遊戯王ARC-V 戦士の鼓動   作:ナタタク

17 / 145
第16話 開幕の狼煙

(レディースアンドジェントルマン!!大変長らくお待たせいたしました!!これより、レオコーポレーション主催タッグデュエルカーニバルの開幕でございまーーーす!!!)

MCの軽快な言葉と共に、花火が打ちあがる。

エコパスタジアムには舞網チャンピオンシップに勝るとも劣らない数の観客、そしてデュエリストが集まっている。

(レオコーポレーション…こんなでかい大会を2つ同時にやる。どういうつもりだ…?)

「おーーい、翔太君ビックニュースだよーー!!フトシ君と柚子ちゃんが初戦突破だって!!」

「そうか」

「えーーー?翔太君反応薄いぞー?あ、でもアユちゃんが敗退しちゃった…」

「…」

「今度は無反応!?ひどいよ、翔太君!!」

顔を俯かせ、涙声を出す。

「はあ…それで、アユを倒した相手は?」

「やっといい反応してくれた!それがLDSの零羅って子で、ちょっとコンセプトが違うんだけど、私と同じ融合召喚を使うんだって」

「違うコンセプトなぁ…。そろそろ対戦表が出るぞ」

「え!?」

翔太たちの前に巨大なスクリーンが現れ、数多くの出場チームが表示される。

そして、それらには1から100までの番号が割り振られる。

「俺たちの番号は42か…」

「うう…不吉な数字」

「13よりはましだろう?そして、俺たちの相手の番号は47か…う…」

「翔太君、どうしたの?」

急に変な声を出した翔太を心配そうに見つめる。

「よりにもよって…あの女だ…」

「へ?」

13番のタッグは昨日翔太と戦った里香と手ぬぐいを額に巻き、頬に傷跡がある漁師のような服装をした色黒な少年だ。

「デッキの相性が悪いあいつとはできればデュエルしたくなかったな…」

「まあまあ、大丈夫だよ翔太君。今回は私も一緒なんだし?」

「だから不安なんだよ。お前のデッキのエースはほとんどエクストラデッキにあるだろ?」

「あ…」

早くも初戦敗退の可能性が頭に浮かび始める。

「ま、まあ大丈夫だよ!さあ、早く行こ?」

「はあ…言われなくてもな」

ため息をつきながら、翔太は伊織についていく。

 

「ふう…」

選手用観戦席で、2人はようやく落ち着くことができた。

本来、野球の試合のために使われるフィールドである分、かなり広範囲なアクションフィールドでタッグデュエルが行われる。

そして、1つのデュエルが決着する。

「これで終わりだ。《インフェルニティ・ジェネラル》でダイレクトアタック」

「「ぐああああ!!」」

赤いマントと黒い鎧を装備した巨大な騎士が曲刀で男性デュエリスト2人を切り裂いた。

 

デュエリスト

ライフ1000→0

 

「勝者、鬼柳一真&ロットン・バーネルのタッグだーーー!!」

デュエル終了とともに歓声が上がり、無反応な鬼柳とは対照的に色黒な肌で西部劇のガンマンのような男性が手を振ってこたえる。

(あいつが鬼柳のパートナーか…)

彼のモンスター、《ガトリング・オーガ》は先攻1ターンキルを成立させる可能性があり、場合によっては鬼柳の手に残ってしまった魔法・罠カードの処理に使うことができる。

そして、次のデュエルでは…。

「《ヴォルカニック・デビル》でダイレクトアタック!!」

灼熱の炎が噴き出す脳が露出している竜人のような悪魔が口から大量の溶岩を発射する。

溶岩はアクションフィールドをドロドロに溶かしていき、容赦なく相手に襲い掛かる。

「うわーーーー!来るなーーーー!!!」

 

デュエリスト

ライフ2200→0

 

「決まったーーー!!勝者、オスロ・オブライエン、ボマー・オブライエン兄弟!!」

褐色な肌で、どちらもかなり鍛えられた肉体を持つ兄弟が静かにフィールドを後にする。

弟のオスロの方は黄色く巨大な銃型デュエルディスクを持ち、ひろげた扇をさかさまにしたような形の黒い髪をしている。

兄のボマーは背中まである長い黒髪で、身長はオスロよりも20センチ近く高く、黒い彼と同じ形のデュエルディスクを所持している。

次々と勝者と敗者が決まっていく。

そして、翔太たちの出番である6回戦が目の前となる。

「いくぞ、伊織」

「うん!」

2人はフィールドへ出る。

到着した数十秒後に里香と色黒の少年が到着する。

「まさか1回戦からリベンジできるなんてなぁ…ウチ、運がいいわ」

「はあ…。もう俺たちの不戦勝でいいだろ?お前、負けてるからな」

「おーい、俺を忘れんなよ!」

「里香ちゃん、この人は?」

「こいつは梶木漁介。ウチの幼馴染や!」

「おう。お互い正々堂々全力で戦おうぜ!」

満面の笑みで漁介が右手を差し出す。

「…」

翔太は何も言わずに握手を交わす。

(さーあ!6回戦が始まりまーーす!赤コーナー、融合と変身で変幻自在!美少女デュエリスト、永瀬伊織!!)

「び、美少女って…」

「お世辞だな」

「翔太くーん!!」

余計なひと言に伊織が不機嫌となる。

(そして、そのパートナーは今大会最大のダークホース、秋山翔太ーー!!)

「ふん…」

ポカポカ叩いてくる伊織を抑え、歓声を無視する。

(続いて青コーナー、エクストラキラーである影霊衣を操る浪花のデュエリスト、真田里香ーー!!)

「なんでや!?なんで伊織だけ美少女やねん!?」

「俺に聞くな、俺に!」

(そして、見習い漁師でもあり、デュエルの腕も一流!浪速の鮫、梶木漁介ーーー!!)

