遊戯王ARC-V 戦士の鼓動   作:ナタタク

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第127話 風と闇の激突

爆発によって生まれた煙と火薬のにおい、そして吹き飛んだ扉。

「紫雲院素良…。命を賭して道を開いてくれたか…」

「遊矢、辛いのはわかるが、今は…」

今はいないけれども、この爆発に気づいたデュエル戦士やデュエルロイドがここにやってくる可能性がある。

彼らが来ないうちに扉をくぐり、中枢へ突入しなければならない。

デュエルアカデミアを制御するAIを破壊しない限り、いつまでもこの次元戦争は終わらない。

だが、それでも涙が止まらない。

遊矢の脳裏に犠牲になった人たちの姿が浮かぶ。

きっと、その中にはいない、存在すら知らずに消えてしまった存在だってある。

そのことへの悲しみが遊矢の心を縛る。

「おい、遊矢…」

「…」

翔太に名前を呼ばれても、一向に顔を挙げない遊矢。

そんな彼に業を煮やしたが遊矢の胸倉をつかむ。

「何を止まってやがる遊矢!!」

「翔太君、やめて!!」

「ここで止まれば、今のあいつの犠牲も今までの犠牲も無駄になるんだぞ!?それでてめえはいいのか?それがてめえの戦いか!?」

「俺は…」

(遊矢さん!!)

誰かの声が脳裏に響き、同時にDホイールが走る音が近づいてくる。

涙をためる遊矢は音が聞こえる方向に目を向けると、そこにはユーゴのDホイールの姿があった。

「あれ、は…」

「あのバナナのDホイール…にしては、形が変だが…」

翔太が手を離すと、遊矢は近くに止まったDホイールに向けて走っていく。

Dホイールのモニターにはクリアウィングの姿が映っていた。

「こうして話すのは初めてですね…。私はクリアウィング。理由があって、今はこのDホイールと一体化している状態です」

「クリアウィング、ユーゴはどうしたんだよ!?なんでユーゴと一緒にいないんだ!?」

「すみません…ユーゴと一緒にリンの元に行くことができたのはよかったですが…肝心のリンがアカデミアによって洗脳されてしまったのです」

「洗脳!?じゃあ…」

「ええ…ユーゴとともにどうにか彼女を止めようとデュエルをしたのですが敗れて…。ユーゴがアカミデア内に存在することだけはわかるのですが…」

(まずいぞ、遊矢!)

「ユート!?」

(ユーリが…いる…。もしユーゴとユーリが戦うことになったとしたら…俺たちのようなことが起こるぞ)

どちらが勝利したとしても、ユーゴとユーリは一体化し、ズァーク復活への道に近づいてしまう。

遊矢はヒイロから受け取った銃を手にする。

最悪な事態に陥った時はこの銃で自らの命を絶たなければならない。

その事態が少しずつ迫っていることを感じずにはいられない。

「止めないと…急がないと!!」

「乗ってください、遊矢!ユーゴを探しましょう!」

「わかった!!」

涙を拭いた遊矢はヘルメットをかぶってDホイールに乗り込む。

操縦のサポートは中にいるクリアウィングがどうにかしてくれるため、操縦する感覚としては遊矢のDホイールに近い。

「待て、遊矢!君まで行っては…」

「…ごめん!!」

零児の言葉を遮った遊矢はDホイールを走らせ、真っ先に内部へ突入していく。

ユーゴとユーリが激突する可能性が高い中で、遊矢を単独で行動させるリスクは大きすぎる。

だが、今の遊矢を止めることができなかった。

 

「くっそ…やっぱ、Dホイールがねえと移動に時間がかかるな…体も痛えし…」

アカデミア内部で、ヘルメットを脱ぎ捨てた状態のユーゴが壁にもたれながら歩く。

体中が傷だらけで、額に巻いている布はカーテンをどうにかして破って使っているものだ。

リンに敗れ、塔から転落して気を失ったユーゴが目を覚ました時にはDホイールの姿はなく、クリアウィングの声も聞こえない。

もう一度塔を上って、部屋を見たがリンの姿がなかったため、やむなく一人でアカデミアの内部に突入した。

入口そのものはどこかで起こった爆発の影響で砕けた窓から侵入することができた。

あれだけの高さから落ちたにもかかわらず、骨折をしていないのは幸運で、額からの出血についてはカーテンを包帯代わりにすることでどうにか抑えている。

体の節々からくる痛みはいまだに軽くなってはいないが、今はそんなことを言っている場合ではない。

「くそ…どこだ、どこにいやがんだよリン!お前を元に戻して…」

「やぁ、こうして待っていたら誰か来るだろうと思っていたけれど、まさか君と会えるなんてね」

正面から遊矢に似た声が聞こえてくる。

だが、最近聞いた遊矢の声とは若干異なり、どこか泥のようなねっとりとしたものが感じられ、それだけで遊矢の声じゃないと確信できた。

「お前は…ユーリ…」

「また会えたね、ユーゴ。すっかりボロボロな上に愛用のDホイールもない…。本当に無様な姿だね」

「どきやがれ!!俺はリンを探しているんだ。お前にかまっていられねーんだ!!」

「そんなこと、言っていられるのかな?そんなボロボロな体じゃ、僕を振り切れないよ」

「黙れ!!」

「証拠にさ…ほら」

ユーリがデュエルディスクに《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》を置くと同時にユーゴの足元に茨が出てきて、それが彼の体を縛る。

