遊戯王ARC-V 戦士の鼓動   作:ナタタク

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第128話 虫

「これは…」

ユーゴの反応が消えた場所にたどり着く遊矢が見た光景、それはデュエルの影響でボロボロになった廊下だった。

絨毯からは焼け焦げたにおいを感じ、ガレキまみれになったこの空間がそこで行われたデュエルの激しさを物語っている。

そして、ユーゴの反応が消えたということは出る答えは一つだけだ。

「…ユーリに敗れた、ということでしょう。そして…」

「言うな!クリアウィング…!!いわないでくれ…」

そこから起こったことを否定しようと首を振る遊矢だが、その答えは覆ることがないことは遊矢本人が一番よくわかっている。

自分の中にいるユートと同じようなことが起こった。

そして、同時にズァーク復活にまた一歩近づいてしまった。

遊矢はヒイロから手渡された銃を見る。

ズァークが起こした悲劇、そしてこの世界の成り立ちを思い出し、遊矢は銃をしまう。

「クリアウィング、オッドアイズ、ダーク・リベリオン…。俺、決めたよ」

「小僧…」

「遊矢さん…」

「ユーリは…ユーリは俺が倒す。そして…終わらせる。ズァークを…」

 

「…い…。い…失っ…ですか??」

「ん、うう…お前は…黒咲…」

ガレキの山を背もたれにした状態で倒れるヒイロが目を開き、傷だらけの黒咲に目を向ける。

太陽の傾きを見て、長い間気を失っていたことを知る。

「ああ…すまない。ブーンというジェルマンのデュエリストに自爆に巻き込まれた。デュエルに勝利して、油断してしまった…」

「そうですか…。奴を。しかし、あなたの体は…」

「訳ありの体だ、というよりも…こいつのおかげだろうな…」

ヒイロの中指にはめられている指輪に埋め込まれた赤い石をそっと撫で、再びそれに救われたことに感謝する。

かつて、ダークシグナーとの戦いで命を失ったとき、龍亜が目覚めつつあったシグナーの力をくれたことで生まれた命の石。

傷ついた体を癒す力はシグナーの力を失ってもなお健在だ。

黒咲が傷ついた体を押してガレキの中からヒイロの体は骨や体の一部がつぶれ、破片が突き刺さった状態で、正直に言えばもう死んだものとさえ思っただろう。

だが、命の石の力がヒイロの肉体を修復し、あまりの重傷故に長い時間がかかりはしたものの、こうして立ち上がるだけの力を取り戻してくれた。

「お前はどうした…?妹は、救えていないようだが…」

「ああ…。アカデミアに操られている。殺されかけた…」

瑠璃に敗れ、塔から海へ落されてから、どうやって陸に上がったのかは黒咲も覚えていない。

気が付いたときには壁にもたれるように倒れていて、そこから瑠璃を探してさまよう中でここに来ただけだ。

最も、そこでヒイロを見つけることになることは想定外ではあったが。

「なら、その大本を叩くだけだ。少し、肩を貸してくれ…」

「わかりました」

黒咲の肩を借りて起き上がるヒイロは自分の年齢を感じてしまう。

今回の怪我はひどかったとはいえ、それでも命の石で回復してからすぐにまともに動けたかつてと比べると、年を取ったことでガタを感じてしまう。

もうかつてのように、壁や柱伝いにビルをよじ登るようなことはできないだろう。

 

「ここだ…おそらくは、ここにアカデミアの中枢がある」

疲れ果てた体を押して、零児は階段の先にある扉に指をさす。

遊矢が離れ、内部に突入してからも零児達はデュエル戦士やデュエルロイドと戦い続け、激戦と連戦が体力を確実に奪っていた。

だが、それでもようやくここまでたどり着くことができた。

あとはこの扉を開き、そこにいるであろう今のプロフェッサーたるAIを破壊すれば、この愚かな戦争は終わる。

そして、扉を開けることで零児は零王の死を完全に受け入れるしかなくなるだろう。

彼の死のことは伝聞でしか聞いておらず、まだ零児にはそれが現実のようには思えていない。

幼少期の家族を愛していた頃の彼と、プロフェッサーとなり、今と未来を捨てた彼。

そのどちらもがごちゃ混ぜとなり、それが零児に問いかける。

自分は父親である零児を憎んでいるのか、それとも愛しているのか。

ランサーズを結成し、明確に敵対することとなったにもかかわらず、割り切れない自分を今になって感じてしまう。

「行こう、もうこんなことは終わらせないと」

「ああ…そうだな」

一段一段階段を上がっていき、たどり着いた扉を零児は力いっぱい開く。

そこには緑色の光を放つ機械と4つのカプセルを背景とし、絨毯と椅子だけが存在する無機質な空間が広がっていた。

背景となっているものが放つ光で椅子に座る人間のシルエットが見えたものの、それが零王のものなのか、それとも別の人間の物なのかはまだ判別できない。

部屋に入り、近づいて行ってようやく見ることができたその姿に零児の目が大きく開く。

「…これ、が…」

扉が開き、こうして近づいたというのに微動だにしないことから、予感はしていたものの、それでもこうしてみた椅子に座る男、赤馬零王のその姿は零児に衝撃を与えるには十分すぎる者があった。

