遊戯王ARC-V 戦士の鼓動   作:ナタタク

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第65話 テストプレイ

「ふぅー。お弁当の準備OK!」

台所で、エプロン姿のウィンダは2段式の黒い弁当箱を緑色の布で包み、水筒と箸を黒いハンドバックに入れる。

それと同時に、着替えを終えた侑斗がウィンダを後ろから抱きしめる。

「いつもありがとう、ウィンダ」

「ユウ…ちょっと大胆…」

「いつもウィンダからこうしてくるから、その…今度は…」

抱きしめる手が震えていて、侑斗の頬は赤く染まっている。

そんな彼をかわいいと思ったウィンダはそっと彼の頬にキスをする。

キスをされたところに右手を当て、しばらく侑斗は固まった。

 

侑斗が今日訪れたのはLDSの校舎だ。

ランサーズ結成の日と同時に、そこはもはやただの学校ではなく、アカデミアの魔の手からスタンダード次元を守る戦士を養成する学校へと変わった。

もちろん、LDSが所有するほかのデュエルスクールも同じ状態になっている。

ニュースでもランサーズについては賛否両論があり、コメンテーターの中にはLDSを少年兵の集団で、『武力紛争における児童の関与に関する児童の権利に関する条約の選択議定書』で禁止されている、銃火器を所持していないため、少年兵ととらえることはできないなど、様々な議論が連日行われている。

しかし、そうした中でもアカデミアによるスタンダード次元への攻撃は散発的ではあるが続いている。

ランサーズがシンクロ次元へ飛んでから1週間以上経過し、その間に日本でアカデミアが2度攻撃を仕掛けてきた。

いずれもヴァプラ隊とランサーズ候補生の善戦によって、犠牲者ゼロで済んでいるが、いつまでもそれが続くとは侑斗には到底思えなかった。

(少年兵、か…。確か、ヒイロさんがそうだったかな?)

バリアンとの戦いでは、ヒイロについてはあまり知ることができなかった。

しかし、アカデミアとの戦いで再び共に戦うことになってから、いろいろと話を聞くことができた。

チーム・サティスファクションというデュエルギャングのメンバーだったこと、犯罪組織であるアルカディア・ムーブメントのメンバーとして、人殺しをしていたこと、イリアステルをチーム5D'sと共に退けたことなどだ。

「零児君たちからの報告はなし、か…」

校舎内に設置されている自室に入り、そこに置かれているノートパソコンで報告書を確認する。

零児不在の今、レオコーポレーション及びLDSは理事長である日美香が社長代行となっている。

補佐役として、中島がいるが、ヴァプラ隊とこれから生まれるであろうランサーズのメンバーを指揮するトップは現状では侑斗しかいない。

「僕がみんなの命を預かる、か…。最初はそんなことなんて、まったく思い浮かばなかったのにな」

(そうですよね。ですけど、ユウ様にしか頼めないって思って、零児さんが…)

椅子の後ろに隠れるように、うっすらと《霊獣使いレラ》の精霊が現れて侑斗に話す。

氷山エリアでのデュエル以降、彼女の姿が見えるようになったときは侑斗もウィンダも驚きを隠せなかった。

彼女曰く、創星神との戦いが終わった数十年後の精霊世界で生活しており、あのいたずら坊主というイメージの強いカムイが白髪の老人となって、霊獣使いの長老になっているという。

ということは、レラは侑斗たちにとってはひ孫ということになる。

なお、ほかのガスタの精霊と同様、実体化はできない模様。

(自信を持ってください、ユウ様。ユウ様はバリアンとの闘いでたくさんの命を救ったんです!)

「その時に僕がヌメロン・コードを壊した。その結果が良くも悪くも、いろんな影響を…」

眼を閉じ、ヌメロン・コードを壊したときのことを思い出す。

長きにわたる孤独を耐え続けたヌメロン・ドラゴンを解放するため、そしてドン・サウザンドのような存在に二度と悪用されないためにも、確かにそれは必要な行動だった。

あの戦いが終わり、高校に入ってからはカイトらと共に壊れたヌメロン・コードや異世界についての研究を行うようになった。

そこでわかってきたのが、ヌメロン・コードのかけらが起こす現象だった。

(ということは、この戦いの原因を作ったのは…)

「ボスー。入るぞー」

「ど、どうぞ!」

急にガーターの声が聞こえ、驚いた侑斗がノートパソコンを閉じ、扉に目を向ける。

そこにはあくびをしつつ、多くの書類が入った封筒を持ったガーターがいた。

寝癖がたくさんできていて、目のくまからかなりの苦労が伝わってくる。

「頼まれた資料、できたぜー…。うう…」

史料を机の上に置くと、額に手を置いてフラフラし始める。

「すみません…。あと少しでランサーズにも資料を回せるようになるはずですが…」

「ああ…。ったく、ハイヤーの野郎…資料作り手伝えって言ったら、荷物の配達に行きます!って逃げ出しやがって…後でぶっ飛ばす」

「あはは…」

確かに資料の量は多いが、何よりも問題なのはガーター自身だ。

元プロデュエリストで、ヴァプラ隊では現場指揮を執る事実上のナンバー2であるが、壊滅的に書類仕事が下手なのだ。

そのスピードは常人の三分の一だ。

「あの…明日から少し有給入れてください。現場指揮はスティーラーかウェザーに僕から頼んでおきますから」

「そーさせてもらうぜ…。もう、書類を見るのはごめんだー…」

フラフラと愚痴をこぼしながら侑斗の部屋から出ていく。

(あのー、大丈夫なんですか?ガーターさん)

