ある可能性の劇場   作:シュレディンガーの熊

9 / 12
観客動員数(UA)4500人突破


久しぶりの執筆活動・・・これでしたw




月光校庭のエクスカリバーと聖人 2

キリスト教の敬遠な信者、エクソシストである少女らと別れたその翌日

 

「イエス。紫藤ちゃん達から、今日の夜に駅前に来て欲しいって連絡が来たよ」

 

「早速来たね。それにしても、天界じゃない人から電話がもらえるっていうのは、やっぱり新鮮だね」

 

「そうだね。下界で連絡を取るのなんて竜次さん達ぐらいだし」

 

神様達の下界でのアドレス第1号はヤクザさんです

 

「それじゃあ早速準備をしなくちゃ!」

 

「準備って?」

 

「それはもちろん―――スパイ七つ道具だよ」

 

007で馴染み深いスパイ御用達の七つの道具のことである

 

「ボイスレコーダーとか盗聴器とか・・・」

 

「そんな物ウチにはありませんし買うこともできませんよ?」

 

後半部分を若干、いや割りかし強調してブッダはイエスに言った。その迫力は笑顔だった分とても怖かったとイエスはのちに語る

 

「うーん。それじゃあある物だけでも持って行こう」

 

二人は部屋を片付け、待ち合わせ場所へと向かって行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、聖さん」

 

「遅れてしまってゴメンね」

 

「いや、此方も突然呼び出してしまって申し訳ありません」

 

待ち合わせていた小さな公園にて少女たちと再会した。彼女たちは先日同様真っ白なローブで身を包んでいた。

 

「ようやくミッションスタートだね!」

 

「張り切ってるね。ところで・・・この人達は?」

 

「うむ。我らの協力者だ」

 

彼女達の前に四人、高校生ぐらいの茶髪の少年、同じく学生らしき金髪の少年、クリーム色の髪の少年、そして白髪の幼き少女が一人がいた

 

「えっと、彼らって・・・」

 

「どもッス。俺は兵藤一誠です」

 

「匙元士郎ッス」

 

「・・・塔城小猫です」

 

「・・・」

 

「ああ、そっちのイケメンは木場祐斗って言います」

 

金髪の少年の一人は不機嫌な態度で何も言わない。その様子に一誠と名乗る少年が代わりに名前を教えてくれた

 

「もしかしなくても彼らって・・・悪魔?」

 

「今回の件、協力者は多いに越したことはないのでな」

 

(いやいや、その悪魔を滅する救世主の前に悪魔()を向けちゃまずいでしょ)

 

「よろしく。私のことは救世主(セイヴァー)と呼んでくれ」

 

「は、はぁ・・・」

 

ジョニデっぽいキメ顔で悪魔の子達と握手するコードネーム救世主ことイエス

 

ブッダ同様にイエスはこの世に生まれ落ちてから2000年も経つ言ってみれば超が付くどシニアだ。それだけの長い年月が経てば、嘗て争っていた天敵や裏切り者でさえも許し、それなりの友好を持っているのである

 

とは解っていても、ブッダはその時一抹の不安を持っていた

 

職業病と呼ばれるものがある。自分の持つ職業に従事するあまり、休日の様な日常においても仕事時のように行動してしまう等が最たる例だ

 

弟子であるペトロやアンデレ等を含めイエス達の生前の生業は救世主にして悪魔祓いであった

 

現世を発ってもそれはなお続き、21世紀という永い時を経ても彼ら一同は、仮想空間(オンラインゲーム)で悪魔を狩り続けているのだ

 

人に害為す悪魔は滅せよ。それが彼らの共通認識であるのだ

 

そんなイエスが悪魔である彼らを前に平然と、いやむしろ友好的に接していたその姿は、信者からすれば異常この上ないだろう

 

「ブッダ殿。敬遠な貴方方が不穏に思うのも致し方ないだろう。だが、我々が借りるのはあくまでドラゴン、赤竜帝の力だ」

 

ブッダが思ったであろう疑問にゼノヴィアが答える。そこではないのだが、その答えは些か屁理屈な気がした

 

 

D✩D

 

 

夜、街は静まり返り、人ならざるもの達が徘徊する闇の世界

 

「事前に偵察に向かわせていた神父達は既に亡き者にされていたとはな」

 

「だから、私たちもこうして神父御一行に扮するんでしょ?」

 

「成程、木を隠すなら森の中って奴だね」

 