ただれたような皺だらけの肌に閉じた瞳、背もたれがなければ今にも倒れそうなほどの弱弱しい体。

鼻や口からつなげられたチューブに閉じたままの目。

かつての記憶の中にある父親としての零王とも、プロフェッサーとしての零王とも似ても似つかないその姿。

「なんだ…これは…」

「零児君…」

「プロフェッサーですよ、先代の…ではありますが」

椅子の後ろから姿を見せるドクトルがニヤリと笑い、ボロボロな姿の零王を見る。

「赤馬零王…彼はすばらしい人物だった。このアカデミアと融合次元にアークエリアプロジェクトという理想を見せ、夢を与えてくれた。そして、それを実現するだけの力をもたらした。だが…プロフェッサーとして先頭を行き続けるにはあまりにも心が弱かった。哀れなものだ…それほどの理想を実現したいというなら、自分の心を捨てればよかったものを。その点は、現在のプロフェッサーを見習ってほしいものだ」

「馬鹿なことを…。あの男はそのようなものを求めていない。奴が求めたのは…もう失ったものを取り戻すこと。自分の過去だけだ」

目の前に現れた敵に対して、零児はランサーズのリーダーとしての仮面をかぶる。

感情を飲み込む事情をもたらしてくれたこの男に感謝しながら。

「ああ…知っているよ。彼が疲れ果て、病に倒れてからね…プロフェッサーが教えてくれました。そして、命令したのです。彼を生かせ…アークエリアプロジェクトを実行せよと。その最終段階が近づいている」

カチリ、とドクトルが手元にあるボタンを押す。

4つのカプセルのうちの2つに光が発生し、その中にリンと瑠璃、そしてセレナが現れる。

3人とも、目から光を失っていて、こんな異質な空間の中にいるにもかかわらず、何も抵抗する様子を見せない。

「セレナ…」

「あの2人が…瑠璃とリンって奴か…」

「3人とも、今は私に従順だ。私の虫のおかげで…」

「なんて卑劣な…」

ニヤニヤと笑いながらカプセルの中の3人を見つめるドクトルに侑斗は怒りを覚える。

その虫とその根源であろうドクトルを倒さなければ、3人を取り戻すことはできないだろう。

「おい、ジジイ。てめえをぶっ倒して、あの3人を解放する。ついでに、そこの死にぞこないの身柄ももらう」

「私を…倒す??…いいだろう、私の虫の力を見せてあげよう」

左腕に装着されている幾百の虫が融合したようないびつな姿のデュエルディスクを展開するドクトルがニヤリと笑う。

デュエルディスクにはジェルマンの紋章が刻まれている。

「やっぱり、ジェルマンかよ…。ろくな奴がいねえ…」

(なんだろう…この感じ。このデュエルに嫌な予感を感じる、翔太君…)

「「デュエル!!」」

 

ドクトル

手札5

ライフ4000

 

翔太

手札5

ライフ4000

 

「私の先攻。私は手札から魔法カード《融合徴兵》を発動。エクストラデッキに存在する融合モンスター1体を見せ、デッキから融合素材となるモンスター1体を手札に加える。私が手札に加えるのは《デーモンの召喚》。そして、手札からフィールド魔法《パラサイト・ネットワーク》を発動」

発動と同時に周囲に大小さまざまな形状の《パラサイト・フュージョナー》が姿を見せ、それらが血管のようなチューブで相互に接続されていく。

よく見ると床や壁にも張り付くように《パラサイト・フュージョナー》が存在する。

「気持ち悪いフィールド魔法を…!」

「《パラサイト・ネットワーク》の効果。1ターンに1度、手札・墓地から《パラサイト・フュージョナー》1体を特殊召喚できる」

壁に張り付いていた《パラサイト・フュージョナー》が血管のようなチューブを取り外し、ドクトルのフィールドに這うように移動する。

 

パラサイト・フュージョナー レベル1 攻撃0

 

「そして、《パラサイト・フュージョナー》の効果。このカードを含む手札・フィールドのモンスターを素材に融合召喚できる。そして、《パラサイト・フュージョナー》は融合モンスターに記入されている融合素材モンスター1体の代わりにできる」

「待て…!《パラサイト・フュージョナー》の効果は知っている!!そのカードの効果はフィールド上のモンスターしか…」

「《パラサイト・ネットワーク》の効果により、手札のモンスターも選択できるのだ。最も、その代償として私は融合召喚以外の方法でエクストラデッキからモンスターを特殊召喚できないが…。私は《パラサイト・フュージョナー》と手札の《デーモンの召喚》を融合。稲妻の悪魔よ、我が虫と一つとなり、新世界への礎となるがいい。融合召喚。現れよ、《デーモンの顕現》」

フィールドに現れた《デーモンの召喚》が《パラサイト・フュージョナー》に侵食され、その翼を巨大化させるとともに、全身に紫の稲妻を帯電させる。

 

デーモンの顕現 レベル6 攻撃2500

 

「《デーモンの顕現》はモンスターゾーンに存在する限り、カード名を《デーモンの召喚》として扱う。そして、《デーモンの顕現》がフィールドに存在する限り、《デーモンの召喚》の攻撃力は500アップする」

 

デーモンの顕現(《デーモンの召喚》扱い) レベル6 攻撃2500→3000

 

「そして、手札から永続魔法《パラサイト・ウォール》を発動。1ターンに1度、私のフィールドの《パラサイト・フュージョナー》を融合素材として融合召喚したモンスター1体に墓地の《パラサイト・フュージョナー》を装備カード扱いとして装備する」

