歴史の立会人に   作:キューマル式

61 / 63
今回は戦いの後の日常回です。

注意:今回は作者なりのニュータイプ論などが登場します。
   作者が知りえる限りでの情報からの推論(持論?)ですので、正しいとは言い切れません。
   あくまでこの作品でのものとしてご理解下さい。


第58話 人の革新、その『理想』と『現実』

 シャリ、シャリ……

 

 

 ここは現在リザド隊が身を寄せているジオン軍『アリス・スプリングス』基地の病棟、その一室で何かを削るような音が響いていた。そこには男がベッドで横になり、女がベッドサイドでリンゴの皮をむいている。

 この男女はリザド隊所属のラナロウ=シェイド少尉とニキ=テイラー少尉だ。前回の遭遇戦においてブルー3号機の強烈なキックを受けた際、ゲルググのコックピットモニターが割れ、その破片が左太ももに突き刺さるという負傷をしてしまったラナロウは入院中であった。そこにニキが見舞いに来ていたのである。

 

「出来ましたよ」

 

 リンゴを切り終えたニキ。しかしあまりこういうことが得意ではないのか、不格好で不揃いなリンゴに仕上がっていた。それを自覚しているのか、ニキの顔には照れがあるように見える。

 そんなニキに気付いているのか、ラナロウはニヤニヤと笑いながら言った。

 

「こんな状態じゃ喰えないぜ。

 喰わせてくれよ」

 

 その言葉に、ニキは盛大にため息をついた。

 

「まったく……なんで私がこんなことを」

 

「病人に優しくしても罰は当たらないぜ。

 それにこの間の賭けのぶん……ディナーはしばらく無理そうだから変わりにこれでいいぜ」

 

 模擬戦で夕食に付き合うことを約束した賭け試合で負けたことを持ちだされ、ニキは口をつぐむ。

 ニキは冷静な部分ではディナーに付き合う約束がこれに変わるのは自分にとって有利なことだし、あの遭遇戦で命を救われたという事実は理解している。

 感謝の気持ちも込めてここは大人しくやってあげてもいいか……そんなことを考えたニキは串に刺したリンゴを一切れ、ラナロウに差し出した。

 

「あーん、は?」

 

「……あまりおかしなことを言うと、このまま目玉に突き刺すわよ」

 

「おー、こわっ」

 

 おどけてラナロウはリンゴを咥える。しばし病室にみずみずしいリンゴをかじる音が響いた。

 

「そういえば、頼んでいたことはやってくれたかい?」

 

「ええ、やっておきましたよ」

 

 言われて、ニキはバッグからそれを取り出した。それは迷彩柄のバンダナである。

 ラナロウのトレードマークとも言えるもので、いつも頭に巻いているものだ。負傷によって血で汚れたバンダナだったが、その洗濯をラナロウはニキに頼んでいたのである。

 

「おう、これこれ。

 ありがとよ」

 

 そう言ってベッドから身を起こし洗いたてのいい匂いのするバンダナを受け取ると、なにか感慨深げにそれを撫で、いつものように頭に巻いた。

 

「そのバンダナ、そんなに大事なものなんですか?」

 

「ああ、おふくろの形見だ」

 

 どう見てもどこにでもあるバンダナだけに興味を惹かれて聞いたニキは、その答えに自分の迂闊さを後悔した。

 

「あの……無神経なことを聞いてごめんなさい」

 

「ああ、別にいいさ。 こんなもんがそんな大層なもんだとは誰も思わないだろうしな。

 まぁ、うちの場合このくらいしか残しちゃくれなかったってことだ」

 

 そう気にするなとラナロウは言うが、やらかしたニキとしては心苦しいという心情が顔にしっかり出ていた。そんなニキの顔を見て、ラナロウは肩を竦める。

 

「……ホント、あんたはおふくろに似てるな」

 

「えっ?」

 

