ある可能性の劇場   作:シュレディンガーの熊

7 / 12
観客動員数1100人突破!お気に入りも5人

嬉しい限りです

さて、今作はクロス作品、ハイスクールD×Dの町に聖人達が・・・


月光校庭のエクスカリバーと聖人

メソポタミア文明以来、現代の人間社会において、通貨は重要な存在である。地獄の沙汰も金次第、三途の川の舟渡しでの六文銭のように、あの世であろうとも人の行く末はお金に左右されるのである

 

 

 

 

そしてお金は今も、救世主達の明日を左右していた

 

 

 

「この町のスーパーのタイムセール、豆腐一丁74円、4個入り卵一パック88円、醤油一本98円。これを逃さないてはありません」

 

六月の半ば、春の迎春セールや、友人や弟子たちとの宴会、大家さんのお孫さんへのこどもの日等々、春先から予想以上の出費がかさみ、節約せざるを得なくなっている聖人二人は、わざわざ遠出をしてまでとある町まで買い物にきていた。

 

「でも、この町まで歩いていくのはちょっとつらくないかな?せめてカンタタ二号を持ってくればカゴに荷物も詰められるし・・・」

 

「いいえ、この街の駐輪場はすべて一時間無料。しかし駐輪場から目的のスーパーへの往復時間、そしてタイムセール時の他のご婦人方の参加による大ラッシュ、レジの所要時間まで計算に入れても一時間を超えてしまい、そうなると延長料金を支払わなくてはなりません」

 

立川から数駅分程離れた駒王町、そこに二人の聖人が歩いていた。キリストを広めた救世主――イエス、仏教を広めた目覚めた人――ブッダ。彼らは、下界は日本の立川にて有給バカンスをしているのであった。

 

「君のお財布のひもは本当に固いね」

 

「君が緩すぎるんだよ。この間も24の新シーズンDVDを買っていたじゃないか」

 

「いやだってこういう続編物って最後まで欲しくなる物じゃない?」

 

「イエス。君はいつもいつも・・・わたしがこの生活をしていくためどれだけ切り詰めているのかを―――」

 

パアッと体を震わすブッダの後ろから光が差し込む

 

「待って!街中で後光指すのはマズイって!・・・あ!ここじゃないかな!」

 

どうやら話をしている間に目的地に辿りいついたようだ。二人の目前には大型スーパーがそびえている

 

「・・・うん。ようやく着いたようだね」

 

二人のたどり着いたスーパーには、まるで神に縋る人々のごとく、買い物客で溢れていた

 

「うわ、すごい人だかりだね」

 

「そう、ここからが本当の苦行なのです。フフフ・・・」

 

「・・・今の君はとても輝いているよ、ブッダ」

 

カチリとブッダの苦行スイッチが入る音が聞こえたとイエスは語る

 

D✩D

 

「今日は良い買い物をしました」

 

ホクホクとした顔でレジ袋に詰め込まれた戦利品の数々を手に店を出るブッダと、そのあとを追うイエス

 

「・・・ねぇブッダ。今度来た時はお弁当を買おうよ。値段が半額のシール貼ってあったし」

 

「私も脇で見ていたけど、あの弁当に群がる者たちの眼は尋常ではなかったね。あの子達は皆、飢餓系の苦行でもしていたのかな?」

 

弁当売り場の一角で繰り広げられた狼達の闘いに異なった見解を述べるブッダである

 

「せっかく遠出したんだし、ちょっとだけ見て回らない?」

 

「う〜ん、卵とか生物買っちゃったから少しだけだよ?」

 

駅前の商店街を中心に町並みを散策する二人の聖人

 

「あ、見てブッダ。絵画の個展をやってるみたいだよ」

 

イエスが見つけたのは、小さなビルの表に雁削(かりそぎ)画伯画廊展と書かれた看板

 

「芸術・・・そう言えば王宮に居た頃は色んな芸術作品を父が私に見せてもらっていたな」

 

「お~!評価とか鑑定とかできるの?」

 

