでよ!切り捨て御免の狩人!シンクロ召喚!レベル6!《ゴヨウ・プレデター》!」
ゴヨウ・プレデター レベル6 攻撃2400
自分フィールドに現れた《ゴヨウ・プレデター》を見つつ、227は決意を固めていく。
(再びデュエルチェイサーズに戻るためにも…必ず勝って見せる!!)
彼は先日、とある失態を犯してコモンズ出身のDホイーラーに敗れ、検挙に失敗してしまった。
それも長官であるロジェの命令を無視した独断専行で。
その結果、デュエルチェイサーズを罷免され、待っていたのは転落人生だった。
デュエルチェイサーズだったという経歴から、コモンズでは仕事を得ることができず、時には自分が逮捕したDホイーラーの仲間にリンチされることすらあった。
困窮とそんな自分を助けてくれる人がいないことへの絶望から、盗みを働いてしまい、そのまま逮捕された。
待っているのは犯罪者としての生活だと思われた彼を救ったのが、あのロジェだった。
彼は遊矢とのデュエルに勝利すれば、復職を認めると約束したのだ。
つまり、彼にとってこれは人生をかけたデュエル。
正しかろうと間違っていようと、彼にとってはこれが真実だ。
彼は更に勝利に近づくため、自分のそばに浮かんでいるアクションカードを手に取る。
「さらに俺はアクション魔法《排気ガス》を発動!このカードは相手に400ダメージを与える!!」
発動と同時に、227のDホイールが遊矢の真後ろにつく。
そして、文字通り排気ガスが黒く染まってはなたれ、遊矢を包んでいく。
「うう…ゴホゴホ!!」
遊矢
ライフ4000→3600
227
SPC0→1
「そして俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド」
227
手札5→1
SPC1
ライフ4000
場 ゴヨウ・プレデター レベル6 攻撃2400
伏せカード2
遊矢
手札5
SPC0
ライフ3600
場 なし
(これはすごい!ナンバー227、最初のターンであるにもかかわらず、相手にダメージを与えたうえにスピードカウンターを増やしました!!)
「さあ…貴様のターンだ!それとも…この間違った大会のデュエルはしないか??」
挑発するように、227が遊矢に言う。
遊矢は否定しようと口を開くが、すぐにその口を閉ざす。
(何も聞いてもらえない…!勝たなきゃ、誰も俺の言うことを聞いてくれない…!)
(当然のことだ。勝者の言葉には重みがあるが、敗者の言葉に価値などない。メディアと聞いている人間自身の価値観がただ価値があるかのように見せかけているにすぎん)
「く…!俺のターン、ドロー!」
遊矢
手札5→6
SPC0→2
227
SPC1→3
「レディースアンドジェントルメーン!!これより、榊遊矢がこの殺伐としたスタジアムに笑顔をお届けします!そのためには…優秀なアシスタントが必要です!まずは手札から《EMユニ》を召喚!」
桃色のバニースーツと黒いレオタードを重ね着し、バニースーツと同じ色の髪をポニーテールにした、白い一本角を額につけている少女が現れる。
召喚されたと同時に、彼女は前かがみになって胸元を強調し始める。
観客の男性陣の中にはそれに夢中になる人々もおり、そんな彼らを女性客は冷たい目で見ていた。
EMユニ レベル4 攻撃800
「このカードの召喚、特殊召喚に成功したターンのメインフェイズに1度だけ、手札からレベル3以下のEMを特殊召喚できます。俺は手札から《ユニ》の相棒、《EMコン》を特殊召喚!」
《EMユニ》の隣に紺色のバニースーツを着た、青いツインテールで額に一本角をつけている少女が現れ、彼女と同じポーズをし始める。
「「2人そろってかわいさ百倍!」Unicorn!!」」
《EMユニ》と《EMコン》が遊矢の両サイドに行き、一緒にセリフを言う。
これを見て、見とれていた男性陣の一部が鼻血出して倒れ、タンカで運ばれる人が出て来る。
EMコン レベル3 攻撃600
「こんなチャラチャラしたモンスターを出すとは…貴様ら!公然わいせつ罪で検挙してやる!!」
「そんなお堅いことを言ってると、もてませんよー?」
「だ、黙れ!!も…もてる、もてないの問題じゃない!!」
「(もてなかったんだ…)さぁ、彼女たちはただかわいいだけではありません。このショーにふさわしい名優を呼ぶことができるのです!《EMコン》の効果発動!このカードの召喚・特殊召喚に成功したターンのメインフェイズに1度だけ、このカードとこのカード以外の攻撃力1000以下の俺のEM1体を守備表示に変更し、デッキからオッドアイズモンスター1体を手札に加えることができます!」
《EMコン》が遊矢のデッキに投げキッスを送る。
すると、デッキのピンク色の光を放ち、その中から《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が自動排出される。
EMユニ レベル4 攻撃800→守備1500
EMコン レベル3 攻撃600→守備1000
「そして俺はスケール3の《EMラディッシュ・ホース》とスケール8の《EMオッドアイズ・ユニコーン》でペンデュラムスケールをセッティング!」
赤い皮と白い実でできた大根で構成された右目に黄色い星型のペイントがされている馬と《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》と同じ目をしている、ピンク色の尾と鬣を持つ一角獣が遊矢の両サイドに現れ、光りの柱を生み出す。
「これで俺はレベル4から7のモンスターを同時に召喚できます!揺れろ!魂のペンデュラム!天空に描け光のアーク!ペンデュラム召喚!! 現れろ、華やかなアシスタントが呼びしこのショーの主役、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!!」
オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500
「ちぃ…!」
《ゴヨウ・プレデター》を上回る攻撃力を持つ《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が現れたことに舌打ちする227はアクションカードを探す。
一方、遊矢も時間の許す限りそれを探している。
(あった…!)
