遊戯王ARC-V 戦士の鼓動   作:ナタタク

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第40話 翔太VSユーゴ 闇夜を走る白き龍

「いけ、《ペイルライダー》。クアトロ・デスブレイク」

《魔装騎士ペイルライダー》のマシンガンから放たれる青い実体のある銃弾が数十発《ゴブリン突撃部隊》を貫いていく。

「うわあああ!!」

 

典亮

ライフ100→0

 

「ふう…これで4回目だな」

「くっそー、これだけ改造しても勝てないのかよー」

施設の遊戯室で翔太とのデュエルに負けた典亮が悔しげに《魔装騎士ペイルライダー》を見る。

「当たり前だろう?ゴブリンシリーズにはデメリット効果を持つモンスターが多いからな」

デッキをケースにしまいながら、翔太は言う。

彼の言うとおり、ゴブリンシリーズのモンスターは攻撃後や効果発動後に疲れでサボタージュを起こして守備表示になるモンスターがいる。

いい例が《ゴブリン突撃部隊》で、攻撃力が2300もあるレベル4モンスターであるものの、攻撃後の守備表示となってしまう。

その隙をついて、《魔装槍士ロンギヌス》の効果で貫通能力を得た《魔装騎士ペイルライダー》に攻撃されて大ダメージを与えるということが何度もあった。

(それにしても、ペンデュラムモンスターでメインデッキに入るからか、《ペイルライダー》を召喚することが多いな)

「くっそーー!もう1回頼むぜ、翔太兄ちゃん!」

「ああ、何度でも返り討ちにしてやる」

再びデュエルを開始しようとする2人。

そんな彼らを遮るように、太一が大きな音を立てながら扉を開けて入ってくる。

「お、おいおいどうしたんだよー太一ー」

「翔太兄ちゃんに代わってって、おじいちゃんが!」

「じいさんが?ったく、デュエルディスクに電話機能があるだろうが…」

なぜ自分のデュエルディスクにかけてこないのかと不満をぶつぶつ言いながら、施設長室へ向かう。

栄次郎は今日、同じ養護施設の施設長たちの会合のためにここを離れている。

その間に世話をする人の手筈は既に整っていて、その人は今は2階の掃除をしている。

部屋に着いた翔太は今の時代では珍しくなったFAX付きの古い小さな液晶がある白い固定電話の受話器を取る。

「もしもし」

(おお、翔太君。やっと出てくれたか)

受話器から栄次郎の声と共に箸がぶつかり合う音やいらっしゃいませ、かしこまりましたという声が聞こえてくる。

今の時計の時刻は午後5時半。

どういう状況か理解した翔太はため息をつく。

「ああ…で、要件は何だ?」

(買い物をお願いしたいんだ。今日特売日になっているコーヒー豆!!帰ったらすぐに買いに行こうと思ったけど、忙しくなってねー)

「そいつを俺に買いにいけっていうのか?」

(頼むよー、お小遣いをあげるから。それじゃあ、頼んだよ)

ツーツー…。

ほぼ一方的な電話が終わり、翔太はため息をつきながら受話器を降ろす。

 

「こういうことは伊織に頼めよ、まったく…」

電話を受けてから1時間後。

夕暮れの舞網市を翔太を乗せたバイクが走っている。

背中にはエコバック替わりのリュックサックがあり、中には頼まれたコーヒー豆の入った袋がある。

ちなみに伊織はなぜか女子ソフトボール部の助っ人をすることになったためにまだ帰ってきていない。

(にしても…人通りが少ないな)

周囲を見渡すが、もう社会人や学生が帰路につく時間帯であるにもかかわらず、その姿は少なく、車の量も少なく一部の店のシャッターが閉まっている。

レオコーポレーションが公表した融合次元による侵略行為の実態を見たことによる影響は大きいということだろうか。

翔太のバイクは海岸沿いの道につく。

「ん…?」

ふと、左掌から感じる妙な感覚がする。

何かに触られているような感覚だ。

バイクを停め、左手の手袋を外す。

(ちっ…今度は何に反応しているんだ?)

案の定、左手の痣が光っていた。

翔太は周囲を見渡し、痣を光らせる存在を探し始める。

海岸に目を向けると、砂浜から2メートル上の高さに青い光の線のようなものが見えた。

(こいつか…?こいつが俺の痣を光らせてるのか?)

今まで痣が反応したのは次元と次元をつなぐ青い渦とカード化された人々だ。

このような線を見たことは初めてだ。

翔太はバイクから降り、その線の前まで歩いていく。

(おおっと、こいつは珍しいなぁ)

脳裏に聞こえるゲスな声に翔太は舌打ちする。

「黙ってろ」

(おいおいさびしいこというなよー?俺様、寂しくなっちゃうー!だって、俺の声を聞いてくれるのはお前だけなんだぜー?)

「ふん…そんなことなんて知らねえよ。あれについて、知っているんだろ?」

嘘泣きをするその声にイライラする翔太。

遊矢の時ほどではないが、殺意がわくぐらいだ。

そのことを察したのか、声はまじめに答える。

(ああ、こいつは不完全な次元の渦だな。誰かが次元を飛び越えようとしたが、エネルギー不足か手順を間違えたせいで出られなくなっちまったって形だな)

「で、その飛び越えられなかった馬鹿はどうなるんだ?」

(しばらくは次元のはざまに閉じ込められたままだが、なんかの拍子で開いたら…ドカーーン!!だろうな。次元のはざまにはすべてに次元から放出されるエネルギーがたまりにたまってるからな。こいつの場合は…この町がきれいさっぱりになるくらいの威力だろうな)

声の言うことに翔太が一瞬ぞっとする。

彼の言うことが正しければ、いつでも爆発しても不思議ではないということになる。

そんな彼の心中を悟ったかのように、声が解決法を言う。

(けどな、俺がくれてやった痣の力を使うことで、爆発させることなく開放することができるぜ。その後でもう1度痣の力を使って塞げばいい。さあ、やってみな?)

