「なぁ…」
「ん?どうしたんだよ?」
スペード校で警備のために残ったメンバーの1人が出入り口の守りを固めた状態でしゃべりだす。
守りのための最低限のメンバーだけが残っている状態で、作戦が開始してからはアカデミアのデュエル戦士がここにやってくることは1度もない。
そのため、暇でしょうがないようで、こうして誰かと話でもしないとあくびが出てしまう。
「いやぁ…な。俺もアカデミア攻撃に加わりたかったよ。なんで、俺はここの守りなんだぁ?」
「仕方ないだろ。誰かが守らなきゃあ…。だって、ここは最後の砦なんだぞ?」
「それはわかってるけど…」
しかし、ここまで暇だとデュエル戦士退治に出撃したほうがずっといい。
懐から支給品のカロリーメイトを取り出し、乾いた口で咀嚼する。
食べていると、近くから物音が聞こえた。
「なんだ?この物音?」
「え?物音したかぁ?」
「間違いない。見てくる」
食べるのに夢中になっていた相方を放っておいて、物音がした場所を身に向かう。
彼の後姿を見送っていた彼だが、急に何かに殴られた痛みで気を失ってしまった。
「はあ、はあ、はあ…」
《ダーク・アンセリオン・ドラゴン》の一撃を受け、あおむけに倒れたカイトをユートが息を荒くしながら見る。
強くなったライバルとの激突は想像以上に体力を使い、おまけに肉体が遊矢のものであるためか、疲労も相対的に激しい。
「ユート…」
倒れたままのカイトがユートにかろうじて聞こえるくらいの小さな声でライバルの名前を呼ぶ。
「カイト…どうしてだ?どうして、こうなってしまったんだ…。俺たちのデュエルは、もっと楽しいものじゃなかったのか?」
遊矢の体を借りるしかないとはいえ、カイトと生きてもう1度デュエルができたのはよかった。
しかし、このような悲しい形のデュエルを望んではいない。
「…すまない、父さん…母さん…ハルト…みんな…俺は、みんなの敵を討てず…奪ってしまったみんなの思いにこたえることができなかった…」
カイトの目から涙がこぼれる。
本当はこのようなことはしたくなかったが、これしかエクシーズ次元を取り戻し、アカデミアを滅ぼす方法が思いつかなかった。
「一人で背負い込みだ…カイト。それに、失ったものは戻らないんだ。それ以上に、いま生きている仲間やみんなのためにできることをすべきだったんだ…」
「それが…お前の答えか?」
「答えになっているかどうかは…わからないがな」
ユートに思いつく、そのできることは遊矢に力を貸すことくらいだ。
だが、その先にきっと、平和な未来が待っていると信じている。
「そう…か…。ユート、俺のデュエルディスクを使え。俺を…カードに変えてほしい」
「カイト…!?」
「俺は、多くの仲間たちをカードに変えてしまった。その償いをしなければならない…だから」
「いや…見事な友情劇だ。見事すぎるよ」
廃墟に近いデュエルリングの中では不釣り合いな拍手の音が響く。
拍手をしているのはレナードで、表情こそ柔らかいものの、その拍手からは祝福が感じられなかった。
「その友情に満ちたデュエルのおかげで、準備は整ったよ」
レナードは機械でできたデッキケースを取り出すと、その中にカード化した人々を入れていく。
すると、ケースの中央にあるオレンジ色のランプが赤く光り、そのままデュエルディスクにセットする。
「それ…は…」
「感謝するよ、天城カイト。力を集めてくれて…先ほどのデュエルで、不足分のエネルギーを集めることができたよ」
「エネルギー…だと!?」
「カード化したデュエリストの方が効率が良かったが、こうした高い実力のデュエリストがぶつかり合うことで生まれるエネルギー…デュエルエナジーもなかなかだ。これで…」
デッキケースが外れ、レナードはデュエルディスクに残ったカードを見る。
そのカードを見たレナードは笑みを浮かべた。
「素晴らしい…弱い次元の人間のエネルギーなどたかが知れていると思ったが、それなりに力になったようだ。ならば、プロフェッサーの理想も近いな」
「プロフェッサー…どういうことだ!?レナード!」
「カイト…奴はアカデミアの人間だ。おそらく、特務部隊ジェルマンの…」
「な…!?」
「君はまさに俺の理想としていた人間だったよ。だが…もう少し友達の声を聴いたほうがよかったな」
