ある可能性の劇場   作:シュレディンガーの熊

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今回は知らない人がたくさんいそうです


世界征服〜おしり団VSズヴィズダー

悪の組織

 

社会から爪弾きされた者、敷かれた秩序に不満を持つ者、社会に反した大きな野望を持つ者、そんな者たちが集い悪虐を行う組織を総称して呼ばれている

 

人員数、戦力、理念、それは組織によって様々である。が、彼らの行き着く最終的目標は突き詰めれば同じだ

 

 

【世界征服】

 

 

人間の長い歴史の中でそれを成し遂げたものなき妄想であろう。しかし今、その世界征服に最も近づいている悪の組織がある。その総帥である幼女、星宮ケイトによって、日本国ほぼ全土の征服を成し遂げたのである。

 

 

 

 

 

 

「我らがズヴィズダーの光をあまねく世界に!」

 

 

 

 

 

 

 

 

………………

 

 

そこは都某所、市街から離れたある森の中にそれはある

 

森林の奥深くに座する大きな建物。悪の組織【おしり団】の住処である

 

出オチみたいなふざけた名前をしているが、これでも世間の皆様にそれなりに知られている悪の組織である

 

俺こと十王正人はその団の参謀である

 

現在は3徹を乗り越えて団内の事務処理を終え、みんな揃っての朝食を迎えるところであった。そんな折にテレビでは、とある話題で持ちきりであった

 

その話題は悪の組織の食卓全体を賑わせていた

 

「今まで都知事に日本の殆どを握られていたこともですけど、それを突然現れた悪の組織がたった数日で征服したなんて・・・。あ、正人さん。お代わりがありましたら遠慮なく言って下さい」

 

「ああ。ありがとう、美夜」

 

「ぐぬぬ・・・。なんか美味しいところ纏めて掻っ攫われたみたいで悔しいZE!」

 

台所からご飯と味噌汁と、朝食を持ってきた特大おしりの黒髪美少女。彼女は橘美夜。今は俺達おしり団が利用しているこの基地だが、元々の所有者であった悪の組織【シャーウッド】、そこの二代目リーダー―――通称魔女モリガンと呼ばれていたのが美夜だ。しかし、【おしり団】との決闘で敗れ、傘下に入ったのである。今ではこうして家事全般をやってくれている

 

俺の座る向かいで箸を拳で握りしめているセーラー服を着たプリ尻の女子高生―――谷岡邦江。『タピ岡』という女性らしからぬ渾名を持っているが、歴とした悪の組織の一員であり、このおしり団の戦闘員・・・だったっけか?

 

「なに、その『ずびずだー』とやらを傘下に加えれば良いのだ。正人殿がやると言われれば、私はいつでもカチコミに行く所存でござる」

 

朝から物騒な話はやめような。タピ岡の隣で味噌汁を口にする岸我緩花もまた、【マッドエンペラー】という暴走族風な悪の組織の元総長であり、【シャーウッド】のリーダーであった美夜のライバルだった。しかし、とある事件を境に和解、タピ岡含む【マッドエンペラー】の一部を引き連れて我らがおしり団の仲間入りをした。自分を男と主張していたからか、今も着ている道着姿の下は・・・ぴっちりと締まったフンドシだと思う

 

「あのヴィニエイラさんのお尻に謎があると思います!是非会いに行って確かめたいです!」

 

それ団長がお尻会いになりたいだけじゃないですか?

 

元気ハツラツにお茶碗を掲げている、身長150に満たないロリっ子少女。これでも俺と同じ高校一年生だ。彼女は伊佐波美。3度の飯よりおしりが大好きな、我らが団長様である。趣味はヒューマンウォッチングならぬヒップウォッチング、近所の女性の全お尻データを有すという、変態もドン引くおしリストだ

 

日々団長と共にいるせいか、俺も段々とおしり色に染められている気がする。できることなら気のせいであってほしい

 

「波美、ほっぺにご飯粒が付いてますよ」

 

その隣で彼女を気にかける、キュッと引き締まったおしりの女の子。スカディ・W(ワイズマン)・東郷。【おしり団】結成当初からいる団長の親友だ。軍人家系の出身である彼女は、俺のことを正人中尉と呼び、『正人中尉の副官になりたい』と日々言っている

 

「呪いを背負いし永き支配者が再び、世に現れた。しかしそれが世界の運命ならば、私は只見守るのみである」

 

騒がしい食卓の中唯一人、神秘さを醸し出しながら端っこで静かに食事をとっている褐色肌の少女。彼女は最近【おしり団】に入ってきた子であるが、その実厄介な力を秘めている為ウチで保護してるという訳あり美少女である

 

ここまで聞けば『お前何ハーレム築いてんだ。そこ代われヴォケ』と野次が飛ぶだろう。間違いなく。だが断る!

