「ぐあああ!!」
「なんだってんだ、こいつ…は…??」
里香と漁介の目の前でまた2人犠牲になる。
その2人を倒したのは11歳くらいの小さな体で赤い髪の子供型ロボット。
頭上には青い、《機皇帝ワイゼル》と同じくらいの大きさの鳥型ロボットで、胸部に同じエネルギー源が内蔵されている。
「あいつ…シンクロモンスターを吸収して強くなる!この次元のデュエリストにとってはぶち危ない!!」
「どないしたらええんや??」
「おーーい!!」
「伊織!?」
ハアハアと荒く息をしながら走ってきた伊織が里香と漁介を見る。
全力でここまで来たためか、服も体も汗でびっしょりだ。
「はあはあ…ロボットが2機来たんだけど…見てない?」
「それらしい奴が1機おるで…あと1体はそのまま行ってしもうた…」
「もう1体…」
もう1体は長いあごひげと禿げ頭が特徴的な老人型ロボットで、プラシドの倍近い大きさを持っている。
ここにいないということは、もしかしたら…。
「急いで、追いかけないと…あ…!!」
再び走ろうとした伊織がフラっと前のめりに倒れそうになり、里香が支える。
「あ、あれれ…普段はもっと走れるのに、なんでここで…?」
「しゃあない…伊織、そのもう1体のロボットはでかいじじいか?」
「う、うん…」
「なら、俺が追いかける!!シンクロキラーだってことだけでも伝えんと、とんでもないことになる!」
「しゃあないわ…漁介、頼むで!!」
何も言わずにうなずいた漁介が走って最終防衛ラインへ向かっていく。
「ターゲット…確認。デュエルロイドASNo.2ルチアーノ、排除開始」
ルチアーノと名乗ったロボットが手札・デッキ・フィールドをはじめの状態に戻していく。
警戒しているのか、それとも強化したあの機械でなくても勝てるという余裕か。
デュエルディスクを展開させた里香はじっとルチアーノを見る。
「さあ、始めるで、チビ!!いくら見た目がガキでも手加減せえへん!」
「はあ、はあ…」
気合を入れる里香のそばで、伊織もデュエルディスクを展開させていた。
「アホ!?伊織は休んどれ!!」
「ううん、たぶん…翔太君も漁介君も私以上に頑張ってる…!里香ちゃんだって。ここで1人だけ休んでたら女が廃る!」
「それ、男が言うセリフやで??」
プッと思わず苦笑しそうになった里香だが、展開すると同時に伊織が倒れそうになった。
そのため、自分の肩を貸して伊織を立たせる。
「なら…ウチらシェイドの美少女タッグでぶっ飛ばすでーー!」
「そーそー!女は男よりも強ーい…」
やっと立つことができた伊織はカードをドローする。
ほかのメンバーが加勢しようとするが、里香が右手で制止する。
「美少女2人がいいところ見せようってとこで…」
「水を差すなんて…野暮!!」
「「デュエル!!」」
もう邪魔が入らないようにするためか、強引に伊織たちはデュエルを開始する。
加勢しようとしたメンバーだが、その結果どうなったのかを先ほど倒された2人で見ていること、そしてその対策がないことから見守るしかなかった。
ルチアーノ
手札5
ライフ4000
里香&伊織
手札
里香5
伊織5
ライフ4000
そのころ、翔太がいる第一防衛ラインでは…。
「急げ急げ!!」
「早くボスを後ろへ下げて、手当てをしなければ!!」
翔太を乗せたタンカが2人のメンバーによって運ばれている。
自爆したにもかかわらず、プラシドの中に入っていたカード化された仲間たちは無事で、現在は2人のカードケースの中に入っている。
しかし、現実は非情だ。
キキィーーーー!!