コース上にあるものの、2メートル近く上に浮いているアクションカードを見つけた遊矢はマシンレッドクラウンにパスワードを入力する。
すると、遊矢の背後にバッタの2歩足を模した機械が現れた。
そのあとは自動的にコンピュータがシステムの変更を行い、マシンレッドクラウンとその機械が合体する。
「何!?Dホイールをサポートする機械だと??」
「さあ、みなさんご覧ください!わたくし、榊遊矢のDホイール火の輪くぐりを!!」
2体のアシスタントから耳打ちでやることを聞いた《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が上空に向けて炎のブレスを放ち、そのあとで《EMユニ》が魔法を唱える。
すると、炎は球体となって上空にとどまり、それが次第に火の輪へと変わる。
「行っけえええええ!!!」
全ての準備が整うと、遊矢のDホイールが2本足によって大ジャンプし、火の輪をくぐる。
そして、くぐった後でアクションカードを手にし、そのまま着地した。
なお、残った火の輪については《EMコン》が水鉄砲で消火した。
遊矢
SPC2→3
「わああああ!!」
「すげぇぜ、Dホイール火の輪くぐり!」
「かっこいー…」
「っていうか、もうあれDホイールじゃないよね…?」
冷静な突込みがあったものの、観客からの反応は上々。
遊矢は笑みを浮かべると、手にしたアクションカードを見て、それを手札に加える。
「さらに俺は《ラディッシュ・ホース》のペンデュラム効果を発動!1ターンに1度、相手フィールド上に存在するモンスター1体の攻撃力を俺のEM1体の攻撃力分ダウンさせる!」
《EMラディッシュ・ホース》が淡いピンク色の光を放つと、《EMユニ》も同じ光を放ちながら両手を後ろに組み、下から覗き込むように《ゴヨウ・プレデター》を見る。
見られた誇り高き捕食者の顔が赤く染まり、それと同時に攻撃力がダウンする。
「お、おい!!何をときめいている!?デュエルチェイサーズの精鋭モンスターの誇りを忘れたか?!」
ゴヨウ・プレデター レベル6 攻撃2400→1600
「バトルだ!俺は《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》で《ゴヨウ・プレデター》を攻撃!!」
「な…!?おい、正気に戻れ!!」
227が必死に声をかけるが、《ゴヨウ・プレデター》には届かない。
《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》はそのモンスターの正面に立ち、ブレスを放つために力を籠める。
「そして、俺は《EMオッドアイズ・ユニコーン》のペンデュラム効果発動!このカードがペンデュラムゾーンに存在する限り、1度だけ自分フィールド上のEM1体の元々の攻撃力を攻撃するオッドアイズにバトルフェイズ終了時まで加えることができます!さぁ、《ユニ》のかわいさをわかってもらえた後は、《コン》の大人の魅力をどうぞ!」
デュエルのことだけを考えると、もう1度大将を攻撃力の高い《EMユニ》にしても良いが、それではもう1人のアシスタントが活躍できない。
あらゆるモンスターに見せ場を与えてこそ、エンターテイナー。
指名された《EMコン》は青いオーラを纏うと、右手を後頭部へもっていき、左手で自分の首筋に触れてポーズを決める。
それと同時に、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が同じ色オーラを纏う。
オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500→3100
「攻撃力3100!?おのれ…!!」
「螺旋のストライク・バースト!!」
満を持して、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》は口から回転する炎のブレスを放つ。
炎は《ゴヨウ・プレデター》を貫き、227をも焼き尽くそうとする。
(ナンバー227に《オッドアイズ》の炎が直撃!さあ、耐えられるでしょうかーー!?)
「ナンバー227じゃない…俺は、俺はデュエルチェイサー227だ!検挙率100%を誇った…俺は、最強のデュエルチェイサーになる男だ!!俺は永続罠《死力のタッグ・チェンジ》を発動!」
突然、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》のそばに《マックス・ウォリアー》が姿を現し、刺又で攻撃を仕掛ける。
やむなく、二色眼の竜は攻撃を中断し、尾で《マックス・ウォリアー》を薙ぎ払う。
「俺のフィールド上に表側攻撃表示で存在するモンスターが戦闘で破壊されるダメージ計算時、俺が受ける戦闘ダメージを0にする!はあはあ…」
ブレスが消えたことで、ダメージを受けることはなかったものの、一歩間違えば大ダメージを受けていたという事態だった。
そして、攻撃を妨害した《マックス・ウォリアー》は攻撃を受けた左わき腹を手で抑えながら、227のそばへ向かう。
「そして、ダメージ計算終了時に手札からレベル4以下の戦士族モンスター1体を特殊召喚する」
マックス・ウォリアー レベル4 攻撃1600
(さすがは元デュエルチェイサーズ!ピンチを回避し、後続のモンスターを呼びこんだーー!!)
