遊戯王ARC-V 戦士の鼓動   作:ナタタク

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第35話 眠りの遊矢

「遊矢…遊矢…」

「う、う、うう…」

眠る遊矢の耳元に聞こえる聞き覚えのある少年の声。

もう2度と会えないと思っていた少年の声に遊矢は目を開く。

「ユート…ユートなのか!?うう…!!」

起き上がろうとするが、体のいたるところから発生する痛みに顔をゆがめる。

何とかベッドから出ようとするが、立とうとすると痛みでバランスを崩して転倒してしまう。

「ここは…?」

何とかベッドの端を支えに起き上がる。

真っ暗な部屋で、埃1つ無い清潔な空間、ベッドと白いカーテン、そしてタッチパネル型のナースコール。

扉の前では先ほどの声の主が立っている。

「ユート…?ここはどこなんだ!?柚子は…みんなは!?うう…」

ユートの前まで歩くも、激痛で顔をゆがめ、彼の前で膝をつく。

今の遊矢は着ているのはズボンだけで上半身は裸、腹部を包帯が覆っている。

そんな彼を見つめながら、ユートはデュエルディスクを起動し、カードをセットする。

「魔法カード《リベリオン・ゲート》発動!」

発動と同時に遊矢とユートを紫色の稲妻を宿した黒い雷雲が包み込んでいく。

「ユート…なんで、俺の質問に答えてくれない!?」

「遊矢、君の覚悟を試す」

「何!?」

どういう意味だと言おうとする遊矢に左腕にユートが指を指す。

視線をそれに向けると、なぜかデュエルディスクが装着されている。

「遊矢、俺とデュエルをしろ」

「なんだよ!?なんで今お前とデュエルをしなきゃならないんだ!?それに、今の俺の体は…!!」

「安心しろ。アクションデュエルじゃない。体にそれほど負担にはならないはずだ」

「ユート!!」

遊矢の意に反するように、彼のデュエルディスクが勝手に起動する。

そして、雷雲が晴れるとそこは病室ではなく、遊勝塾のデュエルフィールドになっていた。

そこも明かりがついておらず、彼らを照らすものは何もない。

「遊矢、今の君の魂は君自身の心の傷が原因で力を弱めている。このままだと君の魂が消滅し、君の体が俺の物になってしまう」

「俺の魂が消滅…!?それに、心の傷って…」

それについては遊矢も察しがついている。

素良の裏切り、自分の中に宿ったユートの魂、オベリスクフォースによって犠牲になってしまった仲間たち。

自分が得てしまった、笑顔ではなく破壊を与える力、《覇王黒龍オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン》。

そして、デュエルでみんなを笑顔にするという自らの信念を否定する数多くの現実。

「良く見てみるんだ、君の左手を。それが魂が弱まっている証拠だ」

ユートの言われた通りに、遊矢は自身の左手を見る。

彼の言うとおり、左手が徐々に透明になりつつあり、中指の爪はすでに消えてしまっている。

「…ということは、やっぱりユートは死んでいなかったんだな?」

「死ぬ…か。それは少し違うかもしれないな」

「え…?」

「それよりも遊矢。俺とデュエルをしろ!君の魂の力をデュエルによって高め、消滅を防ぐ!」

ユートは既にカードを5枚ドローし、いつでも開始できる状態にある。

魂の消滅という言葉には半信半疑ではあるが、もう既に左手中指の先がわずかに消えかかっている。

徐々に迫ってくるわけもわからない恐怖が遊矢を駆り立てる。

何とか痛みに耐えながら起き上がり、カードをドローする。

「いくぞ、遊矢!!」

「…来い、ユート!!」

手の震えを抑えながら、ユートに返事をする。

「「デュエル!!」」

 

ユート

手札5

ライフ4000

 

遊矢

手札5

ライフ4000

 

「俺の先攻、俺は手札から《幻影騎士団スプリットロッド》を召喚」

茶色いボロボロなフードのないローブを着た青い人型の炎が現れる。

両手には骨と髑髏でできた杖を2つ持っていて、頭部には後ろにも顔がある。

 

幻影騎士団スプリットロッド レベル4 攻撃1600

 

「このカードを幻影騎士団モンスターのエクシーズ素材とするとき、このカードで2体分のエクシーズ素材とすることができる。俺は《幻影騎士団スプリッドロッド》でオーバーレイ!死してなお仲間を守らんとする騎士たちよ、その意思を死神の大鎌に委ねよ!エクシーズ召喚!現れろ、ランク4!《幻影騎士団デッドサイス》!!」

ユートの周囲に数十の青い炎の球体が現れ、それが彼の前に浮かんでいる巨大な黒い刃の大鎌に吸収されていく。

そして、その鎌を彼の背後に現れた5メートル近い大きさの青いローブが手にする。

それと同時にローブの各所から青い炎が発生する。

 

幻影騎士団デッドサイス ランク4 攻撃2000

 

幻影騎士団(ファントム・ナイツ)スプリットロッド

レベル4 攻撃1600 守備1000 効果 闇属性 戦士族

(1):このカードを「幻影騎士団」モンスターのX素材とする場合、2体分のX素材とすることができる。

(2):このカードをX素材とする場合、「幻影騎士団」モンスターのX召喚にしか使用できない。

 

「そして俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

ユート

手札5→3

ライフ4000

場 幻影騎士団デッドサイス(オーバーレイユニット1) ランク4 攻撃2000

  伏せカード1

 

遊矢

手札5

ライフ4000

場 なし

 

 