「くっそう、なんだ!」
「セキュリティかよ!?」
デュエルドールとのデュエルに気を取られているうちに潜入していたセキュリティメンバーに包囲されていた。
「ざっと数えて14人…」
「くっそう、せめてボスだけでもなんとかしねえと…!」
2人はデュエルディスクを展開させつつ、どうすれば突破できるかの策を練り始めた。
「僕のターン、僕は手札から《スカイ・コア》を召喚」
スカイ・コア レベル1 攻撃0
「そして、カードを4枚伏せてターンエンド」
ルチアーノ
手札5→0
ライフ4000
場 スカイ・コア レベル1 攻撃0
伏せカード4
里香&伊織
手札
里香5
伊織5
ライフ4000
場 なし
「うげぇ…《スカイ・コア》やで…」
攻撃力0の《スカイ・コア》にげんなりとした表情を見せる。
直接戦ったわけではないものの、ほかのメンバーがルチアーノとデュエルをしているのを見て、このモンスターの恐ろしさを学んでいる。
「早うあの卵を壊さな…ウチのターン、ドロー!」
里香
手札5→6
「ウチは手札から魔法カード《氷結界の三方陣》を発動!このカードは手札に存在する氷結界3種類を見せることで発動できるカードや!相手フィールド上のカードを1枚破壊し、手札の氷結界1体を特殊召喚するで!ウチが破壊するカードは…左から2番目の伏せカードや!」
《氷結界の虎将ガンターラ》と《氷結界の密偵マーラ》、《氷結界の交霊師》が里香の前と後ろ斜め左、後ろ斜め右に立ち、正三角形の陣を組む。
そして、彼らの手から離される青い魔力が集結し、2メートル近い大きさの氷の槍となってルチアーノの伏せカードに向けて発射される。
だが、伏せカードの目の前に羽根付きの青い悪魔が現れ、持ち手部分に髑髏の飾りがある鏡を出して氷の槍を吸収する。
「なんやって!?」
「罠カード、《悪魔の手鏡》。このカードはフィールド上の魔法・罠カード1枚を対象に発動した相手の魔法を、
別の正しい対象に移し替える。よって、対象を《スカイ・コア》に変更する」
鏡が砕けると、そこから飛び出した氷の槍が《スカイ・コア》を貫く。
そして、その中に閉じ込められていた5つのパーツが飛び出す。
「《スカイ・コア》がカード効果で破壊されたとき、僕のフィールド上に存在するモンスターを全て破壊し、手札・デッキ・墓地から《機皇帝スキエル∞》、《スキエルT》、《スキエルA》、《スキエルG》、《スキエルC》を特殊召喚する」
機皇帝スキエル∞ レベル1 攻撃0
スキエルT レベル1 攻撃600
スキエルA レベル1 攻撃1000
スキエルG レベル1 守備300
スキエルC レベル1 攻撃400
「《スキエル∞》はほかのパーツと合体することで、攻撃力・守備力を各パーツの合計にすることができる」
《機皇帝スキエル∞》の胸部パーツの装甲が展開し、エネルギー源が映る透明な装甲があらわとなる。
そして、4つのパーツが胸部パーツから放たれる信号にしたがって合体する。
機皇帝スキエル∞ レベル1 攻撃0→2200
「ウチの魔法カードが利用されてまったーー!!」
《サイクロン》や《ナイト・ショット》などの魔法・罠カードに範囲が限定されたカードであればこのような事態にはならなかったかもしれない。
だが、ルチアーノの伏せカードは先ほど発動した《悪魔の手鏡》を除くと3枚。
ほかにも対処法があったのかもしれない。
「せやけど、まだ終わっとらんで!ウチは《氷結界の三方陣》の効果で《ガンターラ》を特殊召喚や!」
氷結界の虎将ガンターラ レベル7 攻撃2700
「更にこのカードは相手フィールド上に存在するカードの枚数がウチのフィールド上に存在するカードよりも4枚以上多い場合、手札から特殊召喚できるで!《氷結界の交霊師》を特殊召喚や!」
白と水色を基調とした、長いスカートと袖の巫女服に身を包んだ、水色の足まで届くほどの長い髪と瞳の女性が現れる。
氷結界の交霊師 レベル7 攻撃2200
「おおー、いきなり攻撃力2700と2200のモンスターが出たー!里香ちゃん、そのままやれやれー!」
「《スカイ・コア》の効果による大量展開と大量の伏せカードが仇んなったな。ってか伊織!!応援する暇あるんやったら、次のターンに何するか考えや!!ウチは《ガンターラ》でコアをぶっ飛ばすで!」
