「…おかしい…おかしすぎる」
「確かにそうだね…」
2人が《魔装鳥キンシ》に乗って第3コースを飛んで十数分。
未だに他の組とすれ違うことがない。
「伊織、今の順位を確認してくれ」
「うん。ええっと順位は…9位だって…ってええ!?」
「9位か…すれ違っていないことを考えると、1組が無様にも脱落したみたいだな…!?」
急に瓦礫が《魔装鳥キンシ》に向けて飛んでくる。
「ちっ…!!《キンシ》!!」
翔太の声に反応し、《魔装鳥キンシ》が瓦礫を避ける。
(あの瓦礫…間違いなくコースの物だな。それを投擲できるパワーのあるモンスターが…!)
地表を確認すると、ビークルモンスターと思われる《天狼王ブルー・セイリオス》が2人のデュエリストを乗せて疾走している。
乗っているのは宋時代の中国の武人が着用するような着物姿の男だ。
1人は緑色の頭巾をつけていて、もう1人は数珠を首にかけている。
「あれは…梁山泊塾の制服!!」
「梁山泊塾…それもデュエルの塾か!?」
「当然!プロ輩出量はLDSに続くほどの力があるけど勝つためには手段を選ばないって方針の…」
「ってことは、倒しても問題ない奴らだな。大体分かった」
デュエルディスクで彼らの詳細を確認する。
緑頭巾の男が林、数珠の男が花栄だ。
彼らだけで8組が倒されていて、そのうちの3組がコースアウトで脱落している。
「おい、もう6組がゴールしてるぜ?この状況だと、俺たちのどちらかが脱落ってことになりそうだな」
高度を下げ、翔太が彼らを挑発する。
「そういうことになるな。だが、それは貴様らを倒せば問題のないこと!!」
林がそういうと同時に、花栄がコース上にある石を拾い、翔太に向けて投擲する。
「そういうやり方な…。なら、徹底的にできるな」
投擲された石を掴み、あきれたように2人を見る。
そして、《魔装鳥キンシ》が再び高度を上げていく。
「(《キンシ》なら、ある程度自動で動いてくれる。アクシデントが無い限りは…)伊織、一緒にやるぞ」
「え…!?う、うん!」
自分に操縦を任せるだろうと、準備を整えていた伊織がびっくりする。
「俺たちのライフは心もとない。それに、最低野郎とはいえ、かなりの力量なんだろ?」
「イ…イエッサー!」
少しだけ敬礼したのを見ると、翔太が《魔装鳥キンシ》から飛び降りる。
「え…えーーーーー!!!?」
「奴め、何を!?」
飛び降り、落下していく翔太を《魔装鳥キンシ》が掴む。
両肩を掴まれたことで、翔太はつるされる形になる。
「(これで、伊織に空間的なゆとりができる)いくぞ、最低野郎」
「「デュエル!!」」
翔太&伊織
手札
翔太2
伊織2
ライフ500
場 伏せカード1
魔装鳥キンシ(ビークルモンスター)
林&花栄
手札
林3
花栄2
ライフ2800
場 なし
天狼王ブルー・セイリオス(ビークルモンスター)
「俺のターン!俺は手札から魔法カード《貪欲な壺》を発動。墓地から5体のモンスターをデッキに戻し、デッキからカードを2枚ドローする」
翔太
手札2→3
墓地からデッキに戻ったカード
・魔装獣剣スイモウ
・魔装亀テンセキ
・魔装鳥ガルーダ
・魔装騎士ペイルライダー
・魔装獣ユニコーン
「(よし…!)俺はスケール2の《魔装槍士タダカツ》にスケール9の《魔装剣士ムネシゲ》でペンデュラムスケールをセッティング!これで俺はレベル3から8のモンスターを同時に召喚可能。来たれ、時の果てに眠りし英雄の魂。希望の道を照らし、勝鬨を上げろ!ペンデュラム召喚!!現れろ、俺のモンスターたち!!手札から《魔装騎士ペイルライダー》、エクストラデッキから《魔装槍士ロンギヌス》!!」
魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500
魔装槍士ロンギヌス レベル3 攻撃800
「攻撃力2500と800か…」
「悪いがお前らのような奴とのデュエルは楽しめないからな、さっさと消え失せろ。2体の魔装モンスターでダイレクトアタック!」
《魔装騎士ペイルライダー》の光剣と《魔装槍士ロンギヌス》の聖なる槍がビークルモンスターである《天狼王ブルー・セイリオス》を切り裂こうとする。
しかし、突然現れたスラスターつきのかかしが2体を妨害する。
「ちっ…《速攻のかかし》か!!」
「そうだ、これでお前のバトルフェイズは終了だ」
「俺はこれでターンエンド」
翔太&伊織
手札
翔太3→0