「おふくろは元ジオン国防隊時代の軍人でな、マジメ一辺倒の堅物だったよ。

 軍を退役して、馬鹿な男に引っかかって俺をつくって……流れ流れてマハルまで来たってのに、まるで変わりゃしねぇ。

 あのクソ溜めみてぇなマハルでマジメ一辺倒だぞ。元軍人の技能がありゃ、幾らでもアホどもから簡単に金を巻き上げることだって出来ただろうにさ」

 

「……どんな環境でも己を律することのできた、立派なお母様だと思うわ」

 

「それで身体壊して死んだら世話ねぇよ。

 少なくとも俺は、少しぐらいあくどいことやってもいいからもっと生きて欲しかったぜ」

 

 そう言って再びベッドに身体を預けるラナロウ。

 

「あんたもさ、もっと力を抜いて人生楽しんだほうがいいぜ。

 マジメ一辺倒じゃ息が詰まっちまう」

 

「……忠告はありがたく。

 でも生憎とこの生き方は間違ってると思わないし、変えようとも思わないわ」

 

 そんな堅いセリフに、ラナロウは処置なしといった風に肩を竦めた。だが、何かを思いついたようにニヤリと笑う。

 

「なぁ……もう一つリンゴくれないか?」

 

「わかりました」

 

 ニキは再び串で刺したリンゴを差し出す。

 と、その手をラナロウが掴んだ。

 

「な、何を……」

 

「なぁ……力の抜き方、教えてやろうか?」

 

 そしてラナロウはその手を引き、そして……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 病棟の廊下を連れ立って歩く男女の姿があった。

 シェルド=フォーリー曹長とレイチェル=ランサム少尉である。

 

「ラナロウ少尉、大丈夫でしょうか?」

 

 シェルドにとってラナロウは海兵隊のころからの直接の先輩である。案外にも面倒見のいい兄貴分であるラナロウには今まで世話にもなっておりその状態に心配そうだが、レイチェルの方はあまり深刻には考えてはいなかった。

 

「あれだけタフそうなんだし、ラナロウ少尉は大丈夫だと思うけど。

 むち打ちと打撲、骨折までしてるアポリー中尉とロベルト中尉に比べたら心配することはないと思うけどなぁ」

 

 戦いの後、半壊したドワッジから救出されたアポリーとロベルトだが、コックピット内で身体を強く打ち付けたため骨折の大けがを負ってしまっていた。しばしの間戦線離脱を余儀なくされており、出血などの派手さはあったもののそれほど長い間戦線を離れないラナロウのほうは軽傷だと見ていたからだ。

 ではなぜ見舞いなどに来ているのかと言うとシェルドが行くというので面白そうだと思ったこと、ニキが来ているという話を聞いてその姿をみてからかってやろうという魂胆だ。

 そしてラナロウの病室に差し掛かったそのときだ。

 

 

 バシンッ!!

 

 

 何かを叩くような音とともに、ニキが部屋から飛び出してきた。口元を押さえ、顔を赤くしながらどこかに一目散に走り去っていく。

 レイチェルはそのまま、開けっ放しの病室を覗き込んでみた。

そこには『叩かれたように』頬を赤く腫らしたラナロウの姿が……。

 

「あー……」

 

 一瞬で何があったのか察したレイチェル。

 

「帰ろっか? 今入ってくのはきついでしょ」

 

「それは分かりますが……」

 

「ほら、食堂でスイーツでもどう?