一方、LDSのデュエルフィールドでは…。

「さあさあ嬢ちゃん!まだまだ行くぜ!俺はレベル3の《モノケロース》にレベル2の《エレファン》をチューニング!雷鳴纏いし青き一角獣よ、今こそその角で邪気を貫け、シンクロ召喚!レベル5!《サンダー・ユニコーン》!!」

上半分が茶色く、下半分が青い肉体で、自身の肉体と同じくらいの長さの角を持つ一角獣《モノケロース》が羽のついた青い像の頭部だけのモンスターである《エレファン》が生み出したチューニングリングを通過する。

そして、シンクロ召喚の演出がなされると雷のマークを模した角を持つ、青い肉体で金色の鬣と尾を持つ一角獣が現れる。

体の各所にも金色の模様が描かれている。

 

サンダー・ユニコーン レベル5 攻撃2200

 

「更に《モノケロース》の効果発動。《モノケロース》は獣族チューナーを使用してシンクロ召喚に成功した時、そのシンクロ素材としたチューナーモンスターを特殊召喚できる。俺は《エレファン》を特殊召喚!」

 

エレファン レベル2 守備300(チューナー)

 

「《サンダー・ユニコーン》の効果発動!1ターンに1度、相手フィールド上に存在するモンスター1体の攻撃力をターン終了時まで俺のフィールド上に存在するモンスターの数×500ポイントダウンさせる!!」

《サンダー・ユニコーン》が嘶くと、上空に雷雲が発生し、《M・HERO闇鬼》に雷が落ちる。

そう、伊織はそこでヴァプラ隊のメンバーであるガーダーとデュエルを行っているのだ。

 

M・HERO闇鬼 レベル8 攻撃2800→1800

 

「バトル!《サンダー・ユニコーン》で《闇鬼》を攻撃!サンダー・スピアー!!」

《サンダー・ユニコーン》が角を前にだし、《M・HERO闇鬼》に突撃する。

黒い一角の鬼は本来持っているはずの怪力で《サンダー・ユニコーン》を掴もうとするが、雷による感電が原因で体が思うように動かない。

そのままその角で貫かれ、何もできないまま消滅してしまう。

「きゃああ!!」

 

伊織

ライフ2800→2400

 

「伊織の奴、いいようにやられてるな」

みたらし団子を口にしながら、翔太は客席で伊織のデュエルを見ている。

今の彼の服装はズボンは変わっていないものの、上半身が黒いジャケットと黒いシャツ、左手は黒い手袋をつけている状態だ。

その手袋はこの服を渡した零児曰く特別製で、翔太の痣の暴走を抑える役割もあるようだ。

ヴァプラ隊はずっと訓練と実戦の双方をやってきているためか、そのレベルは少なくともユースを上回っている。

伊織だけでなく、里香や漁介、ハンスやジェイクもここでヴァプラ隊のメンバーとデュエルをしている。

ジョンソンはすでにデュエルを終え、客席にいる。

「秋山翔太…だな?」

「…ジョンソンって奴だな?」

隣にいるジョンソンの顔を見ることなく、そう呼ぶ。

「ああ、君も私も無事にランサーズに入れてもらえそうだ」

「あんたはいいのかよ?俺たちと同じように、部外者だろ?」

ランサーズはスタンダード次元を守る槍。

ということは、軍隊のようなもので死ぬ可能性もあるということだ。

他の次元との戦争に巻き込まれ、急に戦えと言われて納得する人間は少ない。

現にバスに乗って一緒に舞網市まで来たデュエリストの中にはヴァプラ隊とのデュエルにわざと負ける、もしくはデュエルすること自体を拒否してここを立ち去る者もいる。

「君こそ逃げないのか?」

「俺は目的があるからな。利用価値があるから入るだけだ」

「ふふっ…私も同じだ。ランサーズとして一定の戦果を上げれば、私の目を見えるようにしてくれるという」

「目を…?」

「そうだ。目が見えなくともあまり不自由がないが、君のようなデュエリストと戦う時はそうはいかないだろう」

そう言うと、ジョンソンは立ち上がり、持っていた杖で小石を飛ばす。

その小石は翔太のそばを飛んでいたスズメバチ3匹にボーリングのクリスマスツリーのように次々と命中し、3匹とも落ちていく。

若干の驚きの表情を見せる翔太に顔を向け、にやりと笑う。

「ここらへんはなぜか蜂がいる。場所を変えたほうがいい。私は少しご飯を食べに行くとしよう」

そう言いながら、ジョンソンは杖で足元を確認しながらその場を後にした。

 

 

そして、場所が変わって遊矢の精神空間内…。

「俺のターン、ドロー!」

 

遊矢

手札5→6

 

「罠発動、《死なばもろとも》」

「ええ!?このタイミングで罠を??」

ドロー以外に何もアクションを起こしていない状況で発動された罠カードに遊矢は疑問を持つ。

「俺たちの手札が3枚以上存在するとき、互いのすべての手札を好きな順番でデッキの一番下へ置く」

「何!?」

「もう手札に来ているだろう?《星読みの魔術師》と《時読みの魔術師が」

ユートの言葉に遊矢がギクリとする。

彼の言うとおり、手札にはすでにその2体の魔術師、そして《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が存在する。

このままターンを進めれば、すぐにペンデュラム召喚ができた。

悔しそうに遊矢は手札をデッキに戻す。

 

一番下に戻されたカード(上から順番)

遊矢

・時読みの魔術師

・オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン

・星読みの魔術師

・ペンデュラム・フラッシュ

・EMマンモスプラッシュ

・死者蘇生

 