パートナーと一悶着起こした後、4人はそれぞれ所定の位置へ向かう。

翔太は北の端、伊織は西、漁介は東、里香は南だ。

(さあ…今回のフィールドはこれだーーー!!フィールド魔法《パイレーツ・シー》発動ーーー!!」

海賊の黄金時代のカリブ海をモチーフとした澄んだ海と大量の海賊船のフィールドが展開される。

船の上だけでなく、漂流している筏や船内、更には水中にもアクションカードが存在する。

そして、伊織と里香がデュエルの開始を宣言する。

「戦いの殿堂に集いしデュエリストたちが」

「モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い」

「フィールド内を駆け巡る!」

「見よ、これぞ、デュエルの最強進化形、アクション…」

「「「「デュエル!!」」」」

 

漁介&里香

手札

漁介5

里香5

ライフ4000

 

翔太&伊織

手札

翔太5

伊織5

ライフ4000

 

「俺のターンからじゃ!俺は手札から《セイバー・シャーク》を召喚!」

 

セイバー・シャーク レベル4 攻撃1600

 

「《セイバー・シャーク》!アクションカードを取りに行くんじゃ!」

漁介を乗せた《セイバー・シャーク》が泳ぎ始める。

そして、漂流している木箱を頭部についている剣を破壊すると、中からアクションカードが現れる。

「よっし、アクションカードゲットじゃ!アクション魔法《緊急召喚》発動!手札からレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚する!俺は《ハンマー・シャーク》を特殊召喚じゃ!」

 

ハンマー・シャーク レベル4 攻撃1700

 

「これでレベル4のモンスターが2体」

「行くぜーーー!!」

漁介が《セイバー・シャーク》から海賊船の大砲に飛び移る。

「俺はレベル4の《セイバー・シャーク》と《ハンマー・シャーク》でオーバーレイ!未知なる轟と共に、水の戦士たちを統べよ!エクシーズ召喚!ランク4!《バハムート・シャーク》!!」

 

バハムート・シャーク ランク4 攻撃2600

 

(出たーーーー!!梶木漁介選手のエースモンスター、《バハムート・シャーク》----!)

召喚と同時に観客が歓声を上げる。

「エクシーズがLDSの専売特許なわけあるか!そのことを俺が示してやる!更に《バハムート・シャーク》の効果発動!1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、エクストラデッキから水属性・ランク3以下のエクシーズモンスター1体を特殊召喚できる。ゴッド・ボイス!!」

オーバーレイユニットを宿した《バハムート・シャーク》が咆哮すると同時に、海中から2頭の緑とオレンジの色がついた鮫が大正期の飛行機のような形で合体しているモンスターが浮上する。

「ゴッド・ボイスの効果で、俺は《潜航母艦エアロ・シャーク》を特殊召喚!」

 

潜航母艦エアロ・シャーク ランク3 攻撃1900

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・ハンマー・シャーク

 

「1ターンで2体のエクシーズモンスター!?」

「まだだぜ…。このカードは俺のフィールドに水属性エクシーズモンスターが2体以上存在するとき、手札から特殊召喚できる!俺は《スカー・シャーク》を特殊召喚!」

海中から体中に傷があり、左目にも深い傷跡がある鮫がボートを喰らいつくしながら現れる。

 

スカー・シャーク レベル4 攻撃1200

 

「更にこのカードの特殊召喚に成功した時、墓地から魚族・水属性・レベル4モンスター1体を特殊召喚できる。俺は墓地から《ハンマー・シャーク》を特殊召喚じゃ!」

《スカー・シャーク》の咆哮と同時に、そのモンスターの目の前に渦潮ができる。

そして、その中から《ハンマー・シャーク》が現れた。

 

ハンマー・シャーク レベル4 攻撃1700

 

スカー・シャーク

レベル4 攻撃1200 守備900 効果 水属性 魚族

「スカー・シャーク」は1ターンに1度しか特殊召喚できない。

(1):自分フィールド上に水属性エクシーズモンスターが2体以上存在するとき、このカードは手札から特殊召喚することができる。

(2):このカードの特殊召喚に成功した時、自分の墓地から魚族・水属性・レベル4モンスター1体を選択し特殊召喚することができる。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。

 

「レベル4のモンスターがまた2体!?」

「まだまだじゃ!俺は手札から魔法カード《ゴッド・ボイス》を発動!このカードは俺のフィールドに《バハムート・シャーク》が存在するとき、手札・フィールドに存在する水属性モンスターを2体まで選択し、それらのモンスターのレベルを1つ変動させるんじゃ!俺は2体の鮫のレベルを1つアップ!!」

《バハムート・シャーク》の咆哮と共に、《ハンマー・シャーク》と《スカー・シャーク》の精神が高揚する。

 

ハンマー・シャーク レベル4→5 攻撃1700

スカー・シャーク レベル4→5 攻撃1200

 

ゴッド・ボイス

通常魔法カード

「ゴッド・ボイス」は1ターンに1度しか発動できない。

このカードは自分フィールド上に「バハムート・シャーク」が表側表示で存在する場合にのみ発動できる。

(1):自分の手札・フィールド上に存在する水属性モンスター2体を象として以下の効果から1つを選択して発動できる。

●選択したモンスターのレベルを1つ上げる。

●選択したモンスターのレベルを1つ下げる。

 

「行くぜ…俺はレベル5になった《ハンマー・シャーク》と《スカー・シャーク》でオーバーレイ!この世のすべての魚を仕留める伝説の漁師よ、荒波を超え、俺の前に現れろ!エクシーズ召喚!!ランク5!《大海の王者フィル》!!」

地平線の彼方から、青い髪で全身に傷跡があり、背中には十数本の銛をさげている漁師が青い鮫に乗って現れる。

よほど鍛え抜かれているのか、彼の肉体には無駄な脂肪が一切なく、服装はボロボロなズボンだけになっている。

 

大海の王者フィル ランク5 攻撃1850

 

「嘘だろ…?」

「たった1ターンで3体のエクシーズモンスターを…」

里香は1ターンで2体の儀式モンスターを呼び出した。

そして彼は今ここで3体のエクシーズモンスターを呼び出した。

だが、漁介のターンはまだ終わっていない。

「《フィル》の効果発動!このカードは俺のフィールドに存在する水属性エクシーズモンスター1体に付き、攻撃力・守備力が500ポイントアップするんじゃ!」

 

大海の王者フィル ランク5 攻撃1850→3350 守備1600→3100

 

「更に手札から魔法カード《エクシーズ・トレジャー》を発動!フィールドに存在するエクシーズモンスターの数だけカードをドローできる!俺はデッキから3枚カードをドローじゃ!そして、カードを1枚伏せてターン終了!」

 

漁介&里香

手札

漁介5→2

里香5

ライフ4000

場 バハムート・シャーク(オーバーレイユニット1) ランク4 攻撃2600

  潜航母艦エアロ・シャーク ランク3 攻撃1900

  大海の王者フィル(オーバーレイユニット2) ランク5 攻撃3350

  伏せカード1

 