「貴様…!!」
怒りに燃えるカイトはレナードにとびかかる。
しかし、そのカイトの腹部に強烈な膝蹴りが遅い、あまりの激痛にカイトの表情がゆがむ。
「君の流儀は違うだろう。本当のデッキはアイツに渡してしまったが…これからはこれが俺の新たな力だ」
「力…だと!?自分で生み出したものじゃないだろう…!?」
息を整えながらカイトはデュエルディスクを展開する。
周囲のクローバー校レジスタンスのメンバーもレナードを襲おうとするが、急に装着しているデュエルディスクから電気ショックが起こり、全員気を失ってしまった。
「さすがに今は総出で来られるとまずいからな。眠ってもらうぞ。さあ…君にはこのデッキの実験台になってもらう」
「レナード…貴様は…俺の、俺たちの覚悟をけがした…その報いを受けろ!!」
カイトはデュエルディスクを展開する。
家族を目の前で失った以上の憎しみがカイトの心をどす黒く焼き尽くそうとしていた。
「カイト!」
「手を出すな、ユート!!奴は…奴だけはこの俺が!!」
「いい覚悟だ。さあ…始めよう。エクシーズ次元を救おうとした英雄の最期のデュエルを…」
レナード
手札5
ライフ4000
カイト
手札5
ライフ4000
「俺に先攻だ。俺は手札からフィールド魔法《選択の迷宮》を発動」
発動と同時に、レナードとカイトの周囲が壁に覆われていく。
そして、その中は文字通り迷宮が出来上がっていた。
「そして、俺は手札から魔法カード《宝札の選択》を発動。俺のフィールドに《選択の迷宮》が存在するとき、俺はデッキからカードを2枚ドローする。そして、カイト。君はこれから2つのうち、1つの選択をしてもらう」
「選択だと…!?」
「1つは、君はデッキからカードを2枚ドローする。もう1つはデッキからカードを1枚選択して手札に加える。さあ、どちらにする?君の自由だ」
《強欲な壺》のような禁止カードレベルのドローソースかと思ったら、相手にも破格のアドバンテージを与えるそのカードの効果にカイトは困惑する。
「これは協力してくれた君へのささやかな返礼だよ。生まれたデッキはどうも癖が強いみたいでね、どのカードもこうした選択を相手にさせるものが多い。それを君自身の勝利につなげるか、それとも敗北につなげるかは君次第だ」
まるでカイトを見下しているかのような口調がカイトの怒りの炎に油を注ぐ。
怒りに震えながら、カイトは手札を見る。
「俺は…デッキからカードを1枚選択して手札に加える。俺はデッキから《光波剣士》を手札に加える」
「この瞬間、《選択の迷宮》の効果発動。相手は以下の効果から1つを選択して適用するとテキストに記されているカード効果が発動するとき、このカードの上に選択カウンターを1つ乗せる」
選択の迷宮(フィールド魔法) 選択カウンター0→1
宝札の選択
通常魔法カード
このカード名のカードは1ターンに1度しか発動できない。
(1):自分フィールドに「選択の迷宮」が存在するときに発動できる。デッキからカードを2枚ドローする。その後、相手は以下の効果から1つを選択して適用する。
●自分はデッキからカードを2枚ドローする。
●自分はデッキからカードを1枚手札に加える。
「俺は手札から永続魔法《フィールドバリア》を発動。これで、お互いのフィールド魔法は破壊されず、俺たちは新たなフィールド魔法を発動できない。俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド」
レナード
手札5→2
ライフ4000
場 選択の迷宮(フィールド魔法)選択カウンター1
フィールドバリア(永続魔法)
伏せカード2
カイト
手札5→6(うち1枚《光波剣士》)
ライフ4000
場 なし
「俺のターン、ドロー!」
カイト
手札6→7
「俺のフィールドにカードが存在しないとき、このカードは手札から特殊召喚できる。《光波剣士》を特殊召喚!」
光波剣士 レベル4 攻撃1400
「そして、俺のフィールドにサイファーモンスターが存在するとき、《光波翼機》は手札から特殊召喚できる」
光波翼機 レベル4 攻撃1400
「そして、《ストームサイファー》を召喚!」
ストームサイファー レベル4 攻撃2400