ユート

・非常食

・エクシーズ・ユニット

・幻影騎士団サイレントブーツ

 

幻影騎士団サイレントブーツ(アニメオリカ・調整)

レベル3 攻撃200 守備1200 効果 闇属性 戦士族

(1):自分フィールド上に「幻影騎士団」モンスターが存在する場合、手札から特殊召喚できる。

(2):このカードをS素材とすることができない。

 

「そして、デッキに戻ったカードの数×300ポイント俺はライフを失い、互いにデッキからカードを5枚ドローする」

 

遊矢

手札6→5

 

ユート

手札3→5

ライフ4000→1300

 

「自分のライフを2700も!?」

手札を2枚増やし、自分のペンデュラム召喚を防ぐだけのために2700も自分のライフを削るユートの行為を理解できずにいる。

しかし、その答えとなる行動を即座に彼は起こす。

「俺は《幻影騎士団デッドサイス》の効果発動。俺が自分のカード効果でライフを失ったターン、1度だけその数値分自分のライフを回復させ、それと同じ数値分このカードの攻撃力をアップさせる」

「何!?」

《幻影騎士団デッドサイス》の大鎌が青い炎を起こし、ユートの体にも青い炎が宿る。

 

幻影騎士団デッドサイス ランク4 攻撃2000→4700

 

ユート

ライフ1300→4000

 

いきなり攻撃力が一気に4700にまで増大した。

今の遊矢のデッキにはその攻撃力を上回るモンスターはいない。

青い炎を発生させながら威嚇する《幻影騎士団デッドサイス》を見て、遊矢の頬に一筋の汗が流れる。

「どうした?この程度であきらめるのか?」

「何!?俺はそんなこと…」

「そんなことないといいたいんだろう?だが、君の魂を見てきた俺にはわかる。それに…俺も圧倒的な力の前に一度は諦めてしまった…」

目を閉じ、融合次元にエクシーズ次元が侵略された時のことを思い出しながら、ユートは言う。

圧倒的な力を持ち、無抵抗な人々をも襲う彼らに逃げることしかできなかった自分を思い出しているのだ。

「俺は…俺は諦めてなんかない!!俺は《EMアメンボート》を召喚!」

青い城の水玉模様の蝶ネクタイと黒いシルクハットをつけた背中が緑色のボートになっているオレンジ色のアメンボが現れる。

 

EMアメンボート レベル4 攻撃500

 

「《アメンボート》…攻撃表示の時、表示形式を変更することで相手の攻撃を回避するモンスターか…。言っていることとやっていることがまるで違うな」

「そんなことない!今はターンを稼いで、《デッドサイス》を倒す手を考える!俺はカードを2枚伏せて、ターンエンド!」

 

ユート

手札5

ライフ4000

場 幻影騎士団デッドサイス(オーバーレイユニット1) ランク4 攻撃4700

 

遊矢

手札5→2

ライフ4000

場 EMアメンボート レベル4 攻撃500

  伏せカード2

 

「俺のターン、ドロー」

 

ユート

手札5→6

 

「俺は手札から永続魔法《幻影騎士団の晩餐》を発動。これで俺は1ターンに1度、通常の召喚に加えて手札から幻影騎士団モンスター1体を通常召喚できる。俺は《幻影騎士団ラギッドグローブ》と《幻影騎士団ダスティローブ》を召喚」

大きな五本指の手甲を持つ鉄の鎧を装備した青い炎と黒いローブを装備し、周囲に紫色の魔石のついた銀の杖を2つ浮遊させている青い炎が同時に現れる。

 

幻影騎士団ラギッドグローブ レベル3 攻撃1000

幻影騎士団ダスティローブ レベル3 攻撃800

 

幻影騎士団の晩餐(ファントム・ナイツ・ディナータイム)

永続魔法カード

「幻影騎士団の晩餐」の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分のターンのメインフェイズ時に発動できる。自分は通常の召喚に加えて一度だけ「幻影騎士団」モンスター1体を召喚できる。

 

「《ダスティローブ》の効果発動。このカードは召喚に成功した時、守備表示になる。そして、このカードが表示形式を変更した時、俺のフィールド上に存在する幻影騎士団モンスター1体の攻撃力をターン終了時まで800アップさせる」

《幻影騎士団ダスティローブ》の2つの杖が《幻影騎士団デッドサイス》の周囲を旋回し始める。

 

幻影騎士団デッドサイス ランク4 攻撃4700→5500

 

幻影騎士団ダスティローブ(アニメオリカ・調整)

レベル3 攻撃800 守備1000 効果 闇属性 戦士族

「幻影騎士団ダスティローブ」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードは召喚に成功した時、守備表示となる。

(2):このカードが表示形式を変更した時、自分フィールド上に存在する「幻影騎士団」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで800アップする。

 

「これでレベル3のモンスターが2体!?」

「俺はレベル3の《ダスティローブ》と《ラギッドグローブ》でオーバーレイ!戦場に倒れし騎士たちの魂よ、今こそ黄泉がえり、闇を切り裂く光となれ!エクシーズ召喚!現れろ、ランク3!《幻影騎士団ブレイクソード》!」

下半身が装甲のある馬で、右手で身の丈ほどの大きさを持つ片刃の大剣を持つ首のない黒い鎧の騎士が現れる。

鎧の隙間からは青い炎が漏れ出ている。

 

幻影騎士団ブレイクソード ランク3 攻撃2000

 

「今度は《ブレイクソード》を!?」

「更に俺はオーバーレイユニットとなっている《ラギッドグローブ》の効果を発動。このカードを素材にエクシーズ召喚に成功した闇属性エクシーズモンスターの攻撃力を800アップさせる」