棘が体に刺さる感覚がして、鋭い痛みが全身を駆け巡る。

「わかっただろう?君は逃れられない。僕とデュエルをしない限りね…」

「クソ…!やるしか、ねえのかよ…!」

悔しいが、ユーリの言う通り今のユーゴでは強引に突破することができない。

クリアウィングの声は聞こえないが、彼のカードもリンとのデュエルで生まれたカードもデッキに残っているため、全力は出せるかもしれない。

だが、デュエルをして敗北したら最後、ユートと同じ末路をたどることになることは知っている。

「さあ…僕を楽しませてよ。とことんあがいてさ…」

ユーリが指を鳴らすとと同時にユーゴを拘束していた茨が消え、代わりに周囲に茨でできた壁が出現する。

これで、もう完全に逃げることができなくなった。

(リン…待っていてくれよ!!)

「「デュエル…!!」」

 

ユーリ

手札5

ライフ4000

 

ユーゴ

手札5

ライフ4000

 

「僕の先攻。僕はモンスターをセット。3枚カードを伏せて、ターンエンド」

 

ユーリ

手札5→1

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

  伏せカード3

 

ユーゴ

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「消極的な動きをしやがって…!俺のターン!!」

 

ユーゴ

手札5→6

 

「俺のフィールドにモンスターが存在しない場合、手札の《SRベイゴマックス》は特殊召喚できる!」

 

SRベイゴマックス レベル3 攻撃1200

 

「こいつの召喚・特殊召喚に成功したとき、デッキからスピードロイド1体を手札に加えることができる。俺は《SR赤目のダイス》を手札に加える!そして、《赤目のダイス》を召喚!」

 

SR赤目のダイス レベル1 攻撃100(チューナー)

 

「《赤目のダイス》の効果!こいつの召喚・特殊召喚に成功したとき、こいつ以外の俺のフィールドのSR1体のレベルを1から6のいずれかに変更できる。俺は《ベイゴマックス》のレベルを6に変更!」

 

SRベイゴマックス レベル3→6 攻撃1200

 

「レベル6の《ベイゴマックス》にレベル1の《赤目のダイス》をチューニング!!その美しくも雄々しき翼翻し、光の速さで敵を討て!シンクロ召喚!現れろ、レベル7!《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》!」

シンクロ召喚され、フィールドに現れた《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》からは普段感じる親しみが感じられない。

いつも会話をしていた彼がいないからか、そのことに心細さを覚えた。

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

「ユーゴ…どこなんだ、ユーゴ!!」

アカデミア内部を走る遊矢がユーゴの名を何度も呼ぶ。

無駄だとはわかっているが、その声に反応して何か動きがあるかもしれないという淡い期待を抱いていた。

そう期待しなければ、どうしようもなかった。

(遊矢、ユーゴがデュエルをしています。急いでください)

「く…わかってるよ!!」

(やけに親しく会話をしているな、クリアウィングよ)

(オッドアイズ…ようやくこうして話すことができますね)

デッキの中に眠るオッドアイズのテレパシーがクリアウィングに伝わり、クリアウィングもまたテレパシーで返す。

この会話は決して遊矢には聞こえない状態だ。

(貴様はユーゴの奴と親しくなりすぎだ。それでは、情けをかけることになるぞ。われらの役目は…)

(わかっています。ズァークとなるかもしれないときには命を奪わなければならないことくらいは。けれど…そうならない可能性を信じたいのです。それだから、あなたも遊矢に力を貸すのでしょう?)

(ふん…。だが、奴は…スターヴ・ヴェノムの場合はどうなのだろうな)

3体のドラゴンはいずれも宿主と会話をすることができる。

だが、ユーリとスターヴ・ヴェノムがどのような状態なのかは3人ともわからない状態だ。

(それ以上によくわからんのはユーゴとクリアウィングだ。俺とダーク・リベリオンがこうして話すことができるようになったのは小僧が覇王黒竜などというものを呼び覚ました故だ。だが…)

ユーゴ達は幼少のころからお互いに話すことができるようになっていて、そのきっかけについては彼も分からないという。

彼と2体のドラゴンに何の違いがあるのかはわからないが、それを考えている場合ではなかった。

 

「そして、フィールドにシンクロモンスターが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。《シンクローン・リゾネーター》を特殊召喚!」

金と緑の音符を上下でくっつけたような飾りを背中につけたリゾネーターモンスターが《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の頭上に現れる。

 

シンクローン・リゾネーター レベル1 攻撃100(チューナー)

 

「ふーん、意外だね。そんなカードをデッキに入れてるなんて」

「俺のデッキと相性がいいってことだから入れたんだよ!俺はレベル7の《クリアウィング》にレベル1の《シンクローン・リゾネーター》をチューニング!!神聖なる光蓄えし翼煌めかせ、その輝きで敵を討て!シンクロ召喚!いでよ!レベル8!《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》!」