翔太&伊織

手札

翔太5

伊織5

ライフ4000

場 なし

 

長い、長すぎる漁介のターンが終わった。

終わってみると伏せカード1枚と3体のエクシーズモンスター。

これほどの展開にもかかわらず、《エクシーズ・トレジャー》によって手札切れを抑えている。

「ちっ…1体でも減らさないと、あとにひびくな。俺のターン、ドロー」

 

翔太

手札5→6

 

「俺はスケール2の《魔装槍士タダカツ》とスケール9の《魔装剣士ムネシゲ》でペンデュラムスケールをセッティング!」

「何!?ペンデュラム召喚やと…!?」

翔太の両サイドを守るかのように現れた2体のモンスター。

そして、遊矢しかできないと考えられていたペンデュラム召喚を彼が使用したことに2人は驚きを隠せずにいる。

「来たれ、時の果てに眠りし英雄の魂。希望の道を照らし、勝鬨を上げろ!ペンデュラム召喚!!現れろ、俺のモンスターたち!!《魔装騎士ペイルライダー》、《魔装間諜ゾルゲ》」

翔太の前には口元をスカーフで隠し、更には青い帽子と茶色い昭和風のコートを着用した白い肌の中年男性が現れ、そしてフィールド中央にある一番高いメインマストの上に《魔装騎士ペイルライダー》が空間戦闘用の装備で現れた。

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

魔装間諜ゾルゲ レベル3 守備900(チューナー)

 

「足りん足りん!いくらペンデュラム召喚に成功したモンスターでも、攻撃力が《バハムート・シャーク》にも《フィル》にも及んどらん!!」

「なら、足りるようにすればいい。それだけだろ?」

そういうと、翔太は海中へもぐっていく。

そして、沈没船から出ていた宝箱を開けて中にあるアクションカードを手にする。

「(よし…!)俺はアクション魔法《鎖弾》を発動!このカードは次のお前のターン終了時まで相手モンスター1体の攻撃力・守備力を1000ポイントダウンさせる!」

海から出て、そばにあったボートに乗った翔太がアクション魔法カードを発動させる。

すると、一番近くにあった船が《大海の王者フィル》に向く。

そして、前方に装備された2門の大砲から鎖弾を発射する。

鎖弾を受けた《大海の王者フィル》は身動きが取れなくなった。

 

大海の王者フィル ランク5 攻撃3350→2350 守備3100→2100

 

鎖弾

アクション魔法カード

(1):相手フィールド上に存在するモンスター1体を選択して発動できる。次の相手のターン終了時まで選択したモンスターの攻撃力・守備力を1000ダウンさせる。

 

「やったー!これで、《ペイルライダー》の攻撃で《大海の王者フィル》を倒せる!」

「バトルだ。俺は《ペイルライダー》で《フィル》を攻撃!クアトロ・デスブレイク!」

《魔装騎士ペイルライダー》がメインマストからスラスターで飛行する。

そして、《大海の王者フィル》の頭部に向けて光線を発射した。

「…。海を舐めるなよ、兄ちゃん!」

「何!?」

急に《大海の王者フィル》の前に《潜航母艦エアロ・シャーク》が現れる。

そして、彼の代わりにビームを受けて消滅した。

「く…!《フィル》は破壊されるとき、代わりに俺の水属性エクシーズモンスター1体を破壊できるんじゃ!」

「だが、お前のライフは減り、そして《フィル》の攻撃力も下がる」

 

漁介

ライフ4000→3850

 

大海の王者フィル ランク5 攻撃2350→1850 守備2100→1600

 

「そして、《ペイルライダー》の効果を…!!」

「させんのじゃ!罠カード《ブレイクスルー・スキル》を発動!これで《ペイルライダー》の効果を無効に!」

「ちっ…」

《魔装槍士タダカツ》の効果は戦闘破壊しなければ使えない。

《大海の王者フィル》の身代わり効果のせいで、翔太のもくろみの一部が外れた。

(身代わり効果があるのはつらい。そして、奴の《バハムート・シャーク》にはまだもう1つだけオーバーレイユニットが残っている)

アクションカードを探しつつ、里香を見る。

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド…」

「この瞬間、《フィル》の効果発動じゃ!相手のターンのエンドフェイズ時に1度、このターン破壊された俺の水属性エクシーズモンスター1体を復活させる!」

「何!?」

「また《エアロ・シャーク》が戻ってきちゃう!!」

《大海の王者フィル》が銛を太陽に向けて投げる。

太陽光で、銛が見えなくなると上空から《潜航母艦エアロ・シャーク》が現れる。

 

漁介&里香

手札

漁介2

里香5

ライフ3850

場 バハムート・シャーク(オーバーレイユニット1) ランク4 攻撃2600

  潜航母艦エアロ・シャーク ランク3 攻撃1900

  大海の王者フィル(オーバーレイユニット2) ランク5 攻撃1850→2350

 

翔太&伊織

手札

翔太6→1

伊織5

ライフ4000

場 魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

  魔装間諜ゾルゲ レベル3 守備900(チューナー)

  魔装槍士タダカツ(青) Pスケール2

  魔装剣士ムネシゲ(赤) Pスケール9

  伏せカード1

 

(《魔装間諜ゾルゲ》…。新しい魔装モンスター…)

伊織も《魔装間諜ゾルゲ》は見たことがない。

翔太曰く、眠っている間にいつの間に空のデッキケースに入っていたらしい。

「さあ…あいつには借りがある。せやから、絶対に勝つ!ウチのターン、ドロー!」

 

里香

手札5→6

 

「ウチは手札から儀式魔法《影霊衣の氷鏡》を発動や!このカードはエクストラデッキのモンスターを素材に影霊衣モンスターを儀式召喚できるんや!《A・O・Jディサイシブ・アームズ》を墓地へ送るで!儀式召喚!レベル9!《トリシューラの影霊衣》!!」

溶けない氷でできた3つの頭の竜が永久凍土でできた飾りのない鏡に映し出される。

そして、それが砕けると中から《氷結界の龍トリシューラ》を模した鎧と剣を持つ赤い髪の青年が現れる。

 

トリシューラの影霊衣 レベル9 攻撃2700

 

