ブラック・ブレット〜Perfect Answer〜   作:哉識

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どーもご無沙汰してました哉識です。

いよいよFate始まりましたね。

アーチャーさんまじカッコいい。




第六話

 

月や星が煌々と夜空に煌き、一人行く望の影を綺麗に映し出している。

 

望は希の寝顔を見るべく、家路を急いでいた。日課ではあるのだが、やはり仕事帰りの殺伐とした感情を潤すには希の幸せそうな寝顔を見るのが一番だ。それ以外知らないまである。

 

望ははやる気持ちを抑えつつ、いつも通りの道を歩き、やっとのことで家に辿り着いた。

しかし、すぐに家に入ることはしない。希の安らかな寝顔を見るためには万全を期さねば。

まずは深呼吸。そして、なるべく音を立てずに解錠。

 

「よし、クリア」

 

静かにドアを開け、()()に侵入。第二フェーズクリア。

 

しかし、望はそこで違和感を感じる。

 

……リビングの電気が着いている。つまり、これは希が起きている事を指していた。いつもなら寝ているはずなのに。

 

「あー今日なんか変だったもんな。何か話したいことがあったのかも知れない。

しかし、それはそれ、だ。少し説教だな……ふへへ」

 

望はだらけきった口元を正し、いつもの欠陥人間から凛然とした厳格な兄へと気持ちを入れ替える。

 

「ただいま」

 

望がリビングに入ると、希が笑顔で迎えてくれた。本当にに可愛いなぁ、もう。

だがしかし、望の幸せは何の因果か続かなかった。

 

「おかえりなさ……………い?」

「な、何故に疑問形?」

 

希の笑顔が固まる。その様子は望の過去の恐怖体験を呼び起こすに十分過ぎた。

 

いまや、説教しようとしていた望の姿はない。希が一歩ずつ迫る毎に望も一歩ずつ後退していく。この状態の希を前に説教なぞ畏れ多すぎる。望はたった五秒前の自分をフルボッコにしたい気持ちでいっぱいだった。

 

「兄さん、分かりますよね?」

「な、一体何のことでしょう?」

 

あいもかわらずゆっくりと一歩ずつ迫ってくる希。それと対照的に綺麗に整った顔のパーツは一つとして動かない。

 

「あらあら、自覚ないと言うのですか?なら、言って差し上げるしかないですね」

 

にっこりと口元しか笑ってない笑顔を希は作った。

 

「お座りなさい」

「あ、はい」

 

即答。

あまりの重圧に正座しているのが不思議に感じないレベル。ナニコレ、うちの妹怖すぎるんですけど。あと、超恐い。

 

「さて兄さん、言い訳はありますか?」

「ははは、一体何を言えば良いのやら……」

 

引きつった笑いしか出来ない。今、機嫌を損ねたら確実に終わる。何が終わるかわからないけど!

 

望が戦々恐々としていると希がコートの匂いを嗅ぎ始めた。

 

「何をしていらっしゃるのでせうか……?」

「この匂い知らないオンナのですね」

 

希は望の質問を無視し、淡々と続ける。

 

「身長はあまり高くない……いや、むしろ子供。私と同じぐらい……髪は結構長め。しかも、匂いが結構濃いですね。血の匂いも付いているのにあまり紛れてない……どれだけくっついていたのでしょうか……首のあたりからもするとなると抱き合ってたみたいですね。可笑しいですね?お仕事に行っていたはずなのに、どうして春香さんとも違うオンナの匂いがするのでしょうか?兄さん、答えてくれますよね?」

 

細かっ!確かにヤンデレの気はあったけれども、けれども!こんなに酷かっただろうか。

 

俺の妹がこんなにヤンデレなわけがない!