「ダメージを与えることはできなかったか…。俺はこれでターンエンド!」
227
手札1→0
ライフ4000
SPC3
場 マックス・ウォリアー レベル4 攻撃1600
死力のタッグ・チェンジ(永続罠)
伏せカード1
遊矢
手札6→2(アクションカード1)
ライフ3600
SPC3
場 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃3100→2500
EMユニ レベル4 守備1500
EMコン レベル3 守備1000
EMラディッシュ・ホース(青) ペンデュラムスケール3
EMオッドアイズ・ユニコーン(効果使用済)(赤) ペンデュラムスケール8
「俺のターン!俺はドロー前に永続罠《破滅へのクイック・ドロー》を発動!お互いにドローフェイズ時に手札がない場合、通常のドローに加えて追加でカードを1枚ドローできる。ただし…俺は自分のターンが終了するたびに700のダメージを受け、仮に俺のライフが700未満の場合、強制的に俺のライフは0になる!」
「そんな…ハイリスクなカードを…!?」
「これは俺にとって背水の陣…。どのような手を使ってでも…どんな恥辱を受けたとしても…俺は必ず最強のデュエルチェイサーになる!貴様にそのような覚悟はあるか!?榊遊矢!!」
「俺…は…」
227のすさまじい執念に圧倒されたかのように、遊矢は言葉を失う。
そして、彼の言葉を聞いた観客たちも沈黙した。
(うらやましい…)
実況するメリッサも、ただその言葉しか思い浮かばなかった。
「《破滅へのクイック・ドロー》の効果で、俺はデッキからカードを合計2枚ドローする!」
227
手札0→2
SPC3→5
遊矢
SPC3→5
「俺は手札から《アタック・ゲイナー》を召喚!」
アタック・ゲイナー レベル1 攻撃0
「またチューナーモンスターを!?」
「レベル4の《マックス・ウォリアー》にレベル1の《アタック・ゲイナー》をチューニング!地獄の果てまで追い詰めよ!見よ!清廉なる魂!シンクロ召喚!出でよ、レベル5!《ゴヨウ・チェイサー》!」
オレンジ色のラインのある袴を着て、縄が後ろについている十手を持つ、江戸時代の岡っ引きをモチーフにしたと思われる戦士が現れる。
そして、《アタック・ゲイナー》の幻影が《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》に体当たりする。
「更に、《アタック・ゲイナー》の効果発動!このカードがシンクロ素材として墓地へ送られたとき、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体の攻撃力をターン終了時まで1000ダウンさせる!」
体当たりを受けた《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が傷がないにもかかわらず、苦しみ始める。
オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500→1500
ゴヨウ・チェイサー レベル5 攻撃1900
「バトルだ!俺は《ゴヨウ・チェイサー》で《EMユニ》を攻撃!」
《ゴヨウ・チェイサー》が十手の後ろにある縄を放ち、遊矢のフィールドの《EMユニ》を拘束する。
「《ゴヨウ・チェイサー》は戦闘で相手モンスターを破壊して墓地へ送ったとき、そのモンスターを攻撃力を半分にして特殊召喚できる!」
EMユニ レベル4 守備1500
「くっ…!」
「ペンデュラムモンスターは墓地へ行く代わりにエクストラデッキへ行く以上、《ゴヨウ・チェイサー》で捕縛できない。そして、《EMユニ》は自身と仲間を墓地から除外することで、貴様が受ける戦闘ダメージを1度だけ0にできる。その効果はこれでなら使えまい。俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド!それと同時に、《破滅へのクイック・ドロー》の代償として、俺は700ライフを支払う!」
227
手札2→0
ライフ4000→3300
SPC5
場 ゴヨウ・チェイサー レベル5 攻撃1900
EMユニ レベル4 守備1500
死力のタッグ・チェンジ(永続罠)
破滅へのクイック・ドロー(永続罠)
伏せカード1
遊矢
手札2(アクションカード1)
ライフ3600
SPC5
場 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃1500→2500
EMコン レベル3 守備1000
EMラディッシュ・ホース(青) ペンデュラムスケール3
EMオッドアイズ・ユニコーン(効果使用済)(赤) ペンデュラムスケール8
「さぁ、貴様のターンだ!貴様にも何が何でもやり遂げなければならないことがあるというなら…俺を超えて見せろ!!」
「やり遂げなきゃ…いけないこと…」
マシンレッドクラウンに装備された足を解除しつつ、遊矢はそのことを思い出す。
自分のやるべきことは次元戦争を終わらせること、そして柚子や仲間を守ること。
だが、そのためにはシンクロ次元の力が必要で、それを得るためにもこのフレンドシップカップを勝ち進めなければならない。
ということは、必然として彼を地獄へ落とさなければならない。
「俺…は…」
だが、彼を犠牲にしたくないという思いがジレンマとなって遊矢にのしかかり、ドローしようとする自分の手が止まってしまう。
「何やってんだてめー!!」