影霊衣の氷鏡

儀式魔法カード

「影霊衣」儀式モンスターの降臨に必要。

「影霊衣の氷鏡」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):手札に存在する「影霊衣」儀式モンスター1体を相手に見せることで発動できる。自分のエクストラデッキからレベルの合計が公開したカードのレベル以上になるようにモンスターをリリースすることで、そのモンスターを手札から儀式召喚する。

(2):自分の手札に存在する儀式魔法カード1枚を墓地へ送ることで発動できる。墓地に存在するこのカード1枚を手札に加える。

 

「影霊気モンスター…」

前のデュエルで煮え湯を飲まされたため、影霊衣儀式モンスターに拒否反応が現れる。

「《トリシューラ》の効果発動や!このカードの特殊召喚に成功した時、相手の手札・フィールド・墓地のカードを1枚ずつ除外するで!!」

「何!?」

「破壊されてもエクストラデッキへ行くペンデュラムモンスターでも、この効果には手も足も出んやろ?」

《トリシューラの影霊衣》の尾から翔太の手札1枚と《魔装騎士ペイルライダー》に向けてそれぞれ1本ずつ氷の針を発射する。

氷で貫かれた2枚のカードが氷漬けとなり、海底へと沈んでいく。

 

手札から除外されたカード

・貪欲な壺

 

「このままいくでぇ…!ウチは漁介のモンスター達と《トリシューラ》でダイレクトアタック!!」

4体のモンスターが一斉に翔太に襲い掛かる。

「甘い!俺は罠カード《聖なるバリア―ミラーフォース》を発動!相手の攻撃宣言時、相手攻撃表示モンスターを全滅させる!」

「な…なんやってーーーーー!?」

「里香…油断しすぎじゃ」

頭を抱える漁介。

虹色のバリアが《魔装間諜ゾルゲ》への《潜航母艦エアロ・シャーク》のミサイル攻撃を防ぎ、反射する。

反射したミサイルは《トリシューラの影霊衣》、《潜航母艦エアロ・シャーク》、《バハムート・シャーク》、《大海の王者フィル》に着弾、爆破した。

「おーーー!翔太君、ナイス!」

「ふん…」

4体の攻撃モンスターをすべて失ったことで、もう里香は攻撃できなくなった。

「くぅーーー、このターンで決めたかったわー!でもまだや!ウチは墓地の《影霊衣の万華鏡》の効果を発動!ウチのフィールドにモンスターが存在しないとき、墓地からこのカードと影霊衣モンスター1体を除外し、デッキから影霊衣魔法カードを1枚手札に加えるで!」

霊体となった《トリシューラの影霊衣》が砕けた《影霊衣の万華鏡》の破片を集め、それを左右対称に設置された青と金の刃が特徴の鏡、《影霊衣の降魔鏡》に変えていく。

「そして手札から魔法カード《影霊衣の降魔鏡》を発動!レベルの合計が儀式召喚する影霊衣儀式モンスターと同じになるように手札・フィールドのモンスターをリリースするか、墓地の影霊衣モンスターを除外するで!ウチは手札の《影霊衣の大魔道士》をリリース!儀式召喚!レベル4!《ユニコールの影霊衣》!!」

漆黒のローブと帽子、そして鏡が付いた杖を装備した老魔道士が映った《影霊衣の降魔鏡》が砕ける。

そして、そこから《ユニコールの影霊衣》が現れる。

 

ユニコールの影霊衣 レベル4 攻撃2300

 

「また影霊衣か…!」

「更に《影霊衣の大魔道士》の効果発動や!このカードをカード効果でリリースした時、デッキから魔法使い族の影霊衣儀式モンスター1体を手札に加えるで。ウチはデッキから《グングニールの影霊衣》を手札に加えるで。ウチはカードを2枚伏せてターンエンドや」

「まだじゃ!俺はこのターン破壊された《大海の王者フィル》の効果発動!オーバーレイユニットを持つこのカードがカード効果で破壊された場合、その数だけ墓地からこのカード以外の水属性・エクシーズモンスターを特殊召喚できるんじゃ!」

「何!?」

「蘇るんじゃ、《バハムート・シャーク》、《エアロ・シャーク》!!」

《ユニコールの影霊衣》を挟むように、2体のエクシーズモンスターが現れる。

 

漁介&里香

手札

漁介2

里香6→1(《グングニールの影霊衣》)

ライフ3850

場 バハムート・シャーク ランク4 攻撃2600

  潜航母艦エアロ・シャーク ランク3 攻撃1900

  ユニコールの影霊衣 レベル4 攻撃2300

 

翔太&伊織

手札

翔太1→0

伊織5

ライフ4000

場 魔装間諜ゾルゲ レベル3 守備900(チューナー)

  魔装槍士タダカツ(青) Pスケール2

  魔装剣士ムネシゲ(赤) Pスケール9

 

大海の王者フィル

ランク5 攻撃1850 守備1600 エクシーズ 水属性 水族

水属性レベル5モンスター×2

このカードはX召喚でしか特殊召喚できない。

「大海の王者フィル」の(2)(3)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードは自分フィールド上に存在する水属性Xモンスター1体に付き500ポイントアップする。

(2):相手のターン終了時に自分の墓地からこのターンに破壊された水属性Xモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターを特殊召喚する。

(3):X素材を持つこのカードが破壊され墓地へ送られたターン終了時、その数だけ自分の墓地に存在する水属性・Xモンスターを特殊召喚する。

 

(おおーーー!!さすがは梶木漁介選手と真田里香選手!《ミラーフォース》によってモンスターが全滅となりながらも容易く戦線を立て直したぞーーー!!)

