東方増減記   作:例のアレ

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妹紅

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

季節はもう春

 

旅に出ようと思ったが近所に住む人から

 

「西行寺家の庭の桜が見事だ」

 

何て話を聞かされた

 

どうせすぐに旅に出るし、話の種にでも見ておくか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、思ったら門番に追い返された

 

桜を見るくらいでケチケチしやがって

 

どん!

 

「きゃっ!」

 

ぶつぶつ言いながら街の中を歩いていると何かにぶつかった

 

いや、何かじゃなくて誰か

 

可愛らしい悲鳴も一緒に聞こえた気がする

 

けど、前には誰も居ない

 

超常現象か?

 

「あの、すみませんでした」

 

下の方から声がした

 

下を見ると成程、見えない筈だ

 

身長の低い女の子が鼻を押さえながら涙目でこちらを見上げている

 

俺も結構背がでかいから尚更見えにくかった

 

「ああ、いやすまない。俺が考え事をしながら歩いていたのがいけなかったな」

 

ん?何だか周りから視線を感じる

 

俺は別に変な所は無いよな?

 

もしかして、この少女のせいか?

 

確かに白い髪に赤い眼をしていて目立つけど・・・そこまで見るものでもないだろ?

 

・・・そうか、妖怪基準での考えと人間基準の考えは違うのか

 

すっかり失念していた

 

「あの・・・私を見ても怖がらないんですか?」

 

なにこれかわいい

 

涙目の大きな瞳で首を傾げつつ訊かれる

 

思わずお持ち帰りしたくなる

 

「怖がる?何で?すごく可愛いのに」

 

あれ?何で泣くの?思わずロリコンみたいな事言ったから?

 

思ってる間にも少女の目から涙が止めどなく流れていく

 

「え、何?何か気に障る事言った?」

 

まずい、このままでは少女を泣かせた鬼畜野朗の称号が!

 

「いえ、違うんです。この姿になってからそんな事言われたのなんて初めてで・・・・」

 

・・・詳しく事情を聞く必要がありそうだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

訊く所によると彼女はの名前は藤原妹紅

 

輝夜に求婚した内の1人の娘で

 

父親が輝夜に恥をかかされた為、仕返しのつもりで不死の薬を盗み飲んでしまった

 

その所為で髪は白くなり眼が赤くなった

 

それを見た親兄弟は彼女を化け物と呼び、家を追い出されてしまった

 

途方に暮れながら歩いていた所で俺にぶつかった

 

「で、あってる?」

 

茶屋に入り横でお茶を飲んでる妹紅に訊く

 

「はい、あってます」

 

話している内に思い出してしまったのか、涙目で答える

 

成程、苦労したんだなぁ

 

「ならさ、俺と行くか?」

 

聞いてる内にほっとけなくなって提案してみる

 

「え!でも、そんな・・・きっとご迷惑です」

 

あらら、うつむいちゃった

 

「迷惑な訳無いだろ?俺から誘ってるのに」

 

「でも、私こんな見た目ですし・・・」

 

相当酷い事を言われたんだろう

 

これは意地でも連れて行こう

 

「見た目に関しては俺も人の事言えないから、大丈夫」

 

妹紅は顔を上げるとこちらを見てくる

 

「貴方は普通に見えますよ?」

 

当然だ、この場で本当の姿を現したら大騒ぎになる

 

「今は姿を変えてるんだ・・・・・本当は俺、妖怪なんだよ」

 

最後の所は小声でおしえてやる

 

「え!?ようか、むぐ!」

 

慌てて口をふさぐ

 

危なかった、だから小声で言ったのに

 

「こんな所で大声で言うなよ?まぁ、気持ちはわかるけど」

 

ふさいだ手を戻しながら言う

 

「ぷはっ!嘘・・・ですよね?」

 

首を傾げながら小声で訊いて来る

 

何か、一々仕草が可愛いなぁ!もう!

 

「本当だよ。因みに人は襲わないし喰わない」

 

それを聞いて少し安心したようだ

 

・・・疑うって事を知らないのか?

 

「でも・・・やっぱりご迷惑が・・・」

 

中々YESって言わない

 

そうだ!鬼じゃないけど攫っていこう!

 

「じゃあ、妖怪らしくいこう」

 

そのまま妹紅を持ち上げ抱える、所謂お姫様抱っこだ

 

「え?きゃっ!」

 

実は既に旅立つ準備は出来ている、後は出発するだけ

 

妹紅を抱えたまま街の出入り口に向かう

 

「あ、あの、離してください」

 

とりあえず無視

 

周りの視線も痛いけどそれも無視

 

歩き続けて街を出る

 

ある程度、街から離れた所で妖怪の姿に戻る

 

「いやー、大変だねぇ。君は妖怪に攫われちゃったよ」

 

「え?え?」

 

かなり混乱しているみたいだ

 

よし、ここで止めを刺してあげよう

 

俺は翼を広げて飛び上がる

 

「あ、きゃーーーー!」

 

美少女は悲鳴も可愛いなぁ

 

あれ?俺って今、かなり変態っぽい?これはマズい

 

俺は変態じゃないよ、仮に変態だったとしても変態という名の紳士だよ

 

いや、そんな事言ってる場合じゃない

 