地面が砕け、そこから再び姿を現した《パラサイト・フュージョナー》が《デーモンの顕現》の体にまとわりつく。

「そして、《パラサイト・フュージョナー》を装備カードとしたモンスターが破壊されるとき、代わりに装備されているこのカードを破壊する。私はカードを1枚伏せ…ターンエンド」

 

ドクトル

手札5→0

ライフ4000

場 デーモンの顕現(《デーモンの召喚》扱い、《パラサイト・フュージョナー》装備) レベル6 攻撃3000

  パラサイト・ウォール(永続魔法)

  伏せカード1

  パラサイト・ネットワーク(フィールド魔法)

 

翔太

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「《パラサイト・フュージョナー》…気持ち悪いカードをつかいやがって!俺のターン!」

 

翔太

手札5→6

 

「俺は手札から魔法カード《逆境の宝札》を発動!相手フィールドに特殊召喚されたモンスターが存在し、俺のフィールドにモンスターが存在しないとき、デッキからカードを2枚ドローする。そして、俺はスケール2の《魔装槍士タダカツ》とスケール9の《魔装剣士ムネシゲ》でペンデュラムスケールをセッティング!来たれ、時の果てに眠りし英雄の魂。漆黒の魂と契約し、封印から解き放たん!ペンデュラム召喚!現れろ、《魔装騎士ペイルライダー》、《魔装銃士マゴイチ》、《魔装獣ユニコーン》」

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

魔装銃士マゴイチ レベル4 攻撃1600

魔装獣ユニコーン レベル4 攻撃1600

 

「《ユニコーン》の効果。このカードを魔装騎士の装備カードとし、装備モンスターの攻撃力を800アップさせる」

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500→3300

 

「そして、装備モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊したとき、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える」

「ふむぅ…《デーモンの顕現》をそのモンスターで破壊し、さらにダイレクトアタックで勝負を決めると…?」

「バトルだ。《魔装騎士ペイルライダー》で《デーモンの顕現》を攻撃!」

《魔装獣ユニコーン》が駆け出し、光剣を抜いた《魔装騎士ペイルライダー》が構える。

接近してくる敵に向けて雷を放つ《デーモンの顕現》だが、雷と雷の隙間をかいくぐるように駆け抜ける《魔装獣ユニコーン》を止めることができず、光剣の刃が迫る。

だが、取り付いていた《パラサイト・フュージョナー》が盾となって刃を受け止めて消滅する。

「残念…そのようなことはできない。《パラサイト・フュージョナー》は装備モンスターの身代わりになれる」

「だろうな、だが…《ペイルライダー》の効果を発動。戦闘を行った相手モンスターを破壊する」

守りを失った《デーモンの顕現》に向けて、上空から降ってきたミサイルライチャーを手にした《魔装騎士ペイルライダー》が全弾をそのモンスターに向けて放つ。

高火力のミサイルの雨を受けた《デーモンの顕現》が消滅し、爆風がドクトルを襲う。

「ぐお…くう!!」

 

ドクトル

ライフ4000→3700

 

「しかし…破壊された《デーモンの顕現》の効果。融合召喚されたこのカードが破壊されたとき、《デーモンの召喚》を特殊召喚できる」

 

デーモンの召喚 レベル6 攻撃2500

 

「さらに、《パラサイト・ネットワーク》の効果。《パラサイト・フュージョナー》を融合素材とした融合モンスターが相手によって破壊されたとき、エクストラデッキに存在する融合モンスターを相手に見せることで、そのカードに記されている融合素材モンスター1体を手札に加える。私はエクストラデッキの《E・HEROネオス・ナイト》を見せ、デッキから《E・HEROネオス》を手札に加える」

「E・HERO!?これって、お父さんの!!」

「ええ…永瀬博士はいいカードを用意してくれた。アカデミアの…我らの役に立ってもらおう…」

「これで、次のターンに奴は《パラサイト・フュージョナー》の効果を使い、再び融合召喚を…!」

「知るかよ、俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

ドクトル

手札0→1(《E・HEROネオス》)

ライフ3700

場 デーモンの召喚 レベル6 攻撃2500

  パラサイト・ウォール(永続魔法)

  伏せカード1

  パラサイト・ネットワーク(フィールド魔法)

 

翔太

手札6→0

ライフ4000

場 魔装騎士ペイルライダー(《魔装獣ユニコーン》装備) レベル7 攻撃3300

  魔装銃士マゴイチ レベル4 攻撃1600

  伏せカード2

  魔装槍士タダカツ(青) ペンデュラムスケール2

  魔装剣士ムネシゲ(赤) ペンデュラムスケール9

 

「私のターン…ドロー」

 

ドクトル

手札1→2

 

「私は《パラサイト・ネットワーク》の効果を発動。墓地の《パラサイト・フュージョナー》と特殊召喚し、このカードと手札の《ネオス》を融合。宇宙の闇より希望を届けし英雄よ、我が虫と一つとなりて、新世界への礎となれ。融合召喚。現れよ、《覇道星シュラ》」

《パラサイト・フュージョナー》にとりつかれた《E・HEROネオス》の瞳が赤く染まるとともに、その肉体が粉々に砕け散る。

そして、その肉体を《パラサイト・フュージョナー》がつなぎ合わせ、欠損分を自らの体で補うことで、体のところどころが茨と化した《覇道星シュラ》が現れる。

「くっそ…気色の悪い融合召喚を!!」

 

