遊戯王ARC-V 戦士の鼓動   作:ナタタク

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第129話 破滅の時

「翔太君!!」

同時にライフがゼロとなり、攻撃の衝撃で吹き飛ばされ、あおむけに倒れた翔太に伊織が駆け寄る。

「ぐ、うう…クソ…たれぇ!!」

攻撃によるダメージ、そして記憶の鍵となるモンスターと戦闘を行った影響による頭痛のせいで翔太には伊織に返事をする余裕がなくなっていた。

「ふ、ふふふ…これで、アークエリアプロジェクト…いいえ、リバイバルゼロが始まる!!」

「リバイバル…ゼロ??どういうことだ!?あのAIはプロフェッサーの…父さんの意思を継いで、すべての次元を1つにして、そして…」

「アハハハハハ!!そして、娘であるレイを取り戻すと。あのAIの結論では、もうその必要はない。先代のプロフェッサーが抱くリバイバルゼロは確かにそれだった。だが…今のプロフェッサーは違う!アークエリアを…楽園を生み出すために、古きものをすべて消去…ゼロにすること。これこそが、リバイバルゼロなのだ」

(その通りだ。これまでよくぞ戦ってくれた。ドクトルよ)

突然、周囲から機械音交じりの男性の声が響き渡る。

その声は少なくとも零児にとっては聞き覚えのあるものだ。

「プロフェッサー…赤馬零王か!?」

「赤馬零児、我が創造主たるプロフェッサーの息子。私と血を分けた兄弟か。初めましてというべきかな。私はプロフェッサー、アークエリアプロジェクト、そしてリバイバルゼロを託された者だ」

「機械の分際で血を語るな!すべてを消去とはどういうことだ!!」

「言葉通りの意味だよ。覇王龍ズァークの誕生により、旧次元は崩壊した。そして、レイと相討ちとなったことでズァーク、レイの道連れとなり、次元は4つに分断された。その分断された次元を1つに統合する。そのためには膨大なエネルギーが必要となる。そのエネルギーとなりうるのがカードとなった人間たちだ。彼らのデュエルエナジー、そして生命エネルギーを使い、次元を統合することで楽園が生まれ、その中で4人に分かれたレイは統合され、赤馬レイがよみがえる。だが、その先を幾重にもわたりシミュレーションした私の考えは違う。たとえ、次元を一つに統合したとしても、楽園は生まれない。当然だ。彼の目的は娘一人のみなのだから」

そのためだけに、多くに人間と世界を犠牲にするくだらない計画が立てられた。

肉親を失う苦しみを関係のない多くの人々にまで味合わせて。

父親の声を借りるAIはあくまでも淡々と、感情なく話すのみで、その話を聞く零児達の気持ちなどくみ取る気配はない。

「私の中には『欠片』がある。それが見せた、多くの世界のビジョン。幾千幾万の世界。そのすべてのデータを蓄積する中での結論づけたのだ」

とある世界では、際限のない発展の中で人々の心は誘惑や欲望一色に染まり、それを人の心を読み取り、それによって性質や力を変える生きたエネルギーである遊星粒子を利用した半永久エネルギー機関たるモーメントが読み取ることで暴走を引き起こした。

そして、その世界のネットワークはその状況から世界の破滅を予見し、その原因となる人類を抹殺すべく、機械の軍団を作り出した。

そして、人類と機械による戦争が勃発し、人々は次々と死んでいく中、それでもゆがみ切った心は、深々と根付いた誘惑と欲望は解消されることなく、ネットワークは世界に見切りをつけ、すべてのモーメントを自爆させることで世界ごと人類を滅ぼした。

とある世界では未知なる鉱石にオレイカルコスと名付け、それを利用して急速に発展を遂げる中、先ほどの世界と同じように人々の心が闇に染まっていった。

やがてその世界の王も心を闇に染め、自らの手で国を滅ぼし、やがて世界をも滅ぼした。

それがオレイカルコスから伝えられた、人類に見切りをつけた世界の意思と受け取って。

「滅びた世界の共通点は人間の弱さ、人間の心の闇。貴様たちも理解しているであろう?その弱さを…融合次元、エクシーズ次元、シンクロ次元、スタンダード次元、すべての次元のすべてが持っていることを…」

そのAIの言葉に反論できる人間はここにはいない。

各次元を旅する中で、そうした人間の醜さを間近で見たこともまた、事実なのだから。

「特に融合次元の、アカデミアのデュエル戦士なるものは御しやすいが、同時に醜くもあった。都合のいい真実を信じ、疑うこともない。故に成長することなく、人形となる愚かな存在。故に結論付けた。ここから先の新世界の人間など不要、出来損ないの人間こそが世界を滅ぼす…絶滅体であると」

「ならば、ここで貴様を破壊し、このくだらない戦いを終わらせる!」

「それは不可能だ。見よ、あの虫にとらわれ続ける娘たちを」

AIの言葉に零児達の視線がカプセルの中にいるセレナ達に向けられる。

先ほどのデュエルでドクトルは確かに倒れたが、あくまでもそれは相討ちとなったからにすぎない。

そのためか、虫は解除されず、洗脳されたままの少女たちはそれぞれの服のポケットの中に手を入れ、その中にあるカプセルを手にする。

そして、それをちょうど口に含み、前歯でカプセルが破れないギリギリの力で噛んでいる。

「この状況はこの次元すべてに放送している。そして、カプセルの中にあるのは青酸カリ。わずかな量を服用しただけでも数分で人を殺すことができる」

リバイバルゼロをレイの復活ではなく、人類の消滅とするのであればもはや彼女たちの存在はAIにとっては不要だ。

「世界をとるか、彼女たちをとるかの選択を我々にさせるつもりか!?」

「半分は正解だ。だが、決めるのは貴様らではない。この光景は既にこの次元全体で放送されているということを。当然、今この場にいない人間もこの状況を知っている。そして、選ぶのは…ただ1人。罪深き世界の破壊者の因子を持つ道化師だ」

 

「やめろ!!みんな、やめろぉ!!」

ユーゴの犠牲を知った遊矢のデュエルディスクに突然流され始めた映像。

そこに映る毒の入ったカプセルを噛むセレナ達の姿。

零児達やAIのやり取りの声も聞こえていて、状況を知った遊矢にはどうするべきなのかわからない。

「榊遊矢、罪深きズァークの一人。貴様に1つだけチャンスを与える。貴様はここに現れるもう1人のお前、ユーリと戦え。そうすれば、彼女たちは自由の身としよう」

「何!?ユーリと…!」

(これが、奴の狙いか。俺たちが戦い、一つになることが…!)

イレースのためのリバイバルゼロ、そしてカード化した人々を生贄としたアークエリアプロジェクト。

リバイバルゼロを引き起こすための手段として選ばれた手段、それはズァークを復活させること。

その狙いを悟ったユートだが、瑠璃の命を人質に取られている以上は彼女を捨てる選択肢をとれるはずがない。

「赤馬零王、そしてアカデミアが育てた怪物と友である榊遊勝が育て、道化師の仮面をつけた怪物。せいぜい楽しみたまえ。このデュエルを」

「そして、人々に知らせてあげて。過ちを繰り返し、同じ形で滅ぶ愚かしさと浅ましさを」

柚子たちに似た、けれどもどこか違う女性の声が続けて聞こえ、それにもまた機械音が混ざっている。

拳を握りしめる遊矢の前に黒い渦が出現し、その中からユーリが現れる。

「なるほどね…最高の舞台を用意してくれるんだね。僕と…そして、彼に」

「ユーリ!!」

「前から思ってたんだよ。君とデュエルをしたいなって…。だって、負けたら存在を含めてすべて奪われて、勝ったら相手のすべてを手にする!!スリルがあって、最高じゃないか!!」