 そっちの奢りで」

 

「あのー、なんで僕が奢ることに……」

 

 当然のように渋るシェルドの耳元でレイチェルは囁くように言った。

 

「男ならつべこべ言わない。

 それにそういう気前いいところ見せてたらもしかしたら……キス、とかしてあげるかもよ」

 

「わ、わかりましたよ」

 

 その言葉に少し顔を赤くしてシェルドは頷くと、食堂の方に向かっていく。そんな背中を見ながらレイチェルはシェルドに聞こえないように呟いた。

 

「あのお堅いニキにはちょっと強引な相手の方がいいのかもね。

 まぁ、私は単純で扱いやすい年下をからかうけど」

 

 レイチェルは誰にも見えぬようにペロリと舌を出したのだった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「ふむ……」

 

 私は端末を覗き込みながら、今回のブルーディスティニー2号機・3号機との遭遇戦の被害状況を確認していた。

 機体損傷だけ見るとビグロ・フライヤー小破、ゲルググ・ドワッジ3機が中大破という有り様だ。機体に関しては修理さえすればどうでもいいのだが……アポリー・ロベルト・ラナロウが怪我をしたことは痛い。機体よりも熟練パイロットの方が貴重だからだ。

機体と言えば私のギャンとシャアのイフリート改に関しては、完全にオーバーホールが必要な状態になってしまった。あれだけ無茶をやったのだから当然といえば当然だ。

 その他には試作品であったビームマシンガンが壊れたことも頭が痛い。データはあるのでもう一度作ることはできるが、それでも導入までの時間が伸びたことは変えようのない事実だ。

 まぁ、開発とは得てして思う通りには進まないものだ。私は『原作』の知識のおかげでその苦労が激減しているのだから文句は言うまい。

 

 ……マイナス要素ばかりで気が滅入る。プラスのことを考えよう。

 まずクスコとエリスの量産型ギャンは今回の件で無傷、急な作戦行動にも対応できるので最悪の場合にはこちらを使おう。

 そしてあの時の演習の真の目的……これは完全に達成されたことが端末に報告されていた。

 あの遭遇戦の際に演習をしていたのは、なにも練度向上のためというわけではない。実はあの演習の目的は、『新型OSの実動テスト』だったのだ。

 私のギャンにはあのガンダムで有名な『教育型コンピューター』が搭載されている。今まで私とともに激戦を戦ってきたギャンの挙動プログラムは相当なところまで成長を果たしていた。それを用いて各モビルスーツのシステムアップデートを行い戦力強化に繋げるためにアップデートプログラムを作成していたが、それを適用しての実戦形式での挙動テストというのがあの演習の目的だったのである。『原作』でガンダムが行っていたデータ収集機の役割を、私とギャンが果たしたということだ。

 こちらの方は完全な成功、運動性や格闘戦能力などの向上が認められており、許可を受け次第、ジオン公国軍全体に配布予定である。

 

 その報告を読み終わり、端末のページをめくるとそこにはブルー2号機とブルー3号機の戦力分析の内容が書かれていた。

 私は隣にいるシャアに一番重要な、避けては通れない事項について説明する。

 

「イフリート改のEXAMシステム、あれにはリミッターを付けることにした」

 

 あの遭遇戦で起きたイフリート改とブルー3号機の機体停止、あれはシャアとユウがEXAMシステムを通して非常に高いレベルで感応しあったことでEXAMシステムがある種のオーバーヒートを起こしてしまったことによる現象である。

 前回は一対一の戦いだったから良かったようなものの、あれが乱戦であったら致命傷だ。そこで『原作』と同じようにリミッターを取り付け、EXAMシステムをある程度制御することにしたのである。

 

「EXAMシステムの機体への干渉を抑制する。

 これで前回のようなジェネレーターまで完全停止するような事態は防げるはずだ。EXAMシステムが停止しても、最低限の行動は確保できる。

 そのかわり……」

 

「今までのEXAMシステムを発動したときのような無茶は利かなくなった……ということか?」

 

「私の見立てでは今までより運動性や機動性、反応速度に数パーセントほどのマイナスがかかる見込みだな。

 とはいえEXAMシステム発動時はもともとが規格外なのだ。そこからの少々のマイナスがかかろうが、そうは変わらんよ」

 

「……ユウ=カジマはその『少々のマイナス』が致命傷になりえる相手なのだがな」

 

「不安は分からんでもない。 しかし君の安全が優先だ。

 こればかりは譲れんよ」

 