覇道星シュラ レベル12 攻撃0

 

「ふふふ…さらに、私は手札から《パラサイト・リザード》を召喚」

《覇道星シュラ》の背後から這いずるように、《パラサイト・フュージョナー》に似た寄生虫に頭部を規制され、両目が白目になっているトカゲ型モンスターが現れる。

 

パラサイト・リザード レベル4 攻撃1800

 

「そして、《パラサイト・ウォール》の効果。墓地の《パラサイト・フュージョナー》を《覇道星シュラ》に装備。バトルフェイズ開始と同時に、《覇道星シュラ》の効果発動。フィールド上のすべてのモンスターの攻撃力を0にする」

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃3300→0

魔装銃士マゴイチ レベル4 攻撃1600→0

 

デーモンの召喚 レベル6 攻撃2500→0

パラサイト・リザード レベル4 攻撃1800→0

 

「バトル。《覇道星シュラ》で《魔装騎士ペイルライダー》を攻撃。そして、《シュラ》の効果。モンスター同士が戦闘を行うとき、戦闘を行うお互いのモンスターの攻撃力は自身のレベル×200アップする」

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃0→1400

覇道星シュラ レベル12 攻撃0→2400

 

「ちっ…!《ペイルライダー》は戦闘を行った言相手モンスターを破壊するが…」

「《パラサイト・フュージョナー》が身代わりとなる」

上段から振り下ろされた斧が《魔装騎士ペイルライダー》を真っ二つにすると思われたが、それを2本の光剣で受け止めていた。

「身代わりには盾だ。《魔装剣士ムネシゲ》のペンデュラム効果。俺のフィールドのペンデュラムモンスター1体を1度だけ破壊から守る。ダメージは通すがな…」

 

翔太

ライフ4000→3000

 

「なるほど…これは厄介だ。だが、《パラサイト・リザード》の効果。自分フィールドの《パラサイト・フュージョナー》を融合素材とした融合モンスターが相手モンスターと戦闘を行ったダメージステップ終了時、このカードをリリースすることで、そのモンスターは続けてもう1度攻撃することができる」

「何!?」

《パラサイト・リザード》に寄生していた寄生虫が《魔装騎士ペイルライダー》にとりつき、嚙みついて取り込んだ栄養でその肉体を巨大化させていく。

それによって身動きが取れなくなった第4の騎士に修羅と化した戦士が斧を振るう。

「く…だが、《ペイルライダー》の効果は生きている!そのモンスターも道連れだ!!」

今度こそ真っ二つになった《魔装騎士ペイルライダー》だが、そこから放たれる闇の瘴気が《覇道星シュラ》を取り込み、消滅させる。

だが、それと同時に襲い掛かったのは頭痛だった。

「ぐ、ううう!なんだ、これは!!」

記憶を取り戻すときの頭痛と似ているが、今回は若干異なる。

今の景色と重なるように見えたのは女性の腕に抱かれた赤ん坊の姿。

生まれたばかりのその子をいつくしむ母親の姿は確かに心温まるものを感じるが、今の翔太は激痛のせいでそれを感じる余裕がない。

その姿が消えてもなお、翔太には頭痛が残る。

「くっそ…まさかの、記憶のカードか!!」

 

翔太

ライフ3000→2000

 

「破壊された《シュラ》の効果を発動。融合召喚されたこのカードが相手によって破壊されたとき、エクストラデッキから《覇勝星イダテン》を融合召喚扱いで特殊召喚する」

 

覇勝星イダテン レベル10 攻撃3000

 

「さらに、《パラサイト・ネットワーク》の効果。エクストラデッキの《神炎竜ルベリオン》を見せ、デッキから《アルバスの落胤》を手札に加える。さらに永続罠《リビングデッドの呼び声》発動。その効果により、墓地から《デーモンの顕現》を特殊召喚」

 

デーモンの顕現 レベル6 攻撃2500→3000

デーモンの召喚 レベル6 攻撃0→500

 

「まずいぞ…今の翔太のフィールドに存在するのは攻撃力が0となった《魔装銃士マゴイチ》のみ!!これでは、《イダテン》の攻撃で翔太のライフが尽きる!!」

「光栄に思いなさい。真っ先にこの新しき世界の礎となることができるのだから…《覇勝天イダテン》でダイレクトアタック!!」

燃え上がる槍を手に、翔太にとどめを刺そうと《覇勝天イダテン》が飛び上がる。

「罠発動!《ガード・ブロック》!!俺が受ける戦闘ダメージを0にし、デッキからカードを1枚ドローする!」

槍とともに降りかかる《覇勝天イダテン》は《魔装銃士マゴイチ》を槍で貫き、そ個から発生する衝撃波が翔太を襲うが、バリアによってそれが阻まれ、再びドクトルのフィールドに戻る。

「そして、《マゴイチ》の効果。デッキから魔装モンスター1体を手札に加える。俺はデッキから《魔装剛毅アトレウス》を手札に加える」

 

翔太

手札0→2

 

「手札を1枚増やしたところで、まだモンスターは残っている。さあ、とどめをさせ、《デーモンの顕現》!」

バリアが消えたと同時に《デーモンの顕現》が雷を翔太に向けて放つ。

「罠発動!《敵襲警報-イエローアラート-》。相手の攻撃宣言時、手札のモンスター1体を特殊召喚する。そして、この効果で特殊召喚されたモンスターがフィールドに存在する限り、相手はそのモンスター以外を攻撃対象にできない。俺は《アトレウス》を特殊召喚する」