「う〜ん。そういった目利きはないかな?毒キノコ引き当てるような目だし・・・」

 

「もし、そこのジョニーデップ似のお兄さん?」

 

「私のことでしょうか?」

 

ジョニデ似とおだてられ、キメ顔で振り向くイエス。そこには縦縞のワイシャツを着た見た目40代の男がニコニコと笑みを浮かべていた

 

「ええそうですはい」

 

「ちょっとイエス!」

 

「雁削画伯の絵にご興味があるようで。こちらをご覧下さい。この絵に描かれているお方は何方だと思われますか?」

 

柔らかな物腰で男はそばにあった絵画を指差す。そこには首元に赤いスカーフをつけた白い服の男が描かれていた。その前面には薔薇の花が咲き乱れ、背景には大きなバナナの葉があった

 

傍から見れば意図がサッパリ理解できない、ただの男の絵だろう

 

「この絵は・・・」

 

その絵を見て手を顎に添えて思考するイエス      

 

「・・・もしかして―――マルベルデ君かな?」

 

「マル・・・?」

 

「あ、それって義賊をしていた彼?」

 

「うん。でも彼って麻薬とマフィアの守護をする人だから教会認定はされていないんだよ。それでも、彼のファンは世界中にいるからすごいんだけどね。彼、死ぬ前は仲間を守るために囮になったりとかしたらしくて」

 

「悪のカリスマ・・・ルシファーさんとかと気が合いそうだね」

 

「(マルベルデって誰だよ!サッパリわからねぇぞ!・・っていうか麻薬とかマフィアとか・・・この人たちもしやそっち側の・・・!?いや、怖気づくな!ここはこの道15年のベテランの腕を見せる時!)え、ええ・・・実はそうなんです。いやはやお目が高い!」

 

雁削なんていう画伯などいやしない。この絵も、どこかの誰かさんが、これを誰かなど考えず適当に描いたものだ。他の絵と比べ、近代的かつ神聖さを感じさせないこの絵は、あくまで自分の博識さと絵の価値の高さを騙るための引き合い程度と思っていたが、思わぬ収穫である

 

男は目を細めてちらりとイエスを見る

 

(一見30代の欧州風の優男、先ほどのジョニデ発言からも煽てに乗り易いと見た。少し前に来た少女同様、押していけば容易いカモだ)

 

男はここぞとばかりに手を組んでイエスに歩み寄った

 

「では、ご購入をご検討なされてはいかがでしょうか?」

 

「え、でも・・・」

 

「いやいや、こういった物は価値の分かる方にこそ相応しいのです!今ならこの額縁も加えてこのお値段で提供させて頂きます!」

 

懐から取り出した電卓を叩きだした数値は75万

 

「え、でもなぁ・・・」

 

「本来なら3倍、いえ5倍はするところをここまで勉強させていただいているのですが・・・仕方ありません!貴方様に出会ったのもなにかの縁!60万で構いません!」

 

さらに畳み掛ける男

 

「さらにさらに!このハンディタイプの洗浄水タンクもおつけいたしますよ!」

 

「いやでも、今私お金が・・・」

 

「それでしたら!分割払いもございます!月々ほんの50000円を16ヶ月払いで構いません!」

 

「だ、だから、その・・・私は・・・」

 

「さぁ、さぁ、さぁさぁさぁ!」

 

 

 

 D✩D

 

 

 

「・・・わ、私が間違っていたんです!ああ、今までの私はなんてことを!これからは正しき道を歩もう!この素人が書いたデタラメな絵は資材として送ります!騙し取ってしまったお金はもう持ち主に返せそうにない・・・だから、このお金は全財産と一緒に恵まれない子供達へ募金をしよう!ああ、アガペー!!」

 

 

 

  D✩D

 

 

 

「・・・ごめん、未だに商人の時のトラウマが治ってなくて」

 

「君は本当に押し売りが苦手だよね・・・」

 

「うん・・・訪問販売の人とかが来る度にあんな感じになっちゃうんだよね」

 