「…大丈夫、だと信じてる」

(信じてるって、無責任な…)

「さあ、資料を読んで、明日のために添削をしよう」

封筒を開き、一番上にある資料を手に取って読み始める。

そして、仕事をしながら舞網チャンピオンシップ前のことを思い出していた。

 

これは、舞網チャンピオンシップ1週間前…。

「私はスケール1の《DD魔導賢者ケプラー》とスケール10の《DD魔導賢者ガリレイ》でペンデュラムスケールをセッティング!!」

LDS校舎にある試験用のデュエルリングで零児は再調整が行われたペンデュラムカードを発動する。

今回のデュエルディスクは遊勝塾での遊矢とのデュエルの際に使用した特別製のものではなく、市販されているもので、今回の試験はペンデュラムカードの力が制御しかつ安定したものとなっているかを確かめるものだ。

「ウィンダ。2枚のペンデュラムカードはどうなってる?」

「わぁ…OKだよ、ユウ!!まだ遊矢君が持ってるオリジナルカード並みってわけじゃないけど、安定してるし、デュエルディスクの破損もない!!大成功!」

そのころの侑斗とウィンダはLDSで開発されるペンデュラムカードの作成に協力していた。

これまで20回にも及ぶテストが行われたが、カードが粉々になったりデュエルディスクは破損したりするなど、ここまで失敗を繰り返し続けてきた。

そこまでしてペンデュラムカードを作るということは、ペンデュラム召喚に大きな可能性を見出しているということだろう。

デュエルリングの隣に設置されていた、侑斗とウィンダのいるモニタールームに零児が戻ってくる。

「零児君、体に異常は?」

「大丈夫だ。これで第2関門はまず突破したといっていい」

零児が考える、ペンデュラムカード完成までの関門は3つ。

一つは作成で、LDSでは既存のカードの改造もしくは新規のカード開発の二通りのやり方でペンデュラムカードを作ろうとした。

しかし、一部のカードを除いて改造については難航し、新規カードの方がどちらかというと作りやすかった。

既存のカードから作ろうとすると、どうしてもエラッタをする必要性が生じてしまい、それに耐えきれないカードは急に元通りに戻ってしまうか、急に新しいデメリット効果を生み出してしまう。

侑斗曰く、カードはデュエリストと精霊をつなぐ扉の役割を果たしており、メリット効果を入れると開きづらくなり、デメリット効果を入れると開きやすくなる傾向があるとのこと。

ペンデュラムモンスター化はどちらかというとメリット効果であり、更にペンデュラム効果を加えようとすると急激に扉が開きづらくなっていく。

それを阻止するために、精霊側がカードを元に戻すことで扉を元の状態に戻そうとする、もしくは強引にこじ開けてしまい、その結果新しいデメリット効果が生まれてしまうのだ。

こうして作り上げたペンデュラムカードに待つ第2の関門がエネルギーの制御だ。

過去にテストプレイヤーが2体の魔導賢者以前に作られたプロトタイプのペンデュラムカードでペンデュラム召喚を行おうとした結果、デュエルディスクとカードがエネルギーに耐えられずに破損するという事故が発生した。