 

幻影騎士団ブレイクソード ランク3 攻撃2000→3000

 

幻影騎士団ラギッドグローブ(アニメオリカ・調整)

レベル3 攻撃1000 守備500 効果 闇属性 戦士族

(1):このカードを素材にX召喚に成功した闇属性モンスターは以下の効果を得る。

●このX召喚に成功した時に発動できる。このカードの攻撃力は1000アップする。この効果は無効化することができない。

 

「更に俺は手札から装備魔法《メテオストライク》を《デッドサイス》に装備。これでこのモンスターは守備モンスターを攻撃するとき、貫通ダメージを与える。更に俺は手札から装備魔法《デーモンの斧》を《デッドサイス》に装備。これでこのモンスターの攻撃力はさらに1000アップする」

 

幻影騎士団デッドサイス ランク4 攻撃5500→6500

 

《EMアメンボート》の守備力は1600。

仮に最初に《幻影騎士団ブレイクソード》が攻撃し、その後で《幻影騎士団デッドサイス》が攻撃したら、4900の貫通ダメージを受けることになる。

「バトルだ。俺は《ブレイクソード》で《アメンボート》を攻撃!」

《幻影騎士団ブレイクソード》の大剣が《EMアメンボート》に向けて振り下ろされる。

「《アメンボート》の効果発動!攻撃表示のこのカードが攻撃対象となった時、守備表示にすることでその攻撃を無効にする!」

《EMアメンボート》が大剣が来る直前に大きくジャンプをする。

大剣の刃はそのアメンボに触れることなく、フィールドに深々と刺さる。

「俺は手札から速攻魔法《幻影死鎌》を発動。俺の幻影騎士団の攻撃が無効となった時、相手フィールド上に存在する魔法・罠カードを2枚まで破壊し、そのモンスターはもう1度攻撃することができる」

「何!!?」

《幻影騎士団ブレイクソード》が深々と刺さっている大剣を振り上げる。

すると、青い剣閃が発生し、遊矢の伏せカードを真っ二つに切り裂いていく。

 

破壊された伏せカード

・EMクレイジー・ボックス

・EMピンチヘルパー

 

幻影死鎌(ファントム・デスサイス)

速攻魔法カード

(1):自分フィールド上に存在する「幻影騎士団」モンスターの攻撃が無効になった時、そのモンスター1体を対象に発動できる。相手フィールド上に存在する魔法・罠カードを2枚まで破壊し、このバトルフェイズ中そのモンスターはもう1度だけ続けて攻撃できる。

 

「あ、ああ…」

「どうした?君の力はその程度なのか?」

おびえる遊矢を見下すように見るユート。

そして《幻影騎士団ブレイクソード》は再び大剣を持ち上げると、そのまま《EMアメンボート》をその厚い刃で叩き潰した。

「これが最後の攻撃だ。残念だ、君の思いがその程度だということが…」

「ユート…」

目を閉じ、無念さを口にするユート。

しかし、目を開くと決意を固め、攻撃命令を出す。

「いけ、《デッドサイス》!!遊矢の魂を狩れ!!」

《幻影騎士団デッドサイス》が遊矢の首を狩るために彼の背後へ回り、大鎌を大きく横に振るう。

(そんな…俺、ここで終わり…??)

背後から襲いかかる冷たい死の感触に遊矢の表情が凍り付く。

そんな彼の心に次第に妥協しようという気持ちが現れる。

(でも、ユートが俺になるなら、それもいいかも…)

心の弱い自分よりもユートならば、柚子を守れるかもしれないし、みんなをデュエルで笑顔にすることができるかもしれない。

自分では素良1人すら笑顔にすることができなかった。

(ユート…俺が消えるから、だからお前が…)

(あきらめるのか?遊矢)

「え…!?」

なぜか男性特有の低い声が聞こえてくる。

その声は3年前からずっと効くことができなかった声。

もう2度と聞くことができないだろうと思っていた声だ。

「父さん!!?」

近くにいるのか、1度だけでもいいから彼の姿を見たいという思いが遊矢の生きる願望となる。

「俺は墓地から罠カード《EMクレイジーボックス》の効果を発動!!相手がダイレクトアタックをするとき、このカードを墓地から除外することで、俺はデッキからカードを1枚ドローする。そして、ドローしたカードがEMと名のつくPモンスターの場合、そのカードを表向きでエクストラデッキに置くことでその攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了させる!!」

大鎌の刃がデフォルメされた五芒星とピエロの仮面、虹などが派手に描かれた四角い箱とぶつかる。

そして、遊矢は深く深呼吸をしながら自分のデッキを見る。

「(頼む、俺のデッキ…。もし俺に生きろと言ってくれるなら、俺は前へ進める!!)ドロー!!!」

ドローするのと同時に箱が開き、まぶしい光が発生する。

光によって視界の自由が利かなくなった《幻影騎士団デッドサイス》はやむなくユートのフィールドへ戻っていく。

光を放ったのは赤い道化師の服で白いスカーフをつけた、赤と緑のオッドアイとなっている赤い髪の少年だ。

「俺がドローしたカードは《EMオッドアイズ・クラウン》だ!!」

遊矢はそのモンスターに感謝しながら、エクストラデッキへ送る。

 