 

クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン レベル8 攻撃3000

 

「たった1ターンで《クリスタルウィング》をシンクロ召喚か…。まあ、これくらいしてくれないと面白くないけどね…」

「ほざけ!お前と遊んでいる暇はねえんだ!!俺はさらに手札から装備魔法《メテオストライク》を《クリスタルウィング》に装備!これで、こいつは守備モンスターを攻撃したとき、貫通ダメージを与える!バトル!!《クリスタルウィング》で裏守備モンスターを攻撃!!烈風のクリスタロス・エッジ!!」

《メテオストライク》の効果を受けた《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》が体を回転させながら裏守備モンスターに突撃する。

撃ちぬかれた裏守備モンスターは姿を洗わず暇もなく粉砕され、その姿をユーリはニヤリと笑いながら見つめていた。

 

裏守備モンスター

捕食植物セラセニアント レベル1 守備600

 

ユーリ

ライフ4000→1600

 

「《セラセニアント》の効果。このカードと戦闘を行った相手モンスターをダメージステップ終了時に破壊する」

「んなもんが効くかよ!!《クリスタルウィング》は1ターンに1度、こいつ以外のモンスター効果が発動したとき、その発動を無効にして破壊できる!!」

「そうだね…けど、これはどうかなぁ?僕は罠カード《リベンジ・サクリファイス》を発動。僕のモンスターが相手モンスターの攻撃によって破壊されたとき、その相手モンスターをリリースすることで手札からモンスターをアドバンス召喚できる」

「何!?」

「焦りすぎだよ…今はデュエルを楽しむときなんじゃないの??」

発動された《リベンジ・サクリファイス》のソリッドビジョンからミミズのような触手が出てきて、それが《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》の肉体を拘束する。

拘束したモンスターを取り込んだ《リベンジ・サクリファイス》は消滅し、ユーリはモンスターを召喚する。

「僕がアドバンス召喚するのは《捕食植物バンクシアオーガ》」

ヤマモガシを模した木の実にいくつも目と口のついたいびつなモンスターがフィールドに現れる。

そのモンスターについている目はジロリとユーゴを見つめ、口元はニヤリと笑っている。

 

捕食植物バンクシアオーガ レベル6 攻撃2000(チューナー)

 

「そして、戦闘破壊された《セラセニアント》の効果。このカードがカード効果で墓地へ送られたとき、もしくは戦闘で破壊されたとき、デッキから新たな捕食植物を手札に加えることができる。僕は《サンデウ・キンジー》を手札に加える」

(くそ…《クリスタルウィング》が!おまけに、新しいモンスターまで…!)

ただでさえ、魔法・罠カードへの対応能力に課題のある《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》をむやみに攻撃させた上に、相手の展開を手伝いする羽目になった己のうかつさを痛感するとともに、そんなときに叱ってくれる彼の存在がないことに心細さを覚える。

だが、それ以上にユーゴの脳裏に浮かんでいるのはいまだに操られているであろうリンの姿だ。

(でも、あきらめねえ…!やっと会えたんだ!ここで終わってたまるかよ!!)

「俺はカードを3枚伏せ、ターンエンド!!」

 

ユーリ

手札1(《捕食植物サンデウ・キンジー》)

ライフ1600

場 捕食植物バンクシアオーガ レベル6 攻撃2000(チューナー)

  伏せカード2

 

ユーゴ

手札6→0

ライフ4000

場 伏せカード3

 

「へえ、僕の真似をするんだ。どこまでそれが通用するんだろうねえ。僕のターン、ドロー」

 

ユーリ

手札1→2

 

「それじゃあ…こういう指向はどうかな?僕は罠カード《ピンポイント奪取》を発動。お互いにエクストラデッキ裏側表示のカードを1枚選ぶ。選んだカードが同じ種類の場合、相手は選んだカードを墓地へ送り、僕が選んだカードを特殊召喚する。さらにそのモンスターの元々の種族と属性が同じの場合、相手は自分が選んだモンスターの元々の攻撃力分ライフを失う。そして、もし選んだカードが違う種類の場合、僕が選んだカードは墓地へ送られ、君が選んだカードは特殊召喚できる。どう…?これなら、まだまだ頑張れるんじゃない?」

「てめえ…!!」

《捕食植物バンクシアオーガ》がチューナーであることは気になるが、お互いのエクストラデッキには同じ種類のカードが存在しないことはわかり切っていることのはず。

意図としては、わざとユーゴにモンスターを特殊召喚させようという腹積もりだろう。

「なら…俺はこのカードを選ぶ!」

「僕はこのカード…楽しみだね、君がどんなカードを選んだのかが…」

お互いに選んだカードが裏向きの状態でソリッドビジョンとして現れ、それらを隔てるように《ピンポイント奪取》のソリッドビジョンが出現し、赤外線でその正体が特定される。

「俺が選んだカードは《HSR/CWライダー》!!」

「僕が選んだのは《捕食植物キメラフレシア》。シンクロモンスターと融合モンスターか…。おめでとう、君の《CWライダー》は特殊召喚だ」

 

