ブラック・ブレット〜Perfect Answer〜 作:哉識
レオーネ姐さんも良いのですがあのギャップ、萌えますねw
では四話目、楽しんで頂けたら嬉しいです。
「やっと見つけた」
望はあの会議のあと、丸一日使って街中を文字通り駆け巡り、影胤を探していた。
そして通りかかった路地裏でついに望は見覚えのあるフリルのついたドレスの少女と赤髪のツインテールの少女が激しくぶつかり合うのを見つけ出した。望は素早く状況を把握し、二人が再度激突するタイミングを見計らい乱入した。
「!!!」
「誰じゃ⁉」
望は二本の小太刀をナイフで弾き、空いている手でもう一人の少女の足を受け止め、体勢を崩す。当然、少女たちは突然の乱入者に驚いていた。
「探しましたよ、蛭子さん」
「あんたはっ!」
「これはこれは……この間の黒ずくめ君じゃないか」
両者の調度中間に降り立つ黒いローブを纏った望。蓮太郎は突然の乱入者に驚いていたが、影胤は蓮太郎とは違い動揺してるようには見えなかった。しかしいきなり乱入してきて勝負の邪魔をし、その上悠長に話している望を待ってやるほど小比奈は寛大でも冷静でもなかった。
「邪魔するなぁぁぁぁ」
単調だが人間には出せないスピードで迫る小比奈。それに望は二振りのナイフで応戦する。望の姿にはまだかなり余裕があるようにみえた。
「なんで斬れないの⁉」
まるで自分の得物が誘導されているように小比奈は感じていた。怒りを露わにする小比奈の小太刀は望のローブの端にすら引っかからず、一太刀残らずナイフに止められている。
「小比奈、よけなさい」
小比奈が大きく跳躍し、望との距離を取ると影胤が2丁のピストルを構え、望目掛けて連射する。その銃撃を望は右や左にステップし、ローブをたなびかせながら軽く躱した。
「パパ、あいつ強い」
「やはり虎だったようだね」
とりあえず小比奈の猛攻が止み、この空間に短い小休止が生まれた。その数秒でようやくこの状況に追いついていなかった二人が再起動する。
「れ、蓮太郎、あの者は敵か⁉」
「わかんねぇ。今のところ敵ではなさそうだな」
蓮太郎はXD拳銃を構え、延珠もいつでもかかってこいと言わんばかりに構えた。いまや、この空間は一触即発の三竦み状態になっている。
しばしの沈黙。こういう場にあまり慣れていない蓮太郎と延珠にはこの沈黙が数分に感じられた。そして、硬直状態を解いたのは言うまでもなく、乱入者として立つ望だった。望は両手を上げ、戦う意思がないことを両人に伝える。
「俺は戦うためにきた訳ではありませんよ。ただ、話をしにきただけです」
「ふむ、ならば顔ぐらい見せてはどうかね」
影胤が望に銃口を向ける。
「……すみませんがこのままで。顔見て話すの苦手なんですよ。……それにあなたも似た様なものでしょう?」
「確かにそうだった。これは一本取られたよ、ヒヒッ」
この様な修羅場でも笑っている影胤。蓮太郎には気が狂っているようにしか見えなかった。だが、それよりも恐ろしく、奇妙な存在が目の前にいる。それから発せられるオーラは一瞬の気の緩みも許されないと蓮太郎は無理矢理に感じさせられる。
「あんたは誰なんだ⁉」
「名乗るほどの者じゃない、気にするな里見蓮太郎」
「一度クールダウンしようじゃないか里見くん、とりあえず武器を収めるとしよう」
影胤の提案に蓮太郎も大人しく従う。実際のところ、一番渋っていたのは小比奈だったが。
「で、私に話とは何かね?これでも追われている身でね、ヒヒッ」
「あなたの真意を聞きにきました」
「ふむ、真意とな。それは件のレースのことかね?」
「はい。蛭子さん、あなたは何故東京エリアを滅ぼすのですか?」