翔太は青い線をじっと見る。

声の言うことが正しければ、すぐにでも痣の力で解放する必要がある。

とはいうものの、爆発するだの解放するだのという言葉は声が言っているだけで、証拠がない。

力を与えたやつを信じないのかと感情論で訴えられればそれまでだが。

「…ちっ、なんでだ?なんでこいつの言葉が真実だと思ってしまう」

あまりにもゲスな声であるものの、それを聞く翔太にはどうしてもその言葉に嘘がないと思えてしまう。

というのも、その声が今まで翔太に対して嘘を言っていないこともあるのだろう。

翔太は痣を青い線にかざすと、痣から放たれる緑色の光が光線となって青い線にぶつけられる。

青い線の色が次第に痣と同じ緑色の変化し、数秒ののちに青い渦へと変化する。

そして、その渦から飛び出してきたのは…。

「うわああああ!!なんだってんだよ??出られなくなったと思ったら、いきなり追い出されるって…!?」

幻覚の中で見た、ホワイトタイガーを模したようなDホイール。

そして、バナナの形状の前髪が特徴的な遊矢そっくりな顔立ちの少年だった。

Dホイールは壁に激突するギリギリのところでとまる。

そして、ヘルメットを外して翔太に目を向ける。

「な、なあ…お前か!?お前が俺を助けてくれたのか!?」

(遊矢そっくりだが…やっぱり違うな)

似ているのは顔立ちだけで、髪型や目の色が違う。

それらはカラコンや髪を染め直して整えればどうにでもなるのだが、声色の違いをごまかすことはできない。

遊矢の少し高めの声ではないものの、ユートの低い理知的な声に似ている感じがした。

もっとも、その容姿から見ると理知的には見えず、感情のこもった抑揚のある声で、良く言えば正直、悪く言えば暴走族の類の荒々しい声に思えてくるが。

「いやぁーーー助かったぜ。次元を飛び越えていたら、急にそのはざまから出られなくなって、途方に暮れていたところなんだ!俺はユーゴ!あんたは??」

「勝手にギャーギャー言うな。ユーゴ?融合と韻が似ているな…」

融合という言葉に反応したのか、ユーゴの表情が笑顔から怒りに変化する。

「融合じゃねえ、ユーゴだ!!」

「韻が似ていると言っただけだろう?(ああ、なるほどな…こいつは遊矢以上の馬鹿だな)そんなに間違われたくないなら、バナナに改名しろ」

「バナナって…俺の髪型のこと言ってるのか!!?」

髪型をいじられたこともあり、更にユーゴの怒りが爆発する。

あまりにも正直なリアクションを見て、新しいおもちゃを見つけ、親に買ってもらって喜ぶ子供のような感情が心の中で芽生えた翔太はニヤリとしながら発言する。

「にしても、融合に間違われやすい韻にバナナと弄られそうな髪型…生きていくにはしんどい部分がたくさんあるな」

「だから融合もバナナも言うな!!もう我慢できねえ、デュエルで片づけてやるぜ!!」

Dホイールのデュエルディスク部分を展開させると、ユーゴは《スピード・ワールド3》を発動させようとする。

「待てってバナナ。こいつをふさいだら、ライディングデュエルに応じてやる」

「だーかーらー、バナナじゃねえって言ってんだろ!!」

激昂するユーゴを無視して、翔太は左手の痣の力で渦をふさぐ。

ユーゴは怒って視野が狭くなったためか、それを見ても何も反応がない。

そして、翔太は止めているバイクに乗る。

先日に翔太のバイクはレオコーポレーションの手でDホイールに改造された。

それと同時に、零児からランサーズ加入の記念としてマシンキャバルリーがそれの名前に付けられた。

キャバルリーには騎兵団という意味があるらしい。

遊矢と黒咲が持っているDホイールのようにカードに変形することはできず、追加機能もないものの、ライディングデュエルをするだけならば問題はない。

《スピード・ワールド3》を起動すると同時に、ユーゴが砂浜から路上まで移動してくる。

ヘルメット越しで顔は良く見えないが、少しは冷静さを取り戻しているようだ。

「へえー、こいつがあんたのDホイールか。サイドカーがついてんのに、車体は華奢でオフロード向きなんだな。ってことは、かなりの馬力が…」

「うるさいな、バナナ。こいつはもらい物だからな。俺でも詳しいことは分からない」

「だからバナナって言うな!!こうなったら、俺が勝ったらバナナって2度と呼ぶなよ!?」

(こいつ…本当に馬鹿だな)

Dホイールを見ると、おそらくシンクロ次元のデュエリストだと思われる。

そしてヴァプラ隊と零児から話を聞いたあたりでは、ライディングデュエルはシンクロ次元にしかない。

ということは、Dホイールはシンクロ次元にしかないということになる。

しかし、ユーゴは怒りでそのことすら見えなくなっているようだ。

翔太はため息をつきつつ、左腕にホルダーを装着し、ライディングデュエル用のデッキを装着する。

(ま、こいつならライディングデュエルの練習になるな)

「いくぜ、ライディングデュエルアクセラレーション!!!」

ユーゴのデュエル開始宣言と同時に、2台のDホイールが発進する。

「先攻は譲ってやる。少し、手札を確認したいからな」

「後悔するなよ、この暴言野郎!!」

 

ユーゴ

手札5

ライフ4000

 

翔太

手札5

ライフ4000

 

「俺のターン!俺のフィールドにモンスターに存在しないとき、手札から特殊召喚できる!《SRベイゴマックス》を特殊召喚!」

赤い装甲で金色の芯のある3つの独楽がユーゴの周りで回転しながら移動する。

3回点ほどした後、装甲の横側が展開して2本の鎌のような刃が飛び出す。

 

SR(スピードロイド)ベイゴマックス レベル3 攻撃1200

 

「《ベイゴマックス》の効果発動!このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから《ベイゴマックス》以外のSRを手札に加えることができる!俺はデッキから《SR赤目のダイス》を手札に加える!そして、そのまま召喚だ!」