 

……そうじゃなくて、女の子となんてくっ付いたっけ?小比奈か?いや、髪長くないし……天童木更は髪長いけど、論外だろ。血は里見のだし。

 

望は会った人間を順にリストアップしていく。そして、蓮太郎のことを思い出したときにある考えに辿り着いた。

 

「あ。藍原延珠だ」

 

そして、遅いながらも口を滑らした事に気付く。

 

「へぇ。コミュニケーション障害のクズ兄さんが女の子の名前を聞いてくるなんて、珍しいこともあるんですね」

 

当然、聞き逃さなかった希が名前に鋭く反応する。それとちょくちょくディスるのやめてください。さらに悲しくなるんで……

 

「いや、これは止むに止まれぬ状況だったから、たまたま、本当にたまたま聞いただけで、なにも他意は無いんです、はい」

「やましい事がないのなら、隠す必要なんて無いですよね?何ですぐに言わなかったんですか?やましいところがあるからじゃないんですか?」

「抱えて走ってたから、あんまり抱き合ってたってイメージがなくて思いつかなかっただけです……」

「ふぅん、本当に何もなかったと」

「えぇ、何もありませんとも。私めは希様一筋ですとも……」

「ひとまず、今日あったこと洗いざらい吐いてくださいね」

 

俺の妹はヤンデレですか?

 

違う事を切に願ってます……

 

 

 

 

まぁ、ヤンデレだとしても目に入れても痛くないんですけどね(ドヤ顔)

 

とりあえず、今日起きたことを包み隠さず紅茶を飲みながら希に話し、希は落ち着きを取り戻していた。

 

「でも、随分と懐かれたみたいですけどね!」

「それは俺にもさっぱりだ。もしや、女の子の好感度が何をしても上がり、人生の最高潮と言われるあのMO☆TE☆KIかっ⁉」

「それはないから、間違いなく。まぁ、理由は分かるから良いけど」

「そんな全否定しなくてもいいんじゃない希ちゃん……」

望のことを完全に無視して、希は顎に手を当てて考え込んでいた。それも束の間。希は望の隣りに腰掛け、肩にもたれ掛かった。

 

「まあ、兄さんが浮気なんて出来るわけないもんね。私はちゃんと分かってたし」

「浮気って……それに希ちゃんさっきのは完璧におこだったでしょ」

「……何か言いましたか?」

「いえ、滅相もありません」

 

望は目のハイライトが消えている妹にビビりながら、紅茶を啜る。返事に気を良くしたのか、希は望の腕に抱きつく。さながら、望に付けられた匂いを上書きするようだった。

 

「そういえば希、何か話したいことないか?」

「話したい事?」

 

望はマグカップを置き、希を抱っこして胡座をかいた足の中に座らせる。所謂、あすなろ抱きだ。本題に辿り着くまでの道のりが遠かった。ホントに遠かったよ……

 

しかし、希は何の事か分からないという顔していた。

 

「ん?別にないよ?兄さんとお話はしたいけど、特に“これ”ってのはないかな」

「……たまには兄ちゃんに甘えてあげてもいいんじゃないかなぁ?」

「ふふ、じゃあいっぱい甘えてあげる」

 

希は望に身体を預け、望は希の小さく柔らかな身体をしっかりと抱きしめる。

 

他の誰かがこの場にいたら、兄妹にしてはスキンシップが過度ではないのかと言いたくなるような光景だ。

 

だが、望はそれに対して声を大にして言う事が出来る。

 

妹相手にベタベタイチャイチャして何がわるい。寧ろ、これが異常だと思ってしまうお前たちの方が妹を異性と見ているのではないのか、と。

 

全くもって呆れたシスコン振りではあるが、この家には生憎咎める者はいない。二人の両親すら、もうこの世にはいない。望と希にとっての家族はお互いに二人だけである。

兄妹だけの静かで安らかな時間がゆっくりと流れる。望が希の頭を撫でようとするが、自分の右腕の状態を見て留まる。

 

「そういえば兄さん、使ったんだね」

「まぁ、使ったのは戦闘じゃないけどな」

 