その夜、一行は修道服、法衣に着替え、囮として街中を歩き回っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・いや、神父シスターの一団の中に新撰組は明らかに浮いてますよ」

 

一名を除いて

 

「聖職者に混じってお侍さん・・・シュールですね」

 

「アウェー感がはんぱねぇな」

 

「そんなに浮いてるかい?」

 

「うーん。苦行林で乳粥もらった後の私みたいな?」

 

「それかなり浮いていたよね!?」

 

結局法衣に着替えるイエスであるがこれだけは!と模造刀だけは腰に携えたままにした

 

「・・・っていうかブッダがそれ着て大丈夫なのかい?」

 

「うーん。まぁ衣は気候や状況に合わせて改変しても良くはしてるし、たぶん大丈夫。それに、郷に入っては郷に従えって言うしね」

 

改宗の恐れはないが宗教戦争の引き金になってもおかしくない格好ではある

 

 

D✩D

 

 

―――その日の結果はというと、その日は何も現れなかった。時刻は0時を超え、日を跨いでいた

 

「ではまた明日も同じ時間に会おう」

 

「ああ」

 

「ゼノヴィアちゃん、イリナちゃん。またね」

 

そう言って少女たちは夜の街の中を帰っていった

 

「そういえば、彼女たちは一体どこで寝泊まりしているのかな?」

 

「そうだね。昨日はお金がないって困っていたし・・・きっとどこかの教会に泊めてもらっているんじゃないかな?」

 

その実彼女らは廃墟にて野宿をしていたのを聖人たちは知らないでいる

 

「それじゃあ俺たちも学校があるんで失礼します」

 

と、兵藤たちも別れを告げる

 

「明日も頑張ろうぜ匙!俺たちの夢の為にも!」

 

「ああ!木場のためにも、俺たちのためにも!俺の夢―――会長とでき婚するためにも!そして会長と・・・グフフ」

 

「匙君、貴方は悪魔(マーラ)なので欲を持つことを諌めるつもりはありません。しかし、色欲は須く世を滅ぼしかねないもので―――」

 

「え、ちょ、え何これ!?」

 

匙の欲望丸出しの宣言に対し何かスイッチが入ったのか、突然ブッダは匙に詰め寄り説法を始めた

 

「・・・あれ?ブッダもしかして説法モードに入っちゃった!?」

 

「た、助けろ兵藤!」

 

「兵藤君。君も私に何か聞きたいことがあるみたいかな?例えば一夫多妻の害悪性とか」

 

ギギギと首だけ向けられた一誠は息を呑んだ。そのピンポイントな話題に恐怖を覚える

 

「スマン匙、俺には無理そうだ」

 

助けられそうにない。それどころか巻き添えを喰らう絶対に、そんな予感に一誠は匙を見捨てるのであった

 

 

  D✩D

 

 

 翌朝、同町にある共学の高等学校、駒王学園。その学園の現生徒会長である支取 蒼那。それは表の顔であり、その正体は、匙 元士郎の主、シトリー家の次期当主の上級悪魔、ソーナ・シトリーという悪魔である。今日もいつものように朝早くに来た彼女は、生徒会室で執務に取り掛かっていると、いつもの様に匙が入ってきた

 

「おはようございます、支取会長」

 

「おはよう、さ・・・じ?」

 

彼の姿を見て、バサリとソーナは手にしていた書類の束を床に落としてしまった。彼の特徴であるクリーム色の髪が根こそぎなくなっていたのだから、驚くのも無理はない。丸々と剃られた彼の頭頂部が、窓の隙間から差し込む朝日を反射して燦々と輝いていた

 

「匙・・・貴方、その頭は・・・」

 

「ああ。俺―――いや私は、先日お会いしたさるお方の説法を聞き、己の欲の深さに気付き、戒め、そして悟りました。これからは会長の眷属として、誠実で清い、新たな道を歩む所存です」

 

「は、はぁ・・・」

 

「では私はこれから授業開始まで屋上で瞑想してまいりますので、失礼いたします」

 

礼儀正しくお辞儀をし、匙は生徒会室を後にした

 

たった一晩で彼になにがあったのだろうか?一体全体さっぱりわからないソーナは、額に手を当て悩むのであった

 

 

D☆D

おっす俺の名前は兵藤一誠!