 

まぁそもそも男もいる、というか割合的には男のほうが圧倒的に多い。悪の組織というと男のほうが断然やるイメージだし

 

そう、ただ偶然(・・)【おしり団】の主要メンバーのほとんど(・・・・)が美少女達で占められているだけなのだ

 

 

 

 

「どう見てもあっちのほうが悪の組織っぽいよな」

 

「あそこまで堂々と世界征服なんていう奴なんて本当にいたんだな」

 

「まぁ他所は他所、家は家さ〜。別にそんな難しいことを考える必要なんかないんじゃないかな〜」

 

地下の倉庫から元シャーウッドの古参である佐藤、鈴木、田中の三人が食卓に顔を出した

 

さっきから食卓での会話の種である【ズヴィズダー】という組織

彼等は、日本の各地で秘密裏に活動していた秘密組織らしいのだが、本拠地があるという西東京の西ウド川市での多くに渡る大型怪獣の襲来、西ウド川市喫煙者の暴動騒ぎ、地元中学校の大破壊、そして東京都知事との全面戦争と、数々の悪行という名の功績が、最近になって新聞やニュースで多く取り上げられたのだった

 

この時点で、我々【おしり団】なんかよりも遥かにとんでもない組織と言うのが理解できるであろう

 

「というか、俺たち本当に悪の組織なんですかね?」

 

「違うのですか?」

 

キョトンとさも当たり前な顔をする一同

 

「俺たち悪の組織じゃなかったなんて、衝撃的だZE・・・」

 

いや、唯一人タピ岡が俺の言葉を鵜呑みに信じていた

 

「じゃあ皆さん、ここ最近の悪事報告をしてください」

 

「私は基地内の家事を中心に、あと時々に正人さんの事務処理の補佐を務めてました」

 

「近所の老人ホームの介護を、鈴木さんと行ってきたZE」

 

「駅前で新たなおしりを探求してました!」

 

「私は波美に付き添ったり、岸我殿と稽古をしたり。それから正人中尉とお散歩に・・・」

 

ポッと頬を染めないで下さいスカディさん。如何わしく聞こえるから

 

「スカディ殿と模擬試合をしてござった」

 

「幼稚園の遠足の付き添い」

 

「同じく〜」

 

「タピ岡ちゃんと老人ホームに行ってたな」

 

うん。どれ一つとして悪の組織らしからぬ行動ですから

 

こんなんでも、悪の組織と呼ばれている事に疑問を感じる人もいるだろう。しかし、それは読んでる人の認識の問題である。彼女達を始め、【おしり団】の皆は犯罪を犯す様な悪人という訳ではない

 

 

 

「ん?電話?」

 

 

 

………………

 

 

 

――MT。Mind Trancer――

 

突然人間に生まれた、人間の信念を物理的な力に変える未知の能力。何かを信じる心が強いほど、強大な力を発揮できる異能の力。その数値は一般には0〜1000程度。MT能力の強さは人によって様々だ。当然、大きな力は危険を及ぼすものだ。だから誰かが彼らを管理しなければならない

 

そのMT能力者を取り締まるのが、警察から独立した正義の組織【MINOS】だ。【MINOS】はMT能力の悪用を防ぐため、MTを数値化し、一定基準を超えた人は【MINOS】に強制入隊させて、MT能力者達を組織内外で律していた

 

当然それに逆らう人もいる。そういう者達の集まりが『悪の組織』と呼ばれている。悪の組織、その数は大小含めて百を超える。その中でも、【MINOS】が注視するほど巨大な組織達、

 

【シャーウッド】、【アザゼルバンク】、【MTCメイソン】、【マッドエンペラー】、【黒援隊】

 

この五つを称して悪の五大組織と呼ばれていた(・・・・・・)

 

いた、という事は過去のことである。五大組織の内の二つは経緯で我らがおしり団に吸収、分解され、また一つは後のとある事件で解体、今では俺たち【おしり団】が代わりに上がり、【アザゼルバンク】、【MTCメイソン】の3強である。・・・なんて世間では言われているが、実際はというと一番最初から【アザゼルバンク】の一強なのである。そして俺は今、その最強の悪の組織のトップに電話で呼び出されていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「【ズヴィズダー】に関わるな?」