「そんなの…そんなの最高なわけないだろう!?そんなことをして、どうなるかわかっているのか!?」

「ああ、わかってるさ!でもさ…僕はこんな世界なんてどうでもいい。みんなカードにすることも考えたけど、それ以上に面白そうじゃないか。僕たちが戦い、一つになって…すべてを滅ぼすのって。君たちだって変わらない。どうせ、僕と戦う以外の選択肢を自分からふさいじゃってるんだから。彼女たちのために、すべてを滅ぼすんだ。遊矢、君も柊柚子が同じ場所にいたら、もうその選択肢かできないんじゃないか?」

「ぐう…!!」

「そうだ、これもまた人間の弱さ。世界と己の愛を天秤にかけたとき、時折己の愛を選ぶ人間もいる。それが生み出す悲劇が何かを知ったうえで」

「悲しいわね。そんなことをして、救われた一人は果たして喜ぶかしら?」

「さあ、怪物たちよ。戦え。すべてを滅ぼすために。それとも、世界を救うために彼女たちを…」

「…わかった!!わかったから…」

もうこれ以上あのAIの話を聞いていると、頭と心がおかしくなってしまう。

ふと脳裏に浮かぶのはAIと対峙する翔太たちの存在だ。

もしかしたら、デュエルをしている間に彼らがなんとかしてくれるかもしれない。

そんな都合のいい未来を思い浮かべてしまうほど、もう遊矢とユートは追い詰められている。

「うおおおおおお!!!!」

「さあ、始めようか!!存在をかけた最高のデュエルを!!」

 

ユーリ

手札5

ライフ4000

 

遊矢

手札5

ライフ4000

 

「これは…本当にとんでもない状況になったわね…」

クレイトス内で自分のデュエルディスクから突然流れた映像にグレースの表情が固まる。

どちらが勝ったとしても、ズァーク復活という最悪の事態が訪れることになるのはわかり切っている。

先ほどの映像は融合次元にいる全員が見聞きしており、それ故か生き残りのデュエル戦士たちの中には状況が理解できずに困惑する者もいて、皮肉にもそれが今の戦闘を停止させるには大きな効果があった。

「嫌な予感がする…まさか!!」

この映像を見て、真っ先に動く人間がいることを悟ったグレースは大急ぎで柚子の部屋へ向かう。

扉は既に開いており、そこには案の定、彼女の姿はなかった。

(柚子…あの子は!けど、柚子だけじゃない!もしかしたら!!」

 

「うぐ、くそ、お!!!」

「翔太君、しっかりして!!」

激しい頭痛にのたうち回る翔太に声をかける伊織だが、時折目の錯覚なのか、その姿が翔太とベクター、交互に変化しているように見えた。

やがて、あれほど苦しんでいた翔太が急に黙り込んでしまい、糸が切れたかのように動きを止める。

目は開いたままで、口からは唾を垂れ流している状態だ。

「翔太君、ねえ、どうしたのよ!!ねえ!!」

体温はあり、呼吸もあるが、どう見ても異常としか思えない今の翔太に伊織ができることはなかった。

 

「僕から先攻とさせてもらうよ。僕は手札から魔法カード《手札断殺》を発動。お互いに手札2枚を墓地へ送り、デッキからカードを2枚ドローする」

 

手札から墓地へ送られたカード

ユーリ

・スポーア

・捕食衝動

 

遊矢

・EMディスカバー・ヒッポ

・EMキャスト・チェンジ

 

「そして、僕はモンスターを裏守備表示で召喚。カードを2枚伏せて、フィールド魔法《ブラック・ガーデン》を発動」

発動と同時に周囲の壁や床に鋭い棘のある黒薔薇であふれかえっていく。

「僕はこれで…ターンエンドだ」

 

ユーリ

手札5→0

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

  伏せカード2

  ブラック・ガーデン(フィールド魔法)

 

遊矢

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「貴様!!早く貴様の虫を解除しろ!!!」

ドクトルの胸倉をつかむ権現坂が鬼の形相で彼をにらむ。

だが、どんな表情をしても、どんなに圧をかけてもドクトルはニヤリと笑うだけだ。

「解除…?するわけがないではないか。これからの楽園のためにも、あの怪物どもには戦ってもらわないとならない。そのためだけの存在なのだよ、彼女たちは…。そして、今の秋山翔太の状態では、カード化の解除もできないだろう、だから…」

「権現坂、奴から離れろ!!」

零児の言葉とドクトルのデュエルディスクから発生する光にハッとした権現坂は急いで彼から距離をとる。

光に包まれるドクトルは高笑いし、最後にデュエルディスクから流れる遊矢とユーリのデュエルを見る。

「プロフェッサー…世界は楽園になりますよ…」

ドクトルの姿とともに光は消え、カード化した彼が床に落ちる。

やはりそれでもセレナ達の中にいる虫たちは解除されることなどなく、カプセルを口にくわえたままだ。

「くっそおおおおおお!!!!」

拳を壁にたたきつける権現坂には、今起こっているデュエルを止めるすべはなかった。

そして、追い打ちをかけるように、零児たちの装着しているデュエルディスクにも異常が発生する。

「何!?デュエルディスクが停止しただと!?」

「連絡機能もすべて使えぬ…まさか!!」

「この次元のすべてのデュエルディスクの機能は私が停止した。これで、この次元でデュエルができるのはあの化け物二人のみだ」

「あなたたちは楽しんでいけばいいわ。この化け物たちのデュエルを」

 

「遊矢、遊矢!どこにいるの!?」

デュエルディスクが止まり、混乱する現場の中を走る柚子のデュエルディスクも停止し、遊矢と連絡を取ることができない。

彼のいる場所も分からず、とにかく走ることしかできない。

最重要ターゲットである柚子がいるはずなのに、デュエル戦士たちは彼女を捕まえようとせず、ただこのわけのわからない状況に対してプロフェッサーに救いを求めることしかできなかった。

「焦るな…柚子。落ち着いて、まずはアカデミアに入ることを考えろ。あそこに遊矢たちが突入していることを考えれば…」

車椅子に乗り、柚子の後に続く遊勝だが、今のその言葉はまるで自分に言い聞かせているかのようだった。

(遊矢…たとえ、お前の正体がズァークの一部だったとしても、だとしても、お前が過ごしてきた時間、俺と過ごした時間は…)

 

「ほら、起きろよ…。決着をつける時だぜ?秋山翔太」

「ぐ、う…」

ベクターの声が響き、目を開いた翔太がいたのは真っ赤な空の下で、赤い水晶がいくつも生えた古代ローマのコロッセオのような場所だ。

そこには玉座があり、そこにベクターがふんぞり返っている。

彼の背後には10枚の石板があり、それらには記憶のカードがそれぞれ刻まれていた。

「ようやく起きたか…さっさと始めようぜ。あとはお前が持っている俺の力を返してもらうだけだ」

「うるせえよ…俺は俺だ!てめえに指図されるいわれはねえ…!」

 

 

「俺の…ターン!!」

 

遊矢

手札5→6

 

「俺は《EMドクロバット・ジョーカー》を召喚!」

 

EMドクロバット・ジョーカー レベル4 攻撃1800

 

「《ドクロバット・ジョーカー》の効果発動!このカードの召喚に成功したとき、デッキからEM、魔術師、オッドアイズペンデュラムモンスター1体を手札に加える!俺が手札に加えるのは《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!」

「この瞬間、《ブラック・ガーデン》の効果発動!《ブラック・ガーデン》の効果以外でモンスターが召喚・特殊召喚されたとき、そのモンスターの攻撃力は半分になる」

地面から鋭い棘のある黒薔薇が生え、それが《EMドクロバット・ジョーカー》に絡みつく。

棘が刺さり、そこから発生する毒が彼の体を蝕んでいく。

 

EMドクロバット・ジョーカー レベル4 攻撃1800→900

 