HSR/CWライダー レベル11 攻撃3500

 

「僕は《捕食植物サンデウ・キンジー》を召喚」

ユーリの周囲にモウセンゴケが発生し、それが集結するとエリマキトカゲのような姿のモンスターへと変化する。

口から真っ赤な舌を伸ばし、そばにいる《捕食植物バンクシアオーガ》をなめる。

 

捕食植物サンデウ・キンジー レベル2 攻撃600

 

「《サンデウ・キンジー》の効果。このカードを含む僕のフィールドのモンスター、そして君のフィールドの捕食カウンターが乗っているモンスターを素材に闇属性融合モンスターの融合召喚を行う。僕は《サンデウ・キンジー》と《バンクシアオーガ》を融合。魅惑の香りで虫を誘う二輪の美しき花よ!今ひとつとなりて、その花弁の奥の地獄から、新たな脅威を生み出せ!融合召喚!現れろ!飢えた牙持つ毒龍。レベル8!《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》!」

《捕食植物サンデウ・キンジー》の舌が仲間のはずの《捕食植物バンクシアオーガ》を縛り上げ、カメレオンのように飲み込んでいく。

すると、その体にひびが入り、粉々に砕けると当時にその中から《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》が姿を現した。

 

スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン レベル8 攻撃2800

 

「フィールドから墓地へ送られた《バンクシアオーガ》の効果。相手フィールドに存在するすべてのモンスターに捕食カウンターを1つ置く。そして、捕食カウンターが乗ったレベル2以上のモンスターのレベルが1になる」

《HSR/CWライダー》の装甲に種が打ち込まれ、そこから茨が発生して拘束する。

 

HSR/CWライダー レベル11→1 捕食カウンター0→1

 

「そして、《スターヴ・ヴェノム》の効果。このカードの融合召喚に成功したとき、相手フィールドの特殊召喚されたモンスター1体の攻撃力分、このカードの攻撃力をアップさせる」

「んなことさせるかよ!!俺は罠カード《風霊術-『雅』》を発動!俺のフィールドの風属性モンスター1体をリリースして、相手フィールドのカード1枚をデッキの一番下に置く。俺は《CWライダー》をリリースして、お前の《スターヴ・ヴェノム》をエクストラデッキへ送る!!」

自らを拘束する茨をもろともせず加速する《HSR/CWライダー》が《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》に向けて突撃する。

ぶつかると同時にお互いのモンスターが最初からその場にいなかったかのように姿をくらました。

「あーあ。せっかく融合召喚したのに。ひどいことをするね」

「ひでえのはどっちだ!リンのことをさらいやがったクソ野郎が!!」

「仕方ないでしょ。それがプロフェッサーの命令なんだから…。それにしても、デュエルをした時はいい顔をしていたよ。最初は負けん気を見せていたけど、だんだんと顔を真っ白にして、とうとう助けてなんて言い出してさぁ…」

「黙りやがれ!!てめえと話すことなんてねえ!!さっさとデュエルを続けろ!!」

「わかったよ、僕を楽しませてくれるんなら…ね。僕は手札から魔法カード《一時休戦》を発動。お互いにデッキからカードを1枚ドローする代わりに、次の君のターンの終わりまで、お互いにダメージを受けない。僕はこれで、ターンエンド」

 

ユーリ

手札1

ライフ1600

場 伏せカード1

 

ユーゴ

手札0→1

ライフ4000

場 伏せカード2

 

「俺のターン!!」

 

ユーゴ

手札1→2

 

「ここで僕は《ピンポイント奪取》の効果で墓地へ送られた《キメラフレシア》の効果を発動。このカードが墓地へ送られた次のスタンバイフェイズ時、デッキから融合またはフュージョン魔法カード1枚を手札に加える。僕は《烙印融合》を手札に加える」

「んだよ、そのカードは…」

「それは、次のターンのお楽しみだよ」

「…俺は手札から魔法カード《貪欲な壺》を発動!墓地のモンスター5体をデッキに戻して、デッキからカードを1枚ドローする!!」

 

ユーゴ

手札2→3

 

墓地からデッキに戻ったカード

・クリアウィング・シンクロ・ドラゴン

・クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン

・HSR/CWライダー

・シンクローン・リゾネーター

・SRベイゴマックス

 

「そして、《カードガンナー》を召喚!」

 

カードガンナー レベル3 攻撃400

 

「《カードガンナー》はデッキの上からカードを3枚まで墓地へ送り、ターン終了まで墓地へ送ったカード1枚につき、攻撃力を500アップする」

 

カードガンナー レベル3 攻撃400→1900

 

デッキから墓地へ送ったカード

・スピードリバース

・SRオハジキッド

・キューキューロイド

 

「さらに俺は手札から魔法カード《サモン・ストーム》を発動!ライフを800支払い、手札からレベル6以下の風属性モンスター1体を特殊召喚する。俺は《SR電々大公》を特殊召喚!」

 

SR電々大公 レベル3 攻撃1000

 

ユーゴ

ライフ4000→3200

 