EMクレイジーボックス

通常罠カード

(1):自分フィールド上に表側守備表示で存在する「EM」モンスターが攻撃対象となった時に発動できる。このターン、自分が受ける戦闘ダメージは0となる。

(2):相手の直接攻撃宣言時、墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。自分はデッキからカードを1枚ドローする。この効果でドローしたカードが「EM」Pモンスターの場合、そのカードを表側表示でエクストラデッキに戻すことでその攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了させる。この効果は(1)の効果が発動したターン、発動できない。

 

「防いだか…。だが、俺のフィールド上に2体のエクシーズモンスターがいる状況に変化はない。俺はこれでターンエンド」

 

ユート

手札6→0

ライフ4000

場 幻影騎士団デッドサイス(《デーモンの斧》《メテオストライク》装備 オーバーレイユニット1) ランク4 攻撃6500→5700

  幻影騎士団ブレイクソード(オーバーレイユニット2) ランク3 攻撃3000

  幻影騎士団の晩餐(永続魔法)

 

遊矢

手札2

ライフ4000

場 なし

 

「父さん…どこに!?」

近くに遊勝がいるのかと思い、周囲を見渡すが彼の姿は見えない。

ここにいるのは自分とユートだけだ。

(幻聴だったのか、今のは…?)

だが、幻聴とはこれほどはっきりと聞こえるものなのか?

それともただ無意識に自分に暗示をかけただけなのか?

そんな疑問が浮かぶが、今の遊矢にはそれを考えている時間はない。

「(とにかく、命がけで得たターンだ。必ずこの状況を突破して見せる!)俺のターン、ドロー!!」

 

遊矢

手札2→3

 

「え…?」

ドローしたカードを見て、遊矢が目を丸くする。

(こんなカード、見たことがないぞ!?入れた覚えもない!なんでそんなカードが…??)

先程の遊勝の声といい今ドローしたカードといい、不思議な出来事が次々と発生する。

そして、そのカードを見ていると首にぶら下げているペンデュラムが淡く光り、遊矢の脳裏に《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の声が聞こえる。

厳密に言えば、直感でそう思っただけで確証はないが。

(そのカードを手にしたか、榊遊矢)

「オッドアイズ…?」

(このカードがあれば、俺の力をさらに引き出すことができる。だが忘れるな。力に飲まれたならば、今度はためらいなくお前の命をもらう)

低く、威厳のある声で遊矢を威圧する。

ドローしたカードを見ている遊矢は静かに目を閉じる。

「そうだな…デュエルでみんなを笑顔にするって誓ったからな。俺は手札から魔法カード《オッドアイズ・フュージョン》を発動!!このカードはドラゴン族専用の融合カードだ!」

「その2枚の手札で融合召喚するのか…?」

「いいや、俺が融合素材にするのは…エクストラデッキの《覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン》と《EMオッドアイズ・クラウン》だ!」

「エクストラデッキのモンスターで融合だと!?」

まさかの効果に驚くユートに遊矢は説明する。

「このカードは相手フィールド上にモンスターが2体以上存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しないとき、エクストラデッキに存在するオッドアイズモンスターを2体まで素材にすることができるんだ!お楽しみはこれからだ!!」

エクストラデッキから虹色の光が発生し、《覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン》と《EMオッドアイズ・クラウン》がフィールドに飛び出してくる。

そして、2体のモンスターはその光が生み出した渦の中へ消えていく。

「二色の眼を持つ道化師よ、怒りの眼輝けし竜と一つとなりて、新たな力を生み出さん!融合召喚!雷鳴纏いし疾風の竜、《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》!!」

4枚の白い翼を得て、緑色の肉体に変化した《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が遊矢の周囲を旋回する。

 

オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

「この瞬間、《オッドアイズ・クラウン》の効果発動!このカードを融合素材とした融合モンスターの攻撃力はターン終了時まで700ポイントアップする!」

 

オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン レベル7 攻撃2500→3200

 

EMオッドアイズ・クラウン

レベル3 攻撃1500 守備1000 闇属性 魔法使い族

【Pスケール:青3/赤3】

(1):自分フィールド上に存在する「オッドアイズ」モンスターの攻撃力・守備力が400ポイントアップする。

【モンスター効果】

(1):このカードがフィールド・エクストラデッキに表側表示で存在する場合、カード名を「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」として扱い、種族をドラゴン族として扱うことができる。

(2):このカードを融合素材として「アイズ」ドラゴン族融合モンスターの融合召喚に成功した時に発動する。そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで700アップする。

 

「これが《オッドアイズ》の新たな姿…」

「《ボルテックス・ドラゴン》の効果発動!このカードの特殊召喚に成功した時、相手フィールド上に表側攻撃表示で存在するモンスター1体を手札に戻すことができる!ライトニング・トルネード!!」

4枚の翼に稲妻が宿り、大きくはためく。

それと同時にユートのフィールドに嵐が発生し、稲妻が《幻影騎士団デッドサイス》の体にまとわりつく。

動きを封じ込めれた死神は嵐によって吹き飛ばされていく。

(《デッドサイス》は戦闘で破壊された時、オーバーレイユニットとなっている闇属性モンスター1体を特殊召喚できる。だが、これでは効果を発動できない)

 

幻影騎士団デッドサイス

ランク4 攻撃2000 守備1800 エクシーズ 闇属性 戦士族

闇属性レベル4モンスター×2

「幻影騎士団デッドサイス」の(1)の効果はフィールド上に表側表示で存在する限り1度しか使用できない。

(1):自分の魔法・罠・モンスター効果によって自分LPを失ったターンに発動できる。その数値分、自分LPを回復させる。その後、回復したLPの数値分このカードの攻撃力をアップさせる。

(2):このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。このカードのX素材となっている闇属性モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。