赤い瞳孔と青い強膜でできた瞳がすべての面に描かれた金色の六面サイコロが現れる。

それと同時に6つの目から1つずつ赤い球体が射出されて、そのモンスターの周囲を旋回する。

 

SR赤目のダイス レベル1 攻撃100(チューナー)

 

「やはりチューナーモンスターか…」

実質手札消費1枚で素材となりうるモンスター2体を呼び出したものの、今の状況ではレベル4のシンクロモンスターしかシンクロ召喚できない。

出すと思われるシンクロモンスターは《魔界闘士バルムンク》か《アームズ・エイド》。

(問題は《赤目のダイス》か…)

翔太の目が《SR赤目のダイス》に向けられる。

そして、すぐにその予測が正しかったことが判明する。

「《赤目のダイス》の効果発動!こいつは召喚・特殊召喚に成功した時、《赤目のダイス》以外の俺のスピードロイドのレベルをターン終了時まで1から6のいずれかに変更できる!俺は《ベイゴマックス》のレベルを5に上げる!」

《SR赤目のダイス》が角を利用してその場で回転を始め、5つの赤い球体を《SRベイゴマックス》に向けて発射する。

球体をすべて受け止めた《SRベイゴマックス》がさらにスピードを上げ、金属剥離効果を引き起こして2つの質量を持った残像を生み出す。

 

SRベイゴマックス レベル3→5 攻撃1200

 

「これでレベル6のシンクロモンスターをシンクロ召喚できるか…ふん、バナナのくせにやるな」

「バナナじゃねえ、ユーゴだ!!くっそーどうせ間違われるなら、融合の方がましだ!!俺はレベル5の《ベイゴマックス》にレベル1の《赤目のダイス》をチューニング!十文字の姿もつ魔剣よ、その力ですべての敵を切り裂け!シンクロ召喚!現れろ、レベル6!《HSR魔剣ダーマ》!」

黒い球体を持つ青い大きなけん玉が球体を後ろにした状態で横向きに浮遊すると、球体の方が縦半分にゆっくりと開き、その中から青いフラットな頭部を持つ足の無いロボットが出現する。

おそらく、左腕部分になっている半分この球体が盾で、右腕部分になっている残りのけん玉のパーツが剣という意味なのだろう。

 

HSR(ハイスピードロイド)魔剣ダーマ レベル6 攻撃2200

 

「今度はけん玉だよ…」

そのあまりにもアンバランスな構造のシンクロモンスターを見た翔太は彼が本当にシンクロ次元のデュエリストであることを実感する。

「更に俺は《魔剣ダーマ》の効果発動!1ターンに1度、墓地の機械族モンスター1体を除外し、相手に500ダメージを与える!」

墓地から現れた青い霊体となっている《Sベイゴマックス》が《HSR魔剣ダーマ》の盾に吸収される。

そして、盾が青い光をおびながら回転し、翔太に向けて発射される。

「ぐうう…!!」

回転する盾がマシンキャバルリーに激突した後、左腕とつながっているワイヤーを利用して元の場所へ戻っていく。

ドッキングがすむと、回転が停止し、青い光も消えた。

 

翔太

ライフ4000→3500

 

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 

ユーゴ

手札5→3

ライフ4000

SPC0

場 HSR魔剣ダーマ レベル6 攻撃2200

  伏せカード1

 

翔太

手札5

ライフ3500

SPC0

場 なし

 

(ちっ…俺のターンが来る前にダメージか。まあ、問題はその除外効果だな…)

自分にダメージを与えた青いけん玉に悪態をつきつつ、除外された《SR赤目のダイス》を警戒する。

「(除外されたサイコロ…何か嫌な予感を感じさせる)俺のターン!」

 

翔太

手札5→6

SPC0→1

 

ユーゴ

SPC0→1

 

「俺は手札から《魔装陰陽師セイメイ》を召喚」

 

魔装陰陽師セイメイ レベル3 攻撃1000(チューナー)

 

「チューナーモンスター!?お前もシンクロ召喚狙いか!?」

「こいつの召喚に成功した時、手札からレベル4以下の魔装モンスター1体を特殊召喚できる。俺は手札から《魔装郷士リョウマ》を特殊召喚」

 

魔装郷士リョウマ レベル4 攻撃1900

 

手札消費に関してはユーゴに軍配が上がるものの、翔太のフィールドにシンクロ素材となるモンスター2体が現れる。

これでレベル7のシンクロモンスターを召喚できる状況になった。

「俺はレベル4の《リョウマ》にレベル3の《セイメイ》をチューニング。黄金の剛腕を持つ漆黒の戦士、その気高き力で道を拓け。シンクロ召喚!現れろ、《魔装剛毅クレイトス》!」

 

魔装剛毅クレイトス レベル7 攻撃2600

 

「くっそーー!攻撃力2600かよ!?けどよ…」

マシンキャバルリーに並行するように《魔装剛毅クレイトス》が黙々とそれと同じ速さでマラソンのランナーのように走る。

一時はそのレベル7のシンクロモンスターとは思えない攻撃力の高さに驚いたものの、段々その姿がシュールに思えてくる。

「バトルだ!俺は《クレイトス》で《魔剣ダーマ》を攻撃!ゴールデン・アッパー!!」

《魔装剛毅クレイトス》は雄たけびを上げると、手甲の五芒星を輝かせながら《HSR魔剣ダーマ》に向けて突撃する。

 

魔装剛毅クレイトス レベル7 攻撃2600→3600(ダメージステップ終了時まで)

 

「何!?《クレイトス》の攻撃力が一気に3600に??」

「このカードはエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターを攻撃するとき、ダメージステップ終了時まで攻撃力を1000アップする」

盾で《魔装剛毅クレイトス》の攻撃を防ごうと、それを向ける《HSR魔剣ダーマ》だが、その禿げ頭の男は左手でロボットの首部分を閉めながら、右手であろうことか盾をそのモンスターの左腕ごと引きちぎった。

電気信号がそのモンスターの危険性を伝え、逃走を図ろうとするも首を掴まれた状態では逃げることができず、今度は剣の部分を引きちぎられ、それで胸部にあるコアユニットを切り裂かれた。