 

「そう。・・・といっても、団長さんは会う気なんでしょうね」

 

ご明察です。いつもながらこの人には頭が上がらない

 

彼女?は斑鳩青森。大企業でもあり、悪の組織の最強最大の組織である【アザゼルバンク】の代表取締役。つまりここ()のトップである

 

彼女?からは色々アドバイスを受けたり、裏から援助されたり、何かと俺達の事を気にかけてもらっていた

 

そんな斑鳩さんが今度は俺達に忠告をしてきたのであった

 

「そんなにヤバいところなんですか?」

 

「どれだけ・・・と言われてもね、彼女らの実力は底が知れないのよ」

 

溜息を一つ吐いて斑鳩さんは話した

 

「規模は・・・とにかく大きいわ。彼女等は随分と昔から裏で手を伸ばしてたから。やつらの末端は日本中、もしかしたら国外にもいるかもしれない」

 

世界規模の悪の組織。そんな言葉だけでとてつもない大きさを感じさせられる。

 

「で、戦力は知っての通り、国の実権握ってたあのクソ都知事を吸収する程」

 

「でもそれだけの大物がどうして今まで世に出なかったんですか?」

 

「いや、正直に言えばゲンちゃんもあたしも、星宮ケイトの事は昔から目に付けていたよ。ただズヴィズダーは神出鬼没で足取りがほとんど掴めなかったのさ。ゲンちゃんのほうも都合が悪くなったからね」

 

「都合って・・・」

 

「ズヴィズダーの連中はMT能力者じゃない」

 

「え、MT能力者じゃない!?」

 

【MINOS】で定義する『悪の組織』とは『MINOSの取り締まり対象とされているMT能力者集団』であることだ。故に、MT能力を持たない者は対象外となる。成程、通りでこれまで聞いたことがなかった訳だ

 

「でも怪獣だとかビル破壊とか、普通の人間にできるとは思えないんですけど」

 

「あいつらが使うのはUDOというまた別のエネルギーと科学技術を掛け合わせたものと定義されているのよ。だからMT能力者以外に手を出すのは、クソ都知事の息のかかった警察の連中に睨まれる。それも併せて手を出せなかったってわけ」

 

チッと舌打ちを打つ。都知事にひどい恨みでもあったのだろうか

 

「まぁでも最近になって、そのUDOがMT能力の派生ではないかという話がようやく浮き上がったそうだけど。奴らに征服された今となっちゃ、手遅れだけどね」

 

コーヒーを片手に斑鳩さんは窓の外を見つめていた

 

その先、西東京の辺りには建設中の石像が鎮座していた。

 

…………………

 

 

 

所変わって都内、西東京は西ウド川市

 

とある片隅に目立たんとばかりに存在感のある建物が建っている

 

その建物の扉に掛けられたネームプレートに小さく書かれた文字

 

【悪の秘密結社ズヴィズダー作戦本部基地】

 

そう、此処が日本全土を征服した悪の組織【ズヴィズダー】の基地である。その基地内の一室に彼女らは集まっていた

 

「皆の者、征服に行くぞ!」

 

「登場早々いきなり何言ってんだよ!」

 

テーブルに身を乗り出し、勢いのある台詞を言う威勢の良い銀髪の幼女。その脇には兎に見えなくもない珍妙なぬいぐるみを抱えていた。彼女はただの幼女ではない。彼女―――星宮ケイトこそ、この悪の秘密結社【ズヴィズダー】の首領『ヴィニエイラ様』なのだ

 

そして、その彼女の発言に対しすかさずツッコミを入れているフードの少年。彼の名は地紋明日汰。彼女に気に入られ、この【ズヴィズダー】に巻き込まれた憐れな新入り戦闘員『ドヴァー』だ

 

今日この日、『ズヴィズダー】の幹部勢揃いによる食卓会議が行われているのであった

 

「征服しに行くと言ったのだ。お前は話を聞いていなかったのかドヴァー!」

 

「聞かないも何もそんな話初耳だ!大体、つい先日日本を征服したばっかりなのに、今度は何処へ行くってんだよ!」

 

東京都知事にして東京都軍特別遊撃隊の総司令であった彼の父、地紋京志郎を下したことにより、俺達【ズヴィズダー】は都知事が支配していた日本の約90%を征服したばかりなのだ