エネルギーが不安定になる、もしくはありすぎるとカードとデュエルディスクに負担を与え、それらが壊れる事態を招く。

いや、それだけならまだいい。

エネルギーがあまりにも高すぎて、デュエルディスクが爆発した場合、今度はデュエリストの命にまでかかわる問題になる。

だから、なんとしてもデュエルディスクに負担を与えない程度のエネルギーで安定するカードにしなければならない。

その安定が、今回成功したのだ。

「じゃあ、第3の関門だね!」

「そうだ。あとはこれらのカードを実戦で使えるかどうかだ。テストプレイヤーを剣崎、あなたにお願いしたい」

「わかった、受けて立つよ。ウィンダ」

「はい、ユウ!」

ウィンダがカバンから出したデュエルディスクを左腕につけ、腰のデッキホルダーに収納しているカードをセットしようとすると、急に零児が右手を前に出して止めさせる。

「いや、ガスタデッキはあくまでシンクロ・エクシーズデッキ。私が望むのはペンデュラムカード同士での実戦だ」

そういって、零児は懐からデッキを出して、侑斗に渡す。

少しめくって確認すると、それは風属性中心のデッキだ。

「へぇ…霊獣使いと精霊獣による連続融合と分離か…」

「あ、見てみて!このおじいさん、カムイにそっくり!!」

ウィンダと2人でデッキを見る侑斗を見て、零児はメガネを直す。

「このデッキにはペンデュラムカードも入っている。これならば、ペンデュラム同士のデュエルが行える」

「確かに…」

侑斗はデッキの中に入っている何枚かのペンデュラムカードを見る。

その中にはフォーチュン、そして前世の自分のペンデュラムカードもあった。

「今でも半信半疑だが、あなたの前世が精霊だと聞く。ならばと思い、作らせていただいた」

「ありがとう、零児君。少しデッキの改造をしたいんだけど、時間は大丈夫かな?」

「ああ。そうしてくれ」

零児からの許可を得た侑斗はウィンダと一緒にデッキの改造をその場で行い始める。

その姿を見て、零児はわずかに笑みを浮かべ、メガネを直した。

 

1時間後、デッキ改造を終えた侑斗が先にデュエルリングに行っていた零児の前に現れる。

「完成した、ということでいいだろうか?」

「うん。いつでもいけるよ」

「了解だ。今回は実戦ということから、形式はアクションデュエルになる。フィールド魔法《スモッグ・シティ》発動」

零児の宣言と同時にリアルソリッドビジョンシステムが起動し、周囲に黒い煙をモクモクと出すレンガ造りの工場と同じ造りの住居、そして廃材で作られたような小屋が入り混じった都市が生まれる。

放置された赤い馬車と風で飛ぶ新聞紙の記事から見て、これは1870年代ごろのロンドンをイメージしたフィールドだろう。

「うう…空気悪そうで嫌だなー…」

自然の多い湿原で育ったウィンダにとって、このフィールドは好みではないらしく、嫌そうな表情を見せる。

「まずは空気を直すところから始めるべきかな…?そういうアクション魔法があればいいけど…」

「では、始めよう…」

「「デュエル!!」」

お互いにすぐにデュエルを始めたかったためか、口上を省略した。

 

侑斗

手札5

ライフ4000

 

零児

手札5

ライフ4000

 

「僕の先攻!まずは…」

開始と同時に、侑斗は走り始める。

狙いは空気の悪いこのフィールドを変えることのできるアクション魔法だ。

扉付きの馬車を開き、中を調べると、赤い椅子の上に置かれているアクションカードを見つける。

「よし…僕は手札からアクション魔法《植林》を発動!僕は手札を1枚デッキに戻し、デッキからカードを1枚ドローする!」

発動と同時に、道路脇に街路樹が出現し、一部の公園の枯れた木の緑がよみがえっていく。

 

植林

アクション魔法カード

(1):手札を1枚デッキに戻し、デッキからカードを1枚ドローする。

 

「そして、僕はモンスターを裏守備表示で召喚!そして、手札から魔法カード《封印の黄金櫃》を発動!デッキから《精霊獣アペライオ》を除外し、発動後2回目の僕のスタンバイフェイズ時にそのカードを手札に加える」

金色の眼を模したレリーフが特徴的な、横長の長方形の箱に侑斗のデッキから飛び出した《精霊獣アペライオ》が収納される。

その箱はそのまま侑斗の頭上に浮かび続ける。

「そして僕は…カードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

侑斗

手札5→1

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

  伏せカード2

 

零児

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「最初のターンにペンデュラムカードが来なかったか…」

自分の手札を見ながら、少し残念そうな口調で零児は言う。

ペンデュラムモンスター同士の戦闘が成立せずにデュエルが終わる、という事態になるとこのデュエルの意味がない。

かといって、テストであったとしてもデュエルである以上は手加減できない。

そんな自分の性質を少し恨みながら、零児はカードを引く。

「私のターン、ドロー」

 

零児

手札5→6

 

「ええっと、ほかにもアクションカードは…」

ターンが終わった後でも、侑斗はアクションカードを探し続ける。

アクションカードは手札に1枚しか加えることができないが、手札に加えるのも発動もいつでもできる特殊なカード。

そのため、仮に回収しなくても場所を知っておくだけでも何かが違うはずだと侑斗は判断した。

「私は手札から永続魔法《魔神王の禁断契約書》を発動。このカードが発動している限り、私のターンのスタンバイフェイズごとに、私は2000のダメージを受ける」

《魔神王の禁断契約書》のソリッドビジョンから現れた、灰色の意思でできた首飾りが零児のかけられる。

この首飾りが契約の証で、それが下手をすると零児を敗北へと導く鎖となる。

「そして、もう1つ…。私は手札から永続魔法《地獄門の契約書》を発動。このカードは私のターンのスタンバイフェイズごとに、私に1000のダメージを与える」

今度は零児の右腕に浅黒く、Dの文字が一周するかのように配置されている枷がつけられる。

これで、零児は自分のターンのスタンバイフェイズごとに合計3000の命が契約書に奪われることになる。

「零児君…」

「異次元の王と契約するというのはこういうことだ…。世界を守る力を得るためには、それに見合った代価を支払わなければならない」

「…。そうだね。けど、君はレオコーポレーションの社長であり、これから生まれるランサーズのリーダーなんだ。測り間違えちゃいけないよ。君の命とその力の天秤を…」

「ご忠告、感謝する。私は《地獄門の契約書》の効果を発動。1ターンに1度、デッキからDDモンスター1体を手札に加える。私はデッキから《DD魔導賢者ニュートン》を手札に加える」

