歴史の立会人に   作:キューマル式

45 / 63
……思ったより長くなってしまった。
ある意味大惨事のお話。
だが私は謝らない。


第43話 雪山の邂逅(その2)

 パチパチという音を立て、固形燃料が燃える。

 私はその炎を見ながら、傍らのシロー=アマダへと話しかけた。

 

「もっと火に寄ったらどうかね?

 さすがにその格好では寒かろう?」

 

 私は長袖のジオン士官服姿、そしてシロー=アマダはあの高温多湿な地域での標準的な半袖の連邦軍服だ。長袖の私ですら寒いのだから、半袖のシロー=アマダには堪らないはずである。

 こんな時、宇宙服でもあり防寒着としては一流のノーマルスーツがあればいいのだが……基本的にモビルスーツ搭乗時はノーマルスーツ着用が推奨されているが、生命に関わる宇宙ならまだしも、地上でノーマルスーツを着込む者はあまり多くない。そのため、私のギャンやシロー=アマダのザニーにはノーマルスーツが積み込まれていなかったのだ。

 無い物ねだりをしても仕方なく、私はおとなしく火をおこして暖を取っているわけだが……シロー=アマダはサバイバルキットにあった保温シートにくるまりながら、どうにも警戒感を持って私から距離を置いている。

 その様子に、私はため息交じりに言った。

 

「今は休戦中なのだろう?

 何か害を為すつもりなら、そもそもここまで連れてきてはおらんよ」

 

 そう言って私は洞穴の周囲の岩壁を指差す。

 あの時……私はギャンでシロー=アマダのザニーを支えようとしたが、すでにアプサラスを受け止めることで全開にしていたギャンのスラスターはオーバーヒート寸前、支えるどころか2人揃って崖から転がり落ちてしまった。

 その時の衝撃でギャンは右の膝関節が破損、同時にザニーを掴んでいた右腕は肩からもげて脱落していた。

 一方、ザニーの損傷はもっと酷い。

 両足が完全に砕け折れ、受身でも取ろうとしたのか左腕が肘からあらぬ方向に曲がっており、さらに正面装甲が吹き飛びコックピットが丸見えという有り様だ。思った以上の損傷に、私も心配になってシロー=アマダの救出に向かったが……この男、ずいぶん悪運が強いらしく気絶だけで怪我の一つもない。

 アイナ嬢のこともあるしそのあたりは安心したわけだがここはヒマラヤ山脈の高所、しかも雪がちらほらと見える状態である。コックピットむき出しのザニーに放置では確実に凍死する。

 かといって空調の生きているギャンに乗せてやるのも論外。ギャンは機密の塊、それに連邦の士官を乗せるなどできるはずがないし、何より男と相乗りなど心情的にご免こうむる。

 そこで私はシロー=アマダを連れて近くにあった洞穴に避難しているというわけだ。

 

「敵の士官を前に緊張は分からんでもないが……礼の一つくらいは言ってもらいたいものだな」

 

 私はマグカップを差し出す。

 

「コーヒーだ、飲むといい。

 何、遠慮はいらんぞ。 どうせ君の機体に積んであったサバイバルキットの中身だ」

 

「あんた、勝手に……」

 

 何か言いたげな顔をするが、シロー=アマダはマグカップを受け取るとコーヒーをすすった。それを見て、私も自分のマグカップにコーヒーを注いで口にする。

 外は強い風に雪が混じり、コーヒーの温かさが身体に沁みる。それでやっと人心地ついたのか、シロー=アマダは言った。

 

「……ありがとう、おかげで助かった」

 

 そう言って頭を下げるシロー=アマダ。

 どうやら『原作』通りの実直な熱血漢のようだ。こうやって素直に礼を言える辺りは好感を持てる。

 

「なに、お互い休戦中であるからな。

 アイナ嬢の件で協力もしたことだし、このぐらいはしてもバチは当たるまい。

 もっとも、先ほどの休戦中の攻撃には驚いたがね」

 

「あれは……すまなかった」

 

 先ほどのことを皮肉交じりに言うと、これに関してもシロー=アマダは素直に謝罪した。

 

「……故郷の……あの日の『アイランド・イフィッシュ』の夢を見たんだ」

 

「……なるほど。 それではジオンの士官に襲い掛かるのも分からなくもない」

 

 私は、納得したと頷いてみせる。

 

「毒ガスにコロニー落とし……クソッ!

