東方増減記   作:例のアレ

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1000年後

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから、あっという間に1000年が経過した

 

すっかりこの身体にも慣れて、今じゃ巨大な岩も拳ひとつで粉々にできる

 

姿を人間っぽく変える事もできるようになった

 

どうやら俺は信じられない程過去にきていたらしい

 

空から辺りを散策してたら、結構遠くの方に村が見えた

 

 

 

 

 

 

 

 

村に入った瞬間、騒ぎになった

 

翼とか隠すのを忘れていた

 

矢とか槍が飛んできたから急いで逃げた

 

 

 

 

 

 

 

 

完全に元の世界に戻るのを諦めた俺は、とりあえず狩りをしながら日々をダラダラと過ごしていた

 

その間に自分の中にあった能力を発見した

 

その名も”増と減を操る程度の能力”だ

 

名前の通り、物を増やしたり減らしたりする能力だ

 

東方ってやつか?

 

友人が何やら騒いでいたような気がするが、俺は興味が無かったので全く知らない

 

この能力に気付いたおかげで俺の自堕落生活に拍車が掛かった

 

まず果物や干し肉を用意する

 

能力を使う

 

果物や干し肉が増える

 

食べる

 

繰り返し

 

こんな調子で毎日寝て過ごした

 

その結果が1000年経過と言う訳なんだ

 

老いも無いみたいだし

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから数百年

 

一々年数を数えるのが面倒臭くなって数えるのを止めた

 

人間ってのは色々忘れていく生き物だ

 

俺も例に漏れず色々忘れていた

 

元の世界の事とか両親の事とか友人の事とか

 

そして自分の名前すら忘れていた

 

これに気付いた時はさすがに焦った

 

思い出そうと必死になった

 

元の世界の事とかは朧げながら思い出せたけど、自分の名前だけはどうしても思い出せない

 

「・・・・・忘れた物はしょうがないか」

 

開始1時間で諦めた

 

しかし、そうなると代わりの名前が必要になってくる

 

考える

 

考える

 

考える

 

・・・飽きた

 

今まで名前なんて無くても生きてこられた

 

これからも平気だろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数十年程経過した

 

人間の進歩は早い

 

少し前まで土器なんかを作っていた彼らも今じゃ立派に文明を築いている

 

村を造り集まり寄り添いながら生きている

 

俺もたまに山を下りてあちこちをふらふらするようになった

 

今まで果物をそのままとか焼いたり干したりした肉とかしか食べてなかったが、文明が進むと色々な料理が作られている

 

いい加減、自分の食生活に飽きがきていた俺としては見過ごす訳にはいかない

 

近くにある村に行っては山の果物や肉と野菜や塩を交換した

 

翼を生やしたまま行ったらまた矢が飛んでくるので人間に姿を変えてから行く

 

能力を使えばわざわざ交換に行かなくても良いのだが、やはり人恋しかったのだと思う

 

村には結構気さくな性格の人が多く、あっという間に馴染んだ

 

けど、それが何十年も続くと姿が変わらない俺に不信感を抱く人が増えてきた

 

この辺は昔は居なかったが最近になって妖怪が出るようになったからだ

 

当然、姿が変わらない俺も妖怪なんじゃないか?と疑われる

 

その度に出向く集落を変えてきた

 

でも、それも限界に近いかなぁ

 

俺は決心した

 

住み慣れた山を離れて旅にでる事にしたのだ

 

こんな事もあろうかと用意しておいた一張羅が役に立つ日が来た

 

村の人達が着ている様な着物のような服に工夫を凝らして改造した物だ

 

下はズボンで上が浴衣の様な形と丈をした服だ

 

荷物は殆ど無いから服を着れば準備は完璧だ

 

さて、まずは何処に行ってみようか

 


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