霖之助「うーん、目ぼしいのは特にないかな?」
幻想郷の外れにある縁者のいない者が弔われる共同墓地、無縁塚にて男の姿になった霖之助は辺りを見渡しながらそう洩らす。
先ほど見つけた手のひらサイズの小さい黒い車以外の外の世界の道具が見つからないのでこれ位にしようかなと考えてふと、ある気配に気づく。
霖之助「……変身」
ティーターーーーン!!!
警戒して霖之助はティターンキーを使うと冥府神ティターンになる。
なぜなるかは無縁塚は幻想郷の中でも最も危険な場所とされており、日頃訪れる者は霖之助を除いて少ない。
此処に来る存在ならば無謀な者か強い者しか来ないのだ。
しばらくティターン(霖之助)は警戒して進むとフラフラと歩く女性を見つける。
見た目はめだかボックスの髪の色を白く染めて下ろした喜界島もがなの様な女性だが足取りがおぼついていない。
?????「うっ…」
ティターン(霖之助)が気付くと女性は倒れかけ、霖之助は変身を解く同時に駆け出して倒れかけた女性を抱き抱える。
霖之助「ふう…危なかった」
?????「……」
息を吐いた後に霖之助は女性を見る。
なぜ無縁塚にいたかは分からないが此処にほっておくのはダメだと感じた霖之助は女性を背負って歩き出す。
2日後
魔理沙「お~い!霊夢大変だぜ!!」
何時も通りのんびりしていたメンバーは突如入って来た魔理沙に首を傾げる。
鬼矢「どうしたんだ魔理沙」
魔理沙「いやな、今日香霖堂言ったら知らない女がいたんだよ」
代表で聞く鬼矢に魔理沙がそう言う。
蓮子「知らない女?」
霊夢『お客さんとかでは?』
魔理沙「それが従業員っぽいんだよ」
出て来た言葉に首を傾げる蓮子と霊夢に魔理沙はそう言う。
メリー「聞かなかったの?」
魔理沙「いやぁ…ホント驚きだったもんで…」
鬼矢「別に驚くことでもないだろ?手が足りないから雇ったのかもしれないし」
聞くメリーにそう返す魔理沙へ鬼矢はもっともな事を言う。
魔理沙「だけどよ。朱鷺子や梅霖がいるのに新しい従業員いるか?」
萃香「んーーー、見た事あるけど別に増やさなくても行けるんじゃないのかって思うんだけどな」
そう返す魔理沙に萃香が思い出して言う。
霊夢『ちなみにどんな人だったんですか?』
魔理沙「あー、見た限り少しドジだけど頑張り屋だったな」
聞く霊夢へ魔理沙は思い出して言う。
蓮子「外見はどんな感じだったの?」
魔理沙「なんか顔つきは凛としててスタイルも良くてさっきまで一緒にいたスターが〝Eもある…だと…!?”と言う程胸も豊満だったぜ」
聞く蓮子に魔理沙はそう答える。
鬼矢「ふ~ん…」
魔理沙「んで名前聞く前にこーりんにちょっとした頼み事されてさ、鬼矢、一緒に来てくれねえか?」
関心なさげな鬼矢へ魔理沙がそう頼み込む。
鬼矢「しょうがねぇな…」
蓮子「ちなみに頼み事って?」
頭を掻いて起き上がる鬼矢の後に蓮子が聞く。
魔理沙「掌に収まるサイズの小さい車を知ってる教えて欲しいだってよ。ちなみに名前はバイラルコアだってさ」
鬼矢「バイラルコアっておいまさか…」
萃香「ん?もしかして怪人関連のアイテムか?」
出て来た言葉にやる気のない顔だった鬼矢は目を見開いて呟き、萃香が鬼矢の反応から聞く。
鬼矢「…おい魔理沙、もしかしたらその女…怪人かもしれねぇ」
魔理沙「マジか!?」
そう言う鬼矢に魔理沙は驚く。
萃香「そう思った確証はなんだい?」
鬼矢「バイラルコアだ。あれはロイミュードの体になるものだからな」
メリー「なら早く行った方が良いわね」
聞く萃香へ鬼矢は答えた後にメリーの言葉と共にメンバーは香霖堂へ向かう。
魔法の森~香霖堂~
霖之助「いらっしゃ…ん?どうしたんだいそんなに慌てた様子で?」
急いできた一同に何時も通りのを言おうとして様子から霖之助はそう聞く。
鬼矢「霖之助、新しい店員は何処だ?」
霖之助「ああ、ミュードの事かい。そう聞くからにやはりあのバイラルコアだっけ?彼女と関係してるんだね」
聞く鬼矢へ霖之助は逆に聞き返す。
鬼矢「ミュードってことはやっぱりそいつは…」
霖之助「ああ、彼女の事は大体本人から聞いてる。名前も僕が付けたんだ。ただね。これが何なのか分かんないから魔理沙に君を呼んで来て貰ったんだよ」
確信する鬼矢に霖之助はそう言うと机の上に小さい黒い車を置く。
鬼矢「これは…バイラルコアじゃないか」