 

「バトルだ!《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》で《幻影騎士団ブレイクソード》を攻撃!!轟け、雷光のスパイラルバースト!!」

《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》の口から雷鳴の宿った竜巻が放たれ、《幻影騎士団ブレイクソード》の鎧と大剣を半径2センチのかけらになるほどバラバラに粉砕していく。

「くうう…!!」

 

ユート

ライフ4000→3800

 

「この瞬間、《ブレイクソード》の効果発動。このカードがフィールドから離れたとき、オーバーレイユニットとなっているモンスターを可能な限り俺のフィールド上に特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターのレベルは4となる」

《幻影騎士団ブレイクソード》だったものの上に2つの青い炎が生まれ、それらがかけらを分け合う。

そして、その姿をオーバーレイユニットとなっていた2体のモンスターに変化していく。

 

幻影騎士団ダスティローブ レベル3→4 守備1000

幻影騎士団ラギッドグローブ レベル3→4 守備500

 

「よし、これでユートのモンスターはすべて倒した!!俺はこれで、ターンエンド!」

 

ユート

手札0

ライフ3800

場 幻影騎士団ダスティローブ レベル4 守備1000

  幻影騎士団ラギッドグローブ レベル4 守備500

  幻影騎士団の晩餐(永続魔法)

 

遊矢

手札3→2

ライフ4000

場 オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン レベル7 攻撃3200→2500

 

確かに遊矢は2体のエクシーズモンスターを倒すことができた。

しかし、フィールドにはレベル4となった幻影騎士団が2体いる。

更に遊矢は《オッドアイズ・フュージョン》を発動した際、自分のエクストラデッキを確認している。

その際、入れているはずの《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》がないことが分かった。

おそらく、ユートのエクストラデッキにあると思われる。

(《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》は1ターンに1度、このカード以外のカード効果が発動した時、俺のエクストラデッキに表側表示で存在するペンデュラムモンスターをデッキに戻すことでその効果を無効にし、破壊することができる。けど、今の俺のエクストラデッキにはペンデュラムモンスターはない…)

このままいけば、《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》の召喚と効果発動を許してしまうことになる。

だが、今の遊矢にはそれを阻止する手がない。

「俺のターン、ドロー」

 

ユート

手札0→1

 

「俺はレベル4となっている《ダスティローブ》と《ラギッドグローブ》でオーバーレイ!漆黒の闇より愚鈍なる力に抗う反逆の牙!今、降臨せよ!エクシーズ召喚!現れろ!ランク4!《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》!」

ユートのフィールドに彼のエースである《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》が現れる。

本来の主の元に一時的であるとはいえ戻ることができたためか、その漆黒の竜は上空に向けて激しく咆哮する。

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ランク4 攻撃2500

 

「やっぱり、《ダーク・リベリオン》はユートのデッキに!!」

「《ラギッドグローブ》の効果で、攻撃力が1000アップする」

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ランク4 攻撃2500→3500

 

「俺は《エクシーズ・ドラゴン》の効果を発動!オーバーレイユニットを2つ取り除くことで、相手フィールド上に存在するモンスター1体の攻撃力を半分奪う。トリーズン・ディスチャージ!!」

展開された翼部から放たれる雷鳴の糸。

それに拘束され、上空を舞う《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》が地に落ちる。

 

オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン レベル7 攻撃2500→1250

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ランク4 攻撃3500→4750

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・幻影騎士団ダスティローブ

・幻影騎士団ラギッドグローブ

 

「バトルだ。俺は《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》で《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》を攻撃!」

槍のように鋭い牙を前面に押し立て、地でもがく《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》を襲う。

「反逆のライトニング・ディスオベイ!!」

徐々にスピードを高めていく反逆の竜の牙に紫色の稲妻が宿る。

そして、牙が二色眼の天空竜の胴体を貫くと、その稲妻が体内で炸裂する。

「うわあああああ!!」

稲妻の余波が容赦なく遊矢を襲い、包帯に包まれた傷を焼く。

 

遊矢

ライフ4000→500

 

「うう、ううう…」

焦げ臭い匂いが遊矢の鼻に危険を伝える。

包帯を見ると、傷が開いたためか、包帯に血の色がついている。

しかし、それがユートに負けを認める理由とはならない。

口に付着した血をオレンジ色のリストバンドでふき取る。

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

 

ユート

手札1→

ライフ3800

場 ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ランク4 攻撃4750

  伏せカード1

  幻影騎士団の晩餐(永続魔法)

 

遊矢

手札2

ライフ500

場 なし

 

「そうだ、遊矢。立ち上がれ。そして自分の心に従って戦え。何があっても」

「ユート…」

「君の手札にあるカードは分かっている。そのカードを使い、《ダーク・リベリオン》を斬れ」

遊矢の手札のうちの1枚がわかっているかのような口ぶりだ。

何のカードのことを言っているのか、遊矢は分かっている。

「これで少なくとも、《ダーク・リベリオン》は暴走しない。君に従うはずだ。《オッドアイズ》のように。そして、最初に宣言しておく。俺のフィールドにセットされているカードは罠カード《エクシーズ・ブラスト》。このカードは俺のフィールド上に存在するエクシーズモンスターが相手モンスターの攻撃によって破壊された時、相手フィールド上に存在する攻撃表示モンスター1体を破壊し、相手に1000ダメージを与える」

わざと自分の伏せカードの内容を宣言する。

まるで、遊矢にあのモンスターの召喚を求めているかのようだ。

 

