ある可能性の劇場   作:シュレディンガーの熊

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観客動員数(UA)500人突破

そしてDOG DAYSの三期も放送決定とうれしい限りです



というわけで、これは一期後から二期を想定した話です


DOG DAYS 悪喰の魔人

フロニャルド  パスティヤージュ公国

 

昔、フロニャ力が弱かった頃、パスティヤージュ近辺は魔物が多く、人々の生活圏内に現れることが多々あった

 

それを憂いた当時の領主は、異界からの勇者召喚により勇者、アデライド・グランマニエを召喚された。呼び出された15の少女、勇者アデルはパスティヤージュ領主と共に魔物を退治していった。

 

魔物の数が多く苦戦を強いられたが、旅の途中パスティヤージュを通りかかった退魔剣士のマキシマ兄妹の協力により魔物を退き、国は救われた。

 

それをきっかけにアデルと領主は、領主の弟『魔王』ヴァレリア・カルバドスを加え、マキシマ兄妹と共に魔物退治に世界を廻る旅を始めた

 

そして、世界中の魔物を討伐、封印を終えた後、前王の遺志に従い、『白き英雄王』として、パスティヤージュ公国国王となり国を治めた。さらに後、英雄王は国を子孫に託すと、魔王と共に永き眠りに入ったとされ、以後パスティヤージュには英雄王の石碑が国を見守っていると云われている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

英雄王、魔王の封印から幾日・・・ガレット獅子団領とビスコッティ共和国領境にある渓谷

 

ザァッと雨が降りしきる中、そこに三人が傘も差さずに立ちつくしていた

 

1人は白の流しを羽織る狼の耳の青年、イスカ・マキシマ。その隣に立つ鎧を着た女性。もう1人はその妹、ヒナ・マキシマ

 

そして、二人の視線の先にいるもうひとり。雨に濡れて一層艶のある黒き髪、その間から顔を出す熊のような丸耳の男。

 

「ユキカゼちゃんは?」

 

「風月庵でねむっているでござる。ここまでの長旅で疲れたのでござろう」

 

「さようですか。・・・そういえば、先ほどイスカさんから聞きましたよ?ビスコッティ国から騎士の勲章をもらったそうですね。おめでとうございます、ヒナさん・・・いえ、ダルキアン卿?」

 

「・・・たいしたことではないでござる。それより・・・本気でござるか?」

 

『何がですか?』ととぼける男に、ヒナは冷やかな視線を向ける

 

「・・・ええ、もちろん本気ですよ。英雄王も魔王もいない今、私がこの世にいても、人々の迷惑になるだけでしょう。と申しましても、私は封印術には疎い者ですから、私を封印してもらいます。・・・その役を二人にお願いでしたのですよ?」

 

「「・・・・・」」

 

押し黙る2人。たとえ目の前にいるのが、数々の国を襲う魔の物であろうと、仮にも今まで共に戦ってきた仲間を、自らの手で封じなければならないのだ。戸惑っても仕方がないだろう

 

「お二方とも、そんな顔をなさらないでください。これが永遠の別れではないでしょう。あなた方とは、また会えると思います。それに・・・」

 

魔人の深き黒の瞳が崖の向こうを遠く見据える

 

今は曇天で見えないが、彼の視線の先にはパスティヤージュ公国がある

 

「魔王と英雄王の帰還をこの目で見るために、これから旅立つあなた方を見守るために、私はこの見晴らしの良い場所で眠ることにしたのですよ?それなのに、あなた方がそんな顔をなされては、私は安らかに寝られないじゃないですか」ニコッ

 

瞳を閉じると、彼は優しく微笑んだ

 

「・・・では、約束でござる。『必ず、また会おう』と・・・」

 

「分かりました。その約束、『魔人』の名において、必ず成し遂げましょう」

 

「フフッ。君がそう言うなら、間違いないだろうね」

 

「・・・そうでござるな」

 

「ええ。もちろんですとも」

 

 

………………

 

 

別れの時は訪れる

 

イスカとヒナは魔人を挟んで立ち、剣を構えた

 

「あ~、最後にパンケーキを頂きたかったですね。ハチ蜜をたっぷりかけて」

 

「こんな時まで、食い意地が張るかお前は。ちょっと前にビスコッティで食事をしてきたというのに・・・」

 

「やはりお主の胃袋は底なしにござるな」

 

別れの瞬間だというのに食欲に訴える彼に二人は苦笑を浮かべる

 

「・・・よし、なら皆で再会したとき、私がご馳走しようじゃないか」

 

「おお!それは良き提案ですね」

 

「兄者、彼を相手にそれは、あまり勧めないでござるが・・・」

 

「・・た、確かに。やっぱり今のはなs」

 

「いやぁ。今から楽しみですよ。私が目覚めた頃にはとても(・・・)お腹がすいていると思いますので」

 

「」

 

空腹感を強調させて笑う彼の姿に、イスカは遠くない未来に全財産がたった一食で潰える未来を想像するに容易かった

 

「頑張るでござるよ、兄者」

 

先ほどと打って変わり兄妹の和やかなやり取りを見て、彼は微笑んだ

 

「・・・それでは、イスカさん、ヒナさん。またいつか、お会いしましょう」

 

「ああ。再び相まみえるその日まで・・・」

 

「しばしの別れにござる。また会おう―――」

 

「「アラン」」

 

 

 

 

 

 

ザシュ

 

 

 

 

 

 

 

 

その渓谷の頂上にポツンと小さな石碑が建てられた。そばには封印の施された剣が突き刺さり、石碑にはたった一文が書き込まれている

 