「うわあああ!!なんてむちゃくちゃな攻撃なんだよ!?」

 

ユーゴ

ライフ4000→2600

SPC1→0

 

攻撃を終え、相手モンスターの消滅を見届けた大男が剣を投げ捨てて翔太の隣まで戻っていく。

「よくも俺のフェイバリットカードにあんな攻撃を…許せねえ!!」

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

ユーゴ

手札3

ライフ2600

SPC0

場 伏せカード1

 

翔太

手札6→3

ライフ3500

SPC1

場 魔装剛毅クレイトス レベル7 攻撃2600

  伏せカード1

 

「俺のターン、ドロー!!」

 

ユーゴ

手札3→4

SPC0→1

 

翔太

SPC1→2

 

2台のDホイールが左前に茶色い6階建てマンションがある丁字路を左折し、中心街への道を走行し始める。

「来たぜ、こいつならあのくそ野郎を倒せる!俺は《SRダブルヨーヨー》を召喚!」

緑色で黒い渦巻模様が描かれている2つのヨーヨーが縦回転しながら現れる。

数秒装甲した後は空に浮遊し、回転カッターを展開する。

 

SRダブルヨーヨー レベル4 攻撃1400

 

「こいつの召喚に成功した時、墓地からレベル3以下のSR1体を特殊召喚できる。蘇れ、《赤目のダイス》!!」

2つのヨーヨーが向き合いながらその場で旋回を始め、刃によって路上に半径2メートルの円を描く。

すると、その円が紫色の魔法陣に変化し、そこから《SR赤目のダイス》が飛び出す。

 

SR赤目のダイス レベル1 攻撃100(チューナー)

 

「またサイコロか…!!」

レベルを操作できる《SR赤目のダイス》の再来に警戒する。

《魔装剛毅クレイトス》はエクストラデッキから現れたモンスターに圧倒的破壊力を見せつけるが、カード効果に対する耐性が無に等しい。

《スクラップ・ドラゴン》や《カラクリ将軍無零》のような破壊効果や表示形式変更を行うシンクロモンスターの召喚を警戒しなければならなくなる。

「《赤目のダイス》の効果発動!《ダブルヨーヨー》のレベルを6に変化させる!」

《SR赤目のダイス》の6つの赤い球体を受けた《SRダブルヨーヨー》が4つの質量を持った残像を作り出す。

 

SRダブルヨーヨー レベル4→6 攻撃1400

 

「レベル6の《ダブルヨーヨー》にレベル1の《赤目のダイス》をチューニング!その美しくも雄々しき翼翻し、光の速さで敵を討て!シンクロ召喚!現れろ、レベル7!《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》!」

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

「《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》…なるほどな、それがお前の竜の名前」

幻覚の中で見たユーゴの竜を目にした翔太。

緑色のプリズムでできた美しい翼は仲間の仇である《魔装剛毅クレイトス》の姿を映し出している。

「バトルだ!俺は《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》で《魔装剛毅クレイトス》を攻撃!」

「攻撃力が劣っているのに攻撃だと!?」

頭部を軸に回転しながら突撃する《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》を迎撃するため、《魔装剛毅クレイトス》が五芒星を輝かせながら拳に力を入れる。

「そうだ!!そうやって効果を発動させろ!これでお前は自滅させてやるぜ!!」

「はぁ?」

「《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の効果発動!1ターンに1度、このカード以外のレベル5以上のモンスターが効果を発動した時、その発動を無効にし、破壊することができる!ダイクロイック・ミラー!!」

回転する《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の緑色の翼に電子基板のようなものが浮かび上がり、十数の緑色の光線が照射される。

その光線は停車している車両やビルの窓を反射して、すべて《魔装剛毅クレイトス》を貫いた。

全身を光線で貫かれた大男は何が起こったのかわからないまま緑色の粒子となり、その美しくも雄々しき翼に吸収されていく。

「《クレイトス》を吸収しただと!?」

「《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》は自分の効果によってモンスターを破壊した場合、ターン終了時までそのモンスターの元々の攻撃力を吸収する!」

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7 攻撃2500→5100

 

《魔装剛毅クレイトス》が破壊されたことで、翔太のフィールドから壁となるモンスターがいなくなる。

このまま攻撃対象を翔太に向けたならば、王手に賭けることができる。

「こ何時で終わりだぜ!《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》!!旋風のヘルダイブスラッシャー!!!」

回転速度をさらに増し、貫通力が増した《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》が翔太もろともマシンキャバルリーをスクラップに変えようとする。

「ちっ…罠発動!《ショック・リボーン》!!俺が受ける戦闘ダメージを半分にする!」

透明な薄いバリアに包まれた翔太に《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》が激突する。

「ぐおお、おお…!!」

衝撃によって翔太の体に痛みが発生し、小規模なソニックブームの発生によって翔太の頬や左腕に薄い切り傷ができる。

 

翔太

ライフ3500→950

SPC2→0

 

「(せっかくのスピードカウンターを…)そして、俺が受けた戦闘ダメージ以下の攻撃力を持つモンスター1体を墓地から特殊召喚する!復活しろ、《魔装陰陽師セイメイ》!」

 

魔装陰陽師セイメイ レベル3 守備1000(チューナー)

 

「よっしゃー!これで《魔剣ダーマ》の仇の筋肉爺をぶった倒せたぜ!」

ユーゴの喜びと連動するかのように、《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》が咆哮する。

(ちっ…厄介なモンスターだぜ。これだと俺の融合モンスターやシンクロモンスターを召喚しづらくなる…)

「俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド!それと同時に《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の攻撃力が元に戻る」

 

ユーゴ

手札4→3

ライフ2600

SPC1

場 クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7 攻撃5100→2500

  伏せカード3

 

翔太

手札3

ライフ950

SPC0

場 魔装陰陽師セイメイ レベル3 守備1000(チューナー)

 

《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》を見ながら、翔太は今の手札を見る。

(ライディングデュエルでは、《ムーンレィス》を召喚することはできない。一番いい方法とすれば、単純なパワー比べで勝利することだ。幸い、あの竜の攻撃力は2500。倒せない相手じゃないな)