伊織2
ライフ500
場 魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500
魔装槍士ロンギヌス レベル3 攻撃800
魔装槍士タダカツ ペンデュラムスケール青2
魔装剣士ムネシゲ ペンデュラムスケール赤9
伏せカード1
魔装鳥キンシ(ビークルモンスター)
林&花栄
手札
林3
花栄2→1
ライフ2800
場 なし
天狼王ブルー・セイリオス(ビークルモンスター)
「私のターン」
林
手札3→4
「私は手札から魔法カード《テイク・オーバー5》を発動。デッキの上から5枚のカードを墓地へ送る」
デッキから墓地へ送られたカード
・炎王の強襲
・貪欲な壺
・立炎星-トウケイ
・死者蘇生
・微炎星―リュウシシン
「更に手札から魔法カード《炎舞―「天璣」》を発動。このカードは発動した時、デッキからレベル4以下の獣戦士族モンスター1体を手札に加えることができる。またこのカードが発動している限り、私のフィールド上に存在する獣戦士族モンスターの攻撃力を100ポイントアップさせる。私はデッキから《暗炎星―ユウシ》を手札に加える。そして、手札から《熱血獣士ウルフバーグ》を召喚!」
熱血獣士ウルフバーグ レベル4 攻撃1600→1700
「このカードは1ターンに1度、自分の墓地の獣戦士族・炎属性・レベル4モンスター1体を特殊召喚することができる。私は墓地から《微炎星―リュウシシン》を特殊召喚」
杖から9匹の炎の竜を召喚している、暗い緑の軽鎧の男が現れる。
微炎星―リュウシシン レベル4 攻撃1800→1900
「私はレベル4の《リュウシシン》と《ウルフバーグ》でオーバーレイ!義人の魂宿りし王、炎の導き手となりて再臨せよ!エクシーズ召喚!ランク4!《魁炎星王-ソウコ》!!」
オーバーレイネットワークから青い炎の獅子が飛び出し、その口から獅子のような髪型の白髪で真紅の武人鎧、そして青い炎を宿した刀を持った王が現れる。
魁炎星王-ソウコ ランク4 攻撃2200→2300
「炎星デッキ…でいいんだよな?あいつのは」
「うん。炎舞カードを利用して展開と除去を行うのが得意なデッキだよ!!」
「《ソウコ》の効果発動。このカードのエクシーズ召喚に成功した時、デッキから炎舞カード1枚をセットすることができる。私はデッキから《炎舞―天璇》をセットする。天魁星の導き!」
急に上空が夜空となり、108個の星が現れる。
そして、その中の1つが永続罠カードに変化してフィールドにセットされる。
「《天璇》は発動時に私のフィールド上に存在する獣戦士族モンスター1体の攻撃力をターン終了時まで700ポイントアップさせる。そして、表側表示で存在する限り私のフィールド上に存在する獣戦士族モンスターの攻撃力を300ポイントアップさせる。更に、《ブルー・セイリオス》のビークル効果発動。1ターンに1度、私のターンにカード効果でセットされた魔法・罠カードはそのターンに発動することができる」
「何!?」
「私は《ソウコ》の効果で伏せた《炎舞―「天璇」》を発動する!!」
《炎舞―「天璇」》の力でさらに刀の炎が燃え上がり、闘志を高めていく。
魁炎星王-ソウコ ランク4 攻撃2300→3300
「攻撃力3300!?」
今の翔太たちのライフは500。
このまま《魁炎星王-ソウコ》が攻撃したらどうなるかは明らかだ。
「バトル!《ソウコ》で《魔装槍士ロンギヌス》を攻撃!天魁星の炎!」
燃え上がる刀を両手で持ち、《魔装槍士ロンギヌス》を一刀両断しようとする。
「罠発動、《ドレインシールド》!相手モンスター1体の攻撃を無効にし、その攻撃力分俺たちのライフを回復させる」
緑色の障壁が刀とぶつかり合い、それにより発生する波動が翔太たちをいやしていく。
翔太&伊織
ライフ500→3800
「ちっ…そのようなカードを!!私はカードを1枚伏せ、ターンエンド」
翔太&伊織
手札
翔太0
伊織2
ライフ3800
場 魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500
魔装槍士ロンギヌス レベル3 攻撃800
魔装槍士タダカツ ペンデュラムスケール青2
魔装剣士ムネシゲ ペンデュラムスケール赤9
魔装鳥キンシ(ビークルモンスター)
林&花栄
手札
林4→1(《暗炎星―ユウシ》)
花栄1
ライフ2800