「うう…《ユニコール》は出てきてほしくなかったなー」

《ユニコールの影霊衣》の効果は融合主体の伊織のデッキにはあまりにもきついカードだ。

「さぁーてっと、あんたらが考えてる間にウチはアクションカードを探すでー!」

「里香は船の中を頼む!俺は潜って探す!」

「おう!!」

言われた通り、里香はまずは船の弾薬庫へ入り、漁介は《バハムート・シャーク》に乗って海上を動き回る。

「私のターン、ドロー!」

 

伊織

手札5→6

 

「翔太君のペンデュラムモンスターの効果、使うね!」

「勝手にしろ」

「よーし!これより起こるはヒーローたちの大行進!見逃さないようご注意あれ!ペンデュラム召喚!出てきて、私のモンスター達!《E・HEROエアーマン》!《E・HEROエッジマン》!!」

《E・HEROエアーマン》と共に両腕の刃がついている黄金の鎧を着たヒーローが現れる。

 

E・HEROエアーマン レベル4 攻撃1800

E・HEROエッジマン レベル7 攻撃2600

 

「《エアーマン》の効果発動!このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、デッキからHEROを1体手札に加えるよ!私はデッキから《E・HEROブレイズマン》を手札に!」

ペンデュラム召喚は当然のことながら、通常召喚ではない。

そのため、このまま伊織が《ユニコールの影霊衣》を倒せば《E・HEROブレイズマン》から《融合》へつなげることができる。

「バトル!《エッジマン》で《ユニコール》を攻撃!パワー・エッジ・アタック!!」

《E・HEROエッジマン》が《ユニコールの影霊衣》に向けて突撃する。

「甘いで!ウチは手札の《グングニールの影霊衣》の効果を発動や!このカードを手札から墓地へ送ることで、ウチのフィールドの影霊衣1体をこのターン、破壊から守るんや!」

「えーーーー!?」

《E・HEROエッジマン》が《ユニコールの影霊衣》を切り裂く。

しかし、切り裂いたのは氷でできたただの彫像だった。

 

漁介&里香

ライフ3850→3550

 

「くぅーやりますなぁ、里香ちゃん。翔太君、アクションカードは!?」

「そんなに急かすな。逆に見つからなくなる」

昇降機を使い、一気にマストの上部まで上る翔太。

そして、それの一番上にある旗の裏に貼られたアクションカードを入手する。

「俺はアクション魔法《臼砲》を発動。フィールド上の相手モンスター1体の効果を次の俺たちのターンのエンドフェイズ時まで無効にする!」

「何やて!?そんなところにアクションカードが??」

翔太がいる船に設置された臼砲から上空に向けて数十発の弾が発射される。

そして、《ユニコールの影霊衣》がそれの雨をよけるのに必死になって効果を維持する暇がなくなってしまった。

 

臼砲

アクション魔法カード

(1):相手フィールド上のモンスター1体の効果を次の自分のターンのエンドフェイズ時まで無効にする。

 

「よーし、これで私のHEROは全力を出せる!私は手札から《ブレイズマン》を召喚!」

 

E・HEROブレイズマン レベル4 攻撃1200

 

「《ブレイズマン》の効果発動!このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから《融合》を手札に加える!そしてフィールドの《エアーマン》と《ブレイズマン》を《融合》!疾風の戦士よ、炎の切り込み隊長よ、今こそ1つになりて、新たなヒーローに進化せよ!融合召喚!現れて、竜巻の王者、《E・HERO Great TORNADO》!!」

 

E・HERO Great TORNADO レベル8 攻撃2800

 

「《E・HERO Great TORNADO》の効果発動!このカードの融合召喚に成功した時、相手フィールド上のモンスターの攻撃力・守備力を半分にする!ダウン・バースト!!」

《E・HERO Great TORNADO》が起こした竜巻が船を砕き、吹き飛ばしたながら漁介と里香のモンスター達に襲い掛かる。

竜巻を受けた3体のモンスターは竜巻が運んできた船の破片で大きな傷を負った。

 

バハムート・シャーク ランク4 攻撃2600→1300

潜航母艦エアロ・シャーク ランク3 攻撃1900→950

ユニコールの影霊衣 レベル4 攻撃2300→1150

 

「ずるいでずるいでーーー!!《ユニコール》の効果を無効にするなんてーー!!」

「立派な戦略だ。とやかく言うな」

里香のいちゃもんをスルーしつつ、昇降機を使って下へ降りていく。

「ごめんね、里香ちゃん。けど翔太君は優しいんだよ。前は悪い人は取ったカードを取り返して…」

「やめろ、柄じゃない」

「はいはい。私はカードを1枚伏せてターンエンド!」

 

漁介&里香

手札

漁介2

里香1→0

ライフ3550

場 バハムート・シャーク ランク4 攻撃1300

  潜航母艦エアロ・シャーク ランク3 攻撃950

  ユニコールの影霊衣 レベル4 攻撃1150

 

翔太&伊織

手札

翔太0

伊織6→3

ライフ4000

場 魔装間諜ゾルゲ レベル3 守備900(チューナー)

  E・HEROエッジマン レベル7 攻撃2600

  E・HERO Great TORNADO レベル8 攻撃2800

  魔装槍士タダカツ(青) Pスケール2

  魔装剣士ムネシゲ(赤) Pスケール9

  伏せカード1

 

「やってくれる…!じゃが、まだまだ俺たちを倒すには及ばんのじゃ!俺のターン、ドロー!」

 

漁介

手札2→3

 

「俺はフィールド上の《バハムート・シャーク》と《エアロ・シャーク》でオーバーレイ!!」

「嘘!?ランクが違うエクシーズモンスターでエクシーズ召喚を!?」

「こいつは少し特殊な奴じゃ!俺のフィールドに存在するエクシーズモンスターを2体以上、合計ランクが7になるようにオーバーレイすることでしか召喚できない!いくんじゃ、《バハムート・シャーク》、《エアロ・シャーク》!!」

2体の鮫が上空に現れた鏡写しのようになっているもう1つの海へ向かう。

「俺の切り札は《フィル》でも《バハムート・シャーク》でもない!クロスエクシーズチェンジ!!現れろ、失われし海に眠りし牙、ランク7!《アトランティス・シャーク》!!」

2つ目の海の中からジンベエザメよりも3倍近く大きい、傷だらけで赤と青のオッドアイの白い鮫が降りてくる。

翔太たちのいる海に入った瞬間、周囲に大波が発生し、多くの船や小島、ボートが飲み込まれていく。

「くぅ…!!」

「キャア!!」

翔太と伊織が波にのまれそうになるが、《E・HERO Great TORNADO》と《E・HEROエッジマン》に守られる。

「助かった…」

「どういたしまして!」

「お前に言ったんじゃないぞ?」

「またまたー」

大波が収まると、多くの船の残骸が漂い、小島の木も根元から流されていた。

 

アトランティス・シャーク ランク7 攻撃3800

 

「攻撃力3800…!?」

「こいつは俺のフィールドに存在するカードの効果を受けん。よって、影霊衣の効果を受けることなく大暴れできるんじゃ!バトル!《アトランティス・シャーク》で《エッジマン》を攻撃!」