《氷結界の虎将ガンターラ》が右拳に術を唱える。
すると、右腕が巨大な腕を模した氷に包まれていく。
そして、その拳で《機皇帝スキエル》の胸部パーツを叩き潰そうとした。
「《スキエルG》の効果発動。1ターンに1度、自分フィールド上に存在するモンスターを対象とした攻撃を無効にする」
尾部パーツとなっている《スキエルG》が真下に焼夷弾を落とす。
地表の温度が焼夷弾によって2000℃にまで上昇し、それを利用した《機皇帝スキエル》が高度を急速に上げていく。
更に高温となったことで氷が解けたこともあり、《氷結界の虎将ガンターラ》は攻撃を断念する。
「なら、《交霊師》で《スキエル》を攻撃!ちなみに、《交霊師》の効果でアンタは1ターンに1度しか魔法・罠カードを発動できへんでー?」
《氷結界の交霊師》が手を合わせた後、両手をゆっくり離していく。
すると、その手には青い魔力の光が宿っており、そこから氷のつぶてが《機皇帝スキエル》に向けて放たれていく。
氷は装甲の隙間から内部に侵入していき、エネルギー源を氷漬けにしていく。
反撃のため、腹部パーツとなった《スキエルA》が鉄の弾丸を一発発射する。
銃弾を受けた《氷結界の交霊師》はその場にうずくまるも、エネルギー源が凍ってしまった《機皇帝スキエル》は地表に落下してしまった。
「やったで!これで機皇帝はおしまいや!!」
「すごーい。ここからは好きなだけシンクロモンスターが出せるー!」
「罠発動、《奇跡の残照》」
「な…!?」
ルチアーノが発動した罠カードに2人は驚く。
相打ちによって、フィールドから《氷結界の交霊師》が離れている。
そのことから彼は無制限に魔法・罠カードを使えるようになっているのだ。
「このターン、戦闘で破壊されたモンスター1体を特殊召喚する。《スキエル∞》を特殊召喚」
焼夷弾の熱が胸部パーツに伝わり、エネルギー源の氷が解けていく。
回復が不十分なためか、ほかの4つのパーツを強制排除した後で《機皇帝スキエル∞》が上空に浮遊する。
機皇帝スキエル∞ レベル1 攻撃0
「ウチはこれでターン終了や!さらに《ガンターラ》の効果発動!こいつはウチのターン終了ごとに1度、墓地から《ガンターラ》以外の氷結界を蘇生できるんや!」
うずくまる《氷結界の交霊師》に向かって《氷結界の虎将ガンターラ》が念仏を唱える。
すると、腹部に刺さっていた弾丸が消滅し、傷がふさがっていく。
先ほどまでうずくまっていたはずの彼女は嘘のようにすっと立ち上がり、再び戦線に立つ。
ルチアーノ
手札0
ライフ4000
場 機皇帝スキエル∞ レベル1 攻撃0
伏せカード2
里香&伊織
手札
里香6→3(うち1枚《氷結界の密偵マーラ》)
伊織5
ライフ4000
場 氷結界の虎将ガンターラ レベル7 攻撃2700
氷結界の交霊師 レベル7 攻撃2200
「あっちゃー、本体だけ残って待ったでー…」
少しだけ嫌な予感がする里香だが、伊織は楽観的だ。
「大丈夫、大丈夫ー。私たちのフィールドにはシンクロモンスターいないし、あのモンスターの攻撃力は0。次のターンには破壊できるよー」
疲れが取れたのか、ゆっくり立ち上がって里香に言葉をかける。
また、《氷結界の交霊師》が復活したことでルチアーノはまた1ターンに1度しか魔法・罠カードを発動できなくなった。
そこから逆転するのは難しい。
「僕のターン、ドロー」
ルチアーノ
手札0→1
「僕は手札から装備魔法《インフィニティ・ミスリーダー》を《スキエル∞》に装備」
《機皇帝スキエル∞》のエネルギー源の色が緑から赤へと変わっていく。
「《ミスリーダー》は1ターンに1度、相手フィールド上に攻撃表示で存在する特殊召喚されたモンスター1体をターン終了時までシンクロモンスターに変身させることができる。その効果で《ガンターラ》をシンクロモンスターにする」
「な…」
「嘘ーー!?」
「そして、《スキエル∞》の効果発動。1ターンに1度、相手フィールド上に存在するシンクロモンスター1体を捕獲する」
《スキエル∞》から離れた赤いエネルギー源が《氷結界の虎将ガンターラ》を包んでいく。
赤く発行しているせいか、先ほどの焼夷弾を超える2400℃もの熱を発生させており、わけもなく無力化と九州を完了させていく。
