遊戯王ARC-V 戦士の鼓動   作:ナタタク

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第98話 作戦開始

「よし…これで補給の準備は完了…と」

Dホイールで中継地点への物資の輸送を終え、一息ついた赤服のデュエル戦士はベンチに腰掛け、支給された栄養剤を口にする。

「にしても、Dホイールか…。ジェルマンの奴、こんなものを手に入れるなんてな…」

今乗ってきたDホイールはシンクロ次元での任務を終えたジェルマンが奪取した研究データを元にアカデミアで製造されたもので、教育型コンピュータのおかげで短期間の訓練で使用が可能になっている。

ただし、Dホイール整備のノウハウがまだ不足しており、整備士の教育もアカデミア内でしか行われていないことから、整備の際はいちいち融合次元に転送しなければならない。

レジスタンスがたまに中継拠点を攻撃し、その際に物資を奪っていくこともあり、移動中は不安でいっぱいになっていた。

しかし、物資を所定の拠点に運び終え、あとは本部に連絡をすればここからおさらばできる。

連絡をしようと、Dホイールへ向かおうとした瞬間、左腕に装着しているデュエルディスクが後方から飛んできたデュエルアンカーで捉えられる。

「くそっ!?デュエルアンカーだと!?まさか、レジスタンスが…!!」

振り返ると、そこには翔太の姿があり、もうすでに手札5枚を左手に握っていた。

「き、貴様は…ランサーズ!!」

オベリスク・フォースを倒すほどの実力を誇る彼らを相手にできるわけがないと、デュエル戦士はおびえた表情を見せ、数を頼みにできればと周囲を見渡す。

しかし、中継拠点を守っているデュエル戦士たちは皆、どこからともなく現れたレジスタンスを相手にしていて、とても助ける余裕がない。

「始めろよ…今の俺は、すっげぇ機嫌が悪いんだ」

 

「《精霊獣使いウィンダ》でダイレクトアタック」

「巫女の風・霊獣バージョン!!」

ウィンダが放つ、精霊獣の姿をした緑色の風がデュエル戦士に襲い掛かる。

「ギャアアア!!」

 

デュエル戦士

ライフ1200→0

 

「剣崎さんに後れを取るなぁ!!《ガントレット・シューター》で《古代の歯車猟犬》を攻撃!!」

侑斗がデュエル戦士を倒したことで戦意高揚したレジスタンスの1人がエースである《ガントレット・シューター》で《古代の歯車猟犬》を粉砕し、攻撃に余波がデュエル戦士に及ぶ。

「グホォォ!?」

 

デュエル戦士

ライフ1900→0

 

「《バハムート・シャーク》で攻撃力が0になった《古代の歯車巨人》を攻撃!!鮫の牙で、砕け散れ!!」

「うおおおお!!」

 

デュエル戦士

ライフ2300→0

 

「よし…4班は物資を奪え!残りの班は俺と共に次の中継拠点を破壊するぞ!」

凌牙の指示の元、レジスタンスのメンバーは自分たちの足で次の中継拠点へ向かう。

今、侑斗たちはスペード校には防衛のためのメンバーを可能な限り残したうえで、中継拠点への攻撃を開始している。

侑斗たちランサーズとその関係者以外は中継拠点をすべて潰して、その中で見つけた情報をもとにそのまま本部をつぶすという作戦だと説明を受けており、ようやく攻勢に出られることから士気が高い。

移動する中、凌牙はデュエルディスクの通信機能を動かし、侑斗と通信を繋げる。

「こちら凌牙、1Fと9Uはつぶした。次は7Yへ向かう」

「分かった。続けて、中継拠点潰しを…」

「ああ。遊矢たちから連絡は?」

凌牙にとって気がかりなのは、自分たちと別行動をし、クローバー校へ攻撃を行う遊矢たちだ。

サヤカが同行し、彼女が抜け道を知っているとはいえ、侵入成功の連絡がない限りはまだ安心できない。

「到達していてくれよ…遊矢」

 

「うええ…ひどい匂いだ」

パシャリ、パシャリと歩くたびに水音が真っ暗な空間の中で響き渡る。

コンクリートでできた狭い円状のトンネルを通っている遊矢は鼻に伝わる不快な匂いに鼻が曲がる。

「元々、クローバー校の下水道なの。3年前の戦いで機能が止まっちゃってるの」

「ゆ、遊矢…いったん引き返して、もう1つマスクを手に入れたほうが…」

先導しているサヤカと柚子は途中で遭遇したクローバー校レジスタンス2人から奪ったガスマスクをつけている。

デュエルで倒したわけではなく、不意打ちで気絶させたうえで入手している。

「今更戻るわけにはいかないだろ?うう…」

彼らが所持していたガスマスクはおそらく、この下水道を通るために使用しているものだと思われる。

おそらく、凌牙がサヤカと一緒に脱出した際に使用したためにそこを知られたのかもしれない。

救いなのは知られている人間がまだわずかと考えたのか、それほど見張りがいるわけではないことだ。

「サヤカちゃん、あとどれくらい?」

「凌牙さんと一緒に逃げてた時を考えると…あと、3分くらいで…」

「3分。3分でいいんだな…3分なら余裕だぜー…」

「遊矢…全然余裕に見えないけど…」

鼻が曲がり切って、涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった、悲惨な顔になった遊矢に苦笑いを見せる。

このままこの場所にいたら、もう遊矢の顔がそれで固定されてしまうかもしれない。

(気を付けろ…遊矢!前から来る)