押し売りに対しつい説教をしてしまったイエスは、ブッダと共にその場から逃げてしまった

 

「思わず逃げて来ちゃったけれど、あの人大丈夫かな?」

 

(きっと今頃、懺悔しているだろうな)

 

それからもイエスとブッダは商店街を歩き回る。声を張り上げる魚屋、小さなテラスが付いたカフェ、学生が賑わうゲームセンター、噴水が綺麗な自然公園・・・

 

「えー、迷える子羊に御恵みを~」

 

「どうか、天の父に代わって哀れな私たちに御慈悲をぉぉぉぉ!」

 

「あれって、君の信者だよね?」

 

「うん、たぶん・・・」

 

一通り回ったところで、駅前でなにやら大きな人の声が聞こえる。よく見ると駅の昇降口の傍で白いローブの二人組が祈っていた。行きかう通行人たちはその2人を、奇異の視線を向けて通り過ぎていた

 

「なんて事だ。これが超先進国であり経済大国日本の現実か。これだから信仰の匂いもしない国は嫌なんだ」

 

「毒づかないでゼノヴィア。路銀の尽きた私達はこうやって、異教徒どもの慈悲なしでは食事も摂れないのよ? ああ、パンひとつも買えない私達!」

 

悲観する二人組は夕焼け空を仰ぐ。迷える仔羊・・・なのかな?

 

「どうかなされたか、少女よ?」

 

「―――っ!遂に私達の話に耳を傾けてくれる人が!もしやあなたも教徒ですか!」

 

「あ、いや、私は父さんの息子で―――」

 

「ふむ。確かに人は皆神の子であるからな。こんな極東の町にも理解のある信者がいるとはな・・・」

 

「ああ、主よ。この出会いに感謝いたします!」

 

勝手に自己完結して十字を切って祈る二人の少女。それはそれでバレなくて好都合なイエスとブッダであった。

 

「はじめまして、私は紫藤イリナです。プロテスタント所属の祓魔師(エクソシスト)です」

 

「ゼノヴィアだ。カトリック本部ヴァチカンで祓魔師(エクソシスト)をしている」

 

ローブのフードを下ろして名を名乗る2人。腰下まで届きそうな長い髪をツインテールにした栗毛の少女――イリナ。そして青いショートに緑のメッシュがかかった長身の少女――ゼノヴィア。彼女らはイギリス、イタリアからこの町にやってきたキリスト教徒である

 

「えと、さっき困っているように見えたけど、どうかしたのですか?」

 

「ああ、実は仕事でこの町に来たのだが、路銀が無くなってしまったのだ。彼女がこんな絵を買ってしまったおかげで」

 

「こんな絵とは何よ!貴女にはこの絵画に描かれた聖なるお方が分からないの!?」

 

ゼノヴィアが指差す方に一枚の絵画があった。頭に輪をつけた、貧相な服を着た外国風の男と、その周りに幼き天使達がラッパを持って祝福してるような、そんな絵であった

 

(あの絵ってさっきの人の所のじゃ・・・)

 

「では聞くが、その絵に描かれているお方は誰だ?」

 

「・・・ペトロ様・・・かな?」

 

「聖ペトロがこんなわけないいだろう。聖人を貶しているのか」

 

「そんなことないもん!」

 

「ペトロさんだったらたぶん怒らないんじゃないかな?」

 

「そうだね。『パネーっす!』とか言って笑い飛ばしそうだね・・・」

 

「む?だが聖ペトロは生前、捕われた聖イエスのため番兵の耳を削ぎ落とす様な激情家であったと聞いたことがある」

 

「確かにあの時はそうだったけど、普段は笑わせにくるし、今ではかなり丸くなってるよ」

 

「・・・それは想像がし難いな」

 

後日、ペトロは送られてきたその絵画を見て、なんて言ったのかという話は、別の機会に・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「ってゼノヴィア!あまり油を売っている場合じゃないわよ!」

 

軽く交わす会話を遮るのはイリナ。それに対し、ゼノヴィアも会話をやめた

 