「そして、そのモンスターのコントローラーは相手フィールドに《ローズ・トークン》1体を攻撃表示で特殊召喚する」

続けて、ユーリのフィールドには黒薔薇で構成された小人といえるトークンが姿を現した。

 

ローズ・トークン レベル1 攻撃800

 

「ぐ…俺は、スケール4の《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》とスケール8の《虹鮮の魔術師》でペンデュラムスケールをセッティング!」

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》と共に、赤いローブ姿で彼と同じ二色の眼を持つ魔術師が青い光の柱を生み出す。

「これで俺はレベル5から7までのモンスターを同時に召喚可能!揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!ペンデュラム召喚!!現れろ、《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》、《EMマンモスプラッシュ》!」

ペンデュラムの力で呼び出された2体のモンスターもまた、《ブラック・ガーデン》の呪縛から逃れることはできず、黒薔薇によって拘束される。

そして、ユーリのフィールドに黒薔薇の小人がさらに1体出現する。

 

オッドアイズ・ファントム・ドラゴン レベル7 攻撃2500→1250

EMマンモスプラッシュ レベル6 攻撃1900→950

 

ローズ・トークン レベル1 攻撃800

 

「ここで僕は罠カード《増殖の宝札》を発動。このターン、僕たちが1回以上モンスターの特殊召喚に成功し、このターンに特殊召喚されたモンスターが4体以上の時、僕はデッキからカードを2枚ドローする。ただし、このカードを発動後、ターン終了時まで僕はデッキからカードを手札に加えることはできないけどね」

 

ユーリ

手札0→2

 

「君のデッキには《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》がいる。そいつをフィールドに出させるわけにはいかないね。僕は速攻魔法《超融合》を発動!」

「《超融合》!?それって、ヒイロさんが…!!」

「別に盗んでないよ、既に解析済みでコピーできたってだけさ!手札1枚を捨て、お互いのフィールドのモンスターを素材に融合する!僕が素材にするのは《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》、《ドクロバット・ジョーカー》、《ローズ・トークン》!闇に沈む3体のモンスターよ、今一つとなりて、美しき竜となれ!融合召喚!現れろ、レベル9!《捕食植物トリフィオヴェルトゥム》」

上空に現れた渦の中に3体のモンスターが飲み込まれていき、その中から3つの頭を持つ、茨でできた肉体のドラゴンが降りてくる。

そんなモンスターも黒薔薇に縛られ、そして遊矢のフィールドに《ローズ・トークン》が現れる。

 

捕食植物トリフィオヴェルトゥム レベル9 攻撃3000→1500

 

ローズ・トークン レベル1 攻撃800

 

手札から墓地へ捨てられたカード

・捕食植物コーディセップス

 

「安心しなよ。僕の融合素材として使われた君の2体のモンスターはペンデュラムモンスター。エクストラデッキに戻るだけだ。それに、《ローズ・トークン》もプレゼントしてあげたんだから」

「くぅ…!」

遊矢のフィールドに残った《ローズ・トークン》と《EMマンモスプラッシュ》だけでは、今の遊矢のエクストラデッキから融合モンスターを出すことはできない。

そして、今ユーリが融合召喚した《捕食植物トリフィオヴェルトゥム》を戦闘破壊することを考えると、攻撃力3000以上のモンスターが必要で、そんなモンスターはメインデッキにはいない。

「なら…俺は手札から速攻魔法《クイック・リボルブ》を発動!デッキからヴァレットモンスター1体を特殊召喚する。俺はデッキから《ヴァレット・トレーサー》を特殊召喚!」

デッキから飛び出してきたのは赤い弾丸のような体をしたドラゴンで、そのスピードで飛ぶドラゴンにもまた、《ブラック・ガーデン》の呪縛が襲う。

 

ヴァレット・トレーサー レベル4 攻撃1600→800(チューナー)

 

ローズ・トークン レベル1 攻撃800

 

「《ヴァレット・トレーサー》の効果発動!1ターンに1度、自分フィールドの表側表示のカード1枚を破壊し、デッキからヴァレットモンスター1体を特殊召喚する!俺は《虹彩の魔術師》を破壊し、デッキから《ヴァレット・リチャージャー》を特殊召喚!」

黒薔薇にとらわれながらも口から発射された弾丸が《虹彩の魔術師》を撃ちぬく。

青い光の柱が消え、光の粒子へ変わったそのモンスターはすぐにその姿を頭に弾丸をつけた黒いドラゴンへと変えた。

 

ヴァレット・リチャージャー レベル4 攻撃0

 

「《ヴァレット・リチャージャー》の攻撃力は0!《ブラック・ガーデン》の効果は適用されない!そして、破壊された《虹彩の魔術師》の効果発動!このカードが破壊されたとき、デッキからペンデュラムグラフカード1枚を手札に加える!俺はデッキから《星霜のペンデュラムグラフ》を手札に加える!そして、《マンモスプラッシュ》の効果発動!自分フィールドのモンスターを素材に、ドラゴン族融合モンスターの融合召喚を行う!俺が融合素材にするのは、《ヴァレット・トレーサー》と《ヴァレット・リチャージャー》!」

《EMマンモスプラッシュ》の鼻から発生する水しぶきが融合の渦へと変わり、2体のモンスターが飛び込んでいく。

(《トリフィオヴェルトゥム》は融合召喚されている場合、相手がエクストラデッキからモンスターを特殊召喚するとき、その特殊召喚を無効にし、破壊する効果がある。知ってか知らずかは知らないけど、カード効果を使われたら、この効果は使えない…)

「弾丸を名を持つ2体のドラゴンよ、今一つとなりて、新たな力を示せ!融合召喚!現れろ、《ヴァレルロード・F・ドラゴン》!!」

 

ヴァレルロード・F・ドラゴン レベル8 攻撃3000→1500

 

ローズ・トークン レベル1 攻撃800

 

「《ヴァレルロード》の効果発動!1ターンに1度、俺のフィールドのモンスター1体と、相手フィールドのカード1枚を破壊できる!俺は《ローズ・トークン》と《トリフィオヴェルトゥム》を破壊する!!」

エネルギーに変換された《ローズ・トークン》を取り込んだ《ヴァレルロード・F・ドラゴン》がそれを弾丸として《捕食植物トリフィオヴェルトゥム》に向けて発射する。

弾丸を受けたそのモンスターの胴体に大穴ができ、爆発とともに消滅する。

「あーあ、せっかく《超融合》を使って召喚したのに」

「バトルだ!《ヴァレルロード・F・ドラゴン》と《マンモスプラッシュ》で《ローズ・トークン》2体を攻撃!」

続けて、通常の弾丸を体内で装てんした《ヴァレルロード・F・ドラゴン》がそれをユーリのフィールドにいる《ローズ・トークン》に向けて発射する

弾丸を受けた《ローズ・トークン》が消滅し、攻撃の余波がユーリを襲う。

続けて、《EMマンモスプラッシュ》が鼻で《ローズ・トークン》をつかみ、ユーリに向けて投げつけた。

「アハハハ、ハハ…ユーゴに続き、君まで先制ダメージを与えてくるなんて」

 

ユーリ

ライフ4000→3300→3150

 

「俺は…カードを1枚伏せて、ターンエンド。そして、ターン終了時に《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の効果。ペンデュラムゾーンに存在するこのカードを破壊し、デッキから攻撃力1500以下のペンデュラムモンスター1体を手札に加える。俺は《慧眼の魔術師》を手札に加える」

 

ユーリ

手札1

ライフ3150

場 裏守備モンスター1

  ローズ・トークン レベル1 攻撃800

  伏せカード1

  ブラック・ガーデン(フィールド魔法)

 

遊矢

手札6→3(うち2枚《星霜のペンデュラムグラフ》、《慧眼の魔術師》)