「え…?」

急にユートの声が脳裏に響き、遊矢は足を止める。

足を止めた遊矢を気にし、柚子とサヤカも足を止める。

すると、前方から響く水音が3人の耳に入った。

「ああ…!!」

前からやってくる人影が見えたサヤカは驚きのあまり声を上げてしまう。

背丈はサヤカと同じくらいで、外型に黄色いラインのある茶色い癖のある髪で、青いマントで上半身を隠し、ガスマスクをつけている。

その少年の左腕にはデュエルディスクが装着されており、彼がクローバー校のデュエリストだということが分かった。

「アレン…神月アレン…」

「今更、どんな顔下げて戻ってきたんだよ…サヤカ」

「知ってるの…?」

「うん。同じクローバー校でデュエルを学んだ仲間」

「仲間…?カイトを見捨てたお前はもう仲間なんかじゃねえよ」

アレンの言葉から明確な敵意が感じられ、有無も言わさぬ様子だ。

「待ってくれ!なんでレジスタンス同士で戦う必要があるんだよ!戦うべきなのはアカデミアじゃないのか!?」

レジスタンス同士のつぶしあいで都合が良いのはアカデミアで、何より仲間同士が憎みあって戦うことを嫌う遊矢はわずかな望みをとアレンを説得する。

彼らの中に少しでも耳を傾けてくれる人がいることを願った。

アレンは口を開こうとするが、遊矢の顔を見て、その口を一度閉ざす。

「お前…名前は?」

「榊…遊矢…」

「榊遊矢…榊遊勝の…あの臆病者の息子かよ。親子そろってこっちに干渉してきやがって!てめえをカードに変えて…」

「やめて!!」

デュエルアンカーを発射しようとしたアレンだが、サヤカの叫びで手を止める。

ゆっくりとアレンに近づいたサヤカは懇願するように彼を見つめる。

「黙って行ってしまったことは…本当にごめんなさい。でも…カイトのやっていること、間違ってると思うの」

「間違ってる…?なら、お前らはどうなんだよ?守ってばっかりで、アカデミアを追い出せていねえじゃねえか!けどな…俺たちはあと少しだ。あと少しでアカデミアを倒す力が手に入る…。レナードさんが言っていた。隼、剣崎、ユート…それからあと10人をカードに変えれば…」

アレンの狂気にも似た言葉に遊矢は恐怖を覚えた。

追い詰められたためか、もしくはレナードの口車に踊らされ、自分も仲間をカードに変え続けてしまった罪悪感からか、アレンは正常に判断する能力を失っているように感じられた。

「ちょうどいいぜ。お前らを倒して、カードに変えればあと10人」

「駄目!!あなたはそのレナードっていう人に騙されて…」

「黙れ!レナードさんは何度も俺たちやカイトを助けてくれた。同じエクシーズ次元のデュエリストとして、クローバー校に力を貸してくれた…。そんな人が俺たちを騙すはずがないだろう!!」

「違う!そんな人なら、どうして仲間同士で戦うことを良しとするんだ!!」

アレンから見たら、もしかしたらレナードは恩人かもしれない。

だが、レナードをおびき寄せ、彼の真意を聞いていた遊矢たちにとってはカイトたちクローバー校を凶器に陥れた憎むべき悪魔だ。

しかし、アレンには遊矢の、状況を混乱させるようなよそ者の言葉は届かない。

「そんなにお前らが正しいっていうなら、俺を倒してみろ!!それができないなら、さっさとカードになってしまえよ!!」

「く…やるしか…」

これ以上足を止めるわけにはいかず、遊矢はデュエルディスクを展開しようとする。

しかし、その前にサヤカがデュエルディスクを展開させ、カードを引いた。

「サヤカ…」

「サヤカちゃん!?」

「行って、遊矢、柚子。アレンをこんな風にさせてしまったのは私…だから、私自身が決着をつける!」

「けど…」

「このまままっすぐ進んで、突き当りを左に曲がったところにはしごがあるわ。そこからクローバー校の裏庭に入れる。私も後から追いかけるから」

この抜け道の案内をし終えたなら、もう自分が先導しなくても遊矢たちは行けると信じ、サヤカはじっとアレンに目を向ける。

「そうかよ…ずっとおびえてばかりだった弱虫のお前が俺の相手かよ。いいぜ、まずはお前からカードにしてやる。後の2人はその後だ!!」

「サヤカ!仲間同士で戦うのは…」

納得できない遊矢はどうにかして止めようと言葉を探す。

しかし、エクシーズ次元のレジスタンスではない遊矢には彼らの気持ちは分からない。

説得するにも、ありきたりな、彼らの心に響かないような言葉しか思いつかない。

「…アレンの言う通り、私は弱虫よ。瑠璃がさらわれたのも…もとはと言えば私のせい」

「それって…どういうこと?」

サヤカは右手を握りしめ、視線をわずかに下に落とす。

そして、2秒程度すると話す決心がついたのか、顔を上げた。

「3年前…アカデミアの攻撃を受けていたとき、私は瑠璃とユートや遊矢によく似た人とデュエルをしているのを見たの。きっと、アカデミアのデュエリスト」

「それって、柚子が言っていた…」

遊矢は柚子から聞いた、ユートでもユーゴでもない、もう1人の自分そっくりのデュエリストのことを思い出す。

彼の実力は圧倒的で、侑斗の助けがなければそのまま柚子も捕まっていた。

そんな彼がエクシーズ次元に来ていたとしてもおかしくない。

「できることなら助けたかった…けど、その人が強すぎて、瑠璃が何もできずに追い詰められていって…私はそれを…そして捕まってしまうのを見ていることしかできなかった…!」

「サヤカちゃん…」

実際に彼とデュエルをした柚子だからこそ、仮にサヤカが加勢したとしても勝てなかったかもしれないということは分かる。

しかし、サヤカは見捨てたと思い、それを罪としてずっと抱えたままこの3年を戦い続けていた。

「今度こそ…私は仲間を助ける。もう…弱虫だった私には戻らない!だから…行って!!遊矢、柚子!!」

「サヤカ…」

「遊矢、行くわよ!!」

遊矢の手を握り、柚子は彼を引っ張るように進んでいく。

「待ってくれよ、柚子!サヤカが…」

「今はサヤカちゃんを信じてあげて、遊矢!!」

納得できない遊矢を無視し、柚子はつかむ手に力を込めて歩く。

先を進む2人を見向きもしないアレンはじっとサヤカを見る。

「デュエルよ…アレン」

「いいぜ…。どうせあいつらは俺たちの仲間にカードにされるんだ。誰がカードにするかが代わっただけだ」

アレンはデュエルアンカーを発射し、サヤカのデュエルディスクを捕らえる。

これで、デュエルが終わるまで2人はその場を動けなくなった。

「「デュエル!!」」

 