妹紅を安心させてあげなきゃいけないな

 

「大丈夫だから、眼を開けてごらん?」

 

腕の中で震えている妹紅に出来る限り優しい声で言ってみる

 

妹紅は恐る恐る眼をあける

 

「・・・わぁ」

 

初めての空に感動している様子だ

 

俺も初めて空を飛んだ時は感動したもんだ。よく覚えてないけど

 

「どうだ?空の上は?」

 

「すごいです!本当に妖怪だったんですね!」

 

気に入ってもらった様でなによりだ

 

・・・勢いで連れてきちゃったけど、これからどうしよう

 

女の子に野宿はキツイかもしれないし

 

「で、これから一緒に旅をする訳だけども」

 

一応、訊いて見よう

 

「野宿とか平気だったりする?」

 

「平気です!一緒に連れて行ってください!」

 

あれ?なんか素直になってる

 

まぁいいか

 

「当たり前だろ?さーてどこに行こうか?」

 

行くべき場所なんか無い、当ても無い

 

だからこそ行きたい場所に自由に行ける

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妹紅を攫ってから数日

 

俺達は平安京から遠く離れた村にいる

 

途中まで飛んできたからすぐに着いた

 

しかし、野生?の妖怪ってのは節操が無い

 

確かに俺も霊力を出してたから妖怪と気付かないかもしれない

 

けど、妹紅を狙うのは許せない

 

隙を見ては妹紅を攫おうとしてくる

 

偶に俺も攫おうとしてくる

 

美少女は人類の宝だと言う言葉を聞いた事が無いのか!?

 

いや妖怪は人類じゃ無いけどね

 

その度に追い払うんだけど次から次へと襲ってくる

 

さすがに面倒になって途中から妖力を出してこの娘は俺のだ、何て主張をしながら歩いた

 

それでも、横取りしようと襲ってくる妖怪は居る

 

もしかしたら夜に歩いていたのが原因か?

 

・・・あれ?そう考えると全面的に俺が悪いの?

 

すいません、反省します

 

ただ、野宿の最中に来たのは俺の所為じゃ無い筈だ

 

そんなこんなで村に到着した訳だ

 

その村は少し大きめの村で宿があった

 

小さな村だと当たり前だが宿なんか無い

 

まだまだ金に余裕があったので宿に泊まる事にした

 

部屋に案内されて一息ついていると

 

「戦い方を教えてください!」

 

なんて事を言われた

 

「良いけど・・・何で?」

 

「灰刃さんの足手まといになりたくないんです!」

 

何だろう?長く生きてきて始めてときめいた

 

はっ!まさかこれが恋?

 

・・・・・そんな訳無いって

 

精々、孫に懐かれた祖父くらいの気持ちだな

 

「教えるのは良いけど・・・俺、誰かに何かを教えた経験なんて無いからなぁ」

 

さて、どうしたものか

 

見た感じ霊力なんて欠片も感じないし

 

あれ?何か妖力を感じる

 

ほんの少し、雀の涙程も無いけど

 

「妹紅、もしかして先祖に妖怪とか居た?」

 

人間が妖力を持ってる理由なんてこれしか考えられない

 

「え?いえ、聞いた事ないです」

 

だとすると、藤原家の人が忘れるくらい昔の話か単に妹紅が教えられていないか

 

多分、前者だな。そうじゃなきゃ髪と眼の色が変わったくらいで家を追い出したりしないと思う

 

けど、これは好都合だ

 

俺の能力で妹紅の妖力を増やしてやれば妖術が使える様になる

 

「妹紅、お前の中に妖力がある。俺の能力を使えば妖力を増やして妖術が使える様になるけど、どうする?」

 

「妖力・・・ですか?私って妖怪だったんですか?それとも不死の薬を飲んだから・・・」

 

「いや、多分だけど妹紅の遠い祖先に妖怪がいたんだろう」

 

憶測だけど、不死の薬は身体の構造までは変えないと思う

 

髪と眼の色を変える程度だろう

 

と言うより色素が無くなったんだと思う

 

不死になった事で免疫力なんかの抵抗が意味を無くした故の変化なのだろう

 

構造自体を変えるなら色素くらい保持されてても良い筈だ

 

霊力なんかの量が変わらないのも証拠の一つになると思う

 

専門的な事なんか何一つ分からないけど

 

「そうなんですか、でもそれって灰刃さんとお揃いって事ですよね?」

 

確かに俺も妖力を持ってるからお揃いなんだろうけど・・・何でそんなに嬉しそうなんだ?

 

「まぁ、お揃いと言えばお揃いだな」

 

「なら、私妖力が良いです!」

 

本人が良いって言うなら良いか

 

「じゃあ、増やすぞ?」

 

能力を使い妹紅の妖力を増やしてやる

 

「わぁ・・・これが妖力ですか」

 

もう、自分の妖力の存在に気付けるのか。力は無いけど才能はあったって事か

 

「ああ、でも今の状態は単に増やしただけだ。今度は自分で使った分を回復できるようにしなきゃな」

 

「はい!」

 

「それと、別に敬語じゃなくても良いんだぞ?自然に話せ。後、名前は呼び捨てで良い」

 

「あ・・・うん!」

 

しばらくは妹紅の修行だな


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