 再戦での不安を口にするシャアに、私は肩を竦めながら言葉を返す。

 

「……気休め程度に聞いてほしいが、技術屋として推測を述べると、連邦(むこう)も同じようにリミッターは取り付けると思う。

 リミッター自体は比較的単純な機構だし、それほど手間のかかるものでもない。戦場で制御できない機構など危なくてしょうがないからな、まともな技術屋なら、取り付けようと考えるはずだ。

 あちらも同じくリミッター付きなら、条件は互角だろう」

 

 連邦には『原作』で実際にEXAMシステムにリミッターを取り付けたアルフ=カムラもいるだろうから、この推測はそれなりの高確率で当たると思っている。

 ……まぁ、EXAMシステム自体がまともではない技術屋であるクルストの作品なのだが、ここで言うことでもあるまい。

 ユウの方はそうなるだろうが……ヤザンのブルー2号機にもリミッターが取り付けられるかと言われれば微妙なところだ。

 クルストにとってはニュータイプを発見し次第後先考えずにでも全力で抹殺する、リミッターのないEXAMシステムの方が理想だろう。そのテストケースを欲しているだろうから、ヤザンの方はリミッターは付かない可能性もあると見ている。

 どうやら楽はできんらしい。

 

「最悪、イフリート改が撃墜されても君さえ無事ならいくらでも機会はある。

 それに私もいるのだ、なんなら2機とも任せてくれてもいいのだぞ?」

 

「君に借りを作りすぎると後が怖いのでね、責任もって受け持つさ」

 

「それはよかった。

 私の相手もかなりの強敵でね、任せられたら核でも持ちだそうかと思っていたところだ」

 

「君が言うと冗談に聞こえんぞ」

 

 そう言って私とシャアは軽口を叩きあう。

 

「……正直、どちらも油断などできん相手だ。

 私もギャンの調整と、そしてちょっとした『秘密兵器』を間に合わせる。

 イフリート改の方も次の出撃までに、君の注文通りに今以上にピーキーな設定で完璧に仕上げて見せよう」

 

「苦労をかけるが……頼む」

 

「わかった、任されたよ。

 ……さて、仕事の話はここまでだ」

 

 そう言って私はパタンと端末を閉じる。

 

「ここからは君の友人、パプティマス=シロッコとして話を聞こう。

 何か相談事でもあるのだろう?」

 

「……相変わらず君は鋭いな」

 

「なに、今のシャアの様子を見ればな。

 それにこんなところに連れ込んでくれたのだ、『そういう話』をしたいのだろう?」

 

 そう言って私は大仰に辺りを見渡す。

 実はここは『ユーピテル』の動力室なのだ。停泊中ながら『ユーピテル』の心臓は動き、低い音が絶えずあたりに響いている。ここなら盗聴器の心配もない。

 やがてシャアは、

 

「シロッコ……『ニュータイプ』とは本当に人の革新なのだろうか?」

 

 そんなことを言った。

 

ジオン=ダイクン()は宇宙に適応し人がニュータイプになることで互いを理解し合うことで争いはなくなると説いていた。不遇な人々の負け惜しみともとれたが……その力を素直に発揮している君やララァを見ていたらそれも嘘ではないと思えていたし、そんな世界が可能ならば見てみたいとも思った。

 だが……私はEXAMシステムの力で、ユウ=カジマを理解した。それでも私もユウ=カジマも戦うことをやめられん。

 これは私がニュータイプの成り損ないだからなのか?

