東方拾憶録【完結】   作:puc119

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ちょっと休憩です

短めっぽいです




第閑話~変態と言われる前に~

 

 

 少しだけ語らせてもらおうと思う。

 

 よく俺は周りから変態と呼ばれる。そんな呼ばわれ方をしてはいるが、此処で少しばかりの弁明と、被せられた汚名を返上する為に、少しだけ語らせてもらおうと思う。

 

 

 まず正直に言っておこう。

 

 俺は美少女が好きだ。

 俺は美少女が大好きだ。

 美少女の笑顔が、困り顔が、怒り顔が、泣き顔が、真顔が……その全てが好きだ。愛していると言っても良いだろう。

 微笑みかけられれば精神は高揚し、罵られれば興奮する。

 

 そして、これは極々当たり前な感情なのではないだろうか? 美少女と言うのはそれほどの力を持っている。

 

 

 例え話をしよう。美少女がどれほどすごい力を持っているのか、そんな話をしよう。

 

 まずは塩の話だ。

 一般的に塩は海水から作られる場合が多い。しかし、塩は海水以外からも作り出すことができる。岩塩や、浜辺に打ち上げられた海藻などは有名だ。

 

 そして、それらの方法以外にも塩を作り出されてきた。その一つが人間の汗だ。

 人の汗が乾き、水分が蒸発すれば塩はできる。ちょっと他の不純物も混じってはいるが確実に塩、つまり塩化ナトリウムは人から生成される。

 

 さらに、この人間から生成された塩は神聖な物とされている。このとき勘違いしてもらっては困るが、この神聖な塩は野郎の汗から作られた物ではなく、美少女の汗から作られた物である。野郎の汗からできた塩なんてただのゴミだ。

 

 次の話をしよう。

 次は酒の話だ。その酒の中でも、古く昔から作られている口噛み酒の話。

 

 口噛み酒とは酒の原料を一度口へ入れて噛み、それを吐き出して作られる酒である。日本では古くからこの口噛み酒を神事へ使われている。塩の時と同じように、この神事で使われる口噛み酒も、野郎が噛んだ物で作られた酒ではなく、巫女など少女が噛んで作られできた酒が使われる。

 

 

 少女から作られる塩と酒。

 この二つは神事で欠かすことのできない大切な存在だ。

 

 光の反射によって純白に輝く塩は魔を払い、場を清める力を持つとされている。さらに塩は盛ることで、客を集める縁起担ぎともなる。

 酒を飲めば人は酔う。しかし、この酔うと言うこと自体が神聖なこととされる場合がある。酔うことで神は身へ降りやすくなり、その存在を引き上げる。

 また、酒は神への供え物としてなくてはならない物。

 

 この少女から作られる塩と酒。それらは神聖で高貴で高徳な物とされている。それは俺が決めたわけではなく、古く昔から人類が決めてきたこと。自然と必然に決まってきたものだ。

 

 何が言いたいかと言うと、確かに塩と酒は神聖な物である。しかしだ、此処で少し考えてもらいたい。

 この塩と酒は野郎からではなく、少女から作られなければ神聖な物にはならないということを。

 つまり、塩と酒は神聖な物とされているが、同時に少女もまた神聖なものとされていると言うことではないだろうか?

 

 そう、俺が美少女に此処まで想いをかけるのは、決して己の欲求を満たそうとか、そう言う下心から来るものではなく、もっと崇高な願いから来ているものである。

 

 神聖なものへ近づきたい。そんな願いから来ているものだ。それは極々当たり前な感情と言って何も間違えはないはずだ。

 

 

 

 しかし、そんな極々当たり前な感情を持つ俺に対し、他人は変態と呼ぶ。

 

 そこで、俺は考えてみた。何故この当たり前の感情を他人は変態と呼ぶのかを。

 

 人、特に日本人は排他的な感情が強い。突出したものを叩き、凹んだものを埋める。周りと違うものは吐き出されてしまう。そして、自分がそうなることを酷く恐る傾向が非常に強く見られるものである。

 例え自分の感情と周りの感情が違う場合でも、自分の感情を押し殺し周りに合わせようとしてしまう。

 さらに、一度決められてしまったことを変えることも苦手である。不変を求め、変化を嫌う。

 一般的と言う暴力的表現が均一化を引き起こしている。

 

 つまりは、そう言うことなのだろう。

 

 排除されることを嫌い、本当の気持ちを飲み込み、他人に合わせようとする。

 そして、誰が決めたのかは知らないが美少女を追いかけると言うことは、はしたなく淫らで慎みのない行為とされてしまった。それが一般的となってしまった。

 

 そんな間違って一般化されてしまったものを変えようとすることができない。

 

 心の中ではおかしいと思ったことも、口にすることができない。

 一歩……たった一歩だけなのに、それを踏み出すことができない。勇気が足りないのだ。

 

 皆だって思っているはずだ。

 美少女に『お兄ちゃん』と呼んでもらいたいと、一緒に手を繋ぎたいと、罵られながら踏みつけてもらいたいと。

 

 しかし、その本当の感情を人は殺してしまった。

 心の奥底へ追いやってしまった。

 

 だから、そんな感情を殺さず、隠さず出し続けている俺に対して他人は口を開く――

 

「この変態」

 

 と。

 

 それが間違った行為とは思わない。社会は、世界はそう言う風になってしまったのだから。

 しかし、そんな世界はやはり寂しいと感じてしまう。

 

 

 だから、俺は一人で抗う。

 勝つことはできないとわかっていても抵抗を続ける。

 この無情な社会に、どう仕様も無いこの腐りきった世界へ一矢報いるために。

 

 他人からそれが間違った行為だと言われても、変態と罵られ続けても俺は止まらない。そうやって、たった一人で戦い続けているのだ。

 

 

 これは戦争だ。

 一人の馬鹿が起こした、どう仕様も無い戦争だ。

 

 周りには敵しかおらず、叩かれ、罵られ、嘲笑われ続ける。その強い風当たりに、何度も何度も心は折られそうになった。決して勝利を手にすることはできず、戦況は常に絶体絶命。

 

 もう諦めようと何度も考えた。

 此処まで充分頑張ったじゃないかと自分を慰めた。

 

 そうやって――逃げ道を探そうとしていた。

 

 しかし、その度に諏訪子や神奈子、ルーミアを思い出しそんな甘ったれた考えを打ち消してきた。

 

 ――俺は間違っていない。

 

 そう思えることができた。

 

 いつだって戦況は最悪だ。

 一瞬の好機も現れず、どんなに考えたって勝ち筋は見えてこない。

 

 それでも俺は抵抗させてもらおう。

 俺が生き続ける限り抗わせてもらおう。

 

 今まで、我慢し続けた。

 此処まで耐え続けてきた。

 

 だから、だからもう十分だろう。

 

 勝つことはないとわかっていても、やらなきゃいけないことがある。失敗すると知っていても挑み続けなければいけないものがある。

 誰にだって譲れないものがあって、諦めきれないものがあるから、そいつを守るために俺は戦おう。

 

 

 

 

 

 さて、そろそろ反撃してもいいですか?

 

 

 

 

 

「だからルーミア。一緒にお風呂入ろうぜ」

 

「死ね」

 






少しだけ昔のお話

文字数はいつもの三分の二ほどとなってしまいました
ごめんねー

本編とは全く関係のないお話でした
ごめんね、ごめんね

前半終了時に書けば良かった気もします


次話は……未定です

では、次話でお会いしましょう

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