「はーい、ビャッコちゃん。お昼御飯だぞー♪」
「キュイーーー!!」
昼になってホテルへ戻ると、伊織は和菓子屋の屋台で購入した厄除け団子をビャッコに食べさせる。
ちなみに、今のビャッコは猫ではなく元の姿だ。
一方、翔太は近くのファーストフード屋で購入したハンバーガーを口にする。
「もー、翔太君。せっかく愛知まで来たんだから、ここでしか食べれないものを食べようよー?」
「腹に入ったら全部同じだろ?」
「ハンバーガーばっかりだと栄養偏るよ?ほら!!」
伊織は袋から厄除け饅頭を翔太に見せる。
「食わない」
「えーー?優勝祈願だと思って食べてよー」
「お前が食べればいいだろ?」
「…」
頬を膨らませた伊織が団子を食べ終えたビャッコを抱き上げる。
「ビャッコちゃん、お願い!」
「キュイ!!」
「何する…!!?」
翔太の口が勝手に開く。
ビャッコの目はなぜか青く光っていた。
「ビャッコ…こんな力が…!?」
「ありがとねー。さあ、観念せい!!」
伊織が翔太の口に厄除け団子を入れると、今度は口が勝手に閉じる。
(…本当にコイツ、俺のモンスターか?)
恨めしそうにビャッコを見ながら、翔太は口を動かした。
(さあさあ、昼の休憩は終わりだ!!これから2回戦第10試合が始まる!!さあ、デュエリストの登場だーーー!!)
「さあ行こう!翔太君!!」
「はあ…言われなくてもな」
団子のことを根に持つ翔太が伊織とともに赤コーナーに出る。
それに対し、対戦相手であるオブライエン兄弟が青コーナーに出てきた。
「兄さん、奴らはジョンソンを除くと大きな不安材料だ」
「問題ない。もし相手が危険ならば、隠し球を使えばいい」
「だがあれは本選のために…」
「相手が相手なら、それも仕方がないだろう?」
(今回のフィールドは…これだーーーー!!フィールド魔法《辺境の牙王城》発動!!!」
中央に古代の岩城が中央にある森が現れる。
そして、MCがデュエル開始の宣言をする。
「戦いの殿堂に集いしデュエリストたちが…モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い、フィールド内を駆け巡る!見よ、これぞ、デュエルの最強進化形、アクション…」
「「「「デュエル!!」」」」
伊織&翔太
手札
伊織5
翔太5
ライフ4000
ボマー&オスロ
手札
ボマー5
オスロ5
ライフ4000
「私の先攻!私は手札から《E・HEROフレイムバッシャー》を召喚!」
炎を宿した刀を差した野武士が姿を現す。
頭髪と無精髭、そして目の色は赤く、手甲にも炎は宿っている。
E・HEROフレイムバッシャー レベル4 攻撃1800
(《フレイムバッシャー》…。伊織の新しいHEROか)
「更に、私は手札から《E・HEROスノーピクシー》の効果発動!このカードと私のフィールドのE・HERO1体を素材に融合召喚することができる!」
黒い長髪と瞳、そして真っ白な花びらのようなドレスと雪の結晶を模した髪飾りが特徴的な妖精が現れ、《E・HEROフレイムバッシャー》と共に融合していく。
「炎の野武士よ!雪の妖精よ!今こそ1つになりて、新たなヒーローに進化せよ!融合召喚!現れて、永久凍土の申し子、《E・HEROアブソルートZero》!!」
E・HEROアブソルートZero レベル8 攻撃2500
E・HEROスノーピクシー
レベル3 攻撃200 守備200 効果 水属性 天使族
「E・HEROスノーピクシー」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。
(1):エクストラデッキに存在する融合モンスター1体を選択して発動できる。融合素材として手札に存在するこのカードと自分フィールド上に存在する「E・HERO」モンスター1体を墓地へ送ることで、その融合モンスター1体を融合召喚する。
(《融合》なしで融合召喚…)
「更に融合素材になった《フレイムバッシャー》の効果発動!このカードを融合素材とした融合モンスターの攻撃力は400ポイントアップして、更に貫通効果もゲット!」
《E・HEROアブソルートZero》の拳に炎が宿る。
仲間の炎であるためか、体を覆う氷は解けることがない。
E・HEROアブソルートZero レベル8 攻撃2500→2900
E・HEROフレイムバッシャー
レベル4 攻撃1800 守備200 効果 炎属性 戦士族
(1):このカードは「HERO」融合モンスター以外のモンスターの融合素材にすることができない。
(2):このカードを融合素材として融合召喚に成功した時、そのモンスターを対象に発動する。そのモンスターの攻撃力は400ポイントアップする。更に、守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
今回、伊織が新たに手にしたE・HERO達は施設の子供たちが誕生日プレゼントとして小遣いをためて手に入れたカードだ。
その新しいHERO達は融合に更に特化していて、それが彼女のデッキの爆発力を高めている。
「そしてこのカードは通常召喚できないけど、私のフィールドにHEROと名のつく融合モンスターが存在するとき、手札から特殊召喚できるよ!《E・HEROスカイランナー》を特殊召喚!」
胸元が開いた白い服と緑のマントを装備した金髪の少女が現れる。
伊織の前に立つと、腰にさしていた長剣を抜く。
E・HEROスカイランナー レベル3 攻撃1200
「更にこのカードの特殊召喚に成功した時、デッキ・墓地から融合またはフュージョンと名がつく魔法カード1枚を手札に加えることができるよ。私はデッキから《ミラクル・フュージョン》を手札に加えるよ!」
E・HEROスカイランナー
レベル3 攻撃1200 守備1000 効果 風属性 戦士族
このカードは召喚できない。
自分フィールド上に「HERO」融合モンスターが表側表示で存在するとき、手札から特殊召喚できる。
「E・HEROスカイランナー」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。