「さっきのデュエルの1ターン目の動きそのままだな。君のことだ、どうせ《光波翼機》の効果を使い、《銀河目の光波竜》をエクシーズ召喚するつもりだろう?」
「そうだ…!貴様に俺たちの怒りを…憎しみをぶつける!《光波翼機》の効果発動!このカードをリリースすることで、俺のフィールドのサイファーモンスターのレベルを4つ上げる!」
光波剣士 レベル4→8 攻撃1400
ストームサイファー レベル4→8 攻撃2400
「俺はレベル8の《光波剣士》と《ストームサイファー》でオーバーレイ。闇に輝く銀河よ。復讐の鬼神に宿りて我がしもべとなれ!エクシーズ召喚!降臨せよ!ランク8!《銀河眼の光波竜》!」
カイトのフィールドにカイトの憎しみの象徴ともいえるドラゴンが現れ、怒りゆえか、赤く染まった瞳でレナードをにらむ。
銀河眼の光波竜 ランク8 攻撃3000
「復讐の鬼神か。だが、筋違いなことを言ってくれる。君の仲間を奪ったのは僕ではなく、君自身。そうだろう?」
レナードの言っていることは間違いではない。
実際、彼の口車に乗せられる形で仲間を次々とカードに変えてしまい、ついにはサヤカを裏切り者としてカードに変えようとした。
いつの間にか、自分が一番憎むデュエル戦士と同じ存在になってしまった実感はある。
そんな自分にエクシーズ次元を救う英雄になる資格はない。
「だが…それが、貴様を倒さない理由にはならない!」
「カウンター罠《拒絶の選択》を発動。エクストラデッキからの特殊召喚、もしくはエクストラデッキからモンスターを特殊召喚するカード効果が発動した時に発動できる。それを無効にし、破壊する」
「何!?」
《拒絶の選択》から放たれる紫色の光線で打ち抜かれた《銀河目の光波竜》が粒子となって消滅する。
「そして、君はここで再び選択する。君はこのターン、もう1度だけ手札からモンスターを召喚できる。そして、もう1つは破壊されたモンスターと同じ攻撃力の《選択者トークン》を特殊召喚する。さあ、選べ」
「…俺は再びモンスターを召喚する権利を選ぶ!俺は手札から《光波僧正》を召喚!」
背中に円盤状のバックパックを装着し、右手には錫杖が握られた袈裟姿の白い顔なしの僧侶が現れる。
光波僧正 レベル4 攻撃1600
選択の迷宮(フィールド魔法) 選択カウンター1→2
「《光波僧正》の効果発動!墓地のサイファーエクシーズモンスターをエクストラデッキに戻すことで、墓地からレベル4以下のサイファーモンスター1体を特殊召喚できる。俺は墓地から《光波剣士》を特殊召喚!そして、この効果で特殊召喚されたモンスターとこのカードのレベルを4つ上げる」
錫杖を地面に突き刺し、《光波僧正》が祈りをささげると、上空に光の渦が生まれ、その中から《光波剣士》がフィールドに舞い戻る。
光波剣士 レベル4→8 攻撃1400
光波僧正 レベル4→8 攻撃1600
拒絶の選択
カウンター罠カード
(1):相手フィールドにEXデッキからモンスターが特殊召喚されたとき、またはEXデッキからモンスターを特殊召喚する魔法・罠・モンスター効果が発動したときに発動できる。その召喚・効果の発動を無効にし、破壊する。その後、相手は以下の効果から1つを選択して適用する。
●このターン、自分はもう1度手札からモンスターを召喚できる。
●自分フィールドに「選択者トークン」1体を特殊召喚する。
選択者トークン
レベル8 攻撃? 守備? トークン 闇属性 戦士族
「拒絶の選択」の効果で特殊召喚される。
このカードの攻撃力・守備力はその効果で破壊されたモンスターの元々の攻撃力・守備力と同じになる。
「レベル8の《光波僧正》と《光波剣士》でオーバーレイ!エクシーズ召喚!再び現れろ、《銀河眼の光波竜》!!」
銀河目の光波竜 ランク8 攻撃3000
「そして、《光波僧正》をオーバーレイユニットとしたことで、《銀河眼の光波竜》は効果を得る。このカードのエクシーズ召喚に成功したとき、自分フィールドにほかのモンスターが存在しないとき、《光波水晶トークン》1体を特殊召喚する!」
光が内部に濃縮されている大きな水色の水晶がフィールドに現れる。
光波水晶トークン レベル4 攻撃1600
光波僧正
レベル4 攻撃1600 守備2000 効果 光属性 機械族
このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードの召喚に成功したとき、自分の墓地に存在する「サイファー」Xモンスター1体を対象に発動する。そのモンスターをEXデッキに戻し、墓地からレベル4以下の「サイファー」モンスター1体を特殊召喚する。その後、このカードとこの効果で特殊召喚されたモンスターのレベルを4つ上げる。
(2):このカードをX素材とした「サイファー」Xモンスターは以下の効果を得る。
●このカードのX召喚に成功したとき、自分フィールドにほかのモンスターが存在しないときに発動できる。自分フィールドに「光波水晶トークン」1体を特殊召喚する。
「バトルだ!《銀河眼の光波竜》でダイレクトアタック!殲滅のサイファーストリーム!!」
《銀河眼の光波竜》が光のブレスを放つが、青いバリアがレナードを包みこむ。
「罠カード《代価の選択》。相手モンスターの攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了する。そして、君は選択する…」
今度は攻撃を防がれ、このデュエル3回目の選択を迫られたカイトは舌打ちする。
「君は攻撃モンスターの攻撃力分のダメージを受ける。もう1つは攻撃モンスターを墓地へ送る。さあ、どうする?」
今度は相手にマイナスの2つの効果の選択となる。
カイトのエクストラデッキには《銀河眼の光波竜》があと2枚残っていて、やろうと思えば再びそのモンスターをエクシーズ召喚できる。
「俺は…《銀河眼の光波竜》を墓地へ送る…」
《銀河眼の光波竜》が姿を消し、フィールドには《光波水晶トークン》1体がフィールドに残る。
「俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド」
代価の選択
通常罠カード
(1):相手の攻撃宣言時に発動できる。その攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了させる。その後、相手は以下の効果から1つを選択して適用する。
●攻撃モンスターを墓地へ送る。
●攻撃モンスターの攻撃力分のダメージを自分は受ける。
レナード
手札2
ライフ4000
場 選択の迷宮(フィールド魔法)選択カウンター3
フィールドバリア(永続魔法)
カイト
手札7→1
ライフ4000
場 光波水晶トークン レベル4 攻撃1600
伏せカード2
「俺のターン、ドロー…」
レナード
手札2→3
「俺は《選択の迷宮》の効果発動。選択カウンターを2つ取り除き、デッキから選択と名の付く魔法・罠カード1枚を俺のフィールドにセットする。そして、この効果でセットしたカードはセットしたターンに発動できる。…感じるかな?君の選択が…君自身をゆっくりと追い詰めていっているのを」
迷宮の構造が変化するとともに、レナードのフィールドにカードが1枚セットされる。
選択の迷宮(フィールド魔法) 選択カウンター3→1
「そして、俺はさらにカードを2枚伏せてターンエンド」
レナード
手札3→1
ライフ4000
場 選択の迷宮(フィールド魔法)選択カウンター1
フィールドバリア(永続魔法)
伏せカード3
カイト
手札1
ライフ4000
場 光波水晶トークン レベル4 攻撃1600
伏せカード2
「このターンも、モンスターを召喚しないで終わった…」
レナードが手にしたそのデッキのコンセプトがだんだんユートには分かってきた。
魔法・罠カードを多用し、モンスターを使わずに相手の手を封じるのだが、問題はそれでどうやってレナードが勝つつもりなのかだ。
気になるのは先ほどのレナードの言葉で、それがどういう意味なのか、それはユートにもカイトにもわからなかった。
「俺のターン、ドロー!」
カイト
手札1→2
「俺は罠カード《エクシーズ・リボーン》を発動!墓地のエクシーズモンスター1体を特殊召喚し、このカードをそのモンスターのオーバーレイユニットとする。蘇れ、《銀河眼の光波竜》!」
銀河目の光波竜 ランク8 攻撃3000
再びカイトのフィールドに2体のモンスターが並び、これでその2体が一斉攻撃に成功したら勝てる状況になる。
だが、先ほどのターンのことを考えると、確実にレナードは何らかのカードを発動してカイトの坑道を妨害する。