場 魁炎星王-ソウコ(オーバーレイユニット2) ランク4 攻撃3300→2600
炎舞―「天璣」(永続魔法)
炎舞―「天璇」(永続罠)
伏せカード1
天狼王ブルー・セイリオス(ビークルモンスター)
なんとか絶体絶命の状況を回避することができ、《魁炎星王-ソウコ》の攻撃力は2600に下がった。
《魔装騎士ペイルライダー》は戦った相手モンスターを破壊する効果を持っている。
《ドレインシールド》で回復したライフがあれば、多少のダメージはどうにでもなる。
「伊織、頼んだぞ」
「ラジャー!私のターン、ドロー!!!」
伊織
手札2→3
「私は手札から《E・HEROブレイズマン》を召喚!」
E・HEROブレイズマン レベル4 攻撃1200
「このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから《融合》を1枚手札に加えるよ!」
《融合》を手札に加えると同時に、急に伊織が立ち上がる。
「伊織…何をする気だ?」
「うーん、今まで融合召喚するとき、ポーズとかとってなかったでしょ?」
「どうでもいいな、さっさとデュエルを進めろ」
「ノンノンノン。こういう時こそかっこいいポーズが必要じゃん。特にHEROを出すときはさ」
「はあ…」
恰好など気にしたことのない翔太には伊織の理論が全く理解できず、頭を抱えるだけだった。
「私は手札から魔法カード《融合》を発動!私が融合素材にするのは《ブレイズマン》と手札の《スカイランナー》!炎の切り込み隊長よ、神速の美少女よ、今こそ1つになりて、新たなヒーローに進化せよ!」
2体のモンスターが融合の渦にのまれると、左腕を腰の位置へ、右腕を左斜め上方向へ伸ばす。
「融合召喚!」
右腕を円を描くようにして、右斜め上へもっていき、右腕を腰の位置へ、左腕を右斜め上へ伸ばすと同時に叫ぶ。
「現れて、竜巻の王者、《E・HERO Great TORNADO》!!うーん、決まり!!」
E・HERO Great TORNADO レベル8 攻撃2800
「…くだらねえ」
「ひどっ!!もっと他に言いようがあるでしょ!?」
「くだらねえものはくだらねえ。その一言で終わりだろ?」
「くぅぅぅ…今度はもっとかっこいいポーズをして…」
(なんでそういう発想になる??本当に…おかしな女だ)
「《Great TORNADO》の効果発動!このカードの融合召喚に成功した時、相手フィールド上のモンスターの攻撃力・守備力を半分にするよ。タウン・バースト!!!」
《E・HERO Great TORNADO》が鉤を振るうと同時に巨大な竜巻が生まれ、林のフィールドを包み込む。
魁炎星王-ソウコ ランク4 攻撃2600→1300
(よし…!これで《ソウコ》を倒すことができるが…)
翔太は前のターンに林が伏せたカードをじっと見る。
仮のそのカードが《聖なるバリア―ミラーフォース》だったら、《E・HERO Great TORNADO》と《魔装騎士ペイルライダー》が破壊されるが、《魔装騎士ペイルライダー》はペンデュラム召喚ですぐに復活でき、切り返しが可能。
更に、《魔装剣士ムネシゲ》のペンデュラム効果により《魔装騎士ペイルライダー》を1ターンに1度だけ破壊から守ることができる。
《次元幽閉》であっても、次の攻撃で《魁炎星王-ソウコ》を倒すことができる。
「バトル!《Great TORNADO》で《魁炎星王-ソウコ》を攻撃!スーパー・セル!!」
《E・HERO Great TORNADO》の鉤に風が凝縮されていく。
「甘い…。《ブルー・セイリオス》のもう1つのビークル効果を発動!」
「えーーー!?もう1つのビークル効果??」
「ビークル効果は1つだけとは限らない。《ブルー・セイリオス》は1度だけ発動できるビークル効果がある。俺のフィールド上にセットされている永続魔法カードを相手ターンの間、永続罠カード扱いにして発動することができる!その効果を使い、《炎舞―「揺光」》発動!このカードは発動時、手札の獣戦士族モンスター1体を捨てることで、相手フィールド上に表側表示で存在するカード1枚を破壊する」
「ちっ…!あいつの手札には《炎舞―「天璣」》で手札に加えた《ユウシ》がいる」
「そうだ。俺は《ユウシ》を墓地へ送り、《Great TORNADO》を破壊する!」
《炎舞―「揺光」》から虎を模した高熱の炎が発射される。