「レベル3の《カードガンナー》にレベル3の《電々大公》をチューニング!十文字の姿もつ魔剣よ。その力ですべての敵を切り裂け!シンクロ召喚!現れろ、レベル6!《HSR魔剣ダーマ》!」

 

HSR魔剣ダーマ レベル6 守備1600

 

「俺はこれで、ターンエンドだ!」

 

ユーリ

手札1→2(うち1枚《烙印融合》)

ライフ1600

場 伏せカード1

 

ユーゴ

手札3→0

ライフ3200

場 HSR魔剣ダーマ レベル6 守備1600

  伏せカード2

 

「それで守りを固めたつもり?拍子抜けだよ…。僕のターン」

 

ユーリ

手札2→3

 

「じゃあ…僕は手札から魔法カード《烙印融合》を発動。手札・フィールド・デッキのモンスターを素材に、《アルバスの落胤》を融合素材とする融合モンスターを融合召喚する。僕はデッキから《アルバスの落胤》と《セラセニアント》を墓地へ送り、融合する!」

「デッキのモンスターで融合召喚だと!?んなことあるかよ!?」

「生まれながらに罪を背負いし少年よ、美しき闇の花の力を受け、竜の力を取り戻すがいい!融合召喚!現れろ、《神炎竜ルベリオン》」

ユーリの背後を覆う茨が爆発とともに砕け、そこから入ってきたのは血のような暗い赤の肉体に白い骨格を持つドラゴンの姿だった。

入り終えると同時に茨が再生し、再び道をふさぐ。

 

神炎竜ルベリオン レベル8 攻撃2500

 

「デッキから墓地へ送られた《セラセニアント》の効果。デッキから《ドロソフィルム・ヒドラ》を手札に加える。さらに、《ルベリオン》の効果。このカードの融合召喚に成功したとき、手札を1枚捨てることで、フィールドと墓地、そして除外されている僕のモンスターを素材にレベル8以下の融合モンスターの融合召喚をすることができる。その時、素材になった僕のモンスターはデッキに戻る。僕が融合素材にするのは《ルベリオン》と墓地の《アルバスの落胤》。裁きの炎を宿す竜よ、罪深き少年とともに美しき花の竜となれ。融合召喚!《捕食植物ドラゴスタペリア》!」

《神炎竜ルベリオン》の頭上に白い髪の少年の幻影が現れ、2体のモンスターを姿が茨によって覆い隠される。

茨が消えると、そこに存在したのは茨と花によって形作られたドラゴンだった。

 

捕食植物ドラゴスタペリア レベル8 攻撃2700

 

手札から墓地へ送られたカード

・捕食植物ドロソフィルム・ヒドラ

 

「《ドラゴスタペリア》の効果!1ターンに1度、相手フィールドに存在するモンスター1体に捕食カウンターを一つ置く。そして、捕食カウンターの乗っているモンスターがレベル2以上の場合、そのレベルを1にする」

《捕食植物ドラゴスタペリア》の口から放たれた種が《HSR魔剣ダーマ》の装甲に突き刺さる。

そして、そこから発生する茨が全身を覆っていった。

 

HSR魔剣ダーマ レベル6→1 守備1600

 

「そして、墓地の《ドロソフィルム・ヒドラ》の効果。フィールド上に存在する捕食カウンターが乗っているモンスター1体をリリースすることで、手札・墓地から特殊召喚できる。《魔剣ダーマ》をリリース」

身動きの取れない《HSR魔剣ダーマ》の足元に穴ができてそこからヒドラを模した食虫植物が姿を現し、機械のはずのそのモンスターをバリバリと捕食していく。

食らい尽くすと地上に飛び出し、ユーリのフィールドに降りた。

 

捕食植物ドロソフィルム・ヒドラ レベル5 守備2300

 

「さらに僕は手札から《捕食植物スピノ・ディオネア》を召喚」

続けて現れる、背中にハエトリグサを生やしたスピノザウルスというべき捕食植物。

獲物であるユーゴをにらみ、口からはよだれを垂れ流していた。

 

捕食植物スピノ・ディオネア レベル4 攻撃1800

 

「これで、2体のダイレクトアタックが決まれば、君のライフは0になる。あっけないね…。僕と付き合う暇がないなんて抜かして、こんな結果なんてねえ!!バトルだ!!《ドラゴスタペリア》でダイレクトアタック!」

《捕食植物ドラゴスタペリア》が飛翔し、ユーゴにめがけて紫色の炎を放つ。

炎はユーゴを包み、頭を縛るカーテンの生地にも火をつける。

「うわああ!!くっそお!!」

火のついたカーテンを無理やりはぎとったユーゴの額から流れる血が片目を赤く染めた。

 

ユーゴ

ライフ3200→500

 

「さらに、《スピノ・ディオネア》でダイレクトアタック」

続けて《捕食植物スピノ・ディオネア》が咆哮した後でユーゴめがけて突っ込んでいく。

口を大きく広げ、ユーゴを丸のみにしようという魂胆が見え見えだ。

「罠発動!《ソニック・シンクロ》!!相手がダイレクトアタックをする時、その攻撃を無効にする!!」

ユーゴを包む鎌鼬が《捕食植物スピノ・ディオネア》の接近を阻止する。

攻撃を防いだ鎌鼬は消えることなく、風の中に《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の幻影が姿を見せる。