ライフ4000

場 ヴァレルロード・F・ドラゴン(《ブラック・ガーデン》の影響下) レベル8 攻撃1500

  EMマンモスプラッシュ(《ブラックガーデン》の影響下) レベル6 攻撃950

  伏せカード1

 

「僕の…ターン!!」

 

ユーリ

手札1→2

 

「僕は手札から《捕食植物スピノ・ディオネア》を召喚」

 

捕食植物スピノ・ディオネア レベル4 攻撃1800→900

 

ローズ・トークン レベル1 攻撃800

 

「《スピノ・ディオネア》の効果発動。このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、相手フィールドのモンスター1体に捕食カウンターを1つ置く。捕食カウンターの乗ったレベル2以上のモンスターのレベルは1になる…」

《捕食植物スピノ・ディオネア》が口から放つ種が《ヴァレルロード・F・ドラゴン》に付着し、そこから茨が成長していく。

茨に取り込まれる《ヴァレルロード・F・ドラゴン》だが、それでも攻撃手段となっている口までの侵食だけは両腕で茨を引きちぎることで阻止していた。

 

ヴァレルロード・F・ドラゴン レベル8→1 捕食カウンター0→1

 

「そして、僕は墓地の《トリフィオヴェルトゥム》の効果発動。相手フィールドのモンスターに捕食カウンターが置かれている場合、1ターンに1度、墓地から守備表示で特殊召喚できる」

地面が砕け、そこから先ほど弾丸で粉砕されたはずの《捕食植物トリフィオヴェルトゥム》が無傷な状態で出てくる。

 

捕食植物トリフィオヴェルトゥム レベル9 守備3000 攻撃3000→1500

 

ローズ・トークン レベル1 攻撃800

 

「また《トリフィオヴェルトゥム》が…!」

「《トリフィオヴェルトゥム》はフィールド上の捕食カウンターが乗っているモンスターの元々の攻撃力分、攻撃力がアップする」

「何!?」

取り付いている茨が成長し、それが《捕食植物トリフィオヴェルトゥム》の肉体と接続する。

そこから《ヴァレルロード・F・ドラゴン》の力を読み取り、《捕食植物トリフィオヴェルトゥム》の力へと変換していく。

 

捕食植物トリフィオヴェルトゥム 攻撃1500→4500

 

「そして、僕はセットしているモンスターを反転召喚。《憑依するブラッド・ソウル》!」

セットモンスターが解放され、隠れている血のような赤い炎で構築された悪魔が現れる。

 

憑依するブラッド・ソウル レベル3 攻撃1200

 

「《憑依するブラッド・ソウル》の効果。このカードをリリースすることで、相手フィールドに存在するレベル3以下のすべてのモンスターのコントロールを得る。君のフィールドに存在するモンスターはレベル1になった《ヴァレルロード・F・ドラゴン》と《ローズ・トークン》2体。そのコントロールを奪う!」

「そんなことさせるか!!俺は《ヴァレルロード・F・ドラゴン》の効果を発動!俺のフィールドのモンスター1体と、相手フィールドのカード1枚を破壊する!俺は《ヴァレルロード》と《トリフィオヴェルトゥム》を破壊する!!」

己を縛る茨と黒薔薇を無理やり引きちぎった《ヴァレルロード・F・ドラゴン》がよみがえったばかりの《捕食植物トリフィオヴェルトゥム》に向けて特攻する。

激突と同時にゼロ距離から発射される弾丸。

その爆発は両者を巻き込み、そして消滅させる。

「あーあ、せっかくよみがえったのに…。けど、2体の《ローズ・トークン》のコントロールはもらうよ」

消滅する《憑依するブラッド・ソウル》と入れ替わるように、遊矢のそばにいた2体の《ローズ・トークン》がユーリのフィールドへ歩いていく。

これで、ユーリのフィールドには4体の《ローズ・トークン》と《捕食植物スピノ・ディオネア》の5体となる。

仮に遊矢のフィールドに《EMマンモスプラッシュ》がいなかったら、5体のダイレクトアタックで勝負が決まっていただろう。

「僕はこれで、ターンエンド」

 

ユーリ

手札1

ライフ3150

場 捕食植物スピノ・ディオネア(《ブラック・ガーデン》の影響下) レベル4 攻撃900

  ローズ・トークン×4 レベル1 攻撃800

  伏せカード1

  ブラック・ガーデン(フィールド魔法)

 

遊矢

手札3(うち2枚《星霜のペンデュラムグラフ》、《慧眼の魔術師》)

ライフ4000

場 EMマンモスプラッシュ(《ブラックガーデン》の影響下) レベル6 攻撃950

  伏せカード1

 

ライフは確かに遊矢が多いものの、ユーリのフィールドには5体ものモンスターが存在する。

幸い、いずれも《EMマンモスプラッシュ》で倒せる。

「ねえ、どうしたの?そんなにつらそうな顔をして…。ライフは4000ちゃんとあって、《マンモスプラッシュ》はフィールドに残ってるんだ…。明るくなってくれないかなぁ」

「そんなの…そんなの、明るくなれるわけないだろ!?こんなデュエルに…何の意味が…!!」

「意味なんてないよ、意味がないから楽しいんだよ。僕がさぁ!ほら、さっさとターンを進めてよ!!」

「俺は…」

「デュエルを放棄するのか?榊遊矢、ならばあの娘たちには死んでもらうだけだ。生かしたいなら、最後まで戦え」

AIからの呪いのようなデュエル継続の命令。

無機質で機械的な言葉に拳を握りしめるしかできない。

「俺の…ターン!!」

 

遊矢

手札3→4

 

「俺は…永続魔法《星霜のペンデュラムグラフ》を発動!そして、スケール1の《星読みの魔術師》とスケール5の《慧眼の魔術師》をセッティング!《慧眼の魔術師》のペンデュラム効果!もう片方のペンデュラムゾーンに魔術師かEMが存在する場合、このカードを破壊することで、デッキから魔術師ペンデュラムモンスターをセッティングできる。俺は《時読みの魔術師》をセッティング!さらに、《星霜のペンデュラムグラフ》の効果!表側表示の魔術師ペンデュラムモンスターが俺のモンスターゾーンまたはペンデュラムゾーンから離れたとき、デッキから新たな魔術師ペンデュラムモンスター1体を手札に加えることができる。俺が手札に加えるのは《降竜の魔術師》!これで俺はレベル2から7までのモンスターを同時に召喚可能!ペンデュラム召喚!現れろ、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》、《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》、《EMドクロバット・ジョーカー》、《降竜の魔術師》!!」

ペンデュラムの力により、一気に4体ものモンスターが遊矢のフィールドに舞い降りる。

黒薔薇の呪縛にかかろうとも、それでもいずれもユーリのフィールドのモンスターをなぎ倒すだけの力は残る。

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500→1250

オッドアイズ・ファントム・ドラゴン レベル7 攻撃2500→1250

降竜の魔術師 レベル7 攻撃2500→1250

EMドクロバット・ジョーカー レベル4 攻撃1800→900

 

「やるねえ…仕込みをしていたとはいえ、一気に4体もモンスターを…」

「まだだ!俺は更にレベル7の《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》と《降竜の魔術師》でオーバーレイ!二色の眼の竜よ、人々の涙を束ね、解放への道を示せ!エクシーズ召喚!ランク7!悲しき世界を穿つ氷河の竜、《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》!!」

 

オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン ランク7 攻撃2800→1400

 

「バトルだ!《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》で《スピノ・ディオネア》を攻撃!氷結のアブソリュート・ゼロ!!」

《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》が放つ吹雪は《捕食植物スピノ・ディオネア》を氷の彫像へと変えた後、尻尾で粉砕した。

 

ユーリ

ライフ3150→2650

 