(1):このカードの特殊召喚に成功した時、デッキ・墓地から「フュージョン」、「融合」魔法カード1枚を手札に加える事ができる。
「そして、《ミラクル・フュージョン》発動!このカードは墓地とフィールドのモンスターを素材にE・HEROを融合召喚するよ!墓地の《スノーピクシー》と《フレイムバッシャー》を融合!炎の野武士よ!雪の妖精よ!今こそ1つになりて、新たなヒーローに進化せよ!融合召喚!現れて、紅蓮の申し子、《E・HEROノヴァマスター》!!」
E・HEROノヴァマスター レベル8 攻撃2600
「そして、このカードも《フレイムバッシャー》の効果を受けるよ!」
E・HEROノヴァマスター レベル8 攻撃2600→3000
(最初のターンに2体の融合モンスター…。さすがだ、伊織)
「私はこれでターンエンド!さ、《Zero》!!力を貸して!!」
《E・HEROアブソルートZero》が待機中の水分を集め、それで氷の滑り台を作る。
「じゃあ翔太君、アクションカードを探してくるね」
軽く肩をたたくと、伊織は滑り台を滑り、森の中へ入って行った。
伊織&翔太
手札
伊織5→2
翔太5
ライフ4000
場 E・HEROスカイランナー レベル3 攻撃1200
E・HEROノヴァマスター(《E・HEROフレイムバッシャー》の影響下)レベル8 攻撃3000
E・HEROアブソルートZero(《E・HEROフレイムバッシャー》の影響下) レベル8 攻撃2900
ボマー&オスロ
手札
ボマー5
オスロ5
ライフ4000
場 なし
「3体のE・HEROか…」
城のベランダから伊織の動きを見る。
彼女の左右を守るように《E・HEROノヴァマスター》と《E・HEROアブソルートZero》が展開し、《E・HEROスカイランナー》が上空でアクションカードを探し続ける。
「オスロ、アクションカードを探せ。可能であれば、それで援護を頼む」
「了解だ、兄さん」
いつの間に森の中にいたオスロはデュエルディスクで通信を受けると、走り始める。
「私のターン!」
ボマー
手札5→6
「私は手札から魔法カード《融合》を発動」
「ええ!?あの人も融合を…?」
「手札の《ヴォルカニック・バレット》と《トラップ・リアクター・RR》を融合する」
薄い緑色で目がなく、手足のある炎を纏った小さなワニ型モンスターと人間と戦闘機が融合したかのような緑色の機械が現れ、融合する。
「灼熱の弾丸よ!罠を撃ちぬく機銃よ!今こそ1つとなりて、敵に張り付く爆弾となれ。融合召喚!現れろ、《起爆獣ヴァルカノン》!!」
起爆獣ヴァルカノン レベル6 攻撃2300
「ウゲゲ…!!」
《起爆獣ヴァルカノン》の姿を見て伊織の顔が青くなる。
「《ヴァルカノン》の効果発動。このカードの融合召喚に成功した時、このカードと相手モンスター1体を破壊し、破壊した相手モンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える!」
《起爆獣ヴァルカノン》が《E・HEROアブソルートZero》に張り付くと、尾が点火する。
「融爆!!」
爆発までのタイムラグは5秒。
伊織は木の枝に引っかかっているアクションカードを取り、発動する。
「アクション魔法《透明》!!私のモンスター1体はこのターン、相手のカード効果を受けず、その対象にもなら…」
《起爆獣ヴァルカノン》を引きはがし、透明になろうとした《E・HEROアブソルートZero》が突然発生した砂嵐に飲み込まれ、姿が隠せなくなる。
「何!?そういえば…」
翔太は自らの迂闊さに舌打ちする。
伊織のターンの間にオスロがすでにアクションカード捜索に森へ入ったことに気付いていなかったのだ。
そして、オスロが今どこにいるのか森のせいで分からない。
「アクション魔法《砂嵐》。バトルフェイズ中の間に相手が発動したアクションカードの発動を無効にし、破壊する」
「これで《アブソルートZero》は隠れることはできない。散れ!!!」
再び取りついた《起爆獣ヴァルカノン》。
それと同時に大爆発し、燃え上がる《E・HEROアブソルートZero》と共に森へ落ちる。
「キャア!!」
「伊織!!」
伊織&翔太
ライフ4000→1100
透明(アニメオリカ)
アクション魔法カード
(1):自分フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。このターンそのモンスターは相手の効果の対象にならず、効果も受けない。
(なんという見事なプレー!!伊織選手の切り札、《E・HEROアブソルートZero》を葬り、更に2900ものダメージを与えたぞーーーー!!)
《E・HEROアブソルートZero》にはフィールドから離れたときに相手フィールド上のモンスターをすべて道連れにする効果がある。
しかし、《起爆獣ヴァルカノン》無き今彼らのフィールドにはモンスターがいない。
「手札から《リアクター・リペアラー》を召喚」
赤いゴーグルをつけ、緑色の帽子と作業着をつけたエンジニアの老人が姿を現す。
リアクター・リペアラー レベル3 攻撃1300
「このカードをリリースすることで、手札・墓地からリアクターモンスター1体を特殊召喚できる。私は《トラップ・リアクター・RR》を特殊召喚!」
《リアクター・リペアラー》が《起爆獣ヴァルカノン》の残骸で《トラップ・リアクター・RR》の修復を行う。
修復を受けた《トラップ・リアクター・RR》は《リアクター・リペアラー》を乗せて飛行し始める。
トラップ・リアクター・RR レベル4 守備1800
リアクター・リペアラー
レベル3 攻撃1300 守備1700 チューナー 闇属性 機械族
「リアクター・リペアラー」の(1)の効果はメインフェイズ1にのみ発動できる。
(1):このカードをリリースすることで発動できる。手札・墓地から「リアクター・リペアラー」以外の「リアクター」モンスター1体を特殊召喚する。
「そして私は手札から魔法カード《闇工房との取引》を発動。手札の闇属性・機械族・レベル5以上モンスター1体を墓地へ送り、デッキからカードを2枚ドローする。そしてカードを1枚伏せ、ターンエンド」