「そして、俺の墓地に存在するスピードロイドのチューナーとチューナー以外のモンスターを1体ずつ除外し、そのモンスターのレベルの合計が同じ風属性シンクロモンスター1体をシンクロ召喚する!!俺は墓地の《魔剣ダーマ》と《赤目のダイス》を除外!!シンクロ召喚!出番だぜ、《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》!!」

鎌鼬が収まるとともに姿を見せる《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》。

だが、普段の口喧嘩をいつもするクリアウィングと比較すると、かすかに生気がないようにユーゴには感じられた。

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

「転んでもただでは起きないか…いいねいいね、そういうの!!!もっと僕を楽しませてよ…。僕はこれで…ターンエンド」

 

ユーリ

手札3→1

ライフ1600

場 捕食植物スピノ・ディオネア レベル4 攻撃1800

  捕食植物ドラゴスタペリア レベル8 攻撃2700

  伏せカード1

 

ユーゴ

手札0

ライフ500

場 クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7 攻撃2500

  伏せカード1

 

「はあ、はあ…てめえを…楽しませて、たまっかよ…!」

どうにか敗北は免れたものの、これまでのデュエルによるダメージが確実にユーゴを消耗させていた。

気が遠くなるような感じがして、そんなときに尻を叩いてくれるであろうリンやクリアウィングの声が聞こえない。

「俺の…ターン…」

 

ユーゴ

手札0→1

 

ドローしたカードを見ようとするユーゴだが、なぜかそのカードがかすんで見えた。

よく考えると、周囲の光景もユーゴの目にはぼやけて見えてしまう。

(ちっくしょう…あの攻撃をモロに食らったせいか…!!)

目からかすかに焼けるような痛みを感じる。

デュエルをする中でこの状態はあまりにも致命的だ。

「どうしたの?遅延行為は反則だよ…?」

「黙れ…よ…!!くっそおおおお!!」

座り込むユーゴは傷ついた額を思い切り床にたたきつける。

ドクドクと流れる血が絨毯を濡らし、鋭い痛みがどうにかユーゴの闘志をつなぎとめる。

そのおかげか、血でぬれていない片方の目だけは若干視力が戻り、かろうじてカードの名前が見える程度にはなる。

(そういやぁ、リンによく、自分が使うカードのことは覚えとけって言われてたっけ…?)

幼いころ、孤児院の年上の先輩に何度もデュエルをしても勝てず、ふさぎ込みかけた時期があった。

そんな時にリンから言われたその言葉。

ユーゴはデッキに入れているカードを1枚残らず名前と効果をすべて暗記した。

教材がろくにないコモンズで読み書きの教材となりえる存在の1つがカードだったことが功を奏し、すべて暗記することができたユーゴは自分のデッキの回し方を再認識することができ、結果として一度も勝てなかった先輩に勝つことができた。

その習慣は今も実践しており、これでならかろうじてデュエルを続行することができる。

「俺は手札から魔法カード《水晶竜の壺》を発動!俺のフィールドにクリアウィングシンクロモンスター、もしくは《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》が存在するとき、デッキからカードを2枚ドローできる。このカードを発動したターン、俺はモンスターを召喚・特殊召喚できない!」

召喚・特殊召喚の権限をすべて放棄してまでもたらされる2枚のカード。

そのカード名を見たユーゴがにやりと笑う。

「引いたぜ…」

「え…?」

「俺は墓地の《スピードリバース》の効果を発動!こいつを墓地から除外することで、墓地のスピードロイド1体を手札に加える。俺は《オハジキッド》を手札に加える。そして、《オハジキッド》を墓地へ送り、手札から装備魔法《SRアサルトアーマー》を《クリアウィング》に装備!!こいつを装備した《クリアウィング》の攻撃力は除外されている俺のシンクロモンスター1体につき、800アップする!」

《HSR魔剣ダーマ》が再びユーゴのフィールドに現れる。

装甲が砕けると、その中に隠された水晶の鎧が姿を現し、それが《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》に装着される。

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7 攻撃2500→3300

 

「バトルだ!!《クリアウィング》で《スピノ・ディオネア》を攻撃!!」

《SRアサルトアーマー》を装着した《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の胸部部分の水晶が光り、そこからエネルギー弾が発射される。

エネルギー弾を受けた《捕食植物スピノ・ディオネア》が粉々に吹き飛び、余波がユーリを襲う。

「僕は手札の《捕食植物ムナジモタートル》の効果を発動。僕の捕食植物が相手モンスターと戦闘を行うとき、手札のこのカードを墓地へ送ることで、戦闘で発生する僕へのダメージを0にする。さらに、相手フィールド上のモンスター1体に捕食カウンターを1つ置く。僕は《クリアウィング》に捕食カウンターを置く」

背中にムナジモを生やした亀がユーリをかばうとともに、エネルギー弾を放った《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》に向けて種を放つ。

