ある可能性の劇場   作:シュレディンガーの熊

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ハーメルンの皆様お久しぶりでございます

一先ずリハビリということで一本どうぞ



ミルたんの異世界冒険譚(プリティ☆ベル編)

神威(しんい)の呼び鈴】リィン・ロッド

 

其を鳴らすは魔法(ちから)ある乙女

 

揺らがぬ黒を討ちに秘め

 

天翔ける翼に纏うは触れえぬ拒絶の純白

 

付き従うは神話の軍勢

 

不条理を捻じ伏せる不条理

 

理不尽を踏みにじる理不尽

 

魔を帯びし聖戦士、神威の召喚者

 

その名は・・・

 

 

「サイドチェスト!!!」

 

「ダブルバイセップス!!!」

 

「アドミナブル・アンド・サイ!!!」

 

 

魔法少女プリティ☆ベル!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――って、どこが少女だ!プリティだ!!どう見ても筋肉マッチョの大男じゃねぇかぁぁぁッッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこは太平洋の上空、近隣の島から数百キロ離れたところ

 

蝙蝠の様な黒い翼を広げ、迫り来る恐怖から逃れんとあちらこちらと飛び回っている。彼の名は分からないが、種族は悪魔である

 

魔界で燻っていた彼は名を上げるために最近復活した魔法少女を打倒せんと人間界へやって来た

 

しかし、現実は非情である

 

魔法少女に相応しい、フリルを多くあしらうピンクを基調とした衣装を身に纏う魔法少女(怪物)を前に、1人の悪魔は絶叫していた

 

襲ってくるのは魔法少女とは名ばかりの筋肉お化け。しかも、筋肉隆々な大男がポーズを決める度にその身体中から放たれる怪しいレーザー弾幕を、悪魔が死に物狂いに避けるその様は、戦闘というより蹂躙の方が適切だろう

 

『ごもっともです』と、戦場から数km離れてその様子を見ていた二人の少女(?)は悪魔の絶叫に対し心の中で同意した。

 

彼女らはミルクとココア。見た目こそ10代前半の少女であるが、初代からプリティ☆ベルをサポートし続けている33歳の天使である。愛称は二人合わせてミルココ。年齢が生々しい点については触れないことを勧めよう

 

「ダブルバイセップス・バック!!!」

 

「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAHHH!!!!」

 

「あ、終わったみたいですよ?」

 

とうとう怪光線を真正面からモロに当てられたようだ。断末魔のような叫び声をあげて悪魔は気絶した。倒れた悪魔の様子を伺う大男

 

彼は高田厚志35歳。職業はボディビル選手兼私有ジムのコーチ。奇しくも、神威の呼鈴リィンロッドに選ばれた5代目魔法少女プリティ☆ベルである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし、今になって厚志のアニキに刃向かう悪魔が来るなんて」

 

「どうせ、実力筆頭のアニキを倒して名を挙げてやろうとかいうマヌケだろ」

 

倒した悪魔は魔界へと送り返し、我が家へと帰らんと道を歩く一行。先の戦闘でもミルココのとなりで同じように戦いの様子を伺っていた二人の悪魔が談笑する

 

1人は身の丈以上の縦長な荷物を背負う者と、その荷物を上回る体躯の大男。彼らはリカルドとマッド。魔界では名うての暗殺者であり、かつてはプリティ☆ベルである厚志の命を狙ったのだが、敗北を機に厚志と行動を共にするようになった

 

「どこの軍にも属さないから厄介極まりないな。そういうのは桜だけで十分だってのに・・・」

 

「再び彼と闘うのは、出来れば遠慮したいかな」

 

過去幾度魔族と敵対していたプリティ☆ベルの誕生当初は、リカルド&マッドや『狂犬』桜といった悪魔達が富や名声、単なる興味等等、人間界に乗り込んではこぞって襲い掛かって来ていた。しかし、先に挙げた彼らの様な強者を尽く撃退した事実に加え、魔族を統べる4人の魔王たちとの会合の末、不可侵と同盟を結ぶ事によって、プリティ☆ベルの襲撃は激減した。

 

詰まる所、今や襲いに来るのは魔王達の下に属さない、余程の馬鹿ということだ

 

「!・・・南西330km上空、上級魔族級の魔力を感知」

 

 

遥か遠くに存在する魔力を感知するミルココ。彼女らは大雑把であれば最大半径3,000kmまで感知することができる

 

先程片付けたばかりというのに、新たな悪魔の登場

時間は夕方5時。夕御飯の支度があるから手早く済ませようと、厚志が変身の為リィンロッドを取り出したその時

 

RIIIINN!! RIIIINN!!

 

突如リィンロッドが鐘を鳴らす。これまで無かった出来事に全員の視線がロッドに集中する。

 

「これは一体・・・」

 

「ちょっとアンタ、一体何が起きたのよ!」

 

《厚志のアニキ。これは俺っち自身も驚きとしか言いようが無いぜ・・・》

 

「さっさと答えなさいこの糞ステッキ!」

 

《うるさい合法ロリ》

 

「「へし折るぞ!」」

 

厚志というイレギュラーによって喋りだした(バグった)リィンロッドの口の悪さに苛立たずにはいられないミルココは今にも折りにかかりそうだ。折れないだろうけど

 

結局2人と1本を宥めて、話を聞くのに10分はかかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わーい!お空の上だにょ~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アンタ・・・それマジで言ってんの?」

 

《マジだyo》

 

「今になって・・・3人目の候補者が現れたですって!!?」

 

ミルココはリィンロッドの言葉に叫ばずにはいられなかった

 

魔法少女プリティ☆ベルはリィンロッドに選ばれた者に受け継がれる。初代からこれまで10歳前後の一人の少女が選ばれていた。だからこその『魔法少女』だ。だが事今代は異例の連続であった

 

厚志が選ばれている時点でそれは言うまでもないだろう。だがそれ以外にも、歴代の数百倍もの素質を持つ美咲エリ(小学1年生)というもう一人の候補者もいる。此度一度に二人もの候補者の出現にミルココ達は、(嫌々だが)厚志をメインにおいてプリティ☆ベルとして戦ってもらう事となっていた

 

30代の怪光線マッチョマンに世界破壊クラスの爆弾少女。これ以上の色物が出るというのか・・・

 

5代目プリティ☆ベル誕生から3ヵ月、更に新たな候補者の登場に当の厚志も含めて全員が困惑していたのであった

 

 

「・・・取り敢えず、挨拶に行こうか」

 

冷静に、厚志達はその候補者へ会いに向かうのであった

 

 

・・・果たして、新たなプリティ☆ベルとは?


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