Area ライブ会場
翌日、刃野警部の協力により、警察の警戒体勢でファンにも協力をしてもらい、警備員に怪しいものがないか確認するためにCTスキャンを実施するなどといったことをやっていた
場所は、天宮スーパーアリーナ……天宮のなかでは最大規模の広さである
一方、俺は同じ、美九のファンの一人である神無月にも協力を仰ぎ、即座に協力をすると言った
……彼いわく、自分がアイドルにうつつを抜かせば司令……つまり琴里に虐められるという彼にとっては素晴らしいシナリオを作ってるらしい
琴里のほうは、十香や俺が直接協力してくれるように二人で頼んだ……彼女は最後まで微妙な顔をしていたが、断れば、十香の精神が不安定になることを避けたのか、協力してくれるらしい
俺は、インカムを装備し、フラクシナスとの通信をすぐにできるようにコンタクトも装備させる
フラクシナスには、上空から、会場をモニタリングするように………そして異常があった場合にすぐに俺に連絡できるようにはしていた
「……こちら、ポイントA以上なし」
『こちら、ポイントB……異常なしよ』
現在、俺と十香のAチーム、琴里とフィリップのBチームが分けられていた
異常を確認するための最後の見回りである
なぜ、このような組み合わせになったのかと言うと、
前者は十香の精神状態の被害削減のため、
後者は変身の時、フラクシナスでフィリップを回収するときに、人目をつかない場所に運ばせるため……『士道………そろそろ時間よ、やるからには必ず成功させなさい』
琴里の声がこちらにおくられてくる………十香の精神状態を心配しているのだろうか、自分を心配したのかあるいは、その両方なのか………だが、
「おおっ!始まるのか!」
十香本人はこれが仕事だという自覚があまりないらしく少しため息を吐いてしまう
「あのなぁ……遊びじゃないんだぞ?」
そのようなことを言われた十香はハッとなり、すぐに緊張感を持たせた
そして、その時十香はステージ舞台の上に何かしらの人影を感じた
「シドー、舞台の上に何かいるぞ!」
俺は、さっと上を見るとスタッフではなさそうな人影が上でうごめいているのを発見した
俺は直ぐ様にフラクシナスでインカム越しに連絡し、走り出した それについてくるように十香も走り出す
「……こちらポイントA……怪しい影を舞台上にて発見した、確認にいく」
『了解しました、お気をつけて』
俺と十香は警備員に、舞台裏のパスを見せ、舞台上へと階段を使って上がっていった
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Area 舞台上
『皆さん、今日は来てくれて本当にありがとうございます!』
ライブが時刻通りに始まると、怪物はその上で獲物を狙おうと上に潜んでいた
「馬鹿だな………まあ、最後の曲まではせいぜい歌わせとくか 今日がお前の最後のライブだもんな………」
そこからインカムから何者かから通信が入った
『にゅふふふ……僕ちんのハーレムに入らなかった女の子は酷い目に会うんだもんねー』
「……分かっていますよ………さん……僕としてもやりたくはなかったけど、貴方の命令であれば、仕方ない」
その怪物は、周りにフヨフヨしたものを沢山浮かばせてそれを再び腹の中へと入れる
「……月乃……いや、美九さん………後悔しないでくださいね?私のコレクションになるのだから」
その怪物は、「男らしい声」から瞬時に変声機をかけずに「女性らしい声」へと変わったのだった
「おっと、そうはいかないぜ?」
「やはり、ドゥパントか……!」
十香と士道がそこに階段をかけ上がり、怪物……ドーパンドの前に立ちはだかった
『やっぱりドーパントだったのね………士道!フィリップはフラクシナスに転送したわ、思い切りやりなさい!』
「ああ、いくぜ、相棒」
帽子をかぶり直した士道は、ジョーカーメモリを片手にとる
Joker
『ああ、行こう士道』
Cyclone
「『変身』」
Cyclone Joker
Wに変身した二人は、謎のドーパントの前に風と共に現れたWは、十香に対して歌を邪魔しない程度に小声でいう
「十香……下に行って、誰も上がってこないようにしてくれないか?」
「分かったのだ!」
十香は小さな声で答えると下へ階段を使って降りていった
「ちっ……仮面ライダーか……!」
