東方拾憶録【完結】   作:puc119

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第61話~絶対に逃がさない~

 

 熊畜生と別れ、別にやることもなかったがとりあえず下山。

 今の俺じゃあ、あの熊畜生を倒すことはできない。それでも、これは俺がやらなければいけない問題だ。

 

 次の課題は『引き籠もりの妹を外へ』なんて言う課題だったと思う。その意味はやはりわからないが、なんとかこれをクリアしなければいけない。

 今までは、自分のためだけに課題をクリアしてきた。のんびりと、時間に追われることなどなく、ゆっくりと。

 しかし、今回ばかりはのんびりしていることはできないらしい。アレだけのことをやらかしてしまったんだ。被害を受けるのが自分だけなら問題はない。だが、今回は違う。ただの熊畜生を、紫のような大妖怪でも手が出せない妖怪へ変え、さらには神にまでしてしまった。

 それはもう自分だけの問題ではない。

 

 早急に課題をクリアし、なんとか力をつける必要がある。

 もう手段は選ばない。なりふり構っている場合でもない。

 

「なぁ、紫。スカーレット姉妹って知ってる?」

 

 何故か紫がまだ居たため、疑問をぶつける。

 なんでコイツ帰らなかったんだろうね? もしかして、俺のこと好きなんじゃないだろうか。全く、少しくらい素直になれば良いのに。

 

「姉妹? ……ええ、レミリア・スカーレットなら知っているけれど、どうして貴方がその名前を?」

 

 どうしてって言われてもねぇ。俺が残してくれたあの手紙に書いてあったなんて言えないし……

 

「風の噂で聞いただけだよ。んで、できればだけど、その姉妹のいる場所へ連れて行ってもらえないかな?」

 

 日本の何処にいるのか知らないが、自分の力だけで探すのは流石に骨が折れる。紫が知っていて助かったよ。連れて行くのは無理だとしても、場所くらいは教えてくれるはず。

 

 俺の残してくれた手紙曰く、東方のキャラの中に姉妹は何人もいる。その中で、どうして俺がスカーレット姉妹を選んだかと言うと、どうやらこのスカーレット姉妹は吸血鬼で、年齢も500歳ほどらしい。秋姉妹など他の姉妹がこの時代にいるのかはわからない。けれども、スカーレット姉妹ならこの時代にいるそう思った。

 そして、その考えは正しかったらしく、実際この時代にもうスカーレット姉妹はいるっぽい。課題である引き籠もりの妹が、スカーレット姉妹の妹なのかはわからない。それでも、会ってみる価値は充分にあるだろう。

 

「私も会う予定があったからそれは良いけれど……貴方は何の用事があるのよ?」

 

 まぁ、そりゃあ気になるよな。

 紫にはまだ課題のことを教えていない。別に教えたところで問題はないだろうが、教える予定はない。やっぱり、あまり迷惑をかけたくないしな。

 

 さて、此処はどうやって誤魔化したものか。

 

「いやな、その吸血鬼って可愛いんだろ? だったら会いに行かなきゃいけないじゃん」

「…………」

 

 紫にものすごい顔をされた。

 

 なんだろうか、そんな顔をされると興奮する。

 

 まぁ、あの手紙にもスカーレット姉妹のことはヒロイン候補と書かれていたし、この理由だって嘘ではない。未来のお嫁さんが俺を待っている。

 

「だからな。俺は可愛い女の子が好きな「もういい。わかった。充分わかったから少し黙れ」あっ、はい」

 

 なんだよ。せっかくこれから、俺の可愛い女の子への想いを丁寧に教えてあげようと思ったのに。

 

 さて、どうだろうか? ちゃんと俺も連れて行ってもらえるのだろうか?

 

「そんなゴミみたいな理由でねぇ……貴方らしいと言えば、貴方らしいけど」

 

 酷い言われようだった。可愛い女の子と会いたい。それ以上に崇高な理由など、この世には存在しないはずだ。

 まぁ、なんとか納得してくれたようだし、此処は良しとしよう。

 

「んで、どうなの? 結局、連れて行ってくれるってことで良いのか?」

「はぁ、ちゃんと連れて行くわよ。そうね……10日後の満月の日で良いかしら?」

 

 おお、良かった。ちゃんと連れて行ってくれるのか。

 うむ、吸血鬼の姉妹、か。なんとも楽しみである。是非、俺の血を吸っていただきたい。いや、血を吸われると俺も吸血鬼になるのか? あれ? 逆か、俺が吸血鬼の血を吸うと吸血鬼になるのか。

 それなら、いくら吸われても問題ないな。

 

「おう、問題ないよ」

 

 今すぐに出発しても良いくらいだしな。

 まぁ、女性は準備に時間がかかると言うし、それは仕方が無いのかもしれない。連れて行ってもらえるだけで充分だ。

 

「そう言えばさ、スカーレット姉妹って何処に住んでるんだ?」

 

 よくよく考えてみれば、吸血鬼の噂など聞いたことはない。

 まぁ、俺が地獄にいる間に誕生したのかもしれないが。

 

 

「あら、青は知らなかったの? 海を越えた先……つまり西洋よ。それじゃ、またね」

 

 

 ……なに? 西洋? えっ、スカーレットさん日本にいないんですか?