 

私立駒王学園に通う高校生・・・でもあり、リアス・グレモリー様の下僕悪魔でもある

 

今俺たちは教会の聖剣使いと行動を共にしている

 

彼女たち以外にも二人の協力者

 

一人は頭に茨の冠を被った外人さん。西洋風の顔立ちでどこか海外ドラマとかにいそうな感じだ

 

冴えなさそうな顔をしているが、俺たちにセイヴァーと名乗っていたことからも、教会のスパイとか言われてもおかしくない気もする

 

そしてもう一人が―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・なんつーか、大仏だった

 

髪型といい、異様に長い耳といい、どこをどう見ても奈良や鎌倉の大仏様にしか見えねぇ

 

外人さんと大仏様という奇妙な組み合わせに困惑したもんだ

 

そんな彼らも加え、俺たちは神父を狙う奴らの囮となるため街を歩き回った

 

かれこれ蛍光灯や車のバックライトが異様に輝いたり、街中にいるはずのない蛍や鹿に梟がやってきたりもしたが、肝心の犯人は現れず、俺たちはやきもきしていた

 

連日歩き回っているが中々見つからないので今回は二手に別れようという話になった

 

イリナと小猫ちゃんに匙、そしてブッダさんは街の郊外へ

 

ゼノヴィアと木場、俺とセイヴァーさんは高台の近辺を歩き回ることに

 

戦力の分散はあまり良い手ではないと話したばかり故に・・・この日は痛感した

 

「神父の一団にご加護あれってね!」

 

高台の麓まで近づいたその時だ。上から何者かが襲い掛かってきた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰かと思ったら何時ぞやの雑魚悪魔のイッセーくんかい?これはまた奇妙珍妙な再会劇でござんすねぇ?ドラゴンぱぅわーは健在かい?」

 

「フリード!」

 

白髪の少年神父フリードが、長剣を携えて立っていた。彼の持つ剣からは異様な存在感と共に聖なるオーラを醸し出している

 

「聖剣・・・僕がこの手で・・・!」

 

油を得た炎のように復讐に躍起になっている木場は周りも見ずにフリードに襲いかかって行った

 

だからと言って、そんなんで聖剣に勝てるほど世の中は甘くできちゃいない

 

「チミチミ、エクスカリバーに憎悪してるみたいだけど、これで斬られちゃうと悪魔くんは消滅確定だぜぇ!」

 

魔剣を振るっても砕かれる。木場は一度下がると様々な魔剣を出してフリードへと飛ばした

 

「おやぁ?もしかして【魔剣創造】でございますか?わーお、レア神器持ってて罪なお方ですねぇ。でも・・・」

 

構えなおすと、フリードの持つ聖剣がぼんやりと光だし、次の瞬間

 

「俺様の聖剣はそんなもんじゃ壊せないぜ!」

 

突然フリードの剣をふるう速度が増し、剣先がブレて見えなくなった

 

次の瞬間、フリードを囲んでいた魔剣がすべて砕け散った

 

「貴様の持つ聖剣、それは天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)だな?」

 

「Exactly!そういうお嬢さんのは破壊の聖剣(エクスカリバー・ディストラクション)でごぜぇますよね?それから・・・おやおやーん?これはこれは、どうもそこのお嬢さんの物以外にも聖剣があるみたいっぽい~?・・・めっけ!」

 

「え!?わ、私!?」

 

突然指を指されイエスは肩をビクリと震わせた

 

フリードが目につけたのはセイヴァーさんの腰に着けた刀だ

 

「君の相手は僕だ!」

 

「邪魔でござんす!」

 

木場が幅の広い剣でフリードに打ち込むが、聖なるオーラをまとった聖剣の一撃に容易く砕かれた。その一撃に木場は吹き飛んだ。飛んできた木場を俺が受け止める

 

「無事か木場?」

 

「すまない、イッセー君」

 

―――っ!フリードは!

 

木場を容易く弾き飛ばしたフリードは目標を変えずセイヴァーさんのもとへ

 

その間にゼノヴィアが立ち塞がった

 

「裏切りの使徒フリード・セルゼンよ!このお方へは指一本触れさせんぞ」

 

破壊の聖剣を手にフリードに立ち向かう

 

「うう~ん。破壊の聖剣とは厄介なりよ~・・・。でもそうは烏賊の金○!」

 

ギィンッ!