そして、カイト自身に選択を迫る。
迷宮の中で、カイトはレナードが伏せた3枚のカードを思い浮かべるが、カイトは迷わなかった。
「バトル!《銀河眼の光波竜》でダイレクトアタック!殲滅のサイファーストリーム!」
《銀河眼の光波竜》の口に光がたまっていき、再びレナードに向けて発射される。
「俺は永続罠《選択の苦痛》、更に罠カード《代価の選択》を発動。これで、その攻撃は無効となり、バトルフェイズも終了となる」
「ならば、俺は《銀河眼の光波竜》を墓地へ送る」
3000もの効果ダメージを受けるよりはましと考え、カイトは機械的に《銀河眼の光波竜》を墓地へ送る。
選択の迷宮 選択カウンター1→2
「そして、《選択の苦痛》の効果。相手は以下の効果から1つを選択して適用するとテキストに記されているカード効果が発動したときに発動でき、選択カウンターが乗るたびに相手フィールドのモンスターの攻撃力を600ダウンさせ、相手に600ダメージを与える」
「何!?」
天井に出現した鏡から光線が発射され、光線は《光波水晶トークン》とカイトを撃ち抜く。
光波水晶トークン レベル4 攻撃1600→1000
カイト
ライフ4000→3400
「く…俺はこれで、ターンエンド…」
レナード
手札1
ライフ4000
場 選択の迷宮(フィールド魔法)選択カウンター2
選択の苦痛(永続罠)
フィールドバリア(永続魔法)
伏せカード1
カイト
手札2
ライフ3400
場 光波水晶トークン レベル4 攻撃1000
伏せカード1
ターン終了宣言したカイトは《光波水晶トークン》を見る。
(《光波水晶トークン》は俺のサイファーエクシーズモンスターの効果を受けたモンスターのコントロールが相手に移ったときにそのモンスターを破壊する効果がある。だが…奴がモンスターを召喚しない以上は…)
光波水晶トークン(サイファークォーツトークン)
レベル4 攻撃1600 守備2000 トークン 光属性 機械族
「光波僧正」の効果で特殊召喚される。
(1):このカードがフィールドに存在する限り、自分フィールドの「サイファー」Xモンスターの効果を受けたモンスターのコントロールが相手に移ったときに発動できる。そのモンスターを破壊する。
「俺のターン、ドロー」
レナード
手札1→2
「俺はモンスターを裏守備表示で召喚。これで、ターンエンド」
レナード
手札2→1
ライフ4000
場 裏守備モンスター1
選択の迷宮(フィールド魔法)選択カウンター2
選択の苦痛(永続罠)
フィールドバリア(永続魔法)
伏せカード1
カイト
手札2
ライフ3400
場 光波水晶トークン レベル4 攻撃1000
伏せカード1
初めて、レナードが自分からモンスターを召喚したが、それでも裏守備表示で、仮に《銀河眼の光波竜》の効果を使ったとしても、裏守備モンスターのコントロールを奪うことはできない。
「俺のターン…ドロー」
カイト
手札2→3
「俺は手札から魔法カード《死者蘇生》を発動。墓地の《銀河眼の光波竜》を特殊召喚する」
銀河目の光波竜 ランク8 攻撃3000
「バトル!《銀河眼の光波竜》で裏守備モンスターを攻撃!殲滅のサイファーストリーム!」
再び光のブレスが発射され、今度は妨害されることなく裏守備モンスターを包み、消滅させる。
裏守備モンスター
絶対王バック・ジャック レベル1 守備0
「《絶対王バック・ジャック》の効果。このカードが墓地へ送られたとき、デッキの上から3枚を好きな順番に並び替える」
「ならば、俺は《光波水晶トークン》でダイレクトアタック!」
《光波水晶トークン》からレーザー光線がレナードに向けて発射される。
しかし、彼の前に破壊したはずの《絶対王バック・ジャック》が現れ、その手には裏向きのカードが握られていた。
「何!?」
「《絶対王バック・ジャック》の効果。相手ターンにこのカードを墓地から除外することで、デッキの一番上をめくり、そのカードが通常罠であれば俺のフィールドにセットする。そして、その効果でセットしたカードはこのターンでも発動できる。ただし、通常罠カード以外の場合は墓地へ送る。当然、デッキの一番上のカードは通常罠カード《苦難の選択》。この効果により、相手のダイレクトアタックを無効にする」