『関係ないね………!さっさと殺しちゃって』
十香が下に行ったことを確認すると、ソウルサイドからのフィリップが忠告する
[敵の実力は未知数だ……慎重にいくよ]
「ああ………分かってる」
「[さあ……お前の罪を、数えろ!]」
Wは、サイクロンジョーカーを使いスピードでドーパントにまず蹴りを入れる
「ちぃっ……!」
ドーパントは、それを避けるとカウンターとしてパンチを返してくる
それを防いだWは、蹴りとパンチを交互に繰り出し、ドーパントを追い詰めていく
「どうした!うらぁ!」
「ぐっ……ならば、これならどうだ!ハウリング・ボイス!」
音による衝撃波が空気を振動し、Wを後ろへと吹き飛ばした
「っ……!ぐぁぁ」
吹き飛んだWは、どこかしらの手すりに捕まって吹き飛ばされるのを防いだ
「なら……!」
サイクロンメモリを外し、ルナメモリをソウルサイドに読み込ませる
Luna Joker
ルナジョーカーとなったWは、ゴムのように伸び縮みする体を使って遠くからドーパントに攻撃する
「ぐっ……なんだこのぐにゃぐにゃした体は……!」
「ゴムゴムのピストル(笑)!」
ルナ側の体の拳だけをジョーカーメモリの力で固くさせ、ルナの反発力を使ってドーパントを殴ると後ろに飛ぶ
ドーパントは、壁にぶつかる前に体勢を立て直す
曲は、2曲目に入ろうとしていたときだった
「……くそっ、勝てぬ戦いなら……逃げるが勝ちだ!」
「おいこら、待ちやがれ!」
ドーパントは、舞台上から下に降りていってしまった
[どうする?士道、下は多分、パニック状態だよ?]
「行くに決まってんだろ!美九が危ない!」
そういったWは、ドーパントを追って下へと降りていった
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Area ライブ会場
「皆さん、ありがとうございます!……私、まだファンに恵まれて……幸せです!」
「いいぞ!月乃ー!」
「月乃ちゃーん!」
ファンは、美九に何があってもファンである人がいてくれてとても嬉しい気分だったしかし、そのときだった
「……全く、やっぱり「歌」も下手くそだなぁ………あーあ、帰ろうかな」
そこには、「わざと」ライブに入って批判をしてくるやからがいたのだった
彼は、中年の叔父さんのような格好をして、マスクとサングラスをしていた
「なんだと!お前、もういっかい言ってみろ!」
すると、彼はとある機械を取りだし、それを使い見えない超音波を出す
ピピピピピピ…………
その超音波は、会場全体に向けて発信された その影響を受けたのは琴里や十香も例外ではなかった
「……よく考えたら雑音だな」
「帰ろうかな……」
ファンは、一人、一人超音波の影響でどんどん手のひらを返してしまう
『司令!どうしたのですか!司令!』
「あーあ……神無月……あの雑音はやる気なくす……戻るわよ」
琴里もすでに超音波により洗脳されてしまい、バックスタッフや警備員がやる気をなくしてしまう
「えっ……えっ……」
美九一人は、困惑すると共に絶望していた………全員がそのような考えをしていたなんて、思ってすらいなかったのだ
曲もいつまで経っても流れない……つまり、「全て図られたということ」だったのだ……
「…………!」
美九は、違和感を感じた
「………………!」
……声が出なくなってしまったのだ……自分の唯一の「大切なもの」を失ってしまったのだった
「キャー!」
そこに、一人帰ろうとした「ファンだった人」が叫び声を上げた
ドーパントが侵入してきたのだった
ドーパントの出現でファンはぞろぞろと逃げていってしまう
……ファングッズの数々を踏みにじりながら
そしてドーパントは美九のほうへと近づいてくる
警備員も超音波のせいで美九を守る人は誰一人いなかった
「……!!」
ファンのラッシュとは逆の方向に美九のほうへと近づいていった
美九は、あまりの恐怖に足がすくみ、動けないでいた
ドーパントは美九にこう語りかけた
その声は、女性と男性が同時に話しているような声だった
「どうだい?ファンが裏切った気分は?最高かい?」
(いやぁ……なんで……!なんで声が……!)
「本当は、無理やりならせようとしたんだけど………自分からなってくれて助かったよ」
(なんのこと……なの?)