そして、エネルギー源が元の場所へ戻ると、《機皇帝スキエル∞》の装甲に色も赤くなった。
「《スキエル∞》はこの効果で捕獲したモンスター1体の攻撃力分、攻撃力がアップする」
機皇帝スキエル∞ レベル1 攻撃0→2700
「バトル。《スキエル∞》で《交霊師》を攻撃」
赤く染まった《機皇帝スキエル∞》が突撃する。
突撃と同時にさらに熱がたまったためか、発火しており、接触した《氷結界の交霊師》にも燃え移る。
交霊師は炎の中へ消えていき、里香たちの周りに火の粉が降る。
「熱ち、熱ちちちち!!」
「ひゃあ!!これ、本物の火の粉!?」
里香&伊織
ライフ4000→3500
「僕はこれで、ターンエンド」
ルチアーノ
手札1→0
ライフ4000
場 機皇帝スキエル∞(《インフィニティ・ミスリーダー》、《氷結界の虎将ガンターラ》装備) レベル1 攻撃2700
伏せカード2
里香&伊織
手札
里香3(うち1枚《氷結界の密偵マーラ》)
伊織5
ライフ3500
場 なし
「はあ、はあ…!!」
伊織に遅れて到着した柚子とほかのメンバーは第2防衛ラインにいるほかの仲間を探すためにビルの屋上に来ていた。
「おい、あれを見ろよ!!」
「ロボットのコアみたいなのが浮いてるぞ!!」
彼らは動揺しつつも、本来の仕事をするために双眼鏡を手に取り、捜索を始める。
そして、ルチアーノと伊織、里香の姿を確認した。
「伊織、里香さん!!」
「くっそー!何人やられたんだ!もう一機はどこだ!?」
「伊織さん、里香さん…」
「おーーい!近くでまだ動く車が見つかったぞーー!」
下にいる男が大声で呼びかける。
コモンズでは動く車があるのは工場や貨物輸送車以外ではかなり珍しい。
Dホイールが登場してからは移動手段ではそれにとってかわられてしまった。
従来のバイクを含む車両と違い、オートパイロットがあることとデュエルができるという点が大きい。
彼は放置されている車をあろうことかエンジンキーと切れたコードをつなげるという映画で見るような方法でエンジンをかけることに成功した。
中古であり、一万キロ程度走ったものではあるが、モーメントがついていることからエネルギーについては心配いらない。
「柚子の嬢ちゃん!車に乗れ!車はこのまま最終防衛ラインまで!!」
「みなさんはどうするんです?」
「第2防衛ラインの生き残りを連れていく!それに、あの車は2人乗りだ。頼むぞ!!」
「うわぁーーー!!インチキや!シンクロモンスターを使ったわけやないのにぃ!!」
地団太を踏み、《氷結界の虎将ガンターラ》を奪った《機皇帝スキエル》を見る。
唯一の救いはほかのパーツがないということ程度だ。
「だったら、私が《ガンターラ》を奪い返してあげる!乙女2人組の連携をとくと見よー!私のターン、ドロー!」
伊織
手札5→6
「私のフィールド上にモンスターが存在しないとき、このカードは手札から特殊召喚できる!《ジャンク・フォアード》を特殊召喚!」
ジャンク・フォアード レベル3 攻撃900
「さらに手札から《ジャンク・チェンジャー》を召喚!」
ジャンク・チェンジャー レベル3 攻撃1500
「レベル3の《ジャンク・フォワード》にレベル3の《ジャンク・チェンジャー》をチューニング!星の力を宿した2本槍で正面突破!シンクロ召喚!現れて、《スターダスト・アサルト・ウォリアー》!!」
スターダスト・アサルト・ウォリアー レベル6 攻撃2100
「このカードのシンクロ召喚に成功した時、私のフィールド上にほかのモンスターがいない場合、墓地のジャンクモンスター1体を特殊召喚できる!さあ、もう1度出番!《ジャンク・チェンジャー》!!」
《スターダスト・アサルト・ウォリアー》が上空に生み出した渦から《ジャンク・チェンジャー》が飛び出す。
ジャンク・チェンジャー レベル3 攻撃1500
「更に、このカードは私のフィールド上にジャンクモンスターが存在するとき、手札から特殊召喚できる!《ジャンク・サーバント》を特殊召喚!」
ジャンク・サーバント レベル4 攻撃1500
「レベル4の《ジャンク・サーバント》にレベル3の《ジャンク・チェンジャー》をチューニング!!私も器用になりたい!シンクロ召喚!現れて、《セブン・ソード・ウォリアー》!!」