手札から墓地へ送られたカード
・サモン・リアクター・AI
闇工房との取引
通常魔法カード
(1):手札の闇属性・機械族・レベル5以上モンスター1体を墓地へ送ることで発動できる。デッキからカードを2枚ドローする。
伊織&翔太
手札
伊織2
翔太5
ライフ1100
場 E・HEROスカイランナー レベル3 攻撃1200
E・HEROノヴァマスター(《E・HEROフレイムバッシャー》の影響下)レベル8 攻撃3000
ボマー&オスロ
手札
ボマー6→1
オスロ5
ライフ4000
場 トラップ・リアクター・RR レベル4 守備1800
伏せカード1
(《トラップ・リアクター・RR》…。リアクターモンスターをフィールドに残すわけにはいかないな…)
召喚や発動に反応して相手に効果ダメージを与えるのがリアクターモンスターの特徴だ。
《起爆獣ヴァルカノン》の効果で大ダメージを折った翔太と伊織にはこれ以上ダメージを受ける余裕はない。
そして、《トラップ・リアクター・RR》には1ターンに1度相手が罠カードを発動した時、そのカードを破壊して相手に800ポイントのダメージを与える効果を持つ。
罠カードの効果自体は無効にならないが、今の状態では2度その効果を受けたらお陀仏だ。
「俺のターン!」
翔太
手札5→6
「(まずは《トラップ・リアクター・RR》をたたく!)俺は手札から《魔装陰陽師セイメイ》を召喚!」
「キュイーー!!」
《魔装陰陽師セイメイ》の肩の上にいるビャッコが嬉しそうな鳴き声をする。
「おーい、ビャッコちゃーん!!」
「キューー!!」
伊織が手を振ると、ビャッコも嬉しそうに手を振った。
魔装陰陽師セイメイ レベル3 攻撃1000(チューナー)
「…。俺は《セイメイ》の効果を発動。このカードの召喚に成功した時、手札から俺は手札からレベル4以下の魔装モンスター1体を特殊召喚できる。俺は手札から《魔装獣ユニコーン》を特殊召喚」
紙の人形に乗った《魔装獣ユニコーン》が翔太の隣に着陸する。
魔装獣ユニコーン レベル4 攻撃1600
「俺は《ユニコーン》と《セイメイ》を融合!」
「何!?奴も《融合》なしで融合召喚を行うのか!?」
「このカードはフィールド上の素材となるモンスターをリリースすることで融合召喚できる。妖魔を統べし術使よ、精錬されし一角獣よ、魔導の力によりて、今1つとならん。融合召喚!王家の獣、《魔装鳥獣グリフォン》!!」
融合召喚された《魔装鳥獣グリフォン》の背中に翔太は乗り、上空を飛行する。
魔装鳥獣グリフォン レベル6 攻撃2400
「このカードは1ターンに2度攻撃することができる。ただし、2度目の攻撃で発生する相手へのダメージは半分になる。バトルだ!俺は《グリフォン》で《トラップ・リアクター・RR》を攻撃。ノックダウン・ストライク」
《魔装鳥獣グリフォン》が更に高く飛び、そこから《トラップ・リアクター・RR》に向けて猛スピードで落下する。
「ならば…!!」
ボマーは城の中へ入り、窓にあるアクションカードを手にする。
「アクション魔法《奇跡》を発動。これで《RR》は破壊されない」
《トラップ・リアクター・RR》が煙幕弾を発射し、《魔装鳥獣グリフォン》の視界を封じる。
「ちっ…煙幕を吹き飛ばし、もう1度攻撃しろ!!」
翔太の命令を受けた《魔装鳥獣グリフォン》が風を起こして煙幕を払う。
そして、いつの間に距離を離した《トラップ・リアクター・RR》に向けて電撃を口から放つ。
「ふん…」
「何!?」
急に《トラップ・リアクター・RR》の前に黄土色で2つのプロペラがついた爆撃機と人間が融合したような形のモンスターが現れ、爆弾で電撃を相殺する。
「罠カード《フェイク・エクスプロージョン・ペンタ》を発動。このカードは相手の攻撃宣言時に発動でき、私のモンスターの戦闘による破壊を無効にする。そして手札・墓地から《サモン・リアクター・AI》を特殊召喚できる!」
サモン・リアクター・AI レベル5 攻撃2000
「このカードは1ターンに1度、相手がモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚した時、相手に800ポイントのダメージを与える。そしてこの効果を使用したターンに1度、相手モンスター1体の攻撃を無効にする」
「罠カードだけでなく、モンスターにまで爆弾を仕掛けたか!?なら先に《サモン・リアクター・AI》を破壊してやる!《ノヴァマスター》で《AI》を攻撃!バーニング・ナックル!」
《E・HEROノヴァマスター》が右拳に身にまとっていたすべての炎を宿す。
そして、飛び上がりながら《サモン・リアクター・AI》をアッパーで打ち砕いた。
「うぐおおお!!」
ボマー&オスロ
ライフ4000→3000
「ここで私はアクション魔法《祈祷》を発動!」
「お前いつの間に…」
なぜか全身びしょ濡れになっている伊織がアクションカードを発動する。
「このカードは相手にダメージを与えたとき、それと同じ数値だけ私たちのライフを回復させるんだよ!」
伊織&翔太
ライフ1100→2100
「これでライフ差は縮ま…」
伊織の笑顔は上空に目を向けたのと同時に固まる。
彼女の真上に破壊したはずの《サモン・リアクター・AI》が完全修復された状態で飛行していたのだ。
「またアクションカードか…!?」
「そうだ。どうやらオスロはアクション魔法《再生》を発動したようだ」
「《再生》は戦闘で自分のモンスターが破壊された時、そのモンスターを復活させる…」
サモン・リアクター・AI レベル5 攻撃2000
祈祷
アクション魔法カード
(1):相手にダメージを与えたときに発動できる。それと同じ数値分自分はLP回復する。
再生
アクション魔法カード
(1):戦闘で自分のモンスターが破壊され墓地へ送られたときに発動できる。そのモンスター1体を墓地から特殊召喚する。
(これぞアクションデュエルの醍醐味であるアクションカードの応酬!!伊織選手の《祈祷》で回復したと思ったら、オスロ選手の《再生》が兄の《サモン・リアクター・AI》を復活させたぞーーー!!)