アレン

手札5

ライフ4000

 

サヤカ

手札5

ライフ4000

 

「俺の先攻!俺は手札からフィールド魔法《転回操車》を発動!」

発動と同時に、2人の足元に鉄道のレールが出現し、天井には信号機が現れる。

このフィールド魔法の効果はアレンと何度もデュエルをしているサヤカには理解できた。

「もうわかっているよな!このフィールド魔法の効果を!このカードは2つある効果のうちの1つだけを1ターンに1度、使うことができる。俺は手札の《深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト》を召喚!このカードは攻撃力が0になる代わりに、リリースなしで召喚できる!」

天井の信号機の色が赤から青に変化し、そのレールを通って下半身が列車になっている銀色の鎧騎士が現れる。

 

深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト レベル10 攻撃3000→0

 

「そして、《転回操車》の効果発動!俺のフィールドに機械族・地属性・レベル10のモンスターが召喚・特殊召喚されたとき、デッキから攻撃力1800以上の機械族・地属性モンスター1体をレベル10にして特殊召喚できる。俺はデッキから《無頼特急バトレイン》を特殊召喚!」

赤いデコトラをほうふつとさせる特急列車が《深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト》の後に続いてレールを走ってくる。

側面にはレベル10になった証として、6つの星印がつけられていた。

 

無頼特急バトレイン レベル4→10 攻撃1800

 

「レベル10のモンスターが2体…!」

「行くぜ!!俺はレベル10の《ナイト・エクスプレス・ナイト》と《バトレイン》でオーバーレイ!」

2体の列車がフィールドの中央に現れたオーバーレイネットワークの中へ消えていく。

そして、その中から自身の倍近い長さの砲身のキャノン砲をつけた茶色い一両の列車が出てくる。

「裏切者を粉砕する恐れ知らずの列車!エクシーズ召喚!出て来い、《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》!」

 

超弩級砲塔列車グスタフ・マックス レベル10 攻撃3000

 

「出た…アレンのエースモンスター…!」

ランク10であるため、敷居が高いイメージのあるそのカードだが、他のランクの高いエクシーズモンスターと比較するとこのカードは出しやすさが売りとなっている。

おまけに、このカードの効果はデュエルを一気に決着まで追い込む効果になっている。

「《グスタフ・マックス》の効果発動!1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、相手に2000のダメージを与える!ビッグ・キャノン!サヤカをぶち抜け!!」

《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》が照準をサヤカに固定し、徹甲弾を彼女に向けて発射する。

しかし、その銃弾は彼女の目の前で消滅し、フィールドには気球のような形をした、真っ白で綿のような体のモンスターが現れた。

「《フワポン》の効果発動!このカードは私がダメージを受けるとき、手札から墓地へ送ることでそのダメージを0にする!」

「そのカード…剣崎から」

「そう、私のラッキーカード」

《フワポン》は特訓する中で、初めてデュエルで勝つことができた際に侑斗から受け取ったカードだ。

なぜそれがラッキーカードなのかは今でも分からない。

しかし、なぜかこのカードをデッキに入れていると心が落ち着くように感じた。

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・無頼特急バトレイン

 

「俺はカードを2枚伏せて、ターンエンド!同時に、墓地へ送られた《バトレイン》の効果発動!このカードが墓地へ送られたターン終了時、デッキから機械族・地属性・レベル10モンスター1体を手札に加える。俺はデッキからもう1枚の《ナイト・エクスプレス・ナイト》を手札に加える!」

 

アレン

手札5→2(うち1枚《深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト》)

ライフ4000

場 超弩級砲塔列車グスタフ・マックス(ORU1) ランク10 攻撃3000

  伏せカード2

  転回操車(フィールド魔法)

 

サヤカ

手札5→4

ライフ4000

場 なし

 

「ちっ…気に入らねえぜ…」

先攻1ターン目の先制パンチを防いだラッキーカードにアレンは怒りを覚える。

平和だったころも、アレンは何度かサヤカとデュエルをしていた。

そのころのサヤカはこの効果を防ぐことができず、先制を許すことが多かった。

しかし、今のサヤカは侑斗の特訓を受けたことで強くなっていた。

黒咲と同じように。

強くなること自体は問題ないが、よそ者の力を借りていることが気に食わなかった。

「私のターン、ドロー!」

 

サヤカ

手札4→5

 

「私は墓地の《フワポン》の効果発動!1ターンに1度、手札の光属性・天使族モンスター1体を墓地へ送ることで、このカードを手札に戻すことができる!」

再び《フワポン》がサヤカの手札に加わり、彼女を守る壁となる。

光属性・天使族モンスターを手札に温存できる状態を維持できる限り、彼女は1ターンに1度だけだが、どんなダメージも防ぐことができる。

 

手札から墓地へ送られたカード

・天空聖騎士アークパーシアス

 

フワポン

レベル1 攻撃200 守備300 効果 光属性 天使族

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分がダメージを受けるとき、このカードを手札から墓地へ捨てることで発動できる。そのダメージを0にする。

(2):自分の墓地にこのカードが存在するとき、手札の光属性・天使族モンスター1体を墓地へ送ることで発動できる。このカード1枚を手札に戻す。

 

「そして、手札から魔法カード《聖天使の施し》を発動!私のフィールドにカードがない時、デッキからカードを2枚ドローして、手札1枚を墓地へ捨てる!」

 

手札から墓地へ送られたカード

・踊る妖精

 

「そして、《力天使ヴァルキリア》を召喚!」

白金の鎧と盾、そして槍を装備した浅黒い肌の天使がコンクリートでできた無機質な空間に舞い降りる。

 