 ジオンは何でそんなバカな戦争始めたんだ!」

 

「戦争理由など決まっている。

 連邦からの搾取を断ち切り、独立を勝ち取るためだろう」

 

 コーヒーのおかげで落ちついたのか饒舌になり、熱くなり始めたシロー=アマダに私は『何をいまさら』と肩を竦めながら答える。

 

「連邦は別に搾取なんて……」

 

「そうかな?

 例えばジオンは毎年、資源衛星から採取された資源の何割かを連邦に収めさせられている。

 君もスペースノイドなら知っているだろうが、宇宙空間での採掘作業は危険も多い上にコストも割高だ。それを無償でよこせというのは中々にツライ話だ。しかもその地球までの輸送費用もジオン持ちだ。これは十分すぎるほど『搾取』に該当すると思うがね。

 それに限らず、連邦との貿易において各コロニーは不平等な状態だ。

 この状態はそのまま、旧世紀における『植民地』だと思えるが?」

 

「……」

 

「地球にとってはあって当然のものだが、スペースコロニーは人が生きるために必要な酸素や水はもちろん、重力すら自分たちで作り出し、そのすべてに税がかかる。

 そんな多種多様な税を義務付けられたスペースノイドの暮らしは基本的に厳しい。そこをさらに不平等条約などで搾取されてはたまらんさ。

 旧世紀の歴史を見ても、搾取を繰り返された『植民地』は独立を望み、それを勝ち取るために銃を取るというのは理解できる話だ。

 むしろ、正しい歴史の流れであると思えるが?」

 

「なら、平和的な交渉で独立を勝ち取ることだってできたはずだ。

 旧世紀の歴史は、すべてがすべて血を流して独立を勝ち取ったわけじゃない」

 

「……中々、歴史を知っているな。それはいいことだが……その考えは浅いな。

 実際にそれを志したジオン=ダイクンがどうなったかは知っていよう?

 ダイクンは対話による独立を望んでいたが連邦はそれにはまるで応じず、その態度がジオン国民に『対話による独立が不可能』だと印象付けた。

 第一、平和的な独立といっても連邦の意思決定機関である連邦議会の選挙には我々スペースノイドに投票権は無い。

 スペースノイドの声は届かないようになっているのだ。

 届かぬ声をいくら張り上げようとも意味はあるまい」

 

 熱血直情型だがそこはやはり優秀な成績を修めた連邦の士官、シロー=アマダは中々の博識だ。しかも連邦への志望動機が、『鎖国状態となり危険な選民思想にとり憑かれたサイド3の国民を救うため』であったため、その辺りの独立への思想についての造詣が深い。

 ……何だか私も少し楽しくなってきたため、饒舌になってきた。

 

「ダイクンから国を継いだデギン公王は軍備を整え、その軍事力を背景に対等な形で連邦を交渉の場に引きずり出そうとしたが……その結果は知っての通り、連邦はますます態度を硬化させた。

 これでは交渉を諦めるというのは分からない話ではない。

 今回の戦争……これは起こるべくして起こった戦争だよ」

 

「……その原因はすべて連邦にあると言いたいのか?」

 

「さすがにそこまで傲慢なことは言わんよ。ただ、その原因の一端があるのは間違いない。独立を望んだジオンに対する、連邦の圧力は凄まじかったからな。

 経済制裁にテロ同然の示威行為……そのために『貧困』と『憎悪』という戦争の原因の最たるものが膨れ上がったわけだ。

 ……かく言う私も15年ほど前に連邦の起こした『宇宙港爆破テロ事件』で両親を失っている。

 私の行動の根底に、この時の『連邦への憎悪』があることは否定せんよ」

 

「あんたも親を……すまない」

 

「……もうずいぶん昔の話だ」

 

 シロー=アマダの詫びに、気にしていないと私はコーヒーをあおる。

 互いの陣営が原因で両親を失ったという共通点を知ったためか、シロー=アマダの態度は最初よりもずっと軟化しているように見える。

 

「……確かにあんたの言う通り、戦争の原因の一端は連邦にある。

 それに……戦争に正義も悪もない。 どっちにだって言い分はあるし、どっちだってあくどいことはやっている」

 

「……道理だな。

 子供のマンガではないのだ、単純な善悪の二元論では語れんよ」

 

 私は頷いて先を促す。

 

「でもそれでも……それでも戦争にだってやっていいことと悪いことはある!