《アトランティス・シャーク》が《E・HEROエッジマン》を丸呑みにしようと大きく口を開いて迫ってくる。

「罠発動!《マスク・バリア》!!このカードはHEROに対する相手の攻撃を無効にするよ!」

「無駄じゃぁ!このカードはオーバーレイユニットの数だけ攻撃できるんじゃ!!!」

「えーーー!?」

「く…《Great TORNADO》!!」

翔太は《E・HERO Great TORNADO》から飛び降り、残骸に引っかかっているアクションカードを取ろうとした。

「ウチを忘れたらあかんでぇ!」

「何!?」

いつの間に先回りしていた里香が翔太が手にしようとしていたアクションカードを取る。

タッグアクションデュエルは各プレイヤーが1枚ずつアクションカードを持つことができる。

そのため、両者の役割分担を行うこと、そして一方が相手をひきつけている間にもう一方が密かにアクションカードを回収することが重要だ。

「ウチはアクション魔法《散弾》を発動や!このカードは戦闘を行う相手モンスター1体の攻撃力をダメージ計算時のみ600ポイントダウンさせるで!」

北西から赤い帆の船が現れ、《E・HEROエッジマン》に向けて側面から散弾を発射した。

「キャアアア!!」

「伊織!!」

散弾を受けて傷ついた《E・HEROエッジマン》は伊織を離してしまう。

伊織はそのまま船の残骸の上を滑って海へ転落してしまった。

 

E・HEROエッジマン レベル7 攻撃2600→2000

 

散弾

アクション魔法カード

(1):相手フィールド上のモンスター1体はこのターン戦闘を行う時、ダメージステップ時のみ攻撃力が600ポイントダウンする。

 

「あぷぷ…私、泳げないのー!!溺れるーーー!!」

「はあ…こういうことで世話やかせんな、伊織!」

溺れそうになった伊織を翔太が抱え、共に小島へ向かう。

そんな中、傷ついた《E・HEROエッジマン》は《アトランティス・シャーク》に《マスク・バリア》もろとも丸呑みにされた。

 

翔太&伊織

ライフ4000→2200

 

「《アトランティス・シャーク》の効果発動じゃ!このカードが戦闘で相手モンスターを破壊したターンのエンドフェイズ時、俺の墓地に存在する水属性エクシーズモンスター1体をこのカードのオーバーレイユニットにできるんじゃ!」

「ということは、戦闘で破壊するたびに攻撃回数が増えていくのか!?」

「そうじゃ!これが海の恐ろしさ、荒々しき海の中で生きてきた鮫たちの強さじゃ!更に俺は《ユニコール》を守備表示に変更し、ターンエンドじゃ!そして、《アトランティス・シャーク》の効果で手札をすべて墓地へ送る!!」

それと同時に2つ目の海から《大海の王者フィル》が現れ、《アトランティス・シャーク》のオーバーレイユニットとなる。

 

手札から墓地へ送られたカード

・ビッグ・ジョーズ

・オーバーレイ・チャージ

・ジョーズマン

 

漁介&里香

手札

漁介3→0

里香0

ライフ3550

場 アトランティス・シャーク(オーバーレイユニット3) ランク7 攻撃3800

  ユニコールの影霊衣 レベル4 攻撃1150→守備500

 

翔太&伊織

手札

翔太0

伊織3

ライフ2200

場 魔装間諜ゾルゲ レベル3 守備900(チューナー)

  E・HERO Great TORNADO レベル8 攻撃2800

  魔装槍士タダカツ(青) Pスケール2

  魔装剣士ムネシゲ(赤) Pスケール9

 

アトランティス・シャーク

ランク7 攻撃3800 守備2000 エクシーズ 水属性 魚族

このカードは下記の方法でのみ特殊召喚できる。

●自分フィールド上に表側表示で存在するX素材のない水属性Xモンスターを2体以上、ランクの合計がこのカードと同じになるように選択することで、それらをX素材とすることでX召喚できる。

(1):このカードは1度のバトルフェイズにこのカードに重ねられているX素材の数だけ攻撃できる。

(2):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊したターンの終了時に発動できる。自分の墓地に存在する水属性Xモンスター1体をこのカードのX素材にすることができる。

(3):このカードは自分フィールド上に存在するカードの効果を受けない。

(4):自分のターン終了ごとに自分は手札をすべて墓地へ送らなければならない。その効果で手札を墓地へ送ることができなかった場合、次の自分のターンこのカードは攻撃できない。

 

「く…!俺のターン、ドロー!」

 

翔太

手札0→1

 

(《臼砲》の効果が切れて、《ユニコール》の効果が復活した。だが、《アトランティス・シャーク》は自身の効果でその制約を受けない)

《アトランティス・シャーク》の攻撃力は3800。

当然、翔太たちのデッキにはそれを超える攻撃力を持つモンスターはいない。

「翔太君…」

「うん?」

急に伊織が声をかけてくる。

その伊織の表情はピンチであるにもかかわらず、笑顔そのもの。

更にサムズアップまでしている。

「(何か手があるのか…?)俺は手札から魔法カード《アドバンス・ドロー》を発動。俺のフィールドに存在するレベル8以上のモンスター1体をリリースし、デッキからカードを2枚ドローする」

《E・HERO Great TORNADO》が風と共に姿をくらまし、翔太はカードを2枚ドローする。

「俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

漁介&里香

手札

漁介2

里香0

ライフ3550

場 アトランティス・シャーク(オーバーレイユニット3) ランク7 攻撃3800

  ユニコールの影霊衣 レベル4 守備500

 

翔太&伊織

手札

翔太1→0

伊織3

ライフ2200

場 魔装間諜ゾルゲ レベル3 守備900(チューナー)

  魔装槍士タダカツ(青) Pスケール2

  魔装剣士ムネシゲ(赤) Pスケール9

  伏せカード2

 

(やはり圧倒的攻撃力を持つ《アトランティス・シャーク》に太刀打ちできないのか?翔太選手、伏せカードを2枚出しただけでターンを終えてしまったーーーー!!)

