デート・ア・ライブ ダブル・ボイルダー   作:天音/IA

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雨の中のY/孤独のパントマイマー

Area 神社

 

「ふむ……或守……或守……」

 

フィリップは、現在、地球の本棚にいる或守の名前を考えていた……ここは人があまりいない無人に近い神社なので、ガレージに近くて静かな場所としてよく来ている

 

ただ、組織に狙われているので頻繁に出入りできなかったが、現在はいざとなればラタトスクが察知して転送装置を使ってくれるので晴れているときや、中が騒がしいときはよくここに来る

 

「お兄さん、何やってるんですか?」

 

「ん?」

 

そこには、3人で行動しているとされる小学生の子供達が銅像のように考えているフィリップを覗いていた

 

「なのは、止めとこうよ……おっかない人だったらどうするの?」

 

茶色の二つ結びをしたショートツインの少女が話しかけ、それを青い髪の少女が止める

 

「そうよ、なのは、早くホビーショップに行かないとフェイトやアリシアとのブレイブデュエルの特訓に遅れちゃうわ」

 

オレンジ色の強気のある少女も「なのは」とやらに説得をしている

 

ブレイブデュエル……確か、この町で最近流行っているシミュレーターを使ったアーケードゲームのことだ

 

自衛隊の訓練ツールにも使われている魔法使い対戦ゲームというゲームだとフィリップは頭でぼんやりと考えると再びなやみだす

 

「でも、この人、何か悩んでそうなの……」

 

やはり、フィリップのことがどうしても気になってしまうらしく、流石に無視するのは気がひけたので反応する

 

「……僕は今、重要な考え事をしているんだ、邪魔をするなら去りたまえ」

 

「ほらぁ……なのはちゃん、行こうよ……最近、小学生を狙ってる犯罪者がいるからこういうところは危ないよ……」

 

「すずかちゃん……私、この人がどうしても気になるの……二人とも先にホビーショップ行ってて」

 

「えぇ……でも……」

 

青い髪の少女は茶色の髪の少女の説得に失敗すると、オレンジ色の髪の強気のある少女は少しイラッときたのか、青い髪の少女の手を引っ張った

 

「なのははああなったら絶対に動かないわ……仕方ないから私達だけでいきましょ?」

 

「うぅ………なのはちゃ〜ん………」

 

オレンジ色の髪の少女は青い髪の少女をずるずる引きずりながら連れていってしまい、対して未だに「なのは」という少女はフィリップの目の前にいる

 

「……何の悩み事なんですか?」

 

フィリップは、仕方ないと考えつつもそのような行動に苦笑しつつ、ある程度事実を隠しながら少女に説明をする

 

「実は、記憶がない女の子を預かっててね、名前を考えているんだ」

 

その単純な悩みだが、確かに重要な考えでもあると納得した顔をフィリップに見せた

「どんな子供なんですか?」

 

「ふむ……」

 

フィリップは、士道に説明しようとした時に、或守の写真を取る機会があり、背景は誰でも見られてもいいように多少のCG合成をした写真が残っていたのでそれを少女に見せる

 

「ふぇー……可愛い……」

 

可愛い……フィリップはあまり可愛いとかに興味はなかったため、或守は普通だと考えていたが、どうやら違うみたいだ……やはり、士道の周りに取り巻く少女が皆、ハイスペックすぎて自分の感覚が麻痺しているのかと考えた

 

「僕はフィリップ、鳴海探偵事務所の五河士道の助手さ……普段はあまり活発に活動しないから知名度はほとんどないけども………僕はそういうのには興味ないけどね」

「ふぇ!?あの幾つもの怪奇事件を解決している五河士道さん!?……よく私のパパが称賛してたの!」

 

「君の……父さん?」

 

「鳴海荘吉さんって言う人と知り合いらしいの!」

 

……世界は狭い……そう表現をした人に称賛をしようと思う……鳴海荘吉のハードボイルドは幾つもの人を救ったと知っていたが、その知名度もまだ薄れていないと感慨深く思った

 

「僕はあくまでサポーターだからね、あまり目立つことはしないんだ……」

 

「ふぇー……家に帰ったらパパに自慢しよっと!」

 

父親という言葉に少し反応する。やはり、自身の家族の記憶を未だに引きずっているのだろうか……

 

そのときだった……神社の前の通行人の一人が悲鳴をあげたのだ

 

「キャー!怪物よ!」

 

フィリップは、目の前にいる雪男らしき人を目撃するとすぐさま、スタッグフォンで士道に連絡しようとする

 