 

あらゆる物を破壊する破壊の聖剣の一撃を受け止めた

 

「私が振るいきる前に止めようとは・・・」

 

「相性が悪かったざんすねぇ。バカ力程度じゃオレっちの天閃の聖剣は止められねぇんだよ!」

 

2擊3撃、不可視に近しい速さで振るわれる複数の斬撃に受け続けるゼノヴィア。その隙を突かれ、横合いから蹴飛ばされた

 

「ゼノヴィアちゃん!」

 

セイヴァーさんを守っていたゼノヴィアも離され、フリードは一人となったセイヴァーさんの前にたどり着いた

 

「う~ん。こういうのって大概僕チンみたいな悪党を即ぶった斬れる様なチート武器ってお約束じゃな~い?そういうのはまだお呼びじゃごぜぇませんのことよ!ってなわけで殺っちゃおうスパッと!」

 

俺たちはセイヴァーさんを助けるため駆け出した

 

ゼノヴィアも助けに入ろうと駆け出すが距離もあって間に合わない

 

「セイヴァーさん!」

 

「えちょ、待っ―――」

 

セイヴァーさんが斬られる。そう思ったその時だった

 

ドォォォオンッ!

 

上空から大きな光の塊が、セイヴァーさんとフリードの間を割るように降ってきた

 

光が収まり、光の落ちた場所に誰かが居ることが分かった

 

その者を見たその瞬間―――

 

 

 

ゾワリ

 

 

 

――っ!??

 

まるで首筋に剣を当てられたような言い知れぬ悪寒と恐怖が俺を襲った

 

短く切られた金の髪、刃のように鋭い目つき、3対6翼の純白の羽

 

「イエス様。断罪するのは、そこの異端者で間違いないでしょうか?」

 

端正な顔をした天使が、炎を纏った剣を片手にフリードに相対していた

 

「よもや・・・ウリエル様か?」

 

突然現れた男の姿を見てポツリとゼノヴィアがこぼした

 

ウリエルって確か―――天界の大天使様じゃねぇか!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

其の名は「神の炎」を表す。四大天使の一角を担う大天使ウリエルが、地上に降り立った

 

「おやおや〜ん?もしかしなくても天使様降☆臨☆deathか〜?」

 

突如現れた大天使を前にフリードは笑っていた

 

敬遠な信徒であれば、いや理性ある戦士であればウリエルの絶対的な脅威に気づき、畏れたであろう。しかし元より情緒が安定していない上に、聖剣という力の麻薬に溺れているフリード・セルゼンには相手の力量を読み切れる程の理性が欠如していた

 

「僕チン前から天使様を一度斬ってみたかったんだよねー?良いでしょ良いざんしょ?ってなわけでレッツチョンパ!」

 

ヒャッハーと某ならず者のごとくフリードはエクスカリバーを振り上げ、上から斬りこもうとウリエルへと飛び込む

 

それに対しウリエルは剣を抜くどころかフリードを目にも留めずただ立っていた

 

「あ―――」

 

危ない!一誠がそう言おうと思ったその瞬間だった

 

フッとウリエルの姿が一瞬ブレたように見えた

 

果敢に切り裂くと思われたフリードはというと、剣を上に振り上げたままウリエルの目前で立ち止まった

 

「おいおい・・・チートすぎだろ・・・」

 

ふと呟くと右肩から左わき腹にかけて一閃、フリードの身体が二つに分かれた

 

「嘘だろ?あのイカレエクソシストが一瞬で・・・」

 

「動きが、全く見えなかった」

 

一瞬で決まった結末に兵藤や木場は戦慄していた

 

「断罪せよ」

 

ウリエルの一言と共に二つに裂かれたフリードの亡骸がボッと浄化の炎に包まれ,欠片も残さず焼き消えた

 

登場から瞬く間にフリードを瞬殺した大天使を前に、二人を除く全員が身構える

 

フリードの始末を終えたウリエルはこちらに振り向き、剣をしまい近づいてきた

 

「イエス様、ご無事でしょうか?」

 

そして、イエスの前に跪いた

 

「え、あ、うん」

 

それはもはや誤魔化しようがなかった

 

 

D✩D

 

 

高台の中腹に建てられている教会にて。既に使われておらず廃墟となっていたはずだった

 

そこに一人の男と一人の人外が拠点として潜んでいた

 

「なんだ!この揺れは!それに異常な神気は!?」

 

青い顔をして騒いでいる初老の男。皆殺しの大司教と呼ばれたバルパー・ガリレイ

 

「・・・そうか。お前がきたのか」

 

得体の知れない自体にあたふたするバルパーを他所に、その奥に潜む1人の堕天使が奮えていた

 

「フフフフ・・・永き因縁に決着を付けようではないか―――ウリエル!」

 

漆黒の翼を広げ、血走った眼で笑みを浮かべる

 