 それとも……」

 

 シャアの言葉に私は「ほぅ」と思わず声を漏らした。

 今回の件で、シャアの中で『ニュータイプ』について思うところがあるらしい。

 ……これは何とも都合のいい展開だ。この機会、しっかりと利用して『折っておこう』。

 

「シャア、以前から君に思っていたことを言おう。

 君は私やララァといった者、それ以前に『ニュータイプ』という存在そのものを過信しすぎているきらいがあるぞ」

 

「ニュータイプを『過信』、か……」

 

「ニュータイプの力は都合のいいおとぎ話の『魔法』ではないのだ。

 結局、ニュータイプの力は一種のコミュニケーションツールであると私は思っている。それだけで争いが無くなるほど人も社会の仕組みも簡単ではないよ。

 事実、人間が互いを理解しようとそう簡単に争いが無くならないことは今回身を持って痛感したのではないかね?」

 

 私の言葉に、シャアは深く頷く。

 

「『ニュータイプ論』は思想であり理想だ。

 こういうのは何だが……綺麗な思想ではあるが、現実はそれほど甘くはない」

 

「はっきりと言ってくれるな」

 

 ジオン=ダイクン()の『ニュータイプ論』をばっさり切り捨てられ、シャアは苦笑した。私だってジオン=ダイクン(義父)には感謝しているし恩もある。嫌いではないが、事実そう思うのだから仕方ない。

 

「では人類は『ニュータイプ』になる必要はないのか?」

 

「そうであるとも思うし、そうでもないとも思う。

 多くの問題が解決しないことの原因は、やはり互いの理解の不足だ。

 人が他者を理解する意思疎通の窓口は限られている。しかもそれに嘘が混じることも多い。だから理解し合い、尊重し合い、手を取り合って問題を解決することを困難にしている部分がある。

 だが『ニュータイプ』はその力で、相手を理解し尊重するための手段を一つ手に入れた。たった一つ増えただけとも思うかもしれないが、この有る無しの差は非常に大きい。そう言った意味では全人類が『ニュータイプ』となれれば、互いに理解を深めて争いは減るかもしれん。

 こう言えば人類は皆『ニュータイプ』になるべきだと聞こえるかもしれんが……それを至上と考えるのは危険だし傲慢な話だ。

 『選民思想』や『至上主義』の危険性は今更語る必要もあるまい?」

 

「それは確かに理解できるな」

 

「それにシャア、君も生物の進化の歴史は知っていよう。

 生物は様々な多様性を持ち枝分かれし、絶滅と進化を繰り返してきた。これは人類種とて例外ではない。『ニュータイプ』もその枝分かれの一つと考えるなら……もしかしたら絶滅を運命づけられた存在かもしれん。

 ニュータイプに覚醒できるように人を促すのはいいが、それを強要することもニュータイプを至上とするのも間違っていると私は考える。

 下手をすれば進化の袋小路にはまり、人類の絶滅ということにもなりかねんからな」

 

 その言葉にシャアは「一理ある」と納得しながら頷いた。

 その様子を見て、私は自分の行動がいい方向に働いたと確信する。この会話……私は『原作のシャア』の至った『逆襲のシャア』へのフラグが折れたと感じたからだ。

 『原作のシャア』には『ニュータイプに対する過信』があり、それが『人類のニュータイプへの強制的な覚醒』と結びついてアクシズ落としという暴挙に出た。私はあればかりはどうしようもないほどの愚策だと考えている。だからこそ、目の前にいるシャアにはそうならないように持論を展開し、思考を誘導したのだ。これでシャアが『原作』のような暴挙にでることはないだろう。

 将来に対して一安心した私は少し力を抜いて、おどけたように言った。

 

「結局、ニュータイプが人の革新なのかそうでないのか、それを判断するのは後の世の歴史だよ。

 今の世を生きる人間にできることは、少しでも次の世が『良い世界』に進むように足掻くことだ」

 

「道理だな。 シロッコらしい。

 それでシロッコの言う『良い世界』というのはどんなものなのだ?

 参考に聞かせてほしい」

 

「そうだな……ニュータイプもオールドタイプもすべてを受け入れる『寛容さを持った世界』というのはどうだ?