炎は《E・HERO Great TORNADO》を貫くとともに、その肉体を炎で炭化させる。
「更にこのカードが表側表示で存在する限り、俺のフィールド上に存在する獣戦士族モンスターの攻撃力を100ポイントアップさせる」
魁炎星王-ソウコ ランク4 攻撃1300→1400
「まだまだ!!私は《ペイルライダー》で《ソウコ》を攻撃!!」
《魔装騎士ペイルライダー》がミサイルランチャーを召喚すると、それで誘導ミサイルを数発発射する。
1発目から3発目は回避に成功した《魁炎星王-ソウコ》だが、4発目は背後から迫ってきたために避けることができず、撃破された。
林&花栄
ライフ2800→1700
「やった!!《ソウコ》を倒せた!!」
「その程度で勝った気になるな!俺は《魁炎星王-ソウコ》の効果を発動!このカードがフィールドから離れたとき、俺のフィールド上に表側表示で存在する炎舞カードを3枚墓地へ送ることができる!」
3枚の炎舞カードが炎と化し、巨大な中華風の門を形作っていく。
「そして、デッキから同じ攻撃力を持つレベル4以下のモンスターを2体守備表示で特殊召喚する。《英炎星-ホークエイ》と《捷炎星-セイヴン》を特殊召喚」
鷹を模した炎と共に黒い長髪で宋時代の副指揮官が装備していたと思われる鎧と兜を装備した弓使いとカラスを模した炎を肩に乗せた《英炎星-ホークエイ》とよく似た髪型の戦士が炎の門から出てくる。
英炎星-ホークエイ レベル3 守備1500
捷炎星-セイヴン レベル3 守備1800
「一気にレベル3のモンスターを2体デッキから召喚するだと!?」
「あうう…けど、《タダカツ》のペンデュラム効果を発動するよ!!」
《魔装槍士タダカツ》が蜻蛉切を天に掲げると、ミサイルランチャーが消滅し、キャノン砲が新たに装着される。
「《タダカツ》のペンデュラム効果は俺のフィールド上に存在するペンデュラムモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊した時、続けてもう1度だけ攻撃することができる」
「じゃあ、今度は《英炎星-ホークエイ》を攻撃!!」
キャノン砲から弾丸がドリル状に回転しながら発射される。
避けられぬと悟った《英炎星-ホークエイ》は矢で応戦するが、弾丸は矢を砕き、そのまま彼の胴体を貫いていった。
「《英炎星-ホークエイ》の効果発動。このカードが相手によって破壊された場合、デッキから炎舞と名のつく魔法カード1枚をセットすることができる。俺はデッキから《炎舞―「天枢」》をセットする」
「私はカードを1枚伏せて、《ロンギヌス》を守備表示に変更。これで、ターンエンド!」
翔太&伊織
手札
翔太0
伊織3→0
ライフ3800
場 魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500
魔装槍士ロンギヌス レベル3 攻撃800→守備0
魔装槍士タダカツ ペンデュラムスケール青2
魔装剣士ムネシゲ ペンデュラムスケール赤9
伏せカード1
魔装鳥キンシ(ビークルモンスター)
林&花栄
手札
林1→0
花栄1
ライフ1700
場 捷炎星-セイヴン レベル3 守備1800
伏せカード1(《炎舞―「天枢」》)
天狼王ブルー・セイリオス(ビークルモンスター)
「花栄…あとは任せる」
「ああ…儂のターン、ドロー」
花栄
手札1→2
「更に《テイク・オーバー5》の効果を発動。このカードを墓地から除外することで、デッキからカードを1枚ドロー」
花栄
手札2→3
「儂は永続罠《炎舞―「天枢」》を発動!このカードが存在する限り、儂らは通常召喚に加えて1度だけ獣戦士族モンスター1体を召喚できる。儂は手札から《炎星師-チョウテン》と《孤炎星-ロシシン》を召喚!」
他の炎星モンスターと異なり、自らの肉体が紫色の炎となっている魔導士とイノシシを模した紫色の炎を召喚できる鋼の錫杖を持った太った破戒僧が現れる。
炎星師-チョウテン レベル3 攻撃500(チューナー)
孤炎星-ロシシン レベル4 攻撃1100(チューナー)
「更に《チョウテン》の効果を発動。このカードの召喚に成功した時、儂の墓地から守備力200以下の炎属性・レベル3モンスター1体を守備表示で特殊召喚することができる。儂は墓地から《立炎星-トウケイ》を特殊召喚!」
《炎星師-チョウテン》が上空の108の星の1つに紫色の炎を放つと、上空から鶏を模した紫色の炎を宿した2本の短槍を持つ黒い鎧の男が降りてくる。