《地獄門の契約書》が光ると、デッキから《DD魔導賢者ニュートン》が自動排出され、零児の手札に加わる。

「そして、《魔神王の禁断契約書》の効果発動。1ターンに1度、手札からDDDモンスターを守備表示で特殊召喚できる。私は手札から《DDD壊薙王アビス・ラグナロク》を特殊召喚する」

零児のフィールドに現れた《DDD壊薙王アビス・ラグナロク》がギロリと侑斗の伏せカードと裏守備モンスターを見る。

そして、走る零児には追従することなく、その場で待機する。

 

DDD壊薙王アビス・ラグナロク レベル8 守備3000

 

「更に、《魔神王の禁断契約書》の効果を発動。1ターンに1度、このカードの効果で特殊召喚したモンスター含む、手札・フィールド上のモンスターを素材に悪魔族融合モンスターを融合召喚することができる。私が融合素材とするのは、《アビス・ラグナロク》と手札の《DDラミア》を融合する!神々の黄昏を打ち破り、未来の流される血をもって、竜をも倒す勇者となれ!融合召喚!生誕せよ!レベル8、《DDD剋竜王ベオウルフ》!」

頭と胸部、そして両腕が赤いバラで装飾された青い蛇型のモンスターが《DDD壊薙王アビス・ラグナロク》と共に《魔神王の禁断契約書》が生み出した黒い渦に飲み込まれていく。

そして、渦の中からオレンジ色のベルトが各所についている、黒いベストと茶色いズボンを身に着けた青い人狼が

飛び出す。

 

DDD剋竜王ベオウルフ レベル8 攻撃3000

 

「ペンデュラムモンスターを素材とした融合モンスター…。いわば、ペンデュラム融合といったところだね…」

「そうだ。そして、融合素材となった《アビス・ラグナロク》はエクストラデッキに送られる」

《DDD壊薙王アビス・ラグナロク》をエクストラデッキに加えつつ、零児は侑斗の伏せカードを見る。

(ペンデュラムモンスターはフィールドから墓地へ送られるとき、代わりにエクストラデッキへ行く。だが、《マクロコスモス》の効果を使うことで、それを防ぐだけでなく、除外させて戦力を減らすことができる)

仮にそのカードが《マクロコスモス》の場合、侑斗であれば融合召喚しようとした瞬間に発動し、素材となった2体のモンスターをまとめて除外しようとするはずだ。

「(となると…そのカードは攻撃に対応するためのカードか…)私は手札から速攻魔法《サイクロン》を発動。フィールド上に存在する魔法・罠カード1枚を破壊する。私が破壊するのは、その右側の伏せカードだ」

《サイクロン》から発生する竜巻が侑斗の伏せカードを飲み込もうとする。

しかし、急に破壊しようとしたカードからライオンに似た咆哮が発せられ、《DDD剋竜王ベオウルフ》が警戒のために路上から屋上へ飛んで移動してしまう。

「何…!?」

「罠カード《威嚇する咆哮》を発動。これで僕たちはこのターン、攻撃宣言できない」

「なるほど…。そのカードだったか」

「まぁ、悩みどころだよね。《サイクロン》はペンデュラム召喚対策ができるけど、さっきのカードみたいなフリーチェーンには対抗できない。《ナイト・ショット》だとこの事態を対処できるけど、ペンデュラム召喚対策として使用できないし、速攻魔法じゃないからね」

「ふっ…。私はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

侑斗

手札1

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

  伏せカード1

 

零児

手札6→2(うち1枚《DD魔導賢者ニュートン》)

ライフ4000

場 DDD剋竜王ベオウルフ レベル8 攻撃3000

  魔神王の禁断契約書(永続魔法)

  地獄門の契約書(永続魔法)

  伏せカード1

 

「僕のターン、ドロー!」

 

侑斗

手札1→2

 

走りながらドローしたカードを見て、侑斗が笑みを浮かべる。

「僕は手札から《精霊獣ラムペンダ》を召喚!」

 

精霊獣ラムペンダ レベル4 攻撃1600

 

「このカードは1ターンに1度、エクストラデッキの霊獣モンスター1体を除外することで、デッキからそれと同じ種族の霊獣を墓地へ送る。僕は《聖霊獣騎カンナホーク》を除外し、デッキから《精霊獣カンナホーク》を墓地へ送る」