 なかなかに素晴らしい世界だろう?」

 

 そんな風に私は夢幻(ゆめまぼろし)を語る。

 クルストはニュータイプの存在を恐怖し、それを絶滅させるためにEXAMシステムをつくった。

 『原作のシャア』はいつまでも地球を汚染し続ける一部のオールドタイプたちを許せず、アクシズを落として人類をニュータイプに強制的に覚醒させようとした。

 ニュータイプとオールドタイプ、どちらだって居てもいいと『寛容』に受け入れられなかったのだろうし、現実はそう簡単ではない。

 だがそれが成ったのなら……それは『夢の楽園』とも呼べるかもしれない。

 

「……シロッコなら、世界をそうできるかもしれんぞ」

 

「私の柄ではないよ。 何といっても私は『歴史の立会人』だからな。

 君の隣でそれを見れることを期待しているよ」

 

「妙なプレッシャーをかけるのはやめてくれ、シロッコ」

 

「それは無理な相談だな、シャア」

 

 そんな風に私とシャアは軽口を叩きあう。だが、これは多分に私の本音を含んだ言葉だった。

 

(シャアは道を間違えねば、英雄としての器がある。

 いつか立ち、そして成し遂げたその時……君の目指す『世界』が私の見たい『世界』と同じであることを切に願うぞ、シャア。

 私は……そんな歴史に立ち会いたい……)

 

 そう、心の中で呟くのだった。

 




ニキ「やだ……私の職場、マザコン多すぎ……」

シロッコ・シャア・ラナロウ「……」


ラナロウのキャラがこうなったけど、まぁ良しとします。
ニキとの関係が発展した、か?
あとこの作品でのレイチェルはターンエーのメシェー・クンに近いキャラ性になっています。メシェー・クンの劇中でのボーイフレンド獲得の辺りは、何ともキャラ性が出ていてよかった。
そして今回の話のキモ……シロッコのニュータイプ論と『逆襲のシャア』のフラグ折りでした。
ユウとの邂逅のおかげで早期に『ニュータイプになっても人は早々変われない』と理解したシャアなら、アクシズ落としなどしないでしょう。全人類がニュータイプになっても、割と人は変わらないだろうと分かったのですから。


……わりとマジメな質問ですが、ガノタの『シャア=ロリコン』という図式はどこから来たんでしょう?
シャアの女性遍歴はまずはララァですが……当時は20歳と16歳(?)だからロリコンってほどの話じゃない。
次はハマーン様13歳だけど……これも『恋人』というのは結構無理があるのでここをもってロリコンって話も変。かっこいいお兄ちゃんに憧れた女の子の初恋的な何かだと思う。
レコアは少し年下程度なので間違ってもロリコンはありえない。ナナイも同様。
なのにも関わらず、小説版の『逆襲のシャア ベルトーチカチルドレン』などではしっかりとレズンやネオジオン兵が酒の席でシャアを指して「あれでロリコンでなければ……」という話をしている。
では『クェスを連れてきたから?』とも取れますが、このロリコン話を『クェスの気を引こうとしたギュネイが、クェスに言っている』という事実。さすがに気を引こうという相手に「お前連れてきたからあいつはロリコン」とはいくら何でも無茶な話。……強化人間だってそのくらいの空気は読めるよね?
それにネオジオン一般兵までの『シャア=ロリコン』が常識化していたことを考えれば『クェスのせい』は矛盾していると思う。

では30歳過ぎたシャアが未だに当時16歳だったララァを思っているから?
ギュネイも「ベッドでシャアがララァの名前を言うのを聞いた女はたくさんいる」という話をしていたと思いますが……『享年16歳のララァをいまだに思っているから』というのがロリコン説の理由というのもちょっとおかしい気が……。

というわけで『シャア=ロリコン』という図式が成立した理由がちょっと分かりません。
このあたり詳しく分かる方いたら、ぜひ教えてください。

まぁ、今まで散々ロリコンネタ使った私が今さら言うことじゃないか(笑)


次回はEXAMとの最終決戦……の序章のような話。
次回もよろしくお願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。