 

魔装剛毅アトレウス レベル3 守備1200

 

「そして、《アトレウス》の効果。このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、俺のペンデュラムゾーンに魔装カードが2枚存在する場合、デッキからカードを1枚ドローし、それを互いに公開する。俺がドローしたカードは《魔装魚メロウ》!この効果でドローしたカードがペンデュラムモンスターの場合、さらにデッキからカードを1枚ドローする」

「ふん…ならば少しでもライフを削るのみ。攻撃続行」

雷は盾となった《魔装剛毅アトレウス》が受け止めて消滅する。

続けて、己のかつての姿である《デーモンの召喚》が咆哮すると同時に雷が翔太を襲う。

「これくらい…!!」

 

翔太

ライフ2000→1500

 

「私はこれで…ターンエンド」

 

ドクトル

手札2→1(《アルバスの落胤》)

ライフ3700

場 デーモンの召喚(《デーモンの顕現》《覇道星シュラ》の影響下) レベル6 攻500

  覇勝星イダテン レベル10 攻撃3000

  デーモンの顕現(《リビングデッドの呼び声》の影響下) レベル6 攻撃3000

  パラサイト・ウォール(永続魔法)

  リビングデッドの呼び声(永続罠)

  パラサイト・ネットワーク(フィールド魔法)

 

翔太

手札0→2(うち1枚《魔装魚メロウ》)

ライフ1500

場 魔装槍士タダカツ(青) ペンデュラムスケール2

  魔装剣士ムネシゲ(赤) ペンデュラムスケール9

 

「俺のターン!」

 

翔太

手札2→3

 

「俺はセッティング済みの《タダカツ》と《ムネシゲ》でペンデュラム召喚を行う!現れろ、《魔装剛毅アトレウス》、《魔装騎士ペイルライダー》!」

 

魔装剛毅アトレウス レベル3 守備1200

魔装騎士ペイルライダー レベル7 守備2100

 

「ペンデュラム召喚された《アトレウス》の効果。デッキからカードを1枚ドローし、公開する。俺がドローしたカードは《魔装融合》。ペンデュラムモンスターじゃない以上、追加のドローは無し。そして、《アトレウス》の効果を発動したターン、俺はペンデュラム召喚以外の方法でモンスターを特殊召喚できない」

「愚かな…。せっかくの融合がそれでは台無しだ…」

「かもな…。俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

ドクトル

手札1(《アルバスの落胤》)

ライフ3700

場 デーモンの召喚(《デーモンの顕現》《覇道星シュラ》の影響下) レベル6 攻500

  覇勝星イダテン レベル10 攻撃3000

  デーモンの顕現(《リビングデッドの呼び声》の影響下) レベル6 攻撃3000

  パラサイト・ウォール(永続魔法)

  リビングデッドの呼び声(永続罠)

  パラサイト・ネットワーク(フィールド魔法)

 

翔太

手札2(《魔装融合》《魔装魚メロウ》)

ライフ1500

場 魔装騎士ペイルライダー レベル7 守備2100

  魔装剛毅アトレウス レベル3 守備1200

  伏せカード2

  魔装槍士タダカツ(青) ペンデュラムスケール2

  魔装剣士ムネシゲ(赤) ペンデュラムスケール9

 

「ふふ…私のターン」

 

ドクトル

手札1→2

 

「私は《パラサイト・ネットワーク》の効果を発…」

「待てよ、俺はここで永続罠《魔装騎士の裁き》を発動。俺のフィールドに魔装騎士が存在するとき、1ターンに1度、相手の墓地に存在するカードを1枚除外できる!俺が除外するのは…《パラサイト・フュージョナー》だ!」

「むっ…?」

再びフィールドに現れそうになった《パラサイト・フュージョナー》だが、背後に現れた異次元の渦に飲み込まれる形で消滅する。

その様子を見たドクトルの表情が固まる。

「まずは1枚…」

「なるほど、除外することで私の虫を止めるとは…。しかし…残念なことだ。君はこのカードを防ぐことができない。私は《アルバスの落胤》を召喚」

 

アルバスの落胤 レベル4 攻撃1800

 

「このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、手札を1枚捨てることで、このカードを含むフィールド上のモンスターを素材に融合召喚を行う。私が融合素材とするのは《アルバスの落胤》、そして相手フィールドの《魔装騎士ペイルライダー》」

「何!?《超融合》みたいに、相手フィールドのモンスターも融合素材に!!」

《アルバスの落胤》が頭を抱え、叫ぶと同時に上空に渦が生まれ、その中へ飛び込んでいく。

渦はブラックホールのように周囲の物を吸収し始め、それに巻き込まれた《魔装騎士ペイルライダー》が飲み込まれていく。

「第4の騎士よ、罪深き竜と一つとなり、新世界への礎となるがいい!融合召喚!現れよ、《神炎竜ルベリオン》」

 

神炎竜ルベリオン レベル8 攻撃2500

 

手札から墓地へ送られたカード

・パラサイト・フュージョナー

 

《魔装騎士ペイルライダー》が消え、フィールドに残ったモンスターは《魔装剛毅アトレウス》のみ。

《魔装剣士ムネシゲ》の効果で、1度だけ《魔装剛毅アトレウス》の破壊は防げるかもしれないが、それでも3体の一斉攻撃を受けた場合、翔太のライフは尽きる。

「いかがかな…?君自身のエースである《ペイルライダー》が使われた気分は」

「いいものじゃねえな。俺のエースは何体かデッキに入ってるがな。ま、それで勝った気になっているお前の顔を見るのも不愉快だけどな」

「減らず口を…。ならば、《デーモンの召喚》を守備表示に変更」

 