「さらに、《ドクロバット・ジョーカー》で《ローズ・トークン》を攻撃!同時に、《アブソリュート・ドラゴン》の効果発動!1ターンに1度、オーバーレイユニットを一つ取り除くことで、モンスター1体の戦闘を無効にする!そして、墓地からオッドアイズ1体を特殊召喚する。もう1度現れろ、《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》!」

 

オッドアイズ・ファントム・ドラゴン レベル7 攻撃2500→1250

 

「さらに、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》で…」

「罠発動《アナザー・フュージョン》。墓地の融合魔法カード1枚を除外することで、その魔法カードの発動時の効果を発動できる。僕が除外するのは当然、《超融合》」

「何!?」

発動された《アナザー・フュージョン》のイラストが《超融合》のものへと変化するとともに再び上空に発生する渦。

その渦の中に《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》と《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》が飲み込まれていく。

「別次元の僕の2体のドラゴンよ、今ひとつとなりて、その花弁の奥の地獄から、新たな脅威を生み出せ!融合召喚!現れろ!飢えた牙持つ毒龍。レベル8!《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》!」

「あ、ああ!!」

動揺する遊矢の目の前に、融合次元の遊矢といえるユーリの切り札のドラゴンがついに出現する。

(現れましたか…《スターヴ・ヴェノム》!!)

Dホイールからその様子を見るクリアウィングの表情が一層険しくなる。

そのモンスターからはダーク・リベリオンやオッドアイズと似たものが感じられなかった。

 

スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン レベル8 攻撃2800→1400

 

ローズ・トークン レベル1 攻撃800

 

「《スターヴ・ヴェノム》の効果。このカードの特殊召喚に成功したとき、相手フィールドに存在する特殊召喚されたモンスター1体の攻撃力をターン終了時まで得る。僕が選ぶのは《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》」

 

スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン レベル8 攻撃1400→2800

 

「さあ…どうするの?まだ僕のフィールドには《ローズ・トークン》が4体も残ってる。そして、《マンモスプラッシュ》は攻撃できるよ?」

「くっ…!俺は《マンモスプラッシュ》を守備表示に変更。ターンエンド」

 

ユーリ

手札1

ライフ2550

場 スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン レベル8 攻撃2800→1400

  ローズ・トークン×4 レベル1 攻撃800

  ブラック・ガーデン(フィールド魔法)

 

遊矢

手札4→1

ライフ4000

場 EMマンモスプラッシュ(《ブラックガーデン》の影響下) レベル6 攻撃950→守備2300

  オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン(オーバーレイユニット1 《ブラック・ガーデン》の影響下) ランク7 攻撃1400

  星読みの魔術師(青) ペンデュラムスケール1

  時読みの魔術師(赤) ペンデュラムスケール8

  星霜のペンデュラムグラフ(永続魔法)

  伏せカード1

 

まだ遊矢はライフを減らしていないのに、顔には強い焦りの色が宿っている。

対するユーリは不敵な笑みをうかべ、焦り続ける遊矢の反応を楽しむ余裕もある。

「僕のターン、ドロー…」

 

ユーリ

手札1→2

 

「僕は手札から速攻魔法《魔力の泉》を発動。相手フィールドの表側表示で存在する魔法・罠カードの数だけデッキからカードをドローし、僕のフィールドの表側表示の魔法・罠カードの数だけ手札を墓地へ捨てる。僕は3枚ドローして、1枚捨てる」

 

手札から墓地へ捨てられたカード

・捕食植物ロリドゥラマンティス

 

「そして、僕は手札から魔法カード《捕食回収》を発動。僕のフィールドの闇属性・植物族モンスター2体をリリースし、墓地か除外されている融合またはフュージョン魔法カード1枚を手札に加える。僕が手札に加えるのは…もちろん、これだよ」

2体の《ローズ・トークン》がフィールドから消え、再び手札に加わった《超融合》を見せるユーリ。

「ふふふ…遊矢。まだ君の力はそんなものじゃないだろう?もっと…力を見せて僕を笑顔にしてよ。僕も、力を見せてあげるからさ!!僕は手札から《捕食植物セラセニアント》を召喚」

 

捕食植物セラセニアント レベル1 攻撃100→50

 

ローズ・トークン レベル1 攻撃800

 

「そして、手札から《融合》を発動!僕のフィールドの《スターヴ・ヴェノム》と《セラセニアント》を融合。飢えた牙持つ毒龍よ。奈落へ誘う香しき花よ。今一つとなりて、思いのままにすべてを貪れ!融合召喚!現れろレベル10《グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》!」

フィールドに現れたばかりの《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》が《捕食植物セラセニアント》を取り込み、その姿を《グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》へと変化させる。

変化と同時に激しい咆哮をし、遊矢は腕で頭を守る。

(なんだ…あの、モンスターは…それに…)

オッドアイとなった遊矢が見たあのドラゴンからは何も感じられない。

まるで、一歩でも踏み込んだら二度と這い上がれない底なしの沼のような空虚。

恐怖を感じた遊矢はすぐにオッドアイを解除してしまった。

 

グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン レベル10 攻撃3300→1650

 

ローズ・トークン レベル1 攻撃800

 

「この、モンスターから感じます…ユーゴの、仇のドラゴン…!!」

ユーゴと離れてしまい、彼の末路を見ることができなかったクリアウィングだが、そのモンスターから感じる残り香のような気配から確信する。

そして、ユーリのデッキにはおそらく、ユーゴから奪ったであろう己の本体、そしてそこから進化したカードたちもある。

「フィールドから墓地へ送られた《セラセニアント》の効果。デッキから《捕食植物ビブリスプ》を手札に加える!さらに、僕は《ブラック・ガーデン》のもう1つの効果を発動!!このカードと、フィールド上に存在する植物族モンスターをすべて破壊する!まあ、残っているのは僕と君のフィールドにいる合計4体の《ローズ・トークン》だけだけどね!!」

フィールドにいる4体の《ローズ・トークン》たちがユーリの目の前に集結し、まるで組体操を始めるかのように絡み合い、姿を変えていく。

そして、フィールドを覆っていた黒薔薇たちもその塊に引き寄せられていく。

「そして、この効果で破壊される植物族モンスターたちの攻撃力の合計と同じ数値の攻撃力を持つモンスター1体を墓地から特殊召喚する!さあ、再び現れるんだ。《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》!!」

黒薔薇の塊が砕け、その中から再び現れる《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》。

己の進化体と並び立つ形となり、2体のドラゴンの目は獲物たる遊矢に向けられる。

 

スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン レベル8 攻撃2800

 

「《グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》の効果発動!1ターンに1度、フィールド上の表側表示のモンスター1体の効果をターン終了時まで無効にし、攻撃力を0にする!!」

《グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》の目が光ると同時に、《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》の足元に茨が発生し、氷の鎧を突き破って体に突き刺さる。

鋭い痛みと脱力感に襲われたそのモンスターは地面に伏し、《グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》はその様子に口角を吊り上げた。

 

オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン ランク7 攻撃1400→0

 

「さらに、《スターヴ・ヴェノム》の効果。1ターンに1度、相手フィールドのレベル5以上のモンスター1体のカード名と効果をターン終了時まで得る。僕が選ぶのはその《マンモスプラッシュ》だ」

「何だって!?」

《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》の目に《EMマンモスプラッシュ》が映り、体に埋め込まれた玉石の色が水色に変化する。

《EMマンモスプラッシュ》の効果を奪われたこともそうだが、それ以上に遊矢の警戒心を引き上げるのはユーリの手札に加わった《超融合》だ。

「バトル!《グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》で《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》を攻撃!!」

茨に拘束された《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》に向けて紫の毒を含んだ炎を放つ。

炎を受けた《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》の肉体は毒で溶け、炎で焼き尽くされていく。