 

 

 そりゃあ、そうだ。考えてもみろ、吸血鬼なんて思いっきり西洋の妖怪じゃないか。今までずっと日本にいた俺なんかが、吸血鬼の噂を聞けるはずがない。スカーレット姉妹の名前もカタカナだし。それなのに、どうして日本にいるなどと考えていたんだ。大蒜と十字架、それと日の光を嫌う夜の帝王。超メジャーな大妖怪の中の大妖怪。

 

 ちょっと困った、俺は日本語しか話せないぞ。英語ならまだなんとかなるが、他の言語はさっぱりだ。これは、まずいな……ボディランゲージでなんとかなれば良いが……大丈夫だろうか、俺の愛はちゃんと伝わってくれるだろうか? しまったな、これならスカーレット姉妹は後にした方が良かったかもしれない。

 それに、なんだよ。東方って日本だけが舞台なんじゃないのか? ホント、どんなゲームなのやら。

 

 まぁ、考えたところで仕方が無い。成るようにしか成らないのだから。

 

 そう言えば、どうやって西洋へ行くんだろうな? ん~……あれ? もしかしてこれって紫と二人旅か? なるほど、それは素敵な旅となりそうだ。これはもう、新婚旅行と言っても間違いではないだろう。

 それなら俺もしっかり準備をする必要がありそうだ。

 

 さて、紫との新婚旅行まで10日。その間、俺は何をしていようか。この幻想郷に知り合いは、ほとんどいない。チルノと遊んでいるのも悪くはないが、どうせなら違う女の子と会いたいものだ。

 先程出会った文なんかとも、もう少し話をしてみたいが、何処にいるのかわからないしなぁ。それに会ってもくれない気がする。しかし、アレは良いパンツだった。是非また拝見したい。

 さてさて、パンツの話はどうでも良いのだ。いや、パンツは素晴らしい物だし重要なことだけどさ。それはまた今度。

 

 そろそろ日も暮れる。

 まぁ、とりあえずあの湖に戻るとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、あの湖へ向かって歩いているときだった。

 

 短めの金色に輝く髪。

 抱きしめるのにはちょうど良い身体。

 此方も数百年の時を越えての再会。しかし今回はあの熊畜生とは違い。嬉しさが込み上げてくる。

 

 

「ルーミアァァアアアア!!」

 

 

 叫んだ。駆け出した。

 もう止まらない。止まることはない。

 

 

「っ! …………」

 

 ルーミア は 逃げ出した。

 

 しかし 変態 が 回り込んだ。

 

 ルーミア は 逃げられない!

 

 

「ちょっ、やめっ……放せバカ! に、匂いを嗅ぐな! 変態!!」

 

 霊力で身体強化をしてからルーミアへ近づき、全力で抱きしめた。

 ああ、もう。ホントにお前は可愛いな! ヤバいヤバい! ホントにルーミアだ。ルーミアの匂いだ!! なんだよ、お前は幻想郷にいたのかよ。それならもっと早く此処へ来ていれば良かった。

 

 とりあえず、ぶん殴られるまでルーミアを堪能した。

 

 

 

 

「…………」

 

 逃げることは諦めてくれたのか、漸く此方を向いてくれるようになったルーミア。

 滅茶苦茶睨まれているけど、そんな君も可愛いよ。

 

「……何の用?」

「ふっ、なんだよ。用事がなければ会いに来ちゃいけないのか?」

「用事が合っても会いたくない」

 

 酷い言われようだった。俺が何をしたと言うのだ。全く身に覚えがない。

 相変わらずルーミアはツンツンだが、会えただけで俺は充分だ。それだけで世界がバラ色に変わる。だってねぇ、本当に久しぶりの再会なんだ。嬉しくないはずがない。

 あの熊畜生との再会は全く嬉しくなかったが。

 

「ねぇ」

「うん、俺もルーミアのこと愛してるよ」

「そうじゃねーよ、死ね」

 

 ……ホント、君は辛辣だね。

 心が折れそうだ。

 

「お腹すいた」

「ん、了解。飯にするか」

 

 こんな会話も随分久しぶり。懐かしい。それでも、これからは、またルーミアと一緒に生活ができるのだ。もう、課題とかどうでも良いかもしれない。

 だってルーミア可愛いもん。

 

 ……まぁ、冗談だけどさ。

 

 

 今日稼いだお金は全てあの煙管に使ってしまったため、手持ちのお金は何もない。それに、塩などの調味料だって持ってはいない。

 それでも、のそのそと現れてくれた猪を、ルーミアは美味しそうに食べてくれた。うん、良い笑顔だ。見ている此方が元気になる。

 

「ルーミアっていつから此処にいるんだ?」

「結構前から」

 

 結構前からねぇ。あの郵便屋と別れたあと、ルーミアはずっと一人旅を続けていたのだろう。きっと大変なこともあったはず。それでも、こうしてまた会えたんだ。それは、良いことに違いはない。

 

 結構前から、此処にいると言うのなら、ルーミアは幻想郷に詳しいのかもしれないな。紫との新婚旅行まではまだ時間がある。その間はルーミアに幻想郷の中を案内してもらおう。

 

 一人より二人。

 そっちの方が良いに決まっているのだから。

 

 






ルーミアさんに出てきてもらいました
ごめんねルーミアさん
辛いと思うけどちょっとその変態の相手をしててね

と、言うことで第61話でした
紫さんとの新婚旅行(笑)まで10日ほどの時間をいただいたので、その間はルーミアさんと遊んでいてもらいます


次話はルーミアさんとのお話っぽいです
のんびりいきましょう

では、次話でお会いしましょう

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