デーモンの召喚 レベル6 攻撃500→守備1200

 

「バトル。《神炎竜ルベリオン》で《魔装剛毅アトレウス》を攻撃」

激しく咆哮する《神炎竜ルベリオン》が炎を《魔装剛毅アトレウス》に向けて放つが、《魔装剛毅アトレウス》を包むバリアがそれを受け止める。

「《魔装剣士ムネシゲ》のペンデュラム効果。1ターンに1度、俺のペンデュラムモンスター1体を破壊から守る」

「しかし、それも1度のみ。続けて《デーモンの顕現》で《アトレウス》を攻撃」

バリア消失直後に続けて飛んでくる《デーモンの顕現》の雷が《魔装剛毅アトレウス》を襲い、雷で体を焦がしたそのモンスターは悲鳴を上げながら消滅する。

「これで翔太君のフィールドががら空きに!!」

「終わりだ…。《覇勝星イダテン》でダイレクトアタック」

守ってくれる存在のいなくなった哀れな翔太にとどめを刺すべく、槍を手にした《覇勝星イダテン》がズシリ、ズシリと迫ってくる。

目前まで迫ると、槍を大きく振りかざし、翔太に振り下ろした。

「これで、終わり…」

「いいや、まだデュエルは続いてるぜ」

「何…?」

ドクトルの目に映るのは確かに槍を振り下ろした《覇勝天イダテン》の姿だが、その穂先は翔太に届いていなかった。

翔太の目の前には透明な《魔装騎士ペイルライダー》の姿があり、それが抜いている2本の光剣が槍を受け止めていた。

「俺は永続罠《魔装騎士の裁き》のもう1つの効果を発動した。こいつは俺のフィールドにモンスターが存在しない状態で直接攻撃を受けるとき、フィールド上に存在するこのカードを墓地へ送ることで、俺が受ける戦闘ダメージを0にする」

「フフフ…無駄なあがきを見せる。私はこれで、ターンエンド」

 

ドクトル

手札0

ライフ3700

場 デーモンの召喚(《デーモンの顕現》《覇道星シュラ》の影響下) レベル6 守備1200

  覇勝星イダテン レベル10 攻撃3000

  デーモンの顕現(《リビングデッドの呼び声》の影響下) レベル6 攻撃3000

  神炎竜ルベリオン レベル8 攻撃2500

  パラサイト・ウォール(永続魔法)

  リビングデッドの呼び声(永続罠)

  パラサイト・ネットワーク(フィールド魔法)

 

翔太

手札2(《魔装融合》《魔装魚メロウ》)

ライフ1500

場 伏せカード1

  魔装槍士タダカツ(青) ペンデュラムスケール2

  魔装剣士ムネシゲ(赤) ペンデュラムスケール9

 

「持ちこたえたぜ…俺のターン!!」

 

翔太

手札2→3

 

「俺は再びペンデュラム召喚を行う!現れろ、《魔装騎士ペイルライダー》、《魔装剛毅アトレウス》」

 

魔装剛毅アトレウス レベル3 守備1300

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

 

「そして、俺は手札から《魔装融合》を発動。手札の《魔装魚メロウ》とフィールドの《ペイルライダー》、《アトレウス》を素材に融合。海の歌い手よ、第4の騎士よ、誇り高き騎士の名を継ぐ少年よ、魔導の力によりて、今1つとならん。融合召喚!真紅の騎士、《魔装騎士レッドライダー》!!」

 

魔装騎士レッドライダー レベル8 攻撃3000

 

「融合素材となった《メロウ》の効果。このカードを素材に魔装モンスターの特殊召喚に成功したとき、墓地の魔装カード1枚を除外することで、デッキから《魔装降臨の儀式》と魔装儀式モンスターを1枚ずつ手札に加える。俺は《魔装降臨の儀式》と《魔装騎士デュラハン》を手札に加える」

 

墓地から除外されたカード

・魔装融合

 

「そして、俺は手札から《魔装降臨の儀式》を発動。手札とフィールドの魔装モンスターをリリースすることで、魔装モンスター1体の儀式召喚を行う。この時、俺のフィールドに存在するモンスターが魔装騎士1体の場合、エクストラデッキに存在する魔装騎士1体を除外することで儀式召喚のための素材にできる。俺はエクストラデッキの《ペイルライダー》を除外する。契約は交わされた。四騎士の魂よ、首なき死の予言者を呼び覚ませ。儀式召喚。現れろ、《魔装騎士デュラハン》」

 

魔装騎士デュラハン レベル7 攻撃2100

 

「バトルフェイズ開始と同時に《レッドライダー》の効果発動。俺のターンにモンスターの特殊召喚に成功したバトルフェイズ開始時、このカードの攻撃力はバトルフェイズ終了時まで1000アップする」

 

魔装騎士レッドライダー レベル8 攻撃3000→4000

 

「《レッドライダー》で《デーモンの顕現》を攻撃!必殺真剣!!」

《魔装騎士レッドライダー》の剛腕がら放たれる大剣の一撃は《デーモンの顕現》の悪魔の体を両断する。

同時に放たれる剣閃がドクトルを襲い、彼の老体が壁にたたきつけられる。

「ぐおおおお!!!!」

 