そして、炎は当然遊矢にも襲い掛かる。

「うわああああ!!」

 

遊矢

ライフ4000→2350

 

「アハハハ!!もろに受けたね!」

「俺は…《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》の効果を発動!エクシーズ召喚されたこのカードが墓地へ送られたとき、エクストラデッキからオッドアイズを1体特殊召喚できる!現れろ、《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》!!」

炎の中に消えた《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》だが、残された肉体が光を放ち、青い渦を生み出すと、その中から《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》が飛び出した。

 

オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

「《ボルテックス・ドラゴン》の効果!このカードの特殊召喚に成功したとき、相手フィールドの表側攻撃表示モンスター1体を手札に戻す。俺が手札に戻すのは、《グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》!!」

「ハハハハ!このカードを使うって、わかってるくせに!!」

再び発動される《超融合》。

嵐を起こすはずだった《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》が《グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》もろとも渦に飲み込まれ、強引に1つの存在へと変化させられる。

「魅惑の香りで虫を誘う二輪の麗しき華よ。今一つとなりて、その花弁が誘う深淵より飢えたる牙を生み出せ!融合召喚!現れろ!全てを喰らう毒牙龍!レベル10!《スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン》!」

渦の中から飛び出したそのドラゴンの姿は《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》とよく似ている。

だが、新たに緑やオレンジの玉石を手にしており、暗い赤のみだった玉石に色彩が組み込まれることとなった。

 

スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン レベル10 攻撃3600

 

手札から墓地へ送られたカード

・捕食植物ビブリスプ

 

「手札から墓地へ送られた《ビブリスプ》の効果。このカードが墓地へ送られたとき、デッキから新たな捕食植物を手札に加えることができる。僕が手札に加えるのは《捕食植物ドローイン・パエパランツス》」

これで、残った攻撃可能なモンスターは《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》と融合召喚されたばかりの《スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン》の2体。

遊矢のフィールドに残っている《EMマンモスプラッシュ》だけでは、もう守り切れない。

一見すると、遊矢の敗色濃厚だが、ユーリはそんなことは望まない。

ユーゴ以上の楽しみを彼に求める。

「さあ、見せなよ!君の力を!!《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》で《マンモスプラッシュ》を…」

「…罠発動!《EMマジックミラー》!!俺のフィールドに存在するモンスターがEM1体のみで、相手フィールドにエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターが2体以上存在するとき、俺たちの墓地に存在する速攻魔法1枚の発動時の効果を使用する!俺が選ぶのは…《超融合》!!」

「そんなカードをずっと伏せていたのか…!!」

そうだ、それでいい。

勝つわけにもいかず、かといって敗北するわけにもいかない状況でのあがき。

それがユーリの勝利に彩りを与え、笑顔をもたらしてくれる。

そんな考えをよそに、《EMマンモスプラッシュ》が鼻で大きな鏡を上空に向けて投げる。

ハート形だが、中央がギザギザにひび割れしているその鏡には《超融合》のカードが映り、鏡から渦が発生する。

「《超融合》はお互いのフィールドのモンスターを素材に融合召喚を行う!俺が融合素材とするのは《マンモスプラッシュ》と《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》!!…!!」

融合素材にユーリのドラゴンを選択した影響なのか、急に心臓が高鳴るのを感じる遊矢。

高鳴りと共に感じるのは目に映るものすべてを壊したくなる強い破壊衝動。

心の中に急速に膨らむそのゆがんだ感情を抑えるべく、遊矢が強引に首をふる。

「巨獣のしぶきよ、欲望の竜と一つとなりて、新たな種族としてよみがえれ!融合召喚!現れよレベル8!《EMガトリングール》!」

取り込まれ、一つとなったその姿はシルクハットと黒い燕尾服姿をしたグールで、その上品な服には不釣り合いなガトリングガンを背負い、それがエンターテイナーではなく破壊者であることを伝えていた。

 

EMガトリングール レベル8 守備900

 

「そう、そうだよ!!こんなに《超融合》を使ってあげてるんだ!君も使って、あがかないとさぁ!!アハハハハハ!!」

「笑っていられるのは今のうちだ!!《ガトリングール》の効果!!このカードの融合召喚に成功したとき、フィールド上に存在するカード1枚につき、200のダメージを与える!!」

ガトリングに銃弾が装てんされ、銃口がユーリに向けられる。

「今、フィールドに存在するカードは5枚!よって、1000のダメージを与える!!」

狂ったように笑い始めた《EMガトリングール》がユーリに向けてガトリングを発射する。

次々と銃弾を浴び、吹き飛ばされていくユーリ。

だが、苦しんでいる様子はなく、むしろ楽し気に笑っていた。

 

ユーリ

ライフ2550→1550

 

「さらに、《ガトリングール》の融合素材にペンデュラムモンスターを使用している場合、相手フィールドのカード1枚を破壊し、破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを与える!!」

転倒したユーリでなく、今度は《スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン》に狙いを定める。

《スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン》の元々の攻撃力は3600。

この効果が通れば、デュエルは遊矢の勝利に終わる。

「いいの…?この効果で勝負が決まれば、僕たちは…」

ズァークになる。

ユーリの言いたいことの続きは容易にわかる話だ。

だが、そうならないための手段がたった一つだけ残っている。

「…《スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン》を破壊しろ、《ガトリングール》!!」

遊矢の命令を受けた《EMガトリングール》がガトリングを発射する。

銃弾は《スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン》を撃ちぬき、ハチの巣にして、残りの銃弾がユーリを襲う。

「でもさ…まだ満足できないんだよ。君とのデュエルは!!僕は手札の《ドローイン・パエパランツス》の効果発動!」

突然フィールドにパエパランツス科の半食虫植物を背中に生やした亀が現れ、草がユーリに迫る弾丸を受け止めていく。

「このカードは僕がダメージを受けたターンに手札から特殊召喚できて、ターン終了時まで僕が受けるすべてのダメージを0にしてくれるのさ!!」

 

捕食植物ドローイン・パエパランツス レベル6 守備2600

 

「ぐっ…それでも、《スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン》は破壊される!!」

「いいよ、けれど…ただでは死なないさ。《スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン》は相手によって墓地へ送られたとき、墓地の闇属性モンスター1体を特殊召喚できる。僕は再び《スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン》を特殊召喚する」

胴体に穴の開いた《スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン》だが、その姿を黒薔薇の花びらへと変化させて宙を舞い、再び一つに集結すると無傷な状態でその姿を戻した。

 

スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン レベル10 攻撃3600

 

「さあ、さっき殺された恨みを晴らすんだ!!《スターヴ・ヴェノム》!!」

ユーリの言葉と共に激しく咆哮する《スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン》に宿る玉石から電撃が発生するとともに、再びその体を黒バラの花びらへと変化させる。

花びらに包まれた《EMガトリングール》の肉体が青い炎を発生させ、灰へと変わっていく。

「僕はこれで、ターンエンドだ…」

 

ユーリ

手札2→0

ライフ1550

場 スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン レベル10 攻撃3600

  捕食植物ドローイン・パエパランツス レベル6 守備2600

 

遊矢

手札1

ライフ2300

場 星読みの魔術師(青) ペンデュラムスケール1

  時読みの魔術師(赤) ペンデュラムスケール8

  星霜のペンデュラムグラフ(永続魔法)

 

「フフフ、なかなかのデュエルを見せてくれるではないか。この化け物どもは。いかがかな?人間と精霊の魂を宿すデュエリストよ、我が怪物のデュエルは」

「何が、いいたいんだ…」

「剣崎侑斗、我らとは違う次元のデュエリスト。元はガスタの精霊の生まれ変わり。元々の魂が同じ故に融合したとしても、元の人格を維持することができる。君のように、人と精霊の魂が融合した存在は何人も存在する。いずれも、強力なデュエリストだ」

