東方増減記   作:例のアレ

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さいきょー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから1週間

 

さくやとの生活は順調だ

 

ただ、さくやは水分多めのお粥よりも果物をすりつぶしたのが好きらしい

 

その所為でちょくちょく森に入ったり、人里に買いに行ったりしている

 

当然さくやも連れて行く

 

家に一人で置いていくのは不安過ぎるからな

 

本当は果物は1つでも有れば能力で増やす事も出来るけど、新鮮さが失われているような気がする

 

気がするだけで、実際は影響は無いんろうけど、やはり気分の問題は大きい

 

さくやには常に良い物を食べさせたい

 

最近、秋めいて来た山の中でリンゴやブドウを採ってくる

 

両方とも外来種な筈だが、深くは考え無い

 

あるものはある、そう考えよう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

縁側で真っ赤に染まった木々を眺めながら団子を食べつつお茶を飲む

 

風流だ

 

外国じゃ、こうはいかない

 

さくやは隣でキャッキャと笑いながら落ちる紅葉(もみじ)を掴もうとしている

 

「さくやー、楽しいかー?」

 

「あー♪」

 

「そうかー」

 

のんびりって表現がぴったりだな

 

「爺臭いなー」

 

ん?萃香か

 

「何しに来たんだ?酒を飲むには早い時間だぞ?」

 

「散歩してたら近くまで来てたんでね。顔出してみたんだ」

 

散歩って言っても、霧状になって漂っているだけだろうに

 

「で?何でこんな所で年寄り臭い事してたのさ?」

 

「年寄り臭いとか爺臭いとか、俺は結構な歳だぞ?」

 

もうかれこれ……………何歳だっけ?

 

昔、妹紅に訊かれた時は1500歳くらいだったから

 

あれから……何年経ったっけ?

 

「へ~、何歳くらいなの?」

 

「ちょっと待て、今思い出している」

 

え~と、諏訪子と神奈子の所で100年くらい………その後の幻想郷で数百年……正確には何年だったっけ?吸血鬼一家の所で数年………スキマの中で何十年か……

 

1800から2000歳くらいだな、きっと、多分

 

むしろそれで良いや

 

「2000歳くらいで良いよ」

 

「随分時間掛かったね。しかも良いよって何さ」

 

「細かい事気にしてるとハゲるらしいぞ?」

 

「そしたら他の人から髪の毛を萃(あつ)めるから大丈夫」

 

「色がバラけるだろ」

 

不毛な話はこれくらいにしておくか

 

「そう言えばさぁ。灰刃って死ぬと強くなるってホント?」

 

「……誰に聞いたんだ?」

 

「勇儀と紫から。昔、酷い目にあったって言ってたよ」

 

別に隠す事じゃ無いけど、釈然としないのはなんでだろう?

 

「間違っても殺そう何て考えるなよ?本気で後悔するからな」

 

「そうなの?ならさ、もう一回戦る?後悔してみたいからさぁ」

 

「話を聞け」

 

アイツを出して萃香を喰えってか?冗談じゃ無い、そんな面倒な事は御免だ

 

後々に鬼が攻めて来るだろうし、紫やら射命丸やらが事情聴取に来るだろう

 

「お前、多分勘違いしている。俺は死んだら俺とは別の俺が出て来るんだ」

 

「別の俺?よく分かんない」

 

「あ~、つまりだな?」

 

ここでしっかり説明しておかないと寝首でも掻きに来そうだ

 

面倒だけど説明しておくか

 

 

 

 

 

 

 

 

「へ~、そうなんだ」

 

とりあえず、理解してくれたか

 

「そんなに強いんだ~」

 

「お前、本当に分かったのか?アイツは制御出来ない奴だからな?絶対にやるなよ」

 

「ちぇ~、分かったよ」

 

とりあえず、これで大丈夫だろう

 

落ち着いてから気付いた、さっきからさくやが静かだな

 

横を見てみれば、静かな筈だ

 

その場で引っくり返って寝ている

 

ん?今、さくやの近くの葉が一瞬だけ止まった様に見えたな………気のせいか?

 

まあ良い、さくやを部屋に運んでやろう

 

「それでさー、紫が変なこと言ってたよ」

 

さくやを布団に入れてから、縁側まで戻ると萃香が話題を振ってきた

 

「変な事?」

 

「うん、前にアタシと灰刃が戦った時に歪んだって」

 

歪んだ?紫の性格がか?もう矯正は絶望的だろうな

 

「歪んだって、何が?」

 

「さぁ?詳しくは聞かなかったし」

 

歪んだ、ねぇ

 

紫の言う事だし、話半分で聞いとくのが良さそうだ

 

 

 

 

 

 

その後、しばらく萃香と話していたが、行く所があるとかで帰っていった

 

縁側でゆっくりしていたけど、そろそろ暗くなる

 

夕飯の準備をしようと立ち上がった所で遠くに小さく火柱が見えた

 

「何だ?確かあっちには……竹林があったっけか?力があまっている奴の遊びか何かだろうな」

 

特に気にせずに家の中に入った

 

さて、今日の飯はどうしようか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱりやめようよ~」

 

「だいじょうぶ、あたいはサイキョーなんだから!」

 

朝、騒がしい声で眼が覚めた

 

既に太陽は昇りきっているみたいで、すっかり明るくなっている

 

寝過ごしたか?