ドクトル

ライフ3700→2700

 

「まだだ!《レッドライダー》が戦闘で相手モンスターを破壊したとき、続けてもう1度だけ相手モンスターを攻撃できる!《神炎竜ルベリオン》を攻撃!」

大剣を肩で担ぎなおした《魔装騎士レッドライダー》が次に《神炎竜ルベリオン》に目を向ける。

正面から歩いて接近するその騎士に向けて《神炎竜ルベリオン》が炎を放つが、いくら炎を受けたとしても全身を辞めず、無傷で目の前までたどり着いたそのモンスターに戦慄する。

そんな竜の肉体に容赦なく大剣が突き刺さり、そのモンスターは爆発とともに消滅した。

 

ドクトル

ライフ2700→1200

 

「!?マジ…かよ!!」

《神炎竜ルベリオン》を倒したと同時に翔太の頭に激痛が襲い掛かる。

次に見えたのは海の中にいる石倉順次の姿だ。

長らく潜っていた彼の目に映ったのは『欠片』で、それに触れると同時に彼の肉体が『欠片』に吸収されていく。

「『欠片』が…人を、飲み込んだ…だって?どういう仕組みなんだよ、これは!?」

短時間で襲い掛かった2度の頭痛は翔太に疲労を与える。

だが、幸運にもこれで記憶を取り戻し、あの時石倉純次の言っていた通り、ここまでの2枚は彼の記憶。

あと1枚で、記憶のカードはすべてそろう。

「はあ、はあ、はあ…《デュラハン》で、《覇勝星イダテン》を攻撃!!!《デュラハン》は戦闘では破壊されず、戦闘で発生する俺へのダメージも0になる。そして、戦闘を行った相手モンスターに宣告カウンターを1つ置く!!」

馬車のカーテンが開き、そこから発生する黒い霧が《覇勝星イダテン》を包み込む。

不気味な冷たさを感じるそれを振り払おうと槍を振るうものの、その旅に霧は濃くなっていく。

 

覇勝星イダテン レベル10 宣告カウンター0→1

 

「俺はこれで、ターンエンド。同時に、《デュラハン》の効果発動。このカードとフィールド上に存在する宣告カウンターの乗っているモンスターをすべて墓地へ送る」

《魔装騎士デュラハン》と《覇勝星イダテン》の背後に開いた棺桶が現れ、引きずられるようにその中に吸収されていった。

 

ドクトル

手札0

ライフ1200

場 デーモンの召喚(《デーモンの顕現》《覇道星シュラ》の影響下) レベル6 守備1200

  パラサイト・ウォール(永続魔法)

  パラサイト・ネットワーク(フィールド魔法)

 

翔太

手札3→1

ライフ1500

場 魔装騎士レッドライダー レベル8 攻撃4000→3000

  伏せカード1

  魔装槍士タダカツ(青) ペンデュラムスケール2

  魔装剣士ムネシゲ(赤) ペンデュラムスケール9

 

脅威であった《覇勝星イダテン》を撃破し、フィールドには《魔装騎士レッドライダー》が残った。

《魔装騎士デュラハン》も次のターンのスタンバイフェイズ時にフィールドへ戻ってくる。

だが、ネックなのはドクトルの墓地に存在する《パラサイト・フュージョナー》の存在だ。

手札の内容次第では、再び融合モンスターを呼び出してくる可能性が高い。

「私のターン…ドロー」

 

ドクトル

手札0→1

 

「スタンバイフェイズ時に、リリースされていた《パラサイト・リザード》の効果発動。このカードは自らの効果でリリースされてから2回目の私のスタンバイフェイズ時に、攻撃力を0にしてフィールドに戻ってくる」

 

パラサイト・リザード レベル4 攻撃1800→0

 

「そして…手札から魔法カード《強欲で貪欲な壺》を発動。デッキの上から10枚のカードを裏向きのまま除外し、デッキからカードを2枚ドローする」

10枚ものカードを除外するリスクを背負ってまでドローした2枚のカード。

それらを見たドクトルはしばらく表情を固める。

そして、肩を震わせるとこらえきれなくなったかのように笑い始める。

「ふ、ふふふ…ふふふふふふふふ…」

「何がおかしい!?」

「いや…失礼。どうやら、これが最後のターンになると思われるから…。これが、アークエリアプロジェクトにおける私の最後の役目。私は《パラサイト・ネットワーク》の効果を発動。墓地の《パラサイト・フュージョナー》を特殊召喚」

 

パラサイト・フュージョナー レベル1 攻撃0

 

「ここで《パラサイト・フュージョナー》の効果を使用したいところではあるが、今回は使用しない」

「何…?」

「私は手札1枚を墓地へ送り、速攻魔法《超融合》を発動」

「《超融合》!?それって、ヒイロさんの…!!」

ヒイロから借りた《超融合》のカードは今、遊矢のデッキの中にある。

今までアカデミアのデュエリストで《超融合》を使用したデュエリストは確認されていない。

「《超融合》のカードは既にアカデミアで解析済みということだ…。この効果は既に知っているだろう?相手フィールドを含めたフィールド上のモンスターを素材に融合召喚を行う!!私が融合素材とするのは《パラサイト・フュージョナー》と《レッドライダー》!」

上空に出現した、雷を帯びた渦が2体のモンスターを飲み込んでいく。

翔太とドクトルは渦が生み出した雷雲の中に閉じ込められ、渦の中から現れたのは茨に体を蝕まれた《魔装騎士レッドライダー》の姿だった。

「現れろ、《パラサイト・オーバーフュージョナー》」

 

パラサイト・オーバーフュージョナー レベル? 攻撃?