(だが、これで探す時間ができた)

翔太はアクションカードを手にするため、再び水中へもぐる。

空気樽で呼吸をしつつ、更に深く潜っていく。

(翔太君、お願い!!なんとか持ちこたえて…)

「何がやりたいんか知らんけど、このターンで決着をつけるで!ウチのターン、ドロー!」

 

里香

手札0→1

 

「バトルや!ウチは《アトランティス・シャーク》で《魔装間諜ゾルゲ》を攻撃や!」

《アトランティス・シャーク》が《魔装間諜ゾルゲ》を丸呑みにしようと2つ目の上から飛び出してくる。

それと同時に、翔太は貝に挟まれていたアクションカードを取り、水中から出る。

「俺はアクション魔法《回避》を発動!これで相手モンスター1体の攻撃を無効にする!」

《魔装間諜ゾルゲ》が煙玉で相手の視界をふさぎ、その隙に行方をくらます。

「まだや!今の《アトランティス・シャーク》ならあともう1回攻撃できるんや!もう1度《ゾルゲ》を攻撃!!」

《魔装間諜ゾルゲ》を見失った《アトランティス・シャーク》が大きくその身を動かす。

すると、そのモンスターを中心に大波が発生し、船の残骸に隠れていた《魔装間諜ゾルゲ》が飲み込まれる。

「《ゾルゲ》の効果発動!このカードが相手の攻撃で破壊された時、相手の手札1枚をランダムで確認し、そのカードの種類によって効果が発動する」

「な…!?ウチのカードを見るだけやなくて、他の効果も発動やて!?」

「そうだ。今のお前の手札は1枚。さあ、はやく見せろ!」

「やかましいわ!見たいんやったら、さっさと見い!!」

里香が頬を膨らませ、不満げに手札を公開する。

公開したカードは《テイク・オーバー5》だ。

「魔法カードか…。公開したカードが魔法カードの場合、次の俺たちのターンのスタンバイフェイズ時に俺は墓地または除外されている魔装と名のつくペンデュラムモンスター1体をエクストラデッキに加える。俺は除外されている《ペイルライダー》をエクストラデッキへ」

 

魔装間諜ゾルゲ

レベル3 攻撃900 守備900 チューナー 闇属性 魔法使い族

「魔装間諜ゾルゲ」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードが相手モンスターの攻撃によって破壊され墓地へ送られた時、相手の手札をランダムに1枚選択し、そのカードを互いに確認する。その後、確認したカードの種類によって以下の効果を発動する。

●モンスターカード:このターン、相手モンスターは攻撃できない。

●魔法カード:次の自分のターンのスタンバイフェイズ時にに自分の墓地、もしくはゲームから除外されている「魔装」ペンデュラムモンスター1体を表向きで自分のエクストラデッキに置く。

●罠カード:確認したカードを墓地へ送る。

 

「ペンデュラムモンスターをエクストラデッキに加えてもな、今のあんたらのフィールドにはモンスターはおらん!このまま決めたるで!!《アトランティス・シャーク》でダイレクトアタックやーーー!!」

《アトランティス・シャーク》が翔太に狙いを定めると、彼に向けて一直線で突っ込んでいく。

「罠発動!《ペンデュラム・ウォール》!!相手の直接攻撃宣言時、今の俺のペンデュラムスケールで召喚可能なレベルを持つモンスター1体を俺かお前の墓地から特殊召喚する!俺はお前の墓地から《ハンマー・シャーク》を特殊召喚する!」

目の前に《ハンマー・シャーク》が現れると、彼はそのモンスターを蹴り飛ばし、《アトランティス・シャーク》にぶつける。

ぶつかった鮫は目を回しながら消滅し、ぶつけられた鮫は怒り狂う。

 

ペンデュラム・ウォール

通常罠カード

(1):自分のPゾーンにカードが2枚存在する場合、相手の直接攻撃宣言時に発動できる。そのPスケールでP召喚可能なレベルを持つ、自分か相手の墓地に存在するモンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する。

 

「くぅぅ…漁介のモンスターを壁にして、もはや悪党やこいつは!!」

「悪党で結構だ」

(うーん…あのやり方って完全に悪者にやり方だよね、翔太君)

最近見たヒーロー番組で、伊織は子供を人質にする怪人を見た。

その分、その時の翔太とその怪人がなぜかダブって見えてしまった。

「くぅーーー!ウチはこれでターンエンド!そして、それと同時にウチは《アトランティス・シャーク》の効果で手札をすべて捨てる!」

 

漁介&里香

手札

漁介2

里香1→0

ライフ3550

場 アトランティス・シャーク(オーバーレイユニット3) ランク7 攻撃3800

  ユニコールの影霊衣 レベル4 守備500

 

翔太&伊織

手札

翔太0

伊織3

ライフ2200

場 魔装槍士タダカツ(青) Pスケール2

  魔装剣士ムネシゲ(赤) Pスケール9

  伏せカード1

 

(なんとか猛攻をしのいだ、翔太、伊織ペア!しかし、フィールドに存在するのは伏せカード1枚とペンデュラムモンスター2体のみ!漁介、里香ペア、このまま押し切るのかーーーー!!?)

今の状況は明らかに翔太たちが降り。

《ユニコールの影霊衣》のせいでエクストラデッキから特殊召喚されるモンスターの効果は封じられ、《アトランティス・シャーク》が連続攻撃をかけてくる。

墓地に水属性エクシーズモンスターはもういないとはいえ、それでも攻撃回数は3回。

次のターン、その猛攻をしのぎ切れるかは疑問だ。

「(《ペイルライダー》はスタンバイフェイズ時に私の元に来る…。あとはあのカードが来ればいいだけ!)私のターン、ドロー!!」

 

伊織

手札3→4

 

伊織はドローしたカードを確認する。

「(うん…!これならいける!!)私はスタンバイフェイズ時に《ペイルライダー》をエクストラデッキに加えるよ!そして手札から魔法カード《エクストラ・フュージョン》を発動!このカードはエクストラデッキのモンスターを素材に融合召喚ができるよ!」

「エクストラデッキで融合じゃと…!?そんなことが!!」

「私が融合素材にするのは《E・HEROアブソルートZero》と《魔装騎士ペイルライダー》!!永久凍土の申し子よ、第4の騎士よ、今こそ1つとなりて、新たなヒーローに進化せよ!融合召喚!現れて、地獄門からの使者、《E・HEROロスト》!!」

エクストラデッキに眠る2体の戦士が融合し、漆黒のローブで全身を包んだ男が姿を現す。

ローブには何の装飾もなく、それでも質素というよりは何か奇妙さを感じさせる。

 

E・HEROロスト レベル8 攻撃0

 

エクストラ・フュージョン(漫画オリカ:調整)