立炎星-トウケイ レベル3 守備100
「《トウケイ》の効果発動。このカードが炎星モンスターの効果で特殊召喚に成功した時、デッキから炎星モンスター1体を手札に加えることができる。儂はデッキからもう1体の《暗炎星―ユウシ》を手札に加える。儂はレベル3の《トウケイ》と《セイヴン》にレベル3の《チョウテン》をチューニング!」
「レベル9のシンクロモンスター!!?」
《炎星師-チョウテン》が紫色の炎でできた3つの輪となり、2体の炎星モンスターがその中に入っていく。
「水滸の伝説を刻みし隠者、混沌の影より今こそ前へ!シンクロ召喚!!現れよ、《炎星師-シタイアン》!!」
紫色の炎でできた書物と刀を手にした、元時代の文官風の服装で長い白髭の老人が現れる。
彼が現れると、《孤炎星-ロシシン》が静かに彼にひざまずく。
炎星師-シタイアン レベル9 攻撃2800
(おお…!!ここで梁山泊塾の花栄選手がシンクロ召喚だぁーーー!!)
「《炎星師-シタイアン》の効果発動。このカードのシンクロ召喚に成功した時、墓地に存在する炎舞カード2枚をセットする!」
《炎星師-シタイアン》が空白のページに《炎舞―「天璇」》と《炎舞―「揺光」》のイラストを描きこむ。
すると、花栄の目の前にその2枚のカードがセットされた状態で復活する。
「《セイヴン》の効果発動!このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、デッキから炎舞と名のつく魔法カード1枚をフィールド上にセットすることができる。儂はデッキから《炎舞―「天璣」》をセットする!」
「このターンだけで3枚の炎舞カードを!?」
「それだけじゃねえな…《ブルー・セイリオス》のビークル効果がある」
「そうだ。このカードのビークル効果は1ターンに1度、自分のターンにカード効果でセットされた魔法・罠カードをそのターンに発動させることができる。儂は《炎舞―「揺光」》を発動!手札の《暗炎星―ユウシ》を墓地へ送り、《魔装剣士ムネシゲ》を破壊する!」
「ちっ…直接ペンデュラムゾーンのカードを破壊しに来たか!」
虎を模した高熱の炎が《魔装剣士ムネシゲ》に襲い掛かる。
高温の炎によって、盾をドロドロに溶かされた《魔装剣士ムネシゲ》には守るだけの力は残されておらず、そのまま撃破された。
「ちっ…フィールド上のペンデュラムモンスターは墓地へは行かず、エクストラデッキへ行く」
翔太は自らの手で《魔装剣士ムネシゲ》を伊織に投げ渡す。
カードを受け取った伊織は飛ばされないように気を付けながら、エクストラデッキに置く。
「また、《ロシシン》の効果を発動。1ターンに1度、エクストラデッキから炎星モンスターが特殊召喚された時、デッキから炎舞と名のつく魔法カード1枚をセットすることができる。儂は《炎舞―玉衡》をセットする。更に《シタイアン》の効果発動!1ターンに1度、フィールド上に存在する炎舞カード1枚を墓地へ送ることで、手札・デッキ・墓地からレベル4以下の炎星モンスター1体を特殊召喚することができる!儂は《炎舞―「揺光」》を墓地へ送り、墓地から《暗炎星―ユウシ》を特殊召喚する!」
暗炎星―ユウシ レベル4 攻撃1600
炎星師-シタイアン
レベル9 攻撃2800 守備2200 シンクロ 炎属性 獣戦士族
「炎星」チューナー+チューナー以外のモンスター2体以上
(1):このカードのS召喚に成功した時、自分の墓地に存在する「炎舞」魔法・罠カードを2枚を対象に発動できる。そのカードを自分フィールド上の魔法・罠ゾーンにセットする。
(2):1ターンに1度、自分フィールド上に存在する「炎舞」魔法・罠カード1枚を墓地へ送ることで発動できる。自分の手札・デッキ・墓地からレベル4以下の「炎星」モンスター1体を特殊召喚する。
「レベル4の《ユウシ》と《ロシシン》でオーバーレイ!天間星より転生を果たした英雄よ、道術をもって危機を吹き飛ばさん。エクシーズ召喚!!ランク4!《間炎星-コウカンショウ》!!」
紅冠鳥を模した青い炎を腕に乗せ、白と赤の道着を着た仙人が姿を現す。
間炎星-コウカンショウ ランク4 攻撃1800
「レベル9のシンクロモンスターとランク4のエクシーズモンスターだと!?」