《精霊獣ラムペンダ》が必死に空へ飛ぼうと両手をばたつかせる。

すると、上空に裂け目が生まれ、その中に《聖霊獣騎カンナホーク》と《精霊獣カンナホーク》が消えてゆく。

「そして、セットモンスターを反転召喚。《精霊獣使いウィンダ》!!」

「よーし、このカードでは初陣だよー!」

嬉しそうにその場で精霊に戻ったウィンダが侑斗のそばまで瞬間移動する。

表が緑で裏が黒のマントと黒いスパッツにシャツ、ピンク色のビキニアーマーと緑色の玉石の付いた黒いベルトに装備が変わり、数年前の巫女としてのウィンダからだいぶイメージが変わっている。

なお、ウサギの人形はベルトにしっかりと固定されているため、飛ばされることはないというのはウィンダ曰くだ。

 

精霊獣使いウィンダ レベル4 攻撃1600

 

「僕は手札から魔法カード《魂の解放》を発動!互いの墓地からカードを5枚までゲームから除外する!」

「直接除外しに来たか…!!」

「DDDデッキは墓地にカードがたまると怖いからね」

《魂の解放》のソリッドビジョンから竜巻が発生し、零児と侑斗の墓地のカードが取り込まれていく。

しかし、あくまでそれは演出であり、本当は2人とも除外することになったカードをデッキケースにしまっているだけだ。

 

除外されたカード

侑斗

・精霊獣カンナホーク

・威嚇する咆哮

 

零児

・DDラミア

 

(だが、《DDラミア》を除外する程度では…)

確かに《DDラミア》にも、墓地の存在することで発動できる効果がある。

そうなると、目的は零児のDDモンスターの除外ではなく、先ほど墓地へ送った《精霊獣カンナホーク》を除外することにあると零児は考えた。

「ウィンダ…。すまないけど…」

「ううん。気にしないで、ユウ」

「うん…。バトル。僕は《ウィンダ》で《ベオウルフ》を攻撃!」

「いっくよー、巫女の風・霊獣バージョン!!」

ウィンダが飛び上がると、屋上で警戒している《DDD剋竜王ベオウルフ》に向けて風の弾丸を放つ。

今の零児のそばにはアクションカードはない。

「く…迎撃をしろ、《ベオウルフ》!!」

苦い表情を浮かべた零児から指示を受けた《DDD剋竜王ベオウルフ》は爪で風を切り裂くと、ウィンダに襲い掛かる。

しかし、いきなりウィンダの目の前に《聖霊獣騎カンナホーク》が現れ、《精霊獣カンナホーク》が起こす風が竜を倒したと伝えられる王を吹き飛ばす。

吹き飛ばされた王は今度は屋上ではなく、零児の背後へ向かった。

「《ウィンダ》が相手によって破壊されたとき、墓地かエクストラデッキから霊獣を召喚条件を無視して特殊召喚できる。っていっても、作った零児君にはわかってると思うけどね」

「そのカードがあれば、あなたの戦力が上がり、ひいてはスタンダード次元の戦力増強につながる。そう考えただけだ」

「そうだとしても、うれしかったから…ありがとう、って言っておくよ」

 

聖霊獣騎カンナホーク レベル6 攻撃1400

 

侑斗

ライフ4000→2600

 

「そして、僕は《聖霊獣騎カンナホーク》の効果を発動!除外されている霊獣カード2枚を墓地へ戻し、デッキから霊獣カードを1枚手札に加える。僕はデッキから《霊獣の連契》を手札に加える」

《聖霊獣騎カンナホーク》に乗る《霊獣使いの長老》が杖を天に掲げると、侑斗の手札に《霊獣の連契》が加わる。

それと同時に、次元の裂け目の中にいる《精霊獣アペライオ》ともう1枚の《聖霊獣騎カンナホーク》が飛び出し、そのまま消滅する。

「そして、手札から速攻魔法《霊獣の連契》を発動!僕のフィールド上に存在する霊獣モンスターの数だけ、フィールド上のカードを破壊する!僕は伏せカードと《ベオウルフ》を破壊する!」

「私は罠カード《契約洗浄》を発動!」

チェーンして発動された《契約洗浄》によって、フィールドにあった2枚の契約書が消える。

そして、零児を拘束していた首飾りと枷も同時に消える。

「フィールド上に存在する契約書をすべて破壊し、その数だけデッキからカードをドローする。そして、破壊した数×1000ライフを回復する」

「やっぱりね…」

ここで《契約洗浄》を発動しなければ、がら空きになった状態で《聖霊獣騎カンナホーク》のダイレクトアタックによるダメージと2枚の契約書の代償によって零児が敗北する。

今の零児にはそのカードを発動するしか、選択肢がなかった。

 

零児

手札2→4

ライフ4000→6000

 

「これで零児君のフィールドからカードはなくなった。そして、僕はさらに罠カード《霊獣の騎襲》を発動!このカードは墓地と除外されている霊獣使いと精霊獣を1体ずつ守備表示で特殊召喚できる。僕は《ウィンダ》と《アペライオ》を特殊召喚!」