ここで問題となるのはどのようにして攻撃力2500を上回るモンスターを召喚するかだ。

フィールドにはチューナーモンスターである《魔装陰陽師セイメイ》がいるが、それだけでは話にならない。

「俺のターン!」

 

翔太

手札3→4

SPC0→1

 

ユーゴ

SPC1→2

 

手札にきたカードを見た翔太は、再びユーゴを見てから、そのカードを発動する。

「俺は手札から《Sp-ペンデュラム・スリープ》を発動!俺の手札に存在するペンデュラムモンスター1体を表側表示でエクストラデッキに置き、俺のスピードカウンターを2つ上昇させる!」

「何!?ペンデュラムモンスターだと…!?なんなんだよそのカードは!!」

ユーゴの驚きに満ちた声を聞き、翔太の中に1つの確証が生まれる。

「(ペンデュラムモンスターを知らないってことは…まだこいつはペンデュラム召喚について知らないということだな。遊矢とはデュエルをしていないか…)俺は手札の《魔装剣士ローラン》をエクストラデッキへ送り、スピードカウンターを増やす」

ユーゴのDホイール以上のスピードとなったマシンキャバルリーが暗い夜道を走る。

一部の歩行者がこの今まで見たことのないデュエルに驚きつつ、じっと2人を見つめ、カメラを手にする人もいる。

(これは…さっさと片付けたほうがいいな)

 

翔太

SPC1→3

 

Sp-ペンデュラム・スリープ

通常魔法カード

(1):自分のスピードカウンターが1つ以上存在するとき、自分の手札に存在するPモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを表側表示で自分のエクストラデッキの一番上に置き、自分のスピードカウンターを2つ増やす。

 

「更に俺は手札から《魔装軍師オリヴィエ》を召喚!」

 

魔装軍師オリヴィエ レベル4 攻撃800(チューナー)

 

「こいつの召喚に成功した時、エクストラデッキに表側表示で存在する魔装剣士1体を特殊召喚できる。それと念のために言っておくけどな、ペンデュラムモンスターはシンクロモンスターやエクシーズモンスター、融合モンスターと違って特殊召喚モンスターじゃない。だから、蘇生制限はかからないぜ?」

くぎを刺すように説明をしながら、エクストラデッキから《魔装剣士ローラン》を手にしてモンスターゾーンに置く。

「更にこの効果で俺が《ローラン》を特殊召喚した場合、このカードのレベルを1つ変動させることができる。俺は《オリヴィエ》のレベルを1つ下げる!」

 

魔装軍師オリヴィエ レベル4→3 攻撃800(チューナー)

魔装剣士ローラン レベル5 攻撃1700

 

(レベル3のチューナーモンスター2体とレベル5のモンスター…これならレベル8のシンクロモンスターを召喚できる…ってちょっと待てよ、レベル3のチューナーモンスター2体ってことは!)

ユーゴの以前の戦いの経験が彼を激しく警告する。

警告する際に脳裏に見せたイメージは《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》。

そのわずかに後で翔太が行動に出る。

「俺はレベル3の《オリヴィエ》と《セイメイ》でオーバーレイ!獲物の首狩る鎌を研ぎ澄ませ、洞窟の中より鎖を放て!エクシーズ召喚!現れろ、《魔装賊徒バイケン》!」

上半身の右半分を露出させた茶色い着物姿で両目を隠し、型までの長さがある癖の強い黒い髪の男が現れる。

その男は裸足で、その手には刃の部分に五芒星が刻まれている鎖鎌が握られていて、着物の背中部分には梅の花の模様が派手に描かれていた。

獲物である《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》を見て、ニヤリと笑うと青い布でできた無地の手ぬぐいを頭にバンダナ上に着け、腰に巻いている敵の赤い返り血で色彩された帯をしめなおす。

 

魔装賊徒バイケン ランク3 攻撃1500

 

「シンクロ召喚の次はエクシーズ召喚を!?一体どうなってんだ!?召喚法は1人1つのはずだろ!?」

ユーゴの言葉に翔太はハァ、何言ってんだコイツと言いたげな表情を浮かべる。

侑斗と零児、遊矢という前例を見ていることもあり、複数の召喚法をデッキに入れるデュエリストがいるのも当たり前だろうというのが今の翔太の感覚だ。

そんな彼にはユーゴが5年近く前の世界から来た浦島太郎に見えてしまう。

もっとも、最近レオコーポレーションが制作しているマジェスペクターシリーズは現状、ペンデュラム召喚単体でカードカテゴリであるが。

「《バイケン》の効果発動。1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、俺のデッキから魔装モンスター1体を手札に加えることができる。俺はデッキから《魔装剣士ムネシゲ》を手札に加える」

《魔装賊徒バイケン》が鎖鎌を振り回し、それについている分銅を翔太のデッキにぶつける。

すると、デッキから指定されたカードが飛び、手札ホルダーにすっぽりと入る。

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・魔装陰陽師セイメイ

 

「更にこいつは1ターンに1度、装備カードとなって相手モンスター1体に装備させることができる!」

「俺のモンスターに装備するだと!?」

《魔装賊徒バイケン》がニヤリと笑みを浮かべ、鎖鎌を投擲する。

横に回転しながら鎖鎌が《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の肉体に合わせて大型化する。

「こいつを装備したモンスターの攻撃力・守備力は0になる!」

鎖鎌が翼や首、頭部、腕を縛り付けていき、身動きを封じられた《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》が落下する。

しかし、ユーゴは笑みを浮かべる。

「悪いな、《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》のもう1つの効果を発動!1ターンに1度、フィールド上のレベル5以上のモンスター1体のみを対象とするモンスター効果の発動を無効にし、破壊する!」

「何!?」

《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の翼部に再び電子基板のようなものが浮かび上がる。

すると、鎖鎌が緑色の光を帯びてその竜を解放する。

更に鎌の部分が外れて縦回転を始め、主である《魔装賊徒バイケン》を切り裂いた。

「当然、この効果で破壊しても《クリアウィング》の攻撃力はターン終了時までアップするぜ!」

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7 攻撃2500→4000

 