種を受け、そこから発生する茨によって若干身動きを封じられはするものの、それでも今の子のドラゴンを止めるには足りない。

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン 捕食カウンター0→1 レベル7→1

 

「そして、《ドラゴスタペリア》の効果。相手が発動した捕食カウンターが乗っている相手モンスターの効果を無効化する。これで、《クリアウィング》の効果は使用できない」

「それがどうした!?まだ俺のバトルフェイズは終わっちゃいねえ!《SRアサルトアーマー》の効果発動!こいつを装備したモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊したとき、墓地のスピードロイド1体を除外することで、続けてもう1度だけ攻撃できる!俺は《電々大公》を除外!続けて攻撃しろ!《クリアウィング》!!」

再びエネルギーをチャージした《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の視線が自らを縛る《捕食植物ドラゴスタペリア》に向けられる。

発射されるエネルギー弾の直撃を受けたそのモンスターは消滅し、爆風がユーリを襲う。

 

ユーリ

ライフ1600→1000

 

「どうだ!てめえの自慢のモンスターを粉砕してやったぜ!!」

これで、今度はユーゴが有利な状況になった。

ユーリの手札は0枚。

次のターンにモンスターを召喚できなければ、そのまま《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》のダイレクトアタックで勝負を決めることができる。

視力の問題は解決していないが、まだ完全に見えなくなるわけではない。

かすかにでも見えるなら、リンの姿をもう1度見るまで止まらない。

「ふ…ふふ、ふふふふ…アハハハハ!!ハハハハハハ!!」

気が狂ったかのように手で目を隠しながら大笑いを始めるユーリ。

踊るようにその場で動き回る彼のシルエットがかすかに目に映り、ユーゴは拳を握りしめる。

「何がおかしい!!」

「アハハハハ!!だって、だっておかしいじゃないか。君は今、自分で自分の首を絞めたんだから!!」

「何を言ってやがる!もうお前のフィールドにモンスターは…」

「そんな心配をする必要はないよ!!速攻魔法《捕食融合-プレデター・フュージョン》を発動!!僕のフィールドの捕食植物が破壊されたターン、破壊された捕食植物と同じ数だけデッキから捕食植物を効果を無効にして特殊召喚する!さあ、現れろ!《捕食植物ヘリアンフォリンクス》、《捕食植物セラセニアント》!!」

ヘリアンフォラという植物で構成されたランフォリンクスが背中に《捕食植物セラセニアント》を生やした状態で姿を現す。

上空からユーゴを見つめるそのモンスターの目は敗者となる彼をあざ笑うかのようだった。

 

捕食植物ヘリアンフォリンクス レベル8 攻撃1200

捕食植物セラセニアント レベル1 攻撃100

 

「そして…この効果で特殊召喚したモンスターを裏側表示で除外し、それらを素材とした融合モンスター1体の融合召喚を行う!!」

2体のモンスターが地面に生まれた紫の瘴気の渦の中へ飛び込み、同時にユーリの体もまた同じ色のオーラに包まれていく。

「空を羽ばたく美しき花よ、奈落へ誘う香しき花よ。今一つとなりて、思いのままにすべてを貪れ!融合召喚!現れろレベル10、《グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》!」

紫の瘴気が爆発し、そこから現れたのは暗い紫の頭と手足を青白い蛇のような体から生やしたドラゴンで、背中からはいくつか紫の花のようなパーツがついていて、そこからは紫の光を放っていた。

 

グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン レベル10 攻撃3300

 

「なん、だよ…このモンスターは…」

これまで対峙してきた《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》とは比べ物にならないほどの威圧感が襲いかかる。

そして、自分の手が震えるのが感じられた。

(んだよ…これ…。怖いっていうのかよ、あのモンスターが…)

「さあ…ここから、どうするの?」

「…ターン、エンド…」

 

ユーリ

手札1→0

ライフ1600

場 グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン レベル10 攻撃3300

 

ユーゴ

手札0

ライフ500

場 クリアウィング・シンクロ・ドラゴン(捕食カウンター1 《SRアサルトアーマー》装備) レベル1 攻撃3300

  伏せカード1

 

「僕のターン、ドロー」

 

ユーリ

手札0→1

 

「僕は手札から魔法カード《ナイト・ショット》を発動。君のフィールドのセットされている魔法・罠カードを1枚破壊する」

《ナイト・ショット》から放たれる閃光がユーゴの伏せカードである《シンクロン・リフレクト》が消滅する。

お互いのフィールドには攻撃力3300のモンスターだけが残った。

「そして、《グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》の効果発動。1ターンに1度、フィールド上のモンスター1体をターン終了時まで効果を無効にし、攻撃力を0にする」

《グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》の目が光るとともに、地面から巨大な茨が複数本出現し、それが《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》を襲う。

《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の効果を知っているはずのユーリがこのタイミングで自殺行為のような行動を起こしたのには必ず裏があることはわかっている。

だが、通すと敗北することがわかっている以上、もうユーゴは発動するしかない。

「《クリアウィング》の効果!!レベル5以上のモンスターが効果を発動したとき、その発動を無効にして破壊する!!ダイクロイックミラー!!」

《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》のプリズム状の翼から放たれるビームが茨を焼き払うとともに《グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》を襲う。