蓮太郎の身体全身に緊張が走る。蓮太郎にはこのローブが何に対して質問しているのかわからなかった。さも、答えによっては許すと言っているように聞こえたからだ。拳銃を仕舞ったもののすぐに抜き出せる様に手を掛ける。
「何故?そんなもの決まっている。私は機械化兵士だ。今のような腑抜けた世界では私は自分の存在意義を見出せない。だからこそ、再び世界に混沌を呼び戻し、元のような刺激ある世界にするのだよ!!私も君も里見くんも戦いの中でしか自分の存在意義を見つけられないからね!!」
影胤は酔ったように真意を語る。蓮太郎は影胤を改めて危険人物だと認識する。
「だから里見くん、私と来ないかい?」
「断る!!」
「いやはや、またふられてしまったよ。しかし、君の方はいかがかな?悪い話ではないと思うがね」
「残念ですが、俺とは考え方が違うようです。俺の夢見る世界は戦乱の世じゃない」
「……それは残念だ。じゃあ、小比奈あの黒ずくめと里見くんを殺してしまいなさい」
「はい、パパ」
小比奈は命令通りに二振りの小太刀で望の首を狙う。しかし、小太刀は宙を斬り、小比奈は目標を見失う。
「どこ!?」
小比奈の視界から消えた望は小比奈の背後に一瞬の内にまわり、質問には答えずに小比奈の右腕を掴む。そして、そのまま影胤に向かって投げつけた。小比奈は空中で体制を整え、望を忌々しい物を見るように睨みつける。
「蛭子影胤、今ここで俺に倒されるか逃げて小さな希望にすがるか、どっちにする?」
先程までの物腰の柔らかい喋り方や雰囲気は消え、この状況をどこか楽しんでいるかのように望は影胤に選択を迫る。
「……忠告痛みいるよ。君には勝てそうにないからね。では、里見くんまた会おう。黒ずくめ君、君には出来ればもう会いたくないがね。小比奈、引き上げだ」
「……」
小比奈は殺意に満ちた目で望をにらみながらも影胤の後をついていった。それを見送った望も一息つき、家路につこうと歩き出す。
「おい、待てよ」
蓮太郎は望の背中に照準を合わせる。だが、銃を持つ手は震えていた。
「あんた、一体何者なんだ?本当に俺たちの味方なのか?」
「……ベタだけど、敵だと言ったら?」
「撃つ」
「そうか……なぁ、里見。お前の望み、希望、夢見る世界はどんなだ?」
「望み?そ、それは……」
蓮太郎は訊かれた質問があまりにも唐突だったためすぐに答えられなかった。
「まだ、決まってないのならそれでいいさ。お返しにお前の質問に答えよう」
望は蓮太郎の答えを待つことなく、銃を向けられてることを気にせずに再び歩き始めた。
「そう遠くない未来の敵だ。だから、今はまだ名乗るには早い」
「待てっ!!」
望はそう言い残すと都会の闇に消え、蓮太郎の声だけが反響する。
「蓮太郎、あやつ蓮太郎の名を知っていたぞ。小比奈というイニシエーターも強かったが、あの真っ黒、その上をはるかに超えておる」
「くそっ。わけわかんねぇ、これから一体どうなっちまうんだよ……」
蓮太郎は自分の無力や無知に打ち拉がれるほかなかった。
蓮太郎や影胤と別れた望は路地裏で一本の電話をかけていた。
「聖天子、望だ」
「望さん、どうしましましたか?」
「依頼を受諾する」
聖天子は息を飲み、自分でもはっきりと分かるぐらい安堵する。望が依頼を受けてくれるということはすなわち、東京エリアの壊滅はよっぽどの事がない限り免れたと言っても過言ではないのと、最悪にして最強の敵が生まれなかったということに他ならない。汚い話ではあるが、望が気が変わらないうちに報酬の話を終わらせようと聖天子は言葉を紡ぐ。
「ありがとうございます。報酬の方は如何しますか?」