 

(ちっ…モンスター効果をぶつけるのも無理か)

《魔装賊徒バイケン》を墓地へ送りつつ、じっと《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》を見る。

ライディングデュエルの特性上、魔法カードの使用は限定される。

また、《スピード・ワールド3》の効果で破壊するという手もあるものの今のスピードカウンターではそれまで耐えるのは難しい。

「(くそ…《ミラーフォース》でもあれば!!)俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド!」

「ここで俺は罠カード《マグナム・ブースト》を発動!相手がスピードカウンターを3つ以上増やしたターン終了時に発動でき、俺のスピードカウンターを6つ増やす!」

「何!?」

「いっくぜぇーーーー!!!」

アクセルを踏み込み、公道であるにもかかわらず100キロ近いスピードを出しながら走り始める。

あっという間に翔太を抜かし、引き離していく。

(こいつ…事故するな)

 

ユーゴ

手札3

ライフ2600

SPC2→8

場 クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7 攻撃5100→2500

  伏せカード3

 

翔太

手札4→0

ライフ950

SPC3

場 魔装剣士ローラン レベル5 攻撃1700

  伏せカード1

 

マグナム・ブースト

通常罠カード

「マグナム・ブースト」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):相手がスピードカウンターを3つ以上増やしたターン終了時に発動できる。自分のスピードカウンターを6つ増やす。

 

「よっしゃあ!!これで…って!!!?」

スピードに魅了されるユーゴに水を差すような事態が目の前で起こる。

車がいないことを確認し、大急ぎで道路を横断する茶色いぶちのある白猫。

100キロ近いスピードを出している今の状況でブレーキをかけても間に合わない。

「く…うおおおお!!!」

ブレーキをあきらめたユーゴは逆に更にアクセルを踏み込み、スピードを上げる。

「あのバナナ…ひき殺す気か!?」

「だあああああ!!」

翔太の言葉を無視するように、ユーゴはウィリー走行を始める。

そして、猫に接触する数十センチ前にバイクごとジャンプをした。

猫を引かずに済み、ユーゴはフウと息をしながらカードをドローする。

 

ユーゴ

手札3→4

SPC8→9

 

翔太

SPC3→4

 

既にユーゴのスピードカウンターは9個で、翔太のライフはわずか950。

《スピード・ワールド3》でのライディングデュエルではライフ400以下がデッドラインとなっている。

なぜなのかはこれからのユーゴの行動で分かる。

「俺は《スピード・ワールド3》の効果を発動!スピードカウンターを3つ取り除くことで、手札をすべて見せて、その中のSp1枚につき、400のダメージを与える!俺の手札はこれだ!!」

ホルダーの最後部にある青いボタンを押すと、マシンキャバルリーのディスプレイにユーゴの手札の内容が送信、表示される。

 

ユーゴの手札

・ダイスロール・バトル

・Sp-スピード・ストーム

・スピード・ブースター

・Sp-ソニック・バスター

 

「俺の手札のSpは2枚!800のダメージだ!!」

着地をしたユーゴのDホイールの後部にソリッドビジョンでできたミサイルポッドが出現し、マシンキャバルリーに狙いが定まる。

そして、すべてのミサイルをそれに向けて発射した。

「今の俺のスピードカウンターなら、2回この効果を発動してお前を倒せる!!」

「ちっ…俺は罠カード《魔装の狂宴》を発動!俺のフィールド上に魔装モンスターが存在し、俺がダメージを受ける時、墓地から攻撃力2000以下の魔装モンスター1体を特殊召喚する。俺は《魔装賊徒バイケン》を特殊召喚する!」

《魔装賊徒バイケン》が特殊召喚されると同時に鎖鎌を振り回す。

鎖につながれた分銅が時速140キロ近いスピードで飛び、ミサイルを次々と破壊していく。

「そしてこのターン、俺はこの効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力以下のすべてのダメージを0にする」

「くそ…!ここはもう1つの効果で破壊しておくべきだったぜ…!」

悔しそうに《スピード・ワールド3》3つ目の効果のテキストを見る。

仮にスピードカウンターを8つ取り除くことで発動できる破壊効果を発動した場合、翔太に《魔装の狂宴》を発動させることはなく、更に翔太にダメージを与えることができた。

この判断ミス1つだけでも、ライディングデュエルでは大きな影響を与えてしまう。

 

魔装賊徒バイケン ランク3 守備1200

 

ユーゴ

SPC9→6

 

Sp-ソニック・バスター(アニメオリカ)

通常魔法カード

(1):自分のスピードカウンターが4つ以上ある場合に自分フィールド上のモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターの攻撃力の半分のダメージを与える。

 

魔装狂宴

通常罠カード

(1):自分フィールド上に「魔装」モンスターが存在し、自分が相手によって戦闘ダメージまたは効果ダメージを受ける時、自分の墓地に存在する攻撃力2000以下の「魔装」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。その後、ターン終了時まで自分はこの効果で特殊召喚したモンスターの元々の攻撃力以下の戦闘ダメージおよび効果ダメージを受けない。

 

「だったら、少なくともその《ローラン》だけは倒すぜ!《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》で《ローラン》を攻撃!!旋風のヘルダイブスラッシャー!!!」

《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の回転突撃が《魔装剣士ローラン》に襲い掛かる。

激突と同時に剣士は消滅するが、翔太には何も影響がなかった。

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 

ユーゴ

手札3

ライフ2600

SPC6

場 クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7 攻撃2500

  伏せカード4

 

翔太

手札0

ライフ950

SPC4

場 魔装賊徒バイケン ランク3 守備1200

 

なんとかこのターンの攻撃をしのぐことはできた。

しかし。先ほどユーゴの手札に《Sp-ソニック・バスター》と《Sp-スピード・ストーム》の存在を確認した。

これらのカードの発動を許した時点で、翔太の敗北が決定してしまう。

(ライフ残り950、手札0、スピードカウンター4。ま…普通ならあきらめるだろうけどな)