その男の名はコカビエル。聖書にまつわる強大な堕天使の1人だ

 

 

 

 

 

 

 

 

彼らが邂逅するその時は目前に迫っている




おまけ

自己紹介


「赤龍・・・ああ!もしかして君があのドラゴン君!」

「知ってるのイエス?」

「うん。昔父さんが地獄で二匹のドラゴンが暴れてたから、それを封印したとか・・・あの時、父さん天界の戦争の時以来の大運動したらしくて、未だにその時の筋肉痛が来てないって不安だって・・・」

「二天龍を相手に筋肉痛か・・・」

「さすがは聖書の神・・・なのか?」

「それで、ドライグは神器に封印されたのか・・・」

「でも、なんで籠手なんでしょうか?」

匙小猫ふとした疑問にイエスは続けた

「それも父さんから聞いたよ。確かあの時は・・・」

『あれ?軍手がないなぁ・・・最後どこに置いたかな・・・うん、この間のドラゴンの魂を使って作るか』

神が力を込めると、左手に翡翠の宝玉が埋め込まれた紅い籠手が生まれた

『・・・ちょっと別の形になったし片手だけか・・・ま、良いか』

「――って」

「「「「「「・・・・・」」」」」」

『フフフフ・・・まさか天龍とも言われた俺が草むしりの軍手とは・・・ウウッ』

禁手化状態の鎧は蜂の巣駆除用の防護服だそうです



没ネタ


フリードに襲われるシーン



「えちょ、待っ―――」

フリードの聖剣が振り下ろされたその時

ギィンッ!

金属がぶつかり合う音と同時にフリードの剣がイエスの目前で止まっていた

それは一本の刀だった

イエスの腰元にあった模造刀「菊一文字則宗」が独りでに抜かれ、フリードの一撃を防いだのだ

「オイオイ。これは・・・ただの刀じゃないいですかぁ?」

「剣がセイヴァーさんを・・・」



付喪神というものが日本の伝承にある

長く人に愛用された、もしくはその逆の物が長い時を経ると神や霊魂などが宿るといわれている



「おおう!?」

使い手のいない刀はフリードの聖剣を弾くとそのまま剣戟を始めた

誰の手も借りず、その刀は宙を舞ってフリードの聖剣と渡り合っているのだ

模造刀の猛攻がさっきまで圧倒的優位に立っていたフリードを押していた

「ウゼェウゼェウゼェ!ただの刀のくせにウゼェっす!」

苛立つフリードは天閃の聖剣の能力で反撃を行う。目にも止まらない動きが複数の斬撃を生み出して模造刀に襲い掛かる

あれはさすがに無理だ。砕けてしまう。誰もがそう思っていたが、模造刀はその全てを綺麗に受け流していた

「バカな・・・」



当然、長い時というのは早くても100年を要する

しかしだ。わずか数日といえど全人類の罪を背負い、世界の全てを愛する神の御子の愛が注がれたその刀は、精霊が宿るには十分であった



ゴオッ!

「眩しい!」

「なんだこの光は!」

模造刀が突然輝きだした。その光は天に太陽が昇ったかのごとく、エクスカリバーの輝きも霞むほどに煌々と

あまりの眩しさにフリードは立ち止った

ゼノヴィアはまばゆい光の中で刀がゆっくりと下ろされるように見えた

攻撃をやめた?いや違う

剣士として生きてきた自分の本能がそう告げている

これは止めだと

宙に浮く模造刀の姿しかないはずなのに、ゼノヴィアの目には腰元に刀を添えて構える背丈のすらりとした美男がぼんやりと映っていた





加えて御子の祝福の籠を受けたその刀は、例え伝説といえど人の手が加えられた聖剣の敵ではなかった







『神の御子様。我が力を望むときはいつでも呼んでください』

ぼやぁっと剣を持っていた侍は天に昇っていったように、ゼノヴィアのみ見えた

やがて光が収まるとそこには




バキィィィンッ!!




バラバラに砕けたエクスカリバーが地面に散り、亀裂はおろか刃こぼれ一つとない模造刀が地に突き刺さっていた

「アイエエエ!?なんで伝説のエクスカリバーちゃんが粉々に!!?」

何が起こったのか、気が付けば自分の武器が完全破壊されているその状況に混乱しているフリード

「・・・ジーザス」

そして頭から血を流して物憂げな表情で刀を見つめるイエスの姿であった






そろそろ神バレした方がいい気がしたため

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。