望は自分の黒光りする右腕を見下ろす。ひ弱な望を最強と言わす、能力の一端がこのバラニウム合金製の両腕だ。この腕には電気が溜まったカートリッジを装填できる機構があり、望はそのカートリッジに溜まっている電気を自由自在に扱うことができる。主な使い方は自分の神経に電気信号を送り、超高速戦闘を行なえるようにしたり、蓮太郎のケガの止血をした時のように腕に帯電させて攻撃、伝導性のある物質を経由しての電撃攻撃などなど幅広い戦法を取れる。

 

しかし、望は新人類創造計画で創造された影胤や蓮太郎のような機械化兵士ではない。

 

新人類創造計画第八機械化兵士開発科。またの名を対ガストレア兵器開発科。これが望の作られた場所だ。今となってはあまりにも残虐な人体実験をしていた事が明るみになり、なくなっている。

 

確かに、新人類創造計画の一端であることは間違いない。だが、そこは一番狂っていた部署だった。イニシエーターが現れてからも人体実験をやめることはなく、ただひたすらにガストレアを駆逐するためだけの兵士、人類を超えた人類をコンセプトに研究していた。

 

だが、成功例は一つだけ。それが夢見望だ。しかし、唯一の成功例は大成功だった。理論上、イニシエーターや機械化兵士よりも圧倒的に強く、あらゆる面で優れ、ガストレアを駆逐するための「兵器」としては最高傑作のはずだった。

 

しかし、開発者たちは忘れていた。「兵器」に「心」は必要無い事を。望は意識を取り戻したあと、タイミングを見計らい、記憶を頼りに脱走。紆余曲折があった末に現在に至る。研究所は望が脱走したことで、存在が明るみになり、それが発端で潰れたのはまた別の話である。

 

そのためか、望は極端に自分を卑下する。自分は「ヒト」ではなく「兵器」であると。だから、今も兵器である今の右腕では希に自分から触ることに躊躇いを感じている。

望の顔は酷く寂しそうな顔をして、呟いた。

 

「研究所の奴らには感謝こそすれ、恨んだりはしてない。希を守れる力をくれたんだからな」

 

望は右腕ではなく、左腕で希の頭を優しく撫でる。希は幸せそうに目を細めた。今の希を見た人は十中八九、老若男女問わず骨抜きにされることだろう。

 

「兵器」の兄と「化物」の妹に訪れる優しい時間。望もこれを見られたら、流石に言い訳できないよなと現実逃避気味の苦笑をこぼす。希は兄の苦笑に気付かず、ジッと兄の瞳を見ていた。

 

ヤルなら今でしょ。

 

希の脳内にそんな考えがよぎる。そして、その考えに希は忠実に従う事にした。別に問題なんて無いのだから、と。

 

希は望に向き合い、望の首に手を回す。そして、ゆっくりゆっくりと顔を近付ける。いつもの希が好きな兄の優しい匂いが希の鼻腔をくすぐる。十センチ程しか離れていないこの距離が物凄く遠くに感じた。希には焦ったした望の顔が、望には熱っぽい超絶美少女の顔がだんだんと迫っていく。

 

時計の秒針の音が遥か彼方に聴こえる。

 

あと五センチ。

 

唇と唇が触れあっ……

 

エフエックスジッキョウガミタイー、エフエックスジッキョウガミタイー

 

時が止まった。間違い無く、今、二人の時は止まっている。そして、当然のように訪れる気恥ずかしさと気不味さ。先に希がぎこちなく再起動した。

 

「こ、こんな可愛く甘えてくる妹がいて兄ちゃん冥利に尽きるけど、仕事のことだからちょっといいか?」

「え、あぁ、うん。も、もう、に、兄さんったら、私と仕事とどっちが大事なんですか?」

 

希はそう軽口を言いつつも静々と離れ、隣りにぽすんと座る。顔が真っ赤なのは言わずもがな。正直、望も今の自分を鏡で見る勇気はこれっぽっちもない。

 

とりあえず、邪魔をしたのか救いの手を差し伸べたのかどうかは判断しかねる件のメールを開封する。

 

内容はやはり影胤追討命令の連絡だった。二日後に政府主権の大体的な影胤追撃作戦が開始されるそうだ。政府にしてみたら、いてもたってもいられないようだ。どうせ自分たちの身の保身しか考えてないくせに良いご身分な事この上ない。