ビームは確かに《グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》を貫いた。

だが、そのモンスターの体が無数のバラの花びらへと変貌し、それがフィールドを包んでいく。

「《グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》の効果。このカードが破壊されて墓地へ送られたとき、フィールド上のすべてのモンスターを破壊する」

「何!?」

バラの花びらの中にいる《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の肉体が徐々に紫色に代わるとともに、その部分から灰化していく。

その痛みに耐えられずに叫び声をあげながら《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》は灰となった。

「ああ…」

「そして、墓地に存在するレベル8以上の闇属性モンスター1体を除外することで、《グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》は墓地から特殊召喚する」

触れたものを灰にするバラの花びらが再びユーリの目の前で終結すると、その姿を《グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》へと戻した。

 

グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン レベル10 攻撃3300

 

墓地から除外されたカード

・捕食植物ヘリアンフォリンクス

 

「なかなか面白かったよ、ユーゴ。じゃあね」

「んだよ、これ…なんなんだよ…!!」

もう打つ手のないユーゴには退路もなく、できるのはこれから放たれる《グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》の攻撃を受けること、そしてユーリに取り込まれることだけ。

このまま、リンを助けることができないまま終わる現実がユーゴにのしかかる。

(すまねえ、リン…助けられなくてよぉ。遊矢、クリアウィング…頼む、俺の代わりにリンを…!!)

「《グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》でダイレクトアタック」

目を光られた《グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》の口から紫の炎が放たれる。

炎に飲まれたユーゴの体は光となって消滅し、ユーリに取り込まれていき、炎が消えるとその場にはデュエルディスクとカードだけが遺された。

 

ユーゴ

ライフ500→0

 

リベンジ・サクリファイス(アニメオリカ・調整)

通常罠カード

(1);自分フィールドのモンスターが相手モンスターの攻撃によって破壊されたとき、その相手モンスター1体をリリースすることで発動できる。手札からそのモンスター1体のリリースでアドバンス召喚できるモンスター1体をアドバンス召喚する。

 

ソニック・シンクロ

通常罠カード

(1):相手に直接攻撃宣言時に発動できる。その攻撃を無効にする。その後、自分の墓地に存在する「スピードロイド」チューナーとチューナー以外の「スピードロイド」モンスター1体を除外することで、レベルの合計が同じ風属性Sモンスター1体をEXデッキからS召喚扱いで特殊召喚する。

 

水晶竜の壺

通常魔法カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールドに「クリアウィング」Sモンスター、または「クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン」が存在する場合に発動できる。デッキからカードを2枚ドローする。この効果を発動したターン、自分はモンスターを召喚・特殊召喚できない。

 

捕食植物ムナジモタートル

レベル4 攻撃0 守備2000 効果 闇属性 植物族

(1):自分フィールドの「捕食植物」モンスターが相手モンスターと戦闘を行うとき、手札に存在するこのカードを捨てることで発動できる。その戦闘で発生する自分へのダメージを0にする。その後、相手フィールドに存在するモンスター1体に捕食カウンターを1つ置く。捕食カウンターが置かれたレベル2以上のモンスターのレベルは1になる。

 

SRアサルトアーマー

装備魔法カード

手札の「SR」モンスター1体を墓地へ送ることで発動できる。

「クリアウィング」「クリスタルウィング」Sモンスターにのみ装備可能。

(1):装備モンスターの攻撃力はゲームから除外されている自分のSモンスターの数×800アップする。

(2):装備モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊したときダメージステップ終了時、自分の墓地に存在する「SR」モンスター1体を除外することで発動できる。装備モンスターは続けてもう1度だけ攻撃することができる。

 

捕食融合-プレデター・フュージョン-

速攻魔法カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドの「捕食植物」モンスターが2体以上破壊されたターンにのみ発動できる。このターン破壊された「捕食植物」モンスターと同じ数だけデッキから「捕食植物」モンスターを効果を無効にして特殊召喚する。その後、その効果で特殊召喚したモンスターをすべて裏側表示で除外し、それらのモンスターを融合素材とする融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。このカードを発動したターン、自分はモンスターをモンスターを召喚・特殊召喚できない。

 

「ふ、ふふふふ…ははは…いいね、力があふれてくるよ!!」

遺されたデュエルディスクとカード、《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》を手に入れ、ユーゴは今、一つとなった。

だが、これだけでは足りない。

餓狼のような欲望がぶくぶくと割れない風船のように膨らんでいく。

「そうだ…一つになれば力が手に入る。だとしたら…あいつだ」

脳裏に浮かぶのは今、アカデミアに攻め込んでいる遊矢。

彼を倒せば、遊矢だけでなく、ユートの力を手に入れることもできる。

これですべてが一つになり、圧倒的な力を得ることができる。

「待っていて…。一つになろう。ああ、そうだ。力を手に入れたらここにいる人間をすべてカードに…アハハハハハハハハ!!!」

ユーリの体を黒いオーラが包んでいく。

そのオーラが一瞬光った後で、ユーリの姿は消えてしまった。


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