「ちっ…!」
せっかく《祈祷》得た1000ポイントのライフだが、2体のリアクターモンスターの前では焼け石に水だ。
「俺は《ノヴァマスター》の効果を発動。このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した時、デッキからカードを1枚ドローする」
ドローしたカードを見て、翔太はわずかに笑みを浮かべる。
「おい、大男。お前の弟がこのターン発動したアクションカードは2枚だったな?」
「ボマーだ。開始前の放送で聴かなかったのか?まあいい…。確かにオスロは2枚のアクションカードをこのターン発動させた」
「そうか…なら俺は手札から速攻魔法《マジックコード:γ》を発動!こいつは相手が魔法カードを発動したターン、発動したカードの数だけフィールド上のモンスターを破壊する」
「何!?」
《サモン・リアクター・AI》と《トラップ・リアクター・RR》に五芒星が刻まれる。
そして2機は互いに照準を合わせ、機銃で互いに銃撃戦を始める。
数十秒の銃撃戦の末、2機は蜂の巣状態で墜落した。
「何!?私のリアクターモンスターが…!!」
「これでお前の壁モンスターはいないな?《E・HEROスカイランナー》でダイレクトアタック!」
《E・HEROスカイランナー》は猛スピードで森の中を飛び回り、アクションカードを探すオスロを発見する。
そして、手にしていた剣で彼を切り裂いた。
「うわああ!!」
ボマー&オスロ
ライフ3000→1800
マジックコード:γ
速攻魔法カード
「マジック・コード:γ」は1ターンに1度、相手が魔法カードを発動したターンにのみ発動できる。
(1):このカード相手が発動した魔法カードの数だけフィールド上に存在するモンスターを破壊する。
「やった!!これで逆転だー!」
「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド」
伊織&翔太
手札
伊織2
翔太6→3
ライフ2100
場 E・HEROスカイランナー レベル3 攻撃1200
E・HEROノヴァマスター(《E・HEROフレイムバッシャー》の影響下)レベル8 攻撃3000
魔装鳥獣グリフォン レベル6 攻撃2400
ボマー&オスロ
手札
ボマー1
オスロ5
ライフ1800
場 なし
「俺のターン!」
オスロ
手札5→6
「俺は手札から永続魔法《ブレイズ・キャノン》を発動。更に手札から魔法カード《ヴォルカニック・ドライブ》を発動。このカードは俺のフィールド上のブレイズ・キャノンと名のつく魔法・罠カード1枚を墓地へ送ることで、デッキから《ヴォルカニック・デビル》を召喚条件を無視して特殊召喚できる」
森の中に突然火柱が上がり、そこから燃え上がる脳が露出していて、一部の肉体が溶岩になっている悪魔が姿を現す。
召喚完了と同時に火柱がはじけ、多くの木々を焼き払っていく。
ヴォルカニック・デビル レベル8 攻撃3000
ヴォルカニック・ドライブ
通常魔法カード
「ヴォルカニック・ドライブ」は1ターンに1度しか発動できず、このカードを発動したターン自分は他のモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚することができない。
(1):自分フィールド上に表側表示で存在する「ブレイズ・キャノン」魔法・罠カード1枚を墓地へ送る。その後、自分のデッキ・墓地から「ヴォルカニック・デビル」1枚を選択し、召喚条件を無視して特殊召喚する。
(《ヴォルカニック・デビル》…ヴォルカニックデッキのエースモンスター!!)
何もない状況から、オスロは召喚条件に厳しい《ヴォルカニック・デビル》をいともたやすく特殊召喚した。
リアクターとヴォルカニック、まさに2人のデッキは効果ダメージを与え続けるまさにバーンダメージ地獄だ。
「バトルだ!!俺は《ヴォルカニック・デビル》で《スカイランナー》を攻撃!!ヴォルカニック・キャノン!!」
《ヴォルカニック・デビル》の口から巨大な燃える岩石が《E・HEROスカイランナー》に向けて発射される。
「ちっ…!!」
攻撃が届く前に翔太は木の一番上に引っかかっているアクションカードを取る。
「俺はアクション魔法《慈愛》を発動!このターン俺たちが受けるダメージはすべて0になる!!ただし、このカードを発動した次の俺たちのターンの終了時まで俺たちはアクションカードを手にすることができない」
火炎弾を受けた《E・HEROスカイランナー》が悲鳴を上げながら消滅する。
そして、《E・HEROノヴァマスター》と《魔装鳥獣グリフォン》が真下から発生した火砕流に飲み込まれる。
「《ヴォルカニック・デビル》は戦闘によって相手モンスターを破壊した時、相手モンスターを全滅させ、その効果で破壊したモンスター1体につき500ポイントのダメージを与える。もしお前が《慈愛》を発動していなければ、合計2800のダメージを受け、敗北していた」
「そして、俺たちのターンのバトルフェイズ中攻撃可能なモンスターはすべて《ヴォルカニック・デビル》を攻撃しなければならない」
「そうだ。《ヴォルカニック・デビル》を倒さない限り、お前たちは炎にのまれ続ける」
《魔装鳥獣グリフォン》から飛び降り、城のベランダに着陸した翔太。
彼の目の前にはボマーがいる。
慈愛
アクション魔法カード
(1):このターン、自分が受けるダメージはすべて0となる。このカードを発動してから次の自分のターン終了時まで、自分はアクションカードを手札に加えることができない。
「ボマー…」
「秋山翔太…」
互いに相手の目を見る2人。
「なるほど…言い目をしたデュエリストのようだな」
「良く言われる。あんたはさしずめ暑苦しいデカブツだろ?」
「生意気な口をこの状況でも叩けるとはな…」
「周りがうるさいやつばかりだからな、嫌でもこうなる」
わずかに会話をすると、翔太はベランダから飛び降り、ボマーは城内へ向かう。
翔太と伊織は《慈愛》の代償としてアクションカードを手にすることはできないが、探すことまで禁止されたわけではない。
何とか次のボマーのターンを生き延びるためのアクションカードの場所を把握しなければならない。
「俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド」
伊織&翔太
手札
伊織2
翔太3
ライフ2100
場 なし
ボマー&オスロ
手札
ボマー1
オスロ6→2
ライフ1800
場 ヴォルカニック・デビル レベル8 攻撃3000
伏せカード2
(何とか《慈愛》の効果で生き延びた翔太選手と伊織選手!!しかし、フィールドにはカードがなく伊織選手の手札はたったの2枚。この状況で《ヴォルカニック・デビル》を撃破することができるのかーーーー!!!?)