セブン・ソード・ウォリアー レベル7 攻撃2300
伊織の前に2体のシンクロモンスターが並び立つ。
すでにシンクロモンスター扱いで捕獲している《機皇帝スキエル∞》にはこの2体を吸収するだけの余裕はない。
「よーし、じゃあおとなしく《ガンターラ》を返してもらおう!手札から装備魔法《錆びた剣―ラスト・エッジ》を《セブン・ソード・ウォリアー》に装備!」
《錆びた剣―ラスト・エッジ》を手にすると同時に、その刃に光が宿る。
「《セブン・ソード・ウォリアー》は1ターンに1度、このカードが装備カードを装備した時、相手に800ダメージを与える!イクイップ・ショット!」
光が剣先に集中し、まるで銃弾のようにルチアーノに向けて発射される。
弾丸を受けたものの、ルチアーノは自身がデュエルロイドであることを示すかのように、平然としている。
ルチアーノ
ライフ4000→3200
セブン・ソード・ウォリアー レベル7 攻撃2300→3100
「よーし、このままバト…」
「永続罠《リミット・リバース》を発動。墓地に存在する攻撃力1000以下のモンスター1体を特殊召喚する。《スカイ・コア》を特殊召喚」
スカイ・コア レベル1 攻撃0
「更に罠カード《激流葬》を発動。モンスターが召喚・特殊召喚されたとき、フィールド上に存在するモンスターを全て破壊する」
「えーーー!!?」
《激流葬》のソリッドビジョンから放出される大量の水が焼夷弾によって生まれた熱を冷ましつつ、フィールドを洗い流していく。
水が引いた後に残ったのは《機皇帝スキエル》だった。
「《スカイ・コア》の効果発動。カード効果で破壊されたことにより、《機皇帝スキエル》を特殊召喚する」
機皇帝スキエル∞ レベル1 攻撃0→2200
スキエルT レベル1 攻撃600
スキエルA レベル1 攻撃1000
スキエルG レベル1 守備300
スキエルC レベル1 攻撃400
「そんなーー!!」
再びフィールドに登場した《機皇帝スキエル》にがっかりする。
《リミット・リバース》と《激流葬》により、伊織は《機皇帝スキエル∞》を戦闘破壊するチャンスを失ってしまった。
そればかりか攻撃力が下がっているとはいえ、攻撃を無効化する《スキエルG》がいて、余計にたちが悪い。
幸いなのが、伊織たちのフィールドにはシンクロモンスターが存在しないこと程度だ。
「けど、《ラスト・エッジ》の効果発動!装備モンスターが破壊されたとき、相手に800ダメージを与える!」
しかし、ただでは起き上がらない。
《激流葬》の影響で砕けた《錆びた剣―ラスト・エッジ》の刀身が浮遊し、ルチアーノに向けて飛んで行った。
錆びているため、当たると同時に砕けてしまうものの、ダメージにはなる。
ルチアーノ
ライフ3200→2400
「そして、私はカードを2枚伏せてターンエンド!」
ルチアーノ
手札0
ライフ2400
場 機皇帝スキエル∞ レベル1 攻撃2200
スキエルT レベル1 攻撃600
スキエルA レベル1 攻撃1000
スキエルG レベル1 守備300
スキエルC レベル1 攻撃400
里香&伊織
手札
里香3(うち1枚《氷結界の密偵マーラ》)
伊織6→1
ライフ3500
場 伏せカード2
「僕のターン」
ルチアーノ
手札0→1
「僕は手札から魔法カード《一族の結束》を発動。自分の墓地の全てのモンスターの元々の種族が同じ場合、
自分フィールドのその種族のモンスターの攻撃力は800アップする。《スキエル》は5体のモンスターが合体したもの。よって、各パーツすべての攻撃力が800アップする」
《一族の結束》のソリッドビジョンが現れるのと同時に5つのパーツが緑色の薄い膜のような光に包まれていく。
そして、その光が銃器パーツの集中していく。
機皇帝スキエル∞ レベル1 攻撃2200→6200
スキエルT レベル1 攻撃600→1400
スキエルA レベル1 攻撃1000→1800
スキエルG レベル1 攻撃200→1000
スキエルC レベル1 攻撃400→1200
「こ…攻撃力6200!?」
「こんなん、どうやって倒せばええんや!?」
(クリクリー!)