翔太はデッキトップに指を駆ける。

「曲りなりにも俺はランサーズの一員。バナナに負ける筋合いはねえな」

「だーかーらー、バナナじゃねえ、ユーゴだ!!」

「うるせえな、バナナ。俺のターン!」

怒るユーゴを尻目に翔太はカードをドローする。

 

翔太

手札0→1

SPC4→5

 

ユーゴ

SPC6→7

 

ドローしたカードを見て、唇の右側を少し上へあげる。

「俺は手札から《Sp-ローグ・ペンデュラム》を発動!俺のスピードカウンターが5つ以上あるとき、フィールド上に存在するモンスター1体のレベルを5つ下げることで発動できる」

「何!?」

《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の頭上に7つのレベルマークが現れ、そのうちの5つが爆発する。

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7→2 攻撃2500

 

「そして、エクストラデッキに表側表示で存在するペンデュラムモンスター2体をペンデュラムゾーンに置き、その後…デッキからカードを1枚ドローする」

翔太のエクストラデッキからスケール6の《魔装剣士ローラン》とスケール5《魔装郷士リョウマ》が自動排出され、ペンデュラムゾーンに置かれる。

2体のモンスターはそれぞれ翔太の左右に浮遊し、青い光の柱を生み出す。

その後でデッキからカードをドローし、そのカードを見る。

「あのバカじゃねえが、俺はカードに選ばれてるみたいだな」

「はぁ?」

「俺は手札から《Sp-オーバーレイ・コースチェンジ》を発動!俺のスピードカウンターを4つ取り除き、デッキからカードを1枚ドローする。そして、発動後このカードを墓地へは送らず、フィールド上に存在するエクシーズモンスター1体のオーバーレイユニットにする」

ソリッドビジョンに発動されたカードが現れると、それは緑色のオーバーレイユニットとなって《魔装賊徒バイケン》の鎖鎌の五芒星に吸収されていく。

 

翔太

SPC5→1

 

Sp-ローグ・ペンデュラム

通常魔法カード

(1):自分のスピードカウンターが5つ以上存在し、自分のPゾーンにカードがないとき、フィールドに存在するモンスター1体のレベルを5つ下げることで発動できる。自分のエクストラデッキに表側表示で存在するPモンスター2体を自分のPゾーンに置き、デッキからカードを1枚ドローする。

 

Sp-オーバーレイ・コースチェンジ

通常魔法カード

(1):フィールド上にXモンスターが存在し、自分のスピードカウンターを4つ取り除くことで発動できる。デッキからカードを1枚ドローする。発動後、このカードは墓地へ送らずにフィールド上に存在するXモンスター1体の下に重ねてX素材にする。

 

「てんめえ、スピードスペル2連発だと!?ふざけんな!!罠発動!《バックストレート》!!ターン終了時、発動したスピードスペルの数だけ俺のスピードカウンターが増えるぜ!!」

ユーゴは更にスピードカウンターを稼ぐという手に出る。

スピードカウンターを11個にすれば、1ターンの間に破壊効果とダメージ効果を両方使えるようになる。

仮にそこまで届かなかったとしても、もう1つユーゴには手がある。

「更に俺は永続罠《スピード・ブースター》を発動!俺のスピードカウンターが相手より上回っている場合、相手ターンに1度だけ相手モンスターの攻撃を無効にする!更に俺のターンに1度、俺のスピードカウンターとお前のスピードカウンターの数の差×100のダメージを与える!!」

先程のターンから備え付けられていたミサイルポッドが強制排除され、代わりに上部にミサイルポッドがついた黒い大型のブースターが装着される。

スピードカウンターの数で有利になっているユーゴをさらに優勢に導くカードだ。

 

バックストレート

通常罠カード

「バックストレート」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):ターン終了時、自分のスピードカウンターがこのターン発動された「Sp」魔法カードの数だけ増える。

 

スピード・ブースター(アニメオリカ・調整)

永続罠カード

(1):スピードカウンターが相手より多い場合に以下の効果を発動する事ができる。

●相手ターン:1ターンに1度、相手モンスター1体の攻撃を無効にすることができる。

●自分ターン:1ターンに1度、自分のスピードカウンターと相手のスピードカウンターの差×100ダメージを与える。

 

「それで勝利を確信したつもりかよ?俺は《魔装剣士ローラン》のペンデュラム効果を発動。1ターンに1度、ペンデュラムゾーンに存在するペンデュラムモンスター1体のペンデュラムスケールを2つ変動させる。俺は《リョウマ》のスケールを2つ下げる。」

《魔装剣士ローラン》が両手で剣を手にとり、天に掲げると、《魔装郷士リョウマ》が生み出す光の柱の輝きが強まっていく。

そして、輝きが元に戻ると同時にペンデュラムスケールが変化する。

 

魔装郷士リョウマ(青) ペンデュラムスケール5→3

 

「これで俺はレベル4と5のモンスターを同時に召喚可能。更に俺は《バイケン》の効果を発動。1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、デッキから魔装モンスター1体を手札に加えることができる。俺はデッキから《魔装銃士マゴイチ》を手札に加える」

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・Sp-オーバーレイ・コースチェンジ

 

「くっそー!サーチしやがった!!」

「来たれ、時の果てに眠りし英雄の魂。漆黒の魂と契約し、封印から解き放たん!ペンデュラム召喚!来い、《魔装斬鬼ロクベエ》《魔装銃士マゴイチ》!」

2メートル近い身長で鬼の2本角をモチーフとした刺青を右頬につけた野武士髭で整いのない、伸ばし放題の長髪の中年男性が現れる。

茶色い飾り気のない無地の甲冑を着用していて、《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》に目を向けると、背中に刺している大太刀を抜く。

その大太刀の柄頭の部分には五芒星が刻まれている。

そして、翔太たちが走る道路付近のビルの屋上から《魔装銃士マゴイチ》が滑空を始める。

 