「それだけではない。《コウカンショウ》の効果発動!オーバーレイユニットを2つ取り除くことで、儂のフィールド・墓地に存在する炎星、または炎舞カード合計2枚と相手の墓地、または相手フィールド上に表側表示で存在するカード合計2枚をデッキに戻す!」
「何!!?」
《間炎星-コウカンショウ》が持つオーバーレイユニットをすべてとりこんだ紅冠鳥が激しい突風を発生させる。
すると、フィールド上の《魔装騎士ペイルライダー》と《魔装槍士タダカツ》が伊織のデッキへ追放されていく。
「くそ…俺のデッキならともなく、伊織のデッキに…」
墓地からデッキに戻ったカード
・立炎星-トウケイ
・捷炎星-セイヴン
取り除かれたオーバーレイユニット
・孤炎星-ロシシン
・暗炎星―ユウシ
「更に、炎舞カードの効果は儂のフィールド上に存在する獣戦士族モンスターの攻撃力を100ポイントアップさせる」
間炎星-コウカンショウ ランク4 攻撃1800→1900
炎星師-シタイアン レベル9 攻撃2800→2900
翔太と伊織のフィールドから伏せカード1枚以外のカードが失われた。
今の2人のライフは3800。
攻撃力1900の《間炎星-コウカンショウ》と攻撃力2900の《炎星師-シタイアン》の前では風前の灯。
「このデュエルもらった!!儂は《炎星師-シタイアン》でダイレクトアタック!!魔星の裁き!!」
《炎星師-シタイアン》が上空に剣を掲げると、108つの星が紫色に輝き始める。
そして、翔太たちに向けてすさまじい勢いで落下を始めた。
「うわあああ!!」
「キャアアア!!」
翔太&伊織
ライフ3800→900
「まともに受けたか…!!さあ、とどめを刺せ!《コウカンショウ》!!」
《間炎星-コウカンショウ》の手から風の弾丸が発射される。
「伊織!!」
「う、うん!!罠発動!《ガード・ブロック》!!この戦闘で受ける戦闘ダメージを0にして、デッキからカードを1枚ドローするよ!」
翔太たちを透明な障壁が守護し、伊織はカードを引く。
伊織
手札0→1
「ええい…しのぎきるとは。儂はこれでターンエンド!」
翔太&伊織
手札
翔太0
伊織1
ライフ900
場 魔装鳥キンシ(ビークルモンスター)
林&花栄
手札
林0
花栄3→1
ライフ1700
場 間炎星-コウカンショウ ランク4 攻撃1900
炎星師-シタイアン レベル9 攻撃2900
炎舞―「天枢」(永続罠)
伏せカード3(《炎舞―「天璇」》《炎舞―玉衡》《炎舞―「天璣」》)
天狼王ブルー・セイリオス(ビークルモンスター)
(今の俺の手札は0。そして、《ペイルライダー》達は伊織のデッキの中…)
翔太はカードをドローするしぐさを見せることなく、伊織を見る。
(ビークルデュエルの場合、必ずしもパートナーと交代する必要はない。伊織…)
翔太の視線に気づいた伊織はニコッと笑顔を見せる。
(ちっ…この状況でも笑うのか)
「私のターン、ドロー!」
伊織
手札1→2
「更に《テイク・オーバー5》を墓地から除外して1枚ドロー!」
伊織
手札2→3
「私は手札から魔法カード《黄金の錬金書》を発動!このカードはサイコロを1回振って、その後で私のデッキの上から6枚を除外する!そして、その中に存在するモンスターの数が出た目と同じの時は私が、違う場合は相手が出た目の数だけカードをドローするよ!」
「何…!?」
「伊織…そんなカードを!!?」
確率的に考えると、《黄金の錬金書》は相手に大量ドローを許してしまいがちで多くのデュエリストが敬遠するカード。
デッキ破壊やグリードバーンならばともかく、伊織の場合は除外を利用できるカードが《平行世界融合》しかない。
「(お願い…私のHERO!私の翔太君のウィニングロードを…!!)いくよ!!」
伊織はサイコロを振る。
出た目が6で、伊織はそのままデッキの上から6枚のカードを確認する。
「1枚目!《E・HEROフォレストマン》!!」
「2枚目!《E・HEROフレイムバッシャー》!!」
「3枚目!《E・HEROスノーフェアリー》!!」
「4枚目!《E・HEROグランドメイサー》!!」
「5枚目!《E・HEROシャドーウィンド》!!」
「何…!?」
「そんな…バカなことが…!?」
まだ6枚目の確認は済んでいないが、上から5枚がすべてモンスターになっていることに2人は驚きを隠せない。
実を言うと、翔太も驚いている。
(確かに、絶対に起こらないということはないが…このタイミングでそれが起こるのか!?)