「前金で250万。ケースをあんたの所まで持って行って250万。他の奴が持って行った場合は前金だけでいい」
確か成功報酬はかなりの破格だったはずだと望は思い返す。
「会社には伝えた方がいいですか?」
「そうだな。最近、勝手にやり過ぎて春香さんに怒られたから、そうしてくれ」
「了解しました。……一つお聞きしても?」
「俺が答えられるなら構わない」
聖天子はあまりにも短い業務連絡のような電話では少し物足りないと感じ、望の数多くの疑問のうち、最も聞いてみたい疑問を投げ掛ける。
「何故この様な報酬にしたのですか?望さんなら一括で問題ないと思いますが?失敗することもそうないでしょう?」
「ん?そりゃ一日待ってもらったお詫びで減額したのと確実に報酬をもらうためだ。今回のルールはバトルロイヤルだからな。守銭奴とか言うなよ?希もお年頃の女の子だからな。これから何かと入りようなんだよ。中学の準備もしなくちゃなんねぇし」
「……考え方が本物の親御さんみたいですね。それにあなたの中心が希さんだということがよく分かります。ちょっと羨ましいですね……」
「は?お前の方がよっぽどちやほやされてんだろ」
「私だって一人の人間です。ただ自分のためだけに誰かが尽くしてくれる事はとても羨ましく思えます。私の周りには私利私欲のためだけに動く人たちばかりですから」
「偉い奴なりに大変なことがあるってやつか。これだから人間は……」
ただでさえ人間嫌いの望がさらに人間に対して嫌悪感を抱いていると聖天子がそうだ、と何かをひらめく。
「また希さんも連れてお茶でもしませんか?」
「断る。何を言うかと思ったら……お前のとこだと落ち着かない。それに紅茶なら希が入れたのが一番だ」
「では、私が望さんの御宅に伺いますね」
「何で会うことは決定してる方向で話進んでんの?俺、断ったよね?」
「冗談ですよ。私にそんな暇ありませんから。多忙な自分が恨めしいです」
「暇だったら来るつもりだったのかよ……」
望は相変わらず聖天子にペースを崩されっぱなしだった。距離感は遠いはずなのにどんどん近寄って来る、そんな感じ。望には希とまた違った妹の様な存在みたいに感じている。今もイタズラが成功して、クスクス笑っている声が電話越しに聴こえてくる。
聖天子という立場、それにあれだけ綺麗だと言い寄る男も無数にいるのだろう。それでストレスがたまり、気楽に話せるが相手が欲しかったのだろうと望は勝手に結論づけた。ストレスの捌け口にされた望はたまったもんじゃないが。いつの日か皇居に行った時、この仕返しはさせて貰おう。……きっと無いなそんなチャンス。
「もう質問は受け付けん。これ以上、ストレスの捌け口にされるのは御免だ」
「お話に付き合わせてしまってすみません」
「お前、悪いと思ってないよな……まぁ、いい」
聖天子のあまりにも明るい謝罪に流石の望もこれにはうんざりしてしまった。本当にこの人、国家元首様なんですかね。
「あ」
望は言い忘れていたことを思い出した。
「聖天子、いつも通り序列の固定と俺たちについて、“全て”の情報の消去頼んだ」
「承りました」
聖天子が二つ返事で了承する。そして、これも言い忘れたことの一つ。これは常に直接依頼人から依頼を受諾した時言うことにしている。所謂決め台詞のようなものだ。そのせいで都市伝説なんて噂されるようになってしまったのは誤算だったが。
「では、完璧の答えをお待ちください」
SAOとかストブラとか他の作家さんの小説読んでると自分もつい書きたくなっちゃいますね。
駄文ですが、書いてみて欲しい作品があれば感想にお願いします。(露骨な感想稼ぎ笑)
そうでなくても感想書いてくれると小躍りします。