「私のターン、ドロー!!」
伊織
手札2→3
「伊織、俺がアクションカードを探す!!このターンの間は自分のカードのプレイに集中してろ」
ベランダにいたことで、翔太はオスロが今は森の東側にいることを知った。
としたら、今の状況では西側でアクションカードを探すしかない。
伊織の現在位置は森の東南部。
アクションカードを見つけたとしても、オスロに取られるのは目に見えている。
「翔太君…。私は手札から《E・HEROエアーマン》を召喚!」
E・HEROエアーマン レベル4 攻撃1800
「このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、デッキからHEROと名のつくモンスター1体を手札に加えるよ。私はデッキから《E・HEROグランドメイサー》を手札に!!更にこのカードがカード効果で手札に加わった時、ターン終了時まで公開することで、デッキ・墓地から《融合》を1枚手札に加えるよ」
ピンク色の髪で、胸の部分に赤いリボンがある赤と白が基調のドレスと鋼製のメイスを装備した少女が現れ、地面にメイスをたたきつける。
すると、彼女の目の前で地割れが発生してその中から《融合》が飛び出し、伊織の手札に加わる。
E・HEROグランドメイサー
レベル5 攻撃800 守備2000 効果 地属性 戦士族
「E・HEROグランドメイサー」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。
(1):このカードは「HERO」モンスター以外の融合素材とすることができない。
(2):このカードが自分のカードの効果で手札に加わった時、ターン終了時まで手札のこのカードを相手に見せることで発動できる。デッキ・墓地から「融合」を1枚手札に加える。
「そして、魔法カード《融合》を発動!手札の《グランドメイサー》と《ドラゴンガール》を融合!!」
《E・HEROグランドメイサー》と青い子供の翼龍を肩に乗せ、赤い服と黒いミニスカートを装備した茶色いツインテールの少女が上空に現れ、融合する。
「英雄の剣を作りし鍛冶屋よ!竜を愛でる少女よ!今こそ1つになりて、新たなヒーローに進化せよ!融合召喚!現れて、竜巻の王者、《E・HERO Great TORNADO》!!」
E・HERO Great TORNADO レベル8 攻撃2800
「《Great TORNADO》の効果発動!このカードの融合召喚に成功した時、相手フィールド上のモンスターの攻撃力・守備力を半分にするよ!ダウン・バースト!!」
《E・HERO Great TORNADO》の鉤に風が集まっていく。
「そうはさせない!!俺はカウンター罠《ヴォルカニック・バックファイア》を発動!このカードは俺のフィールドに《ヴォルカニック・デビル》が存在するとき、相手のモンスター効果を無効にし、破壊する!!」
「ええ…!?」
「更に、相手に800ポイントのダメージを与える!!」
《ヴォルカニック・デビル》が火炎弾を放つのと同時に《E・HERO Great TORNADO》が鉤を振るうと、巨大な竜巻が発生する。
《ヴィルカニック・デビル》から放たれた火炎弾は竜巻を貫き、《E・HERO Great TORNADO》の腹部を貫通する。
「キャアア!!」
伊織&翔太
ライフ2100→1300
ヴォルカニック・バックファイア
カウンター罠カード
(1):自分フィールド上に「ヴォルカニック・デビル」が存在するときに発動できる。相手のモンスター効果の発動を無効にし、破壊する。その後、相手に800ダメージを与える。
「うう…でもまだまだ!!私は融合素材にした《ドラゴンガール》の効果を発動!このカードを融合素材としてHEROと名のつく融合モンスターの融合召喚に成功した時、デッキからカードを2枚ドローして、その後で手札を1枚墓地へ送るよ!!」
手札から墓地へ送られたカード
・E・HEROシャドーウィンド
「私が手札から墓地へ送ったのは《E・HEROシャドーウィンド》!!このカードがカード効果で手札・デッキから墓地へ送られた時、デッキからチェンジと名のつく速攻魔法を1枚手札に加える!!」
伊織の手札に《マスク・チェンジ》が加わる。
E・HEROドラゴンガール
レベル3 攻撃500 守備500 効果 炎属性 戦士族
「E・HEROドラゴンガール」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。
(1):このカードを融合素材として「HERO」融合モンスターの融合召喚に成功した時、デッキからカードを2枚ドローし、手札を1枚墓地へ送る。
E・HEROシャドーウィンド
レベル3 攻撃1600 守備500 効果 闇属性 戦士族
「E・HEROシャドーウィンド」の(1)の効果はデュエル中1回しか発動できない。
(1):相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にカードが存在しないとき、デッキから「融合」1枚を手札に加えることで手札から特殊召喚することができる。
(2):手札・デッキに存在するこのカードが効果によって墓地へ送られたとき、デッキから「チェンジ」速攻魔法カードを1枚手札に加える。
「《マスク・チェンジ》だと…!?あの少女はまだ融合召喚を行うつもりか??」
「私は手札から速攻魔法《マスク・チェンジ》を発動!このカードで私のHERO1体を同じ属性のM・HEROに変身させるよ!!私は《エアーマン》を選択!疾風の戦士よ、今こそ風の力を宿し、新たなヒーローに進化せよ!変身召喚!《M・HEROカミカゼ》!!」
白いマントとバッタをモチーフとしたと思われるスーツと仮面をつけたHEROが颯爽とフィールドに参上する。
M・HEROカミカゼ レベル8 攻撃2700
「《カミカゼ》は戦闘では破壊されず、フィールドに存在する限り相手は1度のバトルフェイズにつき1回しか攻撃できないよ!」
「何!?」
《M・HEROカミカゼ》右手をかざすと、追い風が発生する。
その凄まじい勢いの風は《ヴォルカニック・デビル》の炎をわずかに吹き飛ばし、客席ギリギリのところにまで届いていく。
「そして手札から魔法カード《ヒーローズルール3-バーニング・ストライク》を発動!このカードは私のHEROと名のつく融合モンスターすべての攻撃力を1000ポイントアップさせるよ!」
《M・HEROカミカゼ》の右足の炎が宿る。
M・HEROカミカゼ レベル8 攻撃2700→3700
「攻撃力3700!?」