(あと1枚…お願い!!!)
祈るように、伊織が最後の1枚を確認する。
「来たーーーーー!!!6枚目は《魔装騎士ペイルライダー》!!!よって、私はデッキから6枚をドロー!!」
伊織
手札3→8
黄金の錬金書(小説オリカ)
(1):サイコロを1回振る。自分のデッキの上からカードを6枚ゲームから除外する。この効果で除外されたモンスターカードの数が出た目と同じ場合、自分は出た目の数だけドローする。この効果で除外されたモンスターカードの数が出た目の違う場合、相手は出た目の数だけドローする。
「そして、私はスケール2の《E・HEROホワイトフェンサー》とスケール7の《E・HEROブラックセイバー》でペンデュラムスケールをセッティング!」
「何!?彼女までペンデュラムモンスターを!!?」
伊織の左側には茶色い長髪で青い金属でできたレイピアを装備する白と赤のドレスを着た少女が、右側には漆黒の服で左手には青白い長剣、右手には黒い長剣を持っている黒い短髪の戦士が現れ、光の柱を生み出す。
「更に、ここで《魔装鳥キンシ》のビークル効果を発動するよ!このカードは1ターンに1度、フィールド上のペンデュラムモンスターのスケールを1つ変化させるよ!私はこの効果で《ブラックセイバー》のペンデュラムスケールを8に!!」
E・HEROブラックセイバー ペンデュラムスケール7→8
「これで、レベル3から7のモンスターを同時に召喚可能!みんなを守るため、遠い異世界からただいま参上!ペンデュラム召喚!!」
翔太と同様、振り子のエフェクトは発生しないものの、上空からモンスターが召喚される。
「《E・HEROオーシャン》!」
三日月を模した杖を持つイルカの戦士。
E・HEROオーシャン レベル4 攻撃1500
「《E・HEROシャドー・ミスト》!」
青い長髪以外の全身を黒いアーマーで包んだ戦士。
E・HEROシャドー・ミスト レベル4 攻撃1000
「《E・HEROエッジマン》!」
E・HEROエッジマン レベル7 攻撃2600
「そして…これが私の新しいHERO!《E・HEROセラフィム》!!」
最後の現れたのは腰まで届く金髪にエメラルドの様な緑色の瞳、頭には白いベレー帽、そして赤いネクタイが付いた白いセーラー服を着た少女だ。
E・HEROセラフィム レベル6 攻撃2400
「は…はうう…!!」
ペンデュラム召喚された《E・HEROセラフィム》が恥ずかしそうにしている。
「あれれ??《セラフィム》がしゃべってる?」
「こいつ…精霊か?」
「は…恥ずかしいので、説明は後にしてください…!」
顔を真っ赤にしながら、腰のホルスターに入れている2丁の銃を取り出す。
「まあ、俺にはどうでもいいことだな。伊織、さっさと決めろ」
「う…うん。私は《セラフィム》の効果を発動!このカードの特殊召喚に成功した時、相手フィールド上に表側表示で存在する特殊召喚されたモンスター1体を除外するよ!」
「何!?」
「い…いきます!!ディメンジョン・シュート!」
2丁の銃を合体させ、対物ライフル形態に変化させると魔法陣が刻まれた黒い弾丸を装填し、そのまま発射する。
弾丸が《炎星師-シタイアン》に命中すると、そのモンスターが姿を消してしまった。
E・HEROセラフィム
レベル6 攻撃2400 守備2000 光属性 戦士族
【Pスケール:青4/赤4】
「E・HEROセラフィム」のP効果は1ターンに1度しか発動できない。
(1):Pゾーンに存在するこのカードを破壊し、自分フィールド上に表側表示で存在する「HERO」融合モンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターの攻撃力をターン終了時まで1000ポイントアップさせる。
【モンスター効果】
「E・HEROセラフィム」はP召喚でしか特殊召喚できない。
「E・HEROセラフィム」のモンスター効果は1ターンに1度しか発動できない。
(1):このカードの特殊召喚に成功した時、相手フィールド上に表側表示で存在する特殊召喚されたモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターをゲームから除外する。
「更に《シャドーミスト》の効果発動!このカードの特殊召喚に成功した時、デッキからチェンジと名のつく速攻魔法カードを1枚手札に加える。私はデッキから《マスク・チェンジ》を手札に加えるよ!そして、《E・HEROホワイトフェンサー》のペンデュラム効果発動!閃光融合(ライトニング・フュージョン)!!」