「・・・そうだな。私達には聖剣を取り戻すという使命があったのだった」

 

「「聖剣?」」

 

――聖剣、そんな単語に聖人二名は興味を示す

 

「その聖剣がどうかしたの?」

 

「ふむ、実はな―――」

 

イエスの問いに答えんとするゼノヴィアを遮るイリナ

 

「ちょっとゼノヴィア!いくら親しき隣人でも、これは極秘任務ってこと忘れたの!?」

 

「ああ、すまないイリナ。どうも彼らの頼みにこう、逆らえなくてな」

 

「いえ、ここで出会ったのもなにかの縁ですし、出来ることがあれば手伝いますよ。それに―――」

 

「極秘任務・・・」

 

「イエスも乗り気のようだしね・・・」

 

キラキラと輝かせるイエスの目には、彼女たちが某スパイ映画の女スパイに見えていたそうな

 

ーD☆Dー

 

遥か昔、天使、悪魔、堕天使の三勢力による三つ巴戦争を起こした。その被害は甚大であり、悪魔は魔王を含む多くの悪魔を、天使や堕天使も多くの同胞を失った。かの有名な聖剣エクスカリバーは、その際に砕けてしまった

 

しかし、教会はあらゆる手を尽くした結果、砕けた聖剣の欠片から、エクスカリバーは新たに7本の剣として生まれ変わったのである。新たに生まれた剣には、エクスカリバーの力からそれぞれ特殊な能力を秘めている。そして今は、行方知れずとなった1本を除き、6本の聖剣はカトリック、プロテスタント、正教会の三派閥が2本ずつ保管することとなったのであった。

 

「実は教会が保管しているエクスカリバーの内3本が、堕天使に盗まれたのだ」

 

「あ~、アーサーくんの剣か」

 

「因みに、残る3本の内2本がここにある」

 

「これが私の聖剣、擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)よ」

 

イリナが懐から木刀を取り出す。木刀を軽く振るうと瞬く間に真剣へと姿を変えた

 

「わぁ!リアル聖剣だよ、ブッダ!・・・少しだけ触ってもいいかな?」

 

「う~ん・・・少しだけなら」

 

少し渋ったイリナは、再び木刀へ姿を変えてイエスに貸した

 

「うわぁ!かっこいい・・・!」ワクワクドキドキ

 

「ああ、イエスそういうの好きだよね」

 

「私デモハン(ネトゲ)では弓兵役なんだけど、偶に剣士とか羨ましく思っちゃうんだよね。勇者みたいで」

 

「私達に武器は似合わないんじゃないかい?君も私も非暴力主義だし、向かってくる敵も、なんだかんだで仲間に引き入れちゃうから」アングリマーラトカ

 

「でもやっぱり伝説の武器ってかっこいいから欲しくなるy―――痛っ!」

 

「うわっ、ととと!」

 

突然エクスカリバーを手放すイエス。聖剣は宙を飛ぶも、持ち主のイリナが飛び込んで受け止めた

 

「大丈夫イエス?」

 

「あ、うん。ちょっと指を切っちゃったみたい」

 

「見た目が木刀でも本質は剣だからな。というか、聖剣をぞんざいに扱はれては困る。・・・剣は無事か?イリナ」

 

聖剣を放ってしまったイエスにゼノヴィアは嘆息し、イリナに無事を確かめる。しかし彼女はエクスカリバーを掴んだまま無言を通し、反応がない。やがてスクッと立ち上がった

 

「聖剣は無事のようだな」

 

「見くびらないでゼノヴィア。なぜなら私は真のエクスカリバー使い、紫藤イリナなのだから!」

 

突如、何かに目覚めたかのような、なにやらテンションがおかしいイリナ。さらに、その手に持っていたエクスカリバーは変貌を遂げていた。擬態により木刀の姿だった剣は、厳かな装飾が施され、剣から発せられるオーラは先の聖剣よりも大きく神々しいものだ

 