【我らが同胞、『魔人』アルフレッド・ベルモット。再会を夢見て、ここに眠る】

 

 

 

 

かつて人々は彼を恐れ、【魔人】と呼んだ

 

 

 

 

 

 

………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

英雄王、魔王、魔人が眠ってからおよそ150年という時が経っただろうか

 

マキシマ兄弟は世界中を渡り歩きながら、残った凶悪な魔物や禍太刀を封印しているおかげか、人々は魔物に遭遇することが少なくなり、平和が保たれている

 

本来魔物との戦いに向けての訓練となる『戦』は一大イベントのような興業扱いになり、勇者召喚はもはや伝説となっているほど、それはもう平和であった

 

かのように思われたが・・・

 

先日、ビスコッティ共和国とガレット獅子団領との戦興業の最中、空が黒き雲に包まれ、雲の隙間から大型の魔物が現れた

 

魔物は暴れ、がレットの街に向けて走っていく。

 

しかし、ビスコッティ領主、ミルヒオーレ=F=ビスコッティ姫と、ビスコッティの召喚した異界からの勇者、シンク=イズミの二人により、街の人々を救うだけでなく、禍太刀に呪われ、魔物と化していた土地神の子をも救ったのである。そして、禍根たる禍太刀は、討魔の剣聖ブリオッシュ・ダルキアン卿と、天狐の土地神ユキカゼ・パネトーネにより封印され、再びフロニャルドに平和が訪れたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・しかし、まだ終わってはいなかった

 

 

………………

 

渓谷

 

辺りは闇夜に包まれ、月光が大地をほんのりと照らす。つい先ほど、土地神を救いだしたことにより、抜け殻となり崩れ落ちた魔物の残骸があった

 

事件から既に二刻と経ち、皆ビスコッティのセレモニーの方へと行ってしまい、誰もいなくなった

この場所で怨嗟の言葉が、木霊していた

 

オノレ・・・

 

オノレ・・・

 

ニンゲンメ・・・

 

「オノレ人間メ、我が肉体ヲよもや封印シヨうトハ・・・」

 

崩れた魔物の肉体の山の中に、一枚の刃

 

「シカシ、我ガ体ハマダ残ッテイル事に気付カなかった!愚かな人間共メ!」

 

それは土地神を呪っていた禍太刀だった。ミルヒオーレとシンクの2人に刃を折られ、ダルキアン卿とユキカゼにより封印されたはずであったが、折られた際、刃の一部を魔物の残骸に隠し、免れていたのだ

 

「我ガ新たナ肉体を得ネば・・・!」

 

大部分を失くし、存在を保つのも困難である禍太刀は、憑代となる新たな刃を求めていた。そして、すぐ近くに憑代になりうる存在を見つけた

 

すぐ近くの崖の頂上に、ポツンと一本の剣が刺さっていた。その傍には小さな石碑が立っていた。何か彫られていたようだが掠れて読めない

 

禍太刀は残された力を放出させた。瘴気の如き負のオーラが触手の様に形をなす。オーラは這うように崖を登り、頭頂に差さる剣を掴んだ。掴まれると剣は黒ずみ始めた。伸びた先から浸食し始めた。どうやら刺さっていた剣には封印のようなものが施されていたらしいが、長い年月が経っていたからか、既にその力は、砕けた魔剣の脅威に値しないほどに弱まっていた。やがて禍太刀はその剣を完全に乗っ取った

 

再び肉体を得た禍太刀は歓喜の声を上げる。そして再び人間どもに復讐せんとここに誓う

 

「今度コソ、必ズ殺しテやる、人間ドモ・・・」

 

おどろおどろしい声色で、人々を呪いながら禍太刀は刃を光らせた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『・・・おや?何か良い香りがしますね?』

 

その時、この渓谷に柔らかな声が響き渡る

 

『この匂いは魔剣の類でしょうか?フフフ。久しぶりの食事ですね』

 

大地が揺れる。天変地異でも起きたのか?禍太刀は動揺する。次の瞬間

 

ガバァ

 

大地が盛り上がると、まるで大口を開けた様に大地が割れ、魔物の亡骸ごと禍太刀は飲み込れた

 

「カ、体が!砕けテいく!?」

 

大地は再び閉じ、禍太刀の残された体が潰されていく

 

正体不明の存在に気付いた頃には禍太刀は粉々になり、その者の胃の奥へと流し込まれていた

 

『歯応えも良く味わい深い魔力・・・とても、美味でしたよ。名も知らぬ魔剣さん』

 

そっと感想を漏らすと大地は元の姿に戻る。その者はまた眠る。約束の日まで・・・

 

 

 

ここはビスコッティ共和国とガレット獅子団領間の渓谷、『魔人』アルフレッドの眠る土地

 

 

 

 

 

 

 

………………

 

 

 

 

 

 

三日後

 

グゥ~・・・

 

 

「・・・・お腹が、空きました」

 

寝るに眠れず、完全に目覚めてしまった魔人は、空腹を満たすため歩く。その先はビスコッティ共和国

 

 

 

 

 

後日、ビスコッティ国で国中の食糧が荒らされる事件が多発したがその詳細は、また別の機会に・・・












オリキャラ

アルフレッド・ベルモット

『魔人』ベルモット

黒髪ショート、熊耳、白い肌に翡翠の瞳

英雄王アデル、魔王カルバドス、マキシマ兄妹、召喚の姫と共に魔物と戦った古代英雄の一人

魔物の派生

フロニャルドに平和の訪れた後、アデルとヴァレリーとは別に、自らを封印してもらう

丁寧な口で話す温和な性格、しかし超がつく大食漢

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