 あの『アイランド・イフィッシュ』への毒ガスはやっていいことのはずはない!」

 

「その通りだな。

 善悪は別にして、毒ガス作戦は明らかな下策だな」

 

 そう答えた私に、シロー=アマダは何とも形容しがたい、驚いた顔をする。

 

「何かな、その顔は?

 まさかジオンの士官なら、ジオンの作戦すべてに賛成であるなどと思ってはいないだろうな?」

 

 『思っていました』、と明らかに顔に書いてある。

 私はため息を一つつくと、残ったコーヒーをあおった。

 

「ジオンの士官とて、考えは人それぞれだ。

 軍のやり方に何でもかんでも賛成というわけではないよ」

 

 これは当然の話だ。

 『原作』でも毒ガス作戦についてはあの有名な『青い巨星 ランバ=ラル』も嫌悪感を露わにしていたというし、軍の行動すべてに完全に納得している方が少ないだろう。

 それに何より、作戦のことをすべての将兵に知らせるはずはない。だからあの毒ガス作戦については否定的な者、そもそもその全貌を知らない者が多いのだ。

 

「私としてはあの毒ガス作戦については、善悪を抜きにして下策だといえるよ。

 もし私に全軍の指揮権をくれるというのなら、あんな手は使わん。

 殺すより、生かしてこちらの陣営に引き入れる方策を考えるな」

 

 そう言って少しおどけたように肩を竦める。

 しかし、私は続けた。

 

「だが……我々は国家に属する兵だ。

 兵は国の意思として命令に従い、命令を下すものはそのことに責任を持つ。

 どの国家でもそれは変わらんはずだ」

 

「……何が言いたいんだ?」

 

「確かにあの毒ガス作戦はジオン公国軍の起こしたことだ、否定はしない。

 君がジオンを憎むことは正しいだろう。

 しかし……その行動の責任を負うべきはあくまで国家やその意思決定を行った者だ。

 それをジオンに暮らす国民や人々すべてに憎しみを向けるのは、いささか的外れだ。

 第一、君があれだけ派手に愛を告白したアイナ嬢とて、ジオン国民であり軍関係者だ。

 彼女には憎しみを向けず、私には憎しみを向けるというのはフェアではあるまい」

 

「あれは……その……勢いだ。

 忘れてくれると、うれしい」

 

「無理だな。

 あんな派手な愛の告白、忘れるわけもあるまい。 諦めたまえ」

 

 さすがに告白に関しては彼も勢い任せで気恥ずかしさがあるらしい。だが、そんな印象深いことを忘れられるはずもない。私は肩を竦めて苦笑する。

 

「君やアイナ嬢のように敵国同士の者として巡り合っても心を通わすことはできるのだ。

 憎しみに凝り固まっていては、人は互いを理解することができん……」

 

 そして、私は少しだけ遠い目をした。

 

「人とは究極的には許し合い、分かり合う生物だと思う。

 かつてジオン=ダイクンが語った『ニュータイプ論』……あれは宇宙という極限状況下で暮らすうえで今までの地球のような常識は成り立たない、宇宙という極限状況下で暮らすためにはその環境に適応し、互いに思いやり分かり合うことが大切だという『思想』だ。

 私は、それは真理だと思っているよ」

 

(もっとも、その分かり合うことに特化した能力を持つ人間(ニュータイプ)が本当に現れるとは義父も思っていなかっただろうがな……)

 

 私はそっと、心の中で言葉を付け足す。

 

「ジオン=ダイクンの『ニュータイプ論』……あれは選民思想なんじゃないのか?

 『宇宙に暮らす自分たちはアースノイドより優れている』っていう……」

 

「それはプロパガンダとして利用された、曲解された『ニュータイプ論』だな。

 ダイクンの唱えた『ニュータイプ論』とは違うよ」

 

 そう言って私はシロー=アマダの言葉を否定した。

 シロー=アマダはこの選民思想とも言うべき曲解された『ニュータイプ論』……ギレン=ザビの提唱した『優勢人類生存説』に嫌悪感と危機感を覚えて連邦軍に仕官しただけあってこの辺りの話は詳しいようだ。

 正直に言えば義父であるジオン=ダイクンの思想である『ニュータイプ論』を、ギレンが政治利用した『優勢人類生存説』とを混同されるのははなはだ気分が悪い。

 