力天使ヴァルキリア レベル4 攻撃1800

 

「《オネスト》とのコンボで、《グスタフ・マックス》を破壊するつもりかよ!?」

「私はカードを2枚伏せて、ターンエンド!」

 

アレン

手札2(うち1枚《深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト》)

ライフ4000

場 超弩級砲塔列車グスタフ・マックス(ORU1) ランク10 攻撃3000

  伏せカード2

  転回操車(フィールド魔法)

 

サヤカ

手札5→2(うち1枚《フワポン》)

ライフ4000

場 力天使ヴァルキリア レベル4 攻撃1800

  伏せカード2

 

「ちっ…攻めづらい状態にしてくれやがって…!」

《力天使ヴァルキリア》が光属性で、彼女の手札の残り1枚の正体が《オネスト》である可能性が考えられる。

おまけに、《力天使ヴァルキリア》の効果がカウンター罠に対応する効果である以上、何らかのカウンター罠を貼っていても不思議ではない。

元々はフェアリーモンスター中心で、そのモンスターを様々なカード効果でパワーアップさせるタイプのデッキだったのが侑斗との特訓でカウンター罠とRUMという新しい戦術を組み込んだ。

だが、アレンもクローバー校のレジスタンスとして、カイトの力になるために鍛錬を積んできている。

カイトや仲間のためにも、負けるわけにはいかない。

「俺のターン、ドロー!」

 

アレン

手札2→3

 

「俺は《ナイト・エクスプレス・ナイト》をリリースなしで召喚!」

 

深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト レベル10 攻撃3000→0

 

「更に、《転回操車》の効果で、デッキから《バトレイン》を特殊召喚!」

 

無頼特急バトレイン レベル4→10 攻撃1800

 

「更に俺のフィールドに機械族・地属性モンスターが召喚・特殊召喚されたとき、《重機貨列車デリックレーン》を特殊召喚できる!だが、この効果で特殊召喚されたモンスターの攻撃力・守備力は半分になる!」

後方に大型クレーンの付いた車両をつけている黄色いディーゼル列車が出現する。

 

重機貨列車デリックレーン レベル10 攻撃2800→1400 守備2000→1000

 

「行くぜ!俺はレベル10の《ナイト・エクスプレス・ナイト》、《バトレイン》、《デリックレーン》でオーバーレイ!エクシーズ召喚!出て来い、《超次元ロボギャラクシー・デストロイヤー》!」

オーバーレイネットワークの中から天井を突き破るほどの大きさをした青い戦隊物の大型ロボットが出現する。

 

超次元ロボギャラクシー・デストロイヤー ランク10 攻撃5000

 

「《ギャラクシー・デストロイヤー》の効果!オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、相手フィールドの魔法・罠カードをすべて破壊する!この効果の発動に対して、お前は魔法・罠カードを発動できない!」

「ええっ!?」

「ギャラクシー・ストリーム!!」

《超次元ロボギャラクシー・デストロイヤー》の両拳が回転し、強い酸性の竜巻が2つ発生する。

その竜巻はサヤカの2枚の伏せカードを酸化・消滅させた。

「更に、取り除かれた《デリックレーン》の効果!エクシーズモンスターの効果発動のためにこいつが取り除かれたとき、相手フィールドのカード1枚を破壊できる!俺は《力天使ヴァルキリア》を破壊!」

幻影となって出現した《重機貨列車デリックレーン》が《力天使ヴァルキリア》に最大速度で突撃する。

時速160キロ以上のスピードで突進する巨体な鉄の体を避けることができず、《力天使ヴァルキリア》はその列車と共に消滅した。

 

破壊された伏せカード

・無償交換

・クロス・カウンター・トラップ

 

「バトルだ!《ギャラクシー・デストロイヤー》でダイレクトアタック!ギャラクシー・ブラスター!!」

《超次元ロボギャラクシー・デストロイヤー》の胸部装甲が真っ赤に燃え上がり、そこから火炎放射がサヤカに襲い掛かる。

「私は墓地の罠カード《クロス・カウンター・トラップ》の効果発動!」

「何!?そいつは俺が破壊した…」

「このカードが破壊され墓地へ送られたターン、私は1枚だけ手札から罠カードを発動できる!私が発動するのは《攻撃の無力化》!」

サヤカの目の前に次元の渦が発生し、その中に炎が飲み込まれていく。

これで、アレンのバトルフェイズも終了となった。

「更に、墓地の《天空聖騎士アークパーシアス》の効果発動!私がカウンター罠を発動したとき、手札・フィールド・墓地の天使族モンスター2体を除外することで、手札・墓地から特殊召喚できる!」

「くそ…!そいつは《フワポン》が!?」

破壊された《力天使ヴァルキリア》と《踊る妖精》の幻影がサヤカのフィールドで消滅し、天井に虹色のゲートが出現する。

そして、背中に日輪のような光の環をつけ、下半身が自身の顔と同じような形をし、2枚の翼を付けた乗り物になっている、金と青、白のトリコロールの天使が現れる、

その手には自身の配色と似た剣と盾を装備しており、彼女を中心に真っ暗な下水道を光で染めていく。

 

天空聖騎士アークパーシアス レベル9 攻撃2800

 

「ちっ…!俺はメインフェイズ2に《グスタフ・マックス》の効果を発動!オーバーレイユニットを1つ取り除き、お前に2000のダメージを与える!」

「私は手札の《フワポン》の効果を発動!そのダメージを0にする!」

再び発射された徹甲弾が《フワポン》によって阻まれる。

オーバーレイユニットを使い切った《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》は攻撃力3000のバニラ同然となった。

「俺はこれで…ターンエンド」

 

アレン

手札3→1

ライフ4000

場 超弩級砲塔列車グスタフ・マックス ランク10 攻撃3000

  超次元ロボギャラクシー・デストロイヤー(ORU2) ランク10 攻撃5000

  伏せカード2

  転回操車(フィールド魔法)