魔装斬鬼ロクベエ レベル4 攻撃1800

魔装銃士マゴイチ レベル4 攻撃1600

 

「《ロクベエ》の効果発動!こいつは手札からペンデュラム召喚に成功した時、俺のペンデュラムゾーンに魔装と名のつくカードが存在する場合、フィールド上に存在する魔法・罠カード1枚を墓地へ送る。俺はお前の《スピード・ブースター》を墓地送りにする!」

「何!?」

《魔装斬鬼ロクベエ》がユーゴの前方20メートル先に立ち、大太刀を構えながらにやりと笑う。

ユーゴは先ほどのように跳躍して回避するわけにはいかず、やむなく車線変更する。

その際にユーゴが今いる車線への注意をわずかに祖刺すわずかな時間の間にそのモンスターは大太刀で《スピード・ブースター》を切り裂いた。

「くっそーーー!!《スピード・ブースター》が!!」

爆発の危険性から、《スピード・ブースター》が自動的に強制排除され、路上に転がる。

爆発寸前のそのスクラップを踏みつぶした後で、《魔装斬鬼ロクベエ》が翔太の傍へ戻っていく。

 

魔装斬鬼ロクベエ

レベル4 攻撃1800 守備200 闇属性 悪魔族

【Pスケール:青4/赤4】

「魔装斬鬼ロクベエ」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):自分フィールド上に存在するモンスターが「魔装騎士」モンスター1体のみの場合に発動できる。Pゾーンに存在するこのカードを自分フィールド上に攻撃表示で特殊召喚する。

【モンスター効果】

「魔装斬鬼ロクベエ」のモンスター効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードが手札からP召喚に成功したとき、自分Pゾーンに「魔装」カードが存在する場合、フィールド上に存在する魔法・罠カード1枚を対象に発動できる。そのカードを墓地へ送る。

 

「そして、《バイケン》の効果を発動!《クリアウィング》を拘束しろ!!」

「バカか!?《クリアウィング》の効果は…あ!!?」

《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の効果を発動しようと思った瞬間、ユーゴがはっとする。

「そうだ、バナナ。今のコイツのレベルは2。その効果は使えないな」

再び《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の肉体を拘束する鎖鎌。

先程はダイクロイックミラーによって消滅させることができたが、今の状態では太刀打ちできない。

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル2 攻撃2500→0

 

「情けないぜ…モンスター効果を防ぐ《クリアウィング》がモンスター効果で封じ込められるなんてよ…」

悔しそうに伏せている2枚のカードを見る。

カード効果による破壊を防ぐための《悲劇の引き金》、そして戦闘破壊から守る《スピン・バリア》だ。

しかし、今のこの状況ではその2枚は何も意味を持たない。

 

スピン・バリア

通常罠カード

(1):自分フィールド上に存在するレベル5以上の風属性・ドラゴン族のSモンスターが攻撃対象となったときに発動できる。その攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了させる。このカードを発動したターン終了時、自分の墓地に存在するレベル7以下の風属性Sモンスター1体を自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターは次の自分のターン終了時までチューナーとして扱う。

 

「こいつで終わりだ…バナナ!!俺は《マゴイチ》と《ロクベエ》で攻撃する!」

「くっそおおおお!!!」

動きを封じられた《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》が路上に落下し、屋上から《魔装銃士マゴイチ》がその頭部を狙撃する。

そして《魔装斬鬼ロクベエ》が動かなくなったモンスターの肉体を飛び越え、大太刀でユーゴを攻撃する。

「お…俺は…バナナじゃ、ねえ…」

 

ユーゴ

ライフ2600→1000→0

 

魔装賊徒バイケン

ランク3 攻撃1500 守備1200 エクシーズ 闇属性 サイキック族

「魔装」レベル3モンスター×2

「魔装賊徒バイケン」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できず、(2)の効果はデュエル中1度しか発動できない。

(1):相手フィールド上に存在するモンスター1体を対象に発動できる。自分フィールド上に存在するこのカードを装備カード扱いとしてそのモンスターに装備する。装備モンスターの攻撃力・守備力は0となる。

(2):このカードを装備したモンスターが破壊されることによってこのカードが墓地へ送られた時、このカードを自分フィールド上に表側守備表示で特殊召喚することができる。その後、自分の墓地に存在するレベル3の「魔装」モンスター1体をそのモンスターの下に重ねてX素材にする。この効果で特殊召喚されたこのカードの効果はターン終了時まで無効化される。

(3):1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除くことで発動できる。デッキから「魔装」モンスター1体を手札に加える。

 

「ちっ…てこずらせやがって。魔装騎士で攻撃できなかった」

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》と同様、記憶の鍵である可能性のある《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》を魔装騎士で倒すことができなかったことを少し悔みながら、マシンキャバルリーを降りた翔太が強制停止したDホイールに乗ったままのユーゴに近づく。

「くっそー…リンを取り戻すまで、負けるわけにはいかねえのに…」

「リン…そいつはお前の女か?」

「な…!?」

翔太を見たユーゴが顔を真っ赤にする。

「そ、そういう関係じゃねえし!それに、勝手に聞くんじゃねえ!!」

「あーあー、それは悪かったなバナナ」

「だーかーらー、バナナじゃねえ、ユーゴだ!!それなら融合と間違われた方が何百倍もマシだぜ…って!!?」

更に翔太に文句を言おうとしたが、その前に彼によって胸ぐらをつかまれる。

「ななな、なんだよ!!?なんで俺を…」

「悪いけどな、お前にちょっと尋ねたいことがある。アンティルールだ」

「はあ!!?そんなん聞いてねえぞ!!??」

「今決めた」

それからユーゴは堰を切ったように、勝手に決めんじゃねえやいい加減本名で呼びやがれとか言っていたが、翔太は全く聞かずに彼を路地裏へ連行した。




翔太にもライディングデュエルをさせましたが、いかがでしたか?
ライディングデュエルの要素、そしてまだまだ未知の領域のあるSRの都合上、ユーゴには少しアニメとは異なる戦術をさせてみました。
さあ…これから翔太による尋問が始まります。

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