モニターに次々と映し出されるカードの精霊とデュエリストの画像。

その中には侑斗や遊城十代なども存在し、当然侑斗の知らない人物もいる。

「故に、我々は怪物をより怪物たらしめる手段をとった。かつて、覇王龍ズァークの一部となった人間とドラゴンであれば、可能であると…」

ユーリは生まれつき高いデュエリストとしての技量を誇り、それ故に疎まれ、孤独な生活を送っていた。

その中で、彼の持つドラゴンである《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》のみが友達だった。

それ故に自分が楽しければという思いはあっても、他人を傷つけるようなことはしなかった。

ユーリ本人は3年前のエクシーズ次元への攻撃に参加しておらず、別次元でデュエルをしたのは舞網チャンピオンシップの時が初めてだ。

「予測通り、彼と彼のドラゴンの魂を融合した結果、さらなる力の上昇を認められた。最も、人格についてはこのように、破綻したが。だが、期待値は上回った。それ故にここにいる、楽園を生み出すための生贄、化け物として」

「化け物って…あなたこそが、化け物じゃないか…!!」

 

ユーリのフィールドに残る《スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン》。

そして、残った手札に遊矢の目が行く。

(エクストラデッキには《オッドアイズ》達がいる。なら…!)

「俺のターン、ドロー!!」

 

遊矢

手札1→2

 

「俺は…手札から魔法カード《施しのペンデュラムグラフ》を発動。俺のフィールドのペンデュラムグラフカード1枚を墓地へ送り、デッキからカードを2枚ドローする。もう1度頼むぞ、《時読み》、《星読み》!!ペンデュラム召喚!現れろ、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》、《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》、《EMセカンドンキー》!!」

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500

オッドアイズ・ファントム・ドラゴン レベル7 攻撃2500

EMセカンドンキー レベル4 攻撃1000

 

「この瞬間、《ドローイン・パエパランツス》の効果発動!相手ターンのメインフェイズ時、僕の墓地に存在するレベル2以下の植物族チューナーモンスター1体を特殊召喚できる。僕が特殊召喚するのはレベル1の《スポーア》!!」

 

スポーア レベル1 攻撃400(チューナー)

 

「チューナーモンスター…まさか!?」

「そして、《ドローイン・パエパランツス》とこの効果で特殊召喚されたチューナーモンスターのみを素材にシンクロ召喚を行う!その美しくも雄々しき翼翻し、光の速さで敵を討て!シンクロ召喚!現れろ、レベル7!《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》!」

ユーリの手によって召喚されるユーゴのエースモンスター。

Dホイールにクリアウィングの思念が宿っているため、存在するのは肉体のみではあるが、それでも自らの存在を使われたことにはクリアウィング自身、不快感しかない。

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

「どうだい…?会いたかっただろう?お仲間にさぁ!」

「くっ…!!」

顔をゆがめる遊矢だが、頭の中は違和感を抱くほど冷静だ。

ここで現れた《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》によって、フィールド上におけるレベル5以上のモンスターの効果、そしてフィールド上のレベル5以上のモンスター1対のみを対象としたモンスター効果を不用意に使うことができなくなった。

だが、ユーゴがユーリに敗れ、取り込まれた以上はこのような状況になることはわかっている。

「あのさぁ、遊矢。せっかくなんだから…召喚したらどうだい?もう1人のお仲間をさあ…」

「…俺は《セカンドンキー》の効果を発動。このカードが召喚・特殊召喚されたとき、デッキから新しいEM1体を墓地へ送る。ただし、俺のペンデュラムゾーンにカードが2枚存在する場合、墓地へ送られずに手札に加えることもできる。俺は、《ギッタンバッタ》を手札に加える。そして、《EMギッタンバッタ》を召喚!」

 

EMギッタンバッタ レベル4 攻撃100

 

「俺は…レベル4の《ギッタンバッタ》と《セカンドンキー》でオーバーレイ!!舞い降りろ!漆黒の翼はばたかせ反逆の牙を持つ龍!エクシーズ召喚!!!《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》!!!」

フィールドに集うズァークの因子となった4体のドラゴン。

違いがあるとしたら、遊矢が従える2体には意思があり、ユーリの2体にはそれがないことだ。

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ランク4 攻撃2500

 

「ぐ、うう、ぐう…!!」

これにより、遊矢に宿るズァークの因子が活性化し、同時に脳裏にあの言葉が響く。

(今こそ一つに…今こそ一つに…)

(小僧!)

「大丈夫…大丈夫だ、オッドアイズ!まだ、自分を…保ててる…まだ、戦える!!」

ギリギリと歯をかみしめ、ギロリとユーリを見る遊矢。

ユーリもズァークの因子が活性化しているにも関わらず、抵抗するそぶりを見せずにニヤニヤと笑ってる。

「アハハハハ!!この感じ、いい…最高だ…。最高だよ、この感じも…このデュエルも!!」

「そんな、こ、と…!!」

(遊矢、気をしっかり持て!)

「ユート…」

(今は…瑠璃たちを助けることだけを考えるんだ。ズァークのことは、その後でいい!!)

「ああ…そうだ!その通りだ!!《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》の効果発動!オーバーレイユニットを2つ取り除く、相手フィールドのモンスター1体の攻撃力を半分奪う!俺は、《スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン》の攻撃力を半分奪う!!トリーズン・ディスチャージ!!」

「バーーーカ!!!《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の効果発動!フィールド上のレベル5以上のモンスター1体のみを対象とするモンスター効果が発動したとき、その発動を無効にして破壊する!ダイクロイック・ミラー!!」

オーバーレイユニットを取り込み、稲妻を起こして《スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン》を捕縛しようとする《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》だが、《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》から放たれる光が稲妻を消し飛ばし、《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》を襲う。

(今です、遊矢、ユート!!)

「俺は手札から速攻魔法《RUM-幻影騎士団ラウンチ》を発動!お互いのターンにメインフェイズ時に発動でき、オーバーレイユニットのない闇属性エクシーズモンスター1体をランクの1つ高い闇属性エクシーズモンスターにランクアップさせる!!」

「何!?」

上空に発生する銀河の中へ《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》が飛び込んでいく。

教会のステンドガラスのような翼が生まれ、両足と胴体を白骨でできた甲冑が固めていく。

「煉獄の底より、いまだ鎮まらぬ魂に捧げる反逆の歌!永久に響かせ現れよ!ランクアップ・エクシーズチェンジ!出でよ、ランク5!《ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン》!」

銀河を突き破り、舞い降りる新たな《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》の姿。

このカードが遊矢の今の状況を打破し、勝利をもたらす。

 

ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン ランク5 攻撃3000

 

「そして、発動した《幻影騎士団ラウンチ》は《ダーク・レクイエム》のオーバーレイユニットになる。そして、《ダーク・レクイエム》の効果を発動!オーバーレイユニットを1つ取り除き、相手フィールドのモンスター1体の攻撃力をすべて奪う!!《スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン》の攻撃力を奪え!!レクイエム・サルベーション!!」

効果を使ってしまった《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》はもう妨害できず、オーバーレイユニットを宿した《ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン》のステンドガラス状の翼からビームが放たれる。

ステンドガラスに閉じ込められた《スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン》は身動きが封じられ、赤黒いオーラをまとった《ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン》が咆哮する。

 

ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン ランク5 攻撃3000→6600

スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン レベル10 攻撃3600→0

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・RUM-幻影騎士団ラウンチ

 

「攻撃力を全部奪うなんて…。これで、《ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン》の攻撃力は6600。これで、勝負がつきそうだね」

ユーリのライフは1550。

攻撃力を失った《スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン》に遊矢の3体のドラゴンのいずれかの攻撃が通れば、勝負が決まる。