「え…??」
《機皇帝スキエル》の驚異的な力が2人を戦慄させる中、伊織の脳裏に不思議な声が聞こえた。
声が聞こえる方向に目を向けると、そこには自分の手札がある。
手札にあるカードはたった1枚。
「君なの…!?君を使えばいいの??」
(クリー!)
「伊織ーーー!!まさか、こんなんなったから気が狂ったんか!?」
声が聞こえない里香は半泣き状態で伊織の体を揺らす。
「バトル、《スキエル》でダイレクトアタック」
《機皇帝スキエル》から放たれる緑色の発光した弾丸。
地表から数メートル上を飛んでいるにもかかわらず、膨大な力のせいで道路や壊れたデュエルロイドのパーツを砕きながら進んでいる。
「伊織ーーーー!!」
「私は手札の《クリボーマン》の効果を発動!!このカードは私のフィールド上にモンスターが存在しないとき、ライフを半分支払うことで手札から特殊召喚できる!」
(クリーーー!!)
伊織と里香の目の前に《クリボー》が現れる。
少し違う点としたら、背中に黄色いKが大きく描かれた赤色のマントで伊織と同じ目の色をしていることくらいだ。
そのモンスターが弾丸を受け止めた。
クリボーマン レベル1 攻撃300
里香&伊織
ライフ3500→1750
「アカン!それでも、攻撃力はたったの300!《スキエル》にはかなわん!!」
「心配ご無用!《クリボーマン》はこの効果で特殊召喚されたとき、戦闘ダメージを0にするよ。さらにおまけとして、攻撃モンスターの攻撃力と《クリボーマン》の攻撃力を入れ替える!」
(クリクリクリーーー!!)
弾丸の力を両手に吸収した《クリボーマン》が弾丸を《機皇帝スキエル》に向けて投げ返す。
それは胸部パーツに見事に直撃し、破壊できなかったものの、大きくへこませた。
クリボーマン レベル1 攻撃300→6200
機皇帝スキエル∞ レベル1 攻撃6200→300
クリボーマン
レベル1 攻撃300 守備200 効果 光属性 戦士族
(1):相手の直接攻撃宣言時、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、LPを半分払って発動できる。手札に存在するこのカードを自分フィールド上に特殊召喚し、その先頭で発生する自分への戦闘ダメージを0にする。
(2):この効果で特殊召喚に成功したときに発動する。相手の攻撃モンスター1体の攻撃力とこのカードの攻撃力を入れ替える。
「おっしゃーーー!!これで逆転や!!すごいなぁ、《クリボーマン》!!」
まるで勝ったかのように喜ぶ里香を見た《クリボーマン》は嬉しそうに笑みを浮かべる。
(あ…もしかして、この子って…)
「僕は墓地の《インフィニティ・ミスリーダー》の効果発動。このカードを墓地から除外することで、相手の墓地に存在するシンクロモンスター1体を相手フィールド上に特殊召喚する。《セブン・ソード・ウォリアー》を特殊召喚」
ルチアーノのフィールドに現れた紫色の穴から出てきた《インフィニティ・ミスリーダー》の姿が《セブン・ソード・ウォリアー》に変わっていき、伊織たちのフィールドへ向かう。
セブン・ソード・ウォリアー レベル7 攻撃2300
「更に、《スキエル》の効果発動。《セブン・ソード・ウォリアー》を捕獲する」
へこんで開閉できなくなった胸部の装甲を強制排除し、むき出しとなったエネルギー源が《セブン・ソード・ウォリアー》を取り込んでいく。
しかし、《氷結界の虎将ガンターラ》の時と比べると取り込むスピードが2倍近く遅い。
これは前とは違い、自分が動くためのエネルギーを確保する目的だけの捕獲のためだと思われる。
機皇帝スキエル∞ レベル1 攻撃300→2600
「うーん、攻撃力はまだまだ《クリボーマン》には届いていないけど…自分のモンスターを捕獲されるのってすっごく腹立つ!!」
「僕はこれでターンエンド」
ルチアーノ
手札1→0
ライフ2400
場 機皇帝スキエル∞(《セブン・ソード・ウォリアー》装備) レベル1 攻撃2600
スキエルT レベル1 攻撃1400
スキエルA レベル1 攻撃1800
スキエルG レベル1 守備300
スキエルC レベル1 攻撃1200
里香&伊織
手札
里香3(うち1枚《氷結界の密偵マーラ》)
伊織1→0
ライフ1750
場 クリボーマン レベル1 攻撃6200
伏せカード2
インフィニティ・ミスリーダー
装備魔法カード
「∞」モンスターに飲み装備可能。
「インフィニティ・ミスリーダー」の(2)の効果はこのカードが墓地へ送られたターン、発動できない。
(1):1ターンに1度、相手フィールド上に表側攻撃表示で存在する特殊召喚されたモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターはターン終了時までSモンスターとして扱う。
(2):自分の墓地に存在するこのカードを除外し、相手の墓地に存在するSモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを相手フィールド上に特殊召喚する。
「さあ、里香ちゃん!思いっきりやっちゃって!」
(クリクリー!)