 

「ここにいる妖怪、でてきなさい!あたいと勝負よ!」

 

何だか外が騒がしい

 

まだ寝ているさくやを置いて玄関に向かい戸を開ける、外を見ると子供が2人立っている

 

ショートカットの青い髪と青いワンピース、背中に氷柱(つらら)が6本、浮いている

 

もう1人は、サイドポニーの緑の髪に紺に近い青のワンピース、背中から半透明の羽が生えている

 

「あんたね!さあ、あたいと勝負よ!」

 

俺の直感が語っている、こいつはバカだと

 

「何で俺がお前と勝負しなきゃいけないんだ?」

 

「きまってるじゃない!………何でだっけ?」

 

こいつの言動が物語っている、こいつは間違いなくバカだと

 

「む~~……大ちゃん、何でだっけ?」

 

「チルノちゃ~ん、忘れないでよ~」

 

何やら小声で話し合っている

 

その姿が何処と無く微笑ましい

 

「そうだった!アンタとあたいでどっちが強いか勝負よ!」

 

どうやら目的を思い出したみたいだが………面倒な事を言い出す

 

「断る、朝っぱらから面倒な事をさせるな」

 

「ふふん!あたいの事が怖いのね!」

 

何やら胸を張っている

 

こいつは妖精だろ?何でこんなに強気でいられるんだ?

 

ふと横を見れば、大ちゃんと呼ばれた妖精がペコペコと頭を下げている

 

常識人と馬鹿のコンビか、バランスは良さそうだ

 

「ちょっと!あたいを無視しないでよ!」

 

しばらく緑髪の妖精を眺めていると、青髪が怒り出した

 

あ~、適当にあしらった方が良いのか?これ?

 

「はぁ……勝負って殴り合いでもするのか?」

 

自分で最強等と言い出すくらいなんだ

 

それなりの強さを持っているのだろうが、所詮は妖精だ

 

それなり止まりだろう

 

「そうよ!それでどっちが強いか決めるの!」

 

………腹、減ってきたな

 

飯にしよう

 

「何にせよ、飯を食ってからで良いか?」

 

さくやもそろそろ起きるだろうし

 

「仕方ないわね、あたいも鬼じゃないわ!ばんじぇんの状態でかかってきなさい」

 

万全が言えてない

 

………まさかこいつら飯食ってる間、横で待ってる訳じゃないよな

 

落ち着かないな

 

「お前らも飯食っていくか?」

 

少なくても一緒に食べていれば息苦しさは感じないだろう

 

「ふ、ふん!そうやって恩を売って手加減でも狙ってるんならそうはいかないんだから!」

 

「でもチルノちゃん、ご飯まだでしょ?私もチルノちゃんに強引に連れ出されたからまだだし、お腹減ったよ?」

 

大ちゃんとやらは振り回されるタイプか

 

相手がこんなのじゃ苦労してるんだろうな

 

「万全の状態で戦うんだろ?良いから食っとけ」

 

チルノとやらの頭を撫でてやる

 

「子供扱いしないでよ!」

 

口ではそんな事を言いながら、身体は正直なようで空腹を訴えている

 

つまりは腹が鳴った

 

「良いから、大人しく待ってろ」

 

2人を居間に案内し、一旦さくやの寝ている部屋に向かう

 

案の定、さくやは既に起きており、今にも泣き出しそうな顔をしていた

 

そんなさくやを背中に固定し、朝食の準備を始める

 

因みにさくやは俺の背中と髪がお気に入りらしく、背負ってやれば機嫌が良くなる

 

俺の髪を引っ張って遊ぶという、さくやの毎朝の恒例行事をスルーしながら献立を考える

 

まずは米、これは譲れない

 

とは言っても、幻想郷でパンは手に入らないので問題無い

 

麦は少量だけど作っているから焼こうと思えば焼けるけど

 

次は味噌汁

 

油揚げか豆腐か迷うが、今日は油揚げにしておこう

 

焼き葱を入れても良いかもしれない

 

ほうれん草のおひたし

 

昨日、人里で買ってきたほうれん草を調理する、鮮やかな緑色が食欲をそそる

 

焼き鮭

 

にとりに貰った鮭を切り身にして焼いただけ

 

それでも朝食にはぴったりの一品だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出来上がった朝食を運ぶ

 

今日のさくやの食事はぶどうのすり潰したものだ

 

タイミングを見て運びに来てくれた緑髪に礼を言いながら食卓につく

 

「「いただきます」」

 

口を揃えて言うのを見ると、本当に仲が良いのだと分かる

 

美味そうに食べる2人を見ながらさくやの口にぶどうを持っていく

 

時折、目の前の妖精たちがこちらをチラチラと見てくる

 

そういえば、まだ名前を聞いてない

 

「今更だけど、お前らの名前は?」

 

食べるのを中断してこっちを見てくる

 

「す、すいません、気付きませんでした。私は大妖精です。大ちゃんって呼ばれてます。で、こっちはチルノちゃんです」

 

成程、大妖精だから大ちゃんか

 

「俺は灰刃、この子はさくやだ」

 

さくやを持ち上げて見えやすくする

 

「あの、その子って人間ですよね?何で妖怪の貴方が人間を育ててるんですか?」

 

やっぱり妖怪が人間を育てるのは変なのか

 

だからと言ってさくやを手放す事は有り得ないが

 

「おかしいか?」

 

「あ、いえ、そんな事無いです!ちょっと気になったので」

 

慌てて否定をしてくる

 

別に怒った訳じゃ無いんだけど

 

…さっきからチルノが食べるのを止めない

 

そんなに腹が減っていたのなら、飯を食ってから来れば良かったのに

 

飯を食い終わって、さあ戦るかと思ったが、飯を食ったらここに来た理由を忘れたのかチルノは帰って行った

 

何しに来たんだか


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