東方増減記   作:例のアレ

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鬼との戦い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神社から数百キロメートル離れた森の中

 

猛スピードで走る1匹の鬼の姿を見つけた

 

多分、神社の周りにある人間の集落で人攫いでもするつもりなんだろう

 

あの集落には知り合いも結構いる

 

知らない人間なら鬼の生きる為の糧ということで無視したかもしれないが知ってる人間なら別だ

 

鬼にお引取り願おう

 

翼を翻して鬼に近付いていく

 

「そこの鬼さん、ちょっと良いかい?」

 

声を掛けると鬼は急停止をしてこちらを見た

 

「何じゃ?若造。わしに何か用か?」

 

良く見ればこの鬼、かなりの年寄りだ

 

もしかしたらヤバいのに喧嘩売ろうとしてるか、俺

 

明らかに俺より年上だし、多分能力で増やした俺の妖力より大きな力を持ってるっぽいし

 

・・・・・死ぬかもしれない。俺の能力は無限に増やせる訳じゃないしなぁ

 

「声を掛けておいて無視か?良い度胸じゃのう」

 

鬼の目が鋭くなった、中々に怖い

 

だけど、ここで逃げるのは有り得ない

 

「いやいや、少し考え事をね。それより鬼さんはこれから何処へ?」

 

「・・・ふむ、まあ良い。わしはこれからこの先にある人間の集落に行って飯の確保じゃよ」

 

やっぱりか・・・さて、どう説得したものか

 

「その事でお願いがあるんだけどさ。この先の人間の集落に行くのやめてくれない?出来ればずっと」

 

「若造・・・・・わしを舐めているのか?」

 

気に障ったようだ

 

覚悟を決めるか、面倒臭いけど

 

「舐めちゃあいないけどな。あの集落には知り合いが多いからさ、頼むよ」

 

もしかしたら頼む態度じゃないかも知れないな

 

紫に言った手前、俺もやっておこう

 

「お願いします」

 

「ふざけるなよ若造」

 

「ふざけてもいないって。だから」

 

最後まで言い終わらない内に鬼が側面に移動して殴りかかってくる

 

あっぶねぇ!当たる所だったぞ今の!

 

「ほう、避けるか。中々やるようじゃが・・・やはりまだまだ若造じゃな」

 

?・・・それどんな意味?確かにあんたに比べれば若いかもしれないけども・・・!!

 

これは・・・脇腹が浅く切れている

 

確かに避けた筈なんだけど

 

この爺さん強いな。今になって軽く痛みがきた

 

「いてぇ・・・爺さん、あまりはしゃぎ過ぎるとポックリ逝っちまうぞ」

 

多少強がってみたけど、切られた瞬間なんか全然見えなかったっての

 

「若造が、強がるでない」

 

言い終わるか終わらないかの瞬間、鬼の爺さんの姿が消え後ろから強烈な殺気を感じた

 

これは間に合わない。能力を最大で使う

 

だが、威力も速度も減っている筈の攻撃で俺の左腕が飛んでいく

 

「どうじゃ若造?素直に謝って逃げ帰るなら命までは取らぬぞ?」

 

肩口が熱い、血は止めたけどこのままじゃ確実に死ぬ

 

とりあえず治癒力を上げて血を増やす。これでしばらくは大丈夫だ

 

「冗談言うなよ。まだまだこれからだろ?」

 

妖力を開放して能力で限界まで増やし上げる

 

せめて逃げるように言ってから出てくるんだった

 

時間稼ぎが意味無い行動になってるよ

 

「そうか。あの世で後悔するんじゃな」

 

ザシュッ!

 

さっきよりも更に速い速度で近付いてきた鬼の手刀が俺の左胸、丁度心臓がある所に穴を開ける

 

気が遠くなる

 

死ぬ事自体は別に良いけど神社の人たちを守れなかったのは心残りだ

 

何とか・・守りたかった・・・な・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「死んだか」

 

しかし変な妖怪じゃった

 

人間など我ら人外の食料でしかないと言うに

 

それを守ろうとして死ぬか・・・何とも、めでたい奴じゃ

 

さて、可笑しな邪魔者は死んだ事だし本来の目的を果たしに行くとするかのう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グロォォォォォォォォォォォォ!!」

 

あれ?何でだ?俺死んだ筈なのに

 

何でさっきの鬼を見下ろしているんだ?

 

しかも今の声って何だか聞き覚えがあるんだけど

 

いや、聞き覚えってレベルじゃない

 

当然だ、俺の妖怪としての人生が始まる原因になった奴の声だからだ

 

間違える筈が無い

 

「お、お前、さっきの若造か?」

 

爺さんの声も心なしか震えている

 

当たり前か、こいつの妖力は爺さんの妖力を軽く上回っている

 

「ガァァァァァァァァァァ!!」

 

体のコントロールが効かない

 

多分、こいつに全て持っていかれてるんだろう

 

俺に出来ることは何一つとして無い

 

あるとすれば、ただ見ているだけだ

 

「くっ!やめぬか!ぐ、あぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

目の前の俺の心臓を貫いた鬼が喰われていくのを

 

ただ、見てるだけ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何だか体中が痛い

 

どうやら気を失っていたらしい

 

あれからどのくらい時間が過ぎたんだ?

 

さっきのあれは夢・・・じゃないみたいだ

 

その辺りに血がべったりと付いている

 

少し離れた所には俺の左腕が落ちている

 

けど今の俺には左腕がある、多分再生したんだろう

 

・・・・・認めるしかないか、俺はあの鬼を喰った

 

正確には俺じゃなくてアイツだけど

 

アイツが表に出た事で少し分かった事がある

 

アイツも能力持ちだってことだ

 

『食べたものを吸収する程度の能力』

 

成程、だから俺とアイツは混じったわけだ

 

アイツのあの変な姿も納得いく

 

多分さっきの鬼も混じった筈だ

 

俺の右のこめかみ辺りから1本、角が生えている

 

これから俺は嘘が吐けなくなるのか?鬼は嘘を嫌うって言うし・・・いや!俺は鬼でもある存在だから嘘を吐いても良い筈だ!

 

・・・・・・・・・・もっと他に悩む事があると思うんだけど、まぁ良いか

 

落ち込んでてもしょうがないしな。伊達に年取ってないっての

 

………あれ?何だか違和感が

 

さて、帰るか!

 

鬼の能力を奪ったなんて事は無いしね!

 

今日のご飯は何だろう?

 

・・・・・分かったよ、そんな目で見るなよ

 

『遠くの音を聞き取れる程度の能力』

 

びみょーな能力だな

 

耳が遠くならないだけじゃんか

 

別に良いけど

 

とりあえず事は終わったし帰るか

 


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