東方増減記   作:例のアレ

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鬼の宴会

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「天魔様!今の妖力は一体何事ですか!?」

 

紫がいなくなってから数分後

 

天狗が数人、血相を変えて飛び込んできた

 

天狗たちは部屋の隅で怯えている天魔と胡坐を掻いている俺を見つけた

 

「貴様!天魔様に何をした!!」

 

「別に何も?」

 

「嘘を吐くな!」

 

何で天狗は俺の言う事を信じないかね?

 

本当に何もしていないのに、ちょっと威嚇しただけで

 

よほど頭にきたのか、血気盛んな天狗の1人が切りかかって来る

 

「よっと。おいおい、危ないなぁ」

 

余り強くない天狗だったのか、軽く避けられた

 

「!・・・貴様!!!」

 

何なんだよ、俺が一体何をした

 

「天狗一の剣を軽々と避けたぞ・・・」

 

「我らでは勝てぬやも知れぬ・・・」

 

「全員で掛かれば・・・」

 

何やら天狗の呟きが聞こえて来る

 

おお、天狗一の剣だったのか!

 

確かに天狗一を軽く避けられれば怒るよね

 

・・・天狗一って何だよ

 

「ごめん、余りにも避けやすかったから」

 

「・・・・・!!殺してやる!!」

 

ありゃりゃ、顔が真っ赤になった

 

ちゃんと謝ったのに

 

何て考えている内に天狗たちが全員武器を構えてる

 

面倒臭いなぁ・・・

 

「かかれ「やめないか!!」天魔様!?」

 

やっと立ち直った天魔が天狗たちを止める

 

「部下たちが失礼をしました、申し訳ない」

 

天魔が深く頭を下げる

 

「天魔様、何を!?」

 

「黙れ!この方はお前達が束になっても傷一つ付けられない程の大妖怪だ」

 

天狗たちが動揺している、ちょっと面白い光景だ

 

「部下たちにはきつく言っておきますので、今日の所はお引取り願えませんでしょうか?」

 

さっきまで部屋の隅で震えていたとは思えない程に凛々しく丁寧な物言いだ

 

けど、ここは俺の家なんだけど

 

「出て行くも何も、ここは俺の家だぞ?」

 

すると、天狗たちはまたもや怒り出す

 

「貴様!この家は天魔様の家であるぞ!図々しいのにも限度がある!」

 

天狗たちはきっとカルシウム不足なんだろう

 

そうじゃなきゃ、ここまで怒りっぽくならない

 

「黙っていろと言った筈だ!・・・ここが貴方の家とはどう言う意味ですか?」

 

「この家は俺が千数年前に自分で建てた家と言う意味だ」

 

そうなるとこの家は築千年以上となるのか・・・頑丈な家だな

 

「な!・・・・・それを証明できますか?」

 

証明、ねぇ

 

「証明になるかは知らんけど、あんた達がこの山に来る前からこの家はここにあっただろ?」

 

正直、家なんてまた新しく建てれば良いだけなんだけどね

 

でも、ただで家をプレゼントするのも何か癪だから出来るだけ嫌がらせしてやる

 

「はい、確かに我々が此処に移住した時に既にこの家は存在していました」

 

「この家ってトイレ・・・いや、厠が遠くにあって行くの面倒になるだろ?」

 

自分でも何であんなに居間から離れた所につくっちゃったんだ、って後悔したもんだ

 

「寝室の障子は開け閉めしにくいだろ?」

 

やっぱ適当にやるんじゃなかった

 

「西側の部屋なんかちょっと傾いてるしな」

 

素人が建築なんてやるもんじゃない

 

あれ?なんでこの家、千年以上も倒れなかったんだ?

 

「・・・・・・貴方の言う事は全てあってます。出て行くのは私の方ですね」

 

納得してくれた様だ

 

「いや、別に出て行かなくてもいいぞ」

 

十分苛めたから

 

妹紅の所に帰らなきゃならないし

 

「は?いや、でも・・・」

 

「あんたにやるよ、この家」

 

天魔は呆然とした顔でこっちを見てくる

 

うん、面白い顔だ

 

「それじゃあな」

 

後には変な顔をした天魔と天狗たちが残された

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、紫を探すか」

 

この幻想卿から慧音さんの家まで普通に飛んで1週間は掛かる

 

けど、来た時と同じ様に紫のスキマを通れば一瞬だ

 

「天魔に居場所を聞いてけば良かった」

 