 

サヤカ

手札2→0

ライフ4000

場 天空聖騎士アークパーシアス レベル9 攻撃2800

 

「私のターン、ドロー!」

 

サヤカ

手札0→1

 

このターンを凌いだとはいえ、サヤカのフィールドには《天空聖騎士アークパーシアス》が1体いるだけ。

攻撃力は2900で、アレンのフィールドに存在する2体のエクシーズモンスターには及ばない。

「私は手札から魔法カード《エクシーズ・トレジャー》を発動!フィールド上のエクシーズモンスターの数だけ、デッキからカードをドローできる!」

アレンのエクシーズモンスターを利用し、サヤカは手札を増強する。

「更に、私は手札から《ヘルプ・フェアリー》を召喚!」

頭に看護婦の帽子をつけ、白衣に身を包んだ金髪の妖精がサヤカのフィールドに現れ、《天空聖騎士アークパーシアス》の周囲を飛ぶ。

 

ヘルプ・フェアリー レベル1 攻撃0

 

「《ヘルプ・フェアリー》の効果!1ターンに1度、相手フィールド上のエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターが存在し、私のフィールドにエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターが存在しないとき、ライフを800支払うことで、デッキからカードを1枚ドローできる」

ライフを支払い、おまけに攻撃力3000以上の脅威の前に攻撃力0を棒立ちさせるという無謀な手段を取ってまでドローするカード。

それに価値があることを願いながら、サヤカはカードを引く。

 

サヤカ

ライフ4000→3200

 

「バトル!《アークパーシアス》で《ギャラクシー・デストロイヤー》を攻撃!」

「まさか、ドローしたカードは…!」

「私は手札の《オネスト》の効果発動!私の光属性モンスターが相手モンスターと戦闘を行うとき、手札のこのカードを墓地へ送ることで、私のそのモンスターの攻撃力を戦う相手モンスターの攻撃力分アップする!」

 

天空聖騎士アークパーシアス レベル9 攻撃2800→7800

 

《オネスト》の力で宿っている翼が強い光を発し、刀身も白い輝きに満たされる。

その刃で《超次元ロボギャラクシー・デストロイヤー》を一刀両断した。

「ぐう…う!!」

 

アレン

ライフ4000→1100

 

「更に、《アーク・パーシアス》の効果発動!このカードが相手に戦闘ダメージを与えたとき、デッキからパーシアスと名の付くカード、もしくはカウンター罠カード1枚を手札に加えることができる。私はデッキから《パーシアスの神域》を手札に加える。そして、手札に加えた《パーシアスの神域》を発動!このカードはフィールド・墓地に存在する限り、カード名を《天空の聖域》として扱い、フィールドの天使族モンスターの攻撃力・守備力を300アップさせる!」

 

天空聖騎士アークパシアス レベル9 攻撃7800→8100

ヘルプ・フェアリー レベル1 攻撃0→300

 

「俺は罠カード《エクシーズ・リボーン》を発動!墓地の《ギャラクシー・デストロイヤー》を特殊召喚し、こいつをオーバーレイユニットにする!

「そして、カードを1枚伏せてターンエンド」

「俺は墓地に送られた《バトレイン》の効果発動!デッキから3枚目の《ナイト・エクスプレス・ナイト》を手札に加える!」

 

アレン

手札1→2(うち1枚《深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト》)

ライフ1100

場 超弩級砲塔列車グスタフ・マックス ランク10 攻撃3000

  超次元ロボギャラクシー・デストロイヤー(ORU1) ランク10 攻撃5000

  伏せカード1

  転回操車(フィールド魔法)

 

サヤカ

手札1→0

ライフ4000

場 天空聖騎士アークパーシアス レベル9 攻撃8100→3100

  ヘルプ・フェアリー レベル1 攻撃300

  パーシアスの神域(永続魔法)

  伏せカード1

 

アレンに先生ダメージを与えることに成功したが、《エクシーズ・リボーン》の効果で《超次元ロボギャラクシー・デストロイヤー》がよみがえり、オーバーレイユニットも得た。

この効果でサヤカの伏せカードを破壊したいものの、《パーシアスの神域》の効果によって、サヤカの伏せカードはカード効果の対象にならず、破壊もされない。

そのため、アレンはカウンター罠を排除するには、まずは《パーシアスの神域》を破壊しなければならない。

「俺のターン、ドロー!」

 

アレン

手札2→3

 

しかし、《ヘルプ・フェアリー》の攻撃力は《パーシアスの神域》の効果でパワーアップしているとはいえ、たったの300。

《超次元ロボギャラクシー・デストロイヤー》の攻撃が決まれば、一撃でサヤカを倒すことができる。

「バトル!!《ギャラクシー・デストロイヤー》で《ヘルプ・フェアリー》を攻撃!ギャラクシー・ブラスター!!」

胸部装甲から再び発射される火炎放射に《ヘルプ・フェアリー》が飲み込まれ、更にサヤカにも襲い掛かる。

「思い知れ!!裏切られた怒りを!!」

「キャアア!!私は《ヘルプ・フェアリー》の効果発動!このカードとの戦闘で発生する私への戦闘ダメージは半分になる!!」

《ヘルプ・フェアリー》が両手をかざし、サヤカの正面にバリアを展開させる。

《ヘルプ・フェアリー》消滅と同時にバリアも消えたものの、それでもサヤカへのダメージは軽減される。

 

サヤカ

ライフ4000→1650

 

「ちっ…《ヘルプ・フェアリー》にそんな効果が…!」

もし、《超次元ロボギャラクシー・デストロイヤー》で《天空聖騎士アークパーシアス》を攻撃した後で、《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》で《ヘルプ・フェアリー》を攻撃していれば、より多くのダメージを与えることができた上に、モンスターを全滅させることができた。

決着に急ぐあまり、攻撃対象にしたモンスターの効果を見落としてしまっていた。

「そして、受けた戦闘ダメージ以下の攻撃力を持つ光属性・天使族モンスター1体を墓地から特殊召喚できる!よみがえって、《オネスト》!!」

 