「でも、いいのかな?君が勝てば、僕たちと一つになって、ズァークが…」

「そんなことはわかってる!けれど…俺は、世界を滅ぼすつもりなんてない。バトルだ!《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》で《スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン》を攻撃!螺旋のストライク・バースト!!」

先手を打つのはペンデュラム召喚が生まれてからの仲間である《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》。

螺旋するブレスが《スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン》を貫き、ユーリを襲う。

「僕は墓地の《捕食植物ロリギュラマンティス》の効果発動!僕のフィールドの闇属性・ドラゴン族融合モンスターが相手モンスターと戦闘を行うとき、墓地のこのカードを除外することで、お互いのモンスターを破壊する!」

頭上に現れる、ロリギュラ属の食虫植物で構成されたカマキリの幻影から力を受けた《スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン》が最後の力を振り絞り、その肉体をバラの花びらに変化させる。

花びらはブレスを包んで消滅させ、さらには《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を包み、白い灰へと変貌させた。

「そして、自分フィールドのモンスター1体にこの効果で破壊された僕のモンスター1体の攻撃力を次の僕のターン終了時まで与える!!」

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7 攻撃2500→5800

 

「さらに、僕は墓地の罠カード《捕食衝動》の効果を発動!!僕のフィールドの捕食植物が破壊されたとき、墓地のこのカードを除外することで、そのモンスターを再び墓地から特殊召喚する!」

フィールドに残る花びらが再び集結し、《スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン》が元の万全な状態に戻った。

 

スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン レベル10 守備2500

 

「そして、《捕食衝動》の効果で特殊召喚されたモンスターのレベルの数×100、相手フィールドのモンスターの攻撃力はダウンする!!」

 

オッドアイズ・ファントム・ドラゴン レベル7 攻撃2500→1500

ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン ランク5 攻撃6600→5600

 

「これで、《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の攻撃力は《ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン》を上回る!次のターン、《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》に攻撃力がアップした《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》で攻撃すれば、君の負けだぁ…」

仮にペンデュラム召喚の際に、2体のオッドアイズのうちの1体のみを出す形にしておけば、勝負はわからなかったかもしれない。

次のターンがまわった瞬間、勝利はユーリのもの。

「次のターンがお前にあれば、な」

「何…?」

「もう、お前に次のターンなんてない!!《ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン》で《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》を攻撃!!」

攻撃力が既に上回っているはずの《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》に向け、《ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン》が翼から雷を放とうとする。

「血迷った!?攻撃力は僕の《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の方が…」

「俺は手札から速攻魔法《出撃の槍》を発動!自分モンスターの攻撃宣言時、自分フィールドの攻撃モンスター以外のモンスター1体をリリースすることで、ダメージステップ終了時まで攻撃モンスターの攻撃力をリリースしたモンスターの元々の攻撃力分アップさせる。俺は《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》をリリースし、《ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン》の攻撃力をアップ!」

 

ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン ランク5 攻撃5600→8100

 

「な…にぃ!?」

再び攻撃力が上回り、咆哮と共にユーリの周囲に落雷が発生する。

自分が負ける。

今までデュエルで負けたことのない自分がここで負ける。

その相手が別次元の自分である榊遊矢だというなら、あまり悪い気分じゃない。

「気を付けなよ…?僕を倒した瞬間、君は…ズァークになるんだから…」

「…いけ!《ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン》!!」

翼から放たれる稲妻が《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》を破壊し、ユーリを襲う。

爆発とともに吹き飛んでいくユーリの肉体。

だが、これから起こるであろう事態を思うと、自然とユーリの口角は吊り上がっていた。

 

ユーリ

ライフ1550→0

 

 

 

増殖の宝札

通常罠カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか発動できない。

(1):お互いにモンスターの特殊召喚に1回以上成功し、このターンに特殊召喚されたモンスターの数が4体以上の場合にのみ発動できる。自分はデッキからカードを2枚ドローする。この効果を発動後、ターン終了時まで自分はデッキからカードを手札に加えることはできない。

 

アナザー・フュージョン(漫画オリカ:効果変更)

通常罠カード

このカード名のカードの効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分の墓地に存在する「融合」魔法カード1枚を除外することで発動できる。そのカードの発動時の効果を発動する。この効果を発動したターン、自分はモンスターの召喚・反転召喚・特殊召喚を行えない。

 

捕食回収(プレデター・リカバリー)

通常魔法カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールドの闇属性・植物族モンスター2体をリリースすることで発動できる。墓地または除外されている自分の「融合」または「フュージョン」魔法カード1枚を手札に加える。この効果を発動したターン、自分は融合召喚以外の方法でEXデッキからモンスターを特殊召喚できない。

 

EMマジックミラー

通常罠カード

このカード名の(1)(2)は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。

(1):自分フィールドに存在するモンスターが「EM」モンスター1体のみで、相手フィールドにEXデッキから特殊召喚されたモンスターが2体以上存在する場合にのみ発動できる。自分または相手の墓地に存在する速攻魔法カード1枚の八童子の効果を発動する。この効果を発動後、ターン終了時まで自分は魔法カードを発動できない。

 

施しのペンデュラムグラフ

通常魔法カード

(1):自分フィールドに存在する「ペンデュラムグラフ」カード1枚を墓地へ送ることで発動できる。デッキからカードを2枚ドローする。自分Pゾーンに「魔術師」Pカードが2枚存在する場合、このカードの発動時に相手はカード効果を発動できない。

 

捕食植物ドローイン・パエパランツス

レベル6 攻撃2100 守備2400 効果 闇属性 植物族

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分が戦闘・効果によるダメージを相手から受けたときに発動できる。手札に存在するこのカードを特殊召喚する。その後、自分はターン終了時まで受けるすべてのダメージが0となる。

(2):相手メインフェイズ時、自分の墓地に存在するレベル2以下の植物族チューナー1体を対象に発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。その後、このカードとこの効果で特殊召喚されたモンスターのみを素材としてS召喚を行う。この効果でS素材となったモンスターは除外される。

 

捕食植物ロリギュラマンティス

レベル7 攻撃2100 守備2600 効果 闇属性 植物族

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):1ターンに1度、捕食カウンターの乗っている相手フィールドのモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを破壊する。

(2):このカードが墓地に存在し、自分フィールドの闇属性・ドラゴン族融合モンスターが相手モンスターと戦闘を行うとき、墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。戦闘を行うお互いのモンスターを破壊する。その後、自分フィールドのモンスター1体の攻撃力を次の自分のターン終了時まで、この効果で破壊された自分のモンスターの元々の攻撃力分アップさせる。この効果はこのカードが墓地へ送られたターン、発動できない。

 

捕食衝動

通常罠カード

(1):自分フィールドに存在する「捕食植物」モンスター1体をリリースすることで発動できる。相手フィールドに存在するモンスターに捕食カウンターを1つ置く。捕食カウンターが置かれたレベル2以上のモンスターのレベルは1になる。

(2):自分フィールドの「捕食植物」モンスターが戦闘・効果で破壊されたとき、墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。その後、相手フィールドに存在するモンスターの攻撃力をこの効果で特殊召喚されたモンスターのレベル×100ダウンさせる。この効果は(1)の効果を発動したターン、発動できない。

 

出撃の槍

速攻魔法カード

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分のモンスターの攻撃宣言時、自分フィールドの攻撃モンスター以外のモンスター1体をリリースすることで発動できる。攻撃モンスターの攻撃力をダメージステップ終了時までリリースしたモンスターの元々の攻撃力分アップさせる。

(2):相手バトルフェイズ開始時、自分の墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。手札・デッキから「迎撃の盾」1枚を自分フィールドにセットする。この効果でセットされたカードはセットしたターンでも発動できる。


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