エクシーズ・ブラスト

通常罠カード

(1):自分フィールド上に存在するXモンスターが相手モンスターの攻撃によって破壊され墓地へ送られた時、相手フィールド上に表側攻撃表示で存在するモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを破壊する。その後、相手に1000ダメージを与える。

 

「俺のターン、ドロー…」

 

遊矢

手札2→3

 

「俺は手札から魔法カード《おろかな埋葬》を発動。その効果で、俺はデッキから《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を墓地へ送る。そして、手札から魔法カード《オッドアイズ・リバース》を発動!蘇れ、《オッドアイズ》!!」

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

オッドアイズ・リバース

通常魔法カード

「オッドアイズ・リバース」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分の墓地に存在する「オッドアイズ」「EM」Pモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。

(2):このカードを発動した時、自分Pゾーンに「魔術師」Pカードが2枚存在する場合、このターン、「オッドアイズ」モンスターは相手の魔法・罠カードの効果を受けない。

 

「そして、手札から《PCM-シルバームーン・アーマー》を発動!」

発動と同時に、ユートが優しい笑みを浮かべる。

そして、目を閉じて攻撃を受ける覚悟を決める。

「月の光よ、今こそ憎悪の心を鎮め、魂を救済する刃を生み出せ。ペンデュラムエクシーズチェンジ!!月の鎧纏いし二色の眼、《MLX-オッドアイズ・月下・ドラゴン》!!」

 

MLX-オッドアイズ・月下・ドラゴン ランク7 攻撃2500

 

「《オッドアイズ・月下・ドラゴン》はライフが1000以下で相手モンスターを攻撃したダメージステップ終了時、戦った相手モンスターを破壊し、そのモンスターの攻撃力分のダメージを与える。更に、このカードはライフ1000以下の時、戦闘では破壊されず、俺が受ける戦闘ダメージは0となる…」

「来い、遊矢!!」

《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》が翼部を展開し、稲妻を纏った牙を遊矢に向ける。

そして、《MLX-オッドアイズ・月下・ドラゴン》は刀を抜く。

「バトルだ!!《オッドアイズ》で《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》を攻撃!!月光のムラマサ・スラッシュ!!」

「迎え撃て、《エクシーズ・ドラゴン》!!反逆のライトニング・ディスオベイ!!」

2体の竜が咆哮し、牙と刀をぶつけ合う。

2つの拮抗した力が衝突し、すさまじい風圧が2人を襲う。

2体が上空で距離を取ると、時速70キロ近くのスピードで2体がすれ違う。

《MLX-オッドアイズ・月下・ドラゴン》が刀を鞘に納めると、《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》の牙から稲妻が消え、その黒き肉体を地に落とした。

 

ユート

ライフ3800→0

 

「ユート!!うわああああ!!」

吹き飛ばされたユートの傍へ行こうとする遊矢だが、彼の視界を白い光が包み込む。

「遊矢、君の魂が力を取り戻した。すぐに君は元の場所で目を覚ます」

「ユート!?お前、今どこへ…!?」

周囲を見渡すも、ユートの姿が見えない。

彼の声だけが聞こえてくる。

「遊矢、俺はずっと君と一緒にいる。デュエルでみんなに笑顔を…」

 

「う、うう…!!」

光が消えると、真っ白な天井が視界に飛び込んでくる。

白い照明が光っているところ以外は最初に目覚めた場所と同じだ。

服装と体は元のままで、右手には何かやわらかくて暖かな感触がする。

横に顔を向けると、柚子が椅子に座り、遊矢の手を握ったままうつぶせで眠っている。

「遊矢…」

寝言で彼の名前を呼ぶ柚子。

「目を覚ましたわね、遊矢」

「母さん…?」

金髪で緑色のシャツと白い長ズボンをはいた女性が入ってきて、遊矢は彼女に声をかける。

彼女は榊洋子、かつて舞網クイーンズというレディースを率いていた不良デュエリストだったという噂のある、遊矢の母親だ。

「あんた、心配したわよ。バトルロワイヤルが終わった後、3日も寝ていたのよ」

「3日も…」

「柚子ちゃんに感謝しなさい。この子、ずっとここであんたが目覚めるのを待っていたのよ」

「柚子…」

眠っている柚子の手をこちらからも優しく握る。

そうしていると、再び睡魔が彼を襲う。

「今はゆっくり休みなさい。そして、ちゃんと傷を治して…」

洋子が言い終わらぬ間に遊矢は眠ってしまった。

その顔にはわずかに笑みがこぼれていた。

 

そして、再びLDSデュエルフィールド。

「うう、悔しい!!モグモグ…」

悔しげな表情を浮かべる伊織がサンドイッチを食べている。

あの後、あのガーダーという男に結局負けてしまった。

そして、彼曰く自分を倒せないようではランサーズとして戦えないらしい。

「こうなったら絶対にリベンジしてやるーー!翔太君、サンドイッチのお変わりは?」

伊織が手を伸ばすが、翔太のそばにあるランチボックスにはもうサンドイッチは1つもない。

「キュイ!」

急にビャッコが鞄からみたらし団子を出す。

「わあ、ありがとうビャッコちゃん!!」

「問題は…あいつか」

伊織が嬉しそうにみたらし団子を口にしている間、翔太は再びフィールドに目を向ける。

フィールドでは現在、里香とラインマンがデュエルを行っている。

 

(現在は里香のターンのドローフェイズ)

ラインマン

手札1

ライフ3300

場 ボルテック・バイコーン(《リビングデッドの呼び声》の影響下) レベル7 攻撃2500

  森の番人グリーン・バブーン レベル7 攻撃2600

  リビングデッドの呼び声(永続罠)