「君の味方なんかいないんだ………どうだい?悲しいだろ?死にたいだろ!お前には何も「残ってねぇんだよ」!」
「!!」
美九は、このような状況を夢だと思いたくなった……誰も味方がいない世界なんて……いらないと思えてしまった……絶望してしまおうと思えてしまったのだ
「味方がいないわけねーだろうが!」
Luna Trigger
上から追尾弾が降ってきてドーパントに当たる、そして十香が美九の前に来る
「立てるか?美九?」
美九は、泣きそうな顔で十香の体を黙って抱きついてしまった
「……なんか、変な音がなったら一目散にスタッフが逃げてしまってな………もしやと思って美九を探していたのだ!」
美九は怖かったという顔をしながら抱きついてきたのであったので十香はかつて士道がやったように抱き締めて頭を撫でた
「……ほら、シドーも味方だぞ?あの仮面ライダァ、シドーには言うなと言われてたが、中身はシドーなのだ!」
「……!」
(士道さんが……仮面ライダー……)
「ん?どうした?怖すぎて話せないのか?」
十香は、失声症のことは知らないため、美九はフルフルと首を振ることしかできなかった
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「お前、美九に何しやがった!」
Wは、怒りをあらわにしてトリガーマグナムの追尾弾を大量に与える
「知らないなぁ……彼女が勝手になったんじゃないのかい!」
ドーパントは、超音波をWに発射すると、追尾弾は混乱し、Wの元に戻ってくる
「ちっ!」
Luna Metal
トリガーだど分が悪いと判断したWは、トリガーからメタルにメモリを変えると追尾弾をメタルシャフトで弾き返した
「!ちぃっ!」
「……しぶといやつだ…!」
ドーパントは、美九を避難させようとした十香に目標を定める
「……食らえ!ボイス・ドレイン!」
ドーパントは、謎のレーザー光線を美九と十香に放った
「!?くそっ!十香!」
Wは、ダッシュして十香の前に仁王立ちをして攻撃を庇った
「シドー!?」
「…………!」
「ぐ……っ………………」
Wは、庇った攻撃を受けてしまうとそのまま倒れてしまい、変身が解除されてしまった
「へっ、ざまあないぜ!」
そういったドーパントは、そのままステージから出ていってしまった
「シドー!!!」
その声で士道は、むくりと立ち上がった
「シドー、大丈夫か?」
「…………」
士道は、黙っていた……いや、正確には口をパクパクしているため、何かを話しているが、声が出ない
咳払いやそういった類いの行為をしてみても、音すらならなかった
すると、士道はメモ帳を取り出してペンでさらさらと書き上げた
それを十香と美九はメモ帳を見て十香が代わりに朗読する
「……えっと、「やべぇ……声が一言も出ない」……何い!?」
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Area 探偵事務所
「参ったな……二人とも失声症か……」
フィリップは、警察署には彼女が無事だと伝えたとしてもどうでもいいような顔で対応していたらしい
そこにドアをバン!と開いて事務所の中に入った少女が来た
「士道は無事?」
折紙が何処から情報を取ったのか知らないが、士道が大変だということに駆けつけていた
そこには、ライブ以来ずっと泣いている美九の頭を無言でよしよしする士道がこちらに気づいたときに面倒な顔をする
口から何かを話そうとするが、口パクでしか話せないことを忘れてしまい、メモ帳をとりだそうとした
「……折紙、今はそれどころじゃないから空気を読んでくれという顔をしている」
「!?」
折紙は何故か士道の心の叫びをピンポイントで当てたそこに、十香がヅケヅケ上がった折紙に怒りを向ける
「鳶一折紙!きさま、どうしてここにいるのだ!」
折紙は、無表情な読めない顔をして十香に言う
「士道のピンチは、私のピンチ……それに、私の仲間にも士道と同じような症状がある人物を知っている……
それに、私は事件があろうがなかろうが、いつも士道を四六時中追っている……そして、私ならアイドルのファンにかかった洗脳を解けるかもしれない」
「…………!」
士道は、何かをいいたげに再び折紙に口パクをする