「やったー、また私の出番だね!」

発動と同時に嬉しそうにウィンダが《精霊獣アペライオ》の頭を撫でて一緒にフィールドへ出て来る。

撫でられている《精霊獣アペライオ》はおとなしくその場に座る。

 

精霊獣アペライオ レベル4 守備200

精霊獣使いウィンダ レベル4 守備1800

 

「更に、《アペライオ》の効果を発動!1ターンに1度、墓地の霊獣カードを1枚除外することで、ターン終了時まで僕のフィールド上に存在する霊獣の攻撃力・守備力を500アップさせる!」

《霊獣の連契》をデッキケースにしまうと、座っている《精霊獣アペライオ》が口から火の玉をだす。

火の玉は侑斗の目の前で止まり、その場で燃え続ける。

 

聖霊獣騎カンナホーク レベル6 攻撃1400→1900

精霊獣ラムペンダ レベル4 攻撃1600→2100

精霊獣アペライオ レベル4 守備200→700

精霊獣使いウィンダ レベル4 守備1800→2300

 

「バトル!僕は《ラムペンダ》と《カンナホーク》でダイレクトアタック!」

《霊獣使いの長老》の手を借りて、《精霊獣ラムペンダ》は《精霊獣カンナホーク》の背中に乗る。

そして、飛翔した《精霊獣カンナホーク》は零児めがけて突撃する。

「く…!!」

だが、さすがに直接攻撃するのはためらわれるのか、当たるギリギリのところで再び高度を上げ、そのまま侑斗の元へ戻っていった。

 

零児

ライフ6000→2000

 

「よし…。これで先制した。そして、僕はフィールド上の《ウィンダ》と《アペライオ》を除外し、融合!」

「よーし、行こう!《アペライオ》!」

ウィンダの言葉に《精霊獣アペライオ》が起き上がり、ガオーッと元気に鳴く。

そして、1人と1匹は仲良く裂け目へ飛んで行った。

「愛しき人よ、炎の獅子よ、霊獣の契約の元、今こそ1つに!融合召喚!水の聖霊獣騎、《聖霊獣騎ペトルフィン》!!」

裂け目の中から額に青い宝石のついた額当てを身に着けたピンク色のイルカが飛び出し、そのうえに《霊獣使いウェン》が乗って現れる。

 

聖霊獣騎ペトルフィン レベル6 守備2800→3300

 

「僕はこれでターンエンド。それと同時に、《アペライオ》の効果は消える」

浮かんでいた火の玉が消え、侑斗のモンスターの能力値が元へ戻っていく。

 

侑斗

手札2→0

ライフ2600

場 聖霊獣騎カンナホーク レベル6 攻撃1900→1400

  聖霊獣騎ペトルフィン レベル6 守備3300→2800

  精霊獣ラムペンダ レベル4 攻撃2100→1600

 

零児

手札4(うち1枚《DD魔導賢者ニュートン》)

ライフ2000

場 なし

 

「私のターン…ドロー」

 

零児

手札4→5

 

ドローしたカードを見ずに、零児は橋の入口へ向かう。

そして、そこの道路に落ちているアクションカードを手に取る。

「私はアクション魔法《共振》を発動。私たちはお互いにデッキからスケールの異なるペンデュラムモンスターを3体手札に加える」

「《共振》だって!?それは…」

零児が発動したカードを見て、侑斗は驚きを隠せなかった。

《共振》はペンデュラム召喚に対応するために作られた新しいアクションカードだが、その効果が禁止カードに近いものであることから、不採用となったものだ。

それをこのフィールドにばらまくということは、是が非でもこのテストを成し遂げたいと思っているからであろう。

「私はデッキから《DD魔導賢者コペルニクス》と《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》、《DD魔導賢者ニコラ》を手札に加える」

「…。だったら、僕はデッキから《英霊獣使い―フィラムピリカ》と《影霊獣使い―セフィラウェンディ》、《霊獣の聖剣士―ユウ》を手札に加える」

「そして、お互いにペンデュラムゾーンにペンデュラムモンスターをセッティングし、ペンデュラム召喚を行う!」

侑斗と零児の両サイドに青い光の柱が生まれる。

「僕はスケール1の《英霊獣使い―セフィラムピリカ》とスケール7の《影霊獣使い―セフィラウェンディ》でペンデュラムスケールをセッティング!」

「私はスケール1の《DD魔導賢者コペルニクス》と、スケール10の《DD魔導賢者ニュートン》でペンデュラムスケールをセッティング!」

橙色の球体上の檻の中に小さな太陽ともいえるオレンジ色で燃える球体が収納された機械と赤茶色の上の丸みが大きいS字で、赤や黄色、オレンジといった色の異なる球を7つ、振り子のように装飾した機械が零児の両サイドで青い光の柱を生み出す。

「風の魂を受け継ぐ命よ、神星樹の力と共に邪悪なる力に立ち向かえ!」

「わが魂を揺らす大いなる力よ、この身に宿りて闇を引き裂く新たな光となれ!」

「「ペンデュラム召喚!!」」

同時に叫ぶと、光の柱の間に青い光の渦が生まれ、そこから互いのモンスターが飛び出してくる。

「来い、僕の分身!《霊獣の聖剣士-ユウ》!!」

 