通常魔法カード

「エクストラ・フュージョン」は1ターンに1度しか発動できず、発動したターン、自分は融合召喚以外の方法でモンスターを召喚・特殊召喚することができない。

(1):自分のエクストラデッキから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体を融合召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

 

「攻撃力0?拍子抜けするモンスターやな!《ユニコール》!そいつの力を封じたれ!」

「ううん、このカードの効果は封じられないよ!《ロスト》は自身をリリースすることで、相手フィールド上に表側表示で存在するすべてのモンスターの攻撃力を半分にし、更に効果も無効にするの!」

「何!?」

《E・HEROロスト》がローブを脱ぎ捨てる。

しかし、ローブの中には実体がなく、黒い霧しか存在しない。

その霧は漁介と里香の2体のモンスターを包み込む。

しばらくしれ霧が晴れると、《アトランティス・シャーク》と《ユニコールの影霊衣》はかなり疲れ切った状態でその場にいた。

 

アトランティス・シャーク ランク7 攻撃3800→1900

ユニコールの影霊衣 レベル4 攻撃1150→575

 

E・HEROロスト

レベル8 攻撃0 守備0 融合 闇属性 戦士族

レベル6以上の「HERO」融合モンスター+「魔装騎士ペイルライダー」

「E・HEROロスト」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードをリリースすることで発動できる。相手フィールド上に表側表示で存在するモンスターの効果を無効化し、攻撃力を半分にする。

 

「更に私は手札から魔法カード《フュージョニック・リバース》を発動!手札・フィールドのモンスターを素材に、墓地の融合モンスターを融合召喚できるよ!私は手札の《E・HEROフェザーマン》と《バブルマン》を融合!翼の制裁者よ、水のトリックスターよ、今こそ1つとなりて、新たなヒーローに進化せよ!融合召喚!蘇って、竜巻の王者、《E・HERO Great TORNADO》!!」

2体のモンスターがブラックホールの中へ消えると、入れ替わるように《E・HERO Great TORNADO》が現れる。

 

E・HERO Great TORNADO レベル8 攻撃2800

 

フュージョニック・リバース

通常魔法カード

「フュージョニック・リバース」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体を融合召喚扱いとして墓地から特殊召喚する。

 

「墓地から融合召喚…ということは…!!」

里香の顔が真っ青になる。

「うん。《Great TORNADO》の効果が発動するよ!ダウン・バースト!!」

再び発生する竜巻。

それは海の王者であろうとも無慈悲に滅びの運命を与える。

 

アトランティス・シャーク ランク7 攻撃1900→950 守備2000→1000

ユニコールの影霊衣 レベル4 守備500→250 攻撃575→278 

 

(なんということだーーー!あれほどまでの攻撃力を誇っていた《アトランティス・シャーク》が伊織選手のあざやかなコンボで一気に950にーーー!!)

「まだまだーー!私は手札から魔法カード《H-ヒートハート》と《アサルト・アーマー》を発動!《H-ヒートハート》は私のモンスター1体の攻撃力を500ポイントアップさせ、更に貫通効果も与える!」

《E・HERO Great TORNADO》の体が炎に包まれる。

 

E・HERO Great TORNADO レベル8 攻撃2800→3300

 

「更に装備された《アサルト・アーマー》の効果発動!このカードを墓地へ送ることで、このターン装備モンスターは2回攻撃できるよ!」

炎に包まれた《E・HERO Great TORNADO》が竜巻を起こす。

するとそれはみるみると凝縮されていき、最終的には《E・HERO Great TORNADO》そっくりな形となる。

「んなアホな…ウチらが負ける…?」

「…」

呆然とする里香に対して、漁介は静かにデュエルディスクを下げる。

敗北を認め、潔く攻撃を受ける覚悟を固めたようだ。

「バトル!《Great TORNADO》で攻撃ーーー!!」

《E・HERO Great TORNADO》とその幻影が力を合わせて炎の竜巻を起こす。

それは船を次々と焼きつくし、《アトランティス・シャーク》と《ユニコールの影霊衣》を灰にした。

 

漁介&里香

ライフ3550→1250→0

 

(決まったーーーー!!海賊の海での激戦を制したのは、翔太&伊織ペアだーーーー!!)

デュエル終了と同時に歓声が上がり、ソリッドビジョンが解除されていく。

「なんとか1回戦突破か…」

「ハハハ!!強いデュエリストじゃなあ!2人とも」

「悔しいわぁ…まさか1回戦負けって…」

敗北したにもかかわらず、大笑いする漁介と悔しそうにしている里香が翔太たちの元へ寄る。

「ううん、漁介君と里香ちゃんもすごかったよ!もしかしたら、私たちが負けていたかもしれないから」

「確かに今回は俺たちの負けじゃ。じゃが…次は絶対に負けん!!!」

「当たり前や!儀式モンスターの実力はまだまだこんなもんやない!!それを証明したる!」

盛り上がる3人。

完全に翔太は蚊帳の外だ。

 

「ふう…」

シャワーを浴びた翔太がデュエルを終えた選手専用の控室へ戻ってくる。

そこにはシャワーだけでなく、スポーツドリンクや氷、菓子などが置かれていて、疲労回復にもってこいだ。

「ねぇねぇ、翔太君。次はどんなデュエリストとデュエルができるのかなぁ?」

「関係ないな。相手がだれでも勝つだけだしな」

「もー…そんなことばっかりー…」

不満げな発言をする伊織だが、突然棒王環境が整っているはずのここまで聞こえるほど大きな歓声が聞こえる。

「何かあったのかな…?行こう、翔太君!」

「俺は忙しいんだ。ここでポカリを飲むっていう重要な仕事がある」

「そんなの後でもいーじゃん!!」

伊織に引っ張られる形で、翔太も控室を出ることになった。

控室を出て、観戦席へ向かう。

「う…嘘!?」

「…」

そこで2人が見たのは、LDS制服組の2人が相手のライフを1ポイントも削れないまま敗北しているところだった。

「…大したことのない相手だ」

彼らを相手としたのはたった1人。

白い鉢巻と茶色い厚着のコート、右手には杖を持ち左腕に手札を置くスペースが追加で取り付けられた赤いデュエルディスクをつけた黒いボサボサな髪の青年だった。

そして、彼の目は全く開いていなかった。




1回戦を無事に突破した翔太たち。
ここでまた新キャラが登場!
彼は一体…?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。