 色々話を終え私が再びマグカップを傾けると、中身はすでに空だ。

 そして、私はシロー=アマダを見て苦笑した。

 

「何がおかしい?」

 

「いや、ちょっとした言葉を思い出した。

 

 『大概の問題は、コーヒー一杯飲んでいる間に心の中で解決するものだ。あとはそれを実行出来るかどうかだ』

 

 というやつだよ。

 どうやら解決のようだ」

 

 見ればシロー=アマダは先ほどより明らかに火のそば……もっと言えば私のそばにまで来ていた。そこには先ほどまでの警戒心は見当たらない。

 どうやら本当に、お互いコーヒー一杯飲んでいる間に解決したようだ。

 

「分かり合う、か……」

 

「『理想』だよ、現実にはなかなか難しい。

 しかし、君とアイナ嬢という実例もある以上、皆無ではない。

 そして、そういった『理想』の類は、私は嫌いではないのでな」

 

 見れば洞穴から見える外はいつの間にか雪も風も止んでいた。

 それでも気温は高くない。私はブルリと身体を震わせ、固形燃料の火に手をかざす。

 その横でシロー=アマダも同じように火に手をかざすが私よりも寒そうだ。

 

「……寒いな」

 

「雪山だからな。

 だが、これ以外に暖をとる方法もあるまい」

 

 私はシロー=アマダの言葉に相槌を打つと、少しでも温度を逃がさないように服の襟を立てる。

 そして、シロー=アマダはポツリと言った。

 

「……風呂でも入るか?」

 

「……………………はぁ?」

 

 シロー=アマダの言葉に軽く5秒は思考が止まった後、私は思わず間の抜けた返事を返していた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「はぁはぁ……」

 

 雪山の中を、ピンク色をした女性用ノーマルスーツに身を包んだアイナが進んで行く。

 アイナはアプサラスのテストパイロットだ。そこにはサハリン家の身内という防諜上の理由もあるが、さすがにその才能の無いものに難しいテストパイロットなどさせられない。そのため彼女はパイロットとしてのスキルは相当なものを持ってはいるものの、名家サハリン家のいわゆる『ご令嬢』である。多少なりと訓練を積んではいるものの、その体力自体はやはり本職の軍人たちと比べれば見劣りする。そんな彼女にとって雪山行軍など無茶極まりない行為だ。

 溜まった乳酸による疲労を身体は訴えるが、彼女はそれを意思の力で無理矢理ねじ伏せながら進んでいた。

 何故なら彼女にはどうしても進まねばならぬ理由があるからだ。

 

「シロー……」

 

 その名を呟く。

 初めての出会いは暗い宇宙空間。生と死を分かつその極限状況で、2人は敵味方でありながら助けあって生き残った。

 その時から胸に渦巻く感情に彼女は明確な答えが出せずにいたが、それは今しがた解決した。

 

「好き……私は、シローが……好き」

 

 口に出して呟けば、その気持ちはすんなりと受け入れられる。

 彼女自身かなり容姿に恵まれ、しかも没落したとはいえ名家の令嬢だ。彼女に好意を向ける異性などそれこそ掃いて捨てるほどいたが、シローからのそれはまったく違う。曲がりなりにも敵に、それもこの命を分かつ極限状況下で愛を叫ぶなど一体どれだけの人間ができることだろう?

 それほどまでの本気なのだということが、彼女の心に響く。

 ……もっともそんな無茶苦茶な人間は普通はいないという無粋な常識は、今の彼女の脳内からは綺麗に排除されていた。まさしく『恋は盲目』というやつだろうか。

 そんなシローの危機なのだ、必死になるというのも頷ける。

 

「それにシロッコ中佐のこともありますし……」

 

 シローを助けようとしてくれたし、恐らくシローと合流しているだろうからついでに合流しないと……そう思い歩を進めるアイナ。

 無意識にシロッコをついで呼ばわりしているあたり、まさに『恋は盲目』である。その心中を知ったらさすがのシロッコも泣くだろう。この場にシロッコがいなかったことは幸運であった。

 そんな強い意志に突き動かされたアイナは雪山を進んでいたわけだが、その彼女の眼前のおかしなものに気付く。

 

「……湯気?」

 