オネスト レベル4 攻撃1100

 

ヘルプ・フェアリー

レベル1 攻撃0 守備0 効果 光属性 天使族

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドにEXデッキから特殊召喚されたモンスターが存在せず、相手フィールドにEXデッキから特殊召喚されたモンスターが存在するとき、800LPを支払うことで発動できる。デッキからカードを1枚ドローする。

(2):このカードが相手モンスターを戦闘を行うときに発動する。その戦闘で発生する自分へのダメージが半分になる。その後、受けたダメージ以下の攻撃力を持つ光属性・天使族モンスター1体を自分フィールドに特殊召喚する。

 

「なら、俺は手札から魔法カード《車両増設》を発動!このカードを俺のフィールドのランク10以上の機械族エクシーズモンスターのオーバーレイユニットにする!そして、《グスタフ・マックス》の効果発動!オーバーレイユニットを1つ取り除き、サヤカにとどめを刺す!」

最後の徹甲弾がキャノンに装填され、サヤカに向けて発射される。

「カウンター罠《ダメージ・ポラリライザー》を発動!ダメージを与える効果の発動と効果を無効にする!」

サヤカを守るように展開された透明のバリアが徹甲弾を受け止める。

破壊効果を持たない《ダメージ・ポラリライザー》であるため、《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》は破壊されず、フィールドに残った。

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・車両増設

 

「そして、私たちはデッキからカードを1枚ドローする」

2人は自分のデッキトップを見つめる。

次にドローするカードが互いの明暗を分ける可能性がある。

2人は一斉にカードをドローし、アレンは即座にそのカードを発動した。

「俺は手札から魔法カード《臨時ダイヤ》を発動!墓地に存在する攻撃力3000以上の機械族モンスター1体を守備表示で特殊召喚する!俺は墓地から《ナイト・エクスプレス・ナイト》を守備表示で特殊召喚!」

 

深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト レベル10 守備3000

 

「更に、《転回操車》の効果発動!デッキから《デリックレーン》を特殊召喚!」

 

重機貨列車デリックレーン レベル10 攻撃2800

 

「俺は《ナイト・エクスプレス・ナイト》と《デリックレーン》でオーバーレイ!エクシーズ召喚!出て来い、2体目の《グスタフ・マックス》!!」

 

超弩級砲塔列車グスタフ・マックス ランク10 攻撃3000

 

2体目の《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》が現れ、もうすでに徹甲弾の装填を終え、いつでも発射できる体制を整えていた。

「《グスタフ・マックス》の効果発動!オーバーレイユニットを1つ取り除き、お前に2000のダメージを与える!今度こそ、終わりだぁ!!」

今回3回目の《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》の徹甲弾が発射され、サヤカに襲い掛かる。

伏せカードがないサヤカだが、彼女もアレンと同じように《ダメージ・ポラリライザー》の効果でドローしたカードに手を付けた。

「私は手札の《ハネワタ》の効果を発動!このカードを手札から墓地へ送ることで、このターン私が受ける効果ダメージを0にする!」

オレンジ色の綿でできた小さな妖精がサヤカの前に現れ、徹甲弾の勢いをその綿で吸収し、受け止めて消滅した。

「はあ…ありがとう、《ハネワタ》…」

「くそっ…また生き延びやがって…!だが、オーバーレイユニットとして墓地へ送られた《デリックレーン》の効果発動!《オネスト》を破壊!!」

《オネスト》が幻影となった《重機貨列車デリックレーン》の突撃を受けて消滅する。

これで、サヤカは次のターンに《オネスト》の効果を使うことができなくなった。

「更に俺は罠カード《貪欲な瓶》を発動!墓地のカード5枚をデッキに戻し、デッキからカードを1枚ドローする!」

 

墓地からデッキに戻ったカード

・深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト

・無頼特急バトレイン×2

・臨時ダイヤ

・重機貨列車デリックレーン

 

「更に、カードを1枚伏せて、《ギャラクシー・デストロイヤー》の効果発動!オーバーレイユニットを1つ取り除き、《パーシアスの神域》を破壊!ターンエンド!!更にオーバーレイユニットとして墓地へ送られた《車両接続》の効果発動!次のターン終了時まで、《グスタフ・マックス》は戦闘・効果では破壊されない!」

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・エクシーズ・リボーン

 

アレン

手札3→1(うち1枚《深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト》)

ライフ1100

場 超弩級砲塔列車グスタフ・マックス×2(うち1体ORU1) ランク10 攻撃3000

  超次元ロボギャラクシー・デストロイヤー ランク10 攻撃5000

  伏せカード1

  転回操車(フィールド魔法)

 

サヤカ

手札0

ライフ1650

場 天空聖騎士アークパーシアス レベル9 攻撃3100→2800

 

車両接続

通常魔法カード

(1);自分フィールドに存在するランク10以上の機械族Xモンスター1体を対象に発動できる。このカードをそのカードの下に重ねてX素材にする。

(2):X素材となったこのカードが墓地へ送られたターン終了時に発動する。このカードをX素材としていたモンスターは次のターン終了時まで効果では戦闘・破壊されない。

 

結局、このターンで決着がつくことなく、サヤカにターンが回る。

しかし、サヤカには手札がなく、フィールドには《天空聖騎士アークパーシアス》がいるだけ。

有利なのはオーバーレイユニットを持つ《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》と攻撃力5000の《超次元ロボギャラクシー・デストロイヤー》のいるアレンの方だ。

だが、サヤカを見たアレンは驚きを感じていた。

(あいつ…おびえてねえ…)

自分が知っているサヤカはピンチになると動揺を顔に出し、弱気な姿を見せてしまうことが多かった。

だが、今の彼女からはそんなものが感じられない。

「お願い…私のデッキ。アレンに私の思いを届ける力を!」

この3年の間、ずっと一緒に戦ってきた相棒に願いを込め、サヤカはカードを引く。

 