伊織が右拳を里香に向けると、《クリボーマン》も彼女の動きをまねする。
「なんやなんや、あのソリッドビジョン。伊織の真似しとるで。面白いなぁ。ウチのターン、ドロー!」
里香
手札3→4
「ウチは手札から魔法カード《強欲なウツボ》を発動!手札の水属性モンスター2体をデッキに戻し、デッキからカードを3枚ドローするで!」
手札からデッキに送られたカード
・ジゴバイト
・氷結界の密偵マーラ
「そして、手札から魔法カード《おろかな埋葬》を発動!デッキから《氷結界の破術師》を墓地へ送るで。そして、手札から《デブリ・ドラゴン》を召喚!」
デブリ・ドラゴン レベル4 攻撃1000(チューナー)
「このカードの召喚に成功したとき、墓地から攻撃力500以下のモンスター1体を攻撃表示で特殊召喚できる!《氷結界の破術師》を特殊召喚や!」
氷結界の破術師 レベル3 攻撃400
「いくでー…レベル3の《破術師》にレベル4の《デブリ・ドラゴン》をチューニング!槍の名前を担う第2の竜、復活の喜びを氷の息吹に託しなはれ!シンクロ召喚!レベル7!《氷結界の龍グングニール》!!」
登場すると同時に《氷結界の龍グングニール》が咆哮する。
周囲の気温が低下をはじめ、むき出しとなっているエネルギー源の周りを霜ができる。
「うーー、ソリッドビジョンだってことはわかってるけど、寒くなるー…」
(クリー…)
《クリボーマン》も寒いと思っているのか、体を震わせている。
氷結界の龍グングニール レベル7 攻撃2500
「シンクロキラーをシンクロモンスターで叩き潰すっちゅーのはスカっとするで!《グングニール》の効果発動!1ターンに1度、手札を2枚まで墓地に捨てることで、相手フィールド上に存在するカードを捨てた枚数分破壊できる!さあ、消し飛んでまえ!!」
《氷結界の龍グングニール》の口から放たれる水色の冷凍光線でエネルギー源が冷却されていく。
そして、追い打ちをかけるように機体全体を冷却させていき、氷のオブジェへと変えていく。
「トドメの宣言は頼むで、伊織!」
「うん。《クリボーマン》でダイレクトアタック!!」
(クリクリクリーーー!!)
《クリボーマン》が上空でくるくる回転した後、氷漬けの機械にむけてラ○ダーキックを放つ。
それにより、《機皇帝スキエル∞》に大きな穴が開き、大爆発を起こす。
ルチアーノはその爆発の中に消えていった。
ルチアーノ
ライフ2400→0
「はふぅーー…勝ったぁ…」
一安心し、気が抜けたのか、伊織はゆっくりとその場で倒れてしまう。
「伊織!?大丈夫なんかーー!?」
(クリクリー!)
ソリッドビジョンではなく、精霊となったクリボーマンが里香と共に伊織に駆け寄る。
「…ムニャムニャ」
「…寝とんのかい」
ハリセンでたたこうかと思ったが、疲れたのなら仕方がない。
敵影が確認されていない以上、眠っていても大丈夫だろう。
里香は伊織を寝袋に入れ、建物の中に置くと、ほかのメンバーと共にカード化された仲間の回収を行うことになった。
(それにしても、最終防衛ラインの方は大丈夫なんか…?漁介、急ぐんやで)