 

里香

手札4

ライフ100

場 伏せカード1

 

「ウチのターン、ドロー!!」

 

里香

手札4→5

 

「ウチの新しい力、見せたる!!ウチはスケール1の《剣聖の影霊衣-セフィラセイバー》とスケール7の《炎獣の影霊衣―セフィラエグザ》でペンデュラムスケールをセッティング!!」

白銀の翼を宿し、黒い袈裟姿で氷の剣と盾を装備した銀髪の若い術士と同じ翼を宿し、赤い岩石でできた鎧と炎の爪を装備している青い竜人が里香の左右で光の柱を生み出す。

「これでウチはレベル2から6までのモンスターを同時に召喚可能や!ペンデュラム召喚!現れるんや、ウチのモンスター!!《影霊衣の舞姫》、《灼熱の影霊衣―セフィラフレア》、《影霊衣の術士シュリット》!!」

氷の鎖と透き通った透明な鏡がついた杖を装備している、青い袈裟で赤い髪の少女とペンデュラムゾーンにいる2体と同じ翼を持った、体の左半分が炎、右半分が氷の魔石で構築されている石人形と《影霊衣の術士シュリット》が同時に出現する。

 

影霊衣の舞姫 レベル4 攻撃1600

灼熱の影霊衣―セフィラフレア レベル7 攻撃2000

影霊衣の術士シュリット レベル3 攻撃300

 

「《セフィラフレア》はウチのペンデュラムゾーンに存在する2枚のカードがセフィラモンスターの場合、ペンデュラムスケールを無視してペンデュラム召喚することができるモンスターや。《セフィラフレア》の効果発動!このモンスターがペンデュラム召喚に成功した時、ウチのフィールド上に存在する影霊衣モンスターをリリースすることで、リリースしたモンスターのレベルの合計以下のレベルの影霊衣儀式モンスター1体をデッキから儀式できるんや!!」

「何!!?」

「ウチがリリースするんは《舞姫》と《セフィラフレア》、《シュリット》!!」

《灼熱の影霊衣―セフィラフレア》が咆哮し、両拳を地面にたたきつける。

すると、3体の影霊衣モンスターが11個の氷の五芒星となり、それによって発生した地割れの中に入っていく。

「儀式召喚!!レベル11!!これがウチの決戦兵器、《sophiaの影霊衣》!!」

地割れの中から白い光が発生し、その光と共に紫色の薄い踊り子の着物を着ていて、左手に白い光の球体、右手に紫の闇の球体を手にした《影霊衣の舞姫》が舞い踊りながらゆっくりと現れる。

 

sophiaの影霊衣 レベル11 攻撃3600

 

灼熱の影霊衣―セフィラフレア

レベル7 攻撃2000 守備2000 水属性 魔法使い族

【Pスケール:青4/赤4】

(1):1ターンに1度、自分が「影霊衣」儀式モンスターの儀式召喚に成功した時に発動できる。Pゾーンに存在するこのカードを破壊し、デッキからカードを1枚ドローする。

【モンスター効果】

(1):自分のPゾーンに存在する2枚のカードが「セフィラ」カードの場合、Pスケールを無視してP召喚することができる。

(2):このカードの召喚・P召喚に成功した時に発動できる。レベルの合計が儀式召喚するモンスターのレベル以上となるように自分のフィールド上に存在する「影霊衣」モンスターを最大3体までリリースし、デッキから「影霊衣」儀式モンスター1体を儀式召喚する。

 

「デッキから儀式召喚だって!!?」

「このカードの効果は強烈やで!儀式召喚に成功した時、このカード以外のフィールド・墓地に存在するカードをすべてけし飛ばすんやからな!!」

「何!!?だが、その効果は他のモンスターの召喚・特殊召喚した時には…」

「おっと、せやったな。けどこのカードなら問題あらへん!罠カード《創星のカオス》を発動。ウチのフィールドにsophiaモンスターが存在するとき、ライフを半分支払うことでフィールド上に存在するそのモンスター以外のすべてのカードを吹き飛ばすんや!」

《sophiaの影霊衣》が空に向けて2つの球体を投げると、その場で静かに舞い始める。

2つの球体がその舞に反応するかのように1つとなり、巨大で灰色の渦が生まれる。

すると、そのモンスター以外のフィールド・墓地に存在するカードがその渦の中にすべて飲み込まれていった。

 

里香

ライフ100→50

 

創星のカオス

通常罠カード

(1):自分フィールド上に「sophia」モンスターが存在するとき、自分LPを半分支払うことで発動できる。フィールド上に存在する「sophia」モンスター以外のすべてのカードをゲームから除外する。

 

「これでガラ空きや!!《sophiaの影霊衣》でダイレクトアタック!!」

《sophiaの影霊衣》が右手に灰色の球体を生み出し、それをラインマンに向けて投擲する。

球体はゆっくりと彼の前までゆき、彼に伏せた瞬間大爆発を起こした。

「うわああああ!!!」

 

ラインマン

ライフ3300→0

 

「ウチの勝ちやーーー!!」

勝利した瞬間、里香は万歳しながら喜びを見せる。

これで彼女のランサーズ入りが確定した。

「ああ、いいなぁ里香ちゃん。よーし、翔太君!!私を鍛えて!」

「断る」

「えーーー!?こういう時は空気を読んで、よし、俺が鍛えてやるよってかっこよく決めないとー…」

「はいはい、俺がコテンパンにしてやるよ」

「コテンパンじゃなくってーーー!!」


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