サヤカ

手札0→1

 

「私は手札から魔法カード《報復者の宝札》を発動!墓地のカウンター罠カード3枚を除外して、デッキからカードを2枚ドローする!」

 

墓地から除外されたカード

・攻撃の無力化

・無償交換

・攻撃の無力化

 

報復者の宝札

通常魔法カード

(1):自分の墓地に存在するカウンター罠カード3枚を除外することで発動できる。デッキからカードを2枚ドローする。

 

「私は手札から魔法カード《パーシアスの啓示》を発動!墓地のレベル4以下の天使族モンスター1体を特殊召喚する。私は墓地から《フワポン》を特殊召喚!」

 

フワポン レベル1 攻撃200

 

 

「このタイミングで《フワポン》だと!?だが…そんな雑魚モンスターに何ができるってんだよ!?」

「《パーシアスの啓示》の効果発動!私のフィールドにパーシアスが存在するとき、墓地のこのカードを除外することで、私のフィールドの天使族モンスター1体とパーシアス1体のレベルをその合計にすることができる。私は《フワポン》と《アーク・パーシアス》のレベルを10に!」

《フワポン》がプカプカと浮かび、《天空聖騎士アーク・パーシアス》の頭上に移動する。

同時に、2体がオレンジ色の光に包まれ、レベルが統一されていく。

 

天空聖騎士アーク・パーシアス レベル9→10 攻撃2800

フワポン レベル1→10 攻撃200

 

パーシアスの啓示

通常魔法カード

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドに「パーシアス」モンスターが存在するとき、自分の墓地に存在するレベル4以下の天使族モンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターはこのターン、攻撃できない。

(2):自分の墓地に存在するこのカードを除外し、自分フィールドに存在する「パーシアス」モンスター1体と天使族モンスター1体を対象に発動できる。それらのモンスターは、その2体のレベルを合計したレベルになる。

 

「レベル10のモンスターが2体!?まさか…」

「私はレベル10の《アーク・パーシアス》と《ハネワタ》でオーバーレイ!!」

サヤカはエクストラデッキから1枚のカードを引き抜き、それをアレンに見せる。

「その…カードは…!?」

「剣崎さんがあなたに渡そうとしたカードよ!エクシーズ召喚!現れて、ランク10!《No.35ラノベス・タランチュラ》!!」

青い10本足を持つ、一つ目の巨大な蜘蛛がサヤカの背後に現れ、腹部に刻まれている35の文字が光る。

それはアレンが拒絶し、捨てたカードの1枚だった。

 

No.35ラノベス・タランチュラ ランク10 攻撃0

 

「《ラノベス・タランチュラ》の効果発動!自分フィールドのモンスターの攻撃力・守備力は私たちのライフの差と同じ数値分アップする!」

 

 

No.35ラノベス・タランチュラ ランク10 攻撃0→550 守備0→550

 

《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》と併用することができれば、一気にステータスを引き上げることのできる、アレンのデッキにこそ可能性を見出すことのできるモンスターだ。

しかし、今の2人のライフに大した差がなく、上昇する能力値も微々たるものにとどまった。

「だが、攻撃力がたかが550のそんなモンスターでは…!」

「まだよ!このカードはまだ途中!!私はオーバーレイユニットを2つもつ《ラノベス・タランチュラ》でオーバーレイネットワークを再構築!」

「何!?」

エクシーズ召喚したばかりの《No.35ラノベス・タランチュラ》が再びオーバーレイネットワークに飛び込んでいき、黄土色だった腹部が緑色の変化していき、数字も35から84へと変化していく。

「このカードはオーバーレイユニットを2つもつランク8から10の闇属性エクシーズモンスターを素材に召喚できる!エクシーズ召喚!現れて、ランク11!《No.84ペイン・ゲイナー》!!」

 

No.84ペイン・ゲイナー ランク11 守備0

 

「《ペイン・ゲイナー》の守備力は私のフィールドに存在するエクシーズモンスターのランクの合計×200になる!」

 

No.84ペイン・ゲイナー ランク11 守備0→2200

 

「守備力2200!?その程度のモンスターで俺の3体のエクシーズモンスターは…」

「《ペイン・ゲイナー》の効果発動!1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、相手フィールドに存在するこのカードの守備力よりも低い守備力のモンスターをすべて破壊する!」

「何!?」

「《ギャラクシー・デストロイヤー》の守備力は2000!よって、《ギャラクシー・デストロイヤー》は破壊される!」

《No.84ペイン・ゲイナー》がオーバーレイユニットを捕食すると、刃のように鋭い糸を発射し、《超次元ロボギャラクシー・デストロイヤー》を貫く。

動力部を破壊されたことで機能を停止し、フィールドから姿を消した。

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・No.35ラノベス・タランチュラ

 

「《ギャラクシー・デストロイヤー》!!」

「さらに、私は手札から永続魔法《ランクアップ・スパイダーウェブ》を発動!自分フィールドのエクシーズモンスター1体をオーバーレイユニットを1つ取り除くことで、そのモンスターよりもランクの1つ高いエクシーズモンスターにランクアップさせることができる!」

「《ペイン・ゲイナー》も…途中だというのかよ!!」

「このカードで…あなたを止める!!私は《ペイン・ゲイナー》でオーバーレイ!!」

オーバーレイネットワークの飛び込んだ《No.84ペイン・ゲイナー》は自ら生み出した繭の中に身を隠す。

そして、数秒経過すると繭にひびが入り、その中から白をベースとし、関節よりも先の足が青く透き通ったものになった蜘蛛が現れる。

「ランクアップ・エクシーズチェンジ!現れて、《No.77ザ・セブン・シンズ》!!」

 

No.77ザ・セブン・シンズ ランク12 攻撃4000

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・フワポン

 

ランクアップ・スパイダーウェブ(漫画オリカ・調整)