 小高い丘のような先に、湯気が立ち上っているのが見える。

 この雪山で湯気など明らかにおかしい……そう思った彼女は様子を窺うため身を伏せ、慎重にその丘から顔を出した。

 すると……。

 

「士官学校から脱走したバカを総出で追って夜中に山狩りになってな。

 あの時は凄かった。全員の雄たけびでまるで山が震えてるみたいだった」

 

「はははっ、士官学校の様子は連邦も変わらんようだな。

 ジオン(こちら)の士官学校でも似たようなことがあった。

 脱走したバカはその場で丸刈りにしてやったがな」

 

 ……アイナは状況が分からなかった。

 そこではシローとシロッコがにこやかに談笑しているのである。

 それはいい、最悪殺し合いになるのではないかと内心心配していたアイナとしては2人が談笑しているというのはいいことだ。

 しかし……何故、2人は裸で、温泉など入っているのだろうか?

 

 近くにはシローの乗っていたモビルスーツが転がっており、それで湯を沸かしたのかシューシューと湯気が立っている。

 そんな中で湯に浸かり談笑する男2人。無論、双方裸だ。

 シローと、そして意外にもシロッコも均整のとれた見事な身体だ。思わずそれにアイナの視線が釘付けになる。

 

「わ、私はなんてはしたないことを!?」

 

 しばしの後、ふと名家の淑女としてそんなことを思うが、どうしても視線が外せない。そんな時、どこからか声が聞こえた気がした。

 

(アイナ様、もっと素直になりましょうよ……)

 

「!?」

 

 それはアイナの友人でもあるレンコ伍長のものだった。

 レンコ伍長はザンジバル級『ケルゲレン』のオペレーターをしており、その美貌と綺麗な声で部隊内では抜群の人気を誇る女性兵である。

 彼女とアイナは、歳が同じということで何度か話をしたところ友人関係となっていた。

 そんな彼女が、友人のアイナにならと自分の趣味だと言って見せてくれた本……それを思い出す。

 それは男同士の……いわゆる、そういう本だ。

 それを普段からは想像も出来ない、ちょっとお見せできない顔で楽しそうに読むレンコにつられ、アイナも見ていた。

 はしたないと思う反面、興味を惹かれてしまったことはアイナも否定できない。事実、アイナの部屋にはレンコから借りたそういう本が数冊転がっているのである。

 そして目の前のシローとシロッコの入浴という光景は、まさしくそんな本を連想してしまう光景だった。

 

「…………フィヒ……」

 

 いつの間にか他人にはちょっとお見せできない系の顔になったアイナから、これまた他人には聞かせてはいけない系の笑いが漏れた。

 

 

 

 結局、アイナが2人に合流したのは実に1時間後のことであった。

 そんなアイナに気付いていなかったシローは、あるいはとても幸せだったのかもしれない……。

 

 




よく分かる今回のあらすじ


シロー「ジオンめー!」
シロッコ「まぁ待て落ちつけ。話せばわかる」

洗脳中

シロー「憎しみイクナイ!」
シロッコ「ふぅ……なんとか誤魔化せたか」
シロー「なぁ、風呂でも入ろうぜ!」
シロッコ「……はぁ?」

アイナ「彼氏がヘアバンド男とお風呂に入ってまして……。
    裸の付き合いというのでしょうか……。
    それを見て私……なんていうか……その……下品なんですが……フフ……。
    興奮……しちゃいましてね……」
シロー「嫁が腐っていた件orz」
シロッコ「自分の彼氏で掛け算(×)を想像できるとは中々の上級者」
アイナ「ホモが嫌いな女子なんかいません!!!」
シロッコ「サハリン家はじまったな」


政治思想の討論で分かり合う男どもと、男の裸で悶えるアイナ様。
……何だこの温泉回!?
名モブであるケルゲレン子ちゃんと、アイナ様のキャラが一瞬で大崩壊しましたが……私は謝らない!!
シローってただの熱血バカっぽくなってますが、実はジオンの選民思想が危険、その国民を助けるという思いで連邦に入ったという、思想・政治にも通じてるキャラなんですよね。
そんなわけでシロッコとシローからこの戦争についての意見と、あと感想欄で少々荒れた『ニュータイプ論』的な話をしました。

……やっぱりジオン=ダイクンは政治家というより思想家寄りだと思うなぁ。


次回は事後処理、そして新たな戦場へと向かうことになります。
次回もよろしくお願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。