「バトル!!《カミカゼ》で《ヴォルカニック・デビル》を攻撃!必殺、神風火炎キーーーック!!」
《M・HEROカミカゼ》が空高く跳躍し、1回回転すると、《ヴォルカニック・デビル》に向けて炎が宿った右足で飛び蹴りをする。
落下スピードと炎によって大幅に威力が高まったその蹴りは《ヴォルカニック・デビル》を貫き、撃破した。
「く…!!」
ボマー&オスロ
ライフ1800→1100
「やったーー!《ヴォルカニック・デビル》撃破!!」
(よし…。予定通り俺の《ヴォルカニック・デビル》を破壊してくれた。これで俺たちの勝利条件が整う)
「更に私は《カミカゼ》の3つ目の効果を発動!このカードが戦闘で相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、デッキからカードを1枚ドローするよ。そして、カードを1枚伏せてターンエンド!」
伊織&翔太
手札
伊織3→0
翔太3
ライフ2100
場 M・HEROカミカゼ(《ヒーローズルール3-バーニング・ストライク》の影響下) レベル8 攻撃3700
伏せカード1
ボマー&オスロ
手札
ボマー1
オスロ2
ライフ1100
場 伏せカード1
「翔太君、これで勝利確定だよー!!」
「はあ…」
ご機嫌な伊織にため息をつく。
翔太は勝利を確信したデュエリストが敗北した光景をこれまで多く見てきたため、相手が勝ち誇った時が敗北の予兆となることを学んだ。
小言を言いたくなるが、今はデュエル中であるためやめておいた。
今の伊織の笑顔を可愛いと思ってしまったという理由もあるが…。
「私のターン」
ボマー
手札1→2
「私は手札から魔法カード《埋葬呪文の宝札》を発動。墓地に存在する魔法カード3枚を除外し、デッキからカードを2枚ドローする」
ボマー
手札2→3
墓地から除外された魔法カード
・砂嵐
・奇跡
・再生
「私は手札から魔法カード《テイク・オーバー5》を発動。デッキの上から5枚のカードを墓地へ送る」
デッキから墓地へ送られたカード
・マジック・リアクター・AID
・ジャイアント・ボマー・エアレイド
・エナジー・ボム
・リミッター解除
・融合
「《マジック・リアクター・AID》と《ジャイアント・ボマー・エアレイド》が墓地へ…?」
「そして私は手札から《チューニング・リアクター・SS》を召喚」
緑色の輪が3つ描かれた白い零戦のような形の戦闘機が現れる。
SSはおそらく、シンクロ召喚の略だろう。
チューニング・リアクター・SS レベル3 攻撃0(チューナー)
「このカードの召喚に成功した時、墓地からリアクターモンスター1体を特殊召喚できる。私は墓地から《サモン・リアクター・AI》を特殊召喚!」
《チューニング・リアクター・SS》が上空に向けて茶色い信号弾を発射する。
それに反応するかのように、どこからともなく《サモン・リアクター・AI》が現れ、並行飛行する。
サモン・リアクター・AI レベル5 攻撃2000
チューニング・リアクター・SS
レベル3 攻撃0 守備0 チューナー 闇属性 機械族
(1):このカードの召喚に成功した時、自分の墓地に存在する「リアクター」モンスター1体を対象に発動する。そのモンスターを攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。
「レベル5の《サモン・リアクター・AI》にレベル3の《チューニング・リアクター・SS》をチューニング!!闇したたる黄泉に沈みし戦船よ、怨念の碇を捨てて、光の世界に浮上せよ!シンクロ召喚!現れろ、《ダーク・フラット・トップ》!!」
急に上空が曇り空へと変わっていく。
「な、なんだよ??急に曇りになったぞ!?」
「でも、ここの天気は今は晴れだって…」
急な事態に観客たちが動揺する。
そして、その雲を破るかのように上空から飛行機の翼がついた黒い巨大な空母が降りてくる。
ダーク・フラット・トップ レベル8 守備3000
(なんとボマー選手!!ここで《ダーク・フラット・トップ》を召喚だーーー!!)
「《ダーク・フラット・トップ》の効果発動。1ターンに1度、私の墓地からリアクターモンスター、もしくは《ジャイアント・ボマー・エアレイド》を召喚条件を無視して特殊召喚できる!!」
「何!?」
「召喚条件を無視して《ジャイアント・ボマー・エアレイド》を!!?」
《ダーク・フラット・トップ》から3機のリアクターモンスターが次々に発進する。
そして、上空で3機がドッキングを行い、その姿を《ジャイアント・ボマー・エアレイド》へと変えていく。
ジャイアント・ボマー・エアレイド レベル8 攻撃3000
「バカな…!?蘇生制限をクリアしていないはずだ…」
「私は墓地の《エナジー・ボム》の効果を発動した。このカードが墓地に存在するとき、1度だけ機械族モンスターの蘇生制限を無視することができる」
エナジー・ボム
レベル1 攻撃0 守備0 効果 風属性 機械族
「エナジー・ボム」の(1)の効果はデュエル中1回しか発動できない。
(1):このカードが墓地に存在するときにのみ発動できる。自分の墓地に存在する機械族モンスターの蘇生制限を無視する。
「攻撃力3000!?でも、攻撃力3700の《カミカゼ》には届かないよ!」
「《ジャイアント・ボマー・エアレイド》の恐ろしさは攻撃力だけではない。《ジャイアント・ボマー・エアレイド》の効果発動。1ターンに1度、手札を1枚墓地へ送ることで相手フィールド上のカード1枚を破壊することができる。私は《カミカゼ》を破壊する!!デス・ドロップ!」
《ジャイアント・ボマー・エアレイド》が《M・HEROカミカゼ》の真上まで移動する。
そして、股関節部分についている《マジック・リアクター・AID》のミサイルを爆弾代わりに投下する。
《M・HEROカミカゼ》が降ってくるミサイルを避けるが、《ジャイアント・ボマー・エアレイド》のそれは大量に入っていて、避けても避けても襲ってくる。
「このままだと《カミカゼ》が…!!」
伊織は大慌てでアクションカードを探す。
そして、木陰に隠れていたアクションカードを手にする。
「やった!!これなら《カミカゼ》を…!?」
発動しようとすると、いつの間にアクションカードを手にしていたオスロが彼女の前にいる。
彼は彼女のアクションカードを見つつ、不敵な笑みを浮かべた。
(も…もしかしてオスロって人が持っているアクションカードって…)
伊織は以前手にしたアクションカード《透明》を思い出す。
そのカードを使われれば、今持っているアクションカードで《M・HEROカミカゼ》の破壊を防ぐことができない。
(うう…悔しいけど、これは発動できないよ!!)