霊獣の聖剣士-ユウ レベル7 攻撃2500

 

「出現せよ、私のモンスター達よ!!すべての王を統べるもの、《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》、電気を操りし賢者、《DD魔導賢者ニコラ》、神々の黄昏に審判を下す最高神!《DDD壊薙王アビス・ラグナロク》!!」

侑斗とは対照的に、零児のフィールドには一度に3体ものペンデュラムモンスターが現れる。

遊矢を追い詰めた《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》3体と《DDD剋竜王ベオウルフ》の融合素材となった《DDD壊薙王アビス・ラグナロク》、そしてもう1体は金色の輪で囲まれ、中にある赤い球体がむき出しとなった黒い胴体と茶色い台形の首だけでできた機械だ。

 

DDD死偉王ヘル・アーマゲドン×3 レベル8 攻撃3000

DDD壊薙王アビス・ラグナロク レベル8 攻撃2200

DD魔導賢者ニコラ レベル6 攻撃2000

 

共振(禁止カード・創作)

アクション魔法カード

お互いのPゾーンにカードがない場合にのみ発動できる。

(1):お互いにデッキからPスケールの異なるPモンスターを3体まで選択して手札に加える。その後、お互いにPゾーンにPモンスターを置き、ペンデュラム召喚を行う。

 

「さすが零児君…。一気に5体も」

《共振》の助けがあったとはいえ、5体ものペンデュラムモンスターを一気に呼び出した零児の実力に舌を巻く。

次元戦争からスタンダード次元を守る、という強い決心と長い間の訓練、そして彼自身の素質が最大限に絡み合っている。

これがスタンダード次元最強と言っても過言ではない、赤馬零児の実力だ。

「バトルだ。私は《ヘル・アーマゲドン》で《聖霊獣騎カンナホーク》を攻撃!地獄触手鞭(ヘル・テンタクルウィップ)!!」

1体目の《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》の水晶体から10条の青い光線が発射され、上空を舞う《聖霊獣騎カンナホーク》を貫こうとする。

しかし、受ける直前にそのモンスターは姿を消し、《精霊獣アペライオ》とウィンダが裂け目から飛び出してくる。

 

精霊獣使いウィンダ レベル4 守備1800

精霊獣アペライオ レベル4 守備200

 

「《カンナホーク》の効果。このカードをエクストラデッキの戻すことで、除外されている精霊獣と霊獣使いを1体ずつ守備表示で特殊召喚できる!」

「だが、もうこれで除外されている霊獣使いと精霊獣はいない。2体の《ヘル・アーマゲドン》で《ペトルフィン》、《ラムペンダ》を攻撃!」

攻撃を続ける1体目の《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》を援護するかのように、もう1体の王が光線を放つ。

1体目の王も体の方向をかえ、光線の軌道を変える。

2体の王の光線が絡み合いながら、侑斗のフィールドにいる《精霊獣ラムペンダ》と《聖霊獣騎ペトルフィン》を貫く。

攻撃を受けた2体のモンスターは目を回しながらその場に倒れ、消滅した。

 

侑斗

ライフ2600→1200

 

「そして、《ニコラ》で《アペライオ》を攻撃!」

《DD魔導賢者ニコラ》のむき出しになっている球体から赤い光線が発射され、光線を受けた《精霊獣アペライオ》が光りの中で消滅する。

「あうう、次は私に攻撃してくるのかなー…??」

そわそわしながら、ウィンダは攻撃を行っていない《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》と《DDD壊薙王アビス・ラグナロク》を見る。

(《アビス・ラグナロク》はDDモンスターをリリースすることで、僕のモンスター1体を除外できる効果がある。ウィンダの効果は除外だと発動できない。それに、今の僕のフィールドにはほかに霊獣使いはいないから、仮にウィンダがいなくなったら…)

《マクロコスモス》があれば、墓地へ行くカードは除外されるため、侑斗を有利にするだけでなく、墓地を利用することが多い零児を不利にすることができる。

しかし、仮に次のターンに手札に加わったとしてもタイムラグがあり、その間に破壊されてしまっては意味がない。

「さぁ…今こそ我々が作ったペンデュラムモンスターが成功か失敗かがわかる…」

零児はウィンダではなく、《霊獣の聖剣士-ユウ》を見ている。

《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》も《DDD壊薙王アビス・ラグナロク》もそのモンスターと同じ、ペンデュラムモンスター。

ペンデュラムモンスター同士の戦いを見てこそ、このデュエルの意味がある。

「私は《ヘル・アーマゲドン》で《ユウ》を攻撃する!」

零児の宣言と共に、《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》が光線を発射する。

だが、侑斗はアクションカードを取りにいかない。

この戦闘だけは、何かで水を差すわけにはいかないということがわかっているからだ。

「迎え撃つんだ、《ユウ》!!」

侑斗の言葉を聞き、わずかにうなずいた《霊獣の聖剣士-ユウ》が刀を抜き、光線を本来ではありえないことであるが、切り裂きながら《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》に向けて進んでいく。