「……どうして俺の口パクだけで言葉を把握したり、ライブ会場に来てまで俺をストーキングしているのかは後で聞くとして、最後の言葉は本当か?……という口パクをしている」
折紙は、ふところから犯人と持っている同じようなハッキングパッチを士道に渡す
「……これを天宮タワーなどにつけてくれれば広範囲で洗脳を解かしてくれるはず」
……士道は、すっかり忘れてしまっていた……元々彼女は、おやっさんの義娘……探偵事業も普通にやりとげるのもスパイ活動ができるのも納得がいく
「……士道の通訳には私が絶対に必要……事件に関わらせて欲しい」
……どう考えてもただ単に士道の隣にいたいだけでは?と考えるが、情報の聞き込みといったものは筆談では時間がかかってしまう……通訳できる彼女は必要ではないか……と考える
美九は、未だに声をなくしてしまい、ライブを滅茶苦茶にされて精神崩壊寸前だが、ここを動かないわけにはいかない……それに超音波を未だに発しているだろう別の犯人も探さなくてはならない……
実際、フラクシナスの琴里は未だに洗脳されており、美九のことを執拗に否定してしまっている
「超音波か……もし、それを操ることが可能なら……マスコミを影で操れるかもしれないね」
フィリップがそのようなことを言われた美九は愕然としてしまう
もし、犯人が超音波を使い、町中に美九の否定的な態度をとらせるように仕向けてしまったら……
「……最悪、町全体が美九の敵になってしまうかもしれない……」
「!!」
士道と美九は無言のまま驚いてしまい、美九はすでに何かしらのトラウマのような状態をかろうじて士道達がいるから保ち続けている
「…………!」
「そんなことさせてたまるか、美九の居場所を無くすやつを絶対に手遅れになる前に捕まえてやる!いくぞ、折紙!…………と言っている」
それを聞いた美九は、ほっとしたような笑顔を少しだけ見せる……その顔に折紙は少しだけ顔を動かすが、瞬時に戻して外にでて行った士道のことを追いかけた
「……どうやって超音波のような洗脳技術を町中に………」
フィリップは、考えを纏めるためにガレージの中に入っていった
十香と美九だけがそこに残されていた
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Area ???
「ついに、彼女の芸能人としての命に終止符が押せるようになる!にゅふふふふふ!」
……そこには、有名なアイドル達がたかって一人のおじさんを囲んでおり、その一人がワインを注いでくれる
「……僕ちんのハーレムに入んない子は……芸能人として終わらせて、洗脳しちゃえばいいのさ、にゅふふふふ……」
目の前には座っている人に対してひざまづく男性が一人、
そしてそこに座る気持ち悪いおじさんは、卯月國男という人物だった
アイドルのような可愛い子にたいして腕をペロリとするが、その子が嫌がる素振りをしなかった
「……ですが、國男様……僕は仮面ライダーに目をつけられてしまいました………しかも、あの月乃と一緒にいた娘、貴方の洗脳に効いていなかったはず……」
男性は口を開いて答えたが、國男は全然気にしなかった
國男は、少しだけ考えるが、ピンと名案を閃かせた
確か、美九の隣にいた人物もかなりの可愛い子だったはずだ
「にゅふふふふふ…………なら、僕ちんのハーレムに入れればいい ハーレムに入らなかったら……口塞ぎで殺すと脅迫すれば………」
確か、彼女はかなりのスタイルの持ち主だったはず……その娘を抱けるとなると涎が垂れてくる
「一石二鳥じゃないか………じゅるり……おっと、いけない……じゃあ、こうしよう、僕ちんが二人を誘拐しよう……君は仮面ライダーを引き付けさせなさい……そうだ、君だけじゃなくてこの子にも、行かせよう……おーい、ネイちゃん」部屋の天井からスパイスーツを着てやってきた彼女は、CRユニットを装備していた
「……あの仮面ライダーという正義気取りを僕が彼女をさらうまで、突っついてきなさい 倒すのはどっちでもいいけど……にゅふふふふふ」
そのCRユニットに付いたワッペン……DEMという紋章が輝いていた
「承知しましたぁ…」
気だるそうな顔をしたネイはすぐさま上に飛翔し、天井を突き破った
「相変わらず、元気な子だねぇ………にゅふふふふふ……この子を直接使うことになるかもしれないね〜」
國男の右手にはガイアメモリと奇妙な装置が握られていたのだった