伊織は悔しげに眼を閉じると同時に《M・HEROカミカゼ》はミサイルに接触して散った。
手札から墓地へ送られたカード
・サイバー・ドラゴン
「これでお前たちのフィールドからモンスターは消えた!この勝負は我ら兄弟の勝利だ!!《ジャイアント・ボマー・エアレイド》でダイレクトアタック!デス・エアレイド!!」
《ジャイアント・ボマー・エアレイド》が装備されているすべての機銃を乱射する。
「伊織!!」
「ト…罠発動!!《ヒーローズ・ガード》!!相手がダイレクトアタックするとき、デッキ・墓地からレベル4以下のHEROを守備表示で特殊召喚できる!私はデッキから《E・HEROフォレストマン》を特殊召喚!!」
伊織をかばうように《E・HEROフォレストマン》が現れ、その背中ですべての銃弾を受け止める。
「この効果で特殊召喚されたモンスターはこのターン、破壊されないよ!!」
機銃が撃ちやむと、《E・HEROフォレストマン》は背中の痛みに耐えながら《ジャイアント・ボマー・エアレイド》に対峙する。
ヒーローズ・ガード
通常罠カード
(1):相手モンスターの攻撃宣言時、自分のデッキ・墓地のレベル4以下の「HERO」モンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターを表側守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターはそのターン、戦闘及びカードの効果では破壊されない。
「よし…これでこのターンはなんとか…?」
「この程度で俺たちがターンを進めると思ったか?罠発動《フェネクス・ビッグ・エアレイド》。このカードは俺たちのフィールドにレベル8の機械族または炎族モンスターが2体以上存在するとき、エクストラデッキから《重爆撃禽ボム・フェネクス》を融合召喚することができる。ただし、この効果で特殊召喚された《ボム・フェネクス》はこのターン攻撃できない」
「ちっ…そのために《ダーク・フラット・トップ》を…」
《ダーク・フラット・トップ》が鳥をイメージさせる黒い戦闘機を発進させる。
発進し、離陸すると同時にその戦闘機が炎を纏い始め、最終的には《ジャイアント・ボマー・エアレイド》に匹敵するくらいの大きさの火の鳥へと変貌を遂げた。
重爆撃禽ボム・フェネクス レベル8 攻撃2800
フェネクス・ビッグ・エアレイド
通常罠カード
「フェネクス・ビッグ・エアレイド」は1ターンに1度、自分のターンにしか発動できない。
(1):自分フィールド上にレベル8の機械族・炎族モンスターが表側表示で2体以上存在する場合に発動できる。エクストラデッキから「重爆撃禽ボム・フェネクス」1体を融合召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターはこのターン、攻撃できない。
「くそ…このターンだけでレベル8モンスターを3体も…!!」
「《ボム・フェネクス》の効果発動!このカードは1ターンに1度、攻撃を放棄する代わりにフィールド上のカード1枚につき300ポイントのダメージを相手に与える!!今フィールドに存在するカードは合計4体のモンスター。よって、お前たちに1200ポイントのダメージを与える!!不死魔鳥大空襲(フェネクス・ビッグ・エアレイド)!!!」
《重爆撃禽ボム・フェネクス》が4発の爆発性のある火球を生み出し、翔太と伊織に向けて発射する。
その時、オスロは既に城まで退避していた。
「ちっ…これで森ごとアクションカードを灰にする気か!?」
「キャーーー!!怖いよ翔太君、助けてー!」
「俺のところへ来い!!岩を盾にしろ」
走り回る伊織の腕を引っ張り、大岩の後ろへ一緒に身を隠す。
4発中3発が岩石に命中し、そのたびにそれを熱で溶かしていく。
(本当に当たっていたら、死ぬよな…?このデュエル…」
伊織&翔太
ライフ2100→900
「私はこれでターンエンド」
伊織&翔太
手札
伊織0→1(うち1枚アクションカード)
翔太3
ライフ900
場 E・HEROフォレストマン レベル4 守備2000
ボマー&オスロ
手札
ボマー3→0
オスロ2→3(うち1枚アクションカード)
ライフ1100
場 ダーク・フラット・トップ レベル8 守備3000
ジャイアント・ボマー・エアレイド レベル8 攻撃3000
重爆撃禽ボム・フェネクス レベル8 攻撃2800
(これで一気に翔太選手と伊織選手のライフが900まで減った!!次のターン、再び《ボム・フェネクス》の効果が発動すると、オブライエン兄弟の勝利だーーーー!!!)