永続魔法カード

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドに存在するXモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターのX素材を1つ取り除き、EXデッキに存在するそのカードよりもランクが1つ高いXモンスター1体をそのカードの上に重ねてX召喚扱いで特殊召喚する。

(2):このカードがフィールドに存在する限り、自分は「RUM」の効果でEXデッキからXモンスターをX召喚できず、Xモンスター以外をEXデッキから特殊召喚できない。

(3):このカードの効果でX召喚されたモンスターがフィールドから離れた時に発動する。このカードをゲームから除外する。この効果は無効化されない。

 

「《ザ・セブン・シンズ》…」

「アレン…自分たちだけの力でエクシーズ次元を取り戻す…それは間違っていないわ。でも、そんなやり方に未来があるというの!?」

「黙れ!!アカデミアに対抗するには…俺たちから未来を奪ったあいつらに復讐するにはそれしか…」

アレンはこぶしに力を籠め、救えなかった家族や友達、仲間のことを思い出す。

そんな彼らにこたえるためにはアカデミアを倒すしかない。

そのためには悪魔にでもなんにでもなる覚悟があった。

「私たちはまだ未来を失っていない!復讐以上に、私たちには考えなければならないことがある!!エクシーズ次元を復興させるって未来が!!」

「復興…だと??」

サヤカの言葉にアレンは動揺する。

アレンの脳裏にはアカデミアを倒すということばかりしかなく、エクシーズ次元をもう1度平和な次元に復興するというビジョンがなかった。

アカデミアを倒さなければ、その先の未来がないと考え、その考えを封印していた。

「そう!そのためにも、みんなが生きて、エクシーズ次元を解放しないといけない!その未来を自分の手で壊して、なんになるというの!?」

反論できないアレンは黙り込む。

いや、内心ではこのようなやり方は間違っているということは理解していた。

こんなやり方をして復讐を果たしたとしても、犠牲しか残らない。

きっと、それはカイトも理解している。

「けど…だけど、俺たちはこのためにもう何人も仲間をカードに変えてしまった!!今更…今更後戻りできるかよ!!」

今ここで、間違えを認めてしまうと犠牲になった人々がすべて無駄になる。

だからこそ、それに報いるためにもとまることができなかった。

「だったら、私が止める!!あなたに託されるはずだったカードで!《ザ・セブン・シンズ》の効果発動!オーバーレイユニットを2つ取り除くことで、相手フィールドの特殊召喚されたモンスターをすべて除外する!そして、除外したモンスターのうちの1体をこのカードのオーバーレイユニットにする!スパイダー・シルク・レイン!!」

「なに!?除外だって…!!」

オーバーレイユニットを捕食し、《No.77ザ・セブン・シンズ》の青い足が光り始める。

そして、口から発射された白い球体が天井間近で光の網となって2体の《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》を取り込む。

そのうちの1体が光の粒子となって消滅し、もう1体はオーバーレイユニットへと変化した。

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・No.84ペイン・ゲイナー

・天空聖騎士アークパーシアス

 

「あ、ああ…」

「バトル!!《ザ・セブン・シンズ》でダイレクトアタック!」

《No.77ザ・セブン・シンズ》の口から白いビームが発射され、アレンに襲い掛かる。

「目を覚まして、アレン!!」

アレンは自分の伏せているカード、そして手札に残った《深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト》を見る。

これらのカードがあれば、今なら逆転することができる。

(俺が伏せているカードは《メタル・リフレクト・スライム》…。こいつを発動すれば、この攻撃をしのぐことができる。そして…)

次のターンに手札のそのモンスターを召喚し、《転回操車》の効果を使って《無頼特急バトレイン》をレベル10の状態で特殊召喚する。

そして、エクストラデッキに残った最後の《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》をエクシーズ召喚し、その効果を使えばサヤカを倒すことができる。

だが、倒した後はどうなる?

最初に宣言した通り、遊矢と柚子を襲い、カードに変えて、エクシーズ次元を救う力にする。

そして、スペード校のレジスタンスも彼らの後を追わせ、手に入れた圧倒的な力でアカデミアを葬る。

それによって、自分たちがカードに変えた人たちにも報いる。

だが、この後はどうする?

多くの屍を積み上げてアカデミアを倒した後にどのような未来が待っている。

いや、その先に未来はない。

そのことに気づいてしまったアレンにはそのカードを発動させる勇気がなかった。

目を閉じ、サヤカの思いの一撃を受けるしかなかった。

 

アレン

ライフ1100→0

 

「アレン…」

デュエルが終わり、冷たい水の上にあおむけで倒れるアレンにサヤカは声をかける。

「どうして、こうなっちまったんだろうな…。いや、違うな…。別に道があったのに、俺たちが目をそむけただけ、か…」

「ごめんなさい、アレン。私…」

「知ってるだろ?サヤカ…。カイト、アカデミアの攻撃で家族をみんな失っちまったんだ。家族の敵を討とうと…必死だった…」

平和だったころのカイトを思い出しながら、アレンはつぶやくように言う。

その頃のカイトはぶっきらぼうなところがあったものの、優しい一面もあり、アレンにとってはあこがれの存在だった。

しかし、家族を失い、仲間を失うのを繰り返す中で心をすり減らし、アカデミア殲滅のために力を求めるシュラと化してしまった。

「俺は…もう1度あの頃のカイトに戻ってほしかった。でも…」

アレンの目から涙があふれる。

ガスマスクをしているせいでふくことができないのがもどかしかった。

「でも、俺は…カイトの力になることができなかった…」

「アレン…」

ここに至って、初めてサヤカはアレンも自分と同じだと理解できた。

そして、強くなろうとしていたからこそ、カイトから離れた自分のことが許せなかった。

「お願いだ…サヤカ。カイトを止めてくれ…頼むから…」

「…わかったわ、アレン。私たちでカイトを止める」

サヤカは3枚のナンバーズをデッキから出し、アレンのデッキに入れる。

そして、アレンに背を向けると遊矢たちを追いかけていった。


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