レーザー光線が《絶対王バック・ジャック》が持つカードを盾替わりにされたことで消滅し、そのカードを残してそのモンスターは消滅する。
「さあ、選択の時間だ。君は攻撃モンスター以外のモンスターのコントロールを俺に渡す。もしくはこのターンのバトルフェイズを終了する」
「…当然俺は…バトルフェイズを終了する」
「いいだろう。選択を果たしたことで、選択カウンターが1つ乗る」
選択の迷宮(フィールド魔法) 選択カウンター2→3
「更に、《選択の苦痛》の効果により、君のフィールドのモンスターの攻撃力は600ダウンし、君は600のダメージを受ける」
《選択の苦痛》から波紋が発生し、それを受けた2体のモンスターの攻撃力が低下するとともに、カイトにもダメージを与える。
「く…!」
カイト
ライフ3400→2800
銀河目の光波竜 ランク8 攻撃3000→2400
光波水晶トークン レベル4 攻撃1000→400
苦難の選択
通常罠カード
(1):相手の直接攻撃宣言時に発動できる。その攻撃を無効にする。その後、その後、相手は以下の効果から1つを選択して適用する。
●攻撃モンスター以外の自分のモンスター1体のコントロールを相手に渡す。
●バトルフェイズを終了する。
「カイト!!」
(なんだよ…あのカイトが一方的に…)
カイトのデッキは相手フィールドに表側表示のモンスターのコントロールを奪い、攻撃力3000のモンスターに変化させる、相手を利用するデッキと言える。
しかし、レナードのデッキはモンスターの召喚に消極的で、魔法・罠カードを巧みに利用し、からめ手で相手を封じる。
実際、カイトのモンスターの攻撃は先ほどの《絶対王バック・ジャック》への攻撃を除いてすべて失敗しており、更にはカイトだけライフが減っている状態だ。
(けど、ユート…。問題なのは)
「ああ、そうだ。問題なのはなぜ、奴が《選択の迷宮》の効果を使わなかったのかだ)
《選択の迷宮》の効果を使えば、わざわざ《絶対王バック・ジャック》の効果を使わなかったとしても《苦痛の選択》を発動することができた。
裏守備モンスターで守りをわずかに固め、そしてそのモンスターの効果でデッキを操作したかったのであれば説明はつく。
実際、《絶対王バック・ジャック》の効果はこのデッキと相性がいい。
唯一、理由があるとしたら、他の選択カウンターの効果を使うためにわざと温存する道を選んだ、くらいだろう。
「俺はこれで…ターンエンド」
レナード
手札1
ライフ4000
場 裏守備モンスター1
選択の迷宮(フィールド魔法)選択カウンター3
選択の苦痛(永続罠)
フィールドバリア(永続魔法)
伏せカード1
カイト
手札2
ライフ2800
場 光波水晶トークン レベル4 攻撃400
銀河眼の光波竜 ランク8 攻撃2400
伏せカード1
「俺のターン、ドロー…」
レナード
手札1→2
「俺は手札から魔法カード《宝札の選択》を発動。デッキからカードを2枚ドローする。カイト…君もカードを2枚ドローするか、好きなカード1枚を手札に加えるか、選択するといい」
「…俺は、デッキからカードを2枚ドローする」
選択すると同時に、再び《選択の苦痛》の波紋がカイトのモンスターとカイト自身を襲う。
カイト
ライフ2800→2200
銀河目の光波竜 ランク8 攻撃2400→1800
光波水晶トークン レベル4 攻撃400→0
選択の迷宮(フィールド魔法) 選択カウンター3→4
「そして、俺は手札の《融合》を墓地へ送り、墓地の《代価の選択》、《宝札の選択》、《苦難の選択》を除外する」
「《融合》…!?」
《融合》が墓地へ送られると同時に墓地に眠る3枚の選択魔法・罠カードの幻影が出現する。
「このカードは手札の《融合》を墓地へ送り、更に墓地の選択と名の付く魔法・罠カードを3枚除外することで融合召喚できる。あまたの選択の果てに残る滅亡の結末よ、悪魔の肉体に宿りて審判を下せ。融合召喚。現れろ、《審判者カフカ》」
《融合》の渦の中に3枚のカードが溶け込んでいき、その中から真っ黒なスーツとネクタイをした、紫の翼の生えた悪魔が下りてくる。
鼻眼鏡をかけたその悪魔の手には分厚い書物が握られていた。
審判者カフカ レベル10 攻撃?