《E・HEROホワイトフェンサー》がレイピアを天に掲げると、上空に《融合》特有の渦が現れる。
「自分がペンデュラム召喚に成功した時、自分フィールド上に存在するモンスターを素材にしてHEROと名のつく融合モンスター1体を融合召喚できるよ!私は《オーシャン》と《シャドー・ミスト》を融合!深海の偵察者よ、影の戦士よ、今こそ1つとなり、新たなヒーローに進化せよ!融合召喚!現れて、永久凍土の申し子、《E・HEROアブソルートZero》!!」
E・HEROアブソルートZero レベル8 攻撃2500
「ここで《E・HEROブラックセイバー》のペンデュラム効果発動!孤高の黒(アローフネス・ブラック!)」
《E・HEROブラックセイバー》が光の柱から出ると、2本の剣で《間炎星-コウカンショウ》のX状の切り傷を与える。
傷を負った《間炎星-コウカンショウ》が手でそれを抑えながら、その場に座り込む。
「このカードは1ターンに1度私がHEROの融合召喚に成功した時、相手モンスター1体の攻撃力をターン終了時まで半分にするよ!」
間炎星-コウカンショウ ランク4 攻撃1900→950
E・HEROホワイトフェンサー
レベル3 攻撃800 守備1200 光属性 戦士族
【Pスケール:青2/赤2】
「E・HEROホワイトフェンサー」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。
(1):もう片方の自分のPゾーンに「HERO」カードが存在しない場合、このカードのPスケールは3となる。
(2):自分がP召喚に成功した時に発動できる。自分フィールド上から「HERO」融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。
【モンスター効果】
(1):自分フィールド上に表側表示で存在するこのカードをリリースすることで発動できる。自分フィールド上に表側表示で存在する「HERO」モンスター1体はこのターン、相手プレイヤーに直接攻撃することができる。この効果を発動したターン、自分の「HERO」モンスター以外のモンスターは攻撃できない。
E・HEROブラックセイバー
レベル5 攻撃2000 守備800 闇属性 戦士族
【Pスケール:青7/赤7】
「E・HEROブラックセイバー」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。
(1):もう片方の自分のPゾーンに「HERO」カードが存在しない場合、このカードのPスケールは5となる。
(2):自分フィールド上に「HERO」融合モンスターが融合召喚された時、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を対象に発動できる。選択したモンスターの攻撃力をターン終了時まで半分にする。
【モンスター効果】
(1):相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上に融合モンスターが存在するとき、このカードは手札から特殊召喚することができる。
「バカな…!?」
「我々が…負ける!?認められるかぁ!!」
「いっけぇ!私のHEROた…!?」
伊織が攻撃宣言しようとする前に、《天狼王ブルー・セイリオス》が巨大化した紅冠鳥に乗り、翔太たちに直接攻撃しようとした。
「こうなれば、攻撃される前に貴様らをコースアウトしてやる!!」
「そんな…そこまで卑怯なことをして勝ちたいの!?」
「デュエルは勝つことこそすべて!勝てばよかろうなの…!!!?」
「くだらなすぎて、欠伸が出るぜ。雑魚」
次の瞬間、《天狼王ブルー・セイリオス》が翔太によって蹴り飛ばされる。
林と花栄は自分たちの敗北を受け入れられず、動揺したためか、バランスを崩して共に転落してしまう。
数秒後、路上には落下し気絶した2人の姿があった。
「全く…素直にとどめを刺されたらこうならずに済んだのにな」
「翔太君…どうする?まだ相手のライフは残ってるけど…」
「ほっとけ。こいつらはデュエリストじゃない。それに、もう再起不能で病院行だ」
「う、うん…」
「いくぞ、ゴールまであと少しだ」
《魔装鳥キンシ》がうなずき、ゴールへ向けて全力で進む。
ダメージにより、スピードは低下しているもののもう追ってくる相手はいない。
(翔太君…ちゃんとデュエリストとしてのプライドはあるんだ。感心感心)