「ユキのショウジョはドコだ……!」

 

そのようなことを口にした雪男は何故か、なのはを狙って襲いかかったのだ

 

フィリップは、直ぐ様この要件を手短に士道に伝える

士道は、誰かと話していたらしく、反応は遅れていたが間も無くそちらに向かうとのことである

 

「きゃああああ!?フィリップさん!助けてなの!」

 

Stag

 

フィリップはスタッグフォンでアクティブ化させ、雪男の少女を掴んでいるほうの手を攻撃をする

 

 

「っ!」

 

「早くこっちに!」

 

なのはは隙を狙って、腕を痛ませる雪男から離れてフィリップの元に向かう

 

天気はさっきまで晴れていたのが嘘かのように暗くなり雨が降り始めるとなのはと神社の屋根まで逃げるとフラクシナスの緊急用インカムを取り付け、電源をつけて連絡をする

すると、フラクシナスで待機していた琴里が反応する

 

「大丈夫!?フィリップ!フラクシナスに転送するから広いところに……」

 

「無理だ!一般人の女の子を連れて逃げている。転送装置を使うわけにはいかない……!」

 

「なんですって!?……今、士道が全速力で向かっているわ……それまで持ちこたえなさい!」

 

琴里が直ぐ様モニターを確認すると、神社の屋根の下でフィリップは確かに少女を庇いながら雪男から逃げる

雪男は、先ほどと同じような言葉を繰り返しいい続けている

なのはは、怖がって体の震えが止まっていない。かなり不味い状況だ

 

雪男に対してスタッグフォンはあまり効かないようであり、このままだとなのはを庇って守ることが困難になる……そのときだった

 

 

ブォォォオン!

 

ズドォォォン

 

「っ!?」

 

バイクが階段を一気にかけぬき、そのまま雪男に体当たりを仕掛けたのだ……もちろん士道のハードボイルダーが当たった音だ

 

 

「お前ら、大丈夫か!」

 

「貴方は……!」

 

なのはは、新聞で写真を見たのだろうか、目を丸くして驚いている

対してフィリップは安堵の息を吐き、サイクロンメモリを取り出す

 

「なのはちゃん、でよかったかな?これから見る光景は、他の人に内緒にしてくれないかな?」

 

「え……何するんですか?」

「目の前のやつを叩くのさ」

 

Cyclone

 

「そういうこった……ちょっと離れててな、嬢ちゃん」

 

Joker

 

フィリップと士道は、それぞれのガイアメモリのガイドボイスを鳴らすと二人はダブルの字を腕で描く

 

「「変身!」」

 

Cyclone Joker

 

するとフィリップは隣で倒れて士道は風に包まれてWへと変身する

 

「!?カメンライダー……」

 

雪男は、この姿のことを知っているらしく少し動きを止めた

 

[悪いけど、なのはちゃん……僕の体を見ておいてくれないかな?]

 

「ふぇ!?わ、わかったなの!」

 

先ほどまで、ポカンとしていて、フィリップが声をかけたところで現実に戻ったなのはは、フィリップの体をずるずると引きずりながら社の奥へと向かった

 

[ああ……帰ったら洗濯しないと……]

 

「気にしてる場合か!来るぞ!」

 

「ジャマをスルナラ……コロス!うがああああ!」

 

雪男は、突進をしてくるとWはその攻撃を受け流すと交互に殴り、ラッシュに入る

「おらっ!」

 

「うおおおお!」

 

雪男はWが殴ると負けずと殴り返して、互いに殴りあう状況になる

 

「うらぁ!……くしゅん!」

 

Wのボディサイドがくしゃみをする………恐らく先ほどのことで湯冷めしてしまったのだろうか

 

[大丈夫かい?士道………ここはヒートを使おう]

 

「くしゅん!ああ……そうだな………」

 

Wはサイクロンメモリを取り外すと、ヒートメモリをソウルサイドに読み込ませる

 

Heat Joker

 

ヒートジョーカーに変身したWは拳に炎を纏わせグローブのような武器にして雪男の頭に回し蹴りを入れる

 

「っ!ぬおおお!」

 

炎の攻撃に雪男はかなりのダメージを負っていることに気付く

 

[やはり雪男は熱に弱かったか……一気に決めよう、士道!]