「デュエルを続けろー!!」
「この腰抜けピエロがー!」
火の輪くぐりの時の歓声はどこへ行ったのか、再び遊矢に罵声を浴びせる観客たち。
「俺の…ターン…ドロー…」
手が震えたまま、遊矢はカードを引く。
遊矢
手札2→3
SPC5→7
227
SPC5→7
「俺は…セッティング中のペンデュラムスケールでペンデュラム召喚を行う!今一度揺れろ!魂のペンデュラム!天空に描け光のアーク!ペンデュラム召喚!! 現れろ、《EMウィム・ウィッチ》!」
遊矢のフィールドにピンクを基調とした色合いで、青いマントとピンクと青の縞模様の帽子を付けた、2本足の猫型モンスターが現れる。
EMウィム・ウィッチ レベル4 守備800
「更に、俺は《EMラディッシュ・ホース》のペンデュラム効果を発動!EM1体の攻撃力分、相手モンスター1体の攻撃力をダウンさせる!」
《EMラディッシュ・ホース》の力を受け、ピンク色の光を纏った《EMウィム・ウィッチ》が《ゴヨウ・チェイサー》にウインクをする。
すると、《ゴヨウ・チェイサー》は目をハートマークにして動かなくなってしまった。
「《ゴヨウ・チェイサー》!き、貴様まで!?!?」
ゴヨウ・チェイサー レベル5 攻撃1900→1100
「バトル…。俺は、《オッドアイズ》で《ゴヨウ・チェイサー》を攻撃…」
「ふん!俺のフィールドに伏せカードがあることを忘れたか!?」
「伏せカード…??ああ!!」
227の言葉を聞いた遊矢が正気に戻り、彼のフィールドを見る。
そこには1枚だけ、伏せカードがある。
あまりの動揺で、そのことを失念してしまっていた。
「俺は《Sp-収縮》を発動!俺のスピードカウンターが3つ以上あるとき、フィールド上のモンスター1体の元々の攻撃力をターン終了時まで半分にする!」
「何!?」
《Sp-収縮》の影響により、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の体が縮んでいく。
そして、その大きさが2分の1になったところを十手で殴られて撃破される。
オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500→1250
「けど、攻撃力は1250!なんで戦闘破壊されて…」
「さらに俺はアクションカードも発動した。アクション魔法《そよ風》!この効果で《ゴヨウ・チェイサー》の攻撃力を300アップした!」
ゴヨウ・チェイサー レベル5 攻撃1100→1400
227
SPC7→5→6
遊矢
ライフ3600→3450
Sp(スピードスペル)-収縮(ゲームオリカ)
速攻魔法カード
(1):自分のスピードカウンターを2つ取り除き、フィールド上に存在するモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターの攻撃力がターン終了時まで半分になる。
「く…破壊されたペンデュラムモンスターはエクストラデッキに行く!」
ペンデュラムモンスターの特性のおかげで、最悪の事態だけは回避された。
しかし、フィールドにはまだ《ゴヨウ・チェイサー》が残っており、そしてスピードカウンターは8まで増えている。
「さぁ、ここからどうする!?」
「…俺は、カードを2枚伏せ、ターンエンド」
227
手札0
ライフ3300
SPC6
場 ゴヨウ・チェイサー レベル5 攻撃1400→2200
EMユニ レベル4 守備1500
死力のタッグ・チェンジ(永続罠)
破滅へのクイック・ドロー(永続罠)
遊矢
手札3→0(アクションカード1)
ライフ3450
SPC7
場 EMウィム・ウィッチ レベル4 守備800
EMコン レベル3 守備1000
EMラディッシュ・ホース(青) ペンデュラムスケール3
EMオッドアイズ・ユニコーン(効果使用済)(赤) ペンデュラムスケール8
伏せカード2
「俺のターン!」
227
手札0→2
SPC6→8
遊矢
SPC7→9
「俺は手札から《トップ・ランナー》を召喚!」
トップ・ランナー レベル4 攻撃1100(チューナー)
「レベル4の《コン》にレベル4の《トップ・ランナー》をチューニング!大地をうがち現れろ、気高き法の守護者!シンクロ召喚!レベル8!《ギガンテック・ファイター》!!」
ギガンテック・ファイター レベル8 攻撃2800
「俺の《コン》を使ってシンクロモンスターを…!?」
「このカードは俺の墓地に存在する戦士族モンスター1体につき、攻撃力が100アップする。俺の墓地の戦士族モンスターは5体!」
ギガンテック・ファイター レベル8 攻撃2800→3600
「攻撃力3600!?」
《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》はペンデュラム召喚することで再びフィールドに出すことができる。
しかし、《EMラディッシュ・ホース》の効果を使っても、現状下げることができる攻撃力は800で、《EMオッドアイズ・ユニコーン》の効果はもう使ってしまった。
攻撃力を頼みに《ギガンテック・ファイター》を倒すのが難しくなったのだ。
「さあ、今こそ見せてやる!這い上がるために手にした力を!《Sp-ミラクルシンクロフュージョン》を発動!」
「何!?《融合》…!?」
227が発動したカードを見て、遊矢は動揺する。
シンクロ次元のデュエリストが融合を使うなど、あり得ない話だ。
(おいおい、シンクロ次元にアカデミアでもいるのか…?)
