東方増減記   作:例のアレ

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幻想郷

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんじゃこりゃ~~~~~!!」

 

地面が急に消えたと思ったら、何とも言えない気味の悪い空間に居た

 

紫色の空間の中で大きな目玉が幾つもこちらを見ているって・・・何だ?見覚えがあるぞ

 

結構長い時間落ちているのでいい加減、飛ぼうと思って妖怪の姿に戻ろうとした

 

だけど、戻る前に気味の悪い空間から吐き出されて尻を打った

 

「いって!」

 

思わず尻を押さえて悶絶する

 

「って、ここはどこだ?」

 

何だか見覚えがある山の中にいた

 

最近、見覚えのある所ばっかりだ

 

何でこんな所に?誰が犯人かは見当がついてるけど

 

「そこの人間!どこから入り込んだ!」

 

後ろから声が聞こえた

 

振り返るってみると天狗が空から見下ろしていた

 

「どこからって・・・スキマから」

 

あんな気味の悪い空間を使う奴なんて1人しか知らない

 

「隙間?何を言ってる!」

 

ホント、何をしたいんだあいつ

 

「此処は妖怪の山だ!人間が入り込む事は許されない!」

 

荒事は勘弁して欲しい

 

「しかも哨戒天狗の眼を逃れて入り込むなど。前代未聞だ」

 

そんな事言われても

 

「貴様を連行する」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

連行中です

 

何かこう・・・UFOキャッチャーの景品になった気分

 

両肩を掴まれてそのまま空へ

 

連行中に分かった事だが

 

見覚えがあるのも当たり前だ

 

此処は俺が妖怪として生まれ変わって1000年間だらだらしてた山だ

 

今じゃ天狗や他の妖怪の住処になってる訳だな

 

「着いたぞ」

 

着いたって此処は懐かしの我が家ではないか

 

勝手に人の家を使わないで欲しいもんだ

 

暇に任せて結構でかい家にしちゃったしなぁ

 

何百年も留守にしてたし

 

「天魔様!山に入り込んだ人間を連れてきました!」

 

天魔?天狗のボスか?

 

「ご苦労」

 

家の中から妹紅くらいの女の子が出てきた

 

「お前は下がってよい」

 

「はい!」

 

天狗が飛び去っていく。拘束くらいした方が良いと思うんだけど

 

「それで、何の用があって山に入り込んだのだ」

 

「いや、用も何も紫の奴に落とされたんだよ」

 

「何?紫を知っているのか?」

 

この天魔って奴、紫を知ってるのか?

 

「知ってるも何も「お久しぶりね」出たなスキマ」

 

俺の横にスキマが出来たかと思うと中から胡散臭いのが出てきた

 

「いきなりご挨拶ね」

 

「いきなりスキマに落とす奴に言われたくは無い」

 

既に夜は明け始めている

 

早く戻らないと妹紅が心配する

 

・・・・・心配するよね?

 

「ふむ・・・とりあえず中で話さぬか?」

 

自分の家に他人が招待するって、何か気分悪いなぁ

 

「そうね、それじゃ遠慮なく」

 

お前は遠慮しろ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、何の用なんだ?」

 

久しぶりの我が家は随分と様変わりしていた

 

ちょっと不機嫌だ

 

「その前に元の姿に戻ったら?」

 

天魔が何の事かと首を傾げる

 

それを尻目に元の姿に戻り軽く伸びをする

 

やっぱり人間の姿よりこっちの方が落ち着く

 

文字通り羽を伸ばせるからなぁ

 

「何と!妖怪だったのか!」

 

まぁ、驚くよね

 

霊力を放っていた人間がいきなり妖力を放つ妖怪になったら

 

「で?」

 

「なぁに?」

 

「用件は何だ、2回も言わせるな」

 

ただでさえ家を勝手に使われて、更にいきなりスキマに落とされて

 

まだ手を出してないのは俺が紳士だからだぞ?

 

「おい、それより何なんだ!?その妖力の大きさは!?」

 

話の腰を折るなよ

 

「ただの大妖怪よ」

 

紫は紫で喧嘩でも売ってるのか?買うぞ?買っちゃうぞ?