「突然テンションが激しくなるのは良くあることだが・・・いやそれよりも、エクスカリバーが変わってしまっただと!?しかもデュランダルに勝るとも劣らないそのオーラは・・・」

 

「目覚めなさいゼノヴィア。天の国は近いわ!」

 

かの聖イエス・キリストを貫いた槍は、その血を受け【黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)】として後世に語り継がれている。さっき手を切った時に血が付いたのだろう

 

(ああ、ここにもまた新たなロンギヌスが・・・)

 

イエスは自身の過ちに再び懺悔するのであった

 

因みに、お仕事モードのイエスみたい、とブッダは密かに思っていた

 

「・・・それにしても堕天使か。マーラやルシファーさんみたいな悪魔とは違うんだね」

 

「アザゼルさんが代表でね。彼結構人を惹きつけるものを持っているから。それにセンスもカッコイイし!」

 

(以前ミカエルさんから聞いた閃光と暗黒の龍絶剣(ブレイザー・シャイニング・オア・ダークネス・ブレード)っていうのは言わないほうが良いかな・・・?)

 

「イエス知り合いなの?(イエスのお父さんと離縁した人達だから、神の子であるイエスはあまり歓迎されていないんじゃ・・・)」

 

「ブログ仲間だけど?」

 

「彼ブログやってたの!?」

 

「うん。そういえばこの間のブログで部下に手を焼いてるみたいなこと言ってた気がするよ。どこも個性的な人はいるんだね。トマスとか・・・いい人だけど疑り深いのがね・・・」

 

「私の場合天部の人たちかな?全員・・・教祖にした時も、漫画家にした時も・・・」

 

彼らのプロデュースはおばちゃんのお布施よりも強引だとか

 

それはそれとして、とここまでの経緯を話すゼノヴィア。その間イリナはエクスカリバーを片手に色々と格好良いポーズを繰り返していた

 

「―――というわけで、私とイリナの二人で任されたわけだ」

 

「(う~ん。何度聞いても、かなりの無茶だね・・・)」

 

「(ていうか私、そんなことになってるなんて知らなかったんだけど・・・)」

 

「(それはイエスを心配させたくないからじゃないかな)」

 

「それでも私は、迷える仔羊を放っては置けないよ!」

 

「・・・そうだね。私たちに出来ることがあれば協力させてもらえないかな?」

 

我らが救世主たちはイリナ達の任務に協力することを提案した

 

「そうしてもらえるのならありがたい」

 

「ちょっと待ちなさい、ゼノヴィア」

 

さっきまで会話から外れていたイリナがゼノヴィアを呼び止める。彼女の背中を押して、イエス達から少し離れると小声で問いかけた

 

「ゼノヴィア、協力を願うのは構いません。しかし協力するに当たって、貴女はあの人たちを頼って大丈夫っていう保証はどこかにあるのですか?」

 

「ないな」

 

「はぁ!?」

 

サラリと告げた答えに声を荒げる

 

「信頼に値しないかもしれないし、裏切られる可能性も否定しきれないだろう。・・・だが、私の直感が告げるんだ。この方たちに任せれば大丈夫だ、と」

 

「直感って・・・まぁ貴女のその野性的直感には何度も助けられてるし・・・いいわ、ゼノヴィアを信じる」

 

尚も平然とした顔で答えるゼノヴィア。それに対しイリナは苦い顔をするが、彼女をよく知る相棒の経験上、自分の考えを折らないと理解しているからか、渋々納得した

 

「すまないなイリナ」

 

「いつものことでしょ?」

 

話がついたのか、イエス達の前に戻ってきた2人は、彼らの前で手を合わせて祈り出した

 

「改めて、協力に感謝する」

 

「うん。よろしくね」

 

「主よ、この素晴らしき出会いに感謝いたします」

 

「あはは・・・」

 

本人の前で祈りを捧げられても困るイエスだった

 

「それじゃあ、どうしようか・・・」

 

いざ何をすべきかと悩んでいると、

 

くぅ〜・・・

 

小さな腹の音が鳴り出した

 