「このモンスターの特殊召喚に成功したとき、君は効果を1つ選択する。1つは君のフィールドの最も攻撃力の高いモンスターを装備カード扱いとしてこのカードに装備する。その場合、このカードの攻撃力は装備しているモンスターの元々の攻撃力と同じになる。もう1つはこのカードの元々の攻撃力は俺のフィールドの選択カウンターの数×1000にする。さあ…どうする?」
「くっ…!俺が選ぶのは…」
どちらの効果を選択したとしても、《審判者カフカ》の攻撃力が3000以上になることは確定する。
更に、ここで選択を行ったことで再び《選択の迷宮》に選択カウンターが1つ乗る。
だとしたら、選ぶのは…。
「…《銀河眼の光波竜》を差し出す」
眼を閉じ、苦渋の決断をするとともに《銀河眼の光波竜》は消滅する。
そして、《審判者カフカ》の本のページにそのモンスターのイラストが刻まれた。
審判者カフカ レベル10 攻撃0→3000
「そして、選択したことにより《選択の迷宮》に選択カウンターが1つ乗る。更に、君のフィールドのモンスターの攻撃力が600下がり、君に600のダメージだ」
選択の迷宮(フィールド魔法) 選択カウンター4→5
カイト
ライフ2800→2200
光波水晶トークン レベル4 攻撃400→0
「《光波水晶トークン》の攻撃力が0に!?」
今の《審判者カフカ》の攻撃力は3000で、攻撃力0になった《光波水晶トークン》に攻撃した場合、カイトのライフは0になる。
だが、カイトのフィールドには伏せカードがあり、レナードの攻撃に対応することができるかもしれない。
「俺は手札から速攻魔法《禁忌の選択》を発動。魔法か罠か…君が選択した種類のカードをこのターン、君は発動できなくなる。さあ…どちらを選ぶ?」
「決まっている…俺は!!」
「この瞬間、《審判者カフカ》の効果。俺のフィールドの選択カウンターを3つ取り除くことで、選択権が俺に移動する」
「何!?」
「俺が選択するのは…罠カードだ」
レナードの宣言と同時に、カイトの伏せカードが氷漬けになる。
カイトの眼が泳いでいて、彼の手札がスルリと床に落ちていく。
「そして、《選択の迷宮》と《選択の苦痛》の効果だ…」
選択の迷宮(フィールド魔法) 選択カウンター5→1
カイト
ライフ2200→1600
禁忌の選択
速攻魔法カード
このカード名のカードは1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分フィールドに「選択の迷宮」が存在する場合にのみ発動できる。相手は以下の効果から1つを選択して適用する。
●このターン、自分は魔法カードを発動できない。
●このターン、自分は罠カードを発動できない。
「さあ…覚悟はいいかな?《審判者カフカ》で《光波水晶トークン》を攻撃」
《審判者カフカ》の本のページが開き、その中にある《銀河眼の光波竜》が姿を現し、《光波水晶トークン》に向けて光のブレスを放つ。
(馬鹿な…俺は、いったい何のために…!?)