 

「希、今日から二日後に仕事が入った。一緒に行ってくれるか?」

 

望の声は先程の気恥ずかしさを微塵も感じさせず、落ち着き払っていた。

 

「ふぁ⁉は、はい!えと、あのその……」

 

しかし、希の方はそうもいかず、女の子らしからぬ声を出してしまっていたが、小学生の少女に()()()()()になっても冷静でいろというのも酷な話だ。どんなに修羅場や地獄をくぐり抜けてこようと子どもであることに変わりはない。それはもちろん望にも言えることだった。

 

「コホン、兄さんがいる所なら何処にでも私は着いて行く。例え、兄さんが嫌がってもね!」

 

一度、咳払いをしていつもの調子を取り戻した希は照れ隠しついでにストーカー宣言を声高らかにする。それに対し、望は困った様な嬉しい様な顔をしてしまう。

 

「これだったら、兄ちゃんは希に嫁ぐしかないな。というか、この手に限る」

「そうだよ。兄さんは希の物だもん。誰にも渡さないから!」

「それは良い話だ。とんだイチャイチャ自堕落ライフが目に見えるな」

 

二人はあまりにも出来の悪い冗談にクスクスと笑い合う。さっきまでの気不味さはもう何処にもない。

しかし、笑い合う中で望はふと思う。

 

今まで望は希が望む物は全て与えてきた。しかし、希はとても賢い子だったので、我儘はほとんど言った事が無い。いつも兄さんが居てくれればそれで良いと言ってくれた。兄馬鹿が入っているとしても、とても優しくて良い子に育ってくれた。

 

けれども、もし、もしも希が冗談ではなく、本気で自分を望自身を望んだとしたら、果たして自分はどうしするのだろう。さっきのキス未遂も本当はどうするべきだったのだろうか。

 

意外とこれは非常に由々しき問題なのでは、と望は頭を悩ませるより他なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜おまけ〜

 

「さてと、今日はもう寝るか」

 

望は自室に戻り、ベッドに潜り込む。すると、見計らったように部屋のドアが開けられた。

 

「兄さん、一緒に寝よっ!」

「いいよ」

「……ちょっと待って兄さん。あまりにも返事早くない?」

「何でって言われてもな……つーか、二週間前にも一緒に寝ただろ」

「まぁ、そうだけど……お約束があるでしょ、普通。兄妹で寝るのはおかしいだろ的なくだりが」

「兄妹で寝る事の何がおかしい!別に問題ないだろ。妹と寝るけど愛さえあれば関係ないよね!」

「相変わらず異性として見られてない気がして、希は悲しいよ」

「そんなことはないぞ、マイリトルシスター。真のシスコンにはYesシスターNoタッチという不文律があってだな。妹を異性として見ているけれども、決して手は出さない。常に妹の幸せを願う者こそが真のシスコンというものよ……って寝るなよ!」

「はいはい、兄さん愛してるよー」

「適当な返事なはずなのにどこかに捻くれた愛を感じる……」

「きも」

「ごめんなさい調子乗りました。マジトーンとか死にたくなる」

「それより兄さんくっつき過ぎ!」

「仕方ないだろ。最近、希も大っきくなってきてるんだから」

「ど、どこ見て言ってんの⁉」

「希の逆側向いて言ってる。ちなみに兄ちゃんの好みは小さ過ぎず、大き過ぎずだ」

「いや、別に聴いてないし」

「違うの⁉」

「違うよ!……ふわぁもう寝る。おやすみ」

「あぁ、おやすみ希」

 




〜おまけその2〜

(寝れない!!さっきあんな事があったのに兄さんの横で寝られるわけがない!!)

翌日、希が寝不足だったのは言うまでもない。


如何でしたでしょうか。

なんか自分が童貞なのを露呈した気しかしない。

ん?童貞かだって?どどどどどどど童貞ちゃうねん笑
いや、学生ですし、バリバリの童貞さんですよ。
リア充とイケメン、許すまじ。

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