 

「ああ……熱いのかましてやる!」

 

ジョーカーメモリをドライバーからマキシマムスロットに差し込み、マキシマムスロットのスイッチを押す

 

Joker MAXIMUM DRIVE

 

[「ジョーカー・グレネード!」]

 

Wは、そのまま体を半分に分けてそれぞれの腕に炎を纏わせると雪男に直撃しようとした……

 

「させるか!」

 

すると別のドーパントが弓矢らしきものに炎を纏わせ、止めをさそうとしたWに横槍が入ってしまう

 

 

「ぐっ!?」

 

[士道!大丈夫かい!?]

 

「ああ……何とかな」

 

弓矢はとても強い衝撃波を放ち、吹き飛ばされてしまったWはそのままマキシマムドライブがキャンセルされてしまう

気がつくと雪男の姿らしきものが見えなくなっていたのであった

 

「ちっ……逃げられたか……」

 

そのまま変身を解除したWは、湯冷めしているので近くの社で雨宿りをする

 

「帰ったらまた風呂はいんねーとな……くしゅん!」

 

フィリップはなのはと共に遠くに行ってしまったのでどこにいるか検討がつかない

仕方ないので士道はそのまま帰ろうとハードボイルダーの場所まで移動しようと予め持ってきていた折り畳み傘をさそうとした

 

そのときだった……

青い髪の緑のカッパのような服を着た少女がパペットを片手にてくてくと走ってきたのだ

 

すると、慌てていたのか、その少女はそのまま水溜まりにズテンと転んでパペットを外してしまう

 

「!?おい、大丈夫かよ!」

 

士道はほおって置けないのでその少女に走って駆けつけると、その少女はなんとも弱々しい声で士道に言った

 

「……痛く、しないで……くだ……さい」

 

その目は何処かの誰かと似ている儚くて弱々しい何かに怯えた目のような気がした

 

「……痛くしないさ、俺はこの町や人間を泣かせるようなことはしねぇ……」

 

士道は、パペットを拾い上げ、そのまま自分のハンカチでパペットについてしまった泥を落としていた

 

(このパペット、泥に落としたわりには綺麗だな……どんな素材を使ってるんだ?)

 

士道は、泥をある程度払ったパペットをそのまま目の前の少女の左手につけてあげた

 

本体の少女は、無言を貫いたままそのままお辞儀をすると顔の表情はフードで隠され、今度は腹話術の如くウサギのパペットが話してくれる

 

『やっはー、悪いねおにーさん。助かったよー』

 

パペットのほうは恐らく腹話術なのだろうが、そういうのにリアル発言をしてしまうと怒られるのが鉄板なので気にしないで話す

 

「気にしないでくれ、ウサギくんと嬢ちゃん」

 

 

『うんでさー、起こしたときによしのんの色んなトコ触ってくれちゃったみたいだけど、どーだったん?正直、どーだったん?』

 

恐らく、「よしのん」というのはウサギのパペットの名前だろうか……士道はあまり気にしないでおく

 

「いや、泥で盛大に転んだわりには真っ白いなと思っただけさ」

 

「よしのん」とやらはケラケラと士道をからかいながら身体を揺らす

 

『ふふーん!いいでしょ?これでもよしのんはきれい好きなんだからぁ。……まあ、悪い気もしないし、助けてくれたから特別にサービスしてあ・げ・る♪……そういえば、おにーさん……どうして全速力でバイク突っ走ってたの?』

 

 

よしのんは、ハードボイルダーのほうに指を指しながら士道に話す

恐らく、ハードボイルダーで走っていたところを見られて追いかけてきたのだろう

 

「最近、雪男っつう化け物がウサギ君の「相棒」の嬢ちゃんみたいな人を狙って襲いかかるから、追っかけて止めようとしてるんだ」

 

よしのんは少し考えるような格好をして再び士道に話す

 

『なるほど……四糸乃もかわいいからねーついついさらっちゃう人が世の中にいるわけだ

……それにしても「相棒」かぁ………そんな表現初めて聞いたよぉ〜

皆、パペットとか腹話術とか変なこと聞いてくるからね』

 

なるほど、少女の名前が「四糸乃」だから、ウサギ君は「よしのん」……いや、身体のことを気にしていたならばウサギちゃんなのだろうか……気にしないでおく

「よしのん」は「相棒」という響きが気に入ってくれたらしい……「四糸乃」は恐らく最初の声から察すると気の弱い性格……対して「よしのん」はお気楽な性格……相棒の弱い所を相棒が補う……良いパートナーだと士道は感じた

 

すると、先ほど変身のときに逃げていた少女とフィリップが傘をさしてこちらにやってきた

「士道、大丈夫だったかい?」

 

「無事で何よりです!」

 

「よしのん」は首を傾げて士道のほうに質問をしてくる

 

『おにーさん、その二人は誰なの?』

 

「ああ、先ほど助けた女の子に俺の「相棒」さ」

 

『なーるほどぉ……おにーさんも、よしのんと四糸乃みたいな関係の人が居たんだねっ!……うぉっと……そろそろ時間みたいだ……またね!おにーさん!』

 

 

(ロストの現象だと……?)