観戦している翔太はこの次元に隠れる敵の影を感じ始めていた。
「このカードはスピードカウンターを2つ取り除き、フィールドと墓地のモンスターを素材に、シンクロモンスターを素材とする融合モンスターを融合召喚できる。俺が素材とするのは墓地の《ゴヨウ・プレデター》とフィールドの《ゴヨウ・チェイサー》!飽くなき追跡者の魂と誇り高き捕食者の魂が、今1つとなりて昇華する!融合召喚!出でよ、荘厳なる捕獲者の血統を受け継ぎし者!《ゴヨウ・エンペラー》!」
2体の捕縛者が白い光でできた渦の中に消えていき、その中から浮遊する赤い西洋風の一人がけソファーに腰かけた、歌舞伎役者の隈取化粧を模した仮面をつけた、貴族のようなモンスターが現れる、
融合素材となった2体と比べると、身長は大人と子供ほどの差があり、名前からしてまさに少年皇帝というべき姿だ。
ゴヨウ・エンペラー レベル10 攻撃3300
Sp-ミラクルシンクロフュージョン(ゲームオリカ)
通常魔法カード
(1):自分のスピードカウンターを2つ取り除いて発動する。自分のフィールド上・墓地から、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターをゲームから除外し、シンクロモンスターを融合素材とするその融合モンスター1体を融合召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。
(2):セットされたこのカードが相手のカード効果によって破壊され墓地へ送られた時に発動する。自分はデッキからカードを1枚ドローする。
227
SPC8→6
「攻撃力3300!?」
「墓地の戦士族モンスターが減ったことで、《ギガンテック・ファイター》の攻撃力は下がる」
ギガンテック・ファイター レベル8 攻撃3600→3400
「そして…!」
227は更に遊矢に追い打ちをかけるため、アクションカードを探す。
ちょうど壁の上あたりにアクションカードがあり、彼は壁を走行してジャンプし、そのカードを手にする。
手にしたカードがアクション魔法だったためか、自動的に227のスピードカウンターが増える。
227
SPC6→7
「ここで俺は《スピード・ワールド・A》の効果発動!スピードカウンターを7つ取り除き、デッキからカードを1枚ドローする」
発動宣言と同時に、一気に227のDホイールのスピードが落ちる。
そして、すぐに彼はカードをドローする。
227
SPC7→0
「俺は手札から《Sp-オーバーブースト》を発動!俺のスピードカウンターを6つ増やし、ターン終了時に俺のスピードカウンターを1にする」
227
SPC0→6
「またスピードカウンターを…!?」
「そして、俺は《スピード・ワールド・A》の効果を発動!スピードカウンターを4つ取り除き、手札のSp1枚につき、400のダメージを与える!」
227がアクションカードを含む手札を遊矢に公開する。
そして、遊矢の真後ろに来ると、排気口から火炎放射を放つ。
「うわあああ!!」
遊矢
ライフ3450→3050
227
SPC6→2
後悔されたカード
・Sp-起爆化
・フレイム・ソード
「そして、俺は手札から《Sp-起爆化》を発動!俺のスピードカウンターが2つ以上あるとき、自分の魔法・罠ゾーンに存在するカード1枚を破壊することで、相手フィールド上に存在するすべてのモンスターの表示形式を変更する」
「何!?」
227のフィールドにある《破滅へのクイック・ドロー》が爆発し、それにびっくりした遊矢のモンスターたちが一斉に表示形式を変更する。
EMコン レベル3 守備1000→攻撃600
EMウィム・ウィッチ レベル4 守備800→攻撃800
Sp-起爆化(アニメオリカ)
通常魔法カード
(1):自分のスピードカウンターが2つ以上あるとき、自分フィールド上に存在する魔法・罠カード1枚を対象に発動できる。そのカードを破壊し、相手フィールド上に存在するすべてのモンスターの表示形式を変更する。
「まずいな。2体とも攻撃力が低いモンスター。攻撃力3300の《ゴヨウ・エンペラー》と3400の《ギガンテック・ファイター》の一斉攻撃を受けたら…」
「これで終わりだ!!《ゴヨウ・エンペラー》で《EMコン》を攻撃!そして、このカードは意味がないが発動しなければならない!アクション魔法《フレイム・ソード》!!こいつは攻撃モンスターに貫通効果を与える!」
《ゴヨウ・エンペラー》が口から炎を吐き、《EMコン》をその中に拘束する。
炎を受けた《EMコン》はなぜか熱くないことに動揺するが、すぐに彼女は炎と共に227のフィールドに移ってしまう。
「《ゴヨウ・エンペラー》はこのカードと俺のフィールド上に存在する、元々のコントローラーがお前のモンスターが戦闘で破壊したモンスターを俺のフィールド上に特殊召喚する効果がある。《EMコン》はペンデュラムモンスターでない以上、捕縛する!」
EMコン レベル3 守備1000
遊矢
ライフ3050→350
SPC7→4
(ナンバー227の一撃がさく裂!!一気に榊遊矢選手のライフを350にし、更にスピードカウンターまで下げてしまったーーー!!)