 

「実はまだこの日本の、しかも極めて近くに我々を倒さんと抵抗する奴らがいる」

 

「それって【ホワイトライト】のことか?」

 

「いや、どうも違うようだ」

 

明日汰の答えを否定するスーツ姿の大男

 

スーツとサングラスを身につけた大柄の男は鹿羽吾郎。かつては西東京を仕切っていた広域暴力団鹿羽連合の総長だった。しかし、組が解体し、同業者に追い詰められたところを『ヴィニエイラ様』に救われた親父は、3幹部の一人『ピェーペル将軍』としてこのズヴィズダーについている

 

仮にも『不死身の吾郎』と名高い親父が、見た目ちんちくりんな幼女の下についているという情けない事態である。だがそれほどまでに、『ヴィニエイラ様』は恐ろしい人物なのだ。・・・今思い出しても怖い

 

その側で親父を甲斐甲斐しく世話をしている女性。彼女は隼房香織。鹿羽吾郎の亡き妻椿さんの妹で、元々は正義の組織【ホワイトライト】の総司令官『ホワイトファルコン』として敵対していたが、先月の都知事との戦いの際、組織を辞め、どう言うわけか親父とゴールイン。ついこの間ハネムーンから帰ってきてからというもの、ずっとこのように親父とベッタベタである

 

「今の責任者の白鷺さんに聞いて見たけど、最近は残りの10%、琉球からの敵対組織との交渉に忙しくてそれどころじゃ無いって言ってたわよ。はい、あ〜ん」

 

「あ~ん・・・」

 

「じゃあいったい誰が?」

 

「そがいなもんとうに調べ済みじゃ。場所は東京のど真ん中、正義の組織、名は【MINOS】」

 

『位置情報、組織総員数、財政、etc解析済みです』

 

この独特の広島弁訛りで話す金髪の少女はナターシャ。この基地や戦闘服等、【ズヴィズダー】の軍事科学総てを造り上げたたった一人の科学者。通称3幹部の『ウーム教授』だ

 

その隣では赤縁の眼鏡をかけた青い装甲のアーマロイド―――ロボ子が敵の情報を開示していた

 

「【MINOS】って・・・MT能力者の集まるトンデモ組織じゃないか!?」

 

「うむ。正義の名を掲げ我々に敵対するその度胸、称賛に値する!」

 

『ドヴァー』の叫び虚しく、上から目線で敵に感心を示す『ヴィニエイラ様』は平常運転だ。これは面倒事確定だろう

 

「ま、なんにしてもあれからずっと平和で体が訛ってたから、ちょうど良いじゃねぇか」

 

食卓台に片足を上げて身を乗り出し、腰元の刀を抜いて戦う気満々と意気込む女子高生。その右眼に髑髏のアイパッチを付けた彼女は鹿羽逸花。親父の実の娘であり、『泣く子も燃やすプラーミャ』という肩書きを持つ、3幹部の最後の一人である

 

「では行くぞお前ら!これから始まるのは戦争だ!正義を語る【MINOS】とやらに目に物を見せてやるのだ!」

 

『我らがズヴィズダーの光をあまねく世界に!』

 

 

かくして、8名の精鋭たる【ズヴィズダー】の進撃が始まるのであった

 

・・・何?一人足りないって?

 

そうだったな、紹介が遅れた。いや、やはり俺がいなくては何も始まらねぇな。じゃあ、名乗らせてもらうぜ

 

最後の1人。俺こと【ズヴィズダー】戦闘員を束ねる主任戦闘員!その名も―――

 

「ヤス!さっきからブツブツうっせぇぞ!」

 

「すいやせん姐さん!」

 

・・・俺は『アジーン』。孤独を愛する男、その本名は両角安兵衛。鹿羽連合の時から親父に憧れ、ずっとの親父の後ろを追いかけている、いわゆる下っ端だ。この【ズヴィズダー】でも、今の様に扱き使い回されている。・・・だが俺は決して屈さない。例え今は泥にまみれ、地べたを這いずり回っていようとも、必ずチャンスが訪れる。その時俺は栄光を手にするのだ。だから今はただじっと耐えるのさ、輝を手にするその日まで―――

 

「ヤス!テメェまた洗剤買い忘れたな!」

 

「ヘイすいやせん!!」

 

その日、までは・・・

 

 

 

 

 

 




世界征服〜謀略のズヴィズダー
×
悪に堕ちたら美少女まみれで大勝利

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