東方増減記   作:例のアレ

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竹取の翁

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風の向くまま気の向くままに俺は平安京に来ている

 

最近、厄介な事に何処に行っても金を要求される

 

少し前までは物々交換なんかが主流だったのに本当に人間は面倒臭い

 

・・・・・俺も元は人間だって事を忘れがちだ

 

まぁいいや

 

それで金を稼ぐ必要がある訳だが

 

俺に出来る事と言えば妖怪退治くらいだろうなぁ

 

でも、どうせ人間を苦しめる様な妖怪だ

 

大人しく俺の飯の種になってもらおう

 

 

 

 

 

 

 

そんな訳で雑魚妖怪を何匹か倒して金を稼いだ

 

その時またも新発見があった

 

なんと霊力が使えたのだ

 

多分、元から使えたんだと思う

 

気付かなかっただけで

 

さすがは元人間だ

 

妖力と霊力の両方を持ってるとは

 

人間に姿を変えて霊力を放っておけば俺が妖怪だとはまずバレない

 

しばらく平安京に住むのも良いかもしれない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

平安京に住み始めて結構な時間が経過した

 

妖怪退治をしている内に退魔師として有名になってしまった

 

その所為って訳でもないんだけど小さな家を借りた

 

いつまでも宿に泊まってたら不経済だからだ

 

ただ、借りてから気付いたが能力で金を増やせばよかった

 

そうすれば無闇に注目を集める事もなかった

 

あんな面倒な依頼を受ける事もなかったのになぁ

 

 

 

 

その日俺はいつもの様に自宅で寝ていた

 

金は能力を使って増やしたのでかなりの余裕がある

 

だから、しばらくはのんびり過ごすと決めていた

 

ドンドンドン!

 

家の戸が叩かれた音がした

 

「う~ん、むにゃむにゃもう食べられないよ・・・」

 

しかし俺は熟睡していたんだ

 

否、熟睡していたいんだ

 

ドンドンドンドン!!

 

さっきより強く戸が叩かれた

 

「ん~・・・うるさいなぁ」

 

渋々起き上がると戸に向かう

 

「どちら様ですか?」

 

戸を開けるとそこには高貴そうな服を着た老人が立っていた

 

「退魔師の灰刃さんでよろしいですか?」

 

仕事の依頼か?面倒だなぁ

 

「確かに灰刃は俺だけど、何の用です?」

 

もしかしたら回覧板か何かかもしれない

 

一縷の望みに賭けて訊いてみる

 

「仕事を依頼したいのですが」

 

やっぱり仕事か、やだなぁ。収入の心配が無くなったからぐうたらしていたいのに

 

「あ~、どの様な内容ですか?」

 

それでも、怪しまれない様にするには受けない訳にはいかない

 

名前が売れた辺りでまた旅に出るべきだったか?

 

「ここでは何なので、私の屋敷にお越しください」

 

正直、行く気が全く起こらない

 

ニート?好きに言ってくれ

 

「さぁ、こっちです」

 

老人の案内で屋敷に行く事になってしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、依頼とはどんな内容なんですか?」

 

屋敷に連れてこられた俺は挨拶もそこそこに本題に入った

 

「はい、実は私は竹取の翁と呼ばれている者なのですが」

 

竹取の翁?はて?どこかで聞いた事があるような

 

「実は娘の護衛をお願いしたいのです」

 

護衛か、性質の悪い妖怪にでも狙われたのか?

 

「私の娘は大層美しくてですね?求婚者が沢山いるんですよ」

 

自慢か?それともその求婚者から守れって事か?

 

「ですが、娘は求婚を全て断ると私にこう言ったんです」

 

『私は月に住む民です。次の満月の晩に向かえが来て私は月に帰らなくてはいけません』

 

・・・・・かぐや姫?実在してたのか

 

「次の満月まで後1週間、ですので満月の晩まで娘を守ってください」

 

退魔師関係無くね?

 

相手が妖怪ならわかるけど・・・もしかして月の民ってのは妖怪なのか?

 

月に帰るって事はかぐや姫も妖怪!?

 

「え~と・・・月の民は妖怪なんですか?今の話を聞く限り退魔師はお呼びでない気がするんですが」

 

多分、正論な気がする

 

「いえ、娘も月の民だと言うので恐らく人に近いのではと思うのですが・・・」

 

ますます退魔師を呼ぶ意味がわからない

 

「ですが、灰刃さんは素手で妖怪を退治されたと聞き及んでおります。きっと月の民を追い返せるでしょう」

 

やるんじゃ無かった・・・まさかこんな事になるなんて

 

しかも、追い返せるでしょうって・・・何?その無駄に高い信頼は?初対面だよ?もっと頼れる人がいるでしょう?

 

「それでは、何卒お願いします」

 

あれ?何時の間にやるって事に決まったの?

 

俺何も言ってないよ?

 

「いや、俺は「さあさあ、娘の所に案内します」ちょ!」

 

爺さんに引っ張られて強制連行される俺

 

あ~、面倒な事になった


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