ブレスに包まれるカイトはこの敗北に納得することができないまま、その姿をカードに変えていった。
カイト
ライフ1600→0
選択の苦痛
永続罠カード
このカード名のカードは自分フィールドに1枚しか存在できない。
(1):「相手は以下の効果から1つを選択して適用する」とテキストに記されている魔法・罠・モンスター効果が発動したときに発動できる。
(2):自分フィールドのカードに選択カウンターが乗ったとき、相手フィールドに存在するモンスターの攻撃力が600ダウンし、相手に600ダメージを与える。
(3):このカードがフィールドに存在する限り、自分フィールドの「選択の迷宮」は相手によって破壊されず、相手はフィールド魔法を発動できない。
選択の迷宮
フィールド魔法カード
(1):「相手は以下の効果から1つを選択して適用する」とテキストに記されている魔法・罠・モンスター効果が発動し、相手が選択したとき、このカードの上に選択カウンターを1つ乗せる。
(2):このカードが効果によって破壊されるときに発動できる。代わりにこのカードの上に乗っている選択カウンターを1つ取り除く。
(3):このカードの選択カウンターが4つ以上存在するとき、戦闘で発生する自分へのダメージは0となる。
(4):このカードの上に乗っている選択カウンターを以下の数だけ取り除き、その効果を発動できる。
●2つ:デッキから「選択」魔法・罠カードを自分フィールドにセットする。この効果でセットしたカードはこのターン発動できる。
●4つ:自分の墓地に存在する「選択」魔法・罠カード1枚を手札に加える。
審判者カフカ
レベル10 攻撃? 守備? 融合 闇属性 悪魔族
このカードは手札の「融合」を墓地へ送り、自分の墓地に存在する発動に成功して墓地へ送られた「選択」魔法・罠カードを3枚(1種類につき1枚のみ)除外することで、EXデッキから融合召喚できる。
(1):このカードの特殊召喚に成功したとき、相手は以下の効果から1つを選択して適用する。
●自分フィールドの最も攻撃力の高いモンスター1体を装備カード扱いとしてこのカードに装備する。このカードの攻撃力・守備力はこの効果で装備したモンスターの元々の攻撃力・守備力と同じになる。
●このカードの攻撃力・守備力はこのカードの特殊召喚時に自分フィールドに存在する選択カウンターの数×1000となる。
(2):「相手は以下の効果から1つを選択して適用する」とテキストに記されている魔法・罠・モンスター効果が発動したとき、自分フィールドの選択カウンターを3つ取り除くことで発動できる。その効果による選択を代わりに自分が行い、相手に適用する。
「カイト…」
カイトだったカードがふわりとレナードの手に飛んでいく。
「ありがとう、天城カイト。アカデミアのためにここまで尽くしてくれて。後はゆっくり休んでくれていいよ。アークエリアプロジェクトの成就を祈っていてくれ」
眼を閉じ、語り掛けるようにつぶやいたレナードはそのカードをカードケースに納めた。
「貴様…!よくも、俺の友を!!」
「俺が?心外だな、彼は自ら敗北への道を選んだ。つまりは…負けたのは彼自身のせいじゃないか?」
「ふざけるな!貴様がそのように導いただけだろう!カイトを騙し、多くの仲間を奪った貴様を…俺がこの手で倒す!」
怒りに燃えるユートはデュエルディスクを展開する。
そんなユートの怒りに満ちた目を見たレナードはフゥ、とため息をつく。
「なぜ、エクシーズ次元のデュエリストはここまで野獣のように戦いを求めるのだろうな…。いいだろう、そこまで仲間の後を追いたいというなら、特別に相手になってやるよ」
上から見下すようにユートを見つつ、レナードはデッキを直す。
ここでの自分の役目が終わった以上、これ以上この次元にいる理由はない。
だが、カイトとのデュエルだけではデュエルデータのサンプルが不足すると考え、ユートをちょうどいい実験相手と考えただけだ。
そんなレナードの脳裏に『敗北』の二文字は存在しない。
あくまで自分が勝利するという前提での『選択』だ。
「「デュエル!!」」
ユート
手札5
ライフ4000
レナード
手札5
ライフ4000