「《ユウ》の効果は攻撃したときにしか発動できない。よって、この戦闘では破壊され、あなたはダメージを受ける!!」

「わかってる!それより…君のデュエルディスクは大丈夫なの!?」

腰につけている携帯型のエネルギー計測器を見ながら、侑斗は尋ねる。

戦闘の影響か、ペンデュラムモンスターのエネルギーは徐々に増えている。

しかし、現在は赤く塗られているライン、過去にデュエルディスクが異常が発生したときに生じたエネルギー量には到達していない。

「ああ…。こちらも異常はない。成功だ…」

《霊獣の聖剣士-ユウ》は幾度も光線を切り結んできたが、それを阻止するため、《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》は複数の光線を一点に収束して再び発射する。

一点集中で発射した、大出力の光線はさすがに切ることができず、そのまま焼き尽くされていく。

 

侑斗

ライフ1200→700

 

「よし。これで第3の関門はクリア…だね」

戦闘終了とともに、お互いに自分のデュエルディスクに異常がないかを確認する。

デッキと墓地にある自分たちのカードに影響が出ていないか、フィールドにも問題はないか。

お互いに調べた結果、異常がないことが確認された。

しかし、急にアクションフィールドが消え、フィールド上のモンスターも消えてしまう。

「あ、あれ…!?なんで??」

服が普段着に戻ったウィンダは首をかしげながら、侑斗を見る。

「ねえユウ、なんでデュエルが中断しちゃったの??」

「デッキまで調べたから、ルール違反ってことになったんだ」

「だから、お互いに失格となり、デュエルは中断となった」

零児が侑斗とウィンダのそばまで歩いて近づきながら、事情を説明する。

「…。あの後で、君は《アビス・ラグナロク》の効果で《ニコラ》をリリースして、ウィンダを除外する」

「そして、《ヘル・アーマゲドン》と《アビス・ラグナロク》をオーバーレイし、ランク8の《DDD双暁王カリ・ユガ》でエクシーズ召喚する」

《DDD双暁王カリ・ユガ》は攻撃力3500を誇るだけでなく、エクシーズ召喚されたターン、フィールド上のこのカード以外のモンスターの効果を発動できず、無効化することができる。

そして、オーバーレイユニットを1つ使うことで、墓地の契約書をセットするか、相手フィールド上の魔法・罠カードをすべて破壊できる。

その効果で侑斗のペンデュラムゾーンのカードを破壊し、侑斗がこれ以上ペンデュラム召喚するのを防ぐことができる。

「問題は剣崎、あなたが次のターンにドローするカード」

「これだったよ」

侑斗はすぐに次のターン、ドローするはずだったカードを見せる。

「《The blazing MARS》…。このカードは渡したデッキには入っていなかった…」

「うん。合うかなって思って、デッキに入れたんだ」

《The blazing MARS》は手札・墓地に存在するとき、自分の墓地のモンスターを3体除外することで特殊召喚できる、《マクロコスモス》の代わりがある程度務まるモンスターだ。

このカードとアクションカード、それによって勝敗が分かれることになる。

「まぁ、勝敗については気にすることはないだろう。問題はペンデュラムモンスターが使えるという事実だ」

「そうだね…。あとは、遊矢君と翔太君のオリジナルとだとどうなるか…。理論上では問題ないはずだよ」

「だが、直接確かめなければわかるまい。沢渡シンゴが榊遊矢と最初にデュエルをすることになっている。彼にカードを渡し、実戦で確かめてみよう」

「でもユウ。翔太君は今、舞網市には…」

こうして、侑斗と零児、ウィンダはペンデュラムカード完成のための今後のスケジュールを作っていった…。

 

「あの時…デュエルが続いてたらどうなってたかな…」

「…とさん」

「きっと、零児君のことだから手札に…」

「侑斗さん!!」

「あ…!!」

うっかりその時のデュエルのことを考えて、周囲が見えなくなっていた侑斗は我に返り、声のする方向に目を向ける。

そこには、少し不機嫌な日美香が立っていた。

「ああ、理事長。すみません…」

「まったく、しっかりしてください。剣崎さん」

「はい…。それで、何か御用ですか?」

「ええ。これから量産するペンデュラムモンスターについての資料を見せてほしいので…」

「わかりました。ええっと、確か…」

その資料作りについても、ガーターに頼んでいたため、侑斗は彼が運んできた資料の中からそれを探し始めた。

ランサーズとシェイドがいないスタンダード次元、果たして、どれだけ持ちこたえることができるのか…?




なんだか連続でデュエルが中断、という形になってしまってすみません…。
今回はただ単に《精霊獣使いウィンダ》が出た嬉しさに、勢いで書いてしまったので…。

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