 

「《パラサイト・オーバーフュージョナー》のレベルと攻撃力は融合素材となったモンスターのそれぞれの数値の合計によって決まる」

 

パラサイト・オーバーフュージョナー レベル?→8 攻撃?→3000

 

「翔太君!翔太君、大丈夫なの!!」

「なんだこの雷雲は!!これでは…状況がわからん!!」

渦から発せられる雷は離れていても静電気として遊矢たちを襲う。

そんな渦に近づいたらどうなるかは想像しなくても分かることだろう。

できるのはこの中に閉じ込められている翔太の無事を信じることだけだった。

 

「バトル!《パラサイト・オーバーフュージョナー》でダイレクトアタック!」

《パラサイト・フュージョナー》に寄生された《魔装騎士レッドライダー》が苦しみの声を挙げながら大剣を振るい、翔太に襲い掛かる。

「俺は罠カード《死を告げる風》を発動!俺のフィールドにモンスターが存在しない状態での相手の直接攻撃宣言時、その攻撃を無効にする!そして、《魔装騎士ペイルライダー》を特殊召喚する!」

振り下ろされた大剣を目の前に現れた《魔装騎士ペイルライダー》が2本の光剣で受け止める。

その光景を見たドクトルの口角が吊り上がる。

「《オーバーフュージョナー》は私の墓地に存在する融合モンスターの数だけ、相手モンスターを攻撃できる。そして、その効果で2回目以降の攻撃で相手モンスターを破壊した場合、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージをお互いに受ける!!」

「何!?」

「フフフフ…ありがとう、秋山翔太。これで、アークエリアプロジェクトは最終段階に入る!!」

再び振るわれる大剣を前に、《魔装騎士ペイルライダー》はやむなくその腹部に向けて光剣を突き立てる。

同時に刃が振り下ろされて《魔装騎士ペイルライダー》が真っ二つになると、2体は大爆発を引き起こし、爆発は雷雲を吹き飛ばし、翔太とドクトルを巻き込んだ。

「ぐああああああ!!!」

「フフ、フフフフ…」

 

翔太

ライフ1500→0

 

ドクトル

ライフ1200→0

 

 

パラサイト・ウォール

永続魔法カード

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールドに存在する「パラサイト・フュージョナー」を融合素材として融合召喚されたモンスター1体を対象に発動できる。墓地に存在する「パラサイト・フュージョナー」1枚を装備カード扱いとしてそのモンスターに装備する。

(2):「パラサイト・フュージョナー」を装備カードとした装備モンスターが戦闘・効果によって破壊されるとき、代わりに装備されている「パラサイト・フュージョナー」1枚を破壊する。

 

パラサイト・ネットワーク

フィールド魔法

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分の手札・墓地に存在する「パラサイト・フュージョナー」1体を対象に発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。

(2):自分フィールドに存在する「パラサイト・フュージョナー」が効果を発動するとき、代わりに手札に存在するモンスターを対象にすることができる。

(3):自分フィールドの「パラサイト・フュージョナー」を融合素材とした融合モンスターが相手によって破壊されたとき、自分のEXデッキに存在する融合モンスター1体を相手に見せることで発動できる。デッキからにカード名が記されている融合素材モンスター1体を手札に加える。

(4):自分は融合召喚以外の方法でEXデッキからモンスターを特殊召喚できない。この効果は無効化されない。

 

魔装騎士の裁き

永続罠カード

(1):1ターンに1度、自分フィールドに「魔装騎士」が存在する場合、相手の墓地に存在するカード1枚を対象に発動できる。そのカードを除外する。

(2):相手の直接攻撃宣言時、自分フィールドにモンスターが存在しない場合、フィールド上に存在するこのカードを墓地へ送ることで発動できる。その戦闘で発生する自分へのダメージを0にする。

 

パラサイト・リザード

レベル4 攻撃1800 守備0 効果 闇属性 昆虫族

(1):1ターンに1度、自分フィールドの「パラサイト・フュージョナー」を融合素材として融合召喚に成功した融合モンスターが相手モンスターと戦闘を行ったダメージステップ終了時、自分フィールドに存在するこのカードをリリースすることで発動できる。そのモンスターは続けてもう1度攻撃することができる。

(2):このカードの効果でリリースされ墓地へ送られてから2回目の自分スタンバイフェイズ時に発動する。墓地に存在するこのカードを表側攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたこのカードの攻撃力は0となる。

 

パラサイト・オーバーフュージョナー

レベル? 攻撃? 守備? 融合 闇属性 昆虫族

「パラサイト・フュージョナー」+融合モンスター1体以上

このカード名のカードは自分フィールドに1体しか存在できない。

(1):このカードのレベル・攻撃力・守備力は融合素材となった融合モンスターのそれぞれの元々の数値の合計と同じとなる。

(2):このカードは自分の墓地に存在する融合モンスターと同じ数だけ、相手フィールドのモンスターを攻撃できる。これにより、2回目以降の銭湯で相手モンスターを破壊したときに発動する。破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを互いに受ける。この効果による自分へのダメージは無効化されない。


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