とりあえず、山の周辺から探していくか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見つからない・・・・・」

 

既に山の中は隅々まで探した

 

森の中もかなり歩き回った

 

しかし、見つからない

 

「よく考えたら、スキマの中にいたら見つからないよな」

 

・・・・・無駄な時間を使っちまった

 

もう辺りは暗くなっている

 

昼ごろに諦めていればよかった

 

今から飛ぶのはダルいし

 

今日はその辺で寝て明日向かおう

 

そうと決まればさっさと寝床を探そう

 

確か山の上に良さそうな岩場があった筈だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何だ?あの声」

 

岩場を目指して歩いていると、何だか賑やかな声が聞こえてきた

 

声のする方に歩いていくと焚き火を中心に宴会をしている鬼の集団が見えた

 

「なんだ、鬼の宴会か」

 

特に興味も無いので通り過ぎようとした

 

「待ちなよ、兄ちゃん」

 

声を掛けられて振り向く

 

「呼んだか?」

 

「ああ、兄ちゃん見ない顔だねぇ。何処から来たんだい?」

 

何だ?この鬼、上半身が体操服だ。下は普通・・・いや、少し透けているスカートなのに

 

「来たって言うか、帰って来たが正しいな」

 

「へぇ、どっか行ってたのかい?」

 

「色んな所にね」

 

「兄ちゃんも飲んでいきなよ、丁度酒の肴が欲しかった所さ」

 

酒か、飲んだ事は無いな

 

・・・少しなら良いか

 

「じゃあ、お言葉に甘えて」

 

「そうこなくちゃね。おーい、妖怪1人追加だー!」

 

鬼たちは皆、嬉しそうな顔で招き入れてくれた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鬼を侮っていた

 

昼夜問わずに飲み続け、気付いた時には1週間も飲み続けていた

 

「あ~、気持ち悪い」

 

「だらしないねぇ、たかがこれ位の量で」

 

「ふざけんな!帰るって言った俺を引き止めて飲ませ続けたのは何処の誰だ!」

 

文句を言っても鬼は気にせず笑うだけだった

 

最初の内はまだ良かったんだ

 

けど、さすがに妖怪の体でも許容量を越えれば酔う

 

更に今回は許容量を遥かに越えた

 

「水をくれ~」

 

頭が痛いわ吐き気はするわで散々だ

 

「水なら向こうに川があるから、好きなだけ飲んできな」

 

持ってきてくれるって発想はないのか

 

重い体でのろのろと川に向かう

 

少し歩くと結構大きな川に出た

 

そのまま川に頭ごと突っ込む

 

「ぷは~~~!生き返る!」

 

大分すっきりした

 

「お兄さん、かなり飲んだみたいだね」

 

不意に声を掛けられる

 

見れば川の中ほどに青い髪の少女が顔を出している

 

「鬼の宴会に参加したんだ。死ぬほど飲んだよ」

 

「あはは、鬼に付き合ったのかい?よく生きてたね」

 

やっぱり俺がだらしないんじゃなくて、鬼が異常なんだな

 

飲酒初体験であの量は無いわ

 

「お兄さんはこの辺の人?あまり見かけない顔だけど」

 

・・・この山の連中は住んでいる奴の顔を全部把握してるのか?

 

「いや、最近帰ってきたんだ」

 

「へぇ、あ!私は河童の河城にとりって言うんだ」

 

名前か、そういえば散々飲み明かした鬼たちの名前、1つも訊いてないや

 

「俺は灰刃、見ての通り妖怪だ」

 

「よろしくね、ところで灰刃はこの山に住むのかい?」

 

「いや、俺はまた旅にでる予定だけど・・・なんで?」

 

「もし、家が無ければ私が作ってあげようかと思って。河童の科学は世界一なんだよ」

 

胸を張って自信満々に言う河城

 

家を建てる事と科学は関係ない様に思えるんだけど

 

「河城は「呼ばれ慣れないからにとりって呼んで」・・・にとりは何処に住んでいるんだ?」

 

「私は川の上流にある洞窟に住んでるよ」

 

「なら、もし俺が家を建てる時はお願いしに行くよ」

 

「本当!?ならその時を楽しみに待ってるよ!」

 

たかが家の事くらいで随分と嬉しそうだな

 

「俺は行く所があるから、じゃな」

 

「うん、またね~」

 

さて、いい加減に妹紅の所の帰らないとな


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