 

1度、俺に負けて涙目になったの忘れたか?

 

「俺に漫才でも見せる為に呼んだのか?」

 

「そんな訳無いじゃない」

 

最近のキレやすい若者舐めるなよ?若くはないけど

 

「貴方にお願いがあって呼んだのよ」

 

やっと紫が話し始めた

 

「この辺りは少し前まで1人の妖怪の縄張りだったの。それが何年も前にふらりと居なくなったんだけどね。

この辺りに住んでた妖怪たちは主が居なくなったこの土地に移り住んだ、私もその1人よ。

私は此処に妖怪たちの郷を作る事にしたの。人間たちの妖怪を恐れる心が無くなる前にね。

でも、此処の主が何時帰ってくるか分からない。

もしかしたら帰ってきたとき縄張りを荒らされたと怒る可能性もあるわ。

此処の主はかなりの強さを持っているらしいから」

 

一気に喋ると天狗が運んできたお茶を一口啜る

 

「そこで貴方にお願いがあるの。此処の主を探してきて此処に郷を作る許可を貰って来て頂戴」

 

つまり俺は小間使いか?

 

「何で俺が?」

 

「だって貴方強いじゃない。もし、見付けた時に戦闘になっても貴方なら生き残れるでしょ?」

 

これは本気で怒っても良いよな?

 

俺は徐々に妖力を開放していく

 

「それが人に物を頼む態度か?」

 

「ひぃっ!」

 

天魔が腰を抜かした様だが気にしない

 

「相変わらず凄まじい妖力ね。体が震えてくるわ」

 

胡散臭い笑みを引き攣らせながらもまだ強がる

 

更に強く妖力を出してやる

 

「!・・・気に・・・障ったの・・なら・・・謝るわ・・ごめんなさい・・・」

 

強く放出しすぎたのか家まで震えだした

 

ダメ押しだ、妖力を全開にして更に能力で増やしてやる

 

「・・・・!!」

 

既に天魔も紫も言葉すら出せない様子だ

 

ここら辺で許してやるか

 

開放していた妖力を消してやる

 

「・・・・・何を考えているのよ、この辺り一帯を消し飛ばすつもり?」

 

「そんなつもりは無いさ。良いか?人に頼みごとをする時は相手の目を見てお願いします、だ」

 

「・・・分かったわよ、お願いします。これで良いのかしら?」

 

まだ、態度が悪いが・・・まぁ良いか

 

「良いだろう。許可してやる」

 

「何言ってるの?許可をするのは此処の主で貴方じゃないわ」

 

「だから、此処に住んでた主とやらの許可が今貰えただろ?」

 

「?・・・・・まさか、貴方が?」

 

やっと気付いたか、鈍いな

 

「此処に昔から住んでいた妖怪で心当たりがあるのは俺ぐらいだ」

 

「・・・早く言いなさいよ」

 

「訊かれなかったからな」

 

訊かれたとしても多分は素直には答えなかっただろうけど

 

「でも、それなら好都合ね天魔・・・天魔?」

 

返事が無い、天魔の方を見るとひっくり返って気絶していた

 

とりあえず棒で突いておこう

 

つんつん

 

「う~~~~~・・・・」

 

つんつん

 

「あ~~~~~・・・・」

 

つんつん

 

「ん~~~~~・・・?」

 

ぱこん!

 

「はっ!一体何が!?」

 

何となく叩いたら起きた

 

「あなた、気絶していたのよ」

 

「そう言えば・・・・・思い出した!」

 

「何をだ?」

 

「何をって・・・きゃあーーーーーーーー!!」

 

あらら部屋の隅まで逃げちゃった

 

驚かすつもりはなかったのに

 

ってか、きゃあって今まで保とうとしてきた威厳が台無し

 

「で、貴方の許可が取れたから早速、此処に新たな郷を作るわ」

 

「ああ、好きにしてくれ。・・そうだ、郷の名前は決まってるのか?」

 

スキマに入ろうとしていた紫が振り向く

 

「幻想の集う場所、幻想郷よ」


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