「やっちまえーー!」
「このままこいつをぶっつぶしてしまえーー!!」
観客が227をあおり始める。
そして、227も勝利を確信したのか、笑みを浮かべて攻撃宣言する。
「これで決まりだ!!《ギガンテック・ファイター》で《EMウィム・ウィッチ》を攻撃!!」
攻撃命令を受けた《ギガンテック・ファイター》が走りはじめ、《EMウィム・ウィッチ》に向けてショルダータックルをしようとする。
「く…!俺は罠カード《ガード・ブロック》を発動!俺が受ける戦闘ダメージを0にし、デッキからカードを1枚ドローする!」
ショルダータックルを受けた《EMウィム・ウィッチ》が破壊され、その衝撃が遊矢を襲う。
しかし、彼の周囲に展開された透明な障壁が防御する。
「ええい…しぶとい奴が!!俺はこれでターンエンド!それと同時に、《オーバーブースト》の効果で、俺のスピードカウンターは1に落ちる!」
227
手札0
ライフ3300
SPC6
場 ゴヨウ・エンペラー レベル10 攻撃3300
ギガンテック・ファイター レベル8 攻撃3400
EMコン レベル3 守備1000
死力のタッグ・チェンジ(永続罠)
破滅へのクイック・ドロー(永続罠)
遊矢
手札0→1(アクションカード1)
ライフ350
SPC4
場 EMラディッシュ・ホース(青) ペンデュラムスケール3
EMオッドアイズ・ユニコーン(効果使用済)(赤) ペンデュラムスケール8
伏せカード1
再び遊矢のフィールドのカードが全滅し、一気にライフも350まで減った。
アクションカードが手札にある遊矢は次のターン、そのカードを使ったうえで新しいアクションカードを手にしなければ、スピードカウンターを7つ取り除くことで行えるドローができない。
頼みの綱は次にドローするカードを含めた手札2枚と残っているアクションカードだけだ。
「さあ、どうした!?さっさとドローしろ!それともここでサレンダーするか??」
227がターンを進めるよう、遊矢を挑発するが、遊矢はデッキトップに指をかけるだけで何もしない。
(どうしたことでしょう!?動きが止まってしまったーーー!このままプレイしないまま1分経過すると失格!もー、何やってるのよーー!?)
「もう負けるとわかったから、腰が引けてしまったかー!?」
「てめーみたいな腰抜けがフレンドシップカップに出るんじゃねー!」
「かえって、ママのおっぱいでも吸ってろ!弱虫がー!!」
観客も一緒になって、遊矢を挑発する。
そして、遊矢が動きを止めてから30秒が経過する。
(悲しい人たちです…。勝利でしか自分を表現できない。そして、目的を達成するにはあなた自身が彼に悲しみを与えなければならない…。それゆえに恐ろしい…)
再び女性の声が遊矢の脳裏に響く。
(小僧、何をしている?やらなければやられる。勝負の世界とはそのようなもの。ならば…迷わず奴を地獄へ落とせば良いだろう)
「オッドアイズ…」
女性の声の主がわからない遊矢は仕方なく、オッドアイズだけを名前で呼ぶ。
呼ばれたオッドアイズはいい分だけはきこうと口を閉ざす。
「…。俺を、信じてくれ」
(信じる…?)
「俺のターン、ドロー!!」
失格ぎりぎりになって、遊矢はカードをドローする。
遊矢
手札1→2
SPC4→6
227
SPC1→3
「おじさん…」
「お、おじさん…!?俺はまだ30手前だぞ!?失礼な…!」
「デュエルの間で言ってたよな。自分には何が何でもやらなければいけないことがあるって。そのためには、どんな手でも使う。どんな恥辱にも耐えるって…。思い出したよ、俺にも、何が何でもやらなきゃいけないことがあるってことを…」
顔をあげ、じっと227を見る。
遊矢の眼からは涙が流れているが、真剣な表情を見せている。
「おじさんの言葉がなかったら、きっと迷いながらデュエルをしてた。だから…ありがとう。ただ、これだけは言っておきたくて…」
「ありがとう…だと!?貴様!!」
「俺は手札から《Sp-エンジェル・バトン》を発動!スピードカウンターを4つ取り除くことで、デッキからカードを2枚ドローし、手札1枚を墓地に送る!」
遊矢はカードを引き、3枚の中から選んだ1枚を墓地へ送る。
「この瞬間、俺は墓地へ送った《代償の宝札》の効果を発動!このカードが手札から墓地へ送られたとき、俺はデッキからカードを2枚ドローできる!」
《スピード・ワールド・A》の効果により、従来の魔法カードは発動できないものの、このようなタイプのカードは別だ。
発動できずとも、このような形で恩恵を受けることのできる魔法カードが多少なりとも存在する。
遊矢
手札2→4
SPC4→0
「俺はセッティング中のペンデュラムスケールでペンデュラム召喚を行う!現れろ、俺のモンスターたち!!エクストラデッキから、《EMウィム・ウィッチ》、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!そして、手札から《EMシルバー・クロウ》、《法眼の魔術師》!!」
一気に遊矢のフィールドに4体ものモンスターが集結する。
その中には金色の4つの車輪のついた槌を持つ、金色の飾りのある黒いローブで金色の羽を模した帽子をつけた灰色の髪の魔術師がいる。
口元がローブと同じ色のスカーフで隠れていて、髪で右目が隠れており、その表情をうかがうのは非常に水かしい。
EMウィム・ウィッチ レベル4 攻撃800
EMシルバー・クロウ レベル4 攻撃1800
オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500
法眼の魔術師 レベル7 攻撃2000
(遊矢選手!一気に4体ものモンスターを同時召喚!しかし、攻撃力は《ゴヨウ・エンペラー》にも《ギガンテック・ファイター》にも届かず!さあ、どうするーーー!?)