「と、兎に角・・・腹が減っては戦もできないわね!」

 

顔を真っ赤にしてイリナはとっさにお腹を抑える。音の出処は彼女からで間違いないようだ

 

「そうは言ってもだ。パンを買うお金もないぞ」

 

「う~ん。今私たちも今手持ちが少ないし」

 

「さっき買ったのも殆ど生で食べられないだろうし・・・」

 

どうすればと悩むブッダとイエス

 

「こうなったら何処かから石を拾ってそれをパンに―――」

 

その時、ササッと何かが2人の前に現れる

 

 

 

 

 

 

「にゃあ・・・」 「ちゅう・・・」

 

 

 

 

 

それは皿を加えた猫とマッチを持った鼠だった。マッチを2人の傍に置き、猫と鼠は置かれた皿にゴロンと仲良く横たわっていた

 

「だからバーベキューはしないって!」

 

「預金を下ろせばどうにかなるから!!」

 

この後、ATMから下ろした非常用の一万円を彼女たちに貸し、その日は家に帰ることにしたイエスとブッダであった




おまけ1

イエス達と別れた翌日

「なんだイリナ。イメチェンという奴か?」

「取り敢えずこの栗毛をブロンドに染め上げて、髪も後ろにまとめてみたの!本部に帰ったらこの戦闘服も変えるつもりよ。青を基調としたドレスに銀の鎧ね」

「待つんだイリナ!理由はよく分からないがそれは何かマズイ気がする!」

「私の意志は固いのよゼノヴィア!」

やいのやいのと騒ぎ立てるエクソシスト達だった





おまけ2

ブログ『アザゼルさんと秘密結社神の子を見張る者(グリゴリ)活動記』


○月×日

赤い龍が悪魔達の方に取られちまった。Sの野郎め、身内に白いのも囲ってもいる癖に・・・!羨ましいっ!

それはそれとして赤い龍を宿した少年に俄然興味が湧いてくる

ってなわけで取り敢えず、正体バレずに街に乗り込む事に決めた!

紅い龍の少年がどんな奴か楽しみだ。ついでに解剖とか実験ができたら面白そうだな?

まぁ先ずは小うるさい副総督の目から逃れる手段を考えるとしよう



comment

あ~麺@天部~~~
 どんまいです。また次代にチャンスがあるはずですので、お互い頑張りましょう

サハリー@サイエンティスト~~~
 改造なら任せるのだ

アルマー@ショッカー~~~
 天龍か。戦車かそれとも戦艦と融合させるのはどうだろうか?





○月◻︎日

侵入成功してやったよ!悪魔のセキュリティ緩すぎて笑っちまうwww

ついでに目当ての赤い龍の少年に会ったが、真面目でムッツリなガキって感じだな。欲望に忠実なのは、なるべくして悪魔になったかもしれねぇ。とにかく面白そうな奴だ。ま、しばらくは人間のフリをして遊んでいようかね?



comment

ぜくす@リーアたん~~~
 一体いつの間に入ってきたんだい?まぁ、迷惑をかける様な真似は遠慮してくれると嬉しいかな?

おでん@主神~~~
 今代の赤と白はどの様なことになるだろうか、暫くは遠くで観察させてもらうとしよう

シェム猫@副督~~~
 今そこにいるのか、待っていろすぐに向かう

バラキエル@雷光
 逃げろアザゼル!




○月☆日

ウチの戦闘バカが聖剣を盗んだらしい。しかもそれ持ってSの妹の所に乗り込んだときた。あのバカはホント何なんだよ、面倒な事しやがって・・・

これってやっぱり俺の責任にされちまうのかな?今のうちに副総督のせいに出来ねぇかな?って画策してたら、なんか後ろから殺気が―――

comment

アルマ@ショッカー~~~
 惜しい奴を亡くしたな・・・(ˇ人ˇ。)ナム

タミフル@ビジネスマン~~~
 遺影の準備してくるわ

いえっさ@救世主~~~
 えっと、一体何ごとですか?


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。