 

士道は、よしのんが急に慌てていた理由を悟った……四糸乃の足の下から微妙に消えかかっているのを感じたからだ

 

よしのんはそのようなことを話すと急いで神社の影に隠れてしまった

 

「あっ……待ってなの!傘をささないと風邪ひいちゃうの!」

 

茶髪の少女は傘をさしていないままずぶ濡れの少女をさすがに心配したのか呼び止めようとしたが、よしのんと四糸乃の姿は見えなくなってしまった

 

「四糸乃」と「よしのん」……近いうちに会えるかもしれないと士道は考え、フィリップと少女のほうに顔を向ける

 

「一旦事務所に来てくれないか?また狙われるかもしれないから……へっくし!」

 

士道は、そのまま少女とフィリップを事務所まで連れていこうとするといきなり天気が晴れていたのだった

 

「急に晴れたな……通り雨だったのか」

 

そのときは士道は、雨は四糸乃の影響だということを流石に感じることはできなかったのだった

 

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Area 探偵事務所

 

「川口先生っ!」

 

「高町さん!大丈夫でしたか!?」

 

高町という少女は恐らく、川口先生の教え子らしい。すると川口先生は俺とフィリップに少女のことを紹介する

 

「私が受け持っている四年生の算数のクラスの一人の高町なのはさんです。……まさか、四年生までに被害が出るとは……助かりました」

 

「高町なのはといいます。先ほどはありがとうございました!」

 

なのははペコリとお辞儀をすると俺は礼儀正しい子供だなと感じた。川口先生は相棒のほうが気になっているようなのでついでに紹介しておく

 

「こちらは、仕事仲間かつクラスメイトのフィリップです」

 

「園咲フィリップです。以後お見知りおきを」

 

フィリップもお辞儀をすると川口先生もお辞儀をすると流暢に名刺をフィリップに渡す

 

すると、なのはは何かを思い出したのか、慌てた様子で俺に話す

 

「あっ!アリサちゃん達を待たせているんだったの!」

 

どうやら友達との約束があったらしい……まあ、確かに今日は休日だから普通の小学生にしてみれば当たり前だろう

 

「俺がバイクで送ってやる。フィリップ、サイドカーつけるの手伝ってくれ」

 

「了解」

 

フィリップは、工具用の道具を取り出すとすぐに外へと出ていった

 

「……流石に子供達の約束をほおっていく訳にはいきませんよね……」

 

「そうですね……今日は子供一人助けただけでも良しとしましょう……後日、そちらの学校に向かうかもしれないので入校許可の申請をしてくれませんか?」

 

 

「……分かりました。では、士道君。また後日、体調にお気をつけて」

 

川口先生はそれを俺に告げるとなのはに手を振って挨拶をすると、そのまま鞄を持って出ていった

 

「士道、サイドカーをつけたよ」

 

フィリップは慣れた仕事だからなのか、補助用のライブガジェットを片手に部屋に戻ってきた

 

「よし、フィリップはそのままガレージで二人を家に帰してくれないか?

俺はなのはを送ってった後に家に帰るから」

 

「了解……検索はしておくかい?」

 

「ああ……なにかわかったら連絡してくれ」

 

俺は、そのまま再び帽子をかぶり直し、ハードボイルダーのキーを持つとなのはと共に外に連れていった

 

 

外でサイドカーになのはをのせて、互いにヘルメットを被り、ハードボイルダーを起動させる

 

「なのはちゃん、場所は何処だか分かるか?」

 

「ホビーショップT&H!」

 

「駅前のホビーショップだな……!しっかり捕まってろよ!」

 

俺は、駅に向かってハードボイルダーを発進させたのだった……

 




ここで補足説明ですー
この世界の高町なのはは、「イノセント」のほうのなのはであり、魔砲少女ではありません………

今回の事件の被害者の一人とだけ捉えてもらって構いません

ちなみにイノセントのほうの話は平行に起きているという設定です

765プロと同じ扱いで、「あくまで本編で絡まない」ということで、タグには入れない範囲で書くつもりですので、「イノセント」が分からない人も安心してください………

まあ、感想で詳細が見たいものがあったら、感想で伝えてください……人気次第で書くか考えます

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