「さらに俺は《ウィム・ウィッチ》と《シルバー・クロウ》でオーバーレイ!漆黒の闇より愚鈍なる力に抗う反逆の牙!今、降臨せよ!エクシーズ召喚!現れろ!ランク4!《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》!」
(さあ…参りましょう)
「え…!?」
エクシーズ召喚された《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》からあの女性の声が聞こえた。
(ふん!察しの悪い小僧が。まぁ…貴様のデッキにはまだ女がいるようだが…)
ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ランク4 攻撃2500
「《ダーク・リベリオン》は1ターンに1度、オーバーレイユニットを2つ取り除き、相手モンスター1体の攻撃力の半分を奪うことができる!」
「それが《ゴヨウ・エンペラー》に対する切り札か!?だが甘い!俺は《ゴヨウ・エンペラー》の効果を発動!相手がモンスターを特殊召喚したとき、俺のフィールド上に存在する地属性・戦士族のシンクロモンスター1体をリリースし、そのコントロールを奪う!《ギガンテック・ファイター》をリリース!」
ほっそりと開いていた《ゴヨウ・エンペラー》の眼がいきなり大きく開き、紫色の怪しく光る。
その光を見てしまった《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》の眼が紫色の淡く光り、そのまま227のフィールドへ向かってしまった。
「これで手は封じた!貴様の負けだ、榊遊矢!」
「まだだ!俺は…まだ!!」
まだ負けるわけにはいかない、そういおうとした遊矢の脳裏にダーク・リベリオンの声が響く。
(そうです…。あなたはまだ負けていません)
「ダーク…リベリオン…?」
背後のあらわれた2体の竜の幻影に遊矢は驚く。
周囲の人々は動きを止めていて、上空の雲も動かなくなっている。
(『恐怖』め…。小僧は俺の獲物だ。邪魔をするな)
(『憎しみ』…いいえ、オッドアイズ。彼には悲しみを感じる心があります。悲しむ人の心にぬくもりを与えたいと願う心が…。それが、既に新しい力を生み出しています。その力を…解放していただけませんか?)
「新しい力…??」
よくわからない会話をする2体の竜に置いてけぼりにされつつある遊矢はダーク・リベリオンに質問する。
オッドアイズに質問したとしても、無視されるのが関の山だろうと思ったためだ。
(ええ。悲しみは心を冷たくする。でも、悲しみがあるからこそ、ぬくもりの意味を知ることができる。それを示すカード…)
「悲しみのカード…あ…!」
遊矢の目の前に青い光の粒子が集まり、それが1枚のエクシーズモンスターカードへと変わる。
氷漬けの鎧をまとった、新しいオッドアイズのカード…。
観念したオッドアイズが解放したのかもしれない。
(オッドアイズ…。感謝しますよ)
(勘違いするな、女狐め。小僧が力の進化に心が追い付いているかを確かめるだけだ)
(ええ…。信じましょう。遊矢を…ユートが守った優しき少年を…)
そういいながら、2体の竜が消え、とまっていたものが動き始める。
そして、遊矢はマシンレッドクラウンのディスプレイを操作し、エクストラデッキの中を見る。
その中には、あのカードが入っていた。
「どうした!?もう手がないだろう。ターンエンドしろ!!」
「いいや…おじさん!まだデュエルは終わっていない!俺はレベル7の《オッドアイズ》と《法眼の魔術師》でオーバーレイ!」
「何!?またエクシーズ召喚だと!?」
《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が上空に向けて咆哮すると、《法眼の魔術師》が魔法を唱え始める。
すると、魔術師の姿が吹雪に変化していき、二色眼の竜を包み込んでいく。
「二色の眼の竜よ、人々の涙を束ね、解放への道を示せ!エクシーズ召喚!ランク7!悲しき世界を穿つ氷河の竜、《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》!!」
氷の鎧をまとった《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が激しく咆哮する。
すると、会場が吹雪のソリッドビジョンに包まれていき、コースが氷漬けになっていく。
オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン ランク7 攻撃2800
「バトルだ!俺は《オッドアイズ》で《ゴヨウ・エンペラー》を攻撃!!」
「攻撃力3300の《ゴヨウ・エンペラー》を!?血迷ったか…!?」
《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》が地面をたたくと、《ゴヨウ・エンペラー》の足元から氷の柱が生まれ、それが彼を閉じ込めていく。
そして、身動きの取れないそのモンスターを氷によって質量の増した尾で薙ぎ払おうとする。
「この瞬間、《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》の効果を発動!モンスターが攻撃するとき、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、その攻撃を無効にする!リボーン・バリア!!」