霖之助「知ってる事を教えてくれないかな?ミュードと関連してるみたいだけどミュードは知らないみたいなんだよ」
手に持って言う鬼矢に霖之助は困った顔で言う。
鬼矢「しょうがねぇな」
頭を掻いて言おうとして鬼矢は霖之助の言った中で気になる事があったのに気付く。
鬼矢「おい、ミュードって奴はこれの事知らないのか?」
霖之助「ああ、そう言ってたよ…ミュード、来てくれ」
バイラルコアを指して聞く鬼矢に霖之助は頷くと呼ぶ。
はーいと言う返事と共に女性が来る。
魔理沙「あ、こいつだよこいつ」
鬼矢「(…一応本物かどうか試すか)」
現れた女性、ミュードを指して言う魔理沙のを聞きながら鬼矢はある行動に出る。
鬼矢「ふん!」
すると鬼矢はその姿をハートロイミュードに変えると重加速、名称どんよりを起こす。
魔理沙「うお!?」
蓮子「か、体が…」
メリー「お、重い!?」
いきなりの事で誰もが驚く。
ミュード「ふ、ふえぇぇ…」
鬼矢「はっ?」
その中で対象であるミュードも遅くなってるのにハートロイミュードは呆気に取られて重加速を解除する。
霖之助「今のは一体…」
鬼矢「おいお前」
先ほど起きた事に驚いている霖之助を尻目にハートロイミュードはミュードに話しかける。
ミュード「は、はい」
鬼矢「お前ホントにロイミュードなのか?」
背筋を直して聞くミュードにハートロイミュードは呆れた口調で聞く。
ミュード「ロイミュードですよ。試作品ですけど、完成した人達ってそんな事出来るんですか?」
魔理沙「試作品?」
霖之助「ああ、どうも偶然起動して何時の間にか自分がいた場所が無くなっていて彷徨っていたら幻想郷に迷い込んでいたそうだ」
困った顔で言うミュードの言った事に霖之助がそう言う。
鬼矢「試作品…なるほどな」
霊夢『今ので何か分かったんですか?』
話を聞いて納得するハートロイミュードに霊夢は聞く。
鬼矢「ああ俺の知るロイミュードはコア・ドライビアと言うとある博士が開発した超駆動機関を持ってるんだ。こいつはそれを搭載する前に作られていた言わば完成してない存在って訳だな」
ハートロイミュードから戻って鬼矢は頭を掻いてそう言う。
霊夢『完成してない存在?』
鬼矢「ああ、言い方を変えれば知られているロイミュードと言う種族として確立してないとも言えるな」
魔理沙「成程…ん?じゃあバイラルコアってなんだ?」
鬼矢「バイラルコアってのは…まぁ簡単に言えばロイミュードの身体の元になるものだな」
萃香「ああ、つまり体が無くなってもロイミュードって奴らは魂が無事ならそれで体を復活出来るって訳かい」
魔理沙の問いに答えた鬼矢に萃香はそう言う。
鬼矢「魂って言うかコアが無事ならばな」
霖之助「ふむ、ならばミュードがそれを取り込んだら先ほど君が起こしたのと同じ事が出来るのかい?」
そう言う鬼矢へ霖之助は聞く。
鬼矢「まぁ、そうだな」
ミュード「………」
蓮子「?どうしたの?」
頷く鬼矢のを聞いて顔を伏せるミュードに蓮子は聞く。
ミュード「あの…少し考えさせて貰ってもよろしいですか」
鬼矢「ん?別にいいが…」
本人の自由意思だからなとバイラルコアを霖之助に返しながら言う鬼矢にミュードはどことなく怯えていた。
霖之助「まぁ、とにかく僕が預かる形で持っておくよ」
鬼矢「あぁ、頼む」
そう言う霖之助に鬼矢は頼んだ後にちゃんともっとけよと付け加えて分かってると霖之助は苦笑する。
魔理沙「しっかしさっきの凄かったな」
メリー「確かに思う様に動けなかったものね」
鬼矢「ま、だからこそあいつらはこれを利用して色んな事件を起こしているんだけどな」
体験した重加速に魔理沙はそう洩らし、メリーも同意した後に鬼矢が言った事にミュードは顔を伏せる。
霖之助「別に君じゃないんだ。同じ種族だろうと僕は君は良い子だと過ごして思ったよ」
ミュード「霖之助さん…」
頭を撫でてそう言う霖之助にミュードは顔を赤くする。
朱鷺子と梅霖も同じなのかうんうんと頷いている。
鬼矢「んじゃ、用も済んだし帰るとするか」
霊夢『ですね』
蓮子「そうね」
やれやれと首の後ろを揉んで言う鬼矢に霊夢や蓮子達も同意した後にそれぞれ帰った。
この時、霖之助は知る由もなかった。
まさか自分がミュードと共に次の異変に関わる事になると言う事を…
霖之助「次回は永夜抄編の閑章『竹林の太陽と月の伝説の魔族の姉妹』だよ」