翔太と伊織を包囲するように3体のモンスターが展開する。
(今、オスロと伊織の手札にはアクションカードがある。そして、俺のフィールドには伊織が残した《フォレストマン》がいる)
翔太は自分の手札を見る。
(次にドローするカード次第だな。《フォレストマン》の効果が使えるか否かは)
ゆっくりとデッキトップに指を駆ける。
「俺のターン!!」
翔太
手札3→4
ドローしたカードを見て、翔太は笑みを浮かべる。
「俺はスタンバイフェイズ時に《フォレストマン》の効果を発動。このカードは俺のターンのスタンバイフェイズ時に1度、デッキ・墓地から《融合》を1枚手札に加えることができる。俺は墓地から《融合》を手札に加える」
「《融合》を…?」
「そして、俺は手札から《魔装獣剣スイモウ》を召喚」
白い手ぬぐいをバンダナのように頭に着け、右手には青い刀身の剣を持った青い獣人が現れる。
彼の目は黒く、顔に巨大な痣がある。
魔装獣剣スイモウ レベル3 攻撃1200
「このカードは相手プレイヤーに直接攻撃することができる。そして、直接攻撃したターン終了時に手札に戻る」
「やったー!!ボマーさんとオスロさんのライフは1100!この一撃で…」
「その程度、予測していなかったと思うか?私は《ジャイアント・ボマー・エアレイド》の効果発動!1ターンに1度相手がモンスターの召喚・特殊召喚、もしくはカードをセットした時、そのカードを破壊して相手に800ポイントのダメージを与える!シャープ・シューティング!!」
「何!?」
《ジャイアント・ボマー・エアレイド》から巨大なミサイルが発射される。
《魔装獣剣スイモウ》は剣で切り裂くが、中身は炸裂弾で、露出したと同時に爆発する。
「《スイモウ》!!くっ…!」
伊織&翔太
ライフ900→100
魔装獣剣スイモウ
レベル3 攻撃1200 守備0 効果 水属性 獣戦士族
(1):このカードは相手プレイヤーに直接攻撃することができる。
(2):このカードは直接攻撃を行ったターン終了時、持ち主の手札に戻る。
「その程度のカードで止められると思ったか?秋山翔太!!」
「かかったな、ボマー」
「何!?」
「俺は手札から魔法カード《融合》を発動。この効果で俺は手札の《ペイルライダー》、《ファーブニル》、《マゴイチ》を融合する!!死を司る第4の騎士よ!財宝を守る飛竜よ!天かける銃士よ!魔導の力によりて、今1つとならん。融合召喚!真紅の騎士、《魔装騎士レッドライダー》!!」
魔装騎士レッドライダー レベル8 攻撃3000
「出たーー!!《レッドライダー》!!…ってあれ?」
《魔装騎士レッドライダー》の召喚を喜ぶ伊織だが、翔太の目を見てキョトンとする。
「なんだよ?素直に喜べよ」
「ええっと、翔太君。なんで眼の色が変わってないの?」
「後で話す。《レッドライダー》の効果発動」
「えーーー!!ここで話してよーー!!」
広義の声を無視し、翔太はデュエルを続ける。
「このカードは俺のターンの間にモンスターの特殊召喚に成功した時、そのターンのバトルフェイズの間のみ攻撃力が1000ポイントアップする!」
魔装騎士レッドライダー レベル8 攻撃3000→4000(バトルフェイズ中のみ)
「攻撃力4000だと!?」
「バトルだ!俺は《レッドライダー》で《ボム・フェネクス》を攻撃!必殺真剣!!」
《魔装騎士レッドライダー》が大剣を一回転させると、そのまま《重爆撃禽ボム・フェネクス》めがけて跳躍する。
「くそ…!!俺はアクション魔法《訓練》を発動!このカードは相手モンスターと戦闘を行う時、戦闘を行う俺のモンスター1体の攻撃力・守備力をダメージ計算時のみ800ポイントアップする!」
「ええ…!?《透明》じゃなかったの??」
「ちっ…だからそのアクションカードを発動しなかったのか?」
《訓練》により、《重爆撃禽ボム・フェネクス》の炎の勢いが高まるが、《魔装騎士レッドライダー》をしのぐことができず、そのまま真っ二つにされた。
「ぐ…ぐおおおお!!」
重爆撃禽ボム・フェネクス レベル8 攻撃2800→3600(ダメージ計算時のみ)
ボマー&オスロ
ライフ1100→700
訓練
アクション魔法カード
(1):自分フィールド上のモンスターが戦闘を行う時に発動できる。そのモンスター1体の攻撃力・守備力をターン終了時まで800アップする。
「《ボム・フェネクス》は倒されたが、我々のライフは残っているぞ!」
「いや、これで終わりだ。《レッドライダー》は戦闘で相手モンスターを破壊した時、続けてもう1度だけ相手モンスターを攻撃できる」
「何!?」
《魔装騎士レッドライダー》の目が《ジャイアント・ボマー・エアレイド》に向けられる。
「《レッドライダー》で《ジャイアント・ボマー・エアレイド》を攻撃!!」
《ジャイアント・ボマー・エアレイド》のミサイルと機銃を大剣で防御しながら、《魔装騎士レッドライダー》は直進する。
そして、その巨体に肉薄すると大剣で一刀両断した。
切り裂かれた《ジャイアント・ボマー・エアレイド》は小さな爆発を複数回発生させると、残った弾薬に火が回ったことで大爆発を引き起こす。
「「うわああああ!!」」
ボマー&オスロ
ライフ700→0
「勝てた…。…!?」
《ジャイアント・ボマー・エアレイド》が消えるのと同時に翔太を激しい頭痛が襲う。
「こ…これは…あのモンスターが…記憶の鍵…!?」
翔太の目にある光景がフラッシュバックする。
オレンジ色の髪の赤ん坊を抱えた青い髪の女性が広いベランダを歩いている。
そのベランダがあるのは今デュエルを行ったフィールドにある城ではなく白いきらびやかな城だ。
「あなたには見せてあげたいわ…みんなが幸せな…平和な世界を…」
女性が静かに眠っている赤ん坊の額にキスをする。
唇が離れたのと同時に視界に広がる光景が元にもどった。
「ハアハアハア…」
「翔太君、まさか…」
「ああ…。《ジャイアント・ボマー・エアレイド》が記憶の鍵だった…それより…」
頭痛が消えた翔太は伊織からアクションカードを取る。
「ちっ…あいつのハッタリを見抜いていたら、もっと楽に勝てたな」
「うう…ごめんなさい」
狙撃
アクション魔法カード
(1):相手ターンのメインフェイズ1に相手のモンスター効果が発動した時に発動できる。発動を無効にし手札に戻す。
手に取り、テキストを確認すると同時に《狙撃》もソリッドビジョンと共に消えて行った。
「見事だ…秋山翔太、永瀬伊織」
ボマーとオスロが2人の元へ歩いてくる。
「ああ…。本選への切符はもらったぞ?」
「それは構わない。勝者はお前たちだからな。それよりも…」
オスロは懐から封筒を取り出し、翔太に差し出す。
「こいつは…?」
「先ほど敗退した鬼柳から君に渡せと言われたものだ」
「…?」
訳が分からないと言いたげな表情のまま、翔太は封筒を手に取る。
(鬼柳一真…なぜ俺に…?)
今回登場したE・HEROのオリカは深夜に放送されている某アニメキャラをモチーフとしています。