しかし、《ゴヨウ・エンペラー》の目の前に《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の幻影が現れ、尾を受け止める。
「更にそのあと、手札・墓地からオッドアイズモンスター1体を特殊召喚できる!俺は《オッドアイズ》を特殊召喚する!」
攻撃を受け止めた《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》はそのまま遊矢のフィールドへと戻っていった。
オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500
取り除いたオーバーレイユニット
・オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン
「それがどうした!?自ら攻撃を封じ、モンスターを増やしただけだ!!」
「そして、今こそアクション魔法を発動する!アクション魔法《退場》!自分フィールド上に存在するモンスター1体を破壊する!俺は《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》を破壊する!」
「自分のモンスターを今度は破壊するだと!?」
《退場》のソリッドビジョンから放たれる光を受けた《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》の氷の鎧にひびが入り、そこから今度は緑色の鎧が見え始める。
「何!?破壊されるときにも効果を発動するのか!?」
「エクシーズ召喚された《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》墓地へ送られたとき、エクストラデッキからこのカード以外のオッドアイズモンスター1体を特殊召喚できる!現れろ、雷鳴纏いし疾風の竜、《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》!!」
氷の鎧が砕け、雷鳴の鎧を得た《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》が4枚の翼をはためかせ、嵐を起こす。
氷にとらわれた《ゴヨウ・エンペラー》には逃れることができず、氷もろとも吹き飛ばされていく。
「何!?《ゴヨウ・エンペラー》が…!」
「《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》は特殊召喚に成功したとき、相手フィールド上に表側攻撃表示で存在するモンスター1体を手札に戻すことができる!ライトニング・トルネード!!」
「くぅ…。《ゴヨウ・エンペラー》は皇帝の名前にふさわしい絶大な権力をふるうモンスター。だが、権力には必ず代償がある。《ゴヨウ・エンペラー》がフィールドから離れるとき、俺のフィールド上に存在する元々の持ち主が相手のモンスターはすべて解放される…」
《EMコン》と《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》が《ゴヨウ・エンペラー》から解放され、遊矢のフィールドへと戻っていく。
彼の周囲にはアクションカードはなく、あとは遊矢が攻撃することですべてが終わる。
退場
アクション魔法カード
(1)自分フィールド上に存在するモンスター1体を破壊する。この破壊は相手による破壊として扱う。
「うう…」
遊矢はじっと227を見る。
先へ進むためには、彼を地獄へ落とすしかない。
その罪と悲しみを忘れないために。
「3体のドラゴンで、プレイヤーにダイレクトアタック!!トリプル・ストライク・バーストォ!!」
《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を中心に、3体のモンスターが回転するブレスを放つ。
炎と雷がまじりあったそのブレスは227に直撃した。
「うわあああああ!!!」
227
ライフ3300→800→0
「う、う、ううう…」
デュエルが終わり、Dホイールから降りた遊矢は涙を流しながら227を探す。
彼はDホイールから降りると同時に、2人のスタッフによって両腕をつかまれつつあった。
これから、彼は地下のごみ処理施設での強制労働という地獄が待っている。
「さぁ、いくぜ?元エリートさん」
「待ってくれ!!おじさん…いや、デュエルチェイサー227!!」
「何…??」
驚きながら227は遊矢に目を向ける。
空気を読んだスタッフ2人はつかむのをやめ、せめて最後のあいさつ程度はさせてやろうと思って待つ。
「俺は待ってる!再び地上に戻ってきて、俺にリベンジをする時を!最強のデュエルチェイサーズになるんだろう!?だったら、この敗北だけでその目的を終わらせるな!!泥水をすすってでも這い上がって、降りかかる困難を押しのけて、必ず戻ってくるんだ!!そして…俺ともう1度デュエルをするんだ!!」
「…。くっ、言われなくとも、そうして見せる!首を洗って待っていろ、榊遊矢!!」
サングラスで隠れて見えないが、彼も大量の涙を流している。
そして、スタッフたちは彼の腕をつかもうとする。
「触るな!!」
そう叫びながら227はヘルメットを右手で握って振り回し、スタッフたちを下がらせる。
「俺に触るな…!自分の足で行く…。道ぐらいはわかる!!」
そういった227は遊矢の右横に立って止まり、左手で彼の左肩を握る。
そして、わずかに笑みを浮かべた後で離し、そのままコースを後にした。
「これで…これでよかったのかな?父さん…柚子…」
勝者に向けた大きな歓